説明

偽造防止箔

【課題】潜像を利用した剥離不能な偽造防止手段であって、平常時はそこに偽造防止手段が存在することを発見するのが困難であるが、真贋識別時に顕在化される潜像は良好な識別性を有し、偽造防止効果が高く、かつ製造負荷が少ない偽造防止手段を提供する。
【解決手段】総厚が20μm以下の偽造防止箔であって、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターニング光学異方性層を少なくとも一層含み、同一層内における前記領域は全て、互いに同一の組成物から形成されている、偽造防止箔。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物品が真正品か偽造品かを識別するための偽造防止(転写)箔に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造防止の手段としては、製品そのものを複製不能とする手段か、偽造防止手段として複製不能の標識を製品に取り付けることで真正な製品(真正品)と判定させる手段に大きく分けられる。特に後者の場合は個別な対応が必要な前者に比べて汎用性が高いので、多く用いられている。
後者の手段はさらに、2つに分けられる。ひとつは、偽造防止手段の存在が常に誰にでも識別できるもので、良く知られている技術としてホログラムがある。もうひとつは、偽造防止手段が通常は検出不能な状態であり、偽造防止手段の存在を知る者のみが特別な手段によって偽造防止手段を検出し、真正品かどうかを識別するもので、偏光による潜像の顕在化やカラーシフトによって判別できる技術が知られている(例えば、特許文献1,2)。これらのような複製不能の物品の取り付けは、真正品から剥がして偽造品に転用される恐れがあった。
【0003】
このような物品は、転写箔として真正品に貼合することにより、剥がして悪用されにくくすることができる(例えば、特許文献3、4)。しかし、これらは液晶をパターン状に印刷することによって、潜像を形成しているため、潜像を多色化することが困難であったり、配向性と精細性とを両立させることが困難であったりした。
【0004】
【特許文献1】特開2004−29189号公報
【特許文献2】特開2008−137232号公報
【特許文献3】特開2001−71698号公報
【特許文献4】特開2008−49550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、剥離不能な潜像を利用した偽造防止手段であって、平常時はそこに偽造防止手段が存在することを発見するのが困難であるが、識別時に顕在化される潜像は良好な識別性を有し、偽造防止効果が高く、かつ製造負荷が少ない偽造防止手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は以下の発明により達成された。
(1)総厚が20μm以下の偽造防止箔であって、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターニング光学異方性層を少なくとも一層含み、同一層内における前記領域は全て、互いに同一の層形成用組成物から形成されている、潜像を形成した偽造防止箔。
(2)前記パターニング光学異方性層が、反応性基を有する液晶性化合物を重合して形成された層であることを特徴とする、(1)に記載の偽造防止箔。
(3)同一パターニング光学異方性層内の遅相軸が実質的に一定であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の偽造防止箔。
(4)接着層を有する、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
(5)反射層を有する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
(6)保護層を有する、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
(7)ホログラム層を有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
(8)前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察することによって顕在化される潜像が3色以上となるように複屈折性がパターニングされていることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
(9)偏光板を介して潜像を視認することができる、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【0007】
(10)仮支持体上に、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の偽造防止箔が形成されてなることを特徴とする、偽造防止転写箔。
(11)仮支持体の上に離型層を有する、(10)に記載の偽造防止転写箔。
(12)[I]仮支持体上に直接、または他の層を介して、反応性基を有する液晶性化合物を含む層形成用組成物を塗布し、光学異方性層を形成する工程、
[II]前記光学異方性層に対し、パターン状に加熱、またはパターン状に電離放射線を照射する工程、及び
[III]前記光学異方性層の全面を電離放射線照射、または熱処理によって硬化させる工程
を順に含む、(10)または(11)に記載の偽造防止転写箔の製造方法。
(13)(10)または(11)に記載の偽造防止転写箔を物品の少なくとも一部に転写したことを特徴とする、偽造防止物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偽造防止箔及び偽造防止転写箔は、良好な潜像を顕在化させうるものであり、真贋の識別性と偽造防止効果とが高く、また、製造負荷が小さいという優れた効果を奏する。さらに本発明の偽造防止箔は、剥離して再利用することが極めて難しいため、偽造防止上非常に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本明細書において、「偽造防止箔」とは、偽造防止用の光学異方性層を有した積層構造であって、厚みが20μm以下、好ましくは10μm以下の箔を意味する。適用方法は特に限定されるものではないが、物品に貼付して、物品の偽装防止、物品の製造元等の証明をすることのできる媒体、または包装紙等の形状で製造元等の証明をすることのできる媒体等であればよい。
偽造防止箔は、少なくとも一層のパターニング光学異方性層を有する。偽造防止箔は、パターニング光学異方性層のいずれかの面、あるいは両面に他の機能性層を有していてもよい(例えば、図1(a)参照。一層のパターニング光学異方性層11が機能性層12にはさまれている)。パターニング光学異方性層は複数層設けてもよい。この場合、異なるパターニング光学異方性層の間に、他の機能性層を有していてもよい(例えば、図1(b)参照。2つのパターニング光学異方性層21と3つの機能性層22が交互に積層されている)。
本明細書において、「偽造防止転写箔」とは、仮支持体上に上述した偽造防止箔が積層されたものを意味する(例えば、図1(c)参照。仮支持体13上にパターニング光学異方性層11と機能性層12が積層されている)。ホットスタンピング、インラインスタンピング、あるいは、各種ラミネーションプロセスにより、偽造防止転写箔を物品に圧着させた後、仮支持体を剥離することによって、偽造防止箔を物品に転写させることができる。なお、本明細書においては、物品に転写される層(偽造防止箔と同義)を転写層とよぶこともある。
【0011】
本明細書において、パターニング光学異方性層とは、複屈折性が異なる領域を複数含んで、それにより一定のパターンを形成しうる層を意味する。複屈折性が異なる領域はレターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域であればよく、レターデーションが互いに異なる領域であることが好ましい。本発明の偽造防止箔におけるパターニング光学異方性層において複屈折性が異なる複数の領域は、同一層内においては全て、互いに同一の層形成用組成物から形成される。複屈折性の相違は、後述のように、組成物中の分子の配向などに由来していればよい。すなわち、本発明のパターニング光学異方性層は、全面に均一に層形成用組成物の塗布を行った後、分子の配向方向、あるいは配向度をパターニングすることによって得ることができる。本明細書において、パターニング光学異方性層を含む、複屈折性が異なる領域を複数含む層、及びその積層体を、複屈折パターンという場合がある。
