傾斜構造体及び分光センサーの製造方法
【課題】微小な傾斜構造体を製造可能な製造方法を提供する。
【解決手段】基板の上方に第1の層を形成する工程(a)と、第1の層の上方に第2の層を形成する工程(b)と、第2の層の上方に第3の層を形成する工程(c)と、第3の層に、基板の面と交差する方向の端面を形成する工程(d)と、第3の層の端面をエッチングし、第3の層の端面のエッチングによって露出した第2の層を順次エッチングするとともに、第2の層のエッチングによって露出した第1の層を順次エッチングする工程(e)と、を含む。
【解決手段】基板の上方に第1の層を形成する工程(a)と、第1の層の上方に第2の層を形成する工程(b)と、第2の層の上方に第3の層を形成する工程(c)と、第3の層に、基板の面と交差する方向の端面を形成する工程(d)と、第3の層の端面をエッチングし、第3の層の端面のエッチングによって露出した第2の層を順次エッチングするとともに、第2の層のエッチングによって露出した第1の層を順次エッチングする工程(e)と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜構造体及び分光センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や農業、環境等の分野では、対象物の診断や検査をするために分光センサーが用いられている。例えば、医療の分野では、ヘモグロビンの光吸収を利用して血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターが用いられる。また、農業の分野では、糖分の光吸収を利用して果実の糖度を測定する糖度計が用いられる。
【0003】
下記の特許文献1には、干渉フィルターと光電変換素子との間を光学的に接続する光ファイバーによって入射角度を制限することにより、光電変換素子への透過波長帯域を制限する分光イメージングセンサーが開示されている。しかし、従来の分光センサーにおいては、小型化が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−129908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、小型の分光センサーを作製するには、微小な傾斜構造体を形成することが求められる。しかし、従来の技術においては、微小な傾斜構造体を製造するのは困難であった。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様は、微小な傾斜構造体を製造可能な製造方法を提供することに関連している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの態様において、傾斜構造体の製造方法は、基板の上方に第1の層を形成する工程(a)と、第1の層の上方に第2の層を形成する工程(b)と、第2の層の上方に第3の層を形成する工程(c)と、第3の層に、基板の面と交差する方向の端面を形成する工程(d)と、第3の層の端面をエッチングし、第3の層の端面のエッチングによって露出した第2の層を順次エッチングするとともに、第2の層のエッチングによって露出した第1の層を順次エッチングする工程(e)と、を含む。
この態様によれば、半導体プロセスと親和性の高い工程によって、微小な傾斜構造体を容易に製造することができる。
【0008】
上述の態様において、工程(e)では、基板の面方向における第3の層のエッチングレートは、第2の層のエッチングレート及び第1の層のエッチングレートより大きいことが望ましい。
これによれば、傾斜角度が45[deg]より緩やかな傾斜構造体を容易に製造することができる。
【0009】
上述の態様において、工程(e)では、基板の面方向における第2の層のエッチングレートは、第1の層のエッチングレートより大きいことが望ましい。
これによれば、傾斜角度が45[deg]より緩やかな傾斜構造体を容易に製造することができる。
【0010】
上述の態様において、工程(c)と工程(d)との間、又は工程(d)と工程(e)との間に、第3の層に不純物のイオンを導入する工程(f)をさらに含むことが望ましい。
これによれば、第3の層の不純物濃度によってエッチングレートを調整することにより、傾斜構造体の傾斜角度を調整することができる。
【0011】
上述の態様において、工程(f)は、第3の層に、互いに不純物濃度が異なる第1の領域及び第2の領域を形成し、工程(e)は、第3の層の第1の領域内の端面と第2の領域内の端面とを同時にエッチングすることが望ましい。
これによれば、第3の層の不純物濃度によってエッチングレートを調整することにより、複数種類の傾斜角度を有する傾斜構造体を1回のエッチングで形成することができる。
【0012】
上述の態様において、工程(c)と工程(d)との間に、第3の層の上方にレジスト層を形成する工程(g)をさらに含んでおり、工程(d)は、レジスト層をマスクとして第3の層の一部をエッチングすることによって上記端面を形成し、工程(e)は、第3の層の上面をレジスト層によって保護しつつ、第3の層の端面をエッチングすることが望ましい。
これによれば、第3の層の厚さが薄くても、傾斜構造体を製造することができる。
【0013】
上述の態様において、工程(c)で形成される第3の層は、互いに厚さが異なる第3の領域及び第4の領域を有し、工程(g)は、第3の層の第3の領域の上方及び第4の領域の上方に、レジスト層を形成し、工程(e)は、第3の層の第3の領域内の端面と第4の領域内の端面とを同時にエッチングすることが望ましい。
これによれば、第3の層の厚さによってエッチングレートを調整することにより、複数種類の傾斜角度を有する傾斜構造体を1回のエッチングで形成することができる。
【0014】
本発明の他の態様において、分光センサーの製造方法は、基板に受光素子を形成する工程と、受光素子の上方に、受光素子に向けて通過する光の入射方向を制限する角度制限フィルターを形成する工程と、角度制限フィルターの上方に、上述の方法によって傾斜構造体を形成する工程と、傾斜構造体の上方に多層膜を形成することにより、角度制限フィルターを通過できる光の波長を制限する分光フィルターを形成する工程と、を含む。
この態様によれば、半導体プロセスと親和性の高い工程によって、小型の分光センサーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図4】第1の実施形態でレジスト層を形成した状態を示す平面図及び断面図。
【図5】第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図6】第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図7】第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図8】第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図9】第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図10】第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図11】第5の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図12】第5の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図13】実施形態に係る傾斜構造体を用いた分光センサーの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0017】
<1.第1の実施形態>
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。図4(A)は、第1の実施形態においてレジスト層を形成した状態を示す平面図であり、図4(B)は、図4(A)のB−B線断面図であり、図4(C)は、図4(A)のC−C線断面図である。なお、図2(D)は、図4(A)のD−D線断面を拡大した図に相当する。
【0018】
<1−1.積層>
まず、図1(A)及び図1(B)に示すように、基板10上に、傾斜構造体を構成する層となる第1の層11及び第2の層12を形成する。第1の層11及び第2の層12としては、傾斜構造体に求められる性質に応じて、絶縁性材料或いは導電性材料を用いることができる。絶縁性材料としては、SiOF、PSG(phospho-silicate glass)、BPSG(boro-phospho-silicate glass)、SiO2、SiN、有機膜等が挙げられる。導電性材料としては、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Ni、Pt、Ta、Ti、W、Al−Cu合金、Al−Si−Cu合金、Si、WSi2、TiSi2、CoSi2、NiSi2、CrSi2、MoSi2、TaSi2、TaN、TiN等が挙げられる。第1の層11と第2の層12は、後述のエッチング工程においてエッチングレートの相違が求められるため、互いに異なる材料であることが好ましい。第1の層11及び第2の層12の各々の厚さは、傾斜構造体に求められる傾斜面の高さに応じて設定される。なお、基板10上に第1の層11を直接形成する場合について説明したが、これに限らず、基板10と第1の層11との間に他の層が挟まれていても良い。
【0019】
次に、図1(C)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13を形成する。第3の層13としては、第1の層11及び第2の層12と同様に、絶縁性材料或いは導電性材料を用いることができる。但し、第3の層13は、基板10の面方向におけるエッチングレート(後述のエッチング工程におけるエッチング液を用いた場合のエッチングレートをいう。以下同じ。)が、第1の層11のエッチングレート及び第2の層12のエッチングレートより大きい材料であることが望ましい。本実施形態においては、第1の層11、第2の層12、第3の層13の順でエッチングレートが大きくなるようにする。
【0020】
例えば、エッチング液として水で10倍に希釈した弗酸(HF)を用いる場合、Th−SiO2(熱酸化によって形成した酸化シリコン)、P−SiO2(プラズマ化学気相成長法によって形成した酸化シリコン)、O3−TEOS(テトラエトキシシランをオゾンによって酸化させて堆積させた絶縁膜)、SOG(Spin on Glass)は、この順でエッチングレートが大きくなる。従って、例えば、第1の層11としてP−SiO2を用い、第2の層12としてO3−TEOSを用い、第3の層13としてSOGを用いることができる。第1の層11、第2の層12、第3の層13の順でエッチングレートが大きくなるようにすれば、他の組合せを用いても良い。また、エッチング液としては、弗酸水溶液と弗化アンモニウムとの混合液や、弗酸水溶液と弗化アンモニウムと酢酸との混合液を用いてもよい。
