説明

傾斜地における宅地造成用の擁壁

【課題】宅地造成用の擁壁を用いて造成した宅地上に建造物を建てる際に擁壁の保持構造物が地下で障害にならない宅地造成用の擁壁を提供する。
【解決手段】擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜地における宅地造成用の擁壁に関するものであり、特に本発明は、傾斜地を有効に利用して安全な宅地を造成するために用いられる宅地造成用の擁壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
傾斜地の崩落を防止するための従来の擁壁工法の原理は、石やブロック等の擁壁材料が重みで傾斜地にもたれ掛った状態で擁壁を構築する方法や、傾斜地の土を掘削して擁壁と底盤からなるL型の構築物を作り、そのL型構築物を埋め戻して擁壁と底盤部分を安定させる方法、並びにH型鋼等の凹部嵌合溝を有する親杭を80〜150cm程度の間隔で打設して横矢板を前記親杭間の凹部嵌合溝に嵌着して擁壁を構築する方法等がある。
【0003】
また、近年は土地を有効利用するために傾斜地の利用は益々盛んで、傾斜地において実施される宅地造成工法では、特に豪雨や地震による地盤の崩壊を確実に防止できる擁壁を設けて安全な宅地の造成ができる工法や、比較的簡単に施工できる擁壁の構築工法の開発が求められており、その擁壁の構築工法は、傾斜地を含む狭隘な地域でも施工が可能である事、また、工事が短期間で出来ることや、工事費が比較的安価であること等が、大きなニーズとなってきている。
【0004】
斯くして、本発明の原点となる従来例は、特開2000−297403号公報(以下、特許文献1と称する)に記載された第1の実施形態であり、該特許文献1の第1の実施形態には、上述した傾斜地を含む狭隘な地域でも施工が可能であり、また、工事が比較的短期間で、安価に施工が出来る擁壁の施工方法を提供することを目的とした発明が記載されている。
【0005】
特許文献1の発明を概略説明すると、図10(A)は、特許文献1に開示された発明を示す断面図であり、図10(B)は同じく平面図である。図10(A)、(B)において、50は基礎、51は支柱、52は壁版、53はアンカーウェイト、54はタイバー、55は床板である。
【0006】
擁壁はどのような構造でもよいが、ここでは一例として、適当な間隔で杭状の基礎50を形成し、H型鋼などの支柱51を立てる。そして、支柱51間にPC版などにより壁版52を設け、擁壁を構築している。一方、擁壁よりも山側の安定地盤にアンカーウェイト53を設置し、アンカーウェイト53と擁壁(支柱51)間をタイバー54で結ぶ。アンカーウェイト53は、例えば鉄筋コンクリートや杭などで構成することができる。また、タイバー54は、例えば擁壁(支柱51)とアンカーウェイト53間に1ないし複数本のワイヤーを張設し、あるいは骨材を両端で固定し、該ワイヤーあるいは骨材をコンクリート等によって固めて構成することができる。さらには、PC版を擁壁(支柱51)とアンカーウェイト53に固定することによって構成することもできる。
【0007】
そして、特許文献1に記載された実施形態では、床板55を壁版52よりも谷側に張り出して設置した場合、床板55の自重や床板55上にかかる荷重によって、擁壁は谷側にモーメント力を受ける。さらに擁壁は、山側の土圧と谷側の土圧の大きさの違いから、谷側に向く方向の力を受けている。しかし、アンカーウェイト53が安定地盤に設置され、アンカーウェイト53と擁壁とがタイバー54によって結ばれているので、アンカーウェイト53の受ける土圧や、タイバー54が周囲より受ける摩擦力や土圧などによって、上述のような擁壁にかかる力に対抗することができると、している。
【0008】
然しながら、特許文献1に記載された発明では、各擁壁(支柱51)の山側、即ち、裏面側には、夫々の擁壁(支柱51)を保持するためのタイバー54とアンカーウェイト53が連結、一体化されており、夫々の擁壁(支柱51)の裏面から安定地盤まで延びているタイバー54の部材と安定地盤上に設置されるアンカーウェイト53は、造成された宅地の地中に埋蔵された構造物として存在することになり、宅地上に建造物を構築する際の障害となることが多い。
【0009】
従って、特許文献1の発明は、工事が比較的短期間で、安価に施工が出来る擁壁の構築方法を提供することが可能となり、谷側に大きく張り出して設置される道路等の擁壁構築工法の発展に大いに寄与したが、夫々の擁壁(支柱51)の裏面から安定地盤まで延びているタイバー54の部材と安定地盤上に設置されるアンカーウェイト53は、造成された宅地の地中に埋蔵された構造物として存在することになり、宅地上に建造物を構築する際の障害となる欠点を有しており、この点の改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−297403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、傾斜地に擁壁を構築して宅地造成を行う際に、擁壁を保持するタイバーや安定地盤上に設置されるアンカーウェイトが造成宅地の地中に埋蔵された構造物として存在せず、造成宅地上に建造物を建てる際の障害にならない傾斜地における宅地造成用の擁壁を提供するものである。
【0012】
