説明

傾斜歯駆動を用いる低摩擦直接駆動コンベヤ

コンベヤが、進行方向とは逆に傾斜した駆動面を有する歯を有する無端ベルトを含む。コンベヤは、進行方向に傾斜した駆動面を有する溝部を有する駆動プーリも含む。溝部の駆動面が歯の駆動面と係合してベルトを移動させ、傾斜角がベルトを内方に引っ張る傾向がある。静止足部が、駆動されている歯をそれに対応する溝部から除去するのを助ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤの無端ベルトに関し、より詳細には、プーリによって無端ベルトを駆動するために傾斜歯を用いるコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年2月2日に出願された米国仮出願第60/743,212号の利益を主張し、当該出願の全体が本明細書に援用される。
【0003】
摩擦駆動平ベルトを備えるコンベヤは、或る場所から別の場所へ物品を移動させる既知のシステムである。張力がかかった無端ベルトが駆動プーリと尾部構成要素(通常はプーリ又は固定棒)との間に延在することで、駆動プーリとベルトとの間の摩擦が前者から後者へのトルクの伝達を可能にすることにより、ベルトの運動を引き起こす。ベルトにかかる張力は、ベルトを動かすのに必要な摩擦を維持するのに必要であるため、このタイプのコンベヤは、張力及び摩擦が弱まり得るような環境ではうまく機能しない。例えば、ベルト上で運搬される製品から油、グリース又は他の流出物が導入されることが、摩擦の損失をもたらすことにより、コンベヤの性能に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
別のタイプのコンベヤは、ダイレクト又はポジティブドライブモジュラーベルトを備える。このタイプのコンベヤでは、複数の連動連結部から形成されるモジュラーベルトが駆動プーリとアイドラプーリとの間に延在し、駆動プーリ上の対応する溝部(sheaves)と係合する複数の歯を備えるか、又は代替的に、駆動プーリ上の歯が、ベルト上の連結部又は溝部と係合する。歯と溝部との相互作用がベルトにトルクを伝達する。その結果、コンベヤがベルトを動かす際に摩擦に依存せず、減摩作用のある化合物が摩擦駆動ベルトに関して上述したように性能に影響を及ぼすことがない。しかしながら、低張力の直接駆動モジュラーベルトは洗浄及び保守が困難である。これらは、多孔質でもあるため、粉体等の製品を容易に運搬することができない。
【0005】
図1に示すように、片側に平面102を有し、他方の側に歯104を有する低摩擦ポジティブドライブ無端ベルト100を備えるコンベヤは、摩擦駆動平ベルト及びモジュラーベルトに関連する問題を克服する。継目のない平面102は、概して、熱可塑性材料でできており、無孔質であり洗浄しやすく、歯104は、ベルト100と駆動プーリ108との間の摩擦もベルト100の張力も必要とせずに、駆動プーリ108の溝部106と係合してベルト100にトルクを伝達する。このようなコンベヤは、本明細書にその全体が参照により援用される米国特許出願第60/593,493号に開示されている。
【0006】
ベルトの伸びを考慮に入れて、ベルトの歯のピッチは、ベルトの最大伸張時以外では駆動プーリの溝部のピッチよりも小さくなければならないと決まっている。また、プーリのピッチは、わずかな増減はあるが最大伸張時のベルトのピッチと等しくなければならない。さらに、ベルトの歯がプーリの溝部に進入するように確実に位置決めするために、プーリの各溝部の長手方向幅は、少なくとも、ベルト巻き掛けのスパンでベルトを最大許容量に伸張させることによって生じる距離だけベルトの歯の長手方向幅よりも大きくなければならない。ピッチ及び幅の差の結果として、伸張が最大伸張以下である限り、歯及び溝部は長手方向に一致する。
【0007】
ベルトとプーリとのピッチ差により、1つのプーリの溝部によって駆動されるベルトの歯はどの時点でも1つだけである。この係合した歯は常に、プーリから退出しようとしている歯であることが分かっている。それに続いて任意の時点でプーリの溝部に進入するベルトの歯全てについて、ベルトの歯の駆動面とプーリの溝部の駆動面との間にギャップがあり、そのギャップのサイズは、次に続く歯ごとに徐々に大きくなる。その結果、退出歯が駆動プーリから係脱すると、ベルトの次の歯すなわち後続歯とその各プーリの溝部の面との間に多少のギャップが残る。この時点で、プーリはベルトに対して回転し続けるがベルトを移動させることはなく、溝部の駆動面が後続歯の駆動面と当接するまで、有効な駆動性は失われる。換言すれば、歯が再係合するまで、ベルトが滑りながらプーリが回転する。ベルトの運動量及びベルトとプーリとの摩擦を無視すれば、ベルトは、次の溝部が後続歯と係合して新たな「退出歯」になるまで少しの間だけ事実上停止する。
【0008】
直接駆動の応用を奏功させるのは、ベルトとプーリとの間のいくらかの滑りである。プーリの溝部からのベルトの歯のこの一時的な係脱は、ベルトの平均速度をプーリの平均速度よりも遅くする。実際、ベルトの平均速度は、ベルトで依然として得られる伸張率(最大伸張−現在の伸張)だけプーリの速度よりも遅い。この必然的な滑りにより、プーリとベルトとの間の摩擦が直接駆動の恩恵を減らすことになる。ベルトとプーリとの間の摩擦が滑りを遅らせることにより、後続歯がプーリの溝部を完全に捕らえ損なう可能性がある。このような摩擦を回避するために、ベルト及びプーリは、減摩材製にするか又は減摩材でコーティングすることができ、プーリは、溝部間でのベルト及びプーリの接触面積が小さくなるように設計することができ、ベルトは低張力下で維持されることが好ましい。
