説明

偽造防止用紙

【目的】 カラー複写機によるコピーや画像処理システムによる複製を試みても原稿(本物)とは全く異なった色調の複写物や複製物しか得られない偽造防止用紙。
【構成】 2層以上の紙層で構成され、最外部に位置する紙層が窓開き部を有し、最外部に位置する紙層とその下に位置する紙層の間に真珠光沢を有する帯状物が挿入されており、該帯状物が窓開き部に露出するようにする。この際帯状物が真珠顔料に熱水可溶性のバインダーを混合した塗工液を原紙に塗工したものよりなると帯状物と紙層が強固に接着し印刷時に帯状物が紙層から脱落するようなことは無くなり、また損紙から製紙用繊維の回収が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、偽造防止用紙に関する。より詳しくは、カラー複写機によるコピーや画像処理システムによる複製を試みても原稿(本物)とは全く異なった色調の複写物や複製物しか得られない偽造防止用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】最近の複写機の精度向上は著しく、特に電子写真方式のカラー複写機の普及は各種の有価証券類等の偽造を容易にしており、社会問題化されている。これを防止するため種々の偽造防止手段が考えられているが、その一つに、現在の複写機では光輝性を有するもの、例えば金属色や干渉色を再現することが出来ないことを利用したものがある。
【0003】例えば実開昭58−168754号に提案されているように、基紙上面に、金属色調顕著なアルミ箔などの光輝版を設け、且つ該光輝版表面に文字図柄を施してなる複写機によるコピー不能用紙の提案がある。これをコピーすると、用紙面に施された文字図柄は複写機の光線照射があると箔表面が黒ずんでコピーされるので読みとり不可能となる。この用紙は複写そのものが不可能(複写物の読みとりが出来ない)という長所はあるが、光輝版の用紙に占める面積が大きいために金属色が強調されすぎて違和感があることが欠点である。また用紙の製造工程が複雑となり、必然的にコスト高になること、古紙からの製紙用繊維の回収が困難等の別の問題点もある。
【0004】本発明者らはこれらの問題点を解決することを目的に検討を進めた。本発明者らは発想を転換して、カラー複写機で複写しても元の原稿と異なった色相に複写されるか、あるいは全く複写されなければ本物か否かの判定が出来ることに着目した。
【0005】本発明者らは、まず光輝性に優れた銀色のアルミニウム蒸着ポリエステルフィルムを細片化して、それを紙に抄き込むことを検討した。こうして製造した用紙はカラー複写機では金属光輝感が再現できないので、細片の混在した部分は単に黒色に複写され、偽造防止能があることが判った。しかしながら、このようにして製造した用紙では細片が用紙に強固に密着せず、印刷時に細片の脱落が起こり大きな問題を起こすことが判った。
【0006】本発明者らは上記問題を解決した偽造防止用紙を、特願平5−317396号として提案した。この発明の要旨とするところは、基紙の表面に光輝性を有する細片を基紙の流れ方向に筋状に偏在させた偽造防止用紙において、該細片が抄紙工程において基紙と接着可能な性能を有すことを特徴とする偽造防止用紙である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この偽造防止用紙を製造するには、長網抄紙機や円網抄紙機上の紙匹に細片を筋状に振りかける方法、長網抄紙機のスライス直前または直後の位置で細片入りの紙料や水を巾方向数カ所よりノズルにより筋状に吹き出す方法、プレスロール直前で湿紙に細片を筋状に振りかける方法等で製造する。こうすることで細片は基紙の表面近くに筋状に偏在する。即ち、細片は基紙の表面に露出し、他の一部は表面近くにもぐり込み、表面近くに筋状に偏在するようになる。