【0021】
第3の層13の厚さは、第2の層12と後述のレジスト層14との間において、第3の層13の端面にエッチング液が作用する程度の厚さがあれば良い。従って、第3の層13は、第1の層11及び第2の層12より薄いものとすることができる。
【0022】
次に、図2(D)に示すように、第3の層13上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層14を形成する。図4に示すように、レジスト層14は、第1の層11、第2の層12及び第3の層13のほぼ全体を覆い、且つ第3の層13の一部が露出するように、開口14aを有している。
【0023】
なお、第1の層11、第2の層12及び第3の層13は基板10上の全面に形成されていても良いし、図4に示すように所定形状にパターニングされていても良い。図4に示すように、第1の層11、第2の層12及び第3の層13を所定形状にパターニングし、その側面をレジスト層14等によって覆うことにより、後述のエッチング工程において図4(B)及び図4(C)の左右方向からエッチング液が浸入することを防止できる。
また、第1の層11、第2の層12及び第3の層13が基板10上の全面に形成されている場合でも、第1の層11、第2の層12及び第3の層13の側面を何らかの層で覆うことにより、エッチング液が侵入することを防止できる。
【0024】
<1−2.エッチング>
次に、図2(E)〜図2(G)に示すように、第3の層13及び第2の層12のウェットエッチングを行う。このとき、まず図2(E)に示すように、第3の層13のレジスト層14によって上面を保護されていない露出部分からエッチングが始まる。第3の層13の露出部分がエッチングされると、第2の層12の上面の一部(第3の層13のエッチングされた部分の下方部分)と、第3の層13の端面とが露出する。その後、露出した第2の層12と、第3の層13の端面とが同時にエッチングされる。
【0025】
このとき、基板10の面方向における第3の層13のエッチングレートが第2の層12のエッチングレートより大きいので、図2(F)及び図2(G)に示すように、第3の層13の端面からのエッチングが早く進んでいく。第3の層13の端面がエッチングされると、第2の層12の上面が順次露出するので、第2の層12のエッチングが順次開始される。従って、第3の層13の端面のエッチングを追いかけるようにして、第2の層12のエッチングが順次開始される。
【0026】
ここで、図2(E)は時刻t=−teにおけるエッチングの進行状況を示し、図2(F)は時刻t=−tfにおけるエッチングの進行状況を示し、図2(G)は時刻t=0におけるエッチングの進行状況を示すものとする。そして、図2(E)においては第2の層12と第3の層13との境界に位置する点eまでエッチングが進み、図2(F)において第2の層12と第3の層13との境界に位置する点fまでエッチングが進み、図2(G)において第2の層12と第3の層13との境界に位置する点gまでエッチングが進んだものとする。
【0027】
第3の層13のエッチングレート(エッチングの速さ)をv3とすると、時刻t=−teから時刻t=0までの間に第3の層13において進むエッチングの距離(点eと点gとの間の距離)は、(v3×te)であり、時刻t=−tfから時刻t=0までの間に第3の層13において進むエッチングの距離(点fと点gとの間の距離)は、(v3×tf)である。
【0028】
一方、点eにおける第2の層12のエッチングは、点eまで第3の層13のエッチングが進んだ時にスタートし、点fにおける第2の層12のエッチングは、点fまで第3の層13のエッチングが進んだ時にスタートする。従って、第2の層12のエッチングレートをv2とすると、時刻t=−teから時刻t=0までの間に進む第2の層12のエッチング深さは、(v2×te)であり、時刻t=−tfから時刻t=0までの間に進む第2の層12のエッチング深さは、(v2×tf)である。
【0029】
ここで、(v3×te)と(v3×tf)との比は、(v2×te)と(v2×tf)との比に等しい。このことから、本実施形態によれば、傾斜角度が一定の、曲面ではなく平面状の傾斜面を形成できることがわかる。この傾斜角度は、第3の層13のエッチングレートv3と第2の層12のエッチングレートv2との比によって決まる。
【0030】
第2の層12のエッチングレートv2に対する第3の層13のエッチングレートv3の比が十分に大きい場合には、傾斜構造体の傾斜角度は緩やかになり、第2の層12のエッチングレートv2に対する第3の層13のエッチングレートv3の比が小さくなるに従って、傾斜構造体の傾斜角度が急になる。これにより、傾斜構造体の傾斜角度を調整することができる。
【0031】
図2(G)に示すように、第2の層12がエッチングされると、第1の層11が一部露出する。その後、図3(H)〜図3(J)に示すように、一部露出した第1の層11がエッチングされるとともに、引き続き、第2の層12の傾斜面と、第3の層13の端面とがエッチングされる。
【0032】
ここで、図3(H)は時刻t=−thにおけるエッチングの進行状況を示し、図3(I)は時刻t=−tiにおけるエッチングの進行状況を示し、図3(J)は時刻t=0におけるエッチングの進行状況を示すものとする。そして、図3(H)においては第2の層12と第3の層13との境界に位置する点h、及び第1の層11と第2の層12との境界に位置する点Hまでエッチングが進み、図3(I)において第2の層12と第3の層13との境界に位置する点i、及び第1の層11と第2の層12との境界に位置する点Iまでエッチングが進み、図3(J)において第1の層11と第2の層12との境界に位置する点Jまでエッチングが進んだものとする。
【0033】
このとき、上述の通り、第2の層12の傾斜面の傾斜角度は一定であり、図3(I)の断面における点Hと点Iとの距離は、点hと点iとの距離に等しくなる。すなわち、第2の層12の斜面がエッチングされて第1の層11の上面の露出が進む速さは、第3の層13の端面がエッチングされて第2の層12の上面の露出が進む速さ(第3の層13のエッチングレートv3)と等しくなる。
【0034】
基板10の面方向における第3の層13のエッチングレートは、第1の層11のエッチングレートより大きいので、図3(I)及び図3(J)に示すように、第1の層11の上面の露出が早く進む。従って、第1の層11の上面の露出を追いかけるようにして、第1の層11の内部のエッチングが順次開始される。
【0035】
時刻t=−thから時刻t=0までの間に第1の層11の上面の露出が進む距離(点Hと点Jとの間の距離)は、(v3×th)であり、時刻t=−tiから時刻t=0までの間に第1の層11の上面の露出が進む距離(点Iと点Jとの間の距離)は、(v3×ti)である。
【0036】
一方、点Hにおける第1の層11のエッチングは、点Hまで第1の層11の上面の露出が進んだ時にスタートし、点Iにおける第1の層11のエッチングは、点Iまで第1の層11の上面の露出が進んだ時にスタートする。従って、第1の層11のエッチングレートをv1とすると、時刻t=−thから時刻t=0までの間に進む第1の層11のエッチング深さは、(v1×th)であり、時刻t=−tiから時刻t=0までの間に進む第1の層11のエッチング深さは、(v1×ti)である。
【0037】
ここで、(v3×th)と(v3×ti)との比は、(v1×th)と(v1×ti)との比に等しい。このことから、本実施形態によれば、傾斜角度が一定の、曲面ではなく平面状の傾斜面を形成できることがわかる。この傾斜角度は、第3の層13のエッチングレートv3と第1の層11のエッチングレートv1との比によって決まる。従って、第1の層11のエッチングレートv1が第2の層12のエッチングレートv2より小さい場合には、第1の層11の傾斜面の傾斜角度は第2の層12の傾斜面の傾斜角度より緩やかになる。
【0038】
以上の工程によって2つの傾斜面が形成されたら、第2の層12の全体がエッチングされる前に、エッチング液から基板10を取り出し、エッチングを終了させる。
【0039】
<1−3.レジスト層の除去>
最後に、図3(K)に示すように、レジスト層14を除去することにより、本実施形態の傾斜構造体が形成される。
【0040】
<1−4.実施形態の効果>
以上の製造工程によれば、半導体プロセスとの親和性が高い成膜、エッチング等の技術を用いて傾斜構造体を製造できる。従って、1つのチップ上に傾斜構造体と半導体回路とを混載することも容易となる。
【0041】
そして、2種類の傾斜角度を有する傾斜構造体を製造するために、レジスト層14のパターニングやエッチング液による処理はそれぞれ1回だけで済ませることができる。3種類以上の傾斜角度を有する傾斜構造体を製造する場合でも、第2の層12と第3の層13との間に、第3の層13よりエッチングレートが小さく、第1の層11及び第2の層12とエッチングレートが異なるもう1つの層を形成しておくことにより、同様の工程数で済ませることができる。
【0042】
また、以上の製造工程によれば、傾斜構造体を製造するために、高価で摩耗しやすい金型を作成する必要がなく、傾斜構造体の形状を変更するために金型を作り直す必要もない。また、金型で作成可能な材料(樹脂等)だけでなく、種々の材料を用いて、微細な傾斜構造体を製造することができる。
【0043】
また、以上の製造工程によれば、グレースケールマスクのような特殊なマスクを用いる必要もない。また、基板上の限られたスペースにも、必要な箇所に必要な傾斜面を形成することができる。
【0044】
<2.第2の実施形態>
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第2の実施形態は、第1の層11のエッチングレートv1が第2の層12のエッチングレートv2より大きい点で、第1の実施形態と異なる。エッチング工程の前までの工程は、図1を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。
【0045】
第2の実施形態においては、例えば、第1の層11としてO3−TEOSを用い、第2の層12としてP−SiO2を用い、第3の層13としてSOGを用いることができる。第2の層12、第1の層11、第3の層13の順でエッチングレートが大きくなるようにすれば、他の組合せを用いても良い。
【0046】
図5に示すように、エッチング工程において、まず第3の層13と第2の層12とがエッチングされる。第2の層12のエッチングレートv2に対する第3の層13のエッチングレートv3の比が十分に大きいので、傾斜構造体の傾斜角度は緩やかになる。
