説明

元素分析装置

【課題】試料の表面性状の影響を受けることなく試料に含有される元素含有量を精度良く定量することができる元素分析装置を提供する。
【解決手段】本発明による元素分析装置は、パルスレーザ光4を分析対象試料1の表面に照射してこの試料1を気化・励起させるプラズマ生成手段2と、生成したプラズマ7中の定量対象元素から放出する蛍光8を集光する蛍光集光レンズ9とを備えている。また、この蛍光集光レンズ9により集光された蛍光8の波長と強度を測定して元素含有量を定量する分光器11が設けられている。さらに、分析対象試料1の表面に、レーザ光4を透過するテープ23を置いて発光強度を高めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザ光を分析対象試料の表面に照射してこの試料を気化・励起させるプラズマ生成手段と、生成したプラズマ中の定量対象元素から放出する蛍光を集光する蛍光集光手段と、集光された蛍光の波長と強度を測定して元素含有量を定量する蛍光分光測定手段とを有する元素分析装置に係り、とりわけ、試料の表面性状の影響を受けることなく試料に含有される元素含有量を精度良く定量することができる元素分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多くの分野において、固体、粉体、液体、気体等の様々な状態の試料に対して、この試料に含有される元素を定量する元素分析が行われている。このうち、固体状あるいは粉体状の試料に含有される元素を定量する場合、汎用のICP発光分析装置が使用されることが多い。このICP発光分析装置を使用して元素分析を行う場合、まず、試料の前処理として試料が硝酸、過塩素酸等の酸溶液に溶解される。次に、この酸溶液がアルゴンプラズマ中に噴霧されてプラズマ化され、その後、プラズマから放出される原子やイオンにより発光された光の発光強度特性が測定されて、試料に含有される元素の種類およびその量が定量される。
【0003】
しかしながら、このICP発光分析装置は操作方法が複雑である。このことにより、ICP発光分析装置を取り扱うための専門的知識が必要となり、このICP発光分析装置を使用することができる作業者が限られるという問題がある。また、上述したように、ICP発光分析装置を使用する場合、硝酸、過塩素酸等の有害性の高い薬品が用いられるため、元素分析を行っている間、この酸溶液から有害性の高いガスが発生する。このことにより、発生した有害ガスを排気するドラフト排気装置を設置する等の安全性を確保するための対策が必要となる。
【0004】
そこでこれらの問題点を解決するために、レーザ光を用いて試料に含まれる元素の分析を行うレーザ誘起ブレイクダウン分光法(Laser-induced Breakdown Spectroscopy;LIBS法)が使用されている。この方法を用いて元素分析を行う場合、まず、試料表面にパルスレーザ光(LIB用レーザ光)を直接照射して、この試料を気化・励起させてプラズマを生成させる。次に、このプラズマに含まれる定量対象元素から放出される蛍光を集光して、集光された蛍光の波長と強度を測定し、その後、この測定結果に基づいて試料に含有される元素含有量の定量が行われる(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−310596号公報
【特許文献2】特開2004−205266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分析対象となる試料においては、表面粗さまたは色などの物理的な性状または化学的な性状が試料毎に異なる。この場合、試料がレーザ光を吸収することができるレーザ光の吸収量も試料毎に異なる。このことにより、同一の元素を同量含有する複数の試料に対して元素分析を行う場合、レーザ光が照射された試料の表面から生成されるプラズマによる蛍光の波長と強度は試料毎に異なる。このため、試料に含有される元素を精度良く定量することが困難であった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、試料の表面性状の影響を受けることなく試料に含有される元素含有量を精度良く定量することができる元素分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パルスレーザ光を分析対象試料の表面に照射してこの試料を気化・励起させるプラズマ生成手段と、生成したプラズマ中の定量対象元素から放出する蛍光を集光する蛍光集光手段と、集光された蛍光の波長と強度を測定して元素含有量を定量する蛍光分光測定手段とを有する元素分析装置において、分析対象試料の表面にレーザ光を透過するテープを置いて発光強度を高めたことを特徴とする元素分析装置である。
【0008】
本発明は、パルスレーザ光を分析対象試料の表面に照射してこの試料を気化・励起させるプラズマ生成手段と、生成したプラズマ中の定量対象元素から放出する蛍光を集光する蛍光集光手段と、集光された蛍光の波長と強度を測定して元素含有量を定量する蛍光分光測定手段とを有する元素分析装置において、分析対象試料の表面にレーザ光を透過する接着テープを貼り付けて発光強度を高めたことを特徴とする元素分析装置である。
【0009】
本発明は、前記接着テープのベース素材および接着剤は、炭素および水素で組成される材料とすることを特徴とする元素分析装置である。
【0010】
本発明は、前記接着テープの一部に濃度較正を可能にするため予め所定濃度の元素を含有させたことを特徴とする元素分析装置である。
【0011】
本発明は、前記所定濃度の元素は、カドミウム、クロム、鉛および水銀のうちの少なくとも一つの元素とし、これらの元素の濃度を法令で定める上限の濃度としたことを特徴とする元素分析装置である。
【0012】
本発明は、分析対象をアスベストとした元素分析装置であって、前記接着テープの一部にアスベストを含有させ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよび鉄についての蛍光スペクトル強度比を分析対象試料とアスベストとのそれぞれについて求めることを特徴とする元素分析装置である。
【0013】
本発明は、分析対象試料は粉体試料からなり、この粉体試料を接着テープで固定して測定することを特徴とする元素分析装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、分析対象試料の表面に、レーザ光を透過するテープが置かれる。このことにより、試料表面に照射されるレーザ光を吸収する吸収率が、試料の表面性状により相違することを抑制することができる。また、プラズマから放出される蛍光の波長と強度は、この試料のレーザ光の吸収率に依存する。このため、試料の表面性状による影響を受けることなく、試料表面に照射されたレーザ光を吸収して試料を気化・励起し、プラズマを生成させ、このプラズマに含まれる定量対象元素から放出される蛍光の波長と強度を測定する精度を向上させることができる。また、試料表面にテープが置かれることにより、レーザ光が照射されて生成されるプラズマは、試料表面とテープとの間に閉じ込められる。このことにより、プラズマが飛散することが抑制され、このプラズマに含まれる定量対象元素から放出される蛍光の発光強度を高くすることができる。この結果、試料に含有される元素含有量を精度良く定量することができる。
【0015】
また本発明によれば、分析対象試料の表面にレーザ光を透過する接着テープが貼り付けられる。このことにより、分析対象試料の表面に、接着テープを容易かつ確実に固定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図3は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置を示す図である。このうち図1は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置の全体構成を示す図であり、図2(a)は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置の接着テープの構成を示す図であり、図2(b)は、分析対象試料の表面に置かれるテープの構成を示す図であり、図3は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0017】
