説明

充填ノズルの洗浄方法

【課題】無菌チャンバ内であっても容易に充填ノズルの整流板の不具合を解消できる充填ノズルの洗浄方法を提供する。
【解決手段】調節バルブ14が設けられた充填液配管11と、ガスバルブ15が設けられたガス配管12と、がそれぞれ接続されたタンク2から、調節バルブ14及びガスバルブ15を開いて無菌チャンバ17内に設けられる複数の充填バルブ4のそれぞれへ充填液が供給され、各充填バルブ4からメッシュ5aが取り付けられた充填ノズル5を介して容器Bに充填液を充填する充填ノズル5の洗浄方法であって、調節バルブ14及び充填バルブ4を閉じた状態でガスバルブ15を開き、ガスの圧力を調整するレギュレータ16により、容器Bに充填液を充填するときの圧力よりも高い圧力でタンク2内を加圧する加圧工程と、充填バルブ4を開いてタンク2内の圧力を充填ノズル5へ開放する開放工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセプティック充填システムに設けられ、無菌チャンバ内で飲料を充填する充填ノズルの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料を容器に充填する充填ノズルにはメッシュ等の整流板が設けられ、充填する際の飲料の流れが一定の方向へ整えられる(例えば、特許文献1参照。)。アセプティック充填装置においては、充填ノズルを無菌チャンバ内に設けることで充填時の無菌性を保っている。このような装置として例えば、無菌室内でパウチに固形物を含む充填液を充填するものが知られている(特許文献2及び3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−30904号公報
【特許文献2】特開2001−278215号公報
【特許文献3】特開2003−34311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
整流板が取り付けられた充填ノズルでは、使用に伴い飲料中の成分が整流板に固着、堆積して充填時の整流が妨げられることがある。容器内で飲料の流れが乱れるので、発泡、噴出し等による充填不良や、容器外面の汚れが生じる。このため、洗浄液によるCIP(Cleaning In Place)、あるいは無菌チャンバを開放しての充填ノズルの洗浄と再滅菌処理を要するが、手間も時間もかかるため、製造効率が低下する。
【0005】
そこで、本発明は無菌チャンバ内であっても容易に充填ノズルの整流板の不具合を解消できる充填ノズルの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の充填ノズルの洗浄方法は、調節バルブ(14)を開いて充填液を導入可能な充填液配管(11)と、ガスバルブ(15)を開いてガスを導入可能なガス配管(12)と、がそれぞれ接続されたタンク(2)から、前記調節バルブ及び前記ガスバルブを開いて無菌チャンバ(17)内に設けられる複数の充填バルブ(4)のそれぞれへ充填液供給管(13)を介して充填液が供給され、各充填バルブから整流板(5a)が取り付けられた充填ノズル(5)を介して容器(B)に充填液を充填するアセプティック充填システム(1)における充填ノズルの洗浄方法であって、前記調節バルブ及び前記充填バルブを閉じた状態で前記ガスバルブを開き、ガスの圧力を調整する調整手段(16)により、前記容器に充填液を充填するときの圧力よりも高い圧力で前記タンク内を加圧する加圧工程と、前記充填バルブを開いて前記タンク内の圧力を前記充填ノズルへ開放する開放工程と、を備えたことにより上記課題を解決する。
【0007】
本発明の充填ノズルの洗浄方法によれば、調節バルブ及び充填バルブを閉じた状態でガスバルブを開くとタンク内が加圧される。このとき、ガスの圧力は充填時よりも高い圧力に設定されタンク内を加圧する。タンク内が十分に加圧されたら充填バルブを開くことにより内部の圧力が充填ノズルへ開放される。これにより、充填ノズル、特に整流板に付着する付着物を除去することができる。充填ノズルを含む充填バルブは、無菌チャンバ内に設けられているのでCIP洗浄や無菌チャンバを開放しての洗浄作業を行うと再び充填工程を行うまでに時間がかかるが、このようにタンクから充填ノズルに圧力を開放すれば無菌チャンバを開放することなしに充填ノズルの洗浄が可能となる。タンクから充填ノズルへ流れるものとして充填液や、無菌エア又は蒸気等のガスを適用してよい。従って、容易に無菌チャンバ内の充填ノズルの洗浄が可能となり、製造効率を大幅に改善することができる。
