説明

傾斜コイルにおいて半径方向力を均衡させるためのシステム及び装置

【課題】振動及び音響ノイズを低減させるように傾斜コイル内の半径方向力を均衡させる。
【解決手段】傾斜コイル装置(304、404)は、内側傾斜コイルアセンブリ(324、424)と、外側傾斜コイルアセンブリ(326、426)とを含む。外側傾斜コイルアセンブリは、外側表面、第1の端部(344、444)及び第2の端部(346、446)を有する。本傾斜コイル装置はさらに、外側傾斜コイルアセンブリの外側表面の周りに配置させた力均衡化装置を含む。力均衡化装置は、外側傾斜コイルアセンブリの外側表面の周りに配置させた能動型力均衡化コイル(352、354)を含む。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする米国仮出願第61/503,401号(2011年6月30日提出)の特典を主張するものである。
【0002】
本発明は、全般的には磁気共鳴撮像(MRI)システムに関し、またさらに詳細にはMRIシステム内の傾斜コイルにおいて半径方向力を均衡させるためのシステム及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気共鳴撮像(MRI)は、X線やその他の電離放射線を用いずに人体の内部の像を作成することが可能な医用撮像様式の1つである。MRIは強力なマグネットを用いて強力で均一な静磁場(すなわち、「主磁場」)を発生させている。人体(あるいは、人体の一部)がこの主磁場内に置かれると、組織の水の中の水素原子核に関連する核スピンが偏向を受ける。このことは、これらのスピンに関連する磁気モーメントが主磁場の方向に特異的に整列することになり、これによって当該軸(慣例では、「z軸」)の方向に小さな正味の組織磁化が得られることを意味する。MRIシステムはさらに、電流を加えたときに振幅がより小さい空間変動の磁場を発生させる傾斜コイルと呼ばれる構成要素を備える。典型的には傾斜コイルは、z軸に沿って整列すると共に、x軸、y軸またはz軸のうちの1つの方向で位置に応じて振幅が直線的に変動するような磁場成分を発生させるように設計されている。傾斜コイルの効果は単一の軸に沿って、その磁場強度に対してまた同時に核スピンの共鳴周波数に対してわずかな傾斜(ramp)を生成させることにある。その軸が直交した3つの傾斜コイルを使用すれば、身体内の各箇所において標識共鳴周波数を生成することによってMR信号が「空間エンコード」される。水素原子核の共鳴周波数あるいはその近傍の周波数にあるRFエネルギーのパルスを発生させるためには無線周波数(RF)コイルが使用される。RFコイルを使用すると核スピン系に対して制御された方式でエネルギーが追加される。次いで核スピンがその静止エネルギー状態まで緩和して戻ると、RF信号の形でエネルギーが放たれる。この信号はMRIシステムによって検出されて、コンピュータや周知の再構成アルゴリズムを用いて画像になるように変換される。
【0004】
MRIシステムで使用される傾斜コイルアセンブリは、エポキシ樹脂などの材料によって互いに結合させた内側と外側の傾斜コイルアセンブリからなるシールド式傾斜コイルアセンブリとすることがある。典型的には内側傾斜コイルアセンブリは、X、Y及びZ傾斜コイル対またはコイル組からなる内側(または、主)コイルを含み、また外側傾斜コイルアセンブリはX、Y及びZ傾斜コイル対またはコイル組からなるそれぞれの外側(または、シールド用)コイルを含む。Z傾斜コイルは典型的には、円筒状の表面の周りに導体をらせん状に巻きつけた円筒形状である。横断するX及びY傾斜コイルは、絶縁性の裏当て層を備えた銅パネルから形成するのが一般的である。傾斜コイルの銅層内に導体周回パターン(例えば、指紋パターン)を切り入れることがある。
【0005】
MRIスキャンの間に、MRIシステムによって音響ノイズや振動が発生する可能性がある。この音響ノイズ及び振動は、患者とスキャナ操作者の両者にとって不快かつ潜在的に有害となる可能性がある。MRIシステム内の音響ノイズには、例えば傾斜コイルやRF体幹用コイルを含め幾つかの発生源が存在する。音響ノイズは、撮像動作の間に傾斜コイルをパルス動作させたときの傾斜コイルの振動によって発生することがある。傾斜コイル振動は、静的な磁場と傾斜コイル内に所望の磁場を生成するための電流との相互作用の結果として傾斜コイルに加わる力によって生成される。傾斜コイルアセンブリ上における正味の半径方向力はゼロとすることが可能であるが、傾斜コイル円筒の各半分は大きな半径方向力を受ける可能性がある。これらの半径方向力のために傾斜コイル円筒の各半分の振動が生じ、これが幾つかの音響モード(例えば、フィッシュ(fish)モード、バナナ(banana)モード、その他)の励起を生じさせる可能性がある。さらに傾斜コイルアセンブリの振動によって、マグネットクライオスタット内にヘリウムのボイルオフを生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7141974号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