複屈折性が異なる領域は偽造防止媒体の概ね法線方向から観察した場合に認識されるものであるため、偽造防止媒体平面の法線と平行な面により分割された領域となっていればよい。なお、「複屈折性が異なる」とは、レターデーションがパターニングされている場合には、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上レターデーションが異なることをいう。光軸がパターニングされている場合には、光軸の向きが好ましくは5度以上、より好ましくは10度以上、さらに好ましくは15度以上異なることをいう。
【0012】
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(商品名、王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
また、本明細書において「光軸」というとき、「遅相軸」又は「透過軸」を意味する。
【0013】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、Reが実質的に0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0014】
本明細書において、「レターデーション消失温度」とは光学異方性層を20℃の状態より毎分20℃の速度で昇温させた際に、ある温度において該光学異方性層のレターデーションが該光学異方性層の20℃時のレターデーションの30%以下となる温度のことをいう。
【0015】
なお、本明細書において、「レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない」とは、上記のように光学異方性層を250℃まで昇温させても光学異方性層のレターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下とならないことを意味する。
【0016】
[偽造防止(転写)箔]
本発明の偽造防止転写箔は、上述のとおり仮支持体の上に偽造防止箔の構成要素が、必要に応じ離型層とともに積層されたものである。以下、偽造防止箔と偽造防止転写箔とを合わせたものを「偽造防止(転写)箔」という。偽造防止(転写)箔の機能性層は目的に応じて選択することができ、仮支持体と離型層以外は偽造防止箔と偽造防止転写箔とは同様である。以下にその一例を示す。なお、偽造防止(転写)箔には、その機能を阻害するものでなければ、以下に述べる以外の機能性層も必要に応じ設けることができる。
【0017】
図2は、本発明の偽造防止転写箔の一実施形態における層構成を模式的に示す断面図である。この実施形態において、仮支持体23、及び、パターニング光学異方性層21以外の層は、用途に応じて設けることができる。離型層24は、保護層25より上の転写層を転写させやすくするための層である。保護層25は、転写後に最上層となる層であり、パターニング光学異方性層21を汚染や損傷などから保護する機能を有する。ホログラム層26は、偽造防止性や意匠性を向上させるために設けることができる。反射層27は潜像の視認性を向上させるために設けることができる。反射性の物品に転写する場合、あるいは、透明支持体に転写して透過で潜像を観察する場合には、不要である。接着層28は物品と転写層とを接着させるための層である。物品側に接着層が設けられている場合には、必ずしも必要ではない。
【0018】
[複屈折パターン]
図3は複屈折パターンのいくつかの例を模式化した断面図で示す説明図である。複屈折パターンは少なくとも一層のパターニング光学異方性層112を有する。図3において、特に明記はしていないが、適宜、光学異方性層の間、あるいは外側に他の機能層を設けることができる。図3(a)に示す複屈折パターンはパターニング光学異方性層112のみからなる例である。図に示す112−Aと112−Bは異なる複屈折性を有する。なお、パターニング光学異方性層における領域ごとの異なる複屈折性はパターン露光、もしくは、パターン加熱等によって形成したものであってもよい。図3(b)に示す複屈折パターンは3つの異なる複屈折性を有するパターニング光学異方性層である。112−C、112−D、及び、112−Eは、それぞれ異なるレターデーションを有している。このような3つ以上の異なる複屈折性を有するパターニング光学異方性層は、複数回のパターン露光や、濃度マスクを用いたパターン露光によって形成することができる。あるいは、加熱温度や時間を領域によって変更しながらパターン加熱することによって形成することもできる。複屈折パターンはパターニング光学異方性層を複数層有していてもよい。パターニング光学異方性層を複数有することによってさらに複雑な潜像を与えることができる。
【0019】
図3(c)に示す複屈折パターンは光学異方性層を複数層積層した後にパターン露光、あるいはパターン加熱を行い同一のパターンを与えた例である。レターデーションが112F−Aの領域と112F−Bの領域を有するパターニング光学異方性層112aの上に、レターデーションが異なる112S−Aの領域とレターデーションが異なる112S−Bの領域を有するパターニング光学異方性層112bを積層したものである。このような例は、例えば一層の光学異方性層では出せないような大きなレターデーションを有する領域を含むパターンを作製するのに有用である。
【0020】
図3(d)に示す複屈折パターンは複数の光学異方性層に互いに独立したパターンを与えた例である。レターデーションが112F−A、B、Cの領域を有するパターニング光学異方性層112c上に、112S−D、E、Fの領域を有するパターニング光学異方性層112d、及び112T−G、H、Iの領域を有するパターニング光学異方性層112eが積層されている。例えばレターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えたい時に有用な例である。このような層構成にすると、例えば、偏光板を回転することによって潜像を変化させることができたり、あるいは、潜像の色再現域を拡げたりすることができたりするため、セキュリティ性を向上させることができる。互いに独立したパターンは、例えば、第一のパターニング光学異方性層の上に、別途形成されたパターニング光学異方性層を必要回数転写することによって形成することができる。あるいは、パターン露光のみ行った第一の光学異方性層の上に、パターン露光のみ行った光学異方性層を必要回数転写した後に、一度のベークでパターニング光学異方性層を複数層設けることも可能である。後者の方法であれば、工程負荷の大きいベークの回数を最小限に抑制することができる。
【0021】
[パターニング光学異方性層の作製方法]
パターニング光学異方性層は、光学異方性層に、レターデーションが異なる領域を形成するためのパターン露光またはパターン加熱などの処理を行う工程を含む方法で作製することができる。光学異方性層としては、自己支持性の光学異方性層をそのまま用いてもよいが、光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用い、パターニング光学異方性層を含む複屈折パターンとしてパターニング光学異方性層を形成することも好ましい。
以下、光学異方性層、複屈折パターン作製材料、複屈折パターンの製造方法につき、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0022】
[光学異方性層]
光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。また、前記光学異方性層は、レターデーション消失温度を有することが好ましい。光学異方性層がレターデーション消失温度を有することによって、例えばパターン加熱により光学異方性層の一部の領域のレターデーションを消失させることが可能である。レターデーション消失温度は20℃より大きく250℃以下であることが好ましく、40℃〜245℃であることがより好ましく、50℃〜245℃であることがさらに好ましく、80℃〜240℃であることが最も好ましい。
【0023】
また、光学異方性層としては、複屈折パターン作製材料に露光を行う事によりレターデーション消失温度が上昇する光学異方性層を用いることが好ましい。この結果として、パターン露光による露光部と未露光部とでレターデーション消失温度に差が生じることとなり、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度でベークを行う事により未露光部のレターデーションのみを選択的に消失させることが可能となる。さらに、露光量に応じてレターデーション消失温度を変化させることもできる。