まず、図1により元素分析装置17の全体構成について説明する。図1に示すように元素分析装置17は、パルスレーザ光4を分析対象試料1の表面に照射してこの試料1を気化・励起させるプラズマ生成手段2を備えている。このプラズマ生成手段2は、試料1表面に照射されるレーザ光4を発振するレーザ発振器3と、このレーザ発振器3から発振されたレーザ光4を試料1の方向に反射させる反射ミラー5と、反射ミラー5により反射されたレーザ光4を集光し、試料1表面に照射して試料を気化・励起させてプラズマ7を生成させるレーザ集光レンズ(レーザ集光手段)6とを有している。また、反射ミラー5の下方に、分析対象試料1を載置する試料台19が設けられている。さらに、レーザ発振器3に、レーザ光4の電源を供給するレーザ電源3aが接続されている。
【0018】
また、試料1の近傍に、試料1から生成されたプラズマ7中の定量元素から放出される蛍光8を集光する蛍光集光レンズ(蛍光集光手段)9が設けられ、この蛍光集光レンズ9の後方に、蛍光集光レンズ9により集光された蛍光8を受光する受光部16が設けられている。また、この受光部16に、光ファイバ10を介して、蛍光集光レンズ9により集光された蛍光8の波長と強度を測定して元素含有量を定量する分光器11(蛍光分光測定手段)が接続されている。
【0019】
また、この分光器11に、計測制御用コンピュータ15が接続されている。この計測制御用コンピュータ15に、プラズマ生成手段2のレーザ発振器3にレーザ光4を発振するタイミングを指示するとともに、分光器11に蛍光8の波長と強度を測定するタイミングを指示するタイミングコントローラ12が接続されている。このタイミングコントローラ12は、計測制御用コンピュータ15からのタイミングコントローラ制御信号14に基づいて、レーザ発振器3に向けてレーザ光4を発振するタイミングを指示するレーザ発振タイミング信号13を送信するとともに、このレーザ発振タイミング信号13に対して所定時間を経過した後に、分光器11に向けて蛍光8の波長と強度を測定するタイミングを指示するゲート信号18を送信する。このようにして、レーザ光4が照射されて所定時間を経過した後に、分光器11により蛍光8の波長と強度が測定される。
【0020】
次に本発明による元素分析装置17の接着テープ20について図2(a)を用いて説明する。ここで元素分析装置17の接着テープ20は、分析対象試料1の表面に設けられ、レーザ光4を透過し、蛍光8の発光強度を高めるためのものである。
【0021】
図2(a)に示すように、元素分析装置17の接着テープ20は、ベース21と、ベース21の一方の面に設けられた接着層22とを有し、分析対象試料1の表面に貼り付けられている。このうち、ベース21を形成するベース素材21aは、炭素および水素のみから組成される材料にからなり、接着層22を形成する接着材22aは、炭素と水素のみから組成される材料からなっている。このことにより、分析対象試料1に含有される炭素および水素以外の元素含有量の定量を行うことができる。このベース21に用いるベース素材21aとしては、例えば炭素と水素のみから組成されるポリエチレンまたはポリプロピレンなどを用いることが望ましい。また、ベース21および接着層22は、レーザ光4を透過させるとともに、プラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8を透過させるために、いずれも透明あるいは半透明であることが好ましい。
【0022】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本発明による元素分析装置を用いた元素分析方法について述べる。
【0023】
まず、図2(a)および図3に示すように、ベース21とベース21の一方の面に設けられた接着層22とを有する接着テープ20を準備する。
【0024】
次に、図3に示すように、固体状の分析対象試料1に接着テープ20の接着層22が試料1側を向くように、試料1上に接着テープ20が貼り付けられて、接着テープ20が貼り付けられた試料1が試料台19上に載置される。
【0025】
次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて、接着テープ20を介して試料1表面に照射され、この試料1が気化・励起されてプラズマ7が生成される。この場合、まず、図1に示すように、計測制御用コンピュータ15によりタイミングコントローラ制御信号14がタイミングコントローラ12に発信される。次に、タイミングコントローラ12により、レーザ発振器3に向けてレーザ光4の発振を指示するレーザ発振タイミング信号13が送信される。次に、レーザ発振器3により、レーザ電源3aから電源を供給されながら、レーザ発振タイミング信号13に基づいて所定のパルス幅のパルスレーザ光4(以下、レーザ光と記す)が発振される。
【0026】
次に、レーザ発振器3から発振されたレーザ光4が反射ミラー5により反射され、レーザ集光レンズ6により集光される。次に、集光されたレーザ光4が、接着テープ20を介して試料台19上に載置された試料1表面に照射され、試料1を気化・励起させて試料1からプラズマ7が生成される。
【0027】
ここで、例えば、レーザ発振器3がYAGレーザからなり、このレーザ発振器3のパルスエネルギが10mJ程度で、かつパルス幅が5nsである場合、このレーザ発振器3から発振されるレーザ光4のエネルギはパルス的に2MWとなる。このエネルギを有するレーザ光4が集光されて試料1表面に照射されると、いわゆるレーザブレイクダウンが発生し、試料1のうちレーザ光4が照射された部分が気化・励起されてプラズマ7状態になる。
【0028】
ここで、本実施の形態においては、レーザ発振器3にYAGレーザを適用することが好ましいが、いわゆるレーザブレイクダウンが可能なパルスレーザを発振することができるレーザ発振器3であればYAGレーザに限られることはなく、レーザ発振器3にエキシマレーザまたはCOレーザなどのレーザを適用することもできる。
【0029】
次に、プラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される。この場合、まず、プラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光集光レンズ9の後方に設けられた受光部16により受光される。次に、受光部16により受光された蛍光8が、光ファイバ10を介して分光器11に入射されて、スペクトル分離される。
【0030】
次に、タイミングコントローラ12により、レーザ発振器3に向けて送信されたレーザ発振タイミング信号13に対して所定時間を経過した後に、分光器11に向けて蛍光8の波長と強度の測定を指示するゲート信号18が送信される。その後、分光器11により、このゲート信号18に基づいて、レーザ光4が照射されて所定時間を経過した後に放出される蛍光8の波長と強度が測定され、試料1に含有された元素含有量が定量される。
【0031】
ここで、試料1のうちレーザ光4が照射された部分から生成されたプラズマ7は、レーザ光4の照射が止まった後数μ秒〜数十μ秒の間、プラズマ7状態を構成する原子が励起状態に維持されている。その後、この原子が下準位に遷移し、原子数に比例した強度の蛍光8が発光される。すなわち、ゲート信号18は、この原子が下準位に遷移するタイミングに合わせて送信され、分光器11により蛍光8の波長と強度が測定される。
【0032】
