説明

偽造防止印刷文書を作成するシステム

【課題】製品の偽造を防止する印刷文書を作成するシステムを提供する。
【解決手段】偽造防止印刷文書を作成するシステムは、印刷基材とエンボス基材を圧着する結合器と、放射源を圧着された基材に当てる硬化源と、エンボス基材から印刷基材を分離する分離器と、を含む硬化ステーションと、一定量のインクが塗布された印刷基材を硬化ステーションへ送る第1のフィーダと、少なくとも一つの凹凸から成る所定の塗布パターンが形成されたエンボス基材を硬化ステーションへ送る第2のフィーダと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷包装物又は偽造防止文書の製造に係り、より詳細には、印刷されたパッケージや包装用シールにパターンや識別特性(signatures)をエンボス加工することによる偽造防止印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造は、製造業界のあらゆる分野に影響を及ぼす深刻な問題となっている。偽造を防止する努力として、多くの製造業者がパッケージに偽造防止特性を付与し始めた。一つの偽造防止特性は、製品に、製品が本来の製造者が製造した純正品であることを示す使用許諾(ライセンス)画像や商標を焼印(branding)又は刻印(stamping)することを含む。しかしながら、この対策は、偽造者が本来の製造者が行った変更を複製するために製造工程や技術を変更している間に、偽造を遅らせるだけにすぎなかった。
【0003】
偽造は、製薬業界に特に広まっている。海外の製薬業者やインターネット薬局の出現によって、偽造薬品は、製薬業界において、深刻な脅威となっている。偽造薬品は、患者に有害な影響を与える可能性のある多様であり低品質の製品から作られている。極端な場合、患者は、正規に製造されなかった又は不正にラベル表示された偽造薬品を投与された後に死亡することもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6139066号明細書
【特許文献2】米国特許第7131775号明細書
【特許文献3】米国特許第7168868号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0201364号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0120930号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0122914号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偽造品との混乱を避けるため、多くの製薬会社は、純正品であることを示す印刷シールを貼付したカスタムパッケージの製造を開始した。これらの印刷シールは、薬品の入ったビンの栓や蓋を封印し、製造者からの刻印又は印刷を含む。しかしながら、この対策は、偽造をいくらか抑止することはできるが、すぐまた、偽造者は、印刷シールも複製し始め、偽造薬品が入っている精巧な包装を製造するのであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施の形態において、インクをエンボス加工する方法は、印刷基材にインクを塗布する工程と、エンボス基材をインクに押し当て、エンボス基材によってインクに所定のパターンをインプリントする工程と、放射源によってインクを硬化する工程と、を含む。
【0007】
一つの実施の形態において、偽造防止印刷文書を作成するシステムは、硬化ステーションを含んでいてよい。硬化ステーションは、印刷基材とエンボス基材を圧着する結合器と、放射源を圧着結合された基材に当てる硬化源と、エンボス基材から印刷基材を分離する分離器と、を含んでいてよい。システムは、一定量のインクが塗布された印刷基材を硬化ステーションへ送る第1のフィーダと、少なくとも一つの凹凸から成る所定の塗布パターンが形成されたエンボス基材を硬化ステーションへ送る第2のフィーダと、更に含む。
【0008】
一つの実施の形態において、インクをエンボス加工する方法は、エンボス基材に所定のパターンを形成する工程と、印刷基材にインクを塗布する工程と、エンボス基材をインクに押し当て、エンボス基材によってインクに所定のパターンをインプリントする工程と、放射源によってインクを硬化する工程と、を含む。
【0009】
