説明

偽造防止システム用透明プラスチック容器

【課題】透明で意匠性に富み、偏光特性を利用して目視で真正性を判定する偽造防止システムに適用可能な透明プラスチック容器を提供する。
【解決手段】全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下のポリスチレン系樹脂からなる透明プラスチックシートを、ガラス転移温度+50℃以上、ガラス転移温度+130℃以下のシート温度で真空、圧空もしくは真空・圧空成形することにより、平面部の歪量が150nm以下である透明プラスチック容器1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家電製品、電子部品、パーソナルコンピュータ用サプライ品、自動車部品、衣料品、装飾品等の物品の包装に用いる透明プラスチック容器であり、係る物品の偽造防止システムに対応した透明プラスチック容器である。
【背景技術】
【0002】
従来、家電製品、電子部品、パーソナルコンピュータ用サプライ品、自動車部品、衣料品、装飾品、或いは各種カードなどの偽造防止のために、各種偽造防止ラベルが開発されている。このような偽造防止ラベルは偽造防止対象物に貼付し、これを目視又は機械的に判定することで対象物の真正性を証明するための識別媒体として利用されている。このような真正性識別体はホログラムや液晶性フィルムなどが知られており、例えば、特許文献1〜6等に紹介されている。係る真正性識別体を付した偽造防止対象物品、各種カードなどの真偽の判別は専用センサーで該真正性識別体の光学特性を直接読み取ることで行われている。
【0003】
専用センサーを用いずに目視で真偽を判別する方法として、例えば特許文献6に開示されているシステムが挙げられる。係るシステムでは、自然光に含まれる特定波長で特定偏光成分の特殊光のみ反射する真正性識別体と、この特殊光を透過させるフィルターと透過させないフィルターの2枚のフィルターを備えた判別具(以降、簡易ビュアーと呼ぶ)を用意し、前者を透して真正性識別体を目視するとホログラム像が見え、後者を透して識別体を目視するとホログラム像が見えず黒に見えた場合にのみこの識別体が貼付された物品が真正品、偽造物品でないと容易に判定することができる。このように、物品に貼付された真正性識別体に簡易ビュアーを直接あてることにより真正性を判定することは非常に簡便で有効な手段であり、その応用が拡大しつつある。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−51193号公報
【特許文献2】特開平8−43804号公報
【特許文献3】特開平5−334477号公報
【特許文献4】特開2001−39100号公報
【特許文献5】特開2005−91786号公報
【特許文献6】国際公開第00/13065号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、多数の電子部品、電気部品、自動車部品、衣料宝飾品などは、輸送中の破損防止、店頭での汚れ防止或いは意匠性等種々の必要性から包装材に包まれている場合が非常に多くなっている。係る包装材として代表的なものに透明なプラスチックシートを成形加工したブリスターパックが良く知られている。
【0006】
前記した簡易ビュアーを用いて真正性の判定が可能な真正性識別体を貼付した物品をこのようなブリスターパックで包装した場合、物品に貼付された真正性識別体は、該ブリスターパックを介して簡易ビュアーで観察することになるが、実際にブリスターパックで包装した物品に貼付された真正性識別体を簡易ビュアーで観察した場合に、真正性の判定ができないという不都合が発生している。具体的には、簡易ビュアーの2枚の特殊フィルターを通じて一方のフィルターではホログラム像が観察され、他方では見えないという組み合わせで真正性が判定できるものが、両方のフィルターとも見えにくくなったり、全く逆に本来見えない方で見えたり、見える方で見えなくなる等の現象が発生している。そのため、係る真正性識別体を用いた偽造防止システムの用途が制限されてしまっている。ブリスターパックに当該真正性識別体を貼付することも試みられているが、最終的な確認として物品自体に貼付されていることが望ましく、当該偽造防止システムに対応可能なブリスターパックが望まれている。
【0007】
本発明の課題は、透明で意匠性に富み、偏光特性を利用して目視で真正性を判定する偽造防止システムに適用可能な透明プラスチック容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、自然光に含まれる特定偏光成分の特殊光のみ反射する真正性識別体を付した物品を収納する偽造防止システム用透明プラスチック容器であって、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下の透明プラスチックシートを成形してなり、平面部の歪量が150nm以下であることを特徴とする。
【0009】
上記透明プラスチックシートが、ポリスチレン系樹脂或いはポリ塩化ビニル系樹脂からなる。
【0010】
本発明の第2は、上記本発明第1の偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法であって、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下のポリスチレン系樹脂からなる透明プラスチックシートを、ガラス転移温度+50℃以上、ガラス転移温度+130℃以下のシート温度で真空、圧空もしくは真空・圧空成形することを特徴とする。