【0008】本発明者らはなお検討を進めた結果、真珠光沢を有する細片を使用すると、金属光沢を有する細片を使用した場合と比べて用紙表面に偏在したときに金属特有のぎらぎらした違和感が無く穏やかな真珠光沢を有し、また偽造防止能にも優れるということを見いだした。細片を筋状に振りかける方法では細片が用紙上にある巾を持って分布することは避けられない。例えば10mm巾以下に分布するように製造するには非常な困難を伴う。このことは後に所定事項を用紙表面に印刷する場合にデザイン上の制約を受けることとなる。本発明はこの欠点を解決し他の手段で同様な効果のある偽造防止用紙を開発することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、2層以上の紙層で構成され、最外部に位置する紙層が窓開き部を有し、最外部に位置する紙層とその下に位置する紙層の間に真珠光沢を有する帯状物が挿入されており、該帯状物が窓開き部に露出していることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0010】次に本発明を図面に基づき説明する。図1は本発明の偽造防止用紙の一例の上面図であり、図2はその一部拡大断面図である。1は最外部に位置する紙層であり、これには窓開き部2を有し、最外部に位置する紙層1とその下に位置する紙層3の間に真珠光沢を有する帯状物4が挿入されており、該帯状物が窓開き部に露出している。窓開き部はこの例では小さな長方形であり、この用紙を例えば室内照明の下で見ると用紙表面に真珠光沢を有する長方形のスポットが点々と連なって見える。なお本発明で言う「露出」とは窓開き部全体を帯状物が塞ぐ状態のもの、若しくはその一部を占める状態のものを意味する。
【0011】真珠光沢を有する帯状物の製造方法の例を述べる。
1)合成樹脂フィルムに真珠顔料とバインダーよりなる塗工液を塗工し、その後スリッター等を使用して帯状物を製造する。
2)緻密な不織布、例えばスパンボンデッド不織布等に真珠顔料とバインダーよりなる塗工液を塗工し、その後スリッター等を使用して帯状物を製造する。
3)合成樹脂に真珠顔料を混合し、溶融押出ししてフィルム化する。また溶剤に合成樹脂を溶解しこれに真珠顔料を混合した後にフィルム化する。その後スリッター等を使用して帯状物を製造する。
4)製紙用パルプを主体として抄造した原紙に真珠顔料とバインダーよりなる塗工液を塗工し、その後スリッター等を使用して帯状物を製造する。
【0012】本発明では損紙から製紙用パルプの回収を考慮すると、上記4)の製紙用パルプを主体として製造した原紙に真珠顔料とバインダーよりなる塗工液を塗工し、その後スリッター等を使用して製造した帯状物を使用することが好ましい。この際真珠顔料とバインダーよりなる塗工液を塗工した塗工層の上に透明な樹脂層を用いて表面塗工層を設けることも適宜行うこともできる。
【0013】本発明者らが検討した結果では、原紙抄造の際にポリオレフィン系の合成パルプを併用すると帯状物を製造する際に使用するスリッター刃の耐久性を飛躍的に向上できることを見い出した。本発明者らが詳細に検討を進めたところ、製紙用パルプ98〜70重量部(絶乾重量部、以下同じ)に対してポリオレフィン系の合成パルプを2〜30重量部併用した場合に効果が大きいことが判った。この場合の刃の耐久性はポリオレフィン系の合成パルプを添加しない場合と比較して10〜数十倍に向上する。
【0014】本発明に使用する真珠顔料は、天然パールエッセンスや、雲母粉末、酸化チタン被覆雲母粉末、塩基性炭酸塩、魚鱗箔等公知の真珠顔料がいずれも使用できる。これらの製法等は特公昭35−5367号、特公昭39−28885号、特公昭48−23179号、特公昭47−29569号、特公昭53−47375号、特公昭56−39669号、特公昭58−7674号、特公平1−22873号、特公平4−48812号、特開昭58−174449号、特開昭58−180561号、特開昭58−219226号、特開昭59−78265号、特開昭60−92359号、特開昭62−34962号、特開昭62−285956号、特開平4−227666号、等に記載されている技術がいずれも使用できる。真珠顔料には虹彩色を発するものがあり、見る角度で色相が変化することが特徴である。本発明で用いる真珠顔料はこの虹彩色を発する真珠顔料を用いることが特に好ましい。異なる虹彩色を発する帯状物を複数本使用することでより偽造防止能が高まり、また意匠的な効果が高まるからである。
【0015】バインダーとしては、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合ラテックス等の合成ゴムラテックスやポリアクリル酸エステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン等の合成樹脂エマルジョン、澱粉、カゼイン、ポリビニルアルコール等の天然糊剤若しくは合成糊剤等が使用できる。
