説明

充填剤添加ポリオレフィン組成物類

充填剤添加ポリオレフィン組成物であって、A) 20重量%〜80重量%のポリプロピレン成分;B) 20重量%〜80重量%の充填剤を含み、ここで、A)、及びB)の百分率はA)及びB)の総計に関し、A)は、下記の組成物類:a) メルトフローレート(MFR)値が500g/10分以上を示すポリプロピレン画分A)20重量%〜80重量%、及びメルトフローレート(MFRII)値が0.1〜30g/10分を示すポリプロピレン画分AII)20重量%〜80重量%を含有し、前記A)及びAII)の百分率はA)及びAII)の総計に関するポリプロピレン組成物;又はb) メルトフローレート(MFR)値が500g/10分以上を示すポリプロピレン画分A)15重量%〜72重量%、メルトフローレート(MFRII)値が0.1〜30g/10分を示すポリプロピレン画分AII)15重量%〜70重量%、及び相容化剤Q)0.5重量%〜15重量%を含有し、A)、AII)及びQ)の百分率がA)、AII)及びQ)の総計に関するポリプロピレン組成物;から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填剤を含有し、加工性及び機械特性について改良したバランスを示すポリオレフィン組成物類に関する。特に、本発明の組成物類は、有意で非常に多量の充填剤の存在にもかかわらず、相対的に高い値メルトフローレート(以下、MFRと省略する)を達成でき、機械特性について非常に好ましく且つ通常でないバランスと関連する。
【0002】
このような種類の組成物類の最終MFR値を上げるために、高MFR値のプロピレンポリマーを使用することが既に当業界で示唆されている。特に、米国特許第4997875号明細書にしたがって、50重量%までの繊維強化剤を約55〜約430g/10分のMFR値を有する重合したプロピレンポリマー物質にブレンドすることにより、改良したメルトフロー特性及び良好な機械特性を得る。
【0003】
米国特許出願20060264557号明細書にしたがい、多量の有機充填剤及び場合により無機充填剤を約20〜約1500g/10分のMFR値を有するポリプロピレン樹脂にブレンドすることにより、良好な衝撃特性を有する強化ポリプロピレン組成物類を得る。実際、前記文献の実施例に使用されているプロピレンポリマーのうちの最高MFR値は400〜430g/10分である。
【発明の概要】
【0004】
今、室温及び80℃における曲げ弾性率及び曲げ強度、耐衝撃性、引張特性及び熱撓み温度(以下、HDT)の改良したバランスが、充填剤と非常に高いMFR値を有するプロピレンポリマーとのブレンドにより達成されることを見出した。
【0005】
本発明の組成物類により達成されるその他の改良特性は、寸法安定性、耐クリープ性及び環境応力亀裂性抵抗性である。
さらに、当業界で公知の充填剤添加組成物類と比較して、本発明の組成物類は、複雑なデザインでさえ、キャビティモールドに充填するのにより高い能力を示し、射出成形応用においてサイクル時間の減少をもたらす。
【0006】
本発明の組成物類の流動性の増強が、当該組成物類のより高い剛性値と一緒になって、製造する成形品の厚さを減少させることも可能である。
詳細には、本発明は、
A) 20重量%〜80重量%のポリプロピレン成分;
B) 20重量%〜80重量%の充填剤;
を含む充填剤添加ポリオレフィン組成物類を提供し、ここで、A)及びB)の百分率はA)及びB)の総計に関し、A)は、下記の組成物類:
a) メルトフローレート(MFR)値が500g/10分以上を示すポリプロピレン画分A)20重量%〜80重量%、及びメルトフローレート(MFRII)値が0.1〜30g/10分を示すポリプロピレン画分AII)20重量%〜80重量%を含有し、前記A)及びAII)の百分率はA)及びAII)の総計に関するポリプロピレン組成物;又は
b) メルトフローレート(MFR)値が500g/10分以上を示すポリプロピレン画分A)15重量%〜72重量%、メルトフローレート(MFRII)値が0.1〜30g/10分を示すポリプロピレン画分AII)15重量%〜70重量%、及び相容化剤Q)0.5重量%〜15重量%を含有し、A)、AII)及びQ)の百分率がA)、AII)及びQ)の総計に関するポリプロピレン組成物;
から選択され、A)及びAII)は、独立して、プロピレンホモポリマー類、及びエチレン及び/又はC−C10αオレフィン(類)を5モル%まで含有するプロピレンランダムコポリマーから選択され;全てのメルトフローレート値が230℃で2.16kg荷重を用いるISO1133に準じて測定する。
【0007】
好ましくは、本発明の組成物類は、A)及びB)の総重量に関して、20重量%〜70重量%、より好ましくは、30重量%〜60重量%のA)、及び30重量%〜80重量%、より好ましくは、40重量%〜70重量%のB)C)を含む。
【0008】
上で定義したA)画分は、非常に高いMFR値、すなわち、500g/10分若しくはそれ以上、好ましくは、1200g/10分若しくはそれ以上、特に、500〜2500g/10分又は1200〜2500g/10分である。
【0009】
さらにこのようなMFR値は、好ましくは、いずれの分解処理無しで得られる。換言すれば、A)画分は、好ましくは、重合したばかりのプロピレンポリマー類から製造され、重合後にMFR値を実質的に変更できる処理に付さない。したがって、A)画分の分子量も、実質的に、プロピレンポリマーを製造するのに使用される重合プロセスにおいて直接得られる分子量である。または、好ましくはないが、前記MFR値を、より低いMFR値を有するプロピレンポリマー類の分解(ビスブレーキング)により得る。