【0047】
第2の層12がエッチングされ、第1の層11が一部露出すると、図6に示すように、一部露出した第1の層11がエッチングされるとともに、引き続き、第2の層12の傾斜面と、第3の層13の端面とがエッチングされる。
【0048】
第1の層11の上面の露出が進む速さは、第3の層13のエッチングレートv3と等しいので、第1の層11の上面の露出を追いかけるようにして、第1の層11の内部のエッチングが行われる。但し、第2の実施形態において、第1の層11のエッチングレートv1は、第2の層12のエッチングレートv2より大きいので、第1の層11に形成される傾斜面の傾斜角度は、第2の層12の傾斜面の傾斜角度より急になる。
他の点については、第1の実施形態と同様である。
以上の工程により、第2の実施形態の傾斜構造体が形成される。
【0049】
<3.第3の実施形態>
図7及び図8は、本発明の第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第3の実施形態は、第3の層13の厚さによって傾斜構造体の傾斜角度を調整する点で、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0050】
<3−1.積層>
第1及び第2の実施形態と同様に、基板10上に第1の層11及び第2の層12を形成した後、図7(D)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13の一部を薄く成膜し、さらに、第3の層13上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層15を形成する。次に、図7(E)に示すように、レジスト層15をマスクとして、第3の層13の異方性エッチング(ドライエッチング)を行うことにより、第3の層13を所定形状にパターニングする。そして、図7(F)に示すように、レジスト層15を除去し、第3の層13の残りの一部を成膜する。これにより、図7(D)においてレジスト層15を成膜した領域には厚い第3の層13が形成され、その他の領域には薄い第3の層13が形成される。
【0051】
次に、図7(G)に示すように、第3の層13(厚い領域及び薄い領域)上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層14を形成する。
【0052】
<3−2.エッチング>
次に、第1及び第2の実施形態と同様に、図8(H)〜図8(J)に示すように、第3の層13、第2の層12及び第1の層11のウェットエッチングを行う。このとき、第3の層13のエッチングレートは、第3の層13の厚い領域においては高く、第3の層13の薄い領域においては低い。これは、第3の層13がある程度の厚さ以下になると、第2の層12とレジスト層14との間の第3の層13の端面にエッチング液が入りにくくなることによるものと考えられる。
【0053】
これによれば、第3の層13のエッチングレートを第3の層13の厚さによって調整することができる。従って、第3の層13を1種類の材料で形成した場合でも、領域ごとに第3の層13の厚さを変えることにより、異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を同時に形成することができる。そして、第2の層12及び第1の層11のエッチングレートが異なるようにすれば、さらに異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を形成することができる。
【0054】
<3−3.レジスト層の除去>
最後に、図8(K)に示すように、レジスト層14を除去することにより、第3の実施形態の傾斜構造体が形成される。
他の点については、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0055】
<4.第4の実施形態>
図9及び図10は、本発明の第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第4の実施形態は、第3の層13に不純物のイオンを注入することによって傾斜構造体の傾斜角度を調整する点で、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0056】
<4−1.積層>
第1及び第2の実施形態と同様に、基板10上に第1の層11及び第2の層12を形成した後、図9(D)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13を形成し、さらに、第3の層13上の所定領域に、イオン注入用マスクとなる所定形状のレジスト層16を形成する。次に、図9(E)に示すように、レジスト層16をマスクとして、第3の層13にリン、ボロン、ヒ素等のイオンを注入する。そして、図9(F)に示すように、レジスト層16を除去する。これにより、図9(D)においてレジスト層16を成膜した領域には不純物が注入されていない(不純物濃度が低い)第3の層13が形成され、その他の領域には不純物が注入された(不純物濃度が高い)第3の層13が形成される。
【0057】
次に、図9(G)に示すように、第3の層13(例えば、不純物濃度が低い領域及び高い領域)上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層14を形成する。
【0058】
<4−2.エッチング>
次に、第1及び第2の実施形態と同様に、図10(H)〜図10(J)に示すように、第3の層13、第2の層12及び第1の層11のウェットエッチングを行う。このとき、第3の層13のエッチングレートは、不純物濃度の高い領域においては高く、不純物濃度の低い領域においては低い。これは、第3の層13の一部への不純物の注入によって、結晶構造が壊れ、エッチングされ易くなることによるものと考えられる。
【0059】
これによれば、第3の層13のエッチングレートを不純物の注入の有無又は不純物濃度によって調整することができる。従って、第3の層13を1種類の材料で形成した場合でも、領域ごとに第3の層13の不純物濃度を変えることにより、異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を同時に形成することができる。そして、第2の層12及び第1の層11のエッチングレートが異なるようにすれば、さらに異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を形成することができる。
【0060】
<4−3.レジスト層の除去>
最後に、図10(K)に示すように、レジスト層14を除去することにより、第4の実施形態の傾斜構造体が形成される。
他の点については、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0061】
なお、第4の実施形態においては、第3の層13に、不純物濃度が低い領域と不純物濃度が高い領域とを形成したが、第3の層13の全体を、不純物濃度が一様に高い領域にしても良い。第3の層13の不純物濃度を調整することにより、傾斜構造体の傾斜角度を調整することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、不純物を注入する工程の後に、第3の層13上にレジスト層14を形成してエッチングしたが、不純物を注入する工程の前又は後に、第3の層13をパターニングして第3の層13の端面を形成し、後述の第5の実施形態のように、第3の層13上にレジスト層14を形成せずにエッチングしても良い。
【0063】
<5.第5の実施形態>
図11及び図12は、本発明の第5の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第5の実施形態は、傾斜構造体を形成するために第1の層11と第2の層12と第3の層13とをエッチングするときに、第3の層13の上面を保護するレジスト層を有しない点で、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0064】
<5−1.積層>
第1及び第2の実施形態と同様に、まず、図11(A)に示すように、基板10上に、傾斜構造体となる第1の層11及び第2の層12を形成する。
【0065】
次に、図11(B)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13を形成する。ここまでの工程は第1及び第2の実施形態と同様である。但し、第3の層13の厚さは、第3の層13の端面をエッチングしつつ第1の層11及び第2の層12に所望の傾斜構造体を形成している間に、第3の層13の厚さが0にならない程度の厚さであることが望ましく、第1の層11の厚さと第2の層12の厚さの和より厚いものとすることができる。
【0066】
次に、図11(C)に示すように、第3の層13上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層15を形成する。
次に、図11(D)に示すように、レジスト層15をマスクとして、第3の層13の異方性エッチング(ドライエッチング)を行うことにより、第3の層13を所定形状にパターニングする。これにより、第2の層12の上面の一部と、第3の層13の端面とが露出する。
次に、図12(E)に示すように、レジスト層15を除去する。これにより、第3の層13の上面全体が露出する。
【0067】
<5−2.エッチング>
次に、図12(F)及び図12(G)に示すように、第3の層13及び第2の層12のウェットエッチングを行う。このとき、まず図12(F)に示すように、第2の層12の上面の露出した一部と、第3の層13の端面と、第3の層13の上面全体とが同時にエッチングされる。
【0068】
このとき、基板10の面方向における第3の層13のエッチングレートが第2の層12のエッチングレートより大きいので、図12(F)及び図12(G)に示すように、第3の層13の端面のエッチングが早く進んでいき、第2の層12のエッチングがこれを追いかけるように進んでいく。
【0069】
図12(G)に示すように、第2の層12がエッチングされると、第1の層11が一部露出する。その後、図12(H)に示すように、一部露出した第1の層11がエッチングされるとともに、引き続き、第2の層12の傾斜面と、第3の層13の端面と、第3の層13の上面全体がエッチングされる。
【0070】
第2の層12の上面がエッチングされることを防ぐため、本実施形態におけるエッチングは、第3の層13の厚さが0にならないうちに終了することが望ましい。
他の点については、第1及び第2の実施形態と同様である。
