説明

偽造防止用紙

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スレッドが間欠的に用紙の表面に露出した、いわゆる「窓開きスレッド入り紙」タイプの偽造防止用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】紙層内に糸状物を挿入した「糸入り紙」と呼ばれる偽造防止用紙はよく知られている。この糸状物の代表的な例としては後に詳しく述べるようにスレッドがある。これらを抄き込んだ用紙は製造に極めて高度な技術を必要とするので偽造防止に大きな効果があり、周知のように各国の紙幣等に多く使用されている。
【0003】糸入り紙には大きく分けて2種類ある。一つは糸状物が用紙内部に挿入され、用紙表面に露出しない種類のものであり、もう一つは糸状物の一部が用紙表面に露出した「窓開き糸入り紙」と呼ばれるものである。
【0004】前者の用紙を製造する方法としては、長網抄紙機のスライス部分の紙料の流れの中にノズルを入れ、ノズルに水を流しながら糸状物を繰り出し、抄紙網に形成される紙匹中に糸状物を抄き込む方法(特開昭51−130309号)、長網抄紙機のフローボックスから流出する紙料へ糸状物の挿入装置を設置し、空気流で糸状物と紙料を非接触状態としながらスレッドを抄き込む方法(特開平2−169790号)、2槽以上を有した円網抄紙機を使用し、2層以上の抄き合わせで、内壁に凹凸を設けた送管を使用して糸状物を紙層間に送り出し、紙層間に糸状物を抄き込む方法(特公平5−40080号)等が提案されている。
【0005】後者の「窓開き糸入り紙」を製造する方法としては、ワイヤ上の紙料懸濁液に、凹凸部を有するガイドの凸部先端に糸状物を通した溝を有するベルト機構を埋没して製造する方法(特公平5−85680号)や、凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓開き部分に糸状物を抄き込む方法(米国特許第4462866号)や、長網抄紙機のワイヤ上の回転ドラム内に圧縮空気ノズルを内蔵させ、予め紙匹に挿入した糸状物上のスラリーを圧縮空気で間欠的に吹き飛ばして糸状物を露出させる方法(特開平6−272200号)等が提案されている。
【0006】糸状物としてスレッドを使用した「窓開きスレッド入り紙」は、用紙の流れ方向に間欠的に形成した窓開き部でスレッドが露出していることが特徴である。従って、表面に接着剤を塗工していないスレッドを使用して製造した用紙では、スレッドの露出部を爪等でこするとスレッドが簡単に剥がれてしまったり、印刷時にスレッドが浮き上がったりするので致命的な欠点となる。このため表裏両面に感熱接着剤を塗工したスレッドを使用して窓開きスレッド入り紙を抄紙し、抄紙機の乾燥ゾーンでこの用紙を乾燥する際にスレッドに塗工されている感熱接着剤を溶融若しくは軟化することによって、用紙を構成するセルロース繊維とスレッドとを確実に接着させ、剥離強度を高める対策がとられている。スレッドの両面に感熱接着剤を塗工するのは、スレッドのどちらの面が用紙に挿入されても良好な接着力が得られるようにするためである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スレッドの両面に感熱接着剤を塗工すると、用紙の窓開き部で露出するスレッドの面は抄紙機の乾燥ゾーン途中でシリンダードライヤー、キャンバス、タッチロール等に必然的に接触することになり、感熱接着剤が熱によって溶融若しくは軟化し、シリンダードライヤー等の表面を汚染する問題を引き起こす。またシリンダードライヤー等に接触することにより、窓開き部で露出しているスレッド面に塗工された感熱接着剤の平滑性が失われて、後に述べるように金属蒸着層を有するタイプのスレッドにおいては光輝性が著しく低下する問題を引き起こす。また金属蒸着層を有するスレッドが窓開き部で露出した場合、金属蒸着層の上に塗工された感熱接着剤が部分的に除去されることで金属蒸着層が腐食されやすくなる問題を引き起こす。
【0008】また両面に感熱接着剤を塗工したスレッドを製造するには、両面に感熱接着剤を塗工した原反となるフィルムをマイクロスリッターでスリットする方法が採用されるが、通常の塗工機を使用した場合にはフィルムの両面に感熱接着剤を塗工することは困難となる。すなわち、最初にフィルムの一方の面に塗工した感熱接着剤が2回目に他方の面に感熱接着剤を塗工する際に溶融してタッチロールに付着してしまうからである。そのため、溶融温度の異なる種類の感熱接着剤を選択する必要があり、あるいはフローティング乾燥方式を使用するなどの面倒な対策が必要となる。
【0009】本発明者らは上記の問題点を解消するために鋭意検討し、先ず最初に、感熱接着剤を片面のみに塗工したスレッドを製造し、感熱接着剤を塗工していないスレッド面(スレッド表面)が用紙の窓開き部で露出し、感熱接着剤を塗工したスレッド面(スレッド裏面)が用紙に接するように、用紙の抄紙時にスレッドを挿入することを試みた。しかしこの方法では、スレッドの表裏面が見た目では差が無いので、抄紙時のスレッド挿入に際して表裏面が正しい状態で挿入されたか否かを目視その他で判断することは非常に困難であった。得られた用紙を抄紙機の巻取り部でサンプリングし、用紙の窓開き部で露出しているスレッドと用紙との剥離力を測定して、スレッドが正常に挿入されたか否かを判定する方法も考えられるが、かような判定方法ではスレッドの挿入異常が判定された時点ではかなりの長さの用紙が抄造されることになるため歩留りが非常に低下し、特に用紙の巾方向にスレッドを何本も挿入した用紙を抄造する場合にはこうした歩留りの低下は極めて大きな問題となる。