【0010】
)画分中に存在できるプロピレンコポリマー類中のコモノマー類は、エチレン及び/又は、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1及びオクテン−1のようなC−C10αオレフィン類から選択する。好適なコモノマー類はエチレン及びブテン−1である。
【0011】
)画分のうちの全てのプロピレンポリマー類及びコポリマー類は、重合プロセスにおいてチグラー・ナッタ触媒又はメタロセン系触媒系を使用することにより製造できる。これらの触媒及び重合プロセスは当業界で公知である。当業界で公知の慣用的な分子量調整剤、例えば、連鎖移動剤(例えば、水素やZnEt)を使用できる。
【0012】
チグラー・ナッタ触媒の好適例は、トリアルキルアルミニウム化合物、場合により、電子供与体、並びに無水塩化マグネシウム上に担持されたTiのハロゲン化物若しくはTiのハロゲン−アルコラート及び、場合により電子供与体化合物を含む担持触媒系である。上述の特性を有する触媒は特許文献により周知であり、特に、有利なのは米国特許第4,399,054号明細書及びEP第45977号公報(A)に記載されている触媒類である。その他の例は米国特許第4,472,524号明細書中に見出すことができる。
【0013】
特定のチグラー・ナッタ触媒の例及びA)画分のプロピレンポリマー類の製造に適した重合プロセスはEP第0622380号公報に開示されている。
好ましくは、画分A)のプロピレンポリマー類がチグラー・ナッタ触媒を用いて製造するとき、EP第0622380号公報に開示されているように、プロピレンポリマー類は、600〜1000g/10分のMFR、100,000〜60,000のMw値、及び1000g/10分を超えるMFR、140000以上のMz値を有する。
【0014】
チグラー・ナッタ触媒を用いて製造した前記プロピレンポリマー類のその他の好適な特徴は:
− 2.5〜2.8のMz/Mw値;
− 室温(約25℃)におけるキシレン不溶重量画分に関するアイソタクチック指数が95%以上、より好ましくは、97%以上;
である。
【0015】
より好ましくは、A)画分のプロピレンポリマー類はメタロセン−系触媒系の存在下重合で直接得られる。通例、重合条件は、チグラー・ナッタ触媒を用いて使用するのと異なる必要はない。
【0016】
好適なメタロセン−系触媒系は、
a) 式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、Mは元素の周期表の3,4,5,6族に属するか、又はランタノイド系若しくはアクチノイド系に属する遷移金属であり、好ましくは、Mはチタン、ジルコニウム若しくはハフニウムであり;Xは同一若しくは異なり、水素原子、ハロゲン原子、又はR、OR、OSOCF、OCOR、SR、NR若しくはPR基であり、ここで、Rは線状若しくは分枝状、環式若しくは非環式、C−C40−アルキル、C−C40アルケニル、C−C40アルキニル、C−C40−アリール、C−C40−アルキルアリール若しくはC−C40−アリールアルキル基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき、好ましくは、Rは線状若しくは分枝状C−C20−アルキル基であり;又は2個のXは、場合により、飽和若しくは不飽和ブタジエニル基を形成でき若しくはOR’O基、ここで、R’はC−C40アルキリデン、C−C40アリーリデン、C−C40アルキルアリーリデン及びC−C40アリールアルキリデン基から選択される2価の基であり;好ましくは、Xは水素原子、ハロゲン原子若しくはR基であり、より好ましくは、Xは塩素若しくはC−C10−アルキル基、例えば、メチル、若しくはエチル基であり;Lは2価のC−C40炭化水素基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき、又は5個までの珪素原子を含有する2価のシリリデン基であり;好ましくは、Lは、C−C40アルキリデン、C−C40シクロアルキリデン、C−C40アリーリデン、C−C40アルキルアリーリデン、若しくはC−C40アリールアルキリデンから選択される2価の橋架け基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき、SiMe、SiPhのような5個までの珪素原子を含有するシリリデン基であり;好ましくは、Lは(Z(R”)基、ここで、Zは炭素原子若しくは珪素原子であり、nは1若しくは2であり、R”はC−C20炭化水素基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき、好ましくは、R”は線状若しくは分枝状、環式若しくは非環式、C−C20−アルキル、C−C20アルケニル、C−C20アルキニル、C−C20−アリール、C−C20−アルキルアリール若しくはC−C20−アリールアルキル基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき;より好ましくは、(Z(R”)基はSi(CH、SiPh、SiPhMe、SiMe(SiMe)、CH、(CH、及びC(CHであり;さらにより好ましくは、(Z(R”)はSi(CHである。