説明

偽造防止用紙

【課題】偽造防止が要望される商品券、ギフト券、証明書、チケット、投票券、切符、ラベル等の各種セキュリティ媒体の分野に好適に用いられ、紙基材にスレッド等が施された高度な偽造防止用紙の提供。
【解決手段】基材1に偽造防止用のスレッド2が設けられた偽造防止用紙であって、前記スレッド2が基材1と共に穿孔3により、複数に分断され、且つ穿孔3により分断された個所は、基材1と同等の材料または基材1と異なる材料で穿孔3を塞がれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止が要望される商品券、ギフト券、証明書、チケット、投票券、切符、ラベル等の各種セキュリティ媒体の分野に好適に用いられ、紙基材にスレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)等が施された高度な偽造防止用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種セキュリティ媒体の偽造防止策として、スレッドを施した偽造防止用紙は各種のものが開発されている。まず、紙層内に、スレッドと呼ばれる糸状物を抄き込んだ「スレッド入り紙」は、偽造防止用紙の一形態として、一般的によく知られている。
【0003】
すなわち、スレッドが用紙内部に抄き込まれ、用紙表面に露出しないものである。このスレッドは、周知のように、ベースフィルムの表面に、ホログラム層、金属蒸着層、磁気層、マイクロ文字層、マイクロ画像層、サーモクロミック層、紫外蛍光発色層、干渉色発現層などの偽造防止層を設け、マイクロスリッター加工により製造される。前記スレッド入り紙は、製造に極めて高度な技術を必要とするので偽造防止に大きな効果があり、周知のように各国の紙幣などに多用されている。
【0004】
また、前記スレッドの一部が用紙表面に間欠的に露出した「窓空きスレッド入り紙」と呼ばれるものがある。さらに、該スレッドを接着や転写により、紙基材の1部に設ける手法のものもある。
【0005】
前記「スレッド入り紙」を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に形成され紙層中にスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献1参照。)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献2参照。)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献3参照。)などが提案されている。
【0006】
次に、前記「窓空きスレッド入り紙」を製造する方法としては、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓空き部分にスレッドを抄き込む方法(例えば、特許文献4参照。)や、円網抄紙機を使用して多層抄き合わせ紙を製造する際に、最外層に窓空き部を形成した紙層が位置するようにし、他の紙層は窓空き部を形成しない紙層が位置するようにして抄き合わせ、抄き合わせる際に窓空き部にスレッドが露出するようにスレッドを抄き込む製造方法(例えば、特許文献5参照。)が代表的な製造方法である。
【0007】
前述した中でも、紙基材にスレッドが設けられた偽造防止用紙としては、例えば、紙基材に光輝性スレッド等を抄き込んだタイプの用紙であって、紙基材が光輝性スレッドを間欠的に露出する表出部(ウインドウ)と、該表出部間で光輝性スレッドを間欠的に覆う被覆部とを備えて、スレッドを窓部から表出するようにした偽造防止用紙が知られている。
【0008】
これらの構成の偽造防止用紙は、多筒式抄紙機の1つの抄き網部上に、スレッドと同じ幅かそれより広幅の小さな凸部の上にスレッドを載せた状態で紙料液を供給することによって製造できる。つまり、このようにすれば、凸部のない位置ではスレッドが紙料液の下面側から露出するので表出部が形成される。
【0009】
前記の構成のようなウインドウ付きスレッド用紙においては、光輝性スレッド等が表出部において間欠的に露出しているので、コピーした場合でも金属色が再現されないことから偽造防止ができ、また、偽造品かどうかを見るために用紙の端面を確認する必要がなく、しかも、光輝性スレッド等が紙基材から剥がれてしまうのを防止できる。
【0010】
次に、別の方式としては、例えば、紙基材上に前記光輝性スレッド等を転写することで得られる偽造防止用紙もあり、光輝性スレッド等の有無により真贋判定し、コピーした場合でも金属色が再現されないことから偽造防止できるものである。このようなスレッドを有する偽造防止用紙は、簡単に作製することができないので偽造防止効果があり、金券等の重要な紙製媒体等に使用されている。
【0011】