【0010】そこで本発明は、片面のみに感熱接着剤を塗工したスレッドを用いても、その表裏面を容易かつ迅速に識別でき、抄造に際してスレッドの表裏面が正しく挿入されていない場合にはこれを直ちに判定し正しい挿入状態に戻すことができるようなスレッドを抄き込んだ偽造防止用紙を提供することを課題とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、裏面のみに感熱接着剤を塗工したスレッドについてさらに検討を進めた結果、スレッドの表裏面の色を異ならせることで上記課題を解決できることを見いだし本発明を完成させた。
【0012】すなわち本発明は、用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している偽造防止用紙において、前記スレッドは(a) 積層構造を有し、(b) 前記積層構造の一つの層は実質的に光の不透過層であり、(c) スレッド表面は抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しない層からなり、(d) スレッド裏面は表面と異なる色に見える感熱接着剤層からなり、(e) スレッド表面が前記窓開き部に露出していることを特徴とするものである。
【0013】本発明の偽造防止用紙においては、窓開き部に露出するスレッド表面は抄紙機の乾燥ゾーンで溶融もしくは軟化しない層からなり、感熱接着剤が塗工されていないため、乾燥ゾーンのシリンダードライヤー、キャンバス、タッチロール等に接触しても、これら装置の表面を汚染する危険はない。
【0014】またスレッドの裏面は、表面と異なる色に見える感熱接着剤層から構成されているため、抄紙機の乾燥ゾーンの温度で感熱接着剤が溶融もしくは軟化して用紙と強固に接着するとともに、抄造時にスレッドを挿入する際に表裏面が逆に挿入されてしまった場合でも、直ちにこの異常を色によって識別でき、迅速にスレッドを反転させて正常な挿入状態にもどすことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の偽造防止用紙の一般的な構成を、2層抄合わせ紙からなる偽造防止用紙を用いた商品券の例を示す図1、およびその部分拡大断面図である図2を参照して説明する。図示した偽造防止用紙は、最外層の紙層2と最外層以外の紙層3の2層から構成されており、最外層の紙層2には用紙の縦方向(抄紙時の紙層の流れ方向)に間欠的に窓開き部1が設けられている。最外層の紙層2とこれに接する紙層3との間にスレッド4が挿入されていて、このスレッド4が窓開き部1の部分で露出している。なお必要に応じて、窓開き部1の中に文字若しくは画像からなるすき入れを施してもよく、スレッドの抄き込みと文字若しくは画像のすき入れの両方を施すことによって偽造防止能をより一層高めることができる。
【0016】次に、本発明で使用される片面のみに感熱接着剤を塗工したスレッドの特性およびその挿入方法を理解するために、偽造防止用紙の製造方法を具体例を挙げて説明する。先ず、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファィトパルプ(NBSP)等の木材パルプや麻、綿、藁を原料とした非木材パルプ等を適宜混合して叩解し、これに填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤などを適宜添加し、通常フリーネス400〜250mlC.S.F.に調整した紙料を調製する。
【0017】2層以上の抄合わせにより偽造防止用紙を製造するに際しては、従来から一般に抄合わせ紙の製造に使用されている多槽式円網抄紙機が使用できる。図3は2層の紙層2,3(図2)からなる抄合わせ紙を製造するための2槽式円網抄紙機の例を示しており、窓開き部1のない最外層以外の紙層3を形成するための第1の槽( 最終槽より前の槽)11と、窓開き部1を有する最外層の紙層2を形成するための第2の槽(最終槽)12とを備えている。
【0018】槽12の円網シリンダー12aの上網12bには、図4に示したように、金属、樹脂、紙等で作った窓開き部1に相当する型13を、金属細線で取り付けたり、ハンダ付けしたり、接着剤で貼り付ける。窓開き部に相当する型13の形状は図示の例では長方形であるが、それ以外にも例えば正方形、円、楕円、等の任意の形状とすることができる。
【0019】最外層の紙層2を形成する槽12の円網シリンダーの上網12bに図4に示したような型13を取り付けるに際しては、矢印Wで示した紙層の流れ方向(用紙の縦方向)における窓開き部1に相当する長さXと、窓開き部と窓開き部の間に位置する非窓開き部5(図1)に相当する長さYとの比率を3:1〜1:2となるような間隔で型13を間欠的に取り付けることが望ましい。窓開き部1の比率をこの範囲とすることにより、用紙を連続的にロール状に巻き取る際の皺発生防止効果が確実になされるだけでなく、用紙表面のデザイン上も好ましいものとなる。
【0020】図3の円網抄紙機の槽11の円網シリンダー11aには何等細工を施さない上網を装着する。何等細工を施さない上網を装着した円網シリンダー11aで抄紙した紙層3は毛布14に転移され、槽12の型13を取り付けた円網シリンダー12aの上に運ばれ、この円網シリンダー12aで抄紙された最外層の紙層2がその上に重ねられ、2つの紙層が抄合わされた用紙が抄造される。スレッド4の挿入は、紙層3と紙層2とが重ねられる直前の矢印Vの箇所で行なわれる。スレッド4の抄き込み方法としては、前述の特公平5−40080号で本願と同じ出願人が提案しているような、内壁に凹凸を設けた送管を使用してスレッドを送り込む方法、あるいは米国特許第4462866号で提案されている方法のように凹凸状に加工した網を円網抄紙機の上網に使用し、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら挿入して窓開き部分にスレッドを抄き込む方法等が採用できる。なお、円網シリンダー12aに取り付けた型13は図3では所々に図示して簡略化してあるが、実際には円網シリンダー12aの全周に間欠的に取り付けられている。
