説明

充填剤入りポリマー繊維、その製造方法、その使用及びかかる繊維を含む組成物

本発明は、多量の添加剤を含み且つ無充填ポリマー繊維のヤング率より高いヤング率を有する充填剤入りポリマー繊維であって、該添加剤が少なくとも1つのサブミクロン次元を有する無機添加剤を含む充填剤入りポリマー繊維に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維分野に関し、そして一層特には充填剤入りポリマー繊維に関する。
【0002】
ポリマー繊維は、数多くの分野において用途がある。たとえば、J.Karger-Kocsisにより編集されそして1999年にKluwer Academic Publisherにより出版された「Polypropylene - an A-Z reference」という本に掲載されているM.Jambrich及びP.Hodulによる「ポリプロピレン繊維の紡織用途」という題目の記事が参照され得る。
【0003】
ポリマー繊維は、特に強化目的のために様々なマトリックス(無機物、ポリマー、等)中に組み込まれる場合、それら自身の特性のために単独にて用いられあるいはまた他の物質及び/又は他の繊維との組合わせにて用いられる。
【0004】
更に、これらの繊維は、様々な形態の製品すなわちフリース、布、マット、一方向製品、等の製造のために用いられる。
【0005】
また、良好な機械的性質を有するポリマー繊維の要求がある。
【0006】
米国特許第6331265号明細書は、ポリプロピレンの塊中に導入された3%のカーボンナノチューブによって充填されたポリプロピレンの繊維を開示する。それらのカーボンナノチューブは約1μmの長さであり、また1から50nmの直径を有する。この充填剤入りポリプロピレン繊維は、1dtexの線タイター、高いテナシティ及び無充填ポリプロピレン繊維のヤング率より大きいヤング率を有する。この繊維は、モルタル、コンクリート又はセメントペースト用強化材として提案されている。
【0007】
高純度のカーボンナノチューブを得ることは、現在困難である。実際、触媒残留物が、最終繊維の性質を低減する能力があるミクロンサイズの不純物を形成し得る。更に、カーボンナノチューブを大量に製造することは困難であり、しかしてこれは該繊維のコストに反映される。
【0008】
加えて、この充填剤入りポリマー繊維は、工業的制約(特に、信頼性及び生産量に関して)を考慮に入れることなく実験室条件下で作られた。それ故、提案された製造方法は、工業生産にとって現実的でない。
【0009】
本発明は、工業規模で製造するのが容易である一方、良好な機械的性質特に高いヤング率を有するポリマー繊維を供給することを提案する。
【0010】
これに関して、本発明の第1の主題は、添加剤をポリマー繊維内に含む充填剤入りポリマー繊維であって、該充填剤入りポリマー繊維は無充填ポリマー繊維のヤング率より大きいヤング率を有し、そして該添加剤は少なくとも1つのサブミクロン次元を有する無機添加剤を含む充填剤入りポリマー繊維である。
【0011】
本発明によるところのポリマーと少なくとも1つのサブミクロン次元を有する無機添加剤の組合わせは、同じポリマーを基剤とした無充填繊維と比較して増加ヤング率を有する繊維を得ることを可能にする。
【0012】
加えて、本発明による無機添加剤は天然にて容易に入手できるか又は容易に合成され、そして必要ならば容易に精製される。これらの添加剤はまた、あまり高価でないという利点を有する。
【0013】
本発明による繊維の製造は、工業的要件に適合し得る。
【0014】
本願において、本発明による「サブミクロン次元」という用語は、平均値として取られた場合の無機添加剤のサブミクロン次元を意味すると理解される。サブミクロン次元は、たとえば、直径又は厚さに相当する。
【0015】
本願において、用語「繊維」は、広い意味で定義される。別の形容詞又は特記が添えられてなければ、用語「繊維」は、無延伸繊維(固相状態の)及び延伸繊維(1回又はそれ以上延伸された)の両方を指す。用語「繊維」は、糸又はモノフィラメント及び互いに同一又は異なるフィラメント(紡織繊維タイプの)のセットの両方を指す。繊維は、連続繊維又はチョップドファイバー、短繊維又は長繊維であり得る。
【0016】
有利には、無機添加剤のサブミクロン次元は、500nmより小さくそして好ましくは100nmより小さくあり得る。
【0017】
無機添加剤は、球状、棒状又はラメラ型の構造を有し得る。
【0018】
もちろん、異なる構造を有する添加剤の組合わせも想定され得る。
【0019】
好ましくは、無機添加剤は、5より大きいそして好ましくは50より大きいアスペクト比を有し得る。
【0020】
アスペクト比は、最も大きい次元対最も小さい次元の比率と定義される、ということが銘記され得る。
【0021】
高いアスペクト比は、特に本発明による添加剤の大きい次元が繊維の軸におおよそ平行である場合、高いテナシティを保証する。
【0022】
無機添加剤は、金属酸化物又は粘土であり得る。
【0023】
金属酸化物のなかで、アルミナ、酸化バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、タルク、マグネシア及び炭酸カルシウムが挙げられ得る。
【0024】
粘土は、ラメラ状(すなわち、小板状のように)又は繊維状であり得る。
【0025】
無機添加剤は、剥離性ラメラ粘土、好ましくは合成及び天然のフィロケイ酸塩、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、バーミキュライト及びそれらの等価物のようなスメクタイト粘土並びにまたマガディアイト、ケニヤアイト、スチーブンサイト、ハロイサイト、アルミネートオキシド、ハイドロタルサイト及びそれらの等価物から選ばれたものを含み得る。
【0026】
好ましくは、粘土は、100グラムの添加剤当たり少なくとも20ミリ当量好ましくは少なくとも50ミリ当量そして一層好ましくは50と150ミリ当量の間の負表面電荷を有し得る。
【0027】
かくして、粘土は、これらの無機物内にたとえば粘土小板間に吸収されることができる有機分子により改質され得、しかしてそれらの剥離を可能にする。粘土はいかなるカチオン交換容量も有し得るとしても、それにもかかわらず粘土が間違いなく剥離することが好ましい。
【0028】
好ましくは、無機添加剤は、モンモリロナイト及びベーマイトから選ばれ得る。
【0029】