このように本実施の形態によれば、試料台19上に載置された試料1の表面に、ベース21とベース21の試料1側の面に設けられた接着層22とを有し、レーザ光4を透過する接着テープ20が貼り付けられる。このことにより、試料1表面に照射されるレーザ光4を試料1に吸収する吸収率が、試料1の表面性状により相違することを抑制することができる。また、プラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8の波長と強度は、この試料1のレーザ光4の吸収率に依存する。このため、試料1の表面性状による影響を受けることなく、試料1表面に照射されたレーザ光4を吸収して試料を気化・励起させてプラズマ7を生成させ、このプラズマ7中の定量対象元素から放出される蛍光8の波長と強度を測定する精度を向上させることができる。この結果、試料1に含有される定量対象元素の元素含有量を精度良く定量することができる。
【0033】
また、本実施の形態によれば、試料1表面に接着テープ20が貼り付けられることにより、試料1のうちレーザ光4が照射された部分から生成されるプラズマ7は、試料1表面と接着テープ20との間に閉じこめられる。このため、いわゆるレーザアブレーションによりプラズマ7が飛散することが抑制され、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8の発光強度を高くすることができる。このことにより、試料1に含まれる定量対象元素を精度良く定量することができる。また、上述したように、プラズマ7が飛散することが抑制されるため、試料1が載置された試料台19およびこの試料台19周囲が汚染されることを防止することができる。さらに、プラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8の発光強度が高くなるため、試料1に照射するレーザ光4のエネルギを低くすることができる。
【0034】
さらに本実施の形態によれば、分析対象試料1の表面に、レーザ光4を透過する接着テープ20が貼り付けられる。このことにより、分析対象試料1の表面に、接着テープ20を容易かつ確実に固定することができる。
【0035】
なお、本実施の形態においては、上述したように、分析対象試料1の表面に、レーザ光4を透過する接着テープ20を貼り付けている。しかしながらこのことに限られることはなく、図2(b)に示すように、分析対象試料1の表面に、接着層22を有することなくベース21のみから構成されるテープ23を置いても良い。この場合においても、ベース21と接着層22とを有する接着テープ20を貼り付けた場合と同様に、分析対象試料1から放出される蛍光の発光強度を高めることができる。
【0036】
また、本実施の形態においては、接着テープ20のベース21のベース素材21aおよび接着層22の接着材22aは、いずれも炭素と水素のみから組成される材料により形成されている場合について述べているが、このことに限られることはなく、ベース素材21aおよび接着材22aとして、分析対象となる元素を含有することがない材料により形成されているものであればよく、例えば、セロハンテープを好適に用いることもできる。
【0037】
第2の実施の形態
次に、図5および図6により、本発明の第2の実施の形態における元素分析装置について説明する。ここで図5(a)は、本発明の第2の実施の形態における元素分析装置において用いられる無含有テープを示す図であり、図5(b)は、第1元素含有テープを示す図であり、図5(c)は、第2元素含有テープを示す図であり、図6は、本発明の第2の実施の形態おける元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0038】
図5および図6に示す第2の実施の形態において、接着テープの一部に、濃度較正を可能にするため予め所定濃度の元素が含有される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5および図6において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0039】
本実施の形態においては、上述したように、接着テープの一部に濃度較正を可能にするため予め所定濃度の元素が含有されている。すなわち、本実施の形態における接着テープ29は、定量対象元素を含有することがない無含有テープ30と、各々所定濃度の定量対象元素を含有する第1元素含有テープ33および第2元素含有テープ36とを有している。
【0040】
具体的には、無含有テープ30は、図5(a)に示すように、無含有用ベース31と、無含有用ベース31の試料1側の面に設けられ、定量対象元素を含有することがない無含有接着層32とを有している。また、図5(b)に示す第1元素含有テープ33は、第1元素含有用ベース34と、第1元素含有用ベース34の試料1側の面に設けられ、標準濃度の定量対象元素を含有する第1元素含有接着層35とを有している。さらに、図5(c)に示す第2元素含有テープ36は、第2元素含有用ベース37と、第2元素含有用ベース37の試料1側の面に設けられ、第1元素含有接着層35に含有される定量対象元素の標準濃度よりも高い濃度の定量対象元素を含有する第2元素含有接着層38とを有している。
【0041】
ここで、上述したように、無含有用ベース31、第1元素含有用ベース34、および第2元素含有用ベース37は、定量対象元素を含有していない。このことにより、試料1に含有される定量対象元素を精度良く分析することができる。
【0042】
本実施の形態において元素分析を行う場合、図6に示すように、まず、無含有テープ30と第1元素含有テープ33と第2元素含有テープ36とを準備する。
【0043】
次に、試料1に、無含有テープ30の無含有接着層32、第1元素含有テープ33の第1元素含有接着層35、および第2元素含有テープ36の第2元素含有接着層38が試料1側を向くように、無含有テープ30、第1元素含有テープ33、および第2元素含有テープ36が試料1上に各々貼り付けられる。この場合、図6に示すように、試料1表面上に第1元素含有テープ33が貼り付けられ、この第1元素含有テープ33に隣接して無含有テープ30が貼り付けられ、この無含有テープ30に隣接して第2元素含有テープ36が貼り付けられ、本実施の形態における接着テープ29が構成されている。
【0044】
次に、第1元素含有テープ33、無含有テープ30、および第2元素含有テープ36が貼り付けられた試料1が試料台19(図1参照)上に載置される。
【0045】
次に、レーザ光4が第1元素含有テープ33の第1元素含有接着層35に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて第1元素含有接着層35に照射され、第1元素含有接着層35が気化・励起されて、プラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第1測定工程)。
【0046】
次に、レーザ光4が第2元素含有テープ36の第2元素含有接着層38に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて第2元素含有接着層38に照射され、第2元素含有接着層38が気化・励起されて、プラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第2測定工程)。
【0047】
次に、レーザ光4が無含有テープ30の無含有接着層32に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて無含有テープ30を介して試料1表面に照射され、試料1を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第3測定工程)。
【0048】
その後、図6に示すように、分光器11により、第1測定工程および第2測定工程において測定された第1元素含有接着層35および第2元素含有接着層38の各波長および強度と、第1元素含有接着層35および第2元素含有接着層38に含有された定量対象元素の各濃度との関係に基づいて、第3測定工程において測定された試料1の波長および強度を用いて、試料1に含有される元素含有量が定量される。