【0024】
光学異方性層でレターデーションを付与した領域のレターデーションの値は20℃において、5nm以上であればよく、10nm以上2000nm以下であることが好ましく、20nm以上1000nm以下であることが特に好ましく、前記の範囲内で所望の値に選択できることが最も好ましい。レターデーションが小さすぎると複屈折パターンの形成が困難である場合がある。レターデーションが大きすぎると、レターデーションによる潜像の色変化が認識しづらくなる場合がある。
【0025】
光学異方性層は高分子を含むことが好ましい。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こり、その結果としてレターデーション消失温度の上昇が起こりやすくなると考えられるためである。
【0026】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
【0027】
[液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易である。
【0028】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0029】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0030】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
【0031】
一般式(I):Q−L−A−L−M−L−A−L−Q
式中、QおよびQはそれぞれ独立に、反応性基であり、L、L、LおよびLはそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。AおよびAはそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
【0032】
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、QおよびQは、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。式中、Etはエチル基、Prはプロピル基を表す。
【0033】
【化1】

【0034】
、L、LおよびLで表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR−、−NR−CO−O−、およびNR−CO−NR−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記Rは炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q−LおよびQ−L−は、CH=CH−CO−O−、CH=C(CH)−CO−O−およびCH=C(Cl)−CO−O−、−CH−O−に連結したオキセタニル基が好ましく、CH=CH−CO−O−および/または、−CH−O−に連結したオキセタニル基が最も好ましい。
【0035】
およびAは、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
【0036】
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W−L−W
式中、WおよびWは各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、Lは単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L〜Lで表される基の具体例、−CH−O−、および−O−CH−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0037】
およびWとしては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。WおよびWは、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記W1およびW2が有していてもよい置換基が置換していてもよい。
【0038】
【化2】

【0039】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0047】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例としては特開2007−121986号公報の[0045]〜[0055]に記載の化合物を挙げることができる。
【0048】
光学異方性層は、層形成用組成物として液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0049】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0050】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0051】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0052】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm〜10J/cmであることが好ましく、25〜800mJ/cmであることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cmであることが好ましく、20〜500mW/cmであることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0053】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0054】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0055】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm〜500mJ/cmであることが好ましく、10〜400mJ/cmであることがより好ましく、20mJ/cm〜200mJ/cmであることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cmであることが好ましく、10〜300mW/cmであることがより好ましく、20〜100mW/cmであることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0056】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0057】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2007−121986号公報の[0068]〜[0072]に記載の一般式(1)〜(3)で表される化合物および下記一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
【0058】
【化9】

【0059】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0060】
上述したラジカル系反応性基とカチオン系反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化方法以外の、液晶化合物の配向状態の固定化方法としては米国特許公開公報のUS2008-143926号の偏光照射による固定化方法も適用することができる。
【0061】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。前述したように光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0062】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。
【0063】
[複屈折パターン作製材料]