RはC−C40炭化水素基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき;好ましくは、Rは線状若しくは分枝状、環式若しくは非環式のC−C40アルキル、C−C40アルケニル、C−C40アルキニル、C−C40−アリール、C−C40−アルキルアリール又はC−C40アリールアルキル基であり、場合により、元素の周期律表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき;より好ましくは、Rは線状若しくは分枝状、飽和若しくは不飽和C−C20−アルキル基であり;R、R、R及びRは、互いに等しいか又は異なり、水素原子若しくはC−C40炭化水素基であり、場合により、元素の周期表の13〜17族に属するヘテロ原子を含有でき、又はR、R、R及びRのうち2つのR基はC〜C環を形成し、当該環は不飽和若しくは飽和であることができ、場合により、元素の周期表の14〜16族に属するヘテロ原子を含有でき、形成した環はC−C20炭化水素置換基を有することができる)のメタロセン化合物;
b) 少なくと1つのアルモキサン若しくはアルキルメタロセンカチオンを形成できる化合物
を接触させることにより得ることができる。
【0019】
メタロセン化合物a)の特定例は、rac−ジメチルシリルビス(2−メチル−4,5−ベンゾ−インデニル)−ジルコニウムジクロリドである。
アルモキサン類は、
【0020】
【化2】

【0021】
タイプの少なくとも1つの基を含有する線状、分枝状又は環式化合物であると考えることができ、前記式中、置換基Uは同じか異なり、水素原子、ハロゲン原子、C−C20−アルキル、C−C20−シクロアルキル、C−C20−アリール、C−C20−アルキルアリール、又はC−C20−アリールアルキル基であり、場合により珪素原子若しくはゲルマニウム原子を含有しても良く、但し、少なくと1個のUはハロゲンではない。
【0022】
特に、式:
【0023】
【化3】

【0024】
のアルモキサン類を線状化合物類の場合に使用でき、式中、nは0若しくは1〜40の整数であり、置換基Uは上記定義の通りであるか、式:
【0025】
【化4】

【0026】
のアルモキサン類を環式化合物の場合に使用でき、式中、nは2〜40の整数であり、置換基Uは上記定義の通りである。
適切なアルモキサン類の例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ−(イソブチル)アルモキサン(TIBAO),テトラ−(2,4,4−トリメチル−ペンチル)アルモキサン(TIOAO)、 テトラ−(2,3-ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)及びテトラ−(2,3,3-トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。
【0027】
アルキルメタロセンカチオンを形成できる化合物類の例は、式Dの化合物であり、式中、Dはブレンステッド酸であり、プロトンを与えて不可逆的に式(I)のメタロセンのX置換基と反応でき、Eは相容性アニオン(compatible anion)であり、当該アニオンはこれらの2個の化合物の反応由来の活性触媒種を安定化でき、オレフィンモノマーにより除去されるのに充分不安定である。好ましくは、アニオンEは1個以上のボロン原子を含む。より好ましくは、アニオンEは式BAr(−)のアニオンであり、式中、Ar置換基は、同一又は異なり、アリール基であり、例えば、フェニル、ペンタフルオロフェニル若しくはビス(トリフルオロメチル)フェニルのようなものである。テトラキス−ペンタフルオロフェニルボレートは特に好適な化合物であり、WO91/02012号公報に記載されている。さらに、式BArの化合物を都合良く使用できる。このタイプの化合物は、例えば、国際特許出願WO92/00333号公報に記載されている。アルキルメタロセンカチオンを形成できる化合物類のその他の例は、式BArPの化合物であり、式中、Pは置換若しくは無置換ピロール基である。これらの化合物は、WO01/62764号公報に記載されている。ボロン原子を含有するこれら全ての化合物は、約1:1及び約10:1の間、好ましくは、1:1及び2:1の間、より好ましくは、1:1からなるボロン及びメタロセンの金属の間のモル比で使用できる。
【0028】
メタロセン系触媒系を用いて製造する前記プロピレンポリマー類についてのその他の好適な特徴は:
− 分子量分布Mw/Mnが4未満;より好ましくは、3未満;最も好ましくは2.7未満;
13C−NMRで測定したアイソタクチックペンタド(mmmm)が90%を超え;より好ましくは、92%を超え;
− 25℃におけるキシレン可溶分が2重量%未満;より好ましくは、1.6重量%未満;
− DSCの手段により測定した融点が143℃を超える。
【0029】
ポリプロピレン画分AII)は、MFR値が0.1〜30g/10分のプロピレンホモポリマー又はコポリマーであることができる。したがって、当該画分AII)は、慣用重合プロセスにおいて、慣用触媒(チグラー・ナッタ触媒又はメタロセン系)を用いて製造できる。
【0030】
前記ポリプロピレン画分AII)の好適な特徴は:
− MFR値が0.5〜20g/10分;
− 室温(約25℃)におけるキシレン不溶画分重量に関して、アイソタクチック指数が92%以上、より好ましくは、95%以上;
− コモノマー(類)の量が、9重量%まで、より好ましくは、5重量%まで;
− Mw/Mnが4を超え、より好ましくは、7を超え、最も好ましくは、10を超え;
− 230℃で測定した溶融強度が1.50cNより高く、特に、1.60〜12.00cNの範囲、より好ましくは、1.60〜8.00cNの範囲である。