【0049】
すなわち、この試料1に含有される定量対象元素の濃度の求め方は以下のようになる。図6に示すように、標準濃度C1の定量対象元素が含有された第1元素含有接着層35の波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP1とする。また、濃度C3の定量対象元素が含有された第2元素含有接着層38の波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP3とする。この場合、測定された試料1の波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP2とすると、試料1に含有される定量対象元素の濃度Xは、
X=(C3−C1)/(P3−P1)×(P2−P1)+C1
により求められる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、標準濃度で定量対象元素が含有された第1元素含有テープ33の第1元素含有接着層35、および第1元素含有接着層35に含有された定量対象元素の標準濃度よりも高い濃度の定量対象元素が含有された第2元素含有テープ36の第2元素含有接着層38の波長と強度が各々測定され、これら各波長および強度と第1元素含有接着層35および第2元素含有接着層38に含有された定量対象元素の各濃度との関係に基づいて、無含有テープ30の無含有接着層31を介して測定された試料1の波長と強度を用いて、試料1に含有される定量対象元素の濃度が求められる。この場合、第1元素含有接着層35および第2元素含有接着層38の波長と強度を基準として、試料1に含有される定量対象元素の濃度が相対的に求められる。このことにより、元素分析を行う装置により蛍光の強度特性が影響を受けることを防止して、試料1に含有される定量対象元素の濃度をより一層精度良く求めることができる。
【0051】
第3の実施の形態
次に、図7および図8により、本発明の第3の実施の形態における元素分析装置について説明する。ここで図7(a)は、本発明の第3の実施の形態における元素分析装置において用いられる無含有テープを示す図であり、図7(b)は、Cd含有テープを示す図であり、図7(c)は、Cr含有テープを示す図であり、図7(d)は、Pb含有テープを示す図であり、図7(e)は、Hg含有テープを示す図であり、図8は、本発明の第3の実施の形態おける元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0052】
図7および図8に示す第3の実施の形態において、接着テープの一部に、濃度較正を可能にするため予め所定濃度のカドミウム、クロム、鉛、および水銀が含有される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図7および図8において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施の形態においては、上述したように、接着テープの一部に濃度較正を可能にするため予め所定濃度のカドミウム、クロム、鉛、および水銀が含有され、定量対象元素をカドミウム、クロム、鉛、および水銀としている。すなわち、本実施の形態における接着テープ39は、定量対象元素を含有することがない無含有テープ40と、所定濃度のカドミウムを含有するCd含有テープ43と、所定濃度のクロムを含有するCr含有テープ46と、所定濃度の鉛を含有するPb含有テープ49と、所定濃度の水銀を含有するHg含有テープ52とを有している。
【0054】
具体的には、無含有テープ40は、図7(a)に示すように、無含有用ベース41と、無含有用ベース41の試料1側の面に設けられ、カドミウム、クロム、鉛、および水銀を含有することがない無含有接着層42とを有している。また、図7(b)に示すCd含有テープ43は、Cd用ベース44と、Cd用ベース44の試料1側の面に設けられ、標準濃度でカドミウムを含有するCd含有接着層45とを有し、図7(c)に示すCr含有テープ46は、Cr用ベース47と、Cr用ベース47の試料1側の面に設けられ、標準濃度でクロムを含有するCr含有接着層48とを有している。また、図7(d)に示すPb含有テープ49は、Pb用ベース50と、Pb用ベース50の試料1側の面に設けられ、標準濃度で鉛を含有するPb含有接着層51とを有し、図7(e)に示すHg含有テープ52は、Hg用ベース53と、Hg用ベース53の試料1側の面に設けられ、標準濃度で水銀を含有するHg含有接着層54とを有している。
【0055】
ここで、カドミウム、クロム、鉛、水銀は、RoHS指令(Restriction on Hazardous Substances:特定有害物質使用禁止指令)において指定された物質であって、表1に示すように各物質の使用制限として上限濃度(閾値)が指定されている。本実施の形態においては、Cd含有接着層45、Cr含有接着層48、Pb含有接着層51、およびHg含有接着層54に含有されるカドミウム、クロム、鉛、水銀の各標準濃度は、この閾値に基づいている。
【表1】

【0056】
本実施の形態において元素分析を行う場合、図8に示すように、まず、無含有テープ40とCd含有テープ43とCr含有テープ46とPb含有テープ49とHg含有テープ52とを準備する。
【0057】
次に、無含有テープ40の無含有接着層42、Cd含有テープ43のCd含有接着層45、Cr含有テープ46のCr含有接着層48、Pb含有テープ49のPb含有接着層51、およびHg含有テープ52のHg含有接着層54が試料1側を向くように、無含有テープ40、Cd含有テープ43、Cr含有テープ46、Pb含有テープ49、およびHg含有テープ52が試料1上に貼り付けられる。この場合、図8に示すように、試料1上に無含有接着層40が貼り付けられ、この無含有接着層40上に、Cd含有テープ43、Cr含有テープ46、Pb含有テープ49、およびHg含有テープ52はマトリックス状に貼り付けられ、本実施の形態における接着テープ39が構成されている。
【0058】
次に、Cd含有テープ43、Cr含有テープ46、Pb含有テープ49、およびHg含有テープ52が各々貼り付けられた試料1を試料台19(図1参照)上に載置する。
【0059】
次に、レーザ光4がCd含有テープ43のCd含有接着層45に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されてCd含有接着層45に照射され、Cd含有接着層45を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれるカドミウムから放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第1測定工程)。
【0060】
次に、レーザ光4がCr含有テープ46のCr含有接着層48に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されてCr含有接着層48に照射され、Cr含有接着層48を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれるクロムから放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第2測定工程)。
【0061】
次に、レーザ光4がPb含有テープ49のPb含有接着層51に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されてPb含有接着層51に照射され、Pb含有接着層51を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる鉛から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第3測定工程)。
【0062】