振動及び音響ノイズを低減させるように傾斜コイル内の半径方向力を均衡するためのシステム及び装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態による磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの傾斜コイル装置は、内側傾斜コイルアセンブリと、内側傾斜コイルアセンブリの周りに配置されかつ外側表面を有する外側傾斜コイルアセンブリと、外側傾斜コイルアセンブリの外側表面の周りに配置させた能動型力均衡化コイルと、を含む。
【0009】
別の実施形態による磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの傾斜コイル装置は、内側傾斜コイルアセンブリと、内側傾斜コイルアセンブリの周りに配置されかつ外側表面、第1の端部及び第2の端部を有する外側傾斜コイルアセンブリと、外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部の周りに配置させた第1の受動型導体ストリップと、外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部の周りに配置させた第2の受動型導体ストリップと、を含む。
【0010】
本発明については、同じ参照番号が同じ部分を示している添付の図面と連係させた以下の詳細な説明からより十分な理解が得られよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態による例示的な磁気共鳴撮像(MRI)システムのブロック概要図である。
【図2】一実施形態による共鳴アセンブリの横側立面概要図である。
【図3】一実施形態によるシールド式傾斜コイルアセンブリの側面断面概要図である。
【図4】一実施形態によるシールド式傾斜コイルアセンブリの側面断面概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、一実施形態による例示的な磁気共鳴撮像(MRI)システムのブロック概要図である。このMRIシステム10の動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及びディスプレイ16を含むオペレータコンソール12から制御を受けている。コンソール12は、リンク18を介してコンピュータシステム20と連絡していると共に、操作者がMRIスキャンを指示し、得られた画像を表示し、画像に対して画像処理を実行しかつデータ及び画像をアーカイブするためのインタフェースを提供する。コンピュータシステム20は、例えばバックプレーン20aを用いることにより提供されるような電気接続及び/またはデータ接続を介して互いに連絡させた多数のモジュールを含む。データ接続は直接配線のリンクとすること、あるいは光ファイバ接続やワイヤレス通信リンクその他とすることがある。コンピュータシステム20のモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに画像データアレイを保存するためのフレームバッファを含むことができるメモリモジュール26が含まれる。代替的な一実施形態では画像プロセッサモジュール22は、CPUモジュール24上の画像処理機能によって置き換えることができる。コンピュータシステム20は、アーカイブ用媒体デバイス、永続的またはバックアップ用メモリ記憶またはネットワークとリンクさせている。コンピュータシステム20はさらに、リンク34を介して単独のシステム制御コンピュータ32と連絡させることもある。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0013】
システム制御コンピュータ32は、電気接続及び/またはデータ接続32aを介して互いに連絡させた1組のモジュールを含む。データ接続32aは、直接配線のリンクとすること、あるいは光ファイバ接続やワイヤレス通信リンクその他とすることがある。代替的実施形態では、コンピュータシステム20及びシステム制御コンピュータ32のモジュールは同じコンピュータシステムまたは複数のコンピュータシステム上で実現させることができる。システム制御コンピュータ32のモジュールには、通信リンク40を介してオペレータコンソール12と接続したCPUモジュール36及びパルス発生器モジュール38を含む。別法としてパルス発生器モジュール38は、スキャナ装置(例えば、共鳴アセンブリ52)内に組み込まれることがある。システム制御コンピュータ32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示する操作者からのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、発生させるRFパルス及びパルスシーケンスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを記述した命令、コマンド及び/または要求を送出することによって所望のパルスシーケンスを繰り出す(すなわち、実行する)システム構成要素を操作している。