複屈折パターン作製材料はパターニング光学異方性層を有する複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターンを得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、接着層、反射層、保護層などが挙げられる。これらの層は、仮支持体上に形成されていてもよい。
【0064】
[仮支持体]
複屈折パターン作製材料は直接、または、配向層を介して、仮支持体上に形成される。複屈折パターン作製材料に用いられる仮支持体は、透明でも不透明でもよく、特に限定はないが、全ての層を形成した後に剥離容易な形態で設けられた支持体である必要がある。
このような仮支持体としては、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、シクロオレフィン系ポリマー(例、ノルボルネン系ポリマー)などのプラスチックフィルムが挙げられる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明で低複屈折の透明支持体が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(商品名、JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(いずれも商品名、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。転写のさせやすさから、仮支持体の膜厚としては、5〜1000μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、15〜50μmがさらに好ましい。
【0065】
[離型層]
仮支持体上には離型層を設けてもよい。離型層としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含有した樹脂、シロキサン系樹脂、アクリルメラミン系樹脂などを用いることができる。
離型層は、上述した樹脂を含む溶液、塗布・乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層の厚さとしては、通常は0.05μm〜3.0μmが好ましく、0.1μm〜1.0μmであることがさらに好ましい。
【0066】
[配向層]
上記したように、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0067】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0068】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層を保護層として用いる場合には、配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。この場合には、界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(商品名、昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。このような配向層を用いると、パターニング光学異方性層と配向層との界面密着が強化されるため、パターニング光学異方性層とともに配向層も転写される。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。
【0069】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0070】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0071】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiOを代表とし、TiO、ZnO等の金属酸化物、あるいやMgF等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0072】
[配向層を兼ねる支持体]
液晶層を配向させるためには、支持体上に配向層を形成し、その表面をラビング処理する方法が一般的である。しかし、塗布液と支持体の組み合わせによっては、支持体を直接ラビングして液晶層を配向させることも可能である。このような支持体としては、後述の配向層に好ましく用いられる有機化合物、特にポリマーを主成分とする支持体が上げられる。このような支持体としては、PETフィルム等が挙げられる。
【0073】
[2層以上の光学異方性層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に配向層や接着層等、別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層は互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0074】
[複屈折パターン作製材料の作製方法]
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、仮支持体上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて仮支持体上に光学異方性層を転写する、などの方法が挙げられる。このうち工程数が少ないという点からは仮支持体上に光学異方性層を直接形成する方法がより好ましい。
【0075】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に直接、または、配向層を介して光学異方性層を形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。それぞれの光学異方性層に付与する位相差を別々に制御したい場合には、第一のパターニング光学異方性層の上に、別途形成したパターニング光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0076】
本発明の偽造防止転写箔の層構成の例を模式的に示した断面図を図4(a)〜(h)に示す。仮支持体43上に、パターニング光学異方性層41と、必要に応じ各種機能性層(離型層44、保護層45、反射層47、接着層48、ホログラム層49、透明反射層50)が積層されている。なお、図4(a)、(b)、(e)、(f)は反射により複屈折パターンを視認するのに好適な偽造防止転写箔の例である。また、図4(c)、(d)、(g)、(h)は透明な偽造防止転写箔の例であり、反射性物品に貼付することによって、反射により複屈折パターンを視認する場合、あるいは、透過により複屈折パターンを視認する場合に好適に用いることができる。後者の場合、二枚の偏光板間に本発明の偽造防止箔を配置して、その透過像を視認すればよい。二枚の偏光板をクロスニコル配置し、偽造防止箔の光軸を偏光板の光軸から45度ずらして配置するのが一般的であるが、二層以上のパターニング光学異方性層が積層されている場合には、この配置に限らない。また、図4(e)〜(h)はホログラム層49を有する偽造防止箔の例である。ホログラム複製を困難にするためには、物品に貼付した後にパターニング光学異方性層41がホログラム層49より上層に存在することがより好ましい。下層のホログラムを複製するためには、パターニング光学異方性層の画素毎に測定光補正が必要となり、複製の困難性が向上する。本発明の偽造防止転写箔においては、図4(a)〜(h)に示した以外の、他の機能層を有していてもよい。また、離型層、保護層は必要に応じて設ければよい。
【0077】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
複屈折パターンは、さらに様々な機能を持った機能性層が積層されていてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば以下に述べる接着層、ホログラム層、反射層、保護層などを挙げることができる。
【0078】
[接着層]
偽造防止転写箔は、用途に応じて接着層を有することが好ましい。接着層としては、十分な接着性を有していれば特に制限はなく、感光性樹脂層、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層、感光性樹脂層などが挙げられるが、感熱性樹脂層が望ましい。また、反射層を有しない、透明転写箔に用いる場合には、透明で着色がないことが好ましい。
【0079】