次に、レーザ光4がHg含有テープ52のHg含有接着層54に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されてHg含有接着層54に照射され、Hg含有接着層54を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる水銀から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第4測定工程)。
【0063】
次に、レーザ光4が無含有テープ40の無含有接着層42に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて無含有テープ40を介して試料1に照射され、試料1を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第5測定工程)。
【0064】
その後、図8に示すように、分光器11により、第1測定工程、第2測定工程、第3測定工程、および第4測定工程において測定されたCd含有接着層45、Cr含有接着層48、Pb含有接着層51、およびHg含有接着層54の各波長および強度と、Cd含有接着層45、Cr含有接着層48、Pb含有接着層51、およびHg含有接着層54に含有されたカドミウム、クロム、鉛、水銀の各標準濃度との関係に基づいて、第5測定工程において測定された試料1の波長および強度を用いて試料1に含有されるカドミウム、クロム、鉛、水銀の各濃度が求められる。
【0065】
すなわち、この試料1に含有されるカドミウム、クロム、鉛、水銀の各濃度の求め方は以下のようになる。まず、試料1に含まれるカドミウムの濃度の求め方について述べる。図8に示すように、標準濃度C1のカドミウムが含有されたCd含有接着層45を介して測定された試料1の波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP1とする。この場合、無含有接着層42を介して測定された試料1の波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP2とすると、試料1に含有されるカドミウムの濃度Xは、
X=C1/P1×P2
により求められる。
【0066】
その後、このカドミウムの濃度を求める方法と同様にして、クロム、鉛、水銀の各濃度が順次求められる。
【0067】
このように本実施の形態によれば、標準濃度のカドミウムが含有されたCd含有テープ43のCd含有接着層45、標準濃度のクロムが含有されたCr含有テープ46のCr含有接着層48、標準濃度の鉛が含有されたPb含有テープ49のPb含有接着層51、および標準濃度の水銀が含有されたHg含有テープ52のHg含有接着層54の各波長と強度が測定され、各波長および強度とカドミウム、クロム、鉛、水銀の各濃度との関係に基づいて、無含有テープ40の無含有接着層42を介して測定された試料1の波長および強度を用いて、試料1に含有されるカドミウム、クロム、鉛、水銀の濃度が相対的に求められる。このため、試料1に含有されるカドミウム、クロム、鉛、水銀の濃度をより一層精度良く求めることができる。また、このようにして、RoHS指令において指定された有害物質の閾値との比較を容易に行うことができる。
【0068】
なお、本実施の形態においては、接着テープ39の一部に、カドミウム、クロム、鉛、および水銀が含有されている場合について述べたが、このことに限られることはなく、接着テープ39の一部に、カドミウム、クロム、鉛、および水銀のうちの少なくとも一つの元素を含有させてもよい。この場合、この接着テープ39の一部に含有された元素の濃度を精度良く求めることができる。
【0069】
第4の実施の形態
次に、図9および図10により、本発明の第4の実施の形態における元素分析装置について説明する。ここで図9(a)は、本発明の第4の実施の形態における元素分析装置において用いられる無含有テープを示す図であり、図9(b)は、アスベスト含有テープを示す図であり、図10は、本発明の第4の実施の形態おける元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0070】
図9および図10に示す第4の実施の形態において、接着テープの一部に、予め所定濃度のアスベストが含有されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図9および図10において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0071】
本実施の形態においては、上述したように、接着テープの一部に予め所定濃度のアスベストが含有され、検出対象をアスベストとしている。すなわち、本実施の形態における接着テープ59は、アスベストを含有することがない無含有テープ60と、所定濃度のアスベストを含有するアスベスト含有テープ63とを有している。
【0072】
具体的には、本実施の形態における無含有テープ60は、図9(a)に示すように、無含有用ベース61と、無含有用ベース61の試料1側の面に設けられ、アスベストを含有することがない無含有接着層62とを有している。また、図9(b)に示すアスベスト含有テープ63は、アスベスト用ベース64と、アスベスト用ベース64の一方の面に設けられ、標準濃度でアスベストを含有するアスベスト含有接着層65とを有している。
【0073】
ここで、アスベストは、各元素の組成比はほぼ一定となる複数の元素(アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、および鉄)から構成されている鉱物である。このことにより、特定の一の元素の含有濃度を求めるだけではアスベストの分析をすることは困難である。このため、試料1に含有されるアスベストを分析する場合、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、および鉄についての蛍光スペクトル強度比を分析対象試料と標準濃度のアスベストとのそれぞれについて求めてアスベストの存在の有無を判断する。また、アスベストを構成する各元素の全体の発光強度によりアスベストの含有量を求める。
【0074】
本実施の形態においてアスベストの分析を行う場合、図10に示すように、まず、無含有テープ60とアスベスト含有テープ63とを準備する。
【0075】
次に、無含有テープ60の無含有接着層62、およびアスベスト含有テープ63のアスベスト含有接着層65が試料1側を向くように、無含有テープ60、およびアスベスト含有テープ63が試料1上に各々貼り付けられる。この場合、図10に示すように、試料1表面上に無含有テープ60が貼り付けられ、この無含有テープ60に隣接してアスベスト含有テープ63が貼り付けられ、本実施の形態における接着テープ59が構成されている。
【0076】
次に、無含有テープ60、およびアスベスト含有テープ63が貼り付けられた試料1が試料台19(図1参照)上に載置される。
【0077】
次に、レーザ光4がアスベスト含有テープ63のアスベスト含有接着層65に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されてアスベスト含有接着層65に照射され、アスベスト含有接着層65を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれるアスベストを構成する各元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第1測定工程)。
【0078】
次に、図10に示すように、分光器11により、第1測定工程において測定されたアスベスト含有接着層65の波長と強度を用いて、アスベストを構成する各元素のピーク波長における各蛍光スペクトル強度比が求められるとともに、アスベストを構成する各元素の全体の発光強度が求められる(第1算出工程)。
【0079】