【0031】
II)中に存在できるコモノマー(類)の例は、ポリプロピレン画分A)について上述したのと同様である。
画分AII)として使用するのに特に好適なものは、Mw/Mn比に関して、4〜9の分子量分布を有する画分i)を30重量%〜70重量%、好ましくは、40重量%〜60重量%、及びMw/Mn比に関して、10より高い分子量分布を有する画分ii)を30重量%〜70重量%、好ましくは、40重量%〜60重量%含有し、当該画分i)及び画分ii)は、独立して、プロピレンホモポリマー類並びに5モル%までのエチレン及び/又はC−C10αオレフィン(類)を含有するプロピレンのランダムコポリマーから選択され、i)及びii)の百分率はi)及びii)の合計に関する。
【0032】
前記画分ii)は画分AII)としても使用できる。
10以上のMw/Mn値を持つプロピレンホモポリマー類及びコポリマー類を得るために、異なる量の分子量調整剤(特に水素)を用いる2以上の段階の重合プロセスを行うことが可能である。この種のプロセスは気相で行うのが好適であるが、EP第0573862号公報にその例が開示されている。少なくとも2つの互いに連結した重合領域で行う気相重合プロセスを用いて前記プロピレンホモポリマー類及びコポリマー類を製造することもできる(そして、好適である)。当該重合プロセスはEP第782587号公報及びWO00/02929号公報に記載されている。
【0033】
該プロセスは、プロピレン及びエチレン若しくはプロピレン及びα−オレフィン類が触媒系の存在下で供給される第1及び第2の互いに連結した重合領域中で行われ、当該領域から生成したポリマーが排出される。成長しつつあるポリマー微粒子は、迅速流動化条件で前記第1の重合領域(上昇)中を流れ、当該第1重合領域を去り、重力の作用下で高密度化した形体でポリマー粒子は前記第2重合領域(下降)中に入り、当該第2重合領域を去り、前記第1重合領域に再導入され、こうして、2つの重合領域間のポリマーの循環を確立する。概して、第1重合領域における迅速流動化は、成長しつつあるポリマーの前記第1重合領域への再導入の点以下でモノマーガス混合物を供給することにより確立される。第1重合領域への移動ガスの速度は、操作条件下の移動速度よりも大きく、標準的には、2〜15m/秒である。重力の作用下ポリマーが高密度形体で流れる、第2重合領域中において、固体の高い値の密度に達し、ポリマーの嵩密度に達し、圧力のポジティブゲインがこうして流れの方向に沿って得ることができ、その結果、機械的手段の助けがなくても第1反応領域中にポリマーの再導入が可能となる。このようにして、「ループ」循環が設定され、2つの重合領域間の圧力バランスにより、そして系中に導入したヘッドロスにより定義される。
【0034】
場合により、窒素や脂肪族炭化水素のような1種以上の不活性ガスを、当該ガスの分圧の合計が、好ましくは、ガスの総圧の5〜80%であるような量で、重合領域中に維持する。例えば、温度のような操作パラメーターは、通常の気相オレフィン重合プロセスであるようなものであり、例えば、50℃〜120℃、好ましくは、70℃〜90℃である。0.5〜10MPa、好ましくは、1.5〜6MPaの操作圧力下でプロセスを行うことができる。好ましくは、種々の触媒成分を第1重合領域に、当該領域のいずれかの点より供給する。しかし、第2重合領域のいずれかの点でも供給できる。
【0035】
重合プロセスでは、上昇管中に存在する気及び/または液混合物が下降管に入るのを全体的にまたは部分的に防止できる手段を与え、上昇管中に存在するガス混合物と異なる組成を有する気及び/または液混合物が下降管中に導入される。好適な実施態様では、上昇管中に存在するガス混合物と異なる組成を有する気及び/または液混合物の、1以上の導入ラインによる下降管への導入は、上昇管中に存在する混合物が下降管へ入るのを防止するのに有効である。下降管に供給される異なる組成の気及び/または液混合物は、場合により、部分的若しくは全部液化した形体で供給できる。成長しつつあるポリマーの分子量分布は、WO00/02929号公報の図4に図示されている反応器中で重合プロセスを行うことにより、そして、コモノマー(類)及び慣用分子量調整剤(特に、水素)を異なる割合で少なくとも1つの重合領域(特に上昇管)中に独立して秤量することにより、都合良く所定通りに調整できる。
【0036】
本発明の組成物類に使用される充填剤成分B)は有機又は無機であることができる。好適には有機及び無機の繊維、並びにその他の無機充填剤(繊維と異なる)、例えば、金属フレーク、ガラスフレーク、粉砕ガラス、ガラス球体及びタルク、炭酸カルシウム、雲母、ウオラストナイトすなわち一般にシリケート、カオリン、硫酸バリウム、金属酸化物及び金属ヒドロキシドのような鉱質充填剤等である。別の適した充填剤は木粉である。
【0037】
本組成物類の適切な繊維には、フィラメント形体のガラス、金属、セラミック、グラファイト並びにポリエステル及びナイロン(例えば、アラミド)のような有機ポリマーから成る繊維等があり、これら全ては商業的に入手できる。ガラス繊維が好適である。ガラス繊維は、カットガラス繊維又は長ガラス繊維のいずれかであることができ、連続フィラメント繊維の形態であることができ、しかし、カットガラス繊維を使用するのに好適なものであり、短繊維若しくはチョップトストランドとして知られている。一般に、ガラス繊維の長さは1〜50mmであることができる。本発明の組成物類に使用されるカット若しくは短繊維の長さは、好ましくは、1〜6mm、より好ましくは3〜4.5mmであり、その直径は、10〜20μm、より好ましくは、12〜14μmである。