ベーマイトは、アルミナ一水和物Al−O−OHをベースとしている。ベーマイトは、たとえば、棒形態にある。
【0030】
モンモリロナイトは剥離性小板を有し、そして本発明による充填剤入りポリマー繊維内に一様に分布され得る。
【0031】
モンモリロナイト及びベーマイトは、更に、100GPaより大きい格別高いヤング率を有する。
【0032】
無機添加剤は、次の薬剤すなわちカチオン性界面活性剤、両性薬剤、脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アミン、ホスフィン及びスルフィドの誘導体の少なくとも一つそして好ましくはアンモニウム、スルホニウム又はホスホニウム塩により表面改質され得る。
【0033】
これらの薬剤は、小板形態の粘土用の挿入剤として用いられる。
【0034】
更に、これらの薬剤はまた、本発明の無機添加剤の分散を利する。
【0035】
無機添加剤はまた、付着促進剤により改質され得、しかして付着促進剤は好ましくはオルガノシラン化合物そして更に一層好ましくはシラン、アミノシラン、ビニルシラン及びそれらの混合物である。
【0036】
繊維の総重量に対する無機添加剤の重量含有量は、好ましくは10%より少なく更に一層好ましくは5%より少なくあり得る。
【0037】
充填剤入りポリマー繊維は、たとえばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル及びポリビニルアルコール並びにそれらのコポリマーから選ばれたポリマーを基剤とし得る。
【0038】
有利には、充填剤入りポリマー繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレンのような充填剤入りポリオレフィンそして更に一層好ましくは充填剤入りポリプロピレンの繊維であり得る。
【0039】
繊維は、更に、ポリオレフィンと極性官能基を有するポリオレフィン(好ましくは、マレイン酸無水物、グリシジルメタクリレート、ビニルピロリドン、スチレン−メタクリレート、アクリレート又はアセテートによりグラフトされたポリオレフィンである)とのブレンドを含有し得、しかして充填剤入りポリマー繊維の総重量に対する極性官能基を有するポリオレフィンの重量含有量は好ましくは10%より少なくそして更に一層好ましくは5%より少ない。
【0040】
極性官能基を有するポリオレフィンは、合成の前に又は後にグラフトされ得る。後者は、紡糸されるべき配合物の分散及び繊維の延伸を利する。極性官能基を有するポリオレフィンの割合は、ヤング率のより大きい増加のために制限され得る。
【0041】
充填剤入りポリマー繊維の線密度は、0.5から10dtexの間一層有利には0.5から2dtexの間にあり得る。
【0042】
複合材において特に有利である強化効果は、比較的小さい横断面の繊維(モノフィラメント)でもって得られ得る。
【0043】
本発明による充填剤入りポリマー繊維の横断面は必ずしも円形でなく、そして不整又は多小葉形状を有し得る。
【0044】
本発明による充填剤入りポリマー繊維は、無充填繊維のテナシティの少なくとも80%に等しいテナシティを有し得る。
【0045】
特に有利な具体的態様において、充填剤入りポリマー繊維は、少なくとも4cN/dtex好ましくは少なくとも5cN/dtex非常に好ましくは少なくとも7cN/dtexそして特に8から9cN/dtexの高いテナシティを有する。
【0046】
このテナシティ範囲は、紡糸・延伸過程を適当な態様で調節することにより達成され得る。例として、適当な分子量分布を有するポリオレフィン基剤物質が特定的に選ばれ得る。
【0047】
充填剤入りポリマー繊維は、好ましくは、アミン又はポリアミン、リン酸又はポリリン酸化合物一層好ましくは脂肪族鎖をベースとしたリン酸のエステルを含有するサイズ剤を表面上に含有し得る。
【0048】
サイズ剤による繊維の露出表面の単純改質は、繊維とセメントマトリックスの間の相互作用を有効に且つ永続的に改善することを可能にする。
【0049】
ポリマー繊維の表面特性は、紡糸過程を援助する機能を与える1種又はそれ以上のサイズ剤により改質される。
【0050】
紡糸過程を援助する機能は、紡糸過程の少なくとも1つの段階においてポリマー繊維の形成を容易にすることにある。特に、それは生産の様々な段階における輸送装置による取扱いを改善するように繊維(この段階においてはモノフィラメント)を滑りやすくして、繊維により担持される静電荷を最小にすることである。
【0051】
たとえば、Schill & Seilacherから名称シラストル・カット(SILASTOL Cut)5A及びカット(Cut)5B下で、Dr Boehmeから名称シンセシン(SYNTHESIN)7292下で、Cognisから名称KB 144/2下で、Cognisから名称スタンテックス(STANTEX)S6077下で並びにCognisから名称スタンテックス(STANTEX)S6087/4下で販売されている製品からの製品が選ばれ得る。
【0052】
サイズ剤は、繊維の乾燥重量に対して0.05から5重量%の固体分の量にて繊維上に存在し得る。
【0053】
水硬性マトリックス向けの用途のために、サイズ剤はまた、水硬性バインダーを基剤とした組成物による湿潤性の機能を与え、水硬性マトリックスへの付着を促進しそして繊維−セメント複合材に更に改善された機械的性質を付与する機能を与える。
【0054】
水硬性バインダーを基剤とした組成物による湿潤性の機能は、マトリックス中におけるポリマー繊維の分散を容易にすることにあり、しかしてこれは製品が製造されるところの初期のバインダー/水混合物内における繊維物質の良好な分散からもたらされる。この機能は、主として、繊維物質を親水性にするべき繊維物質の表面極性に頼る。
【0055】
水硬性マトリックスへの付着を促進する機能は、繊維強化材と固化生成物マトリックスの間の相互作用を強化することにある。後者の機能もまた、繊維の表面における極性官能基の存在に頼る。
【0056】
これらの機能は、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、脂肪族鎖化合物及び極性官能基を有するポリマーから選ばれた1種又はそれ以上の薬剤により与えられ得、しかして滑剤は脂肪族鎖化合物であり得、同様に界面活性剤は脂肪族鎖化合物であり得、あるいは帯電防止剤は極性官能基を有するポリマーであり得る。
【0057】