次に、レーザ光4が無含有テープ60の無含有接着層62に照射されるように試料1の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて無含有テープ60を介して試料1に照射され、試料1を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第2測定工程)。
【0080】
次に、図10に示すように、分光器11により、第2測定工程において無含有接着層60を介して測定された試料1の波長と強度を用いて、アスベストを構成する各元素のピーク波長における蛍光スペクトル強度比が求められるとともに、アスベストを構成する各元素の全体の発光強度が求められる(第2算出工程)。
【0081】
その後、第1算出工程において求められた各蛍光スペクトル強度比に基づいて、第2算出工程において求められた各蛍光スペクトル強度比を用いて、試料1に含まれるアスベストの存在の有無が判断される。また、第1算出工程において求められたアスベストを構成する各元素の全体の発光強度に基づいて、第2算出工程において求められた各元素の全体の発光強度を用いて、試料1に含有されるアスベストの含有量が求められる。
【0082】
このように本実施の形態によれば、標準濃度のアスベストが含有されたアスベスト含有接着層65の波長と強度により求められるアスベストを構成するアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、および鉄のピーク波長における蛍光スペクトル強度比に基づいて、試料1の波長と強度により求められる各元素のピーク波長における各蛍光スペクトル強度比を用いて、試料1に含まれるアスベストの存在の有無を判断することができる。また、アスベスト含有接着層65の波長と強度により求められるアスベストを構成する各元素の全体の発光強度に基づいて、試料1の波長と強度により求められる各元素の全体の発光強度を用いて、試料1に含有されるアスベストの含有量を精度良く求めることができる。
【0083】
また本実施の形態によれば、試料1表面に無含有テープ60およびアスベスト含有テープ63が貼り付けられることにより、レーザ光4が照射されて生成されるプラズマ7は、試料1表面と無含有テープ60またはアスベスト含有テープ63との間に閉じこめられる。このため、レーザアブレーションによりプラズマ7が飛散して、アスベストが飛散することを抑制することができる。
【0084】
第5の実施の形態
次に、図11および図12により、本発明の第5の実施の形態における元素分析装置について説明する。ここで図11は、本発明の第5の実施の形態における元素分析装置において用いられる接着テープを示す図であり、図12は、本発明の第5の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0085】
図11および図12に示す第5の実施の形態において、ベースと、定量対象元素を含有することがない無含有接着層と、濃度較正を可能にするため予め所定濃度の定量対象元素が含有される元素含有接着層とを有する接着テープを用いている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図11および図12において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0086】
本実施の形態においては、接着テープの一部に濃度較正を可能にするため予め所定濃度の定量対象元素が含有されている。すなわち、本実施の形態における接着テープ70は、図11に示すように、ベース71と、ベース71の試料1側の面に設けられ、定量対象元素を含有することがない無含有接着層72と、無含有接着層72に隣接して設けられ、標準濃度で定量対象元素を含有する元素含有接着層73とを有している。
【0087】
ここで、ベース71は、定量対象元素を含有することがないことが望ましい。このことにより、試料1に含有される定量対象元素を精度良く分析することができる。
【0088】
本実施の形態において元素分析を行う場合、図12に示すように、まず、ベース71と、無含有接着層72と元素含有接着層73とを有する接着テープ70を準備する。
【0089】
次に、接着テープ70の元素含有接着層73に、例えばマスキングを施して元素含有接着層73を粉体試料73上に貼り付けることなく、無含有接着層72が、物体74上に載置された粉体試料73上に貼り付けられる。その後、無含有接着層72が粉体試料73から剥離されて、無含有接着層72に粉体試料73が付着される。このようにして、物体74上に載置された粉体試料73を、無含有接着層72に採取することができる。
【0090】
次に、試料台19(図1参照)に、無含有接着層72に粉体試料73が付着された接着テープ70が貼り付けられる。
【0091】
次に、レーザ光4が接着テープ70の元素含有接着層73に照射されるように試料台19の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて元素含有接着層73に照射され、元素含有接着層73を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第1測定工程)。
【0092】
次に、レーザ光4が接着テープ70の無含有接着層72に照射されるように試料台19の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて無含有接着層72を介して粉体試料73に照射され、粉体試料73を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第2測定工程)。
【0093】
その後、図12に示すように、分光器11により、第1測定工程において測定された元素含有接着層73の波長と強度と、定量対象元素の濃度との関係に基づいて、第2測定工程において測定された粉体試料73の波長と強度を用いて粉体試料73に含有される定量対象元素の濃度が求められる。
【0094】
すなわち、この粉体試料73に含有される定量対象元素の濃度の求め方は以下のようになる。図12に示すように、標準濃度C1の定量対象元素が含有された元素含有接着層73から測定された波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP1とする。この場合、無含有接着層72を介して測定された試料1の波長と強度との関係のうちピーク波長における発光強度をP2とすると、粉体試料73に含有される定量対象元素の濃度Xは、
X=C1/P1×P2
により求められる。
【0095】
このように本実施の形態によれば、標準濃度の定量対象元素が含有された接着テープ70の元素含有接着層73の波長と強度が測定され、この波長および強度とこの元素含有接着層73に含有された定量対象元素の濃度との関係に基づいて、粉体試料73の波長および強度を用いて、粉体試料73に含有される定量対象元素の濃度を相対的に求めることができる。このため、試料に含有される定量対象元素の濃度をより一層精度良く求めることができる。
【0096】
また、本実施の形態によれば、粉体試料73が付着されている物体74から粉体試料73を接着テープ70の無含有接着層72に付着させて、この接着テープ70が試料台19に貼り付けられる。このことにより、粉体試料73が付着されている物体74から容易に粉体試料73を採取して、この採取された粉体試料73に含有される元素含有量の定量を容易に行うことができる。
【0097】
第6の実施の形態
次に、図13および図14により、本発明の第6の実施の形態における元素分析装置について説明する。ここで図13は、本発明の第6の実施の形態における元素分析装置において用いられる接着テープを示す図であり、図14は、本発明の第6の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0098】
図13および図14に示す第6の実施の形態において、ベースと、アスベストを含有することがない無含有接着層と予め所定濃度のアスベストが含有されるアスベスト含有接着層とを有する接着テープを用いている点が異なるのみであり、他の構成は、図11および図12に示す第5の実施の形態と略同一である。なお、図13および図14において、図11および図12に示す第5の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0099】