接着層のための接着剤としては、例えば、適度な濡れ性、凝集性や接着性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0080】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、市販の材料を用いることもできる。接着層として用いられる場合、感光性樹脂層は少なくともポリマーと、モノマー又はオリゴマーと、光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。ポリマー、モノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤又は光重合開始剤系については、特開2007−121986号公報の[0082]〜[0085]の記載を参照することができる。
【0081】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2007−121986号公報の[0095]〜[0105]の記載を参照することができる。
【0082】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0083】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0084】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0085】
[ホログラム層]
本発明の偽造防止(転写)箔は、ホログラム層を有していてもよい。ホログラムは単体でも偽造防止ラベルとして使用されているが、潜像を形成する複屈折パターンと組み合わせることで、偽造防止性が向上する。
【0086】
ホログラムの種類は特に限定されず、レリーフホログラムでも、体積ホログラムでもよい。生産性に関しては前者が優れるが、偽造防止性の観点では後者が優れる。
各種ホログラム材料に関しては、「ホログラフィー材料・応用便覧」(辻内順平監修、2007)を参照することができる。また、レリーフホログラム層形成については、特開2004-177636号公報、特開2005-91786号公報の記載を参照することができる。そのうち、典型的方法について以下に説明する。
【0087】
ホログラム層形成の材料として用いられるホログラム樹脂としては、プレス版にて成形可能な熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UVあるいは電子線硬化性樹脂のいずれでもよい。アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線あるいは電子線硬化樹脂を、単独もしくはこれらを複合して使用できる。
【0088】
[ホログラム層の形成]
ホログラム層の製造方法としては、(1)支持体にUV硬化型樹脂、または電子線硬化型樹脂を塗布し、これを版胴と圧胴との間に送り、紫外線または電子線を照射して硬化させる方法、(2)特開平5−232853号公報に開示されているように、紫外線または電子線硬化性樹脂組成物と、既存のホログラムフィルムの凹凸面とを圧着し、紫外線または電子線を照射することによって樹脂を硬化させ、その後、ホログラムフィルムを剥離することによって、ホログラム像を転写する方法、(3)支持体の片面に、押し出しダイから押し出された溶融状態の合成樹脂を、表面にレリーフホログラムが形成されているスタンパを備えた冷却ロールからなる版胴と、圧胴との間でラミネートする方法、等が挙げられ、いずれの方法も好ましく用いることができる。
なお、樹脂層に表面にエンボスにより微細な凹凸形状を設ける場合であって、後述のようにホログラム層に反射層を設ける場合は、エンボス加工は反射層の形成の前でも後でもよい。
【0089】
ホログラム層は、上記のように製造した複屈折パターン上に形成されることが好ましい。市販のホログラム箔をパターニング光学異方性層上に転写してもよい。
【0090】
[反射層]
反射により複屈折パターンを視認する場合であって、被着体が非反射性である場合には、複屈折パターンの視認性を向上させるために反射層を設けることが好ましい。
【0091】
反射層としては、反射性の金属薄膜や、反射性の金属粒子を含有する層を用いることができる。
金属薄膜に用いられる金属としては、Al、Cr、Ni、Ag、Au等が挙げられる。金属薄膜の形成は真空製膜により行うことができる。金属薄膜は、単層膜であっても、多層膜であってもよく、例えば、物理気相成長法、化学気相成長法のいずれによっても製造することができる。
反射性の金属粒子を含有する層としては、例えばゴールドやシルバー等のインキで印刷された層が挙げられる。
反射層は完全鏡面である必要はなく、表面にマット加工が施されていてもよい。
透明な偽造防止転写箔の場合には、上述したような反射層は不要であるが、ホログラム層を有する場合には、ホログラムの視認性を向上させるために、ホログラムとは異なる屈折率を有する透明反射層をホログラム層に隣接して設けることが好ましい。
透明反射層としては、ホログラム層を形成する樹脂との屈折率差が大きい材料を用いて作製された薄膜が好ましい。高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化インジウム等が挙げられる。逆に、低屈折率材料としては、二酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等が挙げられる。
【0092】
金属薄膜、あるいは透明反射層の膜厚としては、使用する材料によって異なるが、例えば5nm〜400nm、好ましくは、10nm〜100nmの範囲内で任意に選択することができる。
【0093】
[保護層]
保護層は、物品に貼付されたときに最表層となる層であり、貯蔵の際の汚染や損傷からパターニング光学異方性層を保護する層である。転写箔においては、仮支持体、あるいは離型層の上に保護層を配置することができる。また、仮支持体と保護層間の、あるいは保護層とその直上層の間の密着力を制御することによって、被着体に転写層を転写する際に、仮支持体と転写層との剥離を容易にする機能を付与してもよい。また配向層が保護層としての機能を有してもよい。
保護層の材料としては例えばポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレン等のフッ素ポリマーや多官能アクリレートが適当である。
【0094】
[層の形成方法]
光学異方性層、感光性樹脂層、接着層、および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0095】
[複屈折パターン作製材料、または、パターニング光学異方性層を仮支持体上に転写する方法]
複屈折パターン作製材料、または、パターニング光学異方性層は、仮支持体上で形成されることが工程数の観点で好ましいが、別の支持体上で複屈折パターン作製材料、または、パターニング光学異方性層を作製しておき、それを仮支持体上に転写してもよい。複数のパターニング光学異方性層を積層したい場合で、それぞれの層のレターデーションを独立に制御したい場合には、第一のパターニング光学異方性層以外は転写により形成されることが好ましい。転写方法については特に制限されず、仮支持体上に上記複屈折パターン作製材料、あるいは、パターニング光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、別の支持体上に、複屈折パターン作製材料、あるいはパターニング光学異方性層を形成し、さらに接着層を形成した後に接着層面を仮支持体側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。あるいは、別の支持体上に、複屈折パターン作製材料、あるいはパターニング光学異方性層を形成し、さらに最表面に接着層を形成した仮支持体に、同様の方法で貼り付けてもよい。
【0096】
[転写に伴う工程]
別の支持体上に作製された複屈折パターン作製材料、または、パターニング光学異方性層を仮支持体上に転写した後、別の支持体は剥離される。この後、複屈折パターン作製材料、パターニング光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0097】
また転写後、必要に応じて別の支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の複屈折パターン作製材料、または、パターニング光学異方性層を転写してもよい。この際に用いる他の複屈折パターン作製材料、または、パターニング光学異方性層は先に転写したものと同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した光学異方性層の遅相軸と新たに転写する光学異方性層の遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0098】