また、本発明において、擁壁を構成する夫々の擁壁パネルは、中央部に親杭の上部が構成する支柱を挿入できる貫通穴を有し、該貫通穴の外周部裏面にはブラケット状に突設された形状で一部にタイバー固着面を形成可能であり、該擁壁パネルの表面は前記支柱の貫通穴を中心に左右方向に等しく展開する平板形状を有しており、該擁壁パネルは打設された親杭の上部に形成された支柱に挿入されて積層されることにより擁壁を構成するもので、該擁壁パネルをもちいることにより、狭隘な傾斜地を有する地域においても効率良く安全な宅地造成用の擁壁が施工可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における課題を解決するための手段として、本発明は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所(任意高さで)、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成とした。
【0014】
そして、本発明における擁壁とタイバー袖壁との連繋は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成となし、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁は施工現場において鉄筋コンクリートを打設して製作され、該タイバー袖壁と前記擁壁裏面との接続はアンカーやケミカルアンカーを介して一体化されている構成とした。
【0015】
また、本発明における擁壁とタイバー袖壁との連繋は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成となし、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁は直方体形状を有した複数個のPCコンクリートブロック片を下方より積み重ね縦横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋し一体化されており、該タイバー袖壁と擁壁裏面との接続も横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋して一体化している構成としてもよい。
【0016】
更に、本発明における擁壁とタイバー袖壁との連繋は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成となし、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁はU字形状を有したPCコンクリートブロック片を下方より積み重ね夫々のU字形状内部にコンクリートを打設可能となし、該U字形状のPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁と擁壁の一体化は縦横に配置され緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて行う構成とすることも可能である。
【0017】
そして、本発明における擁壁とタイバー袖壁の連繋において、造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されるタイバー袖壁の構成部材は、直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片を採用し、該直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片にはブロック片の積層後にコンクリートを打設することにより少なくとも夫々のPCコンクリートブロック片が縦横に連繋可能なコンクリート流入用穴部を有している構成とした。
【発明の効果】
【0018】
而して、本発明は、傾斜地に擁壁を構築して宅地造成を行う際に、擁壁を保持するタイバーや安定地盤上に設置されるアンカーウェイトが造成宅地の地中に埋蔵された構造物として存在せず、造成宅地上に建造物を建てる際の障害にならない傾斜地における宅地造成用の擁壁を提供することが可能である。
【0019】
また、本発明は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構成するものであり、擁壁パネルのサイズは、幅約2000mm、高さ約1000mm程度の比較的小さなモジュールとすることができ、また、タイバー袖壁部材においても、直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片等を積み重ね連結する構成が可能であることから、狭隘な傾斜地においても小型の楊重機にて施工することが可能である。
【0020】
更に、本発明は、施工現場に型枠大工や配筋工などの熟練工を投入して工事する必要がなく、また、擁壁パネルやタイバー袖壁部材も工場内生産のPCコンクリート製品を用いることが可能で、その施工方法も簡略化できる事から工事が短期間で行え、効率良く安全な宅地造成用の擁壁施工が行えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(A)本発明に使用される擁壁パネルの形状を示す平面図である。 (B)本発明に使用される擁壁パネルの形状を示す正面図である。
【図2】本発明を傾斜地に実施した状態を示す平面説明図である。
【図3】本発明を実施した状態を示す正面図である。
【図4】実施例1を説明する斜視図で擁壁パネル、タイバー袖壁、頭繋ぎ部材の構成説明図である。
【図5】実施例2を説明する斜視図でPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁構成図である。