本実施の形態においては、接着テープの一部に所定濃度のアスベストが含有され、検出対象をアスベストとしている。すなわち、本実施の形態における接着テープ80は、図13に示すように、ベース81と、ベース81の試料1側の面に設けられ、アスベストを含有することがない無含有接着層82と、無含有接着層82に隣接して設けられ、標準濃度でアスベストが含有されるアスベスト含有接着層83とを有している。
【0100】
ここで、アスベストは、各元素の組成比はほぼ一定となる複数の元素(アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、および鉄)から構成されている鉱物である。このことにより、特定の一の元素の含有濃度を求めるだけではアスベストの分析をすることは困難である。このため、試料1に含有されるアスベストを分析する場合、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、および鉄についての蛍光スペクトル強度比を分析対象試料と標準濃度のアスベストとのそれぞれについて求めてアスベストの存在の有無を判断する。また、アスベストを構成する各元素の全体の発光強度によりアスベストの含有量を求める。
【0101】
本実施の形態において元素分析を行う場合、図14に示すように、まず、ベース81と、無含有接着層82とアスベスト含有接着層83とを有する接着テープ80を準備する。
【0102】
次に、接着テープ80のアスベスト含有接着層83に、例えばマスキングを施してアスベスト含有接着層83を粉体試料73上に貼り付けることなく、無含有接着層82が物体74上に載置された粉体試料73上に貼り付けられる。その後、無含有接着層82が粉体試料73から剥離されて、無含有接着層82に粉体試料73が付着される。このようにして、物体74上に載置された粉体試料73を、無含有接着層82に採取することができる。
【0103】
次に、試料台19(図1参照)に、無含有接着層82に粉体試料73が付着された接着テープ80が貼り付けられる。
【0104】
次に、レーザ光4が接着テープ80のアスベスト含有接着層83に照射されるように試料台19の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されてアスベスト含有接着層83に照射され、アスベスト含有接着層83を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれるアスベストを構成する各元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて、蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第1測定工程)。
【0105】
次に、図14に示すように、分光器11により、第1測定工程において測定されたアスベスト含有接着層83の波長と強度を用いて、アスベストを構成する各元素のピーク波長における各蛍光スペクトル強度比が求められるとともに、アスベストを構成する各元素の全体の発光強度が求められる(第1算出工程)。
【0106】
次に、レーザ光4が接着テープ80の無含有接着層82に照射されるように試料台19の位置を調整する。次に、レーザ発振器3により発振されたレーザ光4がレーザ集光レンズ6により集光されて無含有接着層82を介して粉体試料73に照射され、粉体試料73を気化・励起させてプラズマ7が生成される。次に、このプラズマ7に含まれる定量対象元素から放出される蛍光8が蛍光集光レンズ9により集光されて蛍光8の波長と強度が分光器11により測定される(第2測定工程)。
【0107】
次に、図14に示すように、分光器11により、第2測定工程において測定された粉体試料73の波長と強度を用いて、アスベストを構成する各元素のピーク波長における蛍光スペクトル強度比が求められるとともに、アスベストを構成する各元素の全体の発光強度が求められる(第2算出工程)。
【0108】
その後、第1算出工程において求められた各蛍光スペクトル強度比に基づいて、第2算出工程において求められた各蛍光スペクトル強度比を用いて、粉体試料73に含まれるアスベストの存在の有無が判断される。また、第1算出工程において求められたアスベストを構成する各元素の全体の発光強度に基づいて、第2算出工程において求められた各元素の全体の発光強度を用いて、粉体試料73に含有されるアスベストの含有量が求められる。
【0109】
このように本実施の形態によれば、標準濃度のアスベストが含有されたアスベスト含有接着層82の波長と強度により求められるアスベストを構成するアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、および鉄のピーク波長における蛍光スペクトル強度比に基づいて、粉体試料73の波長と強度により求められる各元素のピーク波長における各蛍光スペクトル比を用いて、粉体試料73に含まれるアスベストの存在の有無を判断することができる。また、アスベスト含有接着層82の波長と強度により求められるアスベストを構成する各元素の全体の発光強度に基づいて、粉体試料73の波長と強度により求められる各元素の全体の発光強度を用いて、粉体試料73に含有されるアスベストの含有量を精度良く求めることができる。
【0110】
また本実施の形態によれば、粉体試料73表面に接着テープ80が貼り付けられることにより、レーザ光4が照射されて生成されるプラズマ7は、試料1表面と接着テープ80との間に閉じこめられる。このため、レーザアブレーションによりプラズマ7が飛散して、アスベストが飛散することを抑制することができる。
【0111】
さらに本実施の形態によれば、粉体試料73が付着されている物体74から粉体試料73を接着テープ80の無含有接着層82に付着させて、この接着テープ80が試料台19に貼り付けられる。このことにより、粉体試料73が付着されている物体74から容易に粉体試料73を採取して、この採取された粉体試料73に含有されるアスベストの定量を容易に行うことができる。
【0112】
第7の実施の形態
次に、図15により、本発明の第7の実施の形態における元素分析装置について説明する。ここで図15は、本発明の第7の実施の形態における元素分析方装置を用いた元素分析方法を示す図である。
【0113】
図15に示す第7の実施の形態において、粉体試料を接着テープで固定して測定する点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図15において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0114】
本実施の形態においては、分析対象試料は粉体試料からなり、この粉体試料が接着テープで固定されて、粉体試料から放出される蛍光の波長と強度が測定される。
【0115】
本実施の形態における接着テープ20(図2(a)参照)のベース21および接着層22は、図15に示すように、試料台19上に載置された粉体試料90の面積よりも大きい面積を有している。このことにより、例えば粉体試料90に対して元素分析を行う場合、ベース21および接着層22は試料台19上において粉体試料90を覆うとともに、ベース21および接着層22のうち粉体試料90から外方へ露出した部分を試料台19に貼り付けることができる。このため、粉体試料90にレーザ光4を照射する際、粉体試料90が飛散することを防止することができる。
【0116】
ここで、一般に、試料が粉体状である場合、レーザ光4が照射されると粉体試料90の表面が変動したり飛散したりすることが考えられる。このため、粉体試料90に対して元素分析を行う際、粉体試料90を予め固体化する必要があり、元素分析を行うために多くの時間を費やしていた。
【0117】