以上の工程により、本実施形態の傾斜構造体が形成される。
【0071】
<6.分光センサー>
図13は、上述の実施形態に係る傾斜構造体を用いた分光センサーの概略構成を示す断面図である。図13に示す分光センサーは、受光素子を有する光学素子部50と、角度制限フィルター部60と、分光フィルター部70とを含んでいる。
【0072】
光学素子部50は、シリコンなどの半導体で形成された基板10と、基板10に形成されたフォトダイオード51、52、53を含んでいる。さらに基板10には、フォトダイオード51、52、53に所定の逆バイアス電圧を印加したり、フォトダイオード51、52、53において発生した光起電力に基づく電流を検知し、当該電流の大きさに応じたアナログ信号を増幅してデジタル信号に変換したりする電子回路(図示せず)が形成されている。
【0073】
<6−1.角度制限フィルター部>
角度制限フィルター部60は、基板10の上方に形成されている。角度制限フィルター部60においては、遮光体61によって光路壁が形成され、この光路壁に囲まれた酸化シリコン等の透光体62によって光路が形成されている。遮光体61は、フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする波長の光を実質的に透過しない材料によって構成される。遮光体61は、基板10上に、例えば格子状の所定パターンで複数層にわたって連続的に形成されることにより、基板10の面に垂直な方向に光路を形成する。
【0074】
角度制限フィルター部60によって、光路内を通過する光の入射角度が制限される。すなわち、光路内に入射した光が、光路の向きに対して所定の制限角度以上に傾いている場合には、光が遮光体61に当たり、一部が遮光体61に吸収され、残りが反射される。光路を通過するまでの間に反射が繰り返されることによって反射光は弱くなる。従って、角度制限フィルター部60を通過できる光は、実質的に、光路に対する傾きが所定の制限角度未満で入射した光に制限される。
【0075】
<6−2.分光フィルター部>
分光フィルター部70は、角度制限フィルター部60上に形成された透光層71、第1の層72及び第2の層73を含む傾斜構造体と、この傾斜構造体上に形成された多層膜74とを有している。多層膜74は、酸化シリコン等の低屈折率の薄膜と、酸化チタン等の高屈折率の薄膜とを多数積層したものである。
低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜は、それぞれ例えばサブミクロンオーダーの所定膜厚とし、これを例えば計60層程度にわたって積層することにより、多層膜74全体で例えば6μm程度の厚さとする。
【0076】
多層膜74の基板10に対する傾斜角度は、フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする光の設定波長に応じて、例えば0[deg]以上、30[deg]以下に設定する。多層膜74を基板10に対して傾斜させるために、角度制限フィルター部60上に透光層71、第1の層72及び第2の層73を含む傾斜構造体を形成し、その上に多層膜74を形成する。傾斜構造体としては、上述の製造方法によって製造した傾斜構造体を用いることができる。
【0077】
以上の構成により、分光フィルター部70は、角度制限フィルター部60に所定の制限角度範囲内で入射する光の波長を制限する。
すなわち、分光フィルター部70に入射した入射光は、低屈折率の薄膜と高屈折率の薄膜との境界面において、一部は反射光となり、一部は透過光となる。そして、反射光の一部は、他の低屈折率の薄膜と高屈折率の薄膜との境界面において再度反射して、上述の透過光と合波する。このとき、反射光の光路長と一致する波長の光は、反射光と透過光の位相が一致して互いに強め合い、反射光の光路長と一致しない波長の光は、反射光と透過光の位相が一致せずに互いに弱め合う(干渉する)。
【0078】
ここで、反射光の光路長は、入射光の向きに対する多層膜74の傾斜角度によって決まる。従って、上述の干渉作用が、例えば計60層に及ぶ多層膜74において繰り返されると、入射光の入射角度に応じて、特定の波長の光のみが分光フィルター部70を透過し、所定の出射角度(例えば、分光フィルター部70への入射角度と同じ角度)で分光フィルター部70から出射する。
【0079】
角度制限フィルター部60は、所定の制限角度範囲内で角度制限フィルター部60に入射した光のみを通過させる。従って、分光フィルター部70と角度制限フィルター部60とを通過する光の波長は、多層膜74の基板10に対する傾斜角度と、角度制限フィルター部60が通過させる入射光の制限角度範囲とによって決まる所定範囲の波長に制限される。
【0080】
フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする光の設定波長に応じて、異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を予め形成しておくことにより、多層膜74は、フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする光の設定波長によらず、同一の膜厚で、共通の工程により成膜することができる。
【0081】
<6−3.光学素子部>
光学素子部50に含まれるフォトダイオード51、52、53は、分光フィルター部70及び角度制限フィルター部60を通過した光を受光して光起電力を発生させる。フォトダイオード51、52、53は、半導体によって構成された基板10に、イオン注入等を行うことによって形成された不純物領域を含んでいる。
【0082】
分光フィルター部70及び角度制限フィルター部60を通過してきた光がフォトダイオード51、52、53において受光され、光起電力が発生することにより、電流が発生する。この電流を、電子回路(図示せず)によって検知することにより、光を検知することができる。フォトダイオード51には、傾斜面を有しない透光層71上の多層膜74を通過した第1の波長を有する光が入射する。フォトダイオード52には、第1の傾斜角度の傾斜面を有する第1の層72上の多層膜74を通過した第2の波長を有する光が入射する。フォトダイオード53には、第2の傾斜角度の傾斜面を有する第2の層73上の多層膜74を通過した第3の波長を有する光が入射する。
【0083】
<6−4.分光センサーの製造方法>
ここで、分光センサーの製造方法について簡単に説明する。分光センサーは、まず基板10にフォトダイオード51、52、53を形成し、次に、フォトダイオード51、52、53上に角度制限フィルター部60を形成し、次に、角度制限フィルター部60の上に分光フィルター部70を形成することによって製造される。
【0084】
本実施形態によれば、分光センサーを半導体プロセスによって一貫して製造することができ、所望の傾斜角度を有する傾斜構造体を用いた分光センサーを容易に形成することができる。
【0085】
なお、ここでは入射光が分光フィルター部70を透過して光学素子部50に到達する透過型の分光センサーについて述べたが、入射光が分光フィルター部70において反射して光学素子部に到達する反射型の分光センサーでも良い。
また、傾斜構造体を用いた素子として、分光センサーについて述べたが、傾斜構造体を他の素子として用いても良い。例えば、光ファイバーの中継デバイスにおいて所定波長の光信号を中継するため、プリズムやミラー等の光学素子として用いても良い。
【符号の説明】
【0086】
10…基板、11…第1の層、12…第2の層、13…第3の層(犠牲層)、14…レジスト層(ウェットエッチング用マスク)、14a…開口、15…レジスト層(ドライエッチング用マスク)、16…レジスト層(イオン注入用マスク)、50…光学素子部、51、52、53…フォトダイオード、60…角度制限フィルター部、61…遮光体、62…透光体、70…分光フィルター部、71…透光層、72…第1の層、73…第2の層、74…多層膜。
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜構造体及び分光センサーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療や農業、環境等の分野では、対象物の診断や検査をするために分光センサーが用いられている。例えば、医療の分野では、ヘモグロビンの光吸収を利用して血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターが用いられる。また、農業の分野では、糖分の光吸収を利用して果実の糖度を測定する糖度計が用いられる。
【0003】
下記の特許文献1には、干渉フィルターと光電変換素子との間を光学的に接続する光ファイバーによって入射角度を制限することにより、光電変換素子への透過波長帯域を制限する分光イメージングセンサーが開示されている。しかし、従来の分光センサーにおいては、小型化が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−129908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、小型の分光センサーを作製するには、微小な傾斜構造体を形成することが求められる。しかし、従来の技術においては、微小な傾斜構造体を製造するのは困難であった。
【0006】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様は、微小な傾斜構造体を製造可能な製造方法を提供することに関連している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの態様において、傾斜構造体の製造方法は、基板の上方に第1の層を形成する工程(a)と、第1の層の上方に第2の層を形成する工程(b)と、第2の層の上方に第3の層を形成する工程(c)と、第3の層に、基板の面と交差する方向の端面を形成する工程(d)と、第3の層の端面をエッチングし、第3の層の端面のエッチングによって露出した第2の層を順次エッチングするとともに、第2の層のエッチングによって露出した第1の層を順次エッチングする工程(e)と、を含む。
この態様によれば、半導体プロセスと親和性の高い工程によって、微小な傾斜構造体を容易に製造することができる。
【0008】
上述の態様において、工程(e)では、基板の面方向における第3の層のエッチングレートは、第2の層のエッチングレート及び第1の層のエッチングレートより大きいことが望ましい。
これによれば、傾斜角度が45[deg]より緩やかな傾斜構造体を容易に製造することができる。
【0009】
上述の態様において、工程(e)では、基板の面方向における第2の層のエッチングレートは、第1の層のエッチングレートより大きいことが望ましい。