以下の記述及び図面を参照することによって、本発明の形態、特徴、利点および有利な効果がより明確に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態による印刷基材及びエンボス基材の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による図1の印刷基材及びエンボス基材の構成を含む製造アセンブリを示す図である。
【図3】本発明の実施形態による印刷方法及びエンボス加工の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を以下に説明するが、本発明は、開示されている特定のシステム、方法論、またはプロトコルに限定されるものではなく、いかなる変更も可能であることを理解されたい。本明細書において使用されている用語は、特定の実施の形態を説明するためのみに使用されており、本開示の範囲を限定するものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定されることも併せて理解されたい。
【0012】
本明細書において使用されているように、用語「含む」は、「〜を含むが、これに限定されない」と同義である。
【0013】
以下に説明するにあたって、用語「アセンブリ」とは、プリンタ、複写機、多機能マシンやシステム、電子写真印刷装置やシステム、又は、印刷基材上でインクを硬化することが可能な他の任意のタイプの印刷装置をいう。
【0014】
「印刷基材」は、画像を印刷するための用紙、プラスチック及び/または他の任意の基材をいう。
【0015】
「エンボス基材」は、一定量のインクが塗布された印刷基材にパターンをエンボス加工するための物理的用紙、プラスチック及び/または他の任意の基材をいう。
【0016】
図1は、一実施形態による印刷基材及びエンボス基材の構成を示す側面図である。この構成は、インク硬化ステーション(例えば、UV(紫外線)硬化ステーション又は熱硬化ステーション)において実施され得る。ある量のインク102が印刷基材104に塗布される。このインクの例としては、例えば、ゼロックス(登録商標)UV(紫外線)ジェルインクなどのジェルインクが挙げられる。ジェルインクは、明確な(シャープな)融点を有する高粘度の流体である。ジェルインクは、粘度が高いことによって、通常のインクよりも、低温基材、例えば、紙などの多孔質基材上に定着しやすい傾向がある。紫外線光や熱放射などの放射源によってインクを硬化することによって、ジェルインクは、乾燥を必要とせずに、印刷基材上で固化する。一般に、これらの特性は、少なくとも第1及び第2の化学的に別個のゲル化材(gellant)を組み合わせることによって達成される。硬化源(例えば、紫外線光)に露光されると、これら二つの別個のゲル化材が化学的に相互接着し、これによって、インクが硬化される。
【0017】
エンボス基材106をインク102上に押し当て、インクを印刷基材104とエンボス基材106の間で挟む。図1において矢印で示される下向きの圧力が、エンボス基材106に加えられる。エンボス基材106は、一連の凹凸108を含んでいてよい。これらの凹凸108は、エンボス基材106に所定のパターンを作成するために使用され、次に、所定のパターンは、インク102にインプリント又はエンボス加工される。
【0018】
図1に示されている印刷基材およびエンボス基材の構成の他の構成要素は、紫外線硬化源110などの硬化放射源である。紫外線硬化源110は、紫外線光がインク102へ方向付けられるように配置される。紫外線硬化源110などの光ベースの放射源を用いる場合、エンボス基材106を、紫外線放射に透過性のある材料から作る必要がある。同様に、高熱放射装置などの熱放射源を用いる場合、エンボス基材106は、インク102へ達する熱を殆ど又は全く遮断しない材料から作成する必要がある。エンボス基材106が、硬化放射に対して透過性でない場合、インク102は硬化しない。印刷、エンボス、硬化機構、及び方法については、図2及び図3を参照することによって、以下により詳細に説明されている。
【0019】
図2は、図1に示された印刷基材およびエンボス基材の構成を含む製造アセンブリ201を示している。製造アセンブリ201は、固有のパターンをエンボス加工したインクを含む、印刷された偽造防止のシール、文書、又は、任意の印刷された材料を製造するために使用され得る。
【0020】