【0008】
本発明の洗浄方法の一形態において、前記加圧工程では、前記タンク内に充填液が保持された状態で加圧してもよい。この形態によれば、タンク内の十分な加圧後に充填バルブを開くと充填液が充填バルブに流れる。充填液が高圧で充填ノズル内を流れるので整流板に付着する付着物を確実に除去できる。
【0009】
本発明の洗浄方法の一形態において、前記開放工程では、前記充填ノズルから吐出される充填液を回収する回収部材を前記充填ノズルの下方に位置させてもよい。この形態によれば、洗浄時に充填ノズルから吐出される洗浄液又はガスを回収部材が回収する。充填ノズルから吐出される整流板の付着物を含む充填液又はガスを回収して、無菌チャンバ外へ排出することができる。
【0010】
本発明の洗浄方法の一形態において、前記開放工程では、前記タンク内の圧力が所定圧力まで低下したら前記タンク内の圧力の開放を終了してもよい。この形態によれば、タンク内の圧力が低下することにより整流板に付着する付着物を除去できないおそれがある場合には、充填バルブを閉じる等して圧力開放を終了する。これにより、効率的かつ確実に整流板を洗浄することができる。
【0011】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
以上、説明したように、本発明の充填ノズルの洗浄方法においては、調節バルブ及び充填バルブを閉じた状態でガスバルブを開くとタンク内が加圧される。このとき、ガスの圧力は充填時よりも高い圧力に設定されタンク内を加圧する。タンク内が十分に加圧されたら充填バルブを開くことにより内部の圧力が充填ノズルへ開放される。これにより、充填ノズル、特に整流板に付着する付着物を除去することができる。充填ノズルを含む充填バルブは、無菌チャンバ内に設けられているのでCIP洗浄や無菌チャンバを開放しての洗浄作業を行うと再び充填工程を行うまでに時間がかかるが、このようにタンクから充填ノズルに圧力を開放すれば無菌チャンバを開放することなしに充填ノズルの洗浄が可能となる。従って、容易に無菌チャンバ内の充填ノズルの洗浄が可能となり、製造効率を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】アセプティック充填システムの概略図。
【図2】充填機の概略図。
【図3】充填ノズル洗浄時のアセプティック充填システムを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明の一形態に係る無菌充填ノズルの洗浄方法が適用されるアセプティック充填システムの概略図を示す。アセプティック充填システム1は、充填液を保持するタンク2と、タンク2から充填液が供給される充填機3と、充填機3と接続される複数の充填バルブ4と、各充填バルブ4に設けられる充填ノズル5とを備えている。充填液として茶系飲料、ミルク入り飲料等の各種飲料が用いられる。タンク2には、タンク2へ充填液を導入する充填液配管11と、タンク2へガスを導入するガス配管12と、充填機3へ充填液を供給する充填液供給管13とが接続される。充填液配管11には調節バルブ14が設けられ、ガス配管12にはガスバルブ15が設けられている。各バルブ14、15により、充填液、あるいはガスの流路が開閉され、充填機3へ充填液を供給することができる。各バルブ14、15として、各種周知技術を利用してよい。また、ガスとして、無菌エア等を利用することができる。ガス配管12には、ガスの圧力を調整する調整手段としてのレギュレータ16が設けられている。レギュレータ16は周知技術を利用してよい。
【0015】
図2に充填機3の概略図を示す。充填機3には、所定の回転軸線AXを中心として水平に旋回可能なスターホイール式搬送機構3aが設けられている。搬送機構3aとして周知技術を利用してよい。搬送機構3aの外周には、所定のピッチで複数の充填バルブ4が設けられ、充填バルブ4には充填液が供給される。搬送機構3aの外周には、容器Bを取り込む複数のポケット(不図示)が各充填バルブ4と上下方向に位置を揃えるようにして設けられている。充填バルブ4は、搬送機構3aの外周を一周するように等間隔でかつ上下動自在に取り付けられている。容器Bに充填ノズル5から所定量の充填液が充填されると充填バルブ4が閉じられる。充填後の容器Bは次工程へ搬送される。なお、容器Bとしてペットボトル等が用いられる。
【0016】