【0011】
本発明第2において、上記ポリスチレン系樹脂が、ブタジエン含有量が30重量%以下のスチレン−ブタジエン共重合体20〜100重量%と、ブタジエン含有量が40重量%以上のスチレン−ブタジエン共重合体0〜30重量%と、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体0〜80重量%からなる組成物であることが好ましい。
【0012】
本発明の第3は、上記本発明第1の偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法であって、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下のポリ塩化ビニル系樹脂からなる透明プラスチックシートを、ガラス転移温度+80℃以上、ガラス転移温度+130℃以下のシート温度で真空、圧空もしくは真空・圧空成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透明プラスチック容器は、収納した物品に付した真正性識別体からの反射光を良好に透過するため、該真正性識別体を直接観察した場合と同様に、本発明の透明プラスチック容器を介して外部から該真正性識別体を観察した場合でも、良好に真偽判定を行うことができ、係る物品の偽造防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者等は、光学特性を応用した偽造防止システムに対応可能なブリスターパックを見出すべく鋭意工夫した結果、本発明を成すに至った。即ち、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下である透明プラスチックシートを成形してなり、平面部の歪量が150nm以下である透明プラスチック容器が真正性識別体を用いた偽造防止システムに最適に使用可能なことを見出し本発明に至った。
【0015】
本発明に適用される偽造防止システムは、自然光に含まれる特定偏光成分の特殊光のみ反射する真正性識別体を対象物品に付し、該真正性識別体で反射された特殊光を検知して真正性を判定するシステムである。特殊光の検知には、該特殊光を透過させるフィルターと透過させないフィルターの2枚のフィルターを備えた簡易ビュアーを用い、一方のフィルターではホログラム像が見え、他方のフィルターではホログラム像が見えずに黒色となる組み合わせの場合に真正品であり、異なる見え方をした場合には偽造物品であると目視により判定することができる。或いは、係る簡易ビュアーを透過した透過光量を電気光学的に検出してその差により真正品か否かを判定することもできる。
【0016】
より具体的には、国際公開第00/13065号パンフレットに記載されている真正性識別体を用いることができる。即ち、入射した光のうち、左円偏光又は右円偏光のいずれか一方のみを反射する円偏光選択性を有する反射性フィルムと、該反射性フィルムで反射される反射光と同一或いは異なる円偏光の光を反射光と異なる方向に反射させてホログラム像を形成するホログラム形成部とを有する真正性識別フィルムである。係るフィルムに左円偏光及び右円偏光を含む光を照射し、左円偏光のみ及び右円偏光のみを透過する2種のフィルターを有する簡易ビュアーを介して目視した際に、一方のフィルターではホログラム像が見え、他方のフィルターではホログラム像が見えずに黒色となる場合に、真正品であると判定される。また、上記簡易ビュアーからの透過光量の差を電気光学的に検出してその差により真正品であるか否かを判定することも可能である。
【0017】
図4に、上記円偏光を利用した真正性識別体の構成例を示す。図4(a)は反射性フィルムで反射した円偏光と同じ円偏光を反射してホログラム像を形成する場合、図4(b)は反射性フィルムで反射した円偏光と異なる円偏光を反射してホログラム像を形成する場合のそれぞれの構成例の断面模式図である。図中、11は反射性フィルム、11aはホログラム形成部、12は保護層、13は光吸収層、14は基板フィルム、15はホログラム形成層、15aはホログラム形成部である。
【0018】
図4(a)において、反射性フィルム11は、入射した光のうち、左円偏光または右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させて反射光を生成する層である。また、反射性フィルム11の片側界面には、ホログラム形成部11aが設けられている。ホログラム形成部11aは、反射性フィルム11で反射する反射光と同一の円偏光の光を反射光と異なる方向に反射してホログラム像を形成する。即ち、反射性フィルム11は、反射性フィルム11の保護層12側表面及び層内部において、左円偏光または右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させ、反射光を生成する。反射光と同一の光はさらにホログラム形成部11aにまで達し、このホログラム形成部11aにおいて反射光と異なる方向に反射してホログラム像を形成する。
【0019】
また、図4(b)の構成では、反射性フィルム11は、左円偏光または右円偏光のいずれか一方の光のみを反射させ、ホログラム形成層15は反射性フィルム11からの反射光と反対の円偏光の光を透過させてホログラム形成部15aにおいて反射させホログラム像を形成する。
【0020】