しかしながら、今日においては、これらの技術も陳腐化が進み、悪意に偽造を行う側の偽造技術のレベルも巧妙になってきていることから、用紙に単にスレッドを設けただけでは、偽造防止効果が少なくなり、セキュリティ上の安全性に問題がある。
【0012】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開昭51−130309号公報
【特許文献2】特開平2−169790号公報
【特許文献3】特公平5−40080号公報
【特許文献4】米国特許第4462866号公報
【特許文献5】特許第2845197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、偽造防止が要望される商品券、ギフト券、証明書、チケット、投票券、切符、ラベル等の各種セキュリティ媒体の分野に好適に用いられ、紙基材にスレッド等が施された高度な偽造防止用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、基材(1)に偽造防止用のスレッド(2)が設けられた偽造防止用紙であって、前記スレッド(2)が基材(1)と共に穿孔(3)により、複数に分断され、且つ穿孔(3)により分断された個所は、基材(1)と同等の材料または基材(1)と異なる材料で穿孔(3)を塞がれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の偽造防止用紙において、前記スレッド(2)が前記基材(1)に抄き込まれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0016】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の偽造防止用紙において、前記スレッド(2)に形成された前記複数の穿孔(3)が目視により認識できる文字、数字、画像、マークの少なくとも1つを表示するパターンとして形成されていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0017】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1又は2記載の偽造防止用紙において、前記スレッド(2)に形成された前記複数の穿孔(3)が基材(1)と異なる材料を用いて塞がれ、触感により認識可能な文字、数字、画像、マークの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0018】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の偽造防止用紙において、前記スレッド(2)がホログラムスレッド、光輝性スレッド、示温スレッド、蛍光スレッド、磁気スレッド、模様または文字入りスレッドから選ばれた同種または2種以上のスレッドの組み合わせからなることを特徴とする偽造防止用紙である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る偽造防止用紙は、基材に偽造防止用のスレッドが設けられた偽造防止用紙であって、前記スレッドが基材と共に穿孔により、複数に分断され、且つ穿孔により分断された個所は、基材と同等の材料または基材と異なる材料で穿孔を塞がれていることにより、不正に偽造品を製造することができず、また、前記スレッドが前記基材に抄き込まれていることにより、スレッドを不正に貼り替えることができなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明するが、特にこれに制約されるものではない。
【0021】
図1は本発明に係る偽造防止用紙の1実施例を示す平面図であり、図2は図1のA−A側断面図であり、図3は図1のB−B側断面図であり、図4は図1のC−C側断面図であり、図5は本発明に係る偽造防止用紙のスレッドの1実施例を示す側断面図であり、図6は図5のスレッドを2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の側断面図である。
【0022】
本発明に係る実施例1の偽造防止用紙は、図1に示すように、基材(1)に偽造防止用のスレッド(2)が設けられた偽造防止用紙であって、前記スレッド(2)が基材(1)と共に穿孔(3)により、複数に分断され、且つ穿孔(3)により分断された個所は、基材(1)と同等の材料または基材(1)と異なる材料で穿孔(3)を塞がれていることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0023】