【0009】
また、係合している(駆動されている)歯が溝部から退出するのに適した時点まで確実に係合したままとなるように、ベルトに隣接して位置制限器が用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
石炭、鉱石又は砂利を移動させるもの等のコンベヤ用途での長いベルト走程では、通常、伸びを最低限に抑えるために重い強化ベルトと、重いベルト及びベルト上の荷重を移動させるために大きな駆動モータとが必要である。上記の熱可塑性低摩擦直接駆動ベルトは、長いベルト走程には役立たないことが分かっている。また、駆動歯をプーリと係合させておくのに位置制限器が必要であるという複雑性は、石炭、鉱石又は砂利を移動させる過酷な環境でこのようなシステムを複雑にするだけである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、低摩擦直接駆動コンベヤは、無端の熱可塑性ベルトと、無端の熱可塑性ベルトを駆動方向に駆動するためにベルトと接触している少なくとも1つの駆動プーリとによって、従来技術の制限を克服する。駆動プーリ又はベルトの一方が表面に溝部を有し、他方が表面に歯を有する。各歯及び各溝部は、プーリの表面からは駆動方向に、ベルトの表面からは駆動方向とは逆に、表面から鋭角に延在する駆動面を有する。足部が、駆動プーリに隣接して溝部からの歯の退出点に配置されて、歯が足部を通過するときに溝部から歯を付勢する。このように、駆動プーリの表面から延在する駆動面は、ベルトの表面から延在する駆動面を掴んでベルトを駆動プーリに押し付け、ベルトを駆動方向に移動させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明によるコンベヤの一実施形態を、図2〜図4で見ることができる。コンベヤ200は、片側に平滑で概ね連続した外側運搬表面204があり、反対側に互いに等間隔に離間している複数の歯206がある、無端ベルト202を備える。ベルト202は、熱可塑性材料でできていることが好ましく、強化され得る。隣接する歯間に、運搬表面と概ね平行に内側表面208が延在する。ベルト202は、外周上に互いに等間隔に離間している複数の横方向の溝すなわち溝部212を有するプーリ210に部分的に巻き付く。各歯206は駆動面214を有し、各溝部は駆動面216を有する。プーリ210が矢印Aで示す駆動方向に回転すると、各歯206は、ベルト202がプーリ210に巻き付くときに対応する溝部212の駆動面216に面する歯の駆動面214によって溝部に引き込まれる。ベルトの歯206のピッチは、プーリの中心から所与の半径で一致する円弧Cに沿ったプーリの溝部212のピッチよりも小さく、各溝部の幅は各歯の幅よりも大きい。したがって、ベルト202がプーリ210に巻き付き始めるとき、対応する溝部212’に入る進入歯206’の駆動面214は、溝部の駆動面216から離れて係合しない。この状態は、最後の歯206’’の位置に達するまで続き、最後の歯206’’は、対応する溝部212’’の駆動面216と係合し、この係合によってベルト202が矢印Bで示す駆動方向に引っ張られる。
【0013】
溝部212の深さよりも短いことが好ましい高さを有する歯206を図3でより明確に見ることができる。歯の駆動面214は、駆動方向Bに対して歯206の後方側に配置される。さらに、歯の駆動面214には傾斜が付けられる。換言すれば、歯の駆動面214は、運搬表面204及び内側表面208に対して垂直な仮想平面220から鋭角αに延在する。さらに、歯の駆動面214は駆動方向Bとは逆方向に延在する。
【0014】
同様に、溝部212を図4でより明確に見ることができる。溝部の駆動面216は、プーリ210の駆動方向Aに対して溝部212の後方側に配置され、プーリ210の周縁に対して垂直な仮想平面220から鋭角αに延在する。この場合、駆動面216は、駆動方向Aに向かって延在する。
【0015】
結果として、溝部の駆動面216が最後の歯216’’の歯の駆動面214と係合すると、それら各自の向きによって溝部212が対応する歯206をプーリ210の中心に向かって内方に引っ張る傾向がある。図2のようにベルト202がプーリ210に有効に巻き付いている状況では、歯が退出点226で溝部から退出すべきときに駆動されている歯206を対応する溝部212から除去するのを助ける必要があり得る。静止足部222が、プーリ210に隣接して、歯206と接触する位置で出口点226に取り付けられる。足部222は、軸受表面224を有し、その少なくとも一部が、歯206がプーリ210に巻き付くときに歯の底部によって形成される仮想円に接するように位置決めされる。プーリの溝部212の駆動面216がベルト202を駆動方向Aに付勢し続けるとき、足部222の軸受表面224は、歯206がプーリと共に回転し続けるのを妨げ、代わりに、歯206をプーリの中心に向かって内方に引っ張る傾向に逆らって歯の駆動面214を溝部の駆動面216に対して摺動させることによって歯を溝部から押し出す。足部222は静止しているため、続いて駆動される各歯206も同様にその対応する溝部212から押し出される。
【0016】