[複屈折パターンの作製]
複屈折パターン作製材料を用いて、パターン状の熱処理またはパターン状の電離放射線照射を行う工程、及び光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程をこの順に含む方法を行う事によって、複屈折パターンを作製することができる。特に光学異方性層がレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度が電離放射線照射(あるいはレターデーション消失温度以下の熱処理)によって上昇する場合、容易に複屈折パターンを作製することができる。
【0099】
パターン状の電離放射線照射としては、例えば、露光(パターン露光)が挙げられる。その後光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としては全面露光または全面熱処理(ベーク)を行えばよい。省コスト化の為には、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度への加熱がそのまま反応の為の熱処理も兼ねられることが好ましい。
【0100】
パターン状の熱処理としては、先に一部領域の加熱をレターデーション消失温度近くの温度で行ってレターデーションを低下ないしは消失させ、その後にレターデーション消失温度より低い温度で光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(全面露光ないしは全面加熱)を行って複屈折パターンを得る手法もある。この場合には先に加熱された部分のみがレターデーションを失ったパターンを得る事が可能である。
【0101】
[パターン形成のタイミング]
本発明の複屈折パターンの作製においてパターン状の熱処理または電離放射線照射を行うタイミングは、熱処理または電離放射線照射を行う工程のいずれであってもよい。すなわち、例えば、少なくとも以下の工程:
・液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥させる工程;
・熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程;
及び
・再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程
をこの順に含む複屈折パターンの作製において、熱処理または電離放射線照射によって前記反応性基のうちの一種を反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、再度熱処理または電離放射線照射を行い前記相異なる反応性基のうち前記工程で反応させたものと異なる反応性基も含めて反応させる工程がパターン状に行われてもよいし、その両方の工程がパターン状に行われてもよい。
【0102】
[パターン露光]
複屈折パターンを作製するためのパターン露光は、複屈折パターン作製材料につき、複屈折性を残したい領域を露光するように行う。露光部の光学異方性層はレターデーション消失温度が上昇する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm程度である。
【0103】
また、画素ごとに複屈折性を調整したい場合には、画素ごとに照射する露光量を調整させればよい。マスクを用いた露光においては、パターンの異なるマスクを用いて、それぞれ異なる露光量で複数回露光を行ってもよいし、濃度マスクを用いて露光量を調整してもよい。生産性の観点では、後者が好ましい。
【0104】
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、(A)一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、(B)一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、(C)一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域、及び、(D)一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。
【0105】
[全面熱処理(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレターデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレターデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
ベークによって複屈折パターン作製材料中の未露光部のレターデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレターデーション消失温度が上昇した露光部はレターデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレターデーションが露光部のレターデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターニング光学異方性層)が作製される。
【0106】
また、ベークを行った複屈折パターン材料の上に新たな複屈折パターン作製材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この手法は、それぞれの光学異方性層に付与するレターデーション値を独立に制御したい時に有用である。
【0107】
[パターン状熱処理(熱パターン書き込み)]
パターン状熱処理の際の加熱温度は、加熱部と非加熱部のレターデーションに差異を生じさせる温度であればよく、特に限定されない。特に加熱部のレターデーションを実質的に0nmとしたい場合には、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレターデーション消失温度以上の温度で加熱することが好ましい。また一方で、加熱温度は光学異方性層の燃焼や着色の生じる温度未満であることが好ましい。一般的には120℃〜260℃程度の加熱を行えばよく、150℃〜250℃がより好ましく、180℃〜230℃がさらに好ましい。
【0108】
複屈折パターン作製材料の一部を加熱する方法は特に限定されないが、加熱体を複屈折パターン作製材料に接触させて行う方法、加熱体を複屈折パターン作製材料のごく近傍に位置させて行う方法、ヒートモード露光を用いて複屈折パターン作製材料を部分加熱する方法などが挙げられる。
【0109】
[レターデーション消失温度以下での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
前記パターン状熱処理が行われた光学異方性層において熱処理が行われなかった領域は、レターデーションを有しつつも未反応の反応性基を残しており、未だ不安定な状態である。未処理領域に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させるために、全面熱処理ないしは全面露光による反応処理を行うことが好ましい。
【0110】
全面熱処理による反応処理は、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレターデーション消失温度より低い温度で、かつ未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。一般的に120〜180℃程度の加熱を行えばよく、130〜170℃がより好ましく、140〜160℃がさらに好ましいが、必要とされる複屈折性(レターデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。熱処理の時間は特に限定されないが、30秒以上5時間以内が好ましく、1分以上2時間以内がより好ましく、2分以上1時間以内が特に好ましい。
【0111】
全面熱処理の代わりに、全面露光によっても反応処理を行うことができる。この際の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm程度である。
【0112】
[仕上げ熱処理]