また、前記スレッド(2)は、抄紙時に基材(1)に抄き込まれるため、基材内で連続的になっていることから、従来のスレッド(2)は当然ながら基材内で連続的である。このためスレッド用紙を抄紙後にスレッド(2)上に穿孔(3)を設け、この穿孔(3)を塞ぐことで不連続なスレッド(2)とすることができる。
【0024】
例えば、特開平10−193900号公報に記載されている技術を使用することで、基材(1)の穿孔(3)を塞ぐことができる。
【0025】
すなわち、水に濡らした濾過シート状部材を漉き枠に嵌め、その上に紗を載せて湿りを付与して皺を伸ばしを行った後、紗の上に穿孔が施された基材を皺の無い状態に重ねて、漉き枠を漉き容器内で揺り動かし、前記穿孔部分を基材と同等の材料で漉き填めして塞ぎ、乾燥させることによって基材の穿孔を塞ぐことができる。
【0026】
この時、基材(1)の紙目と穿孔(3)を塞ぐパルプの紙目を異なる方向とすること、或いは基材(1)と異なるパルプを用いることで触感を変化させることが可能である。さらに、穿孔(3)を塞ぐパルプに染色或いは着色繊維、蛍光繊維等を含ませることで目視による認識が可能である。
【0027】
或いは、図2に示すように、本発明に係わる偽造防止用紙のスレッド(2)に形成された、複数の穿孔(3)は、目視により認識できる文字、数字、画像、マークの少なくとも1つを表示するパターンとして形成されている。
【0028】
もしくは、前記スレッド(2)に形成された前記複数の穿孔(3)は、基材(1)と異なる材料を用いて塞がれ、触感により認識可能な文字、数字、画像、マークの少なくとも1つが設けられている。
【0029】
次に、本発明に使用するスレッド(2)としては、ホログラムスレッド、光輝性スレッド、示温スレッド、蛍光スレッド、磁気スレッド、模様または文字入りスレッドから選ばれた同種または2種以上のスレッドの組み合わせから構成されているものを用いることができる。
【0030】
ここでは、代表的な例を挙げて述べるが、本発明においてはこれらの構成以外のスレッドも使用できることは言うまでもない。
【0031】
このスレッドは、図5に示すように、透明なフィルム基材(10)上に偽造防止層としてマイクロ文字(11)を形成したものである。このスレッドは、フィルム基材(10)が透明であるので、スレッドの表(オモテ)面または裏面のいずれから見てもマイクロ文字は同一に観察される。
【0032】
次に、マイクロ文字を形成する手段について説明する。マイクロ文字の形成手段としては、印刷法とデメタライジング加工が代表例として知られている。
【0033】
印刷法によってマイクロ文字を形成する場合に使用するインキは、バインダー樹脂、着色顔料、白色顔料の他に、硬化剤、流動性改良剤、ブロッキング防止剤、静電防止剤、可塑剤、界面活性剤などの各種の助剤を必要に応じて配合することによって調製する。着色顔料としては、周知の有機または無機着色顔料を用いる。有機顔料としてはフタロシアニン系、アゾ系、アンスラキノン系など、無機顔料としてはカーボンブラック系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、アルミニウムなどの金属粉末など、白色顔料としては前記顔料を使用することができる。
【0034】
または、デメタライジング加工によるマイクロ文字を形成する場合は、公知の方法を用いることができる。例えば、金属アルミニウムを真空蒸着したフィルム基材に耐アルカリ性や耐酸性を有する樹脂インキでマイクロ文字を印刷して樹脂印刷層を形成した後、アルカリ性水溶液や酸性水溶液で印刷部以外のアルミニウムなどの蒸着層を洗い流す方法が用いられる。また、フォトレジストを蒸着層表面に塗布し、マイクロ文字パターンを露光し、レジストを硬化させた後にエッチング処理する方法も用いられる。これらの処理により印刷部または硬化レジスト部にアルミニウムなどの蒸着層を残し、印刷部以外または硬化レジスト部以外の個所ではフィルム基材を露出させる。
【0035】
前記蒸着層に用いられる金属としては、アルミニウムが代表的であるが、この他にスズ、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルトなどの金属の単体や合金を使用できる。マイクロ文字列の少なくとも一部を、たとえばニッケル−コバルトのような磁性体の蒸着膜にすることで、磁気情報に基づく偽造防止手段とすることができる。金属蒸着層の厚さは通常10〜100nmが適切である。
【0036】
以下、本発明に係るスレッドの製造方法をより詳しく説明する。以下の記載において、g/m2、質量%、質量部はいずれも乾燥換算の値を示す。
【0037】
本発明において、フィルム基材としては、セロファン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、液晶ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸エチル、ポリスチレンなどの半合成または合成樹脂フィルムを単層または積層体の形態で使用できる。本発明においては、フィルム基材の代表例として、物理的な強度が大きく、化学的にも安定なポリエステルフィルムが好適に使用できる。