これに対して本実施の形態によれば、粉体試料90を接着テープ20で固定して粉体試料90から放出される蛍光の波長と強度が測定される。このことにより、粉体試料90を予め固体化することなく、粉体試料90の元素分析を行うことができ、粉体試料90の元素分析を迅速かつ精確に行うことができる。
【実施例】
【0118】
実施例
本発明の実施例として、鉄鋼材を分析対象試料として元素分析を行った例について述べる。本実施例においては、この試料に接着テープを貼り付けて元素分析を行っているが、比較のために、接着テープを貼り付けていない試料についても元素分析を行った。その結果を図4に示す。なお、接着テープにはセロハンテープを用いている。
【0119】
図4に示すように、接着テープ20を貼り付けた試料1に対する蛍光8の発光強度のピークは、そのほとんどが鉄鋼に含まれる鉄から発光された蛍光8の強度に対応している。図4に示すように、試料1に接着テープ20を貼り付けて元素分析を行うことにより、接着テープ20を貼り付けた試料1に対する発光強度は接着テープ20を貼り付けていない試料1に対する発光強度よりも全体的に数倍〜数十倍高くなり、試料1に含まれる鉄の発光強度の特性を精度良く得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置の全体構成を示す図。
【図2】図2(a)は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置の接着テープの構成を示す図。図2(b)は、分析対象試料の表面に置かれるテープの構成を示す図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【図4】図4は、図4は、本発明の第1の実施の形態において得られた蛍光の波長と強度との関係を示す図。
【図5】図5(a)は、本発明の第2の実施の形態における元素分析装置において用いられる無含有テープを示す図。図5(b)は、第1元素含有テープを示す図。図5(c)は、第2元素含有テープを示す図。
【図6】図6は、本発明の第2の実施の形態おける元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【図7】図7(a)は、本発明の第3の実施の形態における元素分析装置において用いられる無含有テープを示す図。図7(b)は、Cd含有テープを示す図。図7(c)は、Cr含有テープを示す図。図7(d)は、Pb含有テープを示す図。図7(e)は、Hg含有テープを示す図。
【図8】図8は、本発明の第3の実施の形態おける元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【図9】図9(a)は、本発明の第4の実施の形態における元素分析装置において用いられる無含有テープを示す図。図9(b)は、アスベスト含有テープを示す図。
【図10】図10は、本発明の第4の実施の形態おける元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【図11】図11は、本発明の第5の実施の形態における元素分析装置において用いられる接着テープを示す図。
【図12】図12は、本発明の第5の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【図13】図13は、本発明の第6の実施の形態における元素分析装置において用いられる接着テープを示す図。
【図14】図14は、本発明の第6の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【図15】図15は、本発明の第7の実施の形態における元素分析装置を用いた元素分析方法を示す図。
【符号の説明】
【0121】
1 試料
2 プラズマ生成手段
3 レーザ発振器
3a レーザ電源
4 レーザ光
5 反射ミラー
6 レーザ集光レンズ
7 プラズマ
8 蛍光
9 蛍光集光レンズ
10 光ファイバ
11 分光器
12 タイミングコントローラ
13 レーザ発振タイミング信号
14 タイミングコントローラ制御信号
15 計測制御用コンピュータ
16 受光部
17 元素分析装置
18 ゲート信号
19 試料台
20 接着テープ
21 ベース
21a ベース素材
22 接着層
22a 接着材
23 テープ
29 接着テープ
30 無含有テープ
31 無含有用ベース
32 無含有接着層
33 第1元素含有テープ
34 第1元素含有用ベース
35 第1元素含有接着層
36 第2元素含有テープ
37 第2元素含有用ベース
38 第2元素含有接着層
39 接着テープ
40 無含有テープ
41 無含有用ベース
42 無含有接着層
43 Cd含有テープ
44 Cd用ベース
45 Cd含有接着層
46 Cr含有テープ
47 Cr用ベース
48 Cr含有接着層
49 Pb含有テープ
50 Pb用ベース
51 Pb含有接着層
52 Hg含有テープ
53 Hg用ベース
54 Hg含有接着層
59 接着テープ
60 無含有テープ
61 無含有用ベース
62 無含有接着層
63 アスベスト含有テープ
64 アスベスト含有接着層
70 接着テープ
71 ベース
72 無含有接着層
73 元素含有接着層
74 粉体試料
75 物体
80 接着テープ
81 ベース
82 無含有接着層
83 アスベスト含有接着層
90 粉体試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスレーザ光を分析対象試料の表面に照射してこの試料を気化・励起させるプラズマ生成手段と、生成したプラズマ中の定量対象元素から放出する蛍光を集光する蛍光集光手段と、集光された蛍光の波長と強度を測定して元素含有量を定量する蛍光分光測定手段とを有する元素分析装置において、
分析対象試料の表面にレーザ光を透過するテープを置いて発光強度を高めたことを特徴とする元素分析装置。
【請求項2】
パルスレーザ光を分析対象試料の表面に照射してこの試料を気化・励起させるプラズマ生成手段と、生成したプラズマ中の定量対象元素から放出する蛍光を集光する蛍光集光手段と、集光された蛍光の波長と強度を測定して元素含有量を定量する蛍光分光測定手段とを有する元素分析装置において、
分析対象試料の表面にレーザ光を透過する接着テープを貼り付けて発光強度を高めたことを特徴とする元素分析装置。
【請求項3】
前記接着テープのベース素材および接着剤は、炭素および水素で組成される材料とすることを特徴とする請求項2記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記接着テープの一部に濃度較正を可能にするため予め所定濃度の元素を含有させたことを特徴とする請求項2記載の元素分析装置。
【請求項5】
前記所定濃度の元素は、カドミウム、クロム、鉛および水銀のうちの少なくとも一つの元素とし、これらの元素の濃度を法令で定める上限の濃度としたことを特徴とする請求項4記載の元素分析装置。
【請求項6】
分析対象をアスベストとした元素分析装置であって、前記接着テープの一部にアスベストを含有させ、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよび鉄についての蛍光スペクトル強度比を分析対象試料とアスベストとのそれぞれについて求めることを特徴とする請求項2記載の元素分析装置。
【請求項7】
分析対象試料は粉体試料からなり、この粉体試料を接着テープで固定して測定することを特徴とする請求項2記載の元素分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−294083(P2009−294083A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148039(P2008−148039)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(503382542)東芝電子管デバイス株式会社 (369)
【Fターム(参考)】