【0021】上述した2層抄合わせ方法により図1および図2に示した構成の偽造防止用紙が製造できる。すなわち、型13を取り付けた円網シリンダー12aで抄紙された最外層の紙層2には型13に相当する部分に紙料の乗らない窓開き部1が形成される。スレッド4を窓開き部1の中に入るように紙層2と3の間に挿入することにより、窓開き部1ではスレッド4が露出し、非窓開き部5では紙層2と3の間にスレッドが埋没した状態となる。
【0022】本発明の偽造防止用紙は上述したごとき多槽式円網抄紙機を用いる抄合わせ方法の他に、例えば図5R>5に示したような長網抄紙機を使用して製造することもがきる。すなわち、矢印W方向に移動している長網抄紙機の抄紙網20上の湿紙21に対して、部分的に紙層を薄くした窓開き部1を形成しかつスレッド4を挿入するために、窓開き部1に相当する形状を有する複数の型23を周面に取り付けたダンディロール22を抄紙網20上の湿紙21に接触させて、湿紙を押圧しながら回転させる。ダンディロール22は適当な駆動装置で矢印方向に回転するように駆動される。抄紙網上の湿紙21の表面がダンディロール22により押圧されると、型23に相当する部分では湿紙の繊維が押し退けられる結果、薄い紙層の窓開き部1が形成される。この際、型23の中央部に供給されて湿紙21内に挿入されるスレッド4は、窓開き部1の部分で露出する。また隣り合う型23と型23との間にも繊維が移動し、移動した繊維がスレッド4の表面を覆うことで非窓開き部5(図1)が形成される。なおダンディロール22の上網に型23を取り付ける代わりに、上網自体に型出し法等により窓開き部1に相当する形状の凸部を形成してもよい。
【0023】本発明の偽造防止用紙は、上記した以外の種々の方法により製造することもできる。例えば「窓開き糸入り紙」の製造方法として従来技術で紹介した特公平5−85680号で提案されているように、凹凸部を有するガイドの凸部先端に溝を設け、この溝にスレッドを通した状態で、ガイドを長網抄紙機のワイヤー上の紙料懸濁液中に埋設させ、紙料懸濁液の水分がワイヤーから下方に脱水されて紙層がほとんど形成されたところでガイドを上方に移動させることによって、ガイドの凸部先端に接していた部分でスレッドが露出している窓開き部を形成する方法、特開平6−272200号で提案されているように、長網抄紙機のワイヤー上に、圧縮空気ノズルを内蔵した回転ドラムを設置し、内部にスレッドが挿入されているワイヤー上の湿紙に、回転ドラム内の圧縮空気ノズルから圧縮空気を間欠的に吹き付けてスレッド上のスラリーを吹き飛ばすことによって、スレッドが露出した窓開き部を間欠的に形成する方法、米国特許第4462866号で提案されているように、表面の一部が凹凸状に加工された網を円網抄紙機の上網に使用し、紙料懸濁液の入った槽内で網を回転させる際に、スレッドを網表面の凹凸部に接触させながら抄き込むことによって、網表面の凸部に接していたスレッドを窓開き部に露出させる方法、等を採用することができる。
【0024】本発明の偽造防止用紙を製造するに際しては、抄紙途上で紙面に澱粉、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ等をサイズプレス装置等で塗工することも可能である。さらに必要に応じ、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行うことができる。
【0025】本発明の偽造防止用紙において使用するスレッド4は、セロファン、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム等の各種フィルムや薄葉紙を原反として使用し、その表裏面に種々の加工を施して感熱接着剤塗工層、金属蒸着層、各種樹脂塗工層、磁気塗料塗工層、図柄や微小文字の印刷層等を設けた後、マイクロスリッターを用いて通常0.3〜数mmの細巾にスリットすることにより得られる。原反としての各種フィルムや薄葉紙は通常10〜50g/m2 のものが使用できる。かくして得られるスレッドは積層構造を有しており、特に本発明で用いるスレッドはその表面(窓開き部に露出している露出面)が抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しない層からなっており、スレッド裏面(前記露出面の裏側で用紙と接している面)は感熱接着剤塗工層からなっていることが必要である。かような積層構造を有するスレッドを、その表面が用紙の窓開き部で露出するように制御して抄紙工程で挿入することにより、抄紙機の乾燥ゾーンの熱でスレッド裏面の感熱接着剤層は溶融若しくは軟化して用紙を構成するセルロース繊維との接着が確実になされ、窓開き部で露出するスレッド部分の剥がれを確実に防止することができるとともに、窓開き部で露出するスレッド表面は、抄紙機の乾燥ゾーンでシリンダードライヤー、キャンバス、タッチロール等と接触しても、感熱接着剤を塗工していないから熱により溶融若しくは軟化することがなく、シリンダードライヤー等を汚染する心配がない。スレッド表面の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しない層は、通常は90℃〜110℃の乾燥ゾーンの温度で粘着性を帯びない性質を有することが必要であり、例えば原反として使用する上述したような各種フィルムの面をそのまま露出させてもよく、あるいは熱硬化性樹脂の塗工層を原反のフィルム表面に設けてもよい。