【0038】
前述したように、本発明のポリプロピレン組成物類は、相容化剤Q)も含むことができる。使用できる1タイプは、反応性極性基を有する低分子量化合物であり、充填剤をより低い親水性にし、そしてそれ故ポリマーに対して相容性が増す。適切な化合物は、例えば、アミノシラン類、エポキシシラン類、アミドシラン類若しくはアクリロシラン類のようなシラン類である。しかし、相容化剤は、好ましくは、修正(官能化した)ポリマーであり、場合により、反応性極性基を有する低分子量化合物を含んでも良い。修正オレフィンポリマー類、特に、プロピレンホモポリマー類並びにエチレンとプロピレンとのコポリマー類又はプロピレンとその他のα−オレフィン類とのコポリマー類のような、プロピレンコポリマー類が、それらが本発明組成物類のA)成分と高度に相容性であるので、最も好適である。修正ポリエチレンも使用できる。
【0039】
構造に関して、修正ポリマー類は、好ましくは、グラフト若しくはブロックコポリマー類から選択される。これに関連して、好適なものは、極性化合物、特に、酸無水物類、カルボン酸類、カルボン酸誘導体類、第一級及び第2級アミン類、ヒドロキシル化合物類、オキサゾリン及びエポキシド類から選択される極性化合物類から、そしてさらにイオン性化合物類から誘導される基を含有する修正ポリマー類である。
【0040】
前記極性化合物類の特定例は、不飽和環状無水物及びそれらの脂肪族ジエステル類、並びに二酸誘導体である。特に、無水マレイン酸、並びにC−C10線状及び分枝状ジアルキルマレエート、C−C10線状及び分枝状ジアルキルフマレート、無水イタコン酸、C−C10線状及び分枝状イタコン酸ジアルキルエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びその混合物から選択される化合物類を使用できる。修正したポリマーとして無水マレイン酸を用いてグラフトしたプロピレンポリマーを使用するのが特に好適である。
【0041】
低分子量化合物は、充填剤を修正ポリマーにカップリングさせるように作用し、こうして、それを確実にプロピレンポリマー成分A)に結合させる。これらは普通二官能化合物であり、この場合、第1官能基は充填剤と結合性相互作用を結ぶことができ、第2官能基は修正ポリマーと結合性相互作用を結ぶことができる。低分子量化合物は、好ましくは、アミノシラン若しくはエポキシシランであり、より好ましくは、アミノシランである。
【0042】
充填剤B)がガラス繊維を含むとき、アミノシラン類は、シランヒドロキシル基でガラス繊維に結合し、一方、アミノ基は、例えば、無水マレイン酸でグラフトしたポリプロピレンと安定なアミド結合を形成する。
【0043】
低分子量化合物をガラス繊維に適用してから、ガラス繊維を組成物中に配合するのが特に有利である。
修正ポリマーは、例えば、遊離基発生剤(有機過酸化物のような)の存在下で無水マレイン酸とポリマーの反応性押出による簡単な方法で製造でき、例えば、EP第0572028号公報に開示されている。
【0044】
修正ポリマー中の極性化合物から誘導される基の好適量は0.5〜3重量%である。
修正ポリマーの好適MFR値は50〜400g/10分である。
予備混合形体の充填剤と相容化剤とを含むマスターバッチも使用できる。
【0045】
本発明のポリオレフィン組成物類は各成分の溶融及び混合により得ることができ、混合は、混合装置中で、通例、180〜310℃、好ましくは、190〜280℃、より好ましくは、200〜250℃の温度で行う。この目的のために公知の装置及び技術を使用できる。これに関連して有用な混合装置は、特に押出機及びニーダーであり、特に好適なものは二軸スクリュー押出機である。室温において混合装置中で各成分を予備混合することもできる。成分A)及び、場合により、成分Q)を最初に溶融し、続いて、成分B)を得られた溶融物と混合し、混合装置の摩耗及び繊維の破損(繊維が存在するとき)を減少させるようにする。
【0046】
本発明のポリプロピレン組成物の製造中に、主要成分A)及びB)並びに可能性あるいくらかの相容化剤Q)の他に、当業界で慣用的に使用されている添加剤、例えば、安定化剤(熱、光、U.V.に対する)、可塑化剤、帯電防止剤や撥水剤等を導入することができる。
【0047】
本発明の組成物類の特に好適な特徴は:
− 密度: 1.1〜4kg/dm、より好ましくは、1.1〜1.8kg/dm
− 曲げ弾性率: 2500〜19000MPa、より好ましくは、5000〜17000MPa;
− 引張弾性率: 2500〜20000MPa、より好ましくは、5000〜18000MPa;
− 23℃におけるシャルピー(ノッチなし): 30〜200kJ/m、より好ましくは、35〜65kJ/m
− −30℃におけるシャルピー(ノッチなし): 30〜150kJ/m、より好ましくは、40〜70kJ/m
− 23℃におけるシャルピー(ノッチ付): 5〜200kJ/m、より好ましくは、10〜20kJ/m
− −30℃におけるシャルピー(ノッチ付): 5〜150kJ/m、より好ましくは、10〜25kJ/m
− 破断点引張強さ: 50〜150MPa、より好ましくは、80〜140MPa;
− 破断点伸び: 1〜200%、特に、1〜5%;
− HDT1.8MPa: 60〜155℃、より好ましくは、135〜155℃
である。
【0048】
ガラス繊維と異なる充填剤を使用するとき、本発明の組成物の好適な特徴は:
− 密度: 1.1〜4kg/dm、より好ましくは、1.1〜1.9kg/dm