パルス発生器モジュール38は傾斜増幅器システム42に接続されて、スキャン中に使用される傾斜パルスのタイミング及び形状を制御する傾斜波形と呼ぶデータを生成している。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。このスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48は患者テーブルを希望するスキャン位置まで移動させるコマンドを受け取っている。
【0014】
パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器からなる傾斜増幅器システム42に加えられる。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜パルスを生成させるように全体を番号50で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜磁場コイルアセンブリ50は、超伝導主コイル54を備えた偏向用超伝導マグネットを含んだ共鳴アセンブリ52の一部を形成している。共鳴アセンブリ52は、全身用RFコイル56、表面または並列撮像コイル76あるいはこれら両者を含むことがある。RFコイルアセンブリのコイル56、76は、送信と受信の両方をするように構成されること、あるいは送信単独または受信単独向けに構成されることがある。患者または撮像対象70は共鳴アセンブリ52の円筒状の患者撮像ボリューム72内部に位置決めされることがある。システム制御コンピュータ32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56、76に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。別法として、励起された原子核により放出された信号は並列コイルや表面コイル76など単独の受信コイルによって検知されることがある。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をRFコイル56と電気的に接続させ、また受信モードでは前置増幅器64をRFコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によりさらに、送信モードと受信モードのいずれに関しても単独のRFコイル(例えば、並列コイルや表面コイル76)を使用することが可能となる。
【0015】
RFコイル56あるいは並列または表面コイル76により検知されたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御コンピュータ32内のメモリモジュール66に転送される。典型的には、MR信号に対応したデータフレームは、画像作成のために後で変換を受けるまでメモリモジュール66内に一時的に保存される。アレイプロセッサ68は周知の変換方法(フーリエ変換が最も一般的)を用いてMR信号から画像を作成する。これらの画像はリンク34を介してコンピュータシステム20に伝達され、ここで画像はメモリ内に保存される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて、長期記憶内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0016】
図2は、一実施形態による共鳴アセンブリの横側立面概要図である。共鳴アセンブリ200は、図1に示したMRIシステム10などのMRIシステム内で用いることができる。共鳴アセンブリ200は、形状が円筒形であると共に、超伝導マグネット202、傾斜コイルアセンブリ204及びRFコイル206(ただし、これらの要素に限らない)を含む。カバー、支持体、懸架部材、端部キャップ、ブラケット、その他などの様々な別の要素は、明瞭にするために図2から除いてある。円筒状の患者ボリュームまたはボア208は患者ボアチューブ210によって囲繞されている。RFコイル206は円筒状であると共に、患者ボアチューブ210の外側表面の周りに配置されかつ円筒状の傾斜コイルアセンブリ204の内部に装着されている。傾斜コイルアセンブリ204はRFコイル206の周りで間隔をあけた共軸関係で配置されており、また傾斜コイルアセンブリ204はRFコイル206を円周方向で囲繞している。傾斜コイルアセンブリ204は、マグネット202の常温ボア250の内部に装着されると共に、マグネット202によって円周方向で囲繞されている。
【0017】