【0026】スレッド裏面の感熱接着剤層は、アイオノマー樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリ酢酸ビニル樹脂系、ポリ塩化ビニル樹脂系、ポリアクリル酸エステル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂系等の公知の感熱接着剤を水系若しくは溶剤系の塗料とし、エアナイフコーターやグラビアコーター等の慣用的な塗工機を用いて原反となる各種フィルムの裏面に塗工することにより形成できる。その塗工量は通常0.5〜10g/m2 とする。
【0027】本発明においては、スレッド裏面の感熱接着剤層はスレッド表面と異なる色に見えることが必要であり、これによって、抄紙過程でのスレッドの挿入状態が、用紙の窓開き部でスレッド表面が露出されるように正しく挿入されているか否かを確実にかつ迅速に判断することができる。スレッドの表裏が正しく挿入されているか否かの識別は、抄紙途中でスレッドが挿入された後、窓開き部に露出した直後にスレッド露出面の色を検出することにより行うことができるから、損紙の発生を最少限に抑えることが可能となる。スレッドの色の判定は、目視や、CCDを使用した撮像等により自動的に行うことができ、自動的に色の検出を行う場合には同時に警報を発するようにすることも可能である。
【0028】色の判定結果によりスレッド裏面が露出していた場合には、スレッド表面が露出するようにスレッド挿入状態を直ちに反転させる必要がある。スレッド挿入状態を反転させる方法としては、スレッド挿入箇所においてスレッドを切断したのち、スレッドを反転させて再び挿入する手動的方法や、スレッド挿入装置にスレッド反転機能をもたせて機械的に行う方法が考えられる。機械的にスレッドを反転させる場合には、窓開き部でのスレッドの色の判定結果と連動させれば、自動的にスレッドを反転させることもできる。
【0029】スレッドの裏面を表面と異なる色に見えるようにするには、スレッドを製造するため用いる原反の各種フィルムそのものの色が裏面から見えるようにして表面とは異なる色にする方法、染料や顔料等の着色剤を添加した感熱接着剤を塗工する方法、実質的に光の不透過である層に接する面の色相を異ならせる方法、感熱接着剤塗工層をブラッシングして白くする方法、等の種々の方法を採用することができる。
【0030】感熱接着剤に添加する着色剤としては、可視光線の波長域で着色して見える着色剤だけでなく、可視光線では無色若しくは淡色であり、紫外線あるいは赤外線の照射で発色する着色剤も使用できる。着色剤の色は有彩色だけでなく無彩色でもよい。本発明では紫外線の照射で発色する染料が着色剤として好ましく使用でき、偽造防止効果の観点からは、白色光の照射では無色であり、紫外線の照射で発色する染料が特に好ましく使用できる。
【0031】本発明で用いるスレッドは、その積層構造の一つの層が実質的に光の不透過層であることが必要である。実質的に光の不透過層とは、光を透過しないか、ごくくわずかしか透過しない層を意味する。かような層を設けることによって、スレッドの両面からの透過光による色の混じり合いを阻止することができ、スレッドの表裏面での色の相違を確実に判断することができる。実質的な光の不透過層としては、原反として使用する各種フィルムや薄葉紙にアルミニウム、スズ、コバルト、ニッケル等の金属を真空蒸着した層、酸化鉄等の磁気粉体とバインダーを主成分とする磁気塗料を塗工した層、カーボンブラック等のように濃色の着色剤とバインダーを主成分とする塗料を塗工した層等を用いることができ、原反として使用する各種フィルムそのものに着色剤や填料を混入した不透明フィルム等を実質的な光の不透過層として用いることもできる。
【0032】次に本発明で使用するスレッドの製造例を述べる。これらの製造例における塗工量および塗工厚みはいずれも乾燥後の値を意味する。
【0033】銀色のスレッドの製造例(図6参照)
厚み12μmのポリエステルフィルムaの一方の面に金属アルミニウムを400〜500オングストローム蒸着してアルミニウム蒸着層bを形成した後、さらにこの上に2液硬化型のアクリル系樹脂を2μm程度グラビアコーターを使用して塗工し、アクリル系樹脂塗工層cを形成する。ポリエステルフィルムaの他方の面には感熱接着剤を5μm程度塗工して感熱接着剤塗工層dを形成する。この感熱接着剤には顔料もしくは染料からなる着色剤を添加するが、添加量が少なくてすみ、接着強度の低下も少ない染料を使用することが好ましい。次いでマイクロスリッターを使用して細い巾に連続的にスリットしてスレッドを製造し、ボビンに巻き取る。この構成のスレッドは、アクリル系樹脂塗工層cが抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しないスレッド表面となり、感熱接着剤塗工層dがスレッド裏面となり、アルミニウム蒸着層bが実質的に光の不透過層となるので、スレッド表面側から見るとアクリル系樹脂塗工層cを通してアルミニウム蒸着層bが銀色に見え、スレッド裏面側から見ると感熱接着剤塗工層dに添加した着色剤の色に見える。
【0034】金色のスレッドの製造例(図7参照)