図4(a)、(b)のいずれの構成においても、反射性フィルム11としてはコレステリック液晶配向を固定化した高分子フィルムなど光学的に選択反射性及び円偏光選択性を示す媒体が用いられる。
【0021】
係る偽造防止システムとしては、トラストグラム(商品名、日本発条株式会社製)が市販されている。
【0022】
また、上記した以外にも、特開2005−91786号公報や特開2001−39100号公報に記載の、ネマチック液晶やサーモトロピック液晶を用い部分的に位相差をつけ、偏光フィルターや円偏光フィルターで判定する構成や、特開2003−73600号公報に記載のようにコステリック液晶顔料をインクに印刷したものを円偏光フィルターで判定する構成も本発明において好ましく用いられる。
【0023】
本発明でいう透明プラスチックシートの全光線透過率は、JIS K7105により準拠して厚み1mmの成形前のシートで測定された値を示しており、この値が85%以上でなければならない。全光線透過率が85%未満の場合、ブリスターパックとしての最大の利点である内部商品を綺麗に見せるという機能が失われるだけでなく、ホログラム像や印刷絵柄も見えにくくなり好ましくない。
【0024】
また、透明プラスチックシートの曇り度は、JIS K7105に準拠して厚み1mmの成形前のシートで測定された値を示しており、この値が7%以下でなくてはならない。曇り度が7%を超える場合、前記全光線透過度と同様に商品価値の低下、及び真正性判定に基準であるホログラム像や印刷絵柄が見えにくくなり好ましくない。
【0025】
本発明で言う歪量とはリタデーションとも呼称され、高分子材料の光学特性の指標である複屈折を起こす値として知られており、Luceo社製Strain−meter(型番;例えばLSM−401)によって測定された値をいう。これによって測定された歪量を肉厚で除したものが複屈折として一般に知られている。複屈折があると入射光の方向により位相差が生じ、偏光が変化する。例えば円偏光の入射光が、楕円偏光になったり、直線偏光の入射光が円偏光になったりする。
【0026】
本発明においては容器の平面部における歪量の値が150nm以下であり、好ましくは100nm以下である。係る歪量が150nmを超える場合、簡易ビュアー等の判定具を用いた真正性の判定が不能になる。具体的には、明るく見える、或いはホログラム像が認識できるはずのフィルター側で見えなくなったり、暗く見える、或いはホログラム像が見えないはずのフィルター側で逆に明るく見えたり、ホログラム像が認識されるといった不具合が生じ、判定が不能となる。また、電気光学的に自動判定する判定機器も同様に判定不能となってしまう等の問題が生じてしまう。
【0027】
尚、本発明において容器の平面部とは、実質的に平板な部分を言い、外部より物品に付した真正性識別体を該部分を透かして観察しうる部分を言う。例えば、物品を収納する箱形の凹部を形成した容器であれば、箱の底部、側面部が係る平面部に該当する。
【0028】
次に、本発明の製造方法について説明する。上記した本発明の透明プラスチック容器は、真空、圧空、もしくは真空・圧空成形により成形することができる。これらの成形方法は、ブリスターパック容器の成形方法として良く知られた方法である。
【0029】
真空、圧空、もしくは真空・圧空成形では、通常、プラスチックシートを軟化点以上に加熱し、成形する。この時、軟化温度の指標としてガラス転移温度を用いた場合には、ガラス転移温度以上で成形可能な限り低温が推奨されており、例えばポリスチレン系樹脂、ABS樹脂なら140℃、ポリ塩化ビニル系樹脂なら120℃程度が推奨されている。
【0030】
しかしながら、本発明においては、成形時のプラスチックシートの温度を通常の成形温度よりも高い温度に設定する。本発明においてはポリスチレン系樹脂或いはポリ塩化ビニル系樹脂が好ましく用いられるが、ポリスチレン系樹脂においては、ガラス転移温度+50℃以上、好ましくは70℃以上、且つガラス転移温度+130℃以下で成形する。プラスチックシートの温度がガラス転移温度+50℃未満では容器平面部の歪量が150nmを超え、真正性の判定が困難になる。一方、ガラス転移温度+130℃を超えると、成形時のドローダウンが大きくなり真空・圧空成形が困難になる、異常に成形時間が長くなる、シートの材料自体が劣化してしまう等の問題が起こる。
【0031】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂においては成形時のシート温度はガラス転移温度+80℃以上、且つガラス転移温度+130℃以下で成形する。ガラス転移温度+80℃未満では容器平面部の歪量が150nmを超え、真正性の判定が困難になる。一方、ガラス転移温度+130℃を超えると、成形時のドローダウンが大きくなり真空・圧空成形が困難になる、異常に成形時間が長くなる、シートの材料自体が劣化してしまう等の問題が起こる。
【0032】
本発明で言うガラス転移温度とは、JIS K7121に準拠したもので示差熱熱量計(DSC)、例えば島津製作所製DSC−60にて測定した値である。本発明においてはDSC測定時の昇温速度=5℃/分で測定されたものを言う。複数のガラス転移温度を示す透明プラスチックシートの場合は、最も顕著に示されるガラス転移温度を言う。また、当該ガラス転移温度は成形前のシートのガラス転移温度を示している。
【0033】