これによれば、傾斜角度が45[deg]より緩やかな傾斜構造体を容易に製造することができる。
【0010】
上述の態様において、工程(c)と工程(d)との間、又は工程(d)と工程(e)との間に、第3の層に不純物のイオンを導入する工程(f)をさらに含むことが望ましい。
これによれば、第3の層の不純物濃度によってエッチングレートを調整することにより、傾斜構造体の傾斜角度を調整することができる。
【0011】
上述の態様において、工程(f)は、第3の層に、互いに不純物濃度が異なる第1の領域及び第2の領域を形成し、工程(e)は、第3の層の第1の領域内の端面と第2の領域内の端面とを同時にエッチングすることが望ましい。
これによれば、第3の層の不純物濃度によってエッチングレートを調整することにより、複数種類の傾斜角度を有する傾斜構造体を1回のエッチングで形成することができる。
【0012】
上述の態様において、工程(c)と工程(d)との間に、第3の層の上方にレジスト層を形成する工程(g)をさらに含んでおり、工程(d)は、レジスト層をマスクとして第3の層の一部をエッチングすることによって上記端面を形成し、工程(e)は、第3の層の上面をレジスト層によって保護しつつ、第3の層の端面をエッチングすることが望ましい。
これによれば、第3の層の厚さが薄くても、傾斜構造体を製造することができる。
【0013】
上述の態様において、工程(c)で形成される第3の層は、互いに厚さが異なる第3の領域及び第4の領域を有し、工程(g)は、第3の層の第3の領域の上方及び第4の領域の上方に、レジスト層を形成し、工程(e)は、第3の層の第3の領域内の端面と第4の領域内の端面とを同時にエッチングすることが望ましい。
これによれば、第3の層の厚さによってエッチングレートを調整することにより、複数種類の傾斜角度を有する傾斜構造体を1回のエッチングで形成することができる。
【0014】
本発明の他の態様において、分光センサーの製造方法は、基板に受光素子を形成する工程と、受光素子の上方に、受光素子に向けて通過する光の入射方向を制限する角度制限フィルターを形成する工程と、角度制限フィルターの上方に、上述の方法によって傾斜構造体を形成する工程と、傾斜構造体の上方に多層膜を形成することにより、角度制限フィルターを通過できる光の波長を制限する分光フィルターを形成する工程と、を含む。
この態様によれば、半導体プロセスと親和性の高い工程によって、小型の分光センサーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図4】第1の実施形態でレジスト層を形成した状態を示す平面図及び断面図。
【図5】第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図6】第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図7】第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図8】第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図9】第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図10】第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図11】第5の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図12】第5の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図。
【図13】実施形態に係る傾斜構造体を用いた分光センサーの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0017】
<1.第1の実施形態>
図1〜図3は、本発明の第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。図4(A)は、第1の実施形態においてレジスト層を形成した状態を示す平面図であり、図4(B)は、図4(A)のB−B線断面図であり、図4(C)は、図4(A)のC−C線断面図である。なお、図2(D)は、図4(A)のD−D線断面を拡大した図に相当する。
【0018】
<1−1.積層>
まず、図1(A)及び図1(B)に示すように、基板10上に、傾斜構造体を構成する層となる第1の層11及び第2の層12を形成する。第1の層11及び第2の層12としては、傾斜構造体に求められる性質に応じて、絶縁性材料或いは導電性材料を用いることができる。絶縁性材料としては、SiOF、PSG(phospho-silicate glass)、BPSG(boro-phospho-silicate glass)、SiO2、SiN、有機膜等が挙げられる。導電性材料としては、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Ni、Pt、Ta、Ti、W、Al−Cu合金、Al−Si−Cu合金、Si、WSi2、TiSi2、CoSi2、NiSi2、CrSi2、MoSi2、TaSi2、TaN、TiN等が挙げられる。第1の層11と第2の層12は、後述のエッチング工程においてエッチングレートの相違が求められるため、互いに異なる材料であることが好ましい。第1の層11及び第2の層12の各々の厚さは、傾斜構造体に求められる傾斜面の高さに応じて設定される。なお、基板10上に第1の層11を直接形成する場合について説明したが、これに限らず、基板10と第1の層11との間に他の層が挟まれていても良い。
【0019】
次に、図1(C)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13を形成する。第3の層13としては、第1の層11及び第2の層12と同様に、絶縁性材料或いは導電性材料を用いることができる。但し、第3の層13は、基板10の面方向におけるエッチングレート(後述のエッチング工程におけるエッチング液を用いた場合のエッチングレートをいう。以下同じ。)が、第1の層11のエッチングレート及び第2の層12のエッチングレートより大きい材料であることが望ましい。本実施形態においては、第1の層11、第2の層12、第3の層13の順でエッチングレートが大きくなるようにする。
【0020】
例えば、エッチング液として水で10倍に希釈した弗酸(HF)を用いる場合、Th−SiO2(熱酸化によって形成した酸化シリコン)、P−SiO2(プラズマ化学気相成長法によって形成した酸化シリコン)、O3−TEOS(テトラエトキシシランをオゾンによって酸化させて堆積させた絶縁膜)、SOG(Spin on Glass)は、この順でエッチングレートが大きくなる。従って、例えば、第1の層11としてP−SiO2を用い、第2の層12としてO3−TEOSを用い、第3の層13としてSOGを用いることができる。第1の層11、第2の層12、第3の層13の順でエッチングレートが大きくなるようにすれば、他の組合せを用いても良い。また、エッチング液としては、弗酸水溶液と弗化アンモニウムとの混合液や、弗酸水溶液と弗化アンモニウムと酢酸との混合液を用いてもよい。
【0021】
第3の層13の厚さは、第2の層12と後述のレジスト層14との間において、第3の層13の端面にエッチング液が作用する程度の厚さがあれば良い。従って、第3の層13は、第1の層11及び第2の層12より薄いものとすることができる。
【0022】
次に、図2(D)に示すように、第3の層13上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層14を形成する。図4に示すように、レジスト層14は、第1の層11、第2の層12及び第3の層13のほぼ全体を覆い、且つ第3の層13の一部が露出するように、開口14aを有している。
【0023】
なお、第1の層11、第2の層12及び第3の層13は基板10上の全面に形成されていても良いし、図4に示すように所定形状にパターニングされていても良い。図4に示すように、第1の層11、第2の層12及び第3の層13を所定形状にパターニングし、その側面をレジスト層14等によって覆うことにより、後述のエッチング工程において図4(B)及び図4(C)の左右方向からエッチング液が浸入することを防止できる。
また、第1の層11、第2の層12及び第3の層13が基板10上の全面に形成されている場合でも、第1の層11、第2の層12及び第3の層13の側面を何らかの層で覆うことにより、エッチング液が侵入することを防止できる。
【0024】
<1−2.エッチング>
次に、図2(E)〜図2(G)に示すように、第3の層13及び第2の層12のウェットエッチングを行う。このとき、まず図2(E)に示すように、第3の層13のレジスト層14によって上面を保護されていない露出部分からエッチングが始まる。第3の層13の露出部分がエッチングされると、第2の層12の上面の一部(第3の層13のエッチングされた部分の下方部分)と、第3の層13の端面とが露出する。その後、露出した第2の層12と、第3の層13の端面とが同時にエッチングされる。
【0025】
このとき、基板10の面方向における第3の層13のエッチングレートが第2の層12のエッチングレートより大きいので、図2(F)及び図2(G)に示すように、第3の層13の端面からのエッチングが早く進んでいく。第3の層13の端面がエッチングされると、第2の層12の上面が順次露出するので、第2の層12のエッチングが順次開始される。従って、第3の層13の端面のエッチングを追いかけるようにして、第2の層12のエッチングが順次開始される。
【0026】
ここで、図2(E)は時刻t=−teにおけるエッチングの進行状況を示し、図2(F)は時刻t=−tfにおけるエッチングの進行状況を示し、図2(G)は時刻t=0におけるエッチングの進行状況を示すものとする。そして、図2(E)においては第2の層12と第3の層13との境界に位置する点eまでエッチングが進み、図2(F)において第2の層12と第3の層13との境界に位置する点fまでエッチングが進み、図2(G)において第2の層12と第3の層13との境界に位置する点gまでエッチングが進んだものとする。
【0027】
第3の層13のエッチングレート(エッチングの速さ)をv3とすると、時刻t=−teから時刻t=0までの間に第3の層13において進むエッチングの距離(点eと点gとの間の距離)は、(v3×te)であり、時刻t=−tfから時刻t=0までの間に第3の層13において進むエッチングの距離(点fと点gとの間の距離)は、(v3×tf)である。
【0028】