延伸繊維は、約2から20mm特に5から12mmの長さを有するチョップドヤーンの形態にあり得る。
【0058】
本発明の別の主題は、繊維を基剤とした製品中の強化繊維としての、上記に記載されたとおりの充填剤入りポリマー繊維の使用である。
【0059】
それ故、本発明の更に別の主題は、繊維を基剤とした製品において、上記に定められたとおりの充填剤入りポリマー繊維を含むことを特徴とする繊維を基剤とした製品である。
【0060】
有利には、本製品は、布、フリース、長繊維マット、チョップドファイバーマット、一方向製品、不織製品、コード、ネット、リボン、ウェブ若しくはストリップの形態に又はそうでなければ当該繊維と異なるタイプの繊維との混合物の形態にそして好ましくは混繊維形態にある。
【0061】
混繊維の例は、ポリプロピレンフィラメント及びガラスフィラメントを含有するところのSaint-Gobainにより商標TWINTEX下で販売されている繊維である。
【0062】
多数の用途分野が、本発明による充填剤入りポリマー繊維についてあり得る。すなわち、カーペット、衛生用材、リボン、コード及びトワイン、繊維工業(衣類、糸、等)、家庭用生地(装飾用不織布、壁用織布、等)、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、包装材、医用生地、生体活性繊維、多成分繊維、高性能糸又は高強度モノフィラメント(シートベルト、安全ネット、魚網、等)。
【0063】
もちろん、本発明による充填剤入りポリマー繊維は充実又は主として充実であり得、すなわちそれは、たとえば、繊維の軸に沿った中空コアを含み得る。
【0064】
もちろん、本発明による(サイジングされた又はサイジングされていない)充填剤入りポリマー繊維はコーティングされ得る。
【0065】
本繊維は、様々な形態にて、油から誘導された製品中に、ビチューメン製品中に、及びたとえばマット形態にてアスファルトを基剤とした製品(屋根部材のような)中に組み込まれ得る。
【0066】
本繊維はまた、様々な形態にて、熱成形され得る。
【0067】
本発明の第1の有利な具体的態様において、製品は無機マトリックス好ましくは水硬性物質を含み、そしてこの製品は好ましくは接着剤、モルタル、コンクリート、グラウト及び繊維セメントから選ばれる。
【0068】
水硬性物質は、水硬性バインダー(主として様々な現存のセメントから選ばれる)から構成され、そして可能的に不活性又は活性充填剤である添加剤を有する。
【0069】
充填剤及び添加剤のなかで、レオロジー調整剤(分散剤、可塑剤、超可塑剤及び凝集剤)、無機充填剤(シリカ、フライアッシュ、スラグ、ポゾラン及び炭酸塩)、及びまた濾過又は脱水過程のための支持又は強化繊維(天然繊維特にセルロース又は合成繊維)が挙げられ得る。
【0070】
曲げ試験中、このタイプの公知製品は、上方領域として普通知られているものにおいて圧縮強さレベルに達すると非常にしばしば劣化する。
【0071】
この事態は、下方領域において張力を吸収する繊維の非常に重要な「変形能」に起因し、そして繊維が伸びるにつれて亀裂は更に一層進行する、ということを本出願人は確定した。
【0072】
また、側方強度に関する繊維の伸びの低減は、本発明による充填剤入り繊維の高いヤング率により得られる。
【0073】
それ故、本充填剤入り繊維のヤング率の増加は、下方領域の変形を制限することを可能にする。これにより中立軸の変位が制限され、そしてそれ故上方領域において圧縮応力の増加が制限される。
【0074】
かくして、これらの水硬性製品は、格別高い破壊荷重を有する。
【0075】
本発明による繊維は、初期混合物の総乾燥重量に対して約0.2から5wt%の繊維の量にて、繊維セメント用強化材として格別有効である。
【0076】
本発明による繊維は、「亀裂防止」効果のために初期混合物の総乾燥重量に対して約0.01から0.2wt%の繊維の量にてそして構造効果のために0.2から5%にて、モルタル用強化材として格別有効である。
【0077】
この第1の具体的態様において、繊維は、2と20mmの間そして一層特には5と12mmの間の長さを有するチョップドヤーンであり得る。
【0078】
本製品は様々な形状(中空、管状)を有し得、そして好ましくは平らな又は波形のシートの形状にある。
【0079】
シートに造形されたところの水硬性バインダーを基剤とした物品は、水硬性バインダー、強化繊維及び可能的に充填剤を含む水性懸濁液を濾過する技法により製造され得る。
【0080】
この技法に基づいて普通に用いられる方法は、ハチェック法として知られている。すなわち、タンクの容積内の諸成分の均質な分布を確実にする手段を備えたタンク中に非常に希薄な水性懸濁液を入れ、濾過ドラムを該タンク中に部分的に浸しそしてその回転により薄い物質層(繊維及び水和バインダー)をその表面上に沈着させ、この層をそれが連続的に巻き上げられるところのサイズロールの方へフェルトにより運び、この層が所望厚に達した時、該ロールから水硬性物質の個々のシートを巻きほどくようにするためにそれを切断する。次いで、このシートは造形製品の形態にされ得、そしてそれはバインダーの硬化によりその最終特性を獲得する。より大きい厚さの製品は、適当な数のシートを重ねることによりそしてその集積物の粘着を確実にするためにそれらを一緒に圧締することにより得られ得る。
【0081】
かかるボードは、屋根又はファサード部材として用いられる。
【0082】
本発明の第2の具体的態様において、製品は、ポリマーマトリックス好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ又はフェノールマトリックスから選ばれたものを含み得る。
【0083】
複合材たとえばポリプロピレンを基剤としたものについての主な用途分野は、輸送車(ボンネット、小荷物棚、等における部品)、電気用品、家庭及び消費者用商品、建物及び公共施設、並びに工業用商品である。
【0084】
本発明の追加的主題は、上記に定められたとおりの充填剤入りポリマー繊維を製造する方法であって、少なくとも1つのサブミクロン次元を有する無機添加剤を含むポリマー組成物を紡糸する工程を含む方法である。
【0085】
本発明による添加剤は易分散性であり、また紡糸されるべきポリマー組成物のレオロジー的性質(粘度、等)をあまり変えない。
【0086】