【0038】
フィルム基材は、抄紙機の乾燥ゾーンで融解または軟化せず、90〜110℃で粘着性を帯びないことが好ましい。フィルム基材の厚さは、薄すぎると各種の加工が困難となり、厚すぎるとスレッドを紙層間に抄き込んだ場合に部分的に厚さが増して種々の問題点を引き起こすので、通常5〜25μmとすることが好ましい。
【0039】
フィルム基材は、無彩色で透明なフィルム、有彩色で透明なフィルム、無彩色で半透明なフィルム、有彩色で半透明なフィルム、無彩色で不透明なフィルム、有彩色で不透明なフィルムのいずれをも使用することができる。
【0040】
次に、フィルム基材上に、前述のように印刷法やデメタライジング法によってマイクロ文字を形成後、必要に応じてフィルム基材の一面または両面に接着剤を塗工する。接着剤としては、抄紙機のドライヤーで軟化または溶融して、用紙と強固に接着する性能を有するものを使用する。
【0041】
具体的には、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酸ビニル共重合体樹脂系、ポリビニルアルコール樹脂系などの接着剤を水系または溶剤系の塗料とし、ロールコーターやグラビアコーターなどの塗工機を用いて基材の表面に塗工することにより形成できる。
【0042】
接着剤の塗工量は、通常0.1〜10g/m2である。接着剤には必要に応じて、ブロッキング防止剤、潤滑剤、着色剤、紫外蛍光発色剤などを添加してもよい。スレッドの表裏を判定することが必要な場合には、フィルム基材として紫外線を吸収するフィルムを使用し、接着剤に紫外蛍光発色剤を添加して、一面だけにこの接着剤を塗工したスレッドを製造し、紫外線の照射による発光の有無に基づいてスレッドの表裏を判定する。
【0043】
次いで、マイクロスリッター装置を使用して、常法に従い所定の巾でフィルム基材をスリットすることにより、本発明のスレッドを製造することができる。スレッドの巾は、通常0.5〜10mmである。スレッド上のマイクロ文字は、1列以上の正文字や正模様のパターンが視認できるように形成する。
【0044】
次に、本発明の偽造防止用紙の製造方法の一例を説明する。
【0045】
まず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプを主体とし、ビーターやディスクリファイナーなどを使用して叩解処理し、これに白土、カオリン、珪藻土、ホワイトカーボン(非晶質合成シリカ)、尿素樹脂などの樹脂系填料、タルク、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの各種填料、紙力増強剤、サイズ剤、歩留まり向上剤、消泡剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、定着剤などを適宜併用し紙料を調製する。
【0046】
本発明の偽造防止用紙は、例えば、図5のスレッドを、図6に示すように、2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙である。
【0047】
その製造方法は、従来公知の多層抄き合わせ方法を使用して製造する。例えば、複数の長網抄紙機の組み合わせ、複数の円網抄紙機の組み合わせである。スレッドの紙層間への挿入方法も、従来公知の方法を採用できる。例えば、長網抄紙機のスライス部分における紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながらスレッドを繰り出し、抄紙網に
形成される紙層中にスレッドを抄き込む方法(例えば、前記特許文献1参照。)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へスレッドの挿入装置を設置し、空気流でスレッドと紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(例えば、前記特許文献2参照。)、2層以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを紙層間に送り出し、紙層間にスレッドを抄き込む方法(例えば、前記特許文献3参照。)などを採用できる。もちろん、本発明の偽造防止用紙は、これら以外の方法を採用して製造してもよい。
【0048】
本発明に於いて、抄紙中にサイズプレス装置などを用いて用紙表面にポリアクリルアマイド樹脂、澱粉、ポリビニルアルコールなどを塗工してもよい。必要に応じて、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。用紙の坪量は、通常50〜150g/m2である。