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的の為に仕上げ熱処理を行ってもよい。特にパターン露光と加熱全面露光、あるいはパターン状熱処理と全面露光で複屈折パターンを作製した場合には効果的である。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、30秒以上5時間以内が好ましく、1分以上2時間以内がより好ましく、2分以上1時間以内が特に好ましい。
【0113】
[複屈折パターン]
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる複屈折パターンは通常はほぼ無色透明であり、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層と偏光板とで挟まれた場合においては特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。すなわち、複屈折パターンは通常は目視ではほぼ不可視な一方で、偏光板を介することで容易に多色の画像が識別可能となる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
本発明において、偏光板を介して視認されるパターンに特に制限はないが、偽造防止の観点などから3色以上を有するものが好ましい。3色以上を有するパターンは、上記の加熱処理やパターン露光等により、レターデーションを3段階以上に調整することで形成することができる。
【0114】
[偽造防止(転写)箔]
本発明の偽造防止(転写)箔は偽造防止ラベル、あるいは、包装紙などの商品パッケージ、各種IDカードなどに貼付して使用することができる。
任意の支持体に、ラミネート、または箔押し等を施すことによって、紙、あるいはフィルム状のラベルとして用いることもできる。また、感圧接着剤層、及び離型層を設けた後、所定の形状に打ち抜くことによって、ステッカー、あるいはシールとして用いることもできる。
また、本発明の偽造防止箔はその厚みが20μm以下、好ましくは10μm以下であるため、偽造防止箔のみを単独で剥離することはきわめて困難である。さらに本発明の偽造(転写)箔は、その薄さから自己支持性が極めて乏しいため、仮支持体から剥離された単独の状態では脆性または延性が高く、破損または変形による潜像の変化が生じて剥離前と同様な状態で取り扱うことができないため、改竄やすり替え等の判別が容易である。
このような偽造防止(転写)箔は、各種証明書、身分証明書、有価証券等の物品に付与して用いることができる。また、高級ブランド品、化粧品、薬品、タバコ等の商品パッケージに用いることで、ブランド保護に好適である。
【実施例】
【0115】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
[偽造防止転写箔の作製]
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、配向層用塗布液AL−1として用いた。

──────────────────────────────―───────―
配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────―───────―
ポリビニルアルコール(PVA205(商品名)、クラレ(株)製)
3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30(商品名)、BASF社製)
1.48
蒸留水 52.10
メタノール 43.21
──────────────────────────────―───────―

【0117】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2は配向制御の目的で添加する円盤状の化合物である。Tetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。

─────────────────────────────────────―――
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
───────────────────────────────―────――――
棒状液晶(LC−1−1) 32.59
水平配向剤(LC−1−2) 0.02
カチオン系光重合開始剤
(CPI100−P(商品名)、サンアプロ株式会社製)
0.66
重合制御剤
(IRGANOX1076(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.07
メチルエチルケトン 66.66
────────────────────────────────―────―――

【0118】
【化10】

【0119】
(転写接着層用塗布液AD−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、転写接着層用塗布液AD−1として用いた。

────────────────────────────────────―──―
転写接着層用塗布液組成(質量%)
─────────────────────────────────────―─―
ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/メタクリル酸メチル
=35.9/22.4/41.7モル比のランダム共重合物
(重量平均分子量3.8万) 8.05
KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬(株)製) 4.83
ラジカル光重合開始剤(2−トリクロロメチル−5−(p−スチリルスチリル)
1,3,4−オキサジアゾール) 0.12
ハイドロキノンモノメチルエーテル 0.002
メガファックF−176PF(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)
0.05
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 34.80
メチルエチルケトン 50.538
メタノール 1.61
───────────────────────────―───────―──―

【0120】
(偽造防止転写箔FP−1の作製)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーL−25T60(商品名)、東レ(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚は1.6μmであった。次いで、配向層をMD方向にラビングし、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ3.5μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−A領域(波長320nm〜400nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において80mJ/cm2であった。本光学異方性層は20℃で固体の高分子で、耐MEK(メチルエチルケトン)性を示した。
ついで、光学異方性層の上に接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.1μmの接着層を形成した。
このフィルムに対して、ミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIを用いて露光照度6.25mW/cmで8.2秒間の露光を行った。フォトマスクIは4つの領域I―A、I―B、I―C、I−Dからなる。領域I―Aは、文字Aの左右反転像、領域I―Bは、文字Bの左右反転像、領域I―Cは、文字Cの左右反転像の形状をしている。領域I−Dはそれ以外の部分で、遮光されている。各々の領域(フォトマスクIの各領域)のλ=365nmの紫外光に対する透過率を表1に示す。
【0121】
表1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
領域 透過率
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
領域A 20%
領域B 33%
領域C 96%
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【0122】