− 曲げ弾性率: 2500〜14000MPa、より好ましくは、5000〜12000MPa;
− 引張弾性率; 2500〜14000MPa、より好ましくは、5000〜12000MPa;
− 23℃におけるシャルピー(ノッチなし): 3〜25kJ/m、より好ましくは、4〜20kJ/m
− 23℃におけるシャルピー(ノッチ付): 1〜10kJ/m、より好ましくは、1.5〜7kJ/m
− 破断点引張強さ: 20〜60MPa、より好ましくは、20〜50MPa;
である。
【0049】
これらの好ましい特性のバランスのために、本発明の組成物類は多くの応用に使用できる。例えば、射出成形物品、特に、自動車用部品、電化製品、家具、又は一般の定形部材、特に、シート、電化製品用部品、家具、家庭雑貨、又は超充填マスターバッチ等である。
【0050】
特に、成分A)及びB)の総重量に関して、50重量%〜80重量%のように成分B)の量が特に高いとき、本発明の組成物類は、濃厚物としても使用するのに有利であることができ、追加のポリマー類をブレンドすることにより、ポリマー組成物類、特にポリオレフィン組成物類に充填剤を導入する。
【実施例】
【0051】
下記の実施例は本発明を例証するために示すが、本発明を限定することを目的とするものではない。下記の分析方法は、詳細な説明及び実施例で報告した特性を決定するのに使用する。
【0052】
メルトフローレート(MFR): ISO 1133、荷重2.16kg、230℃;
極限粘度: テトラヒドロナフタレン中135℃で測定;
密度: ISO 1183;
曲げ弾性率(割線): ISO 178、 T−バー、ISO527−1 タイプ1A から長方形標本80×10×4mm;
引張弾性率(割線): ISO 527/−1、2、タイプ1A標本、速度1mm/分、スパン50mm;
シャルピー(ノッチなし): ISO 179(タイプ1、沿層)、T−バー、ISO527−1 タイプ1A から長方形標本80×10×4mm;
シャルピー(ノッチ付): ISO 179(タイプ1、沿層、ノッチA)、T−バー、ISO527−1 タイプ1A から長方形標本80×10×4mm;
破断点引張強さ: ISO 527/−1、2、タイプ1A標本、速度50mm/分、スパン50mm;
破断点伸び: ISO 527/−1、2、タイプ1A標本、速度50mm/分、スパン50mm;
HDT(1.80MPa): (加熱撓み温度)ISO 75A−1、−2 クローズ6の標本。
【0053】
T−バー調製(射出成形)
試験標本を、ISO 1873−2試験方法(1989)にしたがって射出成形する。
アイソタクチック指数の決定(室温におけるキシレン中の可溶性、重量%)
2.5gのポリマー及び250cmのキシレンを、冷却器及びマグネットスターラーを具備したガラスフラスコ中に入れる。30分内で溶媒の沸点まで温度を上昇させる。次いで、得られた澄明溶液を還流及び攪拌下さらに30分間攪拌する。次いで、密閉フラスコを30分間氷水浴中に維持し、温度調節器付き水浴中に25℃30分間同様に維持する。こうして形成した固体を迅速濾紙で濾過する。100cmの濾過した液体を予め秤量したアルミニウム容器中に注ぎ、窒素流下加熱プレート上で加熱し、蒸発により溶媒を除去する。次いで、恒量になるまで、容器を真空下80℃でオーブン中に維持する。次いで、室温でキシレン中のポリマー可溶分の重量%を算出する。
【0054】
室温におけるキシレンに不溶性ポリマーの重量%はポリマーのアイソタクチック指数を考慮する。この値は、沸騰n−ヘプタンで抽出することにより決定するアイソタクチック指数に実質的に対応し、定義によりポリプロピレンのアイソタクチック指数を構成する。
【0055】
MWD決定
粒径13μmのTosoHaas TSK GMHXL−HT三種混合床カラム(mixed-bed columns)を備えたAlliance GPCV 2000装置(Waters)を使用して145℃でゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によりMn及びMw値を測定する。カラムの寸法は300×7.8mmである。使用した移動相は真空蒸留1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)であり、流量は1.0ml/分に維持する。2時間TCB中145℃で攪拌下試料を加熱することにより試料溶液を調製する。濃度は1mg/mlである。分解を防止するために、0.1g/lの2,6−ジtertブチル−p-クレゾールを加える。326.5μLの溶液をカラムセット中に注入する。580〜7500000の範囲の分子量の10個のポリスチレン標準試料(Polymer LaboratoriesによるEasiCal)とさらに同製造者からの11600000及び13200000のピーク分子量を有する他の2種類の標準品、を使用して較正曲線を得る。Mark−Houwink関係のK値は:
ポリスチレン標準品について、K=1.21×10−4dL/g及びα=0.706;
ポリプロピレン試料について、K=1.90×10−4dL/g及びα=0.725;
プロピレンコポリマー試料について、K=1.93×10−4dL/g及びα=0.725
であると仮定される。実験データを内挿し較正曲線得るために三次多項式フィットを使用する。データ獲得及びプロセッシングをWatersによるGPCVオプションを備えたEmpowerを使用することにより行う。
【0056】
溶融温度
20K/分の加熱速度でISO 3146にしたがうDSCにより決定。
13C−NMR(メタロセン−生成プロピレンポリマーについて)