患者または撮像対象212は、患者テーブルまたはクレードル216上で中心軸(例えば、Z軸)214に沿って共鳴アセンブリ200内に挿入されることがある。患者テーブルまたはクレードル216は、共鳴アセンブリの「患者端部」242の位置で共鳴アセンブリ内に挿入されると共に、反対側の端部は「サービス端部」240となる。中心軸214は、マグネット202が発生させる主磁場B0の方向と平行な共鳴アセンブリ200のチューブ軸に沿って整列している。RFコイル206は、患者または対象212に対して無線周波数パルス(または、複数のパルス)を加えるために用いられることがあり、またMR撮像の分野でよく知られるような対象212から戻されるMR情報を受け取るために用いられることがある。傾斜コイルアセンブリ204は、撮像ボリューム内の点の周知の方式による空間エンコードに用いられる時刻依存の傾斜磁気パルスを発生させる。
【0018】
超伝導マグネット202は例えば、その各々が大きな電流の伝達が可能であるような半径方向に整列させかつ長手方向に離間させた幾つかの超伝導コイル218を含むことがある。超伝導コイル218は患者ボリューム208の内部に磁場B0を生成するように設計されている。超伝導コイル218は、極低温エンベロープ222内部の極低温環境内に封入されている。この極低温環境は、超伝導コイル218をゼロ抵抗の超伝導状態とするように超伝導コイル218の温度を適当な臨界温度未満に維持するように設計されている。極低温エンベロープ222は例えば、マグネット巻き線を周知の方式で包含かつ冷却するためにヘリウム容器(図示せず)及び熱シールドまたは低温シールド(図示せず)を含むことがある。超伝導マグネット202は、例えばクライオスタット容器などのマグネット容器220によって封入されている。マグネット容器220は、極低温エンベロープ222に対する真空の維持並びにこれへの熱伝達の防止をするように構成されている。マグネット容器220の円筒状の内側表面によって常温ボア250が画定されている。
【0019】
傾斜コイルアセンブリ204は、自己シールド式の傾斜コイルアセンブリである。傾斜コイルアセンブリ204は、共通軸214を基準として共軸性の配列で配置させた円筒状の内側傾斜コイルアセンブリまたは巻き線224並びに円筒状の外側傾斜コイルアセンブリまたは巻き線226を備える。内側傾斜コイルアセンブリ224は内側の(すなわち、主)X、Y及びZ傾斜コイルを含み、また外側傾斜コイルアセンブリ226は対応する外側(すなわち、シールド用の)X、Y及びZ傾斜コイルを含む。傾斜コイルアセンブリ204のコイルは、MR撮像における要求に従って患者ボリューム208内に傾斜磁場を発生させるようにコイル内に電流を通過させることによって起動させている。内側傾斜コイルアセンブリ224と外側傾斜コイルアセンブリ226の間のボリューム238またはスペースは、例えばエポキシ樹脂、粘弾性樹脂、ポリウレタンその他などの結合用材料で満たされることがある。別法として、ガラスビーズ、シリカ及びアルミナなどの充填材料を伴ったエポキシ樹脂を結束用材料として用いることもある。図1及び2に関連して上で記載した円筒状のアセンブリと異なるマグネット及び傾斜の空間配置を用いることもあることを理解すべきである。例えば、分割オープン型MRIシステムにおける平坦な傾斜幾何学配置でも以下に記載するような本発明の実施形態を利用することができる。
【0020】
傾斜コイルアセンブリ204の第1の端部(または、半分)244と第2の端部(または、半分)246に対する半径方向力を均衡させるように構成させたアセンブリまたは装置は、図3及び4に関連して以下でより詳細に記載するように外側傾斜コイルアセンブリ226とマグネット常温ボア250の間のかつ外側傾斜コイルアセンブリ226の外側直径の周りにあるギャップまたはスペース260内に位置決めされることがある。図3は、一実施形態によるシールド式傾斜コイルアセンブリの側面断面概要図である。支持体、懸架部材、端部キャップ、ブラケット、その他などの様々な要素は明瞭にするために図3から除いてある。傾斜コイルアセンブリ304は、図2に示した共鳴アセンブリ100などMRIシステムの共鳴アセンブリ内に挿入されることがある。
【0021】
上に記載したのと同様に、傾斜コイルアセンブリ304は円筒状であると共に、患者ボリュームまたはボア308を囲繞している。傾斜コイルアセンブリ304は、内側傾斜コイルアセンブリ324及び外側傾斜コイルアセンブリ326を含む。内側傾斜コイルアセンブリ324と外側傾斜コイルアセンブリ326は結合用材料(例えば、エポキシ樹脂、粘弾性樹脂、ポリウレタン、その他)を用いてボリューム338内で互いに結合させている。傾斜コイルアセンブリ304はさらに、外側傾斜コイルアセンブリ326の外側直径の外側でかつマグネットアセンブリ302の外側傾斜コイルアセンブリ326と常温ボア350の間のギャップまたはスペース360内に位置決めされた力均衡用層を含む。この力均衡化層は、傾斜コイルアセンブリ304の各端部(または、半分)344、346に対する半径方向力を相殺する(すなわち、ゼロにする)ように構成されている。この力の相殺によって、円筒状の傾斜コイルアセンブリ304の各端部(または、半分)344、346の振動が低減されることになる。この振動の低減は次いで、傾斜コイルアセンブリ304が発生させる音響ノイズを低減させることになる。さらに振動の低減によってマグネットクライオスタット220(図2参照)内における振動誘導のヘリウムボイルオフも低減されることになる。