その後、さらに200℃のクリーンオーブンで10分間のベークを行って、本発明の偽造防止転写箔FP−1を作製した。FP−1の、仮支持体を除く膜厚をレーザ顕微鏡にて測定したところ、6.2μmであった。
FP−1の4つの領域I―A、I―B、I―C、I−Dのレターデーションはそれぞれ143nm、202nm、297nm、3nmであった。また、これらの領域の遅相軸は実質的に一定であった。
【0123】
(偽造防止転写箔FP−2の作製)
FP−1の上に、厚さ2μmのホットメルト系接着剤を塗布することによって、偽造防止転写箔FP−2を作製した。FP−2の仮支持体を除く膜厚は、8.2μmであった。
【0124】
(偽造防止転写箔FP−3の作製)
FP−1の上に、厚さ60nmのアルミニウムを蒸着することによって、偽造防止転写箔FP−3を作製した。FP−3の仮支持体を除く膜厚は6.2μmであった。
【0125】
(偽造防止転写箔FP−4の作製)
FP−3の上に、厚さ2μmのホットメルト系接着剤を塗布することによって、偽造防止転写箔FP−4を作製した。FP−4の仮支持体を除く膜厚は8.2μmであった。
【0126】
(偽造防止転写箔FP−5の作製)
FP−1の上に、FDFC 150ワニス(商品名、東洋インキ社製)を塗布した。乾燥膜厚は2μmであった。その後、塗布面にレリーフホログラム型を接触させた状態で紫外線を照射することによって表面に微細な凹凸を形成した。この上に厚さ400nmの硫化亜鉛を真空蒸着して、偽造防止転写箔FP−5を作製した。FP−5の仮支持体を除く膜厚は8.2μmであった。
【0127】
(偽造防止転写箔FP−6の作製)
FP−5の上に、厚さ2μmのホットメルト系接着剤を塗布することによって、偽造防止転写箔FP−6を作製した。FP−6の仮支持体を除く膜厚は、10.2μmであった。
【0128】
(偽造防止転写箔FP−7の作製)
FP−5において、硫化亜鉛の代わりに、厚さ60nmのアルミニウムを蒸着することによって、偽造防止転写箔FP−7を作製した。FP−7の仮支持体を除く膜厚は8.2μmであった。
【0129】
(偽造防止転写箔FP−8の作製)
FP−7の上に、厚さ2μmのホットメルト系接着剤を塗布することによって、偽造防止転写箔FP−8を作製した。FP−8の仮支持体を除く膜厚は、10.2μmであった。
【0130】
(偽造防止転写箔FP−1〜8の使用方法)
偽造防止転写箔FP−1を、アルミ蒸着紙にドライラミネート用接着剤を用いて、圧着させ、PETフィルムを剥離させた。この紙を用いてパッケージを作製したところ、通常の目視では、銀色のパッケージであったが、偏光板をかざすことにより、黒色の「A」、シアン色の「B」、黄色の「C」という文字が現れた。
また、偽造防止転写箔FP−1を、ポリプロピレンフィルムにドライラミネート用接着剤を用いて、圧着させ、PETフィルムを剥離させた。このように作製されたフィルムで反射性の商品をくるんだところ、通常のシュリンクフィルムと同様の外観であった。しかし、偏光板をかざすと、前述のように潜像が観察された。いずれも、商品パッケージに用いることにより、商品の真贋判定に用いることができる。
偽造防止転写箔FP−2を、シルバーインキで印刷された紙にホットスタンピングした。通常の目視では、ホットスタンピングの前後で概観の変化はないが、偏光板をかざすと、前述のように潜像を可視化することができた。
偽造防止転写箔FP−3を、板紙にドライラミネート用接着剤を用いて、圧着させ、PETフィルムを剥離させた。このような板紙で商品パッケージを作製すると、商品の真贋判定を容易に行うことができる。
【0131】
偽造防止転写箔FP−4を、プラスチックカードにホットスタンピングした。このカードは、改ざんされたものかどうかを簡単に判別することができるため、IDカード等に好適に用いることができる。
FP−5、6、7、8については、それぞれ、FP−1、2、3、4と同様の方法で使用することができる。FP−5〜8は、ホログラム層を有していることから、更なる偽造防止効果を有する。また、ホログラム層が視認でき、意匠性にも優れるものであった。
このように、物品に貼付された偽造防止箔を、物品から剥離しようと試みたが、いずれも粉々になってしまい、剥がしとることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】(a)〜(c)はそれぞれ、本発明の偽造防止(転写)箔の一実施形態における光学異方性層と機能性層の積層状態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の偽造防止転写箔の一実施形態における層構成を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ、本発明の偽造防止(転写)箔における複屈折パターンの例を模式化した断面図で示す説明図である。
【図4】(a)〜(h)はそれぞれ、本発明の偽造防止転写箔の層構成の例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0133】
11、21 パターニング光学異方性層
12 機能性層
13、23、43 仮支持体
24、44 離型層
25、45 保護層
26、49 ホログラム層
27、47 反射層
28、48 接着層
50 透明反射層
112、112a、112b、112c、112d、112e
パターニング光学異方性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
総厚が20μm以下の偽造防止箔であって、複屈折性が異なる領域を二つ以上含むパターニング光学異方性層を少なくとも一層含み、同一層内における前記領域は全て、互いに同一の層形成用組成物から形成されている、潜像を形成した偽造防止箔。
【請求項2】
前記パターニング光学異方性層が、反応性基を有する液晶性化合物を重合して形成された層であることを特徴とする、請求項1に記載の偽造防止箔。
【請求項3】
同一パターニング光学異方性層内の遅相軸が実質的に一定であることを特徴とする、請求項1または2に記載の偽造防止箔。
【請求項4】
接着層を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【請求項5】
反射層を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【請求項6】
保護層を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【請求項7】
ホログラム層を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【請求項8】
前記光学異方性層の法線方向から偏光板を介して観察することによって顕在化される潜像が3色以上となるように複屈折性がパターニングされていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【請求項9】
偏光板を介して潜像を視認することができる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の偽造防止箔。
【請求項10】
仮支持体上に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の偽造防止箔が形成されてなることを特徴とする、偽造防止転写箔。
【請求項11】
仮支持体の上に離型層を有する、請求項10に記載の偽造防止転写箔。
【請求項12】
[I]仮支持体上に直接、または他の層を介して、反応性基を有する液晶性化合物を含む層形成用組成物を塗布し、光学異方性層を形成する工程、
[II]前記光学異方性層に対し、パターン状に加熱、またはパターン状に電離放射線を照射する工程、及び
[III]前記光学異方性層の全面を電離放射線照射、または熱処理によって硬化させる工程
を順に含む、請求項10または11に記載の偽造防止転写箔の製造方法。
【請求項13】
請求項10または11に記載の偽造防止転写箔を物品の少なくとも一部に転写したことを特徴とする、偽造防止物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−113249(P2010−113249A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287071(P2008−287071)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】