【図6】実施例2を説明するタイバー袖壁部の側面図である。
【図7】実施例2を説明するPCコンクリートブロック片からなるタイバー部材形状図である。
【図8】実施例3を説明するPCコンクリートブロック片からなるタイバー部材形状図である。
【図9】実施例3を説明するタイバー袖壁部の側面図である。
【図10】(A)従来の擁壁の施工例を説明する断面図である。 (B)従来の擁壁施工例を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、傾斜地に擁壁を構築して宅地造成を行う際に、擁壁を保持するタイバーや安定地盤上に設置されるアンカーウェイトが造成宅地の地中に埋蔵された構造物として存在せず、造成宅地上に建造物を建てる際の障害にならない傾斜地における宅地造成用の擁壁を提供するものである。
【0023】
また、本発明において、擁壁を構成する夫々の擁壁パネルは、中央部に親杭の上部が構成する支柱を挿入できる貫通穴を有し、該貫通穴の外周部裏面にはブラケット状に突設された形状で一部にタイバー固着面を形成可能であり、該擁壁パネルの表面は前記支柱の貫通穴を中心に左右方向に等しく展開する平板形状を有しており、該擁壁パネルは打設された親杭の上部に形成された支柱に挿入されて積層されることにより擁壁を構成するもので、該擁壁パネルをもちいることにより、狭隘な傾斜地を有する地域においても効率良く安全な宅地造成用の擁壁が施工を可能にした。
【0024】
斯くして、本発明は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所(任意高さで)、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されていることを要旨としている。
【0025】
そして、本発明における擁壁とタイバー袖壁との連繋は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔にて打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成となし、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁は施工現場において鉄筋コンクリートを打設して製作され、該タイバー袖壁と前記擁壁裏面との接続はアンカーやケミカルアンカーを介して一体化されている構成とした。
【0026】
また、本発明における擁壁とタイバー袖壁との連繋は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔にて打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成となし、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁は直方体形状を有した複数個のPCコンクリートブロック片を下方より積み重ね縦横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋し一体化されており、該タイバー袖壁と擁壁裏面との接続も横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋して一体化している構成とすることも好ましい。
【0027】
更に、本発明における擁壁とタイバー袖壁との連繋は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔にて打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されている構成となし、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁はU字形状を有したPCコンクリートブロック片を下方より積み重ね夫々のU字形状内部にコンクリートを打設可能となし、該U字形状のPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁と擁壁の一体化は縦横に配置され緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて行う構成とすることも好ましい。
【0028】
そして、本発明における擁壁とタイバー袖壁の連繋において、造成宅地の各敷地境界線上内のみに埋設されるタイバー袖壁の構成部材は、直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片を採用し、該直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片にはブロック片の積層後にコンクリートを打設することにより少なくとも夫々のPCコンクリートブロック片が縦横に連繋可能なコンクリート流入用穴部を有している構成とすることも好ましい。
【実施例1】
【0029】
図1乃至図4は本発明の実施例1を説明するものであり、図1(A)は本発明に使用される擁壁パネルの平面図、図1(B)は図1(A)の正面図、図2は本発明を傾斜地に実施した状態を示す平面説明図、図3は実施例1を説明する擁壁の正面図、図4は実施例1を説明する斜視図で擁壁パネル、タイバー袖壁、頭繋ぎ部材の構成説明図である。
【0030】
図1(A)(B)において、1は擁壁パネル、2は擁壁パネル1の中央部に構成される貫通穴、3はタイバー固着面、4は擁壁パネルを積層する際に他の擁壁パネルとの嵌合に使用されるガイドピンを示している。