【0022】
図3に示した実施形態では、力均衡化層は能動型力均衡化層であると共に、傾斜コイルアセンブリ304の第1の端部(または、半分)344の位置にある能動型コイルループ組352と、傾斜コイルアセンブリ304の第2の端部(または、半分)346の位置にある能動型コイルループ組354と、を含む。能動型コイルループ352、354は、外側傾斜コイルアセンブリ326円筒の外側直径(または、外側表面)の周りに配置させている。一実施形態では、外側傾斜コイルアセンブリ326の外側表面と能動型コイルループ352及び354との間に絶縁材料(例えば、ガラス)の層を配置させている。さらに、能動型コイルループ352、354上に周知の方式でエポキシ層を配置させることがある。
【0023】
傾斜コイルアセンブリ304の第1の端部344に位置決めされた能動型コイルループ組352は、傾斜コイルアセンブリ304及びMRシステムの動作時に第1の端部344に加わる半径方向力を相殺するように構成されている。傾斜コイルアセンブリ304の第2の端部346に位置決めされた能動型コイルループ組354は、傾斜コイルアセンブリ304及びMRシステムの動作時に第2の端部346に加わる半径方向力を相殺するように構成されている。能動型コイルループ352、354内の電流によって、傾斜コイルアセンブリ304のそれぞれの端部344、346上の半径方向力を相殺するような反対方向の力が提供される。能動型コイルループ352、354の箇所並びに能動型コイルループ352、354の数(または、周回数)は、傾斜コイルアセンブリ304上(及び、端部344、346上)における力分布並びにマグネット302及び傾斜コイルアセンブリ304の設計(ただし、これらに限らない)を含む多くの要因に基づくことがある。能動型コイルループ352、354は銅などの材料から製作されることがある。
【0024】
一実施形態ではその能動型コイルループ352及び能動型コイルループ354が傾斜コイルアセンブリ304の傾斜コイルと直列に接続されると共に、傾斜増幅器システム42(図1参照)によって駆動される(例えば、電流提供される)ことがある。代替的な一実施形態ではその能動型コイルループ352、354は、傾斜コイルアセンブリ304の傾斜コイルと別に駆動されることがある。例えば、傾斜増幅器システム42(図1参照)から分離した端子を能動型コイルループ352、354に接続させることがある。
【0025】
図4は、代替的な一実施形態によるシールド式傾斜コイルアセンブリの側面断面概要図である。支持体、懸架部材、端部キャップ、ブラケット、その他などの様々な要素は明瞭にするために図3から除いてある。傾斜コイルアセンブリ404は、図2に示した共鳴アセンブリ100などMRIシステムの共鳴アセンブリ内に挿入されることがある。上に記載したのと同様に傾斜コイルアセンブリ404は、円筒状であると共に、患者ボリュームまたはボア408を囲繞している。傾斜コイルアセンブリ404は、内側傾斜コイルアセンブリ424及び外側傾斜コイルアセンブリ426を含む。内側傾斜コイルアセンブリ424と外側傾斜コイルアセンブリ426は、ボリューム438内で結合用材料を用いて互いに結合させている。傾斜コイルアセンブリ404はさらに、外側傾斜コイルアセンブリ426の外側直径の外部でかつマグネットアセンブリ402の外側傾斜コイルアセンブリ426と常温ボア450の間のギャップまたはスペース460内に位置決めされた力均衡化層を含む。この力均衡化層は、傾斜コイルアセンブリ404の各端部(または、半分)444、446に対する半径方向力を相殺する(すなわち、ゼロにする)ように構成されている。
【0026】
図4に示した実施形態では力均衡化層は、受動型力均衡化層であると共に、傾斜コイルアセンブリ404の第1の端部(または、半分)444の位置にある受動型導体ストリップ470と、傾斜コイルアセンブリ404の第2の端部(または、半分)446の位置にある受動型導体ストリップ472と、を含む。受動型導体ストリップ470、472は、外側傾斜コイルアセンブリ426円筒の外側直径(または、外側表面)の周りに配置させている。一実施形態では、外側傾斜コイルアセンブリ426の外側表面と受動型導体ストリップ470、472の間に絶縁材料(例えば、ガラス)の層を配置させている。さらに、受動型導体ストリップ470、472上に周知の方式によりエポキシ層を配置させることがある。
【0027】