一方、点eにおける第2の層12のエッチングは、点eまで第3の層13のエッチングが進んだ時にスタートし、点fにおける第2の層12のエッチングは、点fまで第3の層13のエッチングが進んだ時にスタートする。従って、第2の層12のエッチングレートをv2とすると、時刻t=−teから時刻t=0までの間に進む第2の層12のエッチング深さは、(v2×te)であり、時刻t=−tfから時刻t=0までの間に進む第2の層12のエッチング深さは、(v2×tf)である。
【0029】
ここで、(v3×te)と(v3×tf)との比は、(v2×te)と(v2×tf)との比に等しい。このことから、本実施形態によれば、傾斜角度が一定の、曲面ではなく平面状の傾斜面を形成できることがわかる。この傾斜角度は、第3の層13のエッチングレートv3と第2の層12のエッチングレートv2との比によって決まる。
【0030】
第2の層12のエッチングレートv2に対する第3の層13のエッチングレートv3の比が十分に大きい場合には、傾斜構造体の傾斜角度は緩やかになり、第2の層12のエッチングレートv2に対する第3の層13のエッチングレートv3の比が小さくなるに従って、傾斜構造体の傾斜角度が急になる。これにより、傾斜構造体の傾斜角度を調整することができる。
【0031】
図2(G)に示すように、第2の層12がエッチングされると、第1の層11が一部露出する。その後、図3(H)〜図3(J)に示すように、一部露出した第1の層11がエッチングされるとともに、引き続き、第2の層12の傾斜面と、第3の層13の端面とがエッチングされる。
【0032】
ここで、図3(H)は時刻t=−thにおけるエッチングの進行状況を示し、図3(I)は時刻t=−tiにおけるエッチングの進行状況を示し、図3(J)は時刻t=0におけるエッチングの進行状況を示すものとする。そして、図3(H)においては第2の層12と第3の層13との境界に位置する点h、及び第1の層11と第2の層12との境界に位置する点Hまでエッチングが進み、図3(I)において第2の層12と第3の層13との境界に位置する点i、及び第1の層11と第2の層12との境界に位置する点Iまでエッチングが進み、図3(J)において第1の層11と第2の層12との境界に位置する点Jまでエッチングが進んだものとする。
【0033】
このとき、上述の通り、第2の層12の傾斜面の傾斜角度は一定であり、図3(I)の断面における点Hと点Iとの距離は、点hと点iとの距離に等しくなる。すなわち、第2の層12の斜面がエッチングされて第1の層11の上面の露出が進む速さは、第3の層13の端面がエッチングされて第2の層12の上面の露出が進む速さ(第3の層13のエッチングレートv3)と等しくなる。
【0034】
基板10の面方向における第3の層13のエッチングレートは、第1の層11のエッチングレートより大きいので、図3(I)及び図3(J)に示すように、第1の層11の上面の露出が早く進む。従って、第1の層11の上面の露出を追いかけるようにして、第1の層11の内部のエッチングが順次開始される。
【0035】
時刻t=−thから時刻t=0までの間に第1の層11の上面の露出が進む距離(点Hと点Jとの間の距離)は、(v3×th)であり、時刻t=−tiから時刻t=0までの間に第1の層11の上面の露出が進む距離(点Iと点Jとの間の距離)は、(v3×ti)である。
【0036】
一方、点Hにおける第1の層11のエッチングは、点Hまで第1の層11の上面の露出が進んだ時にスタートし、点Iにおける第1の層11のエッチングは、点Iまで第1の層11の上面の露出が進んだ時にスタートする。従って、第1の層11のエッチングレートをv1とすると、時刻t=−thから時刻t=0までの間に進む第1の層11のエッチング深さは、(v1×th)であり、時刻t=−tiから時刻t=0までの間に進む第1の層11のエッチング深さは、(v1×ti)である。
【0037】
ここで、(v3×th)と(v3×ti)との比は、(v1×th)と(v1×ti)との比に等しい。このことから、本実施形態によれば、傾斜角度が一定の、曲面ではなく平面状の傾斜面を形成できることがわかる。この傾斜角度は、第3の層13のエッチングレートv3と第1の層11のエッチングレートv1との比によって決まる。従って、第1の層11のエッチングレートv1が第2の層12のエッチングレートv2より小さい場合には、第1の層11の傾斜面の傾斜角度は第2の層12の傾斜面の傾斜角度より緩やかになる。
【0038】
以上の工程によって2つの傾斜面が形成されたら、第2の層12の全体がエッチングされる前に、エッチング液から基板10を取り出し、エッチングを終了させる。
【0039】
<1−3.レジスト層の除去>
最後に、図3(K)に示すように、レジスト層14を除去することにより、本実施形態の傾斜構造体が形成される。
【0040】
<1−4.実施形態の効果>
以上の製造工程によれば、半導体プロセスとの親和性が高い成膜、エッチング等の技術を用いて傾斜構造体を製造できる。従って、1つのチップ上に傾斜構造体と半導体回路とを混載することも容易となる。
【0041】
そして、2種類の傾斜角度を有する傾斜構造体を製造するために、レジスト層14のパターニングやエッチング液による処理はそれぞれ1回だけで済ませることができる。3種類以上の傾斜角度を有する傾斜構造体を製造する場合でも、第2の層12と第3の層13との間に、第3の層13よりエッチングレートが小さく、第1の層11及び第2の層12とエッチングレートが異なるもう1つの層を形成しておくことにより、同様の工程数で済ませることができる。
【0042】
また、以上の製造工程によれば、傾斜構造体を製造するために、高価で摩耗しやすい金型を作成する必要がなく、傾斜構造体の形状を変更するために金型を作り直す必要もない。また、金型で作成可能な材料(樹脂等)だけでなく、種々の材料を用いて、微細な傾斜構造体を製造することができる。
【0043】
また、以上の製造工程によれば、グレースケールマスクのような特殊なマスクを用いる必要もない。また、基板上の限られたスペースにも、必要な箇所に必要な傾斜面を形成することができる。
【0044】
<2.第2の実施形態>
図5及び図6は、本発明の第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第2の実施形態は、第1の層11のエッチングレートv1が第2の層12のエッチングレートv2より大きい点で、第1の実施形態と異なる。エッチング工程の前までの工程は、図1を参照しながら説明した第1の実施形態と同様である。
【0045】
第2の実施形態においては、例えば、第1の層11としてO3−TEOSを用い、第2の層12としてP−SiO2を用い、第3の層13としてSOGを用いることができる。第2の層12、第1の層11、第3の層13の順でエッチングレートが大きくなるようにすれば、他の組合せを用いても良い。
【0046】
図5に示すように、エッチング工程において、まず第3の層13と第2の層12とがエッチングされる。第2の層12のエッチングレートv2に対する第3の層13のエッチングレートv3の比が十分に大きいので、傾斜構造体の傾斜角度は緩やかになる。
【0047】
第2の層12がエッチングされ、第1の層11が一部露出すると、図6に示すように、一部露出した第1の層11がエッチングされるとともに、引き続き、第2の層12の傾斜面と、第3の層13の端面とがエッチングされる。
【0048】
第1の層11の上面の露出が進む速さは、第3の層13のエッチングレートv3と等しいので、第1の層11の上面の露出を追いかけるようにして、第1の層11の内部のエッチングが行われる。但し、第2の実施形態において、第1の層11のエッチングレートv1は、第2の層12のエッチングレートv2より大きいので、第1の層11に形成される傾斜面の傾斜角度は、第2の層12の傾斜面の傾斜角度より急になる。
他の点については、第1の実施形態と同様である。
以上の工程により、第2の実施形態の傾斜構造体が形成される。
【0049】
<3.第3の実施形態>
図7及び図8は、本発明の第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第3の実施形態は、第3の層13の厚さによって傾斜構造体の傾斜角度を調整する点で、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0050】
<3−1.積層>
第1及び第2の実施形態と同様に、基板10上に第1の層11及び第2の層12を形成した後、図7(D)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13の一部を薄く成膜し、さらに、第3の層13上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層15を形成する。次に、図7(E)に示すように、レジスト層15をマスクとして、第3の層13の異方性エッチング(ドライエッチング)を行うことにより、第3の層13を所定形状にパターニングする。そして、図7(F)に示すように、レジスト層15を除去し、第3の層13の残りの一部を成膜する。これにより、図7(D)においてレジスト層15を成膜した領域には厚い第3の層13が形成され、その他の領域には薄い第3の層13が形成される。
【0051】
次に、図7(G)に示すように、第3の層13(厚い領域及び薄い領域)上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層14を形成する。
【0052】
<3−2.エッチング>
次に、第1及び第2の実施形態と同様に、図8(H)〜図8(J)に示すように、第3の層13、第2の層12及び第1の層11のウェットエッチングを行う。このとき、第3の層13のエッチングレートは、第3の層13の厚い領域においては高く、第3の層13の薄い領域においては低い。これは、第3の層13がある程度の厚さ以下になると、第2の層12とレジスト層14との間の第3の層13の端面にエッチング液が入りにくくなることによるものと考えられる。
【0053】
これによれば、第3の層13のエッチングレートを第3の層13の厚さによって調整することができる。従って、第3の層13を1種類の材料で形成した場合でも、領域ごとに第3の層13の厚さを変えることにより、異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を同時に形成することができる。そして、第2の層12及び第1の層11のエッチングレートが異なるようにすれば、さらに異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を形成することができる。
【0054】
<3−3.レジスト層の除去>
最後に、図8(K)に示すように、レジスト層14を除去することにより、第3の実施形態の傾斜構造体が形成される。