【0016】本発明ではバインダーとして冷水には不溶で熱水に可溶なものを使用することが好ましい。このような性質をもつバインダーの好適な例としてはポリビニルアルコールが挙げられる。ポリビニルアルコールは重合度と鹸化度を変化させて合成することが出来、水に対する溶解温度を変化させることができる。このようなバインダーを使用して作製した帯状物は後に詳しく述べるように、抄紙工程のウエットパートでは帯状物からバインダーが殆ど溶出せず、ドライパートの熱により膨潤若しくはその一部が溶出し、その後乾燥されることにより紙層と強固に接着する性質を持つようになる。このことはオフセット印刷を施す用途に用いる場合は好ましい性質となる。即ちオフセット印刷時にブランケットに帯状物や紙層が剥がれ取られるようなことが無くなる。本発明では、冷水に対する耐水性が大きく(水に溶出し難い)紙層に対する接着性も大きいので60〜80℃の熱水に可溶であるバインダーを使用することが特に好ましい。
【0017】塗工液を調製するには通常真珠顔料100重量部に対して、バインダーを80〜300重量部混合する。この際、消泡剤、防腐剤、防黴剤、粘度調整剤等の副資材を本発明を阻害しない程度に適宜混合することもできる。このように調製した塗工液を通常坪量10〜60g/m2(絶乾換算、以下同じ)の原紙に塗工量2〜10g/m2、好ましくは3〜5g/m2で塗工する。原紙は真珠顔料の光輝感を出すためにはなるべく表面平滑性に優れるものが好ましい。耐水強度の優れた白色顔料塗工紙がその一例であるが、本発明者らが検討した結果では、顔料塗工層を設けない紙、例えば上質紙でも本発明の目的は十分達せられることを確認した。原紙は塗工液の浸透を防止するためにサイズ性があることが好ましく、また湿潤耐水強度もあることが好ましい。
【0018】真珠顔料塗工層は公知の塗工機、例えばエアーナイフコーター、ロールコーター等の塗工機やグラビア印刷機、スクリーン印刷機を使用して設ける。塗工は片面若しくは両面に施す。この際異なった虹彩色を発する塗工液を用意し、印刷機を用いてストライプ状に次々と色相が変化するように塗工すると、これから製造した帯状物はその流れ方向で部分的に異なった虹彩色を発するようになる。これを使用して製造した偽造防止用紙はより偽造防止能を高めることができる。またストライプ状ではなく、各種形状のドット塗工層を印刷手段で施したものも偽造防止能がより向上する。
【0019】真珠光沢の強さと紙層との接着強度とは逆相関関係がある。真珠光沢を強くするには真珠顔料の比率を大きくすればよいが、そうするとバインダーの比率が必然的に小さくなり紙層への接着強度が弱くなる。本発明者らはこの相反する性能を同時に高める方法について検討した結果次の結論を得た。即ち真珠光沢をより向上しかつ紙層との接着性をより向上するには、真珠顔料85〜50重量部、冷水には不溶で熱水に可溶なバインダー15〜50重量部を主体としてなる真珠顔料塗工層を設け、さらにその上に冷水には不溶で熱水に可溶なバインダーよりなる表面塗工層を設ける。このバインダーとしては冷水に対する耐水性が大きく紙層に対する接着性も大きいので60〜80℃の熱水に可溶であるバインダーを使用することが特に好ましく、ポリビニルアルコールがその好適な例である。
【0020】本発明では真珠顔料を塗工する原紙には紫外線で蛍光色を発する蛍光発色剤を併用することもできる。また真珠顔料塗工液に紫外線で蛍光色を発する蛍光発色剤を併用することもできる。これらの場合には基紙は蛍光色を発する蛍光発色剤を併用しないことが好ましい。このようにすることで、帯状物は紫外線を照射すると蛍光色を発するようになるが、普通の光源下で見た場合は、蛍光発色剤を併用しないときと外観はほとんど変わらない。こうすることで用紙の偽造防止性能をより高めることができる。用紙に紫外線を照射することで帯状物は蛍光色を発し真贋を容易に判定できる。
【0021】蛍光発色剤としては、フルオレッセイン、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、スピロピラン系、ピレンスルホン酸系、ベンゾイミダゾール系、ジアミノスチルベン系等の蛍光染料や硫化亜鉛/銅活性顔料等の硫化物系や酸化物系の無機蛍光剤等をいずれも利用できる。
【0022】このようにして製造した真珠顔料塗工紙をマイクロスリッターを使用して、通常は巾1〜15mm、好ましくは3〜5mmの巾でスリットし帯状物を作製しボビンに巻き取る。