【0049】
以上のようにして、図1に示すように、2層抄き合わせ紙に抄き込んだスレッド(2)を基材(1)と共に穿孔(3)により、複数に分断する。その分断状態を詳細に観察して見ると、まず、該穿孔(3)部分は、図2に示すように、完全に貫通した状態である。また、スレッド(2)の部分は、図3に示すように、基材(1)の層間に存在している状態である。さらに、図1のC−C側断面図を観察してみると、図4に示すように、基材(1)とスレッド(2)とが間欠的に規則正しく複数に分断されている。
【0050】
次に、本発明においては、穿孔(3)により分断された個所は、基材(1)と同等の材料または基材(1)と異なる材料で穿孔(3)を塞がれることにより、不連続なスレッド(2)とすることができる。
【0051】
この際、基材(1)の紙目と穿孔(3)を塞ぐパルプの紙目を異なる方向とすること、或いは基材(1)と異なるパルプを用いることで触感を変化させることが可能である。さらに、穿孔(3)を塞ぐパルプに染色或いは着色繊維、蛍光繊維等を含ませることで目視による認識が可能である。
【0052】
また、前記複数の穿孔(3)を目視により認識できる文字、数字、画像、マークの少なくとも1つを表示するパターンとして形成する。
【0053】
或いは、基材(1)と異なる材料を用いて塞ぎ、触感により認識可能な文字、数字、画像、マークの少なくとも1つを設ける。
【0054】
また、本発明に使用するスレッド(2)としては、ホログラムスレッド、光輝性スレッド、示温スレッド、蛍光スレッド、磁気スレッド、模様または文字入りスレッドから選ばれた同種または2種以上のスレッドの組み合わせから構成されているものを用いる。
【0055】
このようにして、作製された本発明に係る偽造防止用紙は、基材に偽造防止用のスレッドが設けられた偽造防止用紙であって、前記スレッドが基材と共に穿孔により、複数に分断され、且つ穿孔により分断された個所は、基材と同等の材料または基材と異なる材料で穿孔を塞がれていることにより、不正に偽造品を製造することができず、また、前記スレッドが前記基材に抄き込まれていることにより、スレッドを不正に貼り替えることができなくなる。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0057】
<スレッドの製造例>
[製造例1:印刷法によるマイクロ文字入りスレッド]
フィルム基材として厚さ12μmの透明ポリエステルフィルム[東レ(株)製、ルミラー(商品名)]の巻き取りを用意した。このフィルム基材の一面に黒インキを使用してマイクロ文字を印刷した。このマイクロ文字は、「VOID」の正文字と逆文字(フィルムを裏返して見た時に「VOID」の正文字に見える)との繰り返しパターンになっている。マイクロ文字の大きさは2.5ポイント(ポイント数はアメリカ式ポイント数を意味し、1ポイントは約0.35mm)、文字と文字の間隔は0.3mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。フィルムの裏面に、エチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚さで塗工して接着剤層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾2.4mmのスレッドを製造した。
【0058】
[製造例2:デメタライジング加工によるマイクロ文字入りスレッド]
フィルム基材として厚さ12μmの透明ポリエステルフィルム[東レ(株)製、ルミラー(商品名)]の巻き取りを用意した。真空蒸着機を使用して常法に従い、このフィルム基材の片面に金属アルミニウムを80nm(ナノメートル)を蒸着した。この両面に、グラビア印刷機を使用し、青色に着色した耐アルカリ性樹脂インキ[デメタライジング加工用アクリル系樹脂100質量部に青色染料オレオゾールブルー(住友化学工業社製)を20質量部配合したもの]で着色した樹脂印刷層(マイクロ文字印刷層)を形成した。このマイクロ文字は、「VOID」の正文字と逆文字との繰り返しパターンになっている。マイクロ文字の大きさは2.5ポイント、文字と文字の間隔は0.4mm、文字列と文字列の間隔は0.8mmとした。文字列はスレッドの長さ方向に対して18度傾斜して印刷した。常法に従い、水酸化アルミニウム水溶液を使用して、デメタライジング加工を施し、水洗、乾燥してロールに巻き取った。さらに、グラビアコーターを使用して、エチレン−酢酸ビニル系の感熱接着剤を2μmの厚みで片面に塗工して接着剤層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾2.4mmのスレッドを製造した。
【0059】
以下、偽造防止用紙製造の実施例を挙げる。