ポリマー組成物は、押出しにより得られ得る。押出し温度は、ポリマー及び添加剤に依存して調節されるべきである。例として、紡糸温度は、充填剤入りポリプロピレンについては250℃と300℃の間にあり得る。
【0087】
紡糸工程は、十分な熱交換容量についての冷却操作(好ましくは、適当に冷却及び加湿された空気中で)、及び半径方向冷却操作を含み得る。
【0088】
好ましい具体的態様において、本方法は、紡糸直後に又は引き続いて、融点未満にて延伸する工程を含む。
【0089】
好ましくは、本方法は、連続延伸手段による繊維テーパー化工程を含み得る。
【0090】
この工程は、様々な温度における及び異なる速度を有するロールの助けで並びに炉の助けで達成され得る。
【0091】
好ましい具体的態様において、本方法は、少なくとも1つの濾過操作を含むところの該組成物を作製する工程を含む。
【0092】
このやり方で、潜在的な凝集塊及び不純物は、たとえば押出機の出口におけるフィルターの助けで、紡糸前に除去される。
【0093】
更に、より良好なプロセス制御(濃度、分散性、相容性、等に関して)のために、該組成物の作製は、当該ポリマーで及び随意に変性ポリマーで希釈するべき予備混合物の達成(該予備混合物は次いでペレットに変えられる)を含み得る。この予備混合物は、本発明による無機添加剤を含有するペレット状のマスターバッチそして好ましくは非商業用マスターバッチの当該ポリマー中における希釈により得られる。その作製中、マスターバッチは濾過され得る。
【0094】
サイジング工程が、紡糸工程において加えられ得る。
【0095】
サイジング工程は延伸後に加えられ得、また空気炉の助けでの乾燥工程により後続され得る。
【0096】
サイズ剤は、純状態であるいは水性の溶液、分散液若しくは乳濁液として又は別の適当な担体液体を基剤としたものとして施用され得る。
【0097】
本発明の主題はまた、上記に定められたとおりの充填剤入り繊維及び水硬性物質を基剤とした製品を製造する方法である。
【0098】
この方法によれば、初期混合物が水硬性バインダー、水及び上記に定められたとおりの繊維を基剤として作製され、湿り基本シートを形成させるために該繊維が静止又は移動支持体上に濾過され、可能的に複数枚の基本シートが重ねられて湿り中間生成物を形成し、そしてこのボード又は湿り中間生成物が乾燥される。
【0099】
本発明の主題はまた、水硬性材料用組成物であって、水硬性バインダー及び上記に記載されたとおりの繊維を含む組成物である。これらの組成物は、脱水法向けの懸濁にされるべきセメント調製物、又は他の成形法向けのモルタル用セメント調製物であり得る。
【0100】
本発明の最後の主題は、ポリマーマトリックス及び上記に記載されたとおりの繊維を含む組成物である。
【0101】
かかるマトリックスは、好ましくは熱可塑性マトリックス、熱硬化性マトリックス、そして好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ又はフェノールマトリックスであり得る。
【0102】
さて、本発明は、次の例にて非制限的態様で説明される。
【0103】
例1(対照)
対照繊維は、230℃及び2.16kgにおいて測定して18g/10minのメルトフローインデックスを有するBorealisからのポリプロピレン樹脂HF445FBから、本発明による無機添加剤なしで得られた無充填の高テナシティの小直径(1dtex)繊維であった。
【0104】
紡糸口金−直径がおおよそ0.35mmの穴を有する−を出ると、繊維すなわちすべてのモノフィラメントは、温度及び速度が制御される冷却空気でもって急速冷却後に凝固する。
【0105】
紡糸中、Dr Boehmeにより販売されている照会名シンセシン(SYNTHESIN)7292を有するサイズ剤をポリプロピレン繊維上に、それが紡糸口金を出る時に、ポリプロピレン繊維固体分の0.45wt%の量にて付着させた。
【0106】
次いで繊維をリール上に巻き、次いで増加回転速度にて回転する様々な一連の加熱ロールを含む延伸帯域において連続的に巻きほどきそして延伸した。熱風又はスチーム炉が、様々な一連のロール間に置かれていた。延伸帯域の端において、繊維を冷却した。
【0107】
試験を行うために、繊維を次いで30mmの長さに細断した。
【0108】
例2
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 5.5%の製品ナノマー(NANOMER)C44PA(Nanocorにより製造されたそして約45%のモンモリロナイト及びポリプロピレン(PP)を含有する)、
− 94.5%のBorealisのHF445FBのPP。
【0109】
モンモリロナイトは、小板がナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有して50より大きいアスペクト比を与える粘土である。
【0110】
ポリマー組成物を約250℃の温度における一軸スクリュー押出機にて作り、そして直径が0.35mmの穴を有する紡糸口金中に供給した。該組成物の粘度は、用いられたポリマーの粘度に匹敵した。
【0111】
紡糸中、Dr Boehmeにより販売されている照会名シンセシン(SYNTHESIN)7292を有するサイズ剤を充填剤入りポリプロピレン繊維上に、それが紡糸口金を出る時に、充填剤入りポリプロピレン繊維固体分の0.45wt%の量にて付着させた。
【0112】
例3
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 40%の予備混合物(5%のモンモリロナイトの濃度にされた且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は87.5%のBorealisのHF445FBのPP及び12.5%のナノブレンド(NANOBLEND)1001(Polyoneにより販売されているそして約40%のモンモリロナイト及びPPを含有する)から得られる)、
− 60%のBorealisのHF445FBのPP。
【0113】
粘土小板はナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有しており、50より大きいアスペクト比を与える。
【0114】
ペレットを製造するために、予備混合物を220℃の温度における共回転二軸スクリュー押出機にて作り、約40μm直径の穴を有するフィルターに通し、そして次いで直径が3mmの穴を有する紡糸口金中に供給した。