【0023】次に本発明の偽造防止用紙の製造方法の一例について説明する。本発明の偽造防止用紙は、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の製紙用パルプを主体としこれに乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤などを適宜併用し、通常フリーネス550〜250mlC.S.F.で2層以上の抄合わせの出来る多槽円網抄紙機を使用して抄紙する。
【0024】例えば2槽構造の円網抄紙機の1槽目では円網シリンダーの上網に用紙の窓開き部に相当する部分の網目を塞ぐ細工を施す。この細工は例えば上網に樹脂を部分的に塗工したり、所定の形状の樹脂板を貼合したり、金属板を貼合する等で行う。2槽目では何等の細工を施さない円網シリンダー上網を使用する。1槽目で形成した紙層(湿紙)を毛布に転写し、これに2槽目で形成した紙層を重ね抄き合わせる。この時1槽目で形成した紙層と2槽目で形成した紙層の間に帯状物を繰り出して挿入するが、この際窓開き部に帯状物が繰り出されるようにすることが必要である。本発明では用紙製造には円網抄紙機と長網抄紙機若しくは短網抄紙機の組み合わせも採用できる。本発明ではさらに、抄紙途上で紙面に澱粉、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ等をサイズプレス装置等で塗工することも可能である。
【0025】このようにして形成した紙匹は、シリンダードライヤーやヤンキードライヤー等の抄紙機の乾燥ゾーンで熱を与えられて乾燥される。乾燥初期には紙匹には多量の水分が含まれているので帯状物の塗工層に熱水可溶性のバインダーを使用したものはバインダーは膨潤またはそのごく一部が溶解し乾燥ゾーンで乾燥されることにより紙層と強固に接着する。ついで用紙に表面平滑性を付与するために、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を適宜行い本発明の偽造防止用紙は製造される。
【0026】帯状物は同一の色相でも異なった色相のものを数種類併用してもよく、また同一色相でトーンを変化させた帯状物を挿入してもよい。窓開き部にこれら帯状物の複数本を隣り合わせて同時に挿入したり、異なった位置に設けた窓開き部に挿入することも自由にできる。また窓開き部の巾より広い帯状物を挿入することや、窓開き部の巾より狭い巾で帯状物を挿入することも自由にできる。
【0027】本発明では窓開き部に相当する箇所は製紙用繊維の量が少なく、このため窓開き部の巾が帯状物の巾より広い場合は、用紙を透かして見た時はその箇所は周囲と比較して明るく見える。この効果はいわゆる「白透かし」の効果と同様であり、本発明ではこれを積極的に利用して偽造防止効果をより高めることができる。このことは印刷手段で例えば図3に示すように模様で形成した窓開き部2(この例では獅子の図柄)に帯状物4を挿入する例である。模様の代わりに文字を形成しても同様の効果が得られる。
【0028】本発明では最外部に位置する紙層が窓開き部で、その下に位置する紙層の間に真珠光沢を有する帯状物を挿入するが、円網3槽抄紙機を使用することで図4R>4に示す断面構造の偽造防止用紙を製造できる。この例は用紙の表面及び裏面に形成された窓開き部に帯状物が露出した例である。
【0029】また図5に示したように窓開き部を連続的に設けることで帯状物が1本の帯となって見える偽造防止用紙も製造することができる。
【0030】以上述べたような方法で本発明の偽造防止用紙は製造される。その後所定の印刷を施し証券類等が製造される。印刷は真珠光沢のある帯状物の部分には施さないデザインを採用することが好ましいが、帯状物の部分にインクが乗っても真珠光沢は認められる。インクが乗らない場合と比較して帯状物の存在が確認しにくくなるだけである。このようにして製造した証券類の偽造をカラーコピー機を用いて試みても帯状物の真珠光沢は再現されず、また複写物は光線に透かして見た場合周囲に比べて暗く見える帯状物の存在が無いので本物か否かの確認が直ちに出来る。
【0031】細片の例で書いたが再検討の要あり。
【実施例】