【0060】
<実施例1>
(2槽型円網抄紙機での用紙の製造例)
この円網抄紙機は、1槽目で先ず、最初の紙層を形成し、2槽目で次の紙層を形成し、1槽目で形成した紙層と抄き合わす構造になっている。
【0061】
(紙料−1の調製)
NBKP25質量部、LBKP75質量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに填料として、ルチル型酸化チタン12質量部と、アクリルアミド系紙力増強剤[荒川化学工業社製、ポリストロン(商品名)]0.4質量部、サイズ剤[荒川化学工業社製、サイズパインE(商品名)]1.0質量部、硫酸バンドを適量加え、紙料を調製した。
【0062】
(紙料−2の調製)
填料を、白土15質量部とした以外は、紙料−1と同一の紙料を調製した。
【0063】
前記2槽式円網抄紙機の第1槽目に前記紙料−1を導入し、坪量50g/m2の紙層を形成した。第2槽目には前記紙料−2を導入し、第2槽目で坪量50g/m2の紙層を形成し、それぞれを抄き合わせた。第1槽目で形成した紙層と第2槽目で形成した紙層を抄き合わす際に常法に従い、前記製造例1で製造したスレッドを抄き込んだ。その後、常法に従い多筒式ドライヤーで乾燥した。なお、1群のドライヤーと2群のドライヤーの間でサイズプレス装置により、紙力増強を目的として変性澱粉水溶液を塗工した。
【0064】
以上のようにして得られた基材からなる偽造防止用紙のスレッド部分を該基材と共に複数個の穿孔を開け、該スレッド部分を複数に分断した後、該穿孔により分断された個所を前記基材の最初の紙層(表面)と同等の材料を用いて該穿孔を塞いで実施例1の偽造防止用紙を製造した。
【0065】
<実施例2>
実施例1において、前記製造例2で製造したスレッドを抄き込んだ以外は、実施例1と同様にして実施例2の偽造防止用紙を製造した。
【0066】
<評価>
実施例1および実施例2で得られた偽造防止用紙を評価した結果、不正に偽造品を製造することができず、また、前記スレッドが前記基材に抄き込まれていることにより、スレッドを不正に貼り替えることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る偽造防止用紙の1実施例を示す平面図である。
【図2】図1のA−A側断面図である。
【図3】図1のB−B側断面図である。
【図4】図1のC−C側断面図である。
【図5】本発明に係る偽造防止用紙のスレッドの1実施例を示す側断面図である。
【図6】図5のスレッドを2層抄き合わせ紙に抄き込んだ偽造防止用紙の側断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1・・・基材
2・・・スレッド
3・・・穿孔
10・・・フィルム基材
11・・・マイクロ文字

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に偽造防止用のスレッドが設けられた偽造防止用紙であって、前記スレッドが基材と共に穿孔により、複数に分断され、且つ穿孔により分断された個所は、基材と同等の材料または基材と異なる材料で穿孔を塞がれていることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】
前記スレッドが前記基材に抄き込まれていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項3】
前記スレッドに形成された前記複数の穿孔が目視により認識できる文字、数字、画像、マークの少なくとも1つを表示するパターンとして形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用紙。
【請求項4】
前記スレッドに形成された前記複数の穿孔が基材と異なる材料を用いて塞がれ、触感により認識可能な文字、数字、画像、マークの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用紙。
【請求項5】
前記スレッドがホログラムスレッド、光輝性スレッド、示温スレッド、蛍光スレッド、磁気スレッド、模様または文字入りスレッドから選ばれた同種または2種以上のスレッドの組み合わせからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の偽造防止用紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−108449(P2009−108449A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283355(P2007−283355)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】