上記した図6において、2液硬化型のアクリル系樹脂塗工層cに黄色の染料を添加し、感熱接着剤塗工層dには着色剤を添加しない構成とする。この構成では、スレッド表面側から見ると黄色に着色されたアクリル系樹脂塗工層cを通してアルミニウム蒸着層bが金色に見え、スレッド裏面側から見ると感熱接着剤塗工層dを通してアルミニウム蒸着層bが銀色に見える。なお、アクリル系樹脂塗工層cに青色あるいは赤色染料を添加すると、アクリル系樹脂塗工層cを通してアルミニウム蒸着層bがそれぞれ青銀色あるいは赤銀色に見える。
【0035】金色ストライプ模様入りスレッドの製造例(図8参照)
図7において、黄色染料を添加したアクリル系樹脂塗工層cをアルミニウム蒸着層bの上にストライプ状に塗工することにより、アクリル系樹脂塗工層cを塗工した部分はアルミニウム蒸着層bが金色に見え、アクリル系樹脂塗工層cが塗工されていない部分はアルミニウム蒸着層bそのままの銀色に見え、全体として銀色の中の金色ストライプ模様として見ることができる。
【0036】このとき、アルミニウム蒸着層bを保護するために、透明樹脂保護層(図示せず)をアルミニウム蒸着層の上に予め全面塗工した後、染料添加アクリル系樹脂塗工層cをストライプ状に塗工したり、あるいは、図8に示したようにアルミニウム蒸着層bの上に染料添加アクリル系樹脂塗工層cをストライプ状に塗工した後、この上から透明樹脂保護層(図示せず)を全面塗工することが好ましい。なお、アクリル系樹脂塗工層cに青色あるいは赤色染料を添加すると、銀色の中の青銀色あるいは赤銀色ストライプ模様として見える。また、黄色染料を添加したアクリル系樹脂塗工層をドット状に塗工した場合には、銀色の中の金色ドット模様として見える。
【0037】ホログラムスレッドの製造例(図9参照)
厚み12μmのポリエステルフィルムaの一方の面に透明な熱可塑性樹脂を2μm程度塗工して熱可塑性樹脂塗工層eを形成した後、この上にホログラムパターンfを熱エンボスする。次いで、このホログラムパターンfの上にさらに金属アルミニウムを400〜500オングストローム蒸着してアルミニウム蒸着層bを形成し、アルミニウム蒸着層bの上に蛍光染料で着色した感熱接着剤を塗工して感熱接着剤塗工層dを形成する。この構成では、ポリエステルフィルムa面が抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しないスレッド表面となり、スレッド表面側から見るとポリエステルフィルムaを通してホログラムパターンfが視認でき、スレッド裏面(感熱接着剤塗工層d面)は紫外線の照射で発色する面となる。
【0038】この構造において、熱可塑性樹脂塗工層eに黄色、青色あるいは赤色染料を添加した場合には、スレッド表面側から見るとポリエステルフィルムaを通してそれぞれ金色、青銀色あるいは赤銀色のホログラムパターンfを見ることができる。
【0039】磁気スレッドの製造例(図10参照)
厚み12μmのポリエステルフィルムaの一方の面に2液硬化型のポリエステル樹脂と酸化鉄粉末を主成分とする磁気塗料を10μm程度グラビアコーターを使用して塗工し、磁気塗料塗工面gを形成する。ポリエステルフィルムaの他方の面には着色剤を添加した感熱接着剤を5μm程度塗工して感熱接着剤塗工層dを形成する。この構成では、磁気塗料塗工層gが抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しないスレッド表面となると同時に、実質的に光の不透過層となり、スレッド表面側から見ると磁気塗料塗工層gが酸化鉄粉末の色に見え、スレッド裏面側から見ると感熱接着剤塗工層dに添加した着色剤の色に見える。磁気塗料塗工層gを有するスレッドには、磁気的情報を記録することができる。
【0040】微小文字入りスレッドの製造例(図11参照)
厚み12μmのポリエステルフィルムaの一方の面に黒インキを使用して微小文字を裏文字として印刷hした後、この印刷hの上に金属アルミニウムを真空蒸着してアルミニウム蒸着層bを形成する。次いでアルミニウム蒸着層bの上にさらに蛍光染料で着色した感熱接着剤を塗工して感熱接着剤塗工層dを形成する。この構成では、ポリエステルフィルムa面が抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しないスレッド表面となり、アルミニウム蒸着層bが実質的に光の不透過層となり、スレッド表面側からルーペ等で拡大して観察すると、ポリエステルフィルムaを通してアルミニウム蒸着層bの銀色の背景の中に黒色の正文字の微小文字の印刷hが見え、スレッド裏面(感熱接着剤塗工層d面)は紫外線の照射で発色する面となる。なお微小文字は印刷加工によらずに、抜き加工で施してもよい。
【0041】従来のスレッドは表裏の区別がないため、用紙の窓開き部でスレッドのどちらの面が露出するかは確立1/2であったので、微小文字を印刷する場合に「正文字」と「逆文字」の両方を印刷しなければならず、文字の読取りに違和感があった。これに対して上記のスレッドでは表裏の区別がなされているため、スレッド表面側から読み取れる「正文字」のみの印刷を施せばよいことになる。
【0042】虹彩色スレッドの製造例(図12、図13参照)
図12に図示したように、厚み12μmのポリエステルフィルムaの一方の面に真空蒸着機を使用して厚み50オングストローム程度のアルミニウム蒸着層b2 を形成する。次いでこの上に通常厚み0.1〜1μmの二酸化ケイ素の透明な蒸着層を光の干渉層iとして形成し、さらにこの上に厚み500オングストローム程度のアルミニウム蒸着層b1 を形成する。アルミニウム蒸着層b1 の上に蛍光染料で着色した感熱接着剤塗工層dを形成し、マイクロスリッターでスレッドとする。