帯状物の製造例1針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20重量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)80重量部を350mlC・S.F.に叩解し、これに紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」荒川化学工業(株)製)1.0重量部、硫酸バンドを適量加え紙料を調製し、長網抄紙機を使用して坪量35g/m2の原紙を抄造した。この原紙の両面に、赤色の虹彩色を発する真珠顔料(商品名「マリーン・ラスター・ピグメンツ、ハイライト・スーパーレッド9430Z」、マール・コーポレーション製造)85重量部、熱水可溶温度60℃のPVA(クラレ(株)製造)15重量部より成る濃度20重量%の水性塗料を、エアナイフコーターを使用して片面当たり2g/m2ずつ塗工し、真珠顔料塗工層た。さらに、PVA(同)の7重量%水溶液より成る塗料をエアナイフコーターを使用して両面に、片面当たり2g/m2ずつ塗工し表面塗工層を形成した。次いで、マイクロスリッターを使用して巾3mmの帯状物を製造しボビンに巻きとった。
【0032】帯状物の製造例2真珠顔料塗工層用の塗料を真珠顔料50重量部、PVA50重量部とし、塗工量を5g/m2、表面塗工層の塗工量を5g/m2とした以外は製造例1と同一の帯状物を製造した。
【0033】帯状物の製造例3原紙に使用するパルプをNBKP19重量部、LBKP79重量部、ポリエチレン系の合成パルプ(商品名「SWP」、三井石油化学工業(株)製造)2重量部とし、真珠顔料塗工層の塗工量を5g/m2、表面塗工層の塗工量を5g/m2とした以外は製造例1と同一の帯状物を製造した。
【0034】帯状物の製造例4原紙に使用するパルプをNBKP20重量部、LBKP40重量部、ポリエチレン系の合成パルプ(同)40重量部とし、真珠顔料塗工層の塗工量を2g/m2とした以外は製造例2と同一の帯状物を製造した。
【0035】帯状物の製造例5表面塗工層を設けない以外は製造例4と同一の帯状物を製造した。
【0036】実施例1偽造防止用紙の製造NBKP20重量部、LBKP80重量部を350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10重量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製)1.0重量部、硫酸バンドを適量加え紙料を調製した。この紙料を用い円網2槽抄紙機を用いて偽造防止用紙を製造した。1槽目に位置する円網シリンダーに取り付ける抄紙網には巾5mm長さ20mmの長方形の樹脂板を接着剤を使用して15mm間隔に流れ方向に長方形の短辺が平行になるように連続的に貼付けた、また2槽目に位置する抄紙網は何等細工の無いプレーンな網を使用した。1槽目では坪量40g/m2の紙層を形成させた。この際長方形の樹脂板を貼合した部分は紙層が形成されず窓開きの状態となった。フェルトに転写させた1槽目の湿紙が2槽目の抄紙網から形成された坪量60g/m2の紙層と重ね合わされる直前に製造例1の帯状物を窓開き部の中間に入るように挿入した。次いで常法に従い脱水、乾燥工程を経て偽造防止用紙を製造した。
【0037】実施例2製造例2の帯状物を用いた他は実施例1と同様の偽造防止用紙を製造した。
【0038】実施例3製造例3の帯状物を用いた他は実施例1と同様の偽造防止用紙を製造した。
【0039】実施例4製造例4の帯状物を用いた他は実施例1と同様の偽造防止用紙を製造した。
【0040】実施例5製造例5の帯状物を用いた他は実施例1と同様の偽造防止用紙を製造した。
【0041】実施例の評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】


【0043】評価は以下に述べる方法で行った。結果は5点法で評価し、5点が最も優れていることを、1点が最も劣っていることを示し、3点以上が実用的に使用可能なことを示す。
1)真珠顔料塗工層強度:抄造後の用紙をオフセット印刷機にかけ、帯状物が真珠顔料塗工層間で剥がれ、ブランケットにとられる量で評価した。
2)刃の耐久性:マイクロスリッターで帯状物を製造した場合の刃の耐久性で評価した。
3)光輝性:窓開き部に露出した帯状物の光輝性を目視により評価した。
4)紙層との接着強度:抄造後の用紙をオフセット印刷機にかけ、帯状物及び帯状物の上に位置する紙層がブランケットにとられる割合で評価した。
【0044】また、高濃度パルパーに実施例用紙5重量部、水95重量部、カセイソーダ0.1重量部を仕込み、生蒸気を吹き込みながら回転させ、温度60℃に上昇させたところ、用紙と帯状物は容易に離解し、製紙用パルプの回収を容易に行うことができた。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように本発明の偽造防止用紙は製造され、下記に述べるような顕著な利点を有する。