他の点については、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0055】
<4.第4の実施形態>
図9及び図10は、本発明の第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第4の実施形態は、第3の層13に不純物のイオンを注入することによって傾斜構造体の傾斜角度を調整する点で、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0056】
<4−1.積層>
第1及び第2の実施形態と同様に、基板10上に第1の層11及び第2の層12を形成した後、図9(D)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13を形成し、さらに、第3の層13上の所定領域に、イオン注入用マスクとなる所定形状のレジスト層16を形成する。次に、図9(E)に示すように、レジスト層16をマスクとして、第3の層13にリン、ボロン、ヒ素等のイオンを注入する。そして、図9(F)に示すように、レジスト層16を除去する。これにより、図9(D)においてレジスト層16を成膜した領域には不純物が注入されていない(不純物濃度が低い)第3の層13が形成され、その他の領域には不純物が注入された(不純物濃度が高い)第3の層13が形成される。
【0057】
次に、図9(G)に示すように、第3の層13(例えば、不純物濃度が低い領域及び高い領域)上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層14を形成する。
【0058】
<4−2.エッチング>
次に、第1及び第2の実施形態と同様に、図10(H)〜図10(J)に示すように、第3の層13、第2の層12及び第1の層11のウェットエッチングを行う。このとき、第3の層13のエッチングレートは、不純物濃度の高い領域においては高く、不純物濃度の低い領域においては低い。これは、第3の層13の一部への不純物の注入によって、結晶構造が壊れ、エッチングされ易くなることによるものと考えられる。
【0059】
これによれば、第3の層13のエッチングレートを不純物の注入の有無又は不純物濃度によって調整することができる。従って、第3の層13を1種類の材料で形成した場合でも、領域ごとに第3の層13の不純物濃度を変えることにより、異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を同時に形成することができる。そして、第2の層12及び第1の層11のエッチングレートが異なるようにすれば、さらに異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を形成することができる。
【0060】
<4−3.レジスト層の除去>
最後に、図10(K)に示すように、レジスト層14を除去することにより、第4の実施形態の傾斜構造体が形成される。
他の点については、第1及び第2の実施形態と同様である。
【0061】
なお、第4の実施形態においては、第3の層13に、不純物濃度が低い領域と不純物濃度が高い領域とを形成したが、第3の層13の全体を、不純物濃度が一様に高い領域にしても良い。第3の層13の不純物濃度を調整することにより、傾斜構造体の傾斜角度を調整することができる。
【0062】
また、本実施形態においては、不純物を注入する工程の後に、第3の層13上にレジスト層14を形成してエッチングしたが、不純物を注入する工程の前又は後に、第3の層13をパターニングして第3の層13の端面を形成し、後述の第5の実施形態のように、第3の層13上にレジスト層14を形成せずにエッチングしても良い。
【0063】
<5.第5の実施形態>
図11及び図12は、本発明の第5の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。第5の実施形態は、傾斜構造体を形成するために第1の層11と第2の層12と第3の層13とをエッチングするときに、第3の層13の上面を保護するレジスト層を有しない点で、第1及び第2の実施形態と異なる。
【0064】
<5−1.積層>
第1及び第2の実施形態と同様に、まず、図11(A)に示すように、基板10上に、傾斜構造体となる第1の層11及び第2の層12を形成する。
【0065】
次に、図11(B)に示すように、第2の層12上に、犠牲層となる第3の層13を形成する。ここまでの工程は第1及び第2の実施形態と同様である。但し、第3の層13の厚さは、第3の層13の端面をエッチングしつつ第1の層11及び第2の層12に所望の傾斜構造体を形成している間に、第3の層13の厚さが0にならない程度の厚さであることが望ましく、第1の層11の厚さと第2の層12の厚さの和より厚いものとすることができる。
【0066】
次に、図11(C)に示すように、第3の層13上の所定領域に、エッチング用マスクとなる所定形状のレジスト層15を形成する。
次に、図11(D)に示すように、レジスト層15をマスクとして、第3の層13の異方性エッチング(ドライエッチング)を行うことにより、第3の層13を所定形状にパターニングする。これにより、第2の層12の上面の一部と、第3の層13の端面とが露出する。
次に、図12(E)に示すように、レジスト層15を除去する。これにより、第3の層13の上面全体が露出する。
【0067】
<5−2.エッチング>
次に、図12(F)及び図12(G)に示すように、第3の層13及び第2の層12のウェットエッチングを行う。このとき、まず図12(F)に示すように、第2の層12の上面の露出した一部と、第3の層13の端面と、第3の層13の上面全体とが同時にエッチングされる。
【0068】
このとき、基板10の面方向における第3の層13のエッチングレートが第2の層12のエッチングレートより大きいので、図12(F)及び図12(G)に示すように、第3の層13の端面のエッチングが早く進んでいき、第2の層12のエッチングがこれを追いかけるように進んでいく。
【0069】
図12(G)に示すように、第2の層12がエッチングされると、第1の層11が一部露出する。その後、図12(H)に示すように、一部露出した第1の層11がエッチングされるとともに、引き続き、第2の層12の傾斜面と、第3の層13の端面と、第3の層13の上面全体がエッチングされる。
【0070】
第2の層12の上面がエッチングされることを防ぐため、本実施形態におけるエッチングは、第3の層13の厚さが0にならないうちに終了することが望ましい。
他の点については、第1及び第2の実施形態と同様である。
以上の工程により、本実施形態の傾斜構造体が形成される。
【0071】
<6.分光センサー>
図13は、上述の実施形態に係る傾斜構造体を用いた分光センサーの概略構成を示す断面図である。図13に示す分光センサーは、受光素子を有する光学素子部50と、角度制限フィルター部60と、分光フィルター部70とを含んでいる。
【0072】
光学素子部50は、シリコンなどの半導体で形成された基板10と、基板10に形成されたフォトダイオード51、52、53を含んでいる。さらに基板10には、フォトダイオード51、52、53に所定の逆バイアス電圧を印加したり、フォトダイオード51、52、53において発生した光起電力に基づく電流を検知し、当該電流の大きさに応じたアナログ信号を増幅してデジタル信号に変換したりする電子回路(図示せず)が形成されている。
【0073】
<6−1.角度制限フィルター部>
角度制限フィルター部60は、基板10の上方に形成されている。角度制限フィルター部60においては、遮光体61によって光路壁が形成され、この光路壁に囲まれた酸化シリコン等の透光体62によって光路が形成されている。遮光体61は、フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする波長の光を実質的に透過しない材料によって構成される。遮光体61は、基板10上に、例えば格子状の所定パターンで複数層にわたって連続的に形成されることにより、基板10の面に垂直な方向に光路を形成する。
【0074】
角度制限フィルター部60によって、光路内を通過する光の入射角度が制限される。すなわち、光路内に入射した光が、光路の向きに対して所定の制限角度以上に傾いている場合には、光が遮光体61に当たり、一部が遮光体61に吸収され、残りが反射される。光路を通過するまでの間に反射が繰り返されることによって反射光は弱くなる。従って、角度制限フィルター部60を通過できる光は、実質的に、光路に対する傾きが所定の制限角度未満で入射した光に制限される。
【0075】
<6−2.分光フィルター部>
分光フィルター部70は、角度制限フィルター部60上に形成された透光層71、第1の層72及び第2の層73を含む傾斜構造体と、この傾斜構造体上に形成された多層膜74とを有している。多層膜74は、酸化シリコン等の低屈折率の薄膜と、酸化チタン等の高屈折率の薄膜とを多数積層したものである。
低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜は、それぞれ例えばサブミクロンオーダーの所定膜厚とし、これを例えば計60層程度にわたって積層することにより、多層膜74全体で例えば6μm程度の厚さとする。
【0076】
多層膜74の基板10に対する傾斜角度は、フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする光の設定波長に応じて、例えば0[deg]以上、30[deg]以下に設定する。多層膜74を基板10に対して傾斜させるために、角度制限フィルター部60上に透光層71、第1の層72及び第2の層73を含む傾斜構造体を形成し、その上に多層膜74を形成する。傾斜構造体としては、上述の製造方法によって製造した傾斜構造体を用いることができる。
【0077】
以上の構成により、分光フィルター部70は、角度制限フィルター部60に所定の制限角度範囲内で入射する光の波長を制限する。
すなわち、分光フィルター部70に入射した入射光は、低屈折率の薄膜と高屈折率の薄膜との境界面において、一部は反射光となり、一部は透過光となる。そして、反射光の一部は、他の低屈折率の薄膜と高屈折率の薄膜との境界面において再度反射して、上述の透過光と合波する。このとき、反射光の光路長と一致する波長の光は、反射光と透過光の位相が一致して互いに強め合い、反射光の光路長と一致しない波長の光は、反射光と透過光の位相が一致せずに互いに弱め合う(干渉する)。
【0078】
ここで、反射光の光路長は、入射光の向きに対する多層膜74の傾斜角度によって決まる。従って、上述の干渉作用が、例えば計60層に及ぶ多層膜74において繰り返されると、入射光の入射角度に応じて、特定の波長の光のみが分光フィルター部70を透過し、所定の出射角度(例えば、分光フィルター部70への入射角度と同じ角度)で分光フィルター部70から出射する。