NMR分析 PPの13C−NMRスペクトルを、120℃で、100.61MHzにおいてフーリエ変換モードで操作してDPX−400分光器で得る。mmmmペンタド炭素のピークを、それぞれ21.8ppm及び29.9ppmにおける内部標準として使用する。試料を5mm管中で120℃の1,1,2,2−テトラクロロメタンd2に8%wt/v濃度で溶解する。90°パルス、パルス及びCPD(WALTZ 16)間の12秒遅れを用いて、1H−13Cカップリングを外す各スペクトルを得る。6000Hzのスペクトルウインドウを使用して32Kデータ点に約2500トランジェントをストアする。PPスペクトルの割り当てを、“Selectivity in Propylene Polymerization with Metallocene Catalyst”, L.Resconi. Cavallo,A. Fait,F. Piemontesi, Chem.Rev.,100,1253,(2000)にしたがって行う。
【0057】
mmmm含量を、エナンチオ形態サイトモデルを用いて実験的ペンタド分布をモデル化して得る。2,1(E)及び1,3(H)エラーの高含量のPPのmmmm含量を:
【0058】
【数1】

【0059】
2,1及び3、1エラーの含量は:
【0060】
【数2】

【0061】
溶融強度
使用する装置は、データ処理するためのコンビユーターを備えた東洋精機製作所製溶融引張テスターである。この方法は、特定の延伸速度で延伸した溶融ポリマーのストランドの引張強さを測定することからなる。特に、試験しようとするポリマーを、8mm長さ、1mm直径のキャピラリーホールを備えたダイにより230℃0.2mm/分で押し出す。次いで、排出するストランドを、牽引滑車を使用して0.0006m/秒の一定加速で延伸し、破断点までの張力を測定する。この装置は、延伸の関数としてストランドの張力値を登録する。溶融強度は、ポリマー破断点の溶融張力に相当する。
【0062】
(実施例1〜15及び比較例1〜3)
成分A)、B)及びQ)として、下記の物質を使用する。
成分A)
PP−1: プロピレンホモポリマー、MFRが2300g/10分、Mw/Mnが2.6、及び室温におけるキシレン中のアイソタクチック指数が98.5%(アイソタクチックペンタド(mmmm)92%を超える)、DSC溶融温度が146℃、極限粘度が0.47dl/g、ペレット状;
PP−2: プロピレンホモポリマー、MFRが12g/10分、Mw/Mnが5.4、及びアイソタクチック指数が96.7%、ペレット状;
PP−3: 1.6重量%のエチレンを含有するプロピレンコポリマー、MFRが3g/10分、Mw/Mnが19.2、及びアイソタクチック指数が96%、ペレット状;
PP−4: MFR値が550g/10分、室温におけるキシレン中のアイソタクチック指数が98.7%(92%を超えるアイソタクチックペンタド(mmmm))、DSC溶融温度が145.3℃、極限粘度が0.69dl/gのプロピレンホモポリマー、ペレット状;
PP−5: MFR値が2.5g/10分、Mw/Mnが8.4及び溶融強度が6.72cNのプロピレンホモポリマー、ペレット状。
【0063】
PP−1は、rac−ジメチルシリルビス(2−メチル−4, 5−ベンゾ−インデニル)−ジルコニウムジクロリドを使用する、PCT/EP2004/007061号に記載されている通りに調製した触媒系を用いて得る。PCT/EP2004/007061号に記載されている通りに得る触媒泥形態の触媒系を予備接触容器中に供給し、当該容器中で約5(Kg/h)のプロパンで稀釈する。予備接触容器から触媒系を予備重合ループに供給し、当該ループ中に同時にプロピレンを供給する。予備重合温度は45℃である。予備重合ループ中の触媒の滞留時間は8分である。予備重合ループ中で得られる予備重合化触媒を次いでループ反応器に連続的に供給し、当該ループ反応器中にプロピレンを340Kg/hの速度で供給する。重合温度は70℃である。ループ反応器から得られたポリマーを排出し、未反応モノマーから分離し、乾燥させる。生成物のMFRを水素の供給により制御し、ポリマーの要求MFRとなるように調整する。PP−1の場合、水素濃度は1080ppmである。
【0064】
PP−4はPP−1と同様にして調製するが、プロピレンを329Kg/hの速度で供給し、水素供給が550ppmである点で異なる。
成分B
GF: 繊維長3mm及び直径13μmのガラス繊維 White ECS O3T 480(日本電気硝子社)。
【0065】
成分Q)
PP−MA: 無水マレイン酸(MA)でグラフトしたプロピレンホモポリマー、MFRが115g/10分、MA含量が1重量%(Polybond 3200、Chemuturaにより販売)。
【0066】
成分A)は約0.3重量%の慣用酸化防止剤も含有する。実施例13では、300重量ppmのフタロシアニンブルー(PV−Echtblau 2GLSP、Clariant)も含有する。実施例14では、0.18重量%のMillad 3988 3,4−ジメチルベンジリデンソルビトールも含有する。
【0067】
当該組成物は、二軸スクリュー押出機(型式Werner&Pfleiderer ZSK40SC)を使用して、押出により調製する。このラインは、約43L/Dのプロセス長さを有し、重量フィーダーを具備している。
【0068】
成分A)及びQ)を第一バレル中に供給し、成分B)を第5バレル中に強制サイドフィーディングにより供給する。