【0043】この構成のスレッドは、ポリエステルフィルムa面から見ると、見る角度に応じて色相が変化する。色相が変化する理由はシャボン玉の色相が変化する理由と同じであり、光の干渉効果による。すなわち、上記のスレッド構成では、厚み50オングストローム程度のアルミニウム蒸着層b2 が光の半透過層として作用し、500オングストローム程度のアルミニウム蒸着層b1 が光の反射層(光の不透過層)として作用する。ポリエチレンフィルムa側から入射した光は、半透過層b2 で一部が反射され、一部は半透過層b2 を透過して干渉層iを屈折透過して反射層b1 で反射される。このとき、半透過層b2 で反射された光と反射層b1 で反射された光とが干渉して干渉色が発現する。入射する光が白色光や照明光の場合、波長の異なる種々の色の光によってそれぞれ干渉層での屈折率が異なるため、干渉層の厚みに応じた干渉色が発現し、見る角度により色相が変化することになる。かような構成のスレッドを用紙の窓開き部に露出させた偽造防止用紙は、見る角度を変えるとスレッドの色相が変化し、またカラーコピーしてもスレッドの露出部分は黒に複写されるので、極めて偽造防止効果に優れたものとなる。
【0044】上記したような光の干渉効果が得られる虹彩色スレッドを製造するために、積層順序を図12のものと逆にしてもよい。すなわち図13に示したように、アルミニウム蒸着層(半透過層)b2 /干渉層i/アルミニウム蒸着層(反射層)b1 /ポリエステルフィルムa/感熱接着剤塗工層dの積層順序とすることもできる。この場合、必要に応じて半透過層b2 の上に耐熱性に優れた透明樹脂からなる保護層jを設けてもよい。
【0045】なお、上記した例では、光の反射層b1 と半透過層b2 をアルミニウム蒸着層としたが、錫、金、銀等の金属の蒸着層としてもよい。また干渉層iとしては二酸化ケイ素の蒸着層の他にも、酸化チタン、フッ化マグネシウム、酸化アルミニウム等からなるの透明な蒸着層とすることができ、さらには透明な樹脂を塗工して干渉層とすることもできる。
【0046】微小面積内で色が変化する虹彩色スレッドの製造例(図14、図15参照)
上記したような光の干渉効果による虹彩色スレッドにおいて、干渉層iの微小面積内でその厚みを通常0.1〜1μmの範囲で種々に変化させることにより、微小面積内で色が種々に変化して見える虹彩色スレッドを製造することができる。すなわち図14に示したスレッド積層構造は、図12における干渉層iの厚みを微小面積内で種々に変化させてある以外は、図12と全く同様な積層構造である。また図15は、図13における干渉層iの厚みを微小面積内で種々に変化させてある以外は、図13R>3と全く同様な積層構造である。この場合の干渉層iは、透明樹脂の塗工層として形成することができ、例えばグラビア塗工機を用いて塗工することができる。すなわちグラビアロールの彫り深さを微小面積内で種々に変化させておくことにより、微小面積内で透明樹脂塗工層の厚みを種々に変化させることができる。
【0047】パール感に優れた虹彩色スレッドの製造例(図16参照)
図12に示したような光の干渉効果による虹彩色スレッドにおいて、干渉層iを1層で形成せずに、屈折率の異なる透明樹脂を多層に積層した積層構造体とすることにより、この透明樹脂多層積層体そのものにパール感に優れた虹彩色を発現させることができる。屈折率の異なる透明樹脂の多層積層体は、屈折率の異なる各種の透明樹脂を溶融し、これらの溶融樹脂を交互に多層押出ししたのち延伸してフィルム化することにより製造することができる。図16は、透明樹脂多層積層体を光の干渉層として用いたスレッドの構成例を示しており、多層積層体の一方の面にアルミニウムの蒸着層b(光の不透過層)を設け、さらにこの上に感熱接着剤塗工層dを設けた構成となっており、これをマイクロスリッターでスレッドとする。
【0048】
【実施例】
スレッドの製造厚み12μmのポリエステルフィルムの一方の面に金属アルミニウムを400オングストローム蒸着してアルミニウム蒸着層を形成した後、さらにこの上にポリエステル系感熱接着剤(商品名「バイロン」、東洋紡(株)製造)にチオフェン系の蛍光染料を0.5重量%添加した塗料を5g/m2 (乾燥換算)塗工して感熱接着剤塗工層を形成した。次いでマイクロスリッターを使用して巾1.5mmにスリットしスレッドを製造した。かような構成のスレッドは、ポリエステルフィルム面がスレッド表面となり、感熱接着剤塗工層がスレッド裏面となり紫外線照射により青白色に発色する。
【0049】紙料の調製NBKP20重量部,LBKP80重量部をフリーネス350mlC.S.F.に叩解し、これに白土10重量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」、荒川化学工業(株)製)0.3重量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」、荒川化学工業(株)製)1.0重量部、硫酸バンドを適量加え紙料を調製した。
【0050】抄紙網の製造図3および図4に示したような円網抄紙機の円網シリンダー12aの上網12b(幅1300mm)に、短辺10mm、長辺25mm、厚み0.3mmの樹脂板からなる多数の型13を接着剤を使用して紙層の流れ方向Wに5mm間隔(Y)で連続的に貼りつけた。この列を上網12bの幅方向に等間隔に6列取り付けた。