【0031】
実施例1において、擁壁を構成する夫々の擁壁パネル1は中央部に親杭の上部が構成するH型鋼等による支柱を挿入できる貫通穴2を有し、該貫通穴2の外周部にはブラケット状に突設された形状で一部にタイバー固着面3を形成可能であり、該擁壁パネル1の表面は前記支柱の貫通穴2を中心に左右方向に等しく展開する平板形状を有しており、該擁壁パネル1は打設された親杭の上部に形成された支柱に挿入されて積層され擁壁を構成するものである。
【0032】
図2は本発明を傾斜地に実施した状態を示す平面図であり、図2において、5は道路、6a、6b、6cは本発明により造成された宅地、7a、7bは造成された宅地の敷地境界線、8は擁壁、1a、1b、1c・・・は擁壁パネル、2a、2b、2c・・・は貫通穴、9a、9b、9c・・・は親杭の上部に形成された支柱、10は前記擁壁パネル1a、1b、1c・・・を載置して積層するための基台、11a、11bはタイバー袖壁で、該タイバー袖壁11a、11bは前記擁壁パネルのタイバー固着面3に接着材やアンカーボルト、またはケミカルアンカー等にて連繋され一体化されている。
【0033】
そして、実施例1において、タイバー袖壁11a、11b間は、造成された宅地6bの傾斜面側を擁壁パネル1a〜1eの5枚にて形成しており、タイバー袖壁11a、11bは夫々の宅地6a、6b、6cの敷地境界線上7a、7b上に設置されている。
【0034】
図3は、図2にて示した擁壁8の正面図であり、図3において、12a、12b、12c…は親杭、9a、9b、9c・・・は親杭の上部に形成された支柱、該支柱9a、9b、9c・・・には、夫々擁壁パネル1a、1b、1c・・・に擁壁パネルが3枚ずつ積層されていて、高さを有する擁壁8を構成している。そして、各擁壁パネル1a、1b、1c・・・は夫々の支柱9a、9b、9c・・・により保持されているが、その上部を頭繋ぎ部材13にて連繋されていて、擁壁8として一体化されており、また、前記擁壁8は、図2にて示す如く、擁壁パネル1a、1eの部分でタイバー袖壁11a、11bが安定地盤方向に設置された構成を有しており、支柱9a、9b、9c・・・と頭繋ぎ部材13、並びにタイバー袖壁11a、11bにより擁壁8の強度を保持している。
【0035】
図4は、前記擁壁8とタイバー袖壁11a、そして頭繋ぎ部材13の構成を示す斜視図で、12aは親杭、9aは支柱、8は擁壁パネルを前記支柱9aにより積層した擁壁を示しており、該擁壁8の裏面で夫々の擁壁パネル1a等のタイバー固着面3には、PCコンクリートブロックや現場施工の鉄筋コンクリート製タイバー袖壁11aが固着一体化されている。そして、この擁壁パネルの固着面3とタイバー袖壁11aの固着手段は、接着材やアンカーボルト、またはケミカルアンカー等が使用されている。
【0036】
斯くして、本発明の実施例1は、親杭12a、12b、12c・・・上部が構成する支柱9a、9b、9c・・・を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱9a、9b、9c・・・により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル1a、1b、1c・・・と、該夫々の支柱9a、9b、9c・・・により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの上部を頭繋部材13にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁8を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁8裏面にタイバー袖壁11a、11bを設け、該夫々のタイバー袖壁11a、11bが造成宅地の各敷地境界線7a、7b上内に埋設されている構成の宅地造成用の擁壁である。
【0037】
また、実施例1において、前記造成宅地の各敷地境界線7a、7b上内に埋設されるタイバー袖壁11a、11bはPCコンクリートブロックや施工現場において鉄筋コンクリートを打設して製作され、該タイバー袖壁11a、11bと前記擁壁裏面との接続はアンカーやケミカルアンカーを介して一体化されているものである。
【実施例2】
【0038】
図5乃至図7は実施例2を説明するもので、図5は実施例2を説明する斜視図でPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁構成図、図6は同様に実施例2を説明するタイバー袖壁部の側面図、そして図7はPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁の部材形状説明図である。
【0039】
図5は擁壁8とタイバー袖壁11a、そして頭繋ぎ部材13の構成を示す斜視図で、12aは親杭、9aは支柱、8は擁壁パネルを前記支柱9aにより積層した擁壁を示しており、該擁壁8の裏面で夫々の擁壁パネル1a等のタイバー固着面3には、直方体形状のPCコンクリートブロック片14a、14b、14c・・・とタイバー端部役物15からなるタイバー袖壁11aが設けてある。即ち、タイバー袖壁11aはPCコンクリートブロック片14a、14b、14c・・・とタイバー端部役物15を積層して、シース管16(図7に示す)に内蔵された横緊張線17a、17bと同様にシース管16に内蔵された縦緊張線18a、18bにて一体化された構成を有している。
【0040】