ブリスターパック容器向け透明プラスチックシートとしては、各種透明プラスチック材料が使用可能であり、一般的なブリスターパック材料としてはポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂が挙げられる。本発明においてはブリスターパックとしての機能、例えば光学特性、強度、耐衝撃性に優れ、包装材料としてのコストパフォーマンスにも優れ、且つ真空・圧空成形後も低い歪量を示すという観点からポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂が好ましく使用される。
【0034】
本発明において用いられるポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体が好ましい。特にポリブタジエン或いはスチレン−ブタジエン共重合体を衝撃吸収体としての分散相を形成するものとして用いて、連続相をスチレン−(メタ)アクリル酸エステルとした透明高衝撃ポリスチレンが好ましく適用される。(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチルなどで、中でもメタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチルが好ましく、これらは単独で用いてもよいが、2種類以上を併用しても良い。スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体における(メタ)アクリル酸エステル含有量は8〜20重量%が好ましい範囲である。
【0035】
衝撃性をさらに要求されるブリスター容器としては、前述のスチレン−ブタジエンブロック共重合体の一部にスチレン系エラストマーとしてブタジエン含有量の高い共重合体或いはこれらの水素添加物、例えばスチレン−エチレン−ブチレンエラストマーを本発明の光学特性を満たす範囲で使用することもできる。
【0036】
本発明においては、ブタジエン含有量が30重量%以下のスチレン−ブタジエン共重合体20〜100重量%と、ブタジエン含有量が40重量%以上のスチレン−ブタジエン共重合体0〜30重量%と、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体0〜80重量%からなる樹脂が成形後の歪量の低さ、ブリスターパックとしての透明性及び衝撃性と剛性のバランスが優れていることから好ましく用いられる。
【0037】
さらに好ましくはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、特に(メタ)アクリル酸エステルとしてアクリル酸n−ブチル及び/またはメタクリル酸メチルを用いた共重合体20重量%〜45重量%、スチレン−ブタジエンブロック共重合体としてブタジエン含有量が30重量%以下のスチレン−ブタジエンブロック共重合体35〜80重量%、スチレン−ブタジエンブロック共重合体としてブタジエン含有量が40重量%以上のスチレン−ブタジエン共重合体5〜20重量%からなるシートが衝撃性、剛性、透明性及び成形後の歪量の低さ及びコストの面から好ましく用いられる。
【0038】
本発明に用いられるポリ塩化ビニル系樹脂としては、硬質ポリ塩化ビニル樹脂が好ましく使用されるが、耐衝撃性の向上のために可塑剤或いは、熱安定剤、滑材等の添加材も適宜添加される。更に本発明においては、ブリスターパックとしての光学特性、耐衝撃性及び成形後の低歪性を損なわない範囲で上記以外の各種樹脂、エラストマー、熱安定剤、洗顔料などの各種添加材を加えることが可能である。
【0039】
本発明において、成形前の原反シート、即ち透明プラスチックシートの厚みは0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.3mm〜1.8mmであり、成形後のブリスターパックとして使用される場合の厚みは容器形状或いは場所によって異なるが0.05mm〜1.5mmの範囲が好ましい。0.05mm未満ではブリスターパックとしての強度、剛性に問題が生じる。また厚みが1.5mmを超えると透明性、意匠性さらにコストの面からも好ましくない。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例でもって具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0041】
(実施例1)
スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体(スチレン/アクリル酸ブチル重量比率:90/10)30重量%、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン/ブタジエン重量比率:78/22)70重量%からなる組成物をTダイ押出し機を用いて厚み1mmのシートを作製した。得られたシートの全光線透過率は90%、曇り度は5%、ガラス転移温度は74℃であった。全光線透過率及び曇り度は厚み1mmシートでJIS K7105での測定値を示す。また、ガラス転移温度はJIS K7121に準拠し、島津製作所製DSC−60にて昇温速度5℃/分で測定した。このシートを真空成形機(半田産業製)を用いて図1に示す160mm(W)×300mm(L)×120mm(H)の箱型の容器1を成形した。尚、図1中(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は側面図である。加熱した際のシート温度を赤外線温度計で測定したところ、160℃であった。
【0042】