【0051】用紙の抄造図3に示したような2槽式円網抄紙機の1槽目の円網シリンダー11aには何等細工を施さない上網を装着し、2槽目の円網シリンダー12aには上記型13を取り付けた上網12bを装着した。1槽目で形成した第1層目の紙層3の上に2槽目形成した第2層目(最外層)の紙層2が重なるようにして、前記紙料を用い抄紙速度50m/分で2層抄合わせ紙を製造した。この際、第1層目(乾燥重量に換算して50g/m2 )と第2層目(同50g/m2 )の間に上記で製造したスレッドを特公平5−40080号で提案した方法を用いて型13の中央に相当する位置に挿入した。クーチロール15の位置にブラックライト(図示せず)を設置して湿紙に紫外線を照射した。用紙の窓開き部に露出するスレッドが紫外線の照射で青白色に発色して見える場合は、スレッド裏面の感熱接着剤塗工層が露出していることを意味するので、スレッド挿入位置Vで挿入されているスレッドを切断し、スレッドの表裏面を反転させたのち再び挿入する動作を行った。この動作を紫外線の照射でスレッドが発色しなくなるまで行うことにより、正常なスレッド挿入状態とすることができる。次いで常法に従い湿紙を脱水後、シリンダードライヤーで乾燥し、2層抄合わせ紙からなる本発明の偽造防止用紙を製造した。得られた用紙は、用紙の流れ方向における窓開き部1の長さXが10mm、非窓開き部5の長さYが5mmであり、窓開き部1内部ではスレッド4が露出し、非窓開き部5ではスレッド4が紙層の間に埋設された状態となっていた。
【0052】
【発明の効果】上述したような本発明の偽造防止用紙によれば、下記に述べるような顕著な効果が得られる。
1)スレッド表面には感熱接着剤を塗工せず、抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しないため、このスレッド表面が偽造防止用紙の窓開き部における露出面となるように抄紙時のスレッド挿入を制御することにより、乾燥ゾーンのシリンダードライヤー、キャンバス、タッチロール等と接触してもこれらの装置を汚染することがない。
【0053】2)偽造防止用紙の窓開き部に露出するスレッド表面が抄紙機の乾燥ゾーンの熱で溶融若しくは軟化しないため、金属蒸着層を利用した光輝性のあるスレッドの場合でも、スレッド表面が荒らされることがないから光輝性が低下することがない。
【0054】3)感熱接着剤をスレッドの片面(裏面)のみに塗工しているため、両面に塗工した従来のスレッドと比較してコストダウンが可能となる。またかようなスレッドを製造するに際しても、感熱接着剤を両面塗工する場合にはフローティング乾燥方式を使用した特別な装置を必要とするのに対して、感熱接着剤を片面のみに塗工したスレッドの製造には通常の塗工機が使用できる利点がある。
【0055】4)スレッドの表裏面の識別が簡単にできるため、抄紙時におけるスレッドの挿入が正しくなされているか否かを迅速に検出できる。その結果、抄紙途中でスレッドの露出部が形成された段階で直ちにスレッド挿入状態を判定でき、正しくない場合には速やかにスレッド挿入状態を表裏反転させて正常に戻すことができる。従って、スレッドが正しく挿入されている偽造防止用紙の製造の歩留まりを著しく高めることが可能となる。
【0056】5)感熱接着剤層を、紫外線照射で発色する染料等を用いて着色する場合には、スレッドの表裏面の識別を確実に行えるだけでなく、偽造防止能をより高めることができる。
【0057】6)スレッドに表裏の区別を施して、必ずスレッド表面が窓開き部で露出するようにスレッドを挿入するため、スレッドに微小文字の印刷加工を施す場合には「正文字」のみが見えるようにすればよいから、違和感なく微小文字を読み易くできる。
【0058】以上のような特性を生かして本発明で得られた偽造防止用紙は、紙幣、小切手、株券、債券、商品券、カード、機密文書、パスポート、身分証明書等に好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の偽造防止用紙を用いた商品券の一例を上面から見た図である。
【図2】図1の窓開き部の部分の拡大断面図である。
【図3】本発明の偽造防止用紙の製造に好ましく使用できる2槽式円網抄紙機の例を示す説明図である。
【図4】図3の円網抄紙機で使用する円網シリンダーの上網に、窓開き部を形成するための型を取り付けた状態を示す部分説明図である。
【図5】本発明の偽造防止用紙の製造に好ましく使用できる抄紙装置の別な例を示す説明図である。
【図6】銀色のスレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図7】金色のスレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図8】金色のストライプ模様入りスレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図9】ホログラムスレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図10】磁気スレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図11】微小文字入りスレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図12】虹彩色スレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図13】虹彩色スレッドの積層構造の別な例を示す断面図である。
【図14】微小面積内で色が変化する虹彩色スレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【図15】微小面積内で色が変化する虹彩色スレッドの積層構造の別な例を示す断面図である。
【図16】パール感に優れた虹彩色スレッドの積層構造の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:窓開き部
2:最外層の紙層
3:最外層に接する紙層
4:スレッド
5:非窓開き部
a:ポリエステルフィルム
b:金属蒸着層
c:熱硬化性樹脂塗工層