角度αは約2度又は3度であることが好ましいが、用途によって且つ荷重によって変わり得る。通常、この角度は1度〜5度の範囲にある。この角度は、対応する歯をプーリの中心に向かって溝部の内方に引き込むために454グラム又は907グラムの力を与えることができることが望ましい。
【0017】
傾斜した歯及び溝部の構成がベルトを掴んでプーリに向かって引っ張るこの傾向は、ベルトがプーリにあまり強く巻き付く必要がないことにより、あったとしても、さらに摩擦の可能性を最小にすると共に直接駆動の特徴を向上させることを意味する。これは、この構成が図5に示す実施形態等の長いコンベヤでの他の用途によく適していることも意味する。これは、石炭、鉱石又は砂利等の定荷重を運搬するのに用いられ得るタイプの用途である。強化され得る無端の熱可塑性ベルト300は、複数の駆動プーリ302に掛かり、駆動プーリはそれぞれ互いに同一の構成であり、スパン303にわたって互いに離間しており、図2に示すものと同様である。各プーリ302は、多少の溝部304を有し得る。ベルト300は、図2に示すように片側に複数の歯306を有し、ベルトがプーリを通過するとき、歯306は、対応する溝部304によって上述したのと同じように矢印Cで示す方向に駆動される。好ましくは、各プーリ302は、ベルトの接触部分を別々に駆動するという点で駆動プーリである。このように、プーリ302は、長距離にわたってベルト300を引っ張ることができる。場合によっては、対応する溝部304からの歯306の係脱を助けるために、各プーリ302に足部(図示せず)が装着されてもよい。
【0018】
結果として、1つの大きなモータの代わりに複数のより小さなモータによって長距離運搬を駆動させることができる。さらに、現在用いられている従来の重いベルトの代わりに、ベルトを軽量且つ伸縮可能にさえすることができる。ベルト300は、隣接するプーリ302間のスパン303の長さを支持して引っ張るのに十分な強度を有するだけでよいことが明らかであろう。
【0019】
本発明は、その特定の実施形態に関連して具体的に記載されているが、これは説明のためであって限定のためではなく、添付の特許請求の範囲は従来技術で可能な限り広義に解釈すべきであることを理解されたい。例えば、溝又は溝部がベルトにあって歯がプーリにあってもよい。さらに、溝部及び歯の前縁はいかなる形状であってもよく、駆動面と同じ角度で傾斜を付けられる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来技術のコンベヤの側面図である。
【図2】本発明によるコンベヤの一実施形態の一部の拡大立面図である。
【図3】図2のベルトの拡大部分である。
【図4】図2の駆動プーリの拡大部分である。
【図5】本発明によるコンベヤの第2の実施形態の一部の立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト(202、300)と、該無端ベルトを駆動方向(B、D)に駆動するように該ベルトと接触する少なくとも1つの駆動プーリ(210、302)と、前記無端ベルト及び前記駆動プーリのうちの一方の表面(204、213)にある溝部(212、304)並びに前記無端ベルト及び前記駆動プーリのうちの他方の表面にある歯(206、306)とを備える、低摩擦直接駆動コンベヤであって、
各歯及び各溝部は、前記プーリの表面からは前記駆動方向(B、D)に、前記ベルトの表面からは前記駆動方向(B、D)とは逆に、前記表面から鋭角(α)に延在する駆動面(214、216)を有し、
前記駆動プーリの表面から延在する前記駆動面は、前記ベルトの表面から延在する前記駆動面を掴んで該ベルトを前記駆動プーリに押し付け、該ベルトを前記駆動方向に移動させることを特徴とする低摩擦直接駆動コンベヤ。
【請求項2】
前記歯(206、306)は前記ベルト(202、300)にあり、前記溝部(212、304)は前記プーリ(210、302)にある請求項1に記載のコンベヤ。
【請求項3】
前記鋭角(α)は約1度〜5度の範囲内にある請求項1又は2に記載のコンベヤ。
【請求項4】
前記鋭角(α)は約2度である請求項3に記載のコンベヤ。
【請求項5】
前記無端ベルトは熱可塑性樹脂製である請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンベヤ。
【請求項6】
少なくとも2つの駆動プーリ(302)を備え、前記無端ベルト(300)は、各プーリによってスパン(303)にわたって駆動される請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンベヤ。
【請求項7】
各駆動プーリ(210、302)に隣接して溝部(212、304)からの歯(206、306)の退出点(226)に配置されて、前記歯が通過するときに前記溝部から前記歯を付勢する足部(222)を備えること特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−525933(P2009−525933A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553528(P2008−553528)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/061546
【国際公開番号】WO2007/092774
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(507244057)サーモドライヴ エルエルシー (7)
【Fターム(参考)】