【0115】
ポリマー組成物を約250℃の温度における一軸スクリュー押出機にて作り、そして直径が0.35mmの穴を有する紡糸口金中に供給した。該組成物の粘度は、用いられたポリマーの粘度に匹敵した。
【0116】
紡糸中、Dr Boehmeにより販売されている照会名シンセシン(SYNTHESIN)7292を有するサイズ剤を充填剤入りポリプロピレン繊維上に、それが紡糸口金を出る時に、充填剤入りポリプロピレン繊維固体分の0.45wt%の量にて付着させた。
【0117】
例4
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 40%の予備混合物(5%のモンモリロナイトの濃度にされた且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は87.5%のBorealisのHF445FBのPP及び12.5%のナノブレンド(NANOBLEND)1001から得られる)、
− 58%のBorealisのHF445FBのPP、及び
− 2%のPPgMAとして知られた1%マレイン酸無水物でグラフトされたポリプロピレン(Cromptonからの照会名ポリボンド(POLYBOND)3200)。
【0118】
粘土小板はナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有しており、50より大きいアスペクト比を与える。
【0119】
例3における条件と同様な条件下で、繊維を製造した。
【0120】
例5
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 60%の予備混合物(5%のモンモリロナイトの濃度にされた且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は87.5%のBorealisのHF445FBのPP及び12.5%のナノブレンド(NANOBLEND)1001から得られる)、
− 37%のBorealisのHF445FBのPP、及び
− 3%のPPgMA(Cromptonからの照会名ポリボンド(POLYBOND)3200)。
【0121】
粘土小板はナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有しており、50より大きいアスペクト比を与える。
【0122】
例3における条件と同様な条件下で、繊維を製造した。
【0123】
例6
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 60%の予備混合物(5%のモンモリロナイトの濃度にされた且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は87.5%のBorealisのHF445FBのPP及び12.5%のナノブレンド(NANOBLEND)1012(Polyoneにより販売されているそして約40%のモンモリロナイト及びPPを含有する)から得られる)、
− 37%のBorealisのHF445FBのPP、及び
− 3%のPPgMA(Cromptonからの照会名ポリボンド(POLYBOND)3200)。
【0124】
粘土小板はナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有しており、50より大きいアスペクト比を与える。
【0125】
例3における条件と同様な条件下で、繊維を製造した。
【0126】
例7
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 20%の予備混合物(5%のモンモリロナイトの濃度にされた且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は84.5%のBorealisのHF445FBのPP及び15.5%の製品PL19315(Multibaseにより販売されているそして約32%のモンモリロナイト及びPPを含有する)から得られる)、
− 79.5%のBorealisのHF445FBのPP、及び
− 0.5%のPPgMA(Cromptonからの照会名ポリボンド(POLYBOND)3200)。
【0127】
粘土小板はナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有しており、50より大きいアスペクト比を与える。
【0128】
例3における条件と同様な条件下で、繊維を製造した。
【0129】
例8
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 60%の予備混合物(5%の改質モンモリロナイトの濃度にされた且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は90%のPP、5%のPPgMA及び5%の改質モンモリロナイト(約62%のモンモリロナイト及びアルキルアンモニウムを含有する)から得られる)、
− 40%のBorealisのHF445FBのPP。
【0130】
粘土小板はナノスケールの平均厚さ及び数百ナノメートルの平均長さを有しており、50より大きいアスペクト比を与える。
【0131】
ペレットを製造するために、予備混合物を180℃の温度における共回転二軸スクリュー押出機にて作り、約40μm直径の穴を有するフィルターに通し、そして次いで直径が3mmの穴を有する紡糸口金中に供給した。この予備混合物は、80%のBorealisのHF445FBのPPと20%のペレット形態の非商業用マスターバッチ(50%のBorealisのHF445FBのPP、25%のPPgMA(Cromptonからの照会名ポリボンド(POLYBOND)3200)及び25%の粉末状の改質モンモリロナイト(Southern Clay Productsにより販売されている照会名クロイサイト(Cloisite)C20A)を含有する)との希釈混合物である。該マスターバッチのペレットを製造するために、180℃の温度における共回転二軸スクリュー押出機にて達成された該マスターバッチを約40μm直径の穴を有するフィルターに通し、そして次いで直径が3mmの穴を有する紡糸口金中に供給した。
【0132】
ポリマー組成物を約250℃の温度における一軸スクリュー押出機にて作り、そして直径が0.35mmの穴を有する紡糸口金中に供給した。該組成物の粘度は、用いられたポリマーの粘度に匹敵した。