製造アセンブリ201は、二つの材料経路、即ち、印刷基材104用経路及びエンボス基材106用経路を含む。印刷基材104は、フィーダ202を介して、アセンブリ201に導入される。同様に、エンボス基材106は、フィーダ204を介して、アセンブリ201に導入される。フィーダ202とフィーダ204は共に、其々に該当する基材を硬化ステーション206へ送る。この例において、インク102が既に印刷基材104に塗布されている。しかしながら、製造アセンブリ201に、インクを塗布するための構成要素を追加的に設けることもできる。同様に、この例において、所定のパターンの凹凸108が既にエンボス基材106に塗布されている。しかしながら、製造アセンブリ201に、エンボス基材に所定のパターンを形成するための構成要素を追加的に設けてもよい。
【0021】
硬化ステーション206は、結合器208、硬化源210、及び分離器212を含む。結合器208は、印刷基材104とエンボス基材106を受け取り、両者を圧着させる。一実施形態において、硬化源210は、図1に関して上記に説明したように、紫外線硬化源110を含み得る。分離器212は、圧着された印刷基材104とエンボス基材106を分離して、これによって、硬化されたインク102が塗布された印刷基材104と使用後のエンボス基材106が得られる。図3を参照することによって、印刷加工とエンボス加工の実際の製造ステップについては、以下により詳細に説明される。
【0022】
図3は、製造アセンブリ201によって実行される製造プロセスの工程を示す例示的なフローチャートである。フローチャートは、分離基材が進行する二つの分離経路を示す。フローチャートの左側に印刷基材が示され、フローチャートの右側にエンボス基材が示され、フローチャートの中央には共通のステップが示されている。
【0023】
図3に示されるように、印刷基材にインクが塗布される(ステップ302)、ステップ302において塗布されたインクの厚みは、エンボス加工されるパターンによって決定される。上述されているように、インクは、ジェルインクであってよく、この例において、インクは、紫外線硬化性ジェルインクである。一般に、塗布されたインクは、単量体、または、互いに独立して流動する一連の非接着性粒子であってもよい。
【0024】
印刷基材にインクが塗布された後、印刷基材は、製造アセンブリへ送られる(ステップ304)。例えば、(インク102が塗布されている)印刷基材104は、フィーダ202によってアセンブリ201へ送られる(ステップ304)。
【0025】
また、図3に示されるように、所定のパターンがエンボス基材に形成される(ステップ306)。エンボス基材に所定のパターンを形成するステップが複雑なプロセスになる可能性があるので、製造プロセスよりも前に、このステップが実行される可能性があることに留意されたい。所定のパターンは、マイクロドット印刷技術によって、形成され得る(ステップ306)。マイクロドット印刷技術において、インクのごく少量の液滴が、所定のパターン内の基材表面に印刷される。同様に、所定のパターンのスクラッチ加工またはエッチング加工をエンボス基材に施すこともできる。エンボス基材に所定のパターンが形成されると(ステップ306)、エンボス基材は、製造アセンブリへ送るための供給リールに巻き付けられる。
【0026】
パターンが生成され、エンボス基材が巻き付けられると、エンボス基材は、リールから巻き出され、製造アセンブリへ送られる(ステップ308)。引き続いて、(凹凸108を含んでいる)エンボス基材106は、フィーダ204によってアセンブリ201へ送られる(ステップ308)。
【0027】
両基材(即ち、印刷基材及びエンボス基材)が製造アセンブリへ送られる時、二つの基材は圧着され(ステップ310)、二つの対向側にインクを封じ込め、二つの基材の間にインクが挟まれる。二つの基材は、略同様の進行速度で略同時に製造アセンブリを進行する。すなわち、本実施例において、印刷基材104は、製造アセンブリ201の結合器208によって、エンボス基材106に圧着され (ステップ310)、これによって、インク102は二つの基材の間に挟まれる。両基材が一旦圧着されると、二つの基材は、硬化源210(例えば、紫外線硬化源)を同時に通過し得る。この例において、エンボス基材106上の所定のパターンは、インク102に対向しているため、所定のパターンをインクへ転写される。
【0028】
基材が圧着されると(ステップ310)、放射源が結合された基材に当てられ、印刷基材に塗布されたインクが硬化され得る(ステップ312)。引き続いて、(圧着された)結合基材は、アセンブリ201の硬化源210へ達する。例えば、紫外線硬化源は、紫外線光を発光する。紫外線光は、エンボス基板106を通過し、インク102を硬化する(ステップ312)。硬化プロセス中、エンボス基材106上に含まれる任意のパターン(例えば、凹凸108)がインク102にエンボス加工される。硬化するにつれて(ステップ312)、インク102は、単量体から重合体へ分子変化される。硬化プロセス中(ステップ312)、インクの粒子は、相互接続結合を形成し、これによって、インク102の剛性が高まり、硬化されたインクが得られる。