充填ノズル5には、整流板としてのメッシュ5aが設けられている。メッシュ5aは、充填ノズル5から吐出される充填液を整流するためのメッシュフィルタで、容器B内に充填される充填液の流れを直線化して泡立ちを防止する。また、メッシュ5aにより充填液中の異物を捕捉することもできる。一例として40メッシュのものが用いられる。また、本形態では2つのメッシュ5aが設けられているが、メッシュ5aの個数は適宜変更してよい。充填ノズル5の下方には、後述する充填ノズル5の洗浄時に、洗浄に用いられた充填液あるいはガスを回収する回収部材6が設けられている。回収部材6は、充填ノズル5から吐出される充填液又はガスを受ける樋で、半円筒形状、あるいは溝形を有する部材である。回収部材6は充填機3に取り付けられた複数の充填バルブ4のうち、一部の充填バルブ4に対して設けられる。図2に示すように、回収部材6は、充填ノズル5の下方に位置して充填液を回収する回収位置pと、容器Bへの充填時の妨げとならないように退避する退避位置qとの間で移動可能に設けられている。回収部材6を手動で移動可能に構成してもよいし、回収部材6を回収位置pと退避位置qとの間で駆動するために、周知の駆動機構を設けてもよい。回収部材6は、排出管6aと接続され、回収された充填液あるいはガスを排出管6aを介して排出する。回収部材6の大きさや形状は適宜変更してよい。アセプティック充填システム1では、常温の充填液を容器Bに充填する。このため、充填バルブ4を含む充填機3は、内部が無菌状態に保たれる無菌チャンバ17内に設置される。
【0017】
アセプティック充填システム1は、制御装置21を備えている。制御装置21は、一例としてマイクロプロセッサを有するコンピュータユニットとして構成されている。制御装置21は、充填バルブ4、調節バルブ14及びガスバルブ15の開閉を制御する。また、制御装置21は、レギュレータ16を制御してガスの圧力を調整する。なお、後述する変形例で説明する圧力計18を充填液供給管13に設け、圧力計18からの出力信号に基づいて各バルブ4、14、15の開閉を制御してもよい。
【0018】
アセプティック充填システム1における充填ノズル5の洗浄方法の手順を説明する。この説明に先立ち、まず図1を参照して容器Bへの充填時の様子を説明する。容器Bへ充填液を充填する際には、調節バルブ14及びガスバルブ15が開かれ、タンク2内に充填液及びガスが適宜補充されつつタンク2では充填液の液圧が調節される。ガス配管12へガスを供給する図示しないガス供給源の元圧は0.6[MPa]程度で、充填時には0.03[MPa]程度にレギュレータ16にて調整されてタンク2内を加圧する。充填バルブ4が開かれると充填ノズル5から充填液が吐出され、容器Bに充填される。このとき、回収部材6は、退避位置qにある。
【0019】
充填ノズル5にはメッシュ5aが設けられているので、充填液が整流されて容器Bへ流入する。充填ノズル5の通液量が増すにつれ、メッシュ5aに充填液の成分、特に粘性の高い成分が固着又は堆積し整流効果を妨げるおそれがある。例えば、緑茶、紅茶及び烏龍茶等の茶系飲料の場合、抽出液に含有されるポリフェノール、タンニン、カフェイン等の成分が固着又は堆積する。ミルクコーヒーやミルクティー等のミルク入り飲料の場合には、ポリフェノール(コーヒーのクロロゲン酸、紅茶のテアフラビン、テアビルジン等)、タンニン、カフェイン等のコーヒー又は紅茶抽出液に含有される成分、あるいは生乳又は脱脂粉乳由来のタンパク質、脂質及び無機物であったり、コーヒー等の含有物と上記タンパク質とが重合した成分が固着又は堆積する。メッシュ5aにこのような成分が付着すると、整流効果が得られず充填液の発泡、噴出しによる充填入味不良、容器Bの外面汚れ等の充填不良の原因となる。このため従来では、洗浄液によるCIPや無菌チャンバ17を開放しての充填ノズル5の洗浄と再滅菌処理が行われており、一回の作業で7時間程度を要しているため製造効率が悪い。そこで、本発明の充填ノズル5の洗浄方法をアセプティック充填システム1に適用することにより充填ノズル5を容易に洗浄できる。以下、図3を参照して説明する。
【0020】
まず、調節バルブ14及び充填バルブ4を閉めた状態で、ガスバルブ15を開き、タンク2内を加圧する。このとき、充填時の圧力よりも高い圧力、一例としてガスの圧力が0.1〜0.3[MPa]程度となるようにレギュレータ16を調節する。上限値は設備の保護のためであるが、設備や状況に応じて圧力は適宜変更してよい。また、タンク2内には所定量の充填液が保持されており、タンク2内の上部にはガスのためのスペースが設けられている。回収部材6は回収位置pに移動させておく。そして、タンク2内が所定圧力まで加圧されたら充填バルブ4を開放し充填ノズル5から充填液を吐出させる。吐出された充填液は、回収部材6に回収され、排出管6aを介して排出される。通常の充填時の圧力よりも高い圧力でタンク2内が加圧されているので、充填ノズル5のメッシュ5aに付着する付着物を除去するのに十分な圧力で充填液が吐出される。また、充填液でメッシュ5aを洗浄するので効率的である。所定量の充填液が吐出されると、充填バルブ4を閉じて今回の洗浄作業を終了する。