該容器1の箱形の底部に相当する位置の光学的歪量をLuceo社製Strain−Meter(型番;LSM−401)にて測定したところ、歪量は40nmであった。
【0043】
得られた容器1の内部に図2に示すように真正性識別体3として「トラストグラムTG−80」(商品名、日本発条製)を貼付した物品2を内蔵し、次いで簡易ビュアー4(TG−80付属;日本発条製)を図2に示すように容器1の上部に配置した。その結果、目視により、簡易ビュアー4の一方のフィルターを透してトラストグラム3が明視野の中に明瞭に確認可能であり、もう一方は暗視野で見えず真正品であるとの判定が容易に可能であった。結果を表1に示す。
【0044】
尚、簡易ビュアー4は図3に示すように、2枚のフィルター5a、5bが備えられており、晴マークのついた一方のフィルター5aを透して明視野の中に明瞭にトラストグラムが確認でき、黒丸マークのついたフィルター5bを透して暗視野でトラストグラムが見えない場合〔図3(a)〕にこのトラストグラムの貼付された物品が真正品と判定するシステムである。本実施例では簡易ビュアー4により目視により明確に真正品と判定できた場合を◎とし、不明瞭だが一応判定可能なものを○、判定できない(両方のフィルターで見える〔図3(b)〕、両方のフィルターで見えない〔図3(d)〕或いは逆に見える(見えるべきフィルター5aで見えず、見えないはずのフィルター5bで見える〔図3(c)〕)ものを×として判定した。
【0045】
(実施例2)
真空成形時のシート温度を180℃とする以外は実施例1と同様に測定及び判定した。
【0046】
(実施例3)
市販の厚さ0.7mmのポリ塩化ビニルシートを用いて真空成形時の温度を190℃として実施例1と同様に試験を行い結果を表1に示した。
【0047】
(実施例4)
スチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体50重量%とスチレン−ブタジエン共重合体50重量%の組成とした他は実施例1と同様に試験を行い、その結果を表1に示した。
【0048】
(実施例5)
実施例1においてシートの組成をスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体25重量%、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル重量比率:85/15)25重量%、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン/ブタジエン重量比率:78/22)50重量%とし、成形温度を167℃に変えて試験を実施した。結果を表1に示した。
【0049】
(実施例6)
実施例1のシート材料をスチレン−ブタジエン共重合体(スチレン/ブタジエン重量比率:75/25)のみにした以外は実施例1と同様に試験を実施した。
【0050】
(実施例7)
実施例1のシート材料をスチレン単独重合体10重量%とスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体20重量%、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン/ブタジエン重量比率:70/30)70重量%とし、成形温度を170℃にした以外は実施例1と同様に試験を実施した。
【0051】
(実施例8)
シート材料組成をスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体30重量%とスチレン−ブタジエン共重合体−1(スチレン/ブタジエン重量比率:40/60)10重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−2(スチレン/ブタジエン重量比率:77/23)60重量%にした以外は実施例1と同様に試験を実施した。
【0052】
(実施例9)
シート材料組成をスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体(スチレン/アクリル酸ブチル重量比率:90/10)20重量%とスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル重量比率:85/15)10重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−1(スチレン/ブタジエン重量比率:40/60)10重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−2(スチレン/ブタジエン重量比率:77/23)60重量%にし、成形温度を170℃とした以外は実施例1と同様に試験を実施した。
【0053】
(実施例10)
シート材料組成をスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル重量比率:85/15)30重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−1(スチレン/ブタジエン重量比率:40/60)10重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−2(スチレン/ブタジエン重量比率:77/23)60重量%にし、成形温度を180℃とした以外は実施例1と同様に試験を実施した。
【0054】
(実施例11)