【0029】
次に、二つの基材が分離され得る(ステップ314)。アセンブリ201において、基材は、引き続き、分離器212へ送られ、基材が分離される(ステップ314)。
【0030】
図3に示されているプロセスは、再び、基材ごとに二つの経路に別れる。印刷基材に対する仕上げ作業が実行され得る(ステップ316)。仕上げ作業としては、印刷基材を適当なラベルの長さにカットすること、シールを形成するために接着剤を塗布すること、及び/または、他の様々な仕上げ作業を行うこと、が挙げられる。
【0031】
エンボス基材が回収され(ステップ318)、再び、ロールに巻き付けられる。エンボス基材の状態や製造者の意向により、エンボス基材は、他の長さの印刷基材をエンボス加工するために、再利用されることがある。
【0032】
上記のプロセス及びアセンブリは、偽造防止及び制御特性を迅速で容易に変更することができる製造環境を提供することに留意されたい。単にエンボス基材のパターンを変更するだけで、新しい偽造防止特性が印刷基材に付与される。これによって、製造者は、偽造者がインクにエンボス加工された元のパターンを再現する方法を発見する間に、製品と一緒に提供される偽造防止特性を迅速に変更することができる。
【0033】
例えば、製薬会社は、上記のプロセスを用いることによって、自社の製品に含むシールにパターンをエンボス加工することもできる。偽造防止のため、毎月(又は任意の所望される周期で)、製造者は、エンボス基材のパターンを変えて、新しい偽造防止特性を有する更新されたシールを製造することができる。更新された偽造防止特性ついての情報を薬局(他のエンドユーザ)に送ることによって、薬局は、純正品に求められる偽造防止特性が何であるかを知っているので、偽造が減少され得る。同様に、偽造防止特性を頻繁に変更することで、複写した偽造防止特性を表示した偽造薬品が市場に出回る前に、本来の製造者が偽造防止特性を変更してしまっているので、偽造者が偽造防止特性を複写する機会は失われることになる。
【0034】
上記に開示された本発明の様々な特徴及び機能及び他の特徴及び機能またはそれらに代わるものが、多数の他の異なるシステムやアプリケーションに組み込まれることが望ましいことが理解されよう。また、特許請求の範囲によって限定される以外、予期できない又は今後発生する可能性ある代替、変更、変形、又は改良が、これ以降も当業者によって継続的に行われうることも理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造防止印刷文書を作成するシステムであって、
印刷基材とエンボス基材を圧着する結合器と、放射源を前記圧着された基材に当てる硬化源と、前記エンボス基材から前記印刷基材を分離する分離器と、を含む硬化ステーションと、
一定量のインクが塗布された前記印刷基材を前記硬化ステーションへ送る第1のフィーダと、
少なくとも一つの凹凸から成る所定の塗布パターンが形成された前記エンボス基材を前記硬化ステーションへ送る第2のフィーダと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記結合器は、前記印刷基材と前記エンボス基材を圧着し、前記塗布されたインクが前記印刷基材と前記エンボス基材の間へ入るように構成され、
前記分離器は、前記エンボス基材から前記印刷基材を分離し、塗布されたインクが前記印刷基材上に残るように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記硬化源は、前記結合された基材に紫外線放射源又は熱放射源を当てるように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記塗布された所定のパターンは、前記エンボス基材にマイクロドット印刷された一連のインク液滴を含む、請求項1に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−52430(P2010−52430A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194554(P2009−194554)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】