【0021】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、本形態では、充填液を充填時の圧力よりも高い圧力で充填ノズル5から吐出させたがこれに限られない。例えば、タンク2内に充填液が存在しない状態で無菌エアや蒸気等のガスをタンク2内で加圧させて充填ノズル5から吐出させてもよい。メッシュ5aに付着する付着物を除去するのに十分な圧力が生じていれば無菌エアや蒸気による洗浄が可能である。このようなガスによる洗浄の場合、回収部材6による回収に加え、大気開放や無菌チャンバ17へのブロー、蒸気SIP(Sterilizing In Place)経路での回収をしてもよい。
【0022】
充填液でメッシュ5aを洗浄する形態において、タンク2内の全ての充填液が充填バルブ4に供給されると、タンク2内が空となって圧力が低下することがある。この場合、続けてガスによる洗浄を行っても十分な圧力が得られず、付着物の確実な除去ができないおそれがある。このため、予めタンク2内の充填液量と圧力との相関をデータに取り、タンク2内の充填液が空となるまでの時間を洗浄時間として把握しておき、洗浄時間経過後に洗浄工程を終了するようにしてもよい。あるいは、変形例として圧力計18を充填液供給管13に設けてもよい。圧力計18により、タンク2内の圧力が低下したか否かを判別することができる。圧力計18を制御装置21と接続し、所定値よりも圧力が低下したら充填バルブ4を閉じるように制御してもよい。さらに、十分な圧力がタンク2内に生じれば充填バルブ4を再び開けるように制御してもよい。これにより、効率的かつ確実にメッシュ5aを洗浄することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 アセプティック充填システム
2 タンク
3 充填機
4 充填バルブ
5 充填ノズル
5a メッシュ(整流板)
6 回収部材
11 充填液配管
12 ガス配管
13 充填液供給管
14 調節バルブ
15 ガスバルブ
16 レギュレータ(調整手段)
17 無菌チャンバ
B 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節バルブを開いて充填液を導入可能な充填液配管と、ガスバルブを開いてガスを導入可能なガス配管と、がそれぞれ接続されたタンクから、前記調節バルブ及び前記ガスバルブを開いて無菌チャンバ内に設けられる複数の充填バルブのそれぞれへ充填液供給管を介して充填液が供給され、各充填バルブから整流板が取り付けられた充填ノズルを介して容器に充填液を充填するアセプティック充填システムにおける充填ノズルの洗浄方法であって、
前記調節バルブ及び前記充填バルブを閉じた状態で前記ガスバルブを開き、ガスの圧力を調整する調整手段により、前記容器に充填液を充填するときの圧力よりも高い圧力で前記タンク内を加圧する加圧工程と、
前記充填バルブを開いて前記タンク内の圧力を前記充填ノズルへ開放する開放工程と、を備えた充填ノズルの洗浄方法。
【請求項2】
前記加圧工程では、前記タンク内に充填液が保持された状態で加圧する請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記開放工程では、前記充填ノズルから吐出される充填液を回収する回収部材を前記充填ノズルの下方に位置させる請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記開放工程では、前記タンク内の圧力が所定圧力まで低下したら前記タンク内の圧力の開放を終了する請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−136737(P2011−136737A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298001(P2009−298001)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(391058381)キリンビバレッジ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】