シート成形材料組成をスチレン−メタクリル酸メチル−アクリル酸n−ブチル共重合体(スチレン/メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル重量比率:88/8/4)30重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−1(スチレン/ブタジエン重量比率:40/60)10重量%、スチレン−ブタジエン共重合体−2(スチレン/ブタジエン重量比率:77/23)60重量%にし、成形温度を160℃とした以外は実施例1と同様に試験を実施した。
【0055】
(比較例1)
真空成形時のシートの温度を120℃にした以外は実施例1と同様に試験を行い結果を表1に示した。
【0056】
(比較例2)
真空成形時のシートの温度を150℃とした以外は実施例3と同様に試験を行いその結果を表1に示した。
【0057】
(比較例3)
真空成形時のシートの温度を125℃とした以外は実施例4と同様に試験を実施した。
【0058】
(比較例4)
真空成形時のシートの温度を125℃とした以外は実施例8と同様に試験を実施した。
【0059】
(比較例5)
真空成形時の温度を205℃として実施例1と同様に試験を実施した。その結果、真空成形時にドローダウンが大きく良好な成形体を得ることが出来なかった。
【0060】
(比較例6)
真空成形時の温度を210℃として実施例3と同様に試験を実施した。その結果、ドローダウンが大きく成形が困難であり、かつ得られた製品は衝撃強度がかなり低下しておりブリスターパック容器として使用不能であった。
【0061】
(比較例7〜9)
市販の厚さ1mmのポリエステルシートを用いて真空成形時の温度を126℃、136℃、150℃とした以外は実施例1と同様に試験を実施した。結果を表1に示した。尚、150℃以上の温度ではポリエステルシートは結晶化が開始し、真空成形性が低下してしまい賦形が困難になるだけでなく、透明性が低下してブリスターパックとして使用不可能であった。
【0062】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例で作製した本発明の透明プラスチック容器の形状を示す図である。
【図2】本発明の実施例において、真正性識別体を付した物品を容器内に収納した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施例において、真正性の判定基準を示す図である。
【図4】本発明に用いられる真正性識別体の構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 透明プラスチック容器
2 物品
3 真正性識別体
4 簡易ビュアー
11 反射性フィルム
11a ホログラム形成部
12 保護層
13 光吸収層
14 基板フィルム
15 ホログラム形成層
15a ホログラム形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然光に含まれる特定偏光成分の特殊光のみ反射する真正性識別体を付した物品を収納する偽造防止システム用透明プラスチック容器であって、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下の透明プラスチックシートを成形してなり、平面部の歪量が150nm以下であることを特徴とする偽造防止システム用透明プラスチック容器。
【請求項2】
上記透明プラスチックシートがポリスチレン系樹脂或いはポリ塩化ビニル系樹脂からなる請求項1に記載の偽造防止システム用透明プラスチック容器。
【請求項3】
請求項1に記載の偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法であって、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下のポリスチレン系樹脂からなる透明プラスチックシートを、ガラス転移温度+50℃以上、ガラス転移温度+130℃以下のシート温度で真空、圧空もしくは真空・圧空成形することを特徴とする偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法。
【請求項4】
上記ポリスチレン系樹脂が、ブタジエン含有量が30重量%以下のスチレン−ブタジエン共重合体20〜100重量%と、ブタジエン含有量が40重量%以上のスチレン−ブタジエン共重合体0〜30重量%と、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体0〜80重量%からなる組成物である請求項3に記載の偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法であって、全光線透過率が85%以上、曇り度が7%以下のポリ塩化ビニル系樹脂からなる透明プラスチックシートを、ガラス転移温度+80℃以上、ガラス転移温度+130℃以下のシート温度で真空、圧空もしくは真空・圧空成形することを特徴とする偽造防止システム用透明プラスチック容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81172(P2008−81172A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264219(P2006−264219)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】