【0133】
紡糸中、Dr Boehmeにより販売されている照会名シンセシン(SYNTHESIN)7292を有するサイズ剤を充填剤入りポリプロピレン繊維上に、それが紡糸口金を出る時に、充填剤入りポリプロピレン繊維固体分の0.45wt%の量にて付着させた。
【0134】
例9
繊維の総重量に対して物質のwt%で表された次のポリマー組成物から、充填剤入りポリプロピレン繊維を製造した。すなわち、
− 70%の予備混合物(3%の濃度にされた改質ベーマイトを基剤とした且つペレット形態の予備混合物,この予備混合物は94%のBorealisのHF445FBのPP、3%のPPgMA(照会名ポリボンド(POLYBOND)3200)及び3%のベーマイト(SAINT-GOBAINにより名称CAM9010下で販売されているそして0.5%の□−アミノプロピルトリエトキシシラン(Aldrichにより名称A1100下で販売されている)で表面改質されている)から得られる)、及び
− 30%のBorealisのHF445FBのPP。
【0135】
このベーマイトは、約20nmの平均直径及び100と200nmの間の平均長さそしてかくして5より大きいアスペクト比を有する棒の形態にあった。
【0136】
例3における条件と同様な条件下で、繊維を製造した。
【0137】
試験
延伸(連続冷延伸)前の対照繊維No.1及び充填剤入り繊維No.2からNo.8の結果が、下記の表1に記録されている。
【0138】
延伸(連続冷延伸)後の対照繊維1及び充填剤入り繊維2から8の結果が、下記の表2に記録されている。
【0139】
ヤング率は、それぞれ1、5又は10%の公称歪に対する応力の比率に等しい割線モジュラスであると定められる。
【0140】
Textechnoにより販売されているファフェグラフ(Fafegraph)引張り試験機を用いて単繊維に関して得られたテナシティ−伸び曲線から、ヤング率を算出した。Textechnoにより販売されているヴィブロマット(Vibromat)を用いて、直径を測定した。測定条件は、ISO5079標準規格により決定された。ジョー間の距離は延伸前の繊維については10mmそして延伸後については20mmであり、そして繊維(この段階においては連続糸)が破壊するのを防ぎながら固体状態で最大延伸比まで連続的に延伸した。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
無延伸及び延伸繊維2から9のヤング率は、それぞれ無延伸及び延伸対照繊維1のそれよりも明らかに高い。更に、延伸繊維2から9は、高いテナシティを保持する。
【0144】
次の例は、セメント製品の製造への本発明による様々な充填剤入りポリプロピレン繊維の適用を例示する。
【0145】
例10
ハチェック技法のような工業的方法により得られる製品の主要な特性を全く忠実に再現する実験室的方法により、セメント製品を濾過によって製造した。
【0146】
次のセメントマトリックスを基剤として大過剰の水で懸濁して、セメント組成物を作製した。
【0147】
【表3】

【0148】
そのようにして、例1の対照繊維と同一の充填剤入りポリプロピレン繊維でもって、第1対照セメント組成物を作製した。それらの繊維はまた、例1のやり方と同様なやり方で、しかし充填剤入りポリプロピレン繊維固体分の0.4wt%の量にて延伸後に行われた追加の後サイジング工程を伴って製造された。
【0149】
そのようにして、例5の繊維と同一の充填剤入りポリプロピレン繊維でもって、第2セメント組成物を作製した。それらの繊維はまた、例5のやり方と同様なやり方で、しかし充填剤入りポリプロピレン繊維固体分の0.4wt%の量にて延伸後に行われた追加の後サイジング工程を伴って製造された。
【0150】
繊維は、10mmの長さに細断された。
【0151】
各組成物について、組成物を金属格子を通じて濾過して約1mm厚の単一層を形成させた。硬化前にセメントの重量に対して約50wt%の水を含有し且つ約6mmの厚さの材料を得るために、6つの個層を重ねそしてプレスサイクルに付した。
【0152】
この実験室材料を防水袋の中で40℃にて6日間の硬化に付した後に、幅が20mmで長さが260mmより大きい試験片に切断した。張力下で機械的応力が加えられるようにするために、これらの試験片を冷水中に24時間置いた。
【0153】
試験片を引張り試験機のクランプの間に180mmのクランプ間距離でもって固定することにより、引張り試験を行った。引張り試験は、1.2mm/minの引張り速度にて行われた。
【0154】
試験試料10aは、対照試験片(無充填繊維を有する)に相当する。試験片10bは、本発明による試験片(充填剤入り繊維を有する)に相当する。
【0155】
力−変位曲線をプロットした。これは、ハチェック技法により得られる製品に関して観察される結果に典型的である挙動を有した。
【0156】
変位の始まりにおいて力は急速に増加し、次いでマクロ亀裂の出現まで試験試料の多亀裂に相応して力がゆっくり増加する平坦域が観察され、その後マクロ亀裂の口開け中の滑り効果に因り力は低下した。
【0157】
多亀裂平坦域の長さは、繊維のすべてによるボード強化の効果を反映した。
【0158】
特に、試験試料の幅で割られた力と定義されるそして表3に示された破壊力は、各試験試料10bについて格別高くそして更に対照試験片10aの破壊力より大きい、ということが観察された。
【0159】
【表4】

【0160】
具体的態様の変型において、炭酸カルシウムの量を60%に、更に80%に増加し、そして逆にセメントの量をかなり減少した。
【0161】
同様なやり方で、例2から4又は6から9の繊維と同一の繊維を含有する試験試料もまた作られ得る。
【0162】
例11
この例11は、ハチェック法によるセメント製品の製造への本発明による充填剤入り繊維の適用を例示する。
【0163】
例10の充填剤入り繊維を有するマトリックスと同一のマトリックスを基剤とした水性懸濁液を作製した。フィルムの形成のためにそして約1mm厚の水和セメント物質のシートのサイズロール上への巻取りのために、各懸濁液をハチェック機械のタンク中に導入した。切断後、6mmの厚さを有する平らな又は波形のシートを形成するように、水和物質のシートを成形機上において重ねた。
【0164】
室温にて28日の硬化後、シートを機械的試験に付した。
【0165】