傾斜コイルアセンブリ404の第1の端部444に位置決めされた受動型導体ストリップ470は、傾斜コイルアセンブリ404及びMRシステムの動作時に第1の端部444に加わる半径方向力を相殺するように構成されている。傾斜コイルアセンブリ404の第2の端部446に位置決めされた受動型導体ストリップ472は、傾斜コイルアセンブリ404及びMRシステムの動作時に第2の端部446に加わる半径方向力を相殺するように構成されている。受動型導体ストリップ470、472内に誘導される電流によって、傾斜コイルアセンブリ404の対応する端部444、446に対する半径方向力を相殺するために要求される反対方向の力が提供される。受動型導体ストリップ470、472の箇所並びに受動型導体ストリップ470、472のサイズ及び寸法は、傾斜コイルアセンブリ404上(及び、端部444、446上)における力分布並びにマグネット402及び傾斜コイルアセンブリ404の設計(ただし、これらに限らない)を含む多くの要因に基づくことがある。一実施形態ではその受動型導体ストリップ470、472は、漏れ磁場が高い箇所に位置決めされる。受動型導体ストリップは銅から製作されることが好ましい。
【0028】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による本発明の製作及び使用を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。任意の処理法や方法の各工程の順序及びシーケンスは、代替的な実施形態に応じて変更されるまたは順序構成し直されることがある。
【0029】
本発明に対してその精神を逸脱することなく別の多くの変更や修正を実施することができる。こうした変更及びその他の変更の範囲は、添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。
【符号の説明】
【0030】
(図1)
10 MRIシステム
12 オペレータコンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 ディスプレイ
18 リンク
20 コンピュータシステム
20a バックプレーン
22 画像プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
32 システム制御コンピュータ
32a データ接続
34 リンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 通信リンク
42 傾斜増幅器システム
44 生理学的収集制御器
46 スキャン室インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 傾斜コイルアセンブリ
52 共鳴アセンブリ
54 超伝導マグネット
56 RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
70 患者または撮像対象
72 円筒状の患者撮像ボリューム
76 表面または並列撮像コイル
(図2)
200 共鳴アセンブリ
202 超伝導マグネット
204 傾斜コイルアセンブリ
206 RFコイル
208 患者ボリュームまたはボア
210 患者ボアチューブ
212 患者または撮像対象
214 中心軸
216 患者テーブルまたはクレードル
218 超伝導コイル
220 マグネット容器
222 極低温エンベロープ
224 内側傾斜コイルアセンブリ
226 外側傾斜コイルアセンブリ
238 内側と外側傾斜コイルアセンブリの間のボリューム
240 共鳴アセンブリのサービス端部
242 共鳴アセンブリの患者端部
244 傾斜コイルアセンブリの第1の端部(または、半分)
246 傾斜コイルアセンブリの第2の端部(または、半分)
250 常温ボア
260 外側傾斜コイルアセンブリと常温ボアの間のギャップまたはスペース
(図3)
302 マグネットアセンブリ
304 傾斜コイルアセンブリ
308 患者ボリュームまたはボア
324 内側傾斜コイルアセンブリ
326 外側傾斜コイルアセンブリ
338 内側と外側傾斜コイルアセンブリの間のボリューム
344 傾斜コイルアセンブリの第1の端部(または、半分)
346 傾斜コイルアセンブリの第2の端部(または、半分)
350 常温ボア
352 能動型コイルループの組
354 能動型コイルループの組
360 外側傾斜コイルアセンブリと常温ボアの間のギャップまたはスペース
(図4)
402 マグネットアセンブリ
404 傾斜コイルアセンブリ
408 患者ボリュームまたはボア
424 内側傾斜コイルアセンブリ
426 外側傾斜コイルアセンブリ
438 内側と外側傾斜コイルアセンブリの間のボリューム
444 傾斜コイルアセンブリの第1の端部(または、半分)
446 傾斜コイルアセンブリの第2の端部(または、半分)
450 常温ボア
460 外側傾斜コイルアセンブリと常温ボアの間のギャップまたはスペース
470 受動型導体ストリップ
472 受動型導体ストリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの傾斜コイル装置(304)であって、
内側傾斜コイルアセンブリ(324)と、
内側傾斜コイルアセンブリの周りに配置されかつ外側表面を有する外側傾斜コイルアセンブリ(326)と、