【0079】
角度制限フィルター部60は、所定の制限角度範囲内で角度制限フィルター部60に入射した光のみを通過させる。従って、分光フィルター部70と角度制限フィルター部60とを通過する光の波長は、多層膜74の基板10に対する傾斜角度と、角度制限フィルター部60が通過させる入射光の制限角度範囲とによって決まる所定範囲の波長に制限される。
【0080】
フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする光の設定波長に応じて、異なる傾斜角度の傾斜面を有する傾斜構造体を予め形成しておくことにより、多層膜74は、フォトダイオード51、52、53によって受光しようとする光の設定波長によらず、同一の膜厚で、共通の工程により成膜することができる。
【0081】
<6−3.光学素子部>
光学素子部50に含まれるフォトダイオード51、52、53は、分光フィルター部70及び角度制限フィルター部60を通過した光を受光して光起電力を発生させる。フォトダイオード51、52、53は、半導体によって構成された基板10に、イオン注入等を行うことによって形成された不純物領域を含んでいる。
【0082】
分光フィルター部70及び角度制限フィルター部60を通過してきた光がフォトダイオード51、52、53において受光され、光起電力が発生することにより、電流が発生する。この電流を、電子回路(図示せず)によって検知することにより、光を検知することができる。フォトダイオード51には、傾斜面を有しない透光層71上の多層膜74を通過した第1の波長を有する光が入射する。フォトダイオード52には、第1の傾斜角度の傾斜面を有する第1の層72上の多層膜74を通過した第2の波長を有する光が入射する。フォトダイオード53には、第2の傾斜角度の傾斜面を有する第2の層73上の多層膜74を通過した第3の波長を有する光が入射する。
【0083】
<6−4.分光センサーの製造方法>
ここで、分光センサーの製造方法について簡単に説明する。分光センサーは、まず基板10にフォトダイオード51、52、53を形成し、次に、フォトダイオード51、52、53上に角度制限フィルター部60を形成し、次に、角度制限フィルター部60の上に分光フィルター部70を形成することによって製造される。
【0084】
本実施形態によれば、分光センサーを半導体プロセスによって一貫して製造することができ、所望の傾斜角度を有する傾斜構造体を用いた分光センサーを容易に形成することができる。
【0085】
なお、ここでは入射光が分光フィルター部70を透過して光学素子部50に到達する透過型の分光センサーについて述べたが、入射光が分光フィルター部70において反射して光学素子部に到達する反射型の分光センサーでも良い。
また、傾斜構造体を用いた素子として、分光センサーについて述べたが、傾斜構造体を他の素子として用いても良い。例えば、光ファイバーの中継デバイスにおいて所定波長の光信号を中継するため、プリズムやミラー等の光学素子として用いても良い。
【符号の説明】
【0086】
10…基板、11…第1の層、12…第2の層、13…第3の層(犠牲層)、14…レジスト層(ウェットエッチング用マスク)、14a…開口、15…レジスト層(ドライエッチング用マスク)、16…レジスト層(イオン注入用マスク)、50…光学素子部、51、52、53…フォトダイオード、60…角度制限フィルター部、61…遮光体、62…透光体、70…分光フィルター部、71…透光層、72…第1の層、73…第2の層、74…多層膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上方に第1の層を形成する工程(a)と、
前記第1の層の上方に第2の層を形成する工程(b)と、
前記第2の層の上方に第3の層を形成する工程(c)と、
前記第3の層に、前記基板の面と交差する方向の端面を形成する工程(d)と、
前記第3の層の端面をエッチングし、前記第3の層の端面のエッチングによって露出した前記第2の層を順次エッチングするとともに、前記第2の層のエッチングによって露出した前記第1の層を順次エッチングする工程(e)と、
を含む傾斜構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(e)では、前記基板の面方向における前記第3の層のエッチングレートは、前記第2の層のエッチングレート及び前記第1の層のエッチングレートより大きい傾斜構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2おいて、
前記工程(e)では、前記基板の面方向における前記第2の層のエッチングレートは、前記第1の層のエッチングレートより大きい傾斜構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3において、
前記工程(c)と前記工程(d)との間、又は前記工程(d)と前記工程(e)との間に、前記第3の層に不純物のイオンを導入する工程(f)をさらに含む傾斜構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記工程(f)は、前記第3の層に、互いに不純物濃度が異なる第1の領域及び第2の領域を形成し、
前記工程(e)は、前記第3の層の前記第1の領域内の端面と前記第2の領域内の端面とを同時にエッチングする傾斜構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5において、
前記工程(c)と前記工程(d)との間に、前記第3の層の上方にレジスト層を形成する工程(g)をさらに含んでおり、
前記工程(d)は、前記レジスト層をマスクとして前記第3の層の一部をエッチングすることによって前記端面を形成し、
前記工程(e)は、前記第3の層の上面を前記レジスト層によって保護しつつ、前記第3の層の端面をエッチングする傾斜構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記工程(c)で形成される前記第3の層は、互いに厚さが異なる第3の領域及び第4の領域を有し、
前記工程(g)は、前記第3の層の前記第3の領域の上方及び前記第4の領域の上方に、前記レジスト層を形成し、
前記工程(e)は、前記第3の層の前記第3の領域内の端面と前記第4の領域内の端面とを同時にエッチングする傾斜構造体の製造方法。
【請求項8】
基板に受光素子を形成する工程と、
前記受光素子の上方に、前記受光素子に向けて通過する光の入射方向を制限する角度制限フィルターを形成する工程と、
前記角度制限フィルターの上方に、請求項1〜請求項6の何れか一項記載の方法によって傾斜構造体を形成する工程と、
前記傾斜構造体の上方に多層膜を形成することにより、前記角度制限フィルターを通過できる光の波長を制限する分光フィルターを形成する工程と、
を含む分光センサーの製造方法。
【請求項1】
基板の上方に第1の層を形成する工程(a)と、
前記第1の層の上方に第2の層を形成する工程(b)と、
前記第2の層の上方に第3の層を形成する工程(c)と、
前記第3の層に、前記基板の面と交差する方向の端面を形成する工程(d)と、
前記第3の層の端面をエッチングし、前記第3の層の端面のエッチングによって露出した前記第2の層を順次エッチングするとともに、前記第2の層のエッチングによって露出した前記第1の層を順次エッチングする工程(e)と、
を含む傾斜構造体の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(e)では、前記基板の面方向における前記第3の層のエッチングレートは、前記第2の層のエッチングレート及び前記第1の層のエッチングレートより大きい傾斜構造体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2おいて、
前記工程(e)では、前記基板の面方向における前記第2の層のエッチングレートは、前記第1の層のエッチングレートより大きい傾斜構造体の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3において、
前記工程(c)と前記工程(d)との間、又は前記工程(d)と前記工程(e)との間に、前記第3の層に不純物のイオンを導入する工程(f)をさらに含む傾斜構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記工程(f)は、前記第3の層に、互いに不純物濃度が異なる第1の領域及び第2の領域を形成し、
前記工程(e)は、前記第3の層の前記第1の領域内の端面と前記第2の領域内の端面とを同時にエッチングする傾斜構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5において、
前記工程(c)と前記工程(d)との間に、前記第3の層の上方にレジスト層を形成する工程(g)をさらに含んでおり、
前記工程(d)は、前記レジスト層をマスクとして前記第3の層の一部をエッチングすることによって前記端面を形成し、
前記工程(e)は、前記第3の層の上面を前記レジスト層によって保護しつつ、前記第3の層の端面をエッチングする傾斜構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記工程(c)で形成される前記第3の層は、互いに厚さが異なる第3の領域及び第4の領域を有し、
前記工程(g)は、前記第3の層の前記第3の領域の上方及び前記第4の領域の上方に、前記レジスト層を形成し、
前記工程(e)は、前記第3の層の前記第3の領域内の端面と前記第4の領域内の端面とを同時にエッチングする傾斜構造体の製造方法。
【請求項8】
基板に受光素子を形成する工程と、
前記受光素子の上方に、前記受光素子に向けて通過する光の入射方向を制限する角度制限フィルターを形成する工程と、
前記角度制限フィルターの上方に、請求項1〜請求項6の何れか一項記載の方法によって傾斜構造体を形成する工程と、
前記傾斜構造体の上方に多層膜を形成することにより、前記角度制限フィルターを通過できる光の波長を制限する分光フィルターを形成する工程と、
を含む分光センサーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−44664(P2013−44664A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183618(P2011−183618)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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