例10における寸法と同じ寸法を有する試験試料を、同じ条件下で引張り試験に付した。力−変位曲線は、多亀裂平坦域及びプルアウト後の減少を伴った同様な挙動であった。
【0166】
破壊強さは各試験試料について格別高いことが観察された。
【0167】
同様なやり方で、例2から4又は6から9の繊維と同一である繊維を含有する試験試料もまた作られ得る。
【0168】
充填剤入りポリマー繊維の他の使用
本発明による充填剤入りポリマー繊維、たとえば例No.2からNo.9の繊維と同様な充填剤入りポリプロピレン繊維又はより大きい線タイターを有する充填剤入りポリマー繊維は、シートベルト、包装材、安全ネット、魚網、等を製造するために工業用糸又は高強度モノフィラメントとして用いられ得る。
【0169】
かくして、本発明による充填剤入りポリマー繊維は、Polymer,44,2003,pp1117〜1131において発表されたP.J.Hine等による「織られた配向PP繊維及びテープの熱間圧縮挙動 I.機械的性質」及びJournal of Materials Science,28,1993,pp316〜324において発表されたP.J.Hine等による「高モジュラスの溶融紡糸ポリエチレン繊維の熱間圧縮」という題目の記事に記載された方法に従って、熱間圧縮性でもある一方向又はマット型布を製造するために用いられ得る。
【0170】
本発明による充填剤入りポリプロピレン繊維はまた、J.Karger-Kocsisにより編集されそして1999年にKluwer Academic Publisherにより出版された「Polypropylene:an A-Z reference」という本におけるK.Chanによる「ジオテキスタイル及びジオメンブレン」という題目の記事に記載された方法に従って、アグロテキスタイル及びジオテキスタイルを製造するために用いられ得る。
【0171】
本発明による充填剤入りポリプロピレン繊維はまた、オールポリプロピレン(PP)の熱成形複合材、PP糸のフィラメント巻き、PP繊維布又はマットの表面材において及びPPハニカム又はPP発泡体の芯材において構成されるオールPPのサンドイッチパネルを製造するために用いられ得る。Materials Today,2003,pp30〜35において発表されたT.Pejisによる「リサイクル適性のための複合材」という題目の記事が参照され得る。かかる複合材は、完全にリサイクル可能であるという利点を有する。
【0172】
本発明による充填剤入りポリプロピレン繊維はまた、
− J.Karger-Kocsisにより編集されそして1999年にKluwer Academic Publisherにより出版された「Polypropylene:an A-Z reference」という本においてA.Lutz等により「繊維束又はトウのための含浸技法」に記載された方法に従って、含浸糸の束を
− Makromol. Chem.,Macromol. Sym.,28,1989,pp73〜84において発表されたC.W.M.Bastiaansen等による「ゲル紡糸/延伸ポリオレフィンの溶融挙動」に記載された方法に従って、熱硬化性樹脂で含浸されたPP繊維の一方向布又はマットを有する複合ボードを
− たとえばセイント−ゴバイン(Saint-Gobain)のツインテックス法に従って、PP繊維とガラス繊維との混合物を
製造するために用いられ得る。
【0173】
加えて、本発明による充填剤入りポリマー繊維は、まさに、連続一工程延伸法(後続操作なし)により得られた繊維であり得る。
【0174】
加えて、本発明による充填剤入りポリマー繊維は、まさに、予備混合なしにポリマー組成物を紡糸することにより得られた繊維であり得る。
【0175】
本発明による充填剤入りポリマー繊維は、まさに、溶解状態のポリマーから又はポリマー前駆体から出発して溶媒紡糸(ゲル紡糸又は湿式紡糸)により得られた繊維であり得る。「超高分子量ポリプロピレンのゲル紡糸法に関する研究」という題目の記事,Y.Zhang、C.Xiao、J.Guangxia、A.Shulin,Journal of Applied Polymer Science,1999,Vol.4,No.3,pp670〜675が参照され得る。
【0176】
本発明による充填剤入りポリマー繊維はまた、充填剤入りフィブリル化リボンからの繊維であり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤をポリマー繊維内に含有する充填剤入りポリマー繊維であって、該充填剤入りポリマー繊維は無充填ポリマー繊維のヤング率より大きいヤング率を有する充填剤入りポリマー繊維において、該添加剤が少なくとも1つのサブミクロン次元を有する無機添加剤を含むことを特徴とする充填剤入りポリマー繊維。
【請求項2】
無機添加剤のサブミクロン次元が、500nmより小さいそして好ましくは100nmより小さいことを特徴とする、請求項1に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項3】
無機添加剤が、球状、棒状又はラメラ型の構造を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項4】
無機添加剤が、5より大きいそして好ましくは50より大きいアスペクト比を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項5】
無機添加剤が、金属酸化物、粘土及びそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項6】
無機添加剤が、剥離性ラメラ粘土、好ましくは合成及び天然のフィロケイ酸塩、スメクタイト粘土、マガディアイト、ケニヤアイト、スチーブンサイト、ハロイサイト、アルミネートオキシド、ハイドロタルサイト及びそれらの等価物から選ばれたものを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項7】
無機添加剤が、モンモリロナイト及びベーマイトから選ばれることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項8】
無機添加剤が、次の薬剤すなわちカチオン性界面活性剤、両性薬剤、脂肪族、芳香族又はアリール脂肪族アミン、ホスフィン、スルフィドの誘導体の少なくとも一つによりそして好ましくはアンモニウム、スルホニウム又はホスホニウム塩により表面改質されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項9】