また、実施例2の側面図を示す図6において、1a、1b、1c・・・は擁壁パネル、8は擁壁パネルが支柱9aにより保持されて積層され擁壁を構成している。14a、14b、14c・・・はタイバー袖壁11aを構成するPCコンクリートブロック片、15はタイバー端部役物、17b、17cはシース管16(図7に示す)に内蔵された横緊張線、18a、18bはシース管16に内蔵された縦緊張線で、横緊張線17b、並びに縦緊張線18bの端は夫々緊張線材の係止端部19と他端には外端部緊締ネジ部20が設けられており、外端部緊締ネジ部20を締め付けすることにより、前記PCコンクリートブロック片14a、14b、1cc・・・を連結して、タイバー袖壁11aを形成する他、前記擁壁パネル1a、1b、1c・・・とタイバー袖壁11aを擁壁8に強固に保持固定している。
尚、図6において、21は安定地盤、6aは擁壁8により形成された宅地、13は親杭に打設された支柱9a、9b、9c・・・間を連結する頭繋ぎ部材である。
【0041】
そして、図7は要部拡大斜視図で、前記タイバー袖壁11a、11b等を構成するPCコンクリートブロック片14c、14d・・・の直方体形状と、タイバー端部役物15の部材形状、並びにシース管16に内蔵された横緊張線17a、17b、17c・・・、シース管16に内蔵された縦緊張線18a、18b、18c・・・を示している。
【0042】
斯くして、実施例2の発明は、親杭12a、12b、12c・・・上部が構成する支柱9a、9b、9c・・・を一定間隔にて打設し、該夫々の支柱9a、9b、9c・・・により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル1a、1b、1c・・・、該夫々の支柱9a、9b、9c・・・により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル1a、1b、1c・・・の上部を頭繋部材13にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁8を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁8裏面にタイバー袖壁11a、11bを設け、該タイバー袖壁11a、11bが造成宅地の各敷地境界線7a、7b上内に埋設されていることを特徴とする宅地造成用の擁壁において、前記造成宅地の各敷地境界線7a、7b上内に埋設されるタイバー袖壁11a、11bは直方体形状を有した複数個のPCコンクリートブロック片14a、14b、14c・・・を下方より積み重ね縦横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋し一体化されており、該タイバー袖壁11a、11bと擁壁8裏面との接続も横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋して一体化するものである。
【実施例3】
【0043】
図8及び図9は、本発明の実施例3を説明するもので、図8は実施例3を説明するPCコンクリートブロック片からなるタイバー部材形状図、図9は実施例3を説明するタイバー側面図である。図8及び図9において、22はU字形状を有したPCコンクリートブロック片であり、該U字形状を有したPCコンクリートブロック片22のU字溝23内部にはシース管16に内蔵された横緊張線17a、17bが配設されている。また、前記U字形状を有するPCコンクリートブロック片22の底面にはコンクリート流入用穴部24が穿設されており、U字形状を有するPCコンクリートブロック片22は積層された後、コンクリートを打設してタイバー袖壁11a、11bを構成することができ、該タイバー袖壁は擁壁8と横緊張線17a、17b等にて一体化することが可能である。
【0044】
また、図9は、U字形状を有したPCコンクリートブロック片22を用いて背の高い擁壁8に対応可能なタイバー袖壁11aを構築するものであるが、この場合、実施例3では、擁壁パネル1a、1b、1cを積層した後に各支柱9a、9b、9c・・・を連繋する中間繋ぎ部材25を設置して、該中間繋ぎ部材25の上部に擁壁パネル1d,1e、1fを積層し頭繋ぎ部材13を設けることにより目的を達成することができる。
【0045】
斯くして、実施例3は、親杭上部が構成する支柱9a、9b、9c・・・を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル1a、1b、1c・・・と、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所に中間繋ぎ部材25、または上部を頭繋部材13にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁8を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁8裏面にタイバー袖壁11a、11bを設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されている構成とした。
【0046】
また、実施例3おいて、前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁11a、11bは、U字形状を有したPCコンクリートブロック片を下方より積み重ねて構成し、該U字形状を有したPCコンクリートブロック片の夫々のU字形状内部にコンクリートを打設可能となし、該U字形状のPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁と擁壁の一体化は縦横に配置され緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて行う構成とした。