d:感熱接着剤塗工層
e:熱可塑性樹脂塗工層
f:ホログラムパターン
g:磁気塗料塗工層
h:文字印刷
i:光の干渉層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している偽造防止用紙において、前記スレッドは(a) 積層構造を有し、(b) 前記積層構造の一つの層は実質的に光の不透過層であり、(c) スレッド表面は抄紙機の乾燥ゾーンの温度で溶融若しくは軟化しない層からなり、(d) スレッド裏面は表面と異なる色に見える感熱接着剤層からなり、(e) スレッド表面が前記窓開き部に露出していることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】 前記感熱接着剤層に着色剤が添加されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項3】 前記着色剤が紫外線の照射で発色する染料であることを特徴とする請求項2記載の偽造防止用紙。
【請求項4】 前記着色剤が白色光の照射では無色であり、紫外線の照射で発色する染料であることを特徴とする請求項2記載の偽造防止用紙。
【請求項5】 前記スレッド表面の層は磁気粉体を含む磁気塗料塗工層であり、該磁気塗料塗工層が光の不透過層を構成することを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項6】 前記スレッド表面に正文字の微小文字が見えるような加工が施されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
【請求項7】 前記スレッドの積層構造が、熱硬化性樹脂層/金属蒸着層/ポリエステルフィルム層/感熱接着剤層の順で積層されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項8】 前記熱硬化性樹脂層に染料を添加してあることを特徴とする請求項7記載の偽造防止用紙。
【請求項9】 前記熱硬化性樹脂層に染料を添加してあり、かつこの熱硬化性樹脂層がストライプ状またはドット状に塗工されていることを特徴とする請求項7記載の偽造防止用紙。
【請求項10】 前記スレッドの積層構造が、ポリエステルフィルム層/一方の面にホログラムパターンをエンボスした熱可塑性樹脂層/前記ホログラムパターン上に設けた金属蒸着層/感熱接着剤層の順で積層されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項11】 前記熱可塑性樹脂層に染料を添加してあることを特徴とする請求項10記載の偽造防止用紙。
【請求項12】 前記スレッドの積層構造が、ポリエステルフィルム層/金属蒸着層からなる光の半透過層/透明層からなる光の干渉層/金属蒸着層からなる光の反射層/感熱接着剤層の順で積層されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項13】 前記スレッドの積層構造が、金属蒸着層からなる光の半透過層/透明層からなる光の干渉層/金属蒸着層からなる光の反射層/ポリエステルフィルム層/感熱接着剤層の順で積層されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項14】 前記スレッドの積層構造が、ポリエステルフィルム層/金属蒸着層からなる光の半透過層/透明層からなる光の干渉層/金属蒸着層からなる光の反射層/感熱接着剤層の順で積層されており、前記干渉層の厚みを微小面積内で変化させてあることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項15】 前記スレッドの積層構造が、金属蒸着層からなる光の半透過層/透明層からなる光の干渉層/金属蒸着層からなる光の反射層/ポリエステルフィルム層/感熱接着剤層の順で積層されており、前記干渉層の厚みを微小面積内で変化させてあることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項16】 前記スレッドの積層構造が、屈折率の異なる種々の透明樹脂の多層積層体からなる光の干渉層/金属蒸着層からなる光の反射層/感熱接着剤層の順で積層されていることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用紙。
【請求項17】 用紙の流れ方向における前記窓開き部の長さ(X)と、窓開き部と窓開き部の間に位置する非窓開き部の長さ(Y)との比率を3:1〜1:2としたことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【特許番号】特許第3262008号(P3262008)
【登録日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【発行日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−27914
【出願日】平成9年2月12日(1997.2.12)
【公開番号】特開平10−226996
【公開日】平成10年8月25日(1998.8.25)
【審査請求日】平成12年8月10日(2000.8.10)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【参考文献】
【文献】特開 平7−243139(JP,A)
【文献】登録実用新案3028886(JP,U)
【文献】登録実用新案3030029(JP,U)
【文献】特表 平10−509394(JP,A)
【文献】特表 平6−503128(JP,A)