無機添加剤が、付着促進剤好ましくはオルガノシラン化合物である付着促進剤により改質されていていもよいことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項10】
繊維の総重量に対する無機添加剤の重量含有量が、10%より少ない好ましくは5%より少ないことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項11】
充填剤入りポリオレフィンの繊維そして好ましくは充填剤入りポリプロピレンの繊維であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項12】
繊維が、ポリオレフィンと、極性官能基を有するポリオレフィン、好ましくはマレイン酸無水物、グリシジルメタクリレート、ビニルピロリドン、スチレン−メタクリレート、アクリレート又はアセテートによりグラフトされたポリオレフィンである極性官能基を有するポリオレフィンとのブレンドを含み、しかも充填剤入りポリマー繊維の総重量に対する極性官能基を有するポリオレフィンの重量含有量は好ましくは10%より少ないことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項13】
ポリマー繊維の線タイターが、0.5と10dtexの間好ましくは0.5dtexから2dtexの間にあることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項14】
少なくとも4cN/dtex好ましくは少なくとも7cN/dtexのテナシティを有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項15】
アミン又はポリアミン、リン酸又はポリリン酸化合物好ましくは脂肪族鎖をベースとしたリン酸のエステルを含有するサイズ剤を表面上に含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維。
【請求項16】
製品中の強化繊維としての、請求項1〜15のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維の使用。
【請求項17】
繊維を基剤とした製品において、請求項1〜15のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維を含むことを特徴とする繊維を基剤とした製品。
【請求項18】
布、フリース、チョップドファイバーマット、長繊維マット、不織製品、一方向製品、コード、ネット、リボン、ウェブ若しくはストリップの形態に又はそうでなければ当該繊維と異なるタイプの繊維との混合物の形態にそして好ましくは混繊維形態にあることを特徴とする、請求項17に記載の繊維を基剤とした製品。
【請求項19】
製品が無機マトリックス好ましくは水硬性物質を含み、そして一層好ましくは製品が接着剤、モルタル、コンクリート、グラウト及び繊維セメントから選ばれることを特徴とする、請求項17又は18に記載の繊維を基剤とした製品。
【請求項20】
製品が、繊維セメントでありそして初期混合物の総乾燥重量に対して0.2から5wt%の繊維を含むことを特徴とする、請求項19に記載の繊維を基剤とした製品。
【請求項21】
平らな又は波形のシートの形状を有することを特徴とする、請求項19又は20に記載の繊維を基剤とした製品。
【請求項22】
製品がポリマーマトリックスを含み、そしてそれが好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ又はフェノールマトリックスから選ばれることを特徴とする、請求項17又は18に記載の繊維を基剤とした製品。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維を製造する方法であって、少なくとも1つのサブミクロン次元を有する無機添加剤を含有するポリマー組成物を紡糸する工程を含む方法。
【請求項24】
融点未満にて延伸する工程を含むことを特徴とする、請求項23に記載のポリマー繊維を製造する方法。
【請求項25】
少なくとも1つの濾過操作を含むところの当該組成物を作製する工程を含むことを特徴とする、請求項23又は24に記載のポリマー繊維を製造する方法。
【請求項26】
繊維及び水硬性物質を基剤とした製品を製造する方法において、
− 水硬性バインダー、水及び請求項1〜15のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維を基剤として初期混合物を作製し、
− 該繊維を静止又は移動支持体上に濾過して湿り基本層を形成させ、そして
− 複数の基本層を重ねて湿り中間生成物を形成させ、そしてこの湿り中間生成物を乾燥する
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
水硬性材料用組成物であって、水硬性バインダー及び請求項1〜15のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維を含む組成物。
【請求項28】
ポリマーマトリックス及び請求項1〜15のいずれか一項に記載の充填剤入りポリマー繊維を含む組成物。
【請求項29】
マトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ又はフェノールマトリックスであることを特徴とする、請求項28に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−500463(P2008−500463A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514039(P2007−514039)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050364
【国際公開番号】WO2005/118924
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506393824)サン−ゴバン マテリオ ドゥ コンストリュクシヨン ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (1)
【Fターム(参考)】