【0047】
而して、本発明は、傾斜地に擁壁を構築して宅地造成を行う際に、擁壁を保持するタイバーや安定地盤上に設置されるアンカーウェイトが造成宅地の地中に埋蔵された構造物として存在せず、造成宅地上に建造物を建てる際の障害にならない傾斜地における宅地造成用の擁壁を提供することが可能である。
【0048】
また、本発明は、親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構成するものであり、擁壁パネルのサイズは、幅約2000mm、高さ約1000mm程度の比較的小さなモジュールとすることができ、また、タイバー袖壁部材においても、直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片等を積み重ね連結する構成が可能であることから、狭隘な傾斜地においても小型の楊重機にて施工することが可能である。
【0049】
更に、本発明は、施工現場に型枠大工や配筋工などの熟練工を投入して工事する必要がなく、また、擁壁パネルやタイバー袖壁部材も工場内生産のPCコンクリート製品を用いることが可能で、その施工方法も簡略化できる事から工事が短期間で行え、効率良く安全な宅地造成用の擁壁施工が行えるものである。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b、1c・・・擁壁パネル
2 貫通穴
3 タイバー固着面
4 ガイドピン
5 道路
6a、6b、6c 宅地
7a、7b 敷地境界線
8 擁壁
9a、9b、9c・・・ 支柱
10 基台
11a、11b タイバー袖壁
12a、12b、12c・・・ 親杭
13 頭繋ぎ部材
14a、14b、14c・・・ PCコンクリートブロック片
15 タイバー端部役物
16 シース管
17a、17b 横緊張線
18a、18b 縦緊張線
19 緊張線係止端部
20 外部端緊締ネジ部
21 安定地盤
22 U字形状を有したPCコンクリートブロック片
23 U字溝
24 コンクリート流入用穴部
25 中間繋ぎ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親杭上部が構成する支柱を一定間隔を有して打設し、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネル、該夫々の支柱により垂直方向に積層される複数枚の擁壁パネルの任意個所、または上部を頭繋部材にて連結して幅広の擁壁パネル群からなる擁壁を構築し、該幅広の擁壁パネル群からなる擁壁裏面にタイバー袖壁を設け、該タイバー袖壁が造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されていることを特徴とする宅地造成用の擁壁。
【請求項2】
前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁は施工現場において鉄筋コンクリートを打設して製作され、該タイバー袖壁と前記擁壁裏面との接続はアンカーやケミカルアンカーを介して一体化されていることを特徴とする請求項1に記載された宅地造成用の擁壁。
【請求項3】
前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁は直方体形状を有した複数個のPCコンクリートブロック片を下方より積み重ね縦横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋し一体化されており、該タイバー袖壁と擁壁裏面との接続も横に配置された緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて連繋して一体化していることを特徴とする請求項1に記載された宅地造成用の擁壁。
【請求項4】
前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁はU字形状を有したPCコンクリートブロック片を下方より積み重ね夫々のU字形状内部にコンクリートを打設可能となし、該U字形状のPCコンクリートブロック片からなるタイバー袖壁と擁壁の一体化は縦横に配置され緊張可能な緊張シャフト又は緊張ワイヤーからなる緊張線にて行うことを特徴とした請求項1に記載された宅地造成用の擁壁。
【請求項5】
前記造成宅地の各敷地境界線上内に埋設されるタイバー袖壁を構成する直方体形状のPCコンクリートブロック片、並びにU字形状のPCコンクリートブロック片にはブロック片の積層後にコンクリートを打設することにより少なくとも夫々のPCコンクリートブロック片が縦方向に連繋可能なコンクリート流入用穴部を有していることを特徴とする請求項3並びに請求項4に記載された宅地造成用の擁壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−177263(P2012−177263A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41021(P2011−41021)
【出願日】平成23年2月27日(2011.2.27)
【出願人】(510294140)株式会社アイリテック (12)
【Fターム(参考)】