外側傾斜コイルアセンブリの外側表面の周りに配置させた能動型力均衡化コイル(352、354)と、
を備える傾斜コイル装置(304)。
【請求項2】
前記能動型力均衡化コイル(352、354)は、内側(324)と外側(326)の傾斜コイルアセンブリに加わる半径方向力を相殺するように構成されている、請求項1に記載の傾斜コイル装置。
【請求項3】
前記能動型力均衡化コイル(352、354)は導体材料から構成されている、請求項1に記載の傾斜コイル装置。
【請求項4】
前記能動型力均衡化コイル(352、354)の外側傾斜コイルアセンブリの外側表面上での位置は内側と外側傾斜コイルアセンブリ上における力分布に基づいている、請求項2に記載の傾斜コイル装置。
【請求項5】
前記外側傾斜コイルアセンブリ(326)はさらに第1の端部(344)及び第2の端部(346)を備えており、かつ前記能動型力均衡化コイルは外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部の周りに配置させた第1の能動型力均衡化コイル(352)と外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部の周りに配置させた第2の能動型力均衡化コイル(354)とを備えている、請求項1に記載の傾斜コイル装置。
【請求項6】
前記第1の能動型力均衡化コイル(352)は、外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部(344)に加わる半径方向力を相殺するように構成されている、請求項5に記載の傾斜コイルアセンブリ。
【請求項7】
前記第2の能動型力均衡化コイル(354)は、外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部(346)に加わる半径方向力を相殺するように構成されている、請求項5に記載の傾斜コイル装置。
【請求項8】
磁気共鳴撮像(MRI)システム向けの傾斜コイル装置(404)であって、
内側傾斜コイルアセンブリ(424)と、
内側傾斜コイルアセンブリの周りに配置されかつ外側表面、第1の端部(444)及び第2の端部(446)を有する外側傾斜コイルアセンブリ(426)と、
外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部(444)の周りに配置させた第1の受動型導体ストリップ(470)と、
外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部(446)の周りに配置させた第2の受動型導体ストリップ(472)と、
を備える傾斜コイル装置(404)。
【請求項9】
前記第1の受動型導体ストリップ(470)は、外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部(444)に加わる半径方向力を相殺するように構成されている、請求項8に記載の傾斜コイル装置。
【請求項10】
前記第2の受動型導体ストリップ(472)は、外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部(446)に加わる半径方向力を相殺するように構成されている、請求項8に記載の傾斜コイル装置。
【請求項11】
前記第1の受動型導体ストリップ(470)は、外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部(444)上の高い漏れ磁場を有する箇所に位置決めされている、請求項8に記載の傾斜コイル装置。
【請求項12】
前記第2の受動型導体ストリップ(472)は、外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部(446)上の高い漏れ磁場を有する箇所に位置決めされている、請求項8に記載の傾斜コイル装置。
【請求項13】
前記第1の受動型導体ストリップ(470)及び第2の受動型導体ストリップ(472)は銅から構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の受動型導体ストリップ(470)の位置は、外側傾斜コイルアセンブリの第1の端部(444)上の力分布に基づいている、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
前記第2の受動型導体ストリップ(472)の位置は、外側傾斜コイルアセンブリの第2の端部(446)上の力分布に基づいている、請求項8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−13724(P2013−13724A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144875(P2012−144875)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】