1)帯状物は光輝性に優れ、しかもおだやかな真珠光沢感であるので用紙に違和感を与えないという長所を有しており、意匠性にも優れている。
2)カラー複写機で複写を試みても、また画像処理を利用してカラープリンターで複製を試みても帯状物の光輝性は再現できず、また複写物や複製物は光線に透かして見た場合周囲に比べて暗く見える帯状物の存在が無いので本物か否かの確認が直ちに出来る。
3)真珠顔料に熱水可溶性のバインダーを混合した塗工液を原紙に塗工して製造した帯状物を使用すると、帯状物は抄紙工程で紙層と強固に接着するため、例えばオフセット印刷時にブランケットに帯状物や紙層が剥がれ取られることが無くなる。
4)塗工層を2層構造、即ち真珠顔料塗工層とバインダー層の構成にしたものは、光輝性と接着性という相反する性能を同時に向上できる。
5)帯状物を製造する原紙にポリオレフィン系の合成パルプを併用することでスリッターの刃の耐久性を向上した帯状物を製造できる。
6)製紙用繊維を主体とした原紙を用いた帯状物を使用した場合は用紙の損紙や古紙から製紙用繊維の回収を容易に行うことが出来る。
7)このような特性を生かし、本発明の偽造防止用紙は、小切手、株券、債券、紙幣、商品券、パスポート、各種チケット、乗車券などの偽造防止の用途、またポスター、パンフレット、グリーティングカード、封筒用紙、ラベルなどの意匠性を要求される用途に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偽造防止用紙の一例の上面図である。
【図2】図1に示した偽造防止用紙の一部拡大断面図である。
【図3】本発明の偽造防止用紙の他の例の上面図である。
【図4】本発明の偽造防止用紙の他の例の一部拡大断面図である。
【図5】本発明の偽造防止用紙の他の例の上面図である。
【符号の説明】
1 最外部に位置する紙層
2 窓開き部
3 最外部に位置する紙層の下に位置する紙層
4 真珠光沢を有する帯状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2層以上の紙層で構成され、最外部に位置する紙層が窓開き部を有し、最外部に位置する紙層とその下に位置する紙層の間に真珠光沢を有する帯状物が挿入されており、該帯状物が窓開き部に露出していることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】 帯状物が真珠顔料に冷水には不溶で熱水に可溶のバインダーを混合した塗工液を原紙に塗工したものよりなることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項3】 真珠顔料が虹彩色を発する真珠顔料であることを特徴とする請求項2記載の偽造防止用紙。
【請求項4】 原紙の両面に、真珠顔料85〜50重量部、冷水には不溶で熱水に可溶なバインダー15〜50重量部を主体としてなる真珠顔料塗工層を設け、さらにその上に冷水には不溶で熱水に可溶なバインダーよりなる表面塗工層を設けた帯状物であることを特徴とする請求項2又は3記載の偽造防止用紙。
【請求項5】 バインダーが冷水には不溶で、かつ熱水溶解温度が60〜80℃であることを特徴とする請求項4記載の偽造防止用紙。
【請求項6】 バインダーがポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項4又は5記載の偽造防止用紙。
【請求項7】 原紙を構成するパルプが製紙用パルプ98〜70重量部、ポリオレフィン系の合成パルプ2〜30重量部であることを特徴とする請求項2記載の偽造防止用紙。
【請求項8】 流れ方向で部分的に異なった虹彩色の真珠光沢を発する塗工層を設けた帯状物を挿入したことを特徴とする請求項3記載の偽造防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平8−311800
【公開日】平成8年(1996)11月26日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−141160
【出願日】平成7年(1995)5月16日
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)