冷却浴及びストランドカッターScheer SGS100を備えたストランドダイプレートを使用してペレットを形成し、真空脱ガス(バレルNo.8)も適用してフューム及び分解物を排出する。
【0069】
運転条件:
スクリュー速度: 200rpm
キャパシィティー: 50〜60kg/h
バレル温度: 200〜220℃。
【0070】
得られた組成物の最終特性を成分の相対量とともに表I〜IVに報告する。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
【表5】

【0076】
追加試験
上述の幾つかの物質について、曲げ、衝撃及び引張特性も、下記のASTM試験法に準じて測定する。
曲げ弾性率(MPa): ASTM D790;
曲げ強さ(MPa): ASTM D790;
23℃における衝撃(ノッチ付)(J/m): ASTM D256A;
−30℃における衝撃(ノッチ付)(J/m):ASTM D256A;
引張強さ(MPa): ASTM D638;
破断点伸び(%): ASTM D638。
【0077】
結果を表VIに報告する。ここで、試験した物質は前述の実施例番号と同一である。
【0078】
【表6】

【0079】
スパイラルフロー試験
2.5mm深さのシングルキャビテイーエンドレススパイラルフロー金型を使用し、実施例3及び比較例2の組成物を、230℃の一定溶融温度及び異なる射出圧(2、4、6、8、10MPa)で射出した。射出成型器は、190トンのクランプ力のSandretto Model 190であり、成型温度は40℃であった。これらの条件下、すべての射出圧について、ミリメートルで表した流路長さを測定し、当該長さは物質の流動性に比例する。結果を下記の表VIに報告する。
【0080】
【表7】

【0081】
上記表に示されているように、実施例3の組成物は、比較例2の組成物に対してスパイラルフロー長さが顕著により長い。これは、本発明の組成物類は、複雑な設計物でもモールドキャビィティーをより容易に満たすことができ、射出成型圧を減少させることができ、ゆがみの問題を少なくし、生産性に関して経済的利点をもたらす成型サイクル時間を減少させることを意味する。
【0082】
80℃における曲げ弾性率及び曲げ強さ(ISO 178)
実施例3及び比較例2の組成物を試験する。結果を下記表VIIIに報告する。
【0083】
【表8】

【0084】
上記で報告した結果から、本発明の組成物類は、高温でも優れた機械特性を必要とする応用の自動車産業のボンネット下部品類(under-the-hood parts)を成形するのに適している。
【0085】
引張クリープ
ISO T バー標本(ISO 527−タイプ1Aの引張弾性率用のと同じ)についてISO 899に準じて試験を行った。試験条件は:
− 温度:105℃
− 荷重:17MPaである。結果を表IXに報告する。破損までにより長い時間及び破損までのより低い変形は、より強いクリープ抵抗性(耐疲労性)を示す値である。
【0086】
【表9】

【0087】
(実施例16〜19及び比較例4)
上記実施例(成分A))で使用したのと同じPP−1、PP−2、PP−3 及びPP−4ポリマー物質と下記から選択する成分B)とを押出して充填剤添加組成物を調製する:
− Talk Luzenac HAR T84(供給者 Luzenac)、白色〜灰色粉末、嵩密度=0.65g/ml、11.5μm未満の寸法の粒子が50重量%未満であり、40μmに残る最上粒子寸法の粒子が2重量%未満;
− Talk HMO5(供給者 IMI Fabi S.p.A)、目視で微細白色粉末、重装嵩密度=0.31g/ml、5μm未満の寸法の粒子が95重量%を超える;及び
− 炭酸カルシウム Omyacarb 2T−UM(供給者はOmya S.p.A)、白色粉末、Fe含量が0.03重量%未満、2μm未満の寸法の粒子が32重量%を超え、45μmを超える寸法の粒子が0.05重量%を超える
から選択される。
【0088】
一軸スクリュー押出機(cokneader Buss model MDK70)、70mm直径スクリューを備え、17L/Dプロセス長さで押出を行った。成分A)を第1供給ポートより供給し、一方、成分B)は、好ましくは、溶融相状態で2つの垂直供給ポートより供給する。
【0089】
操作パラメータは下記の通りである。
スクリュー速度: 270rpm;
キャパシィティー: 50〜60kg/h;
バレル温度: 200〜230℃。
【0090】
冷却用浴及びストランドカッターを備えたストランドダイプレートを使用してペレットを形成し、真空脱ガスも適用して、フューム及び分解物を排出する。
こうして得られた組成物類の最終特性を、各成分の相対量とともに表Xに報告する。
【0091】
スパイラルフロー試験を前述したようにして行う。
【0092】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填剤添加ポリオレフィン組成物であって、
A) 20重量%〜80重量%のポリプロピレン成分;
B) 20重量%〜80重量%の充填剤;
を含み、ここで、A)及びB)C)の百分率はA)及びB)の総計に関し、A)は、下記の組成物類:
a) メルトフローレート(MFR)値が500g/10分以上を示すポリプロピレン画分A)20重量%〜80重量%、及びメルトフローレート(MFRII)値が0.1〜30g/10分を示すポリプロピレン画分AII)20重量%〜80重量%を含有し、前記A)及びAII)の百分率はA)及びAII)の総計に関するポリプロピレン組成物;又は
b) メルトフローレート(MFR)値が500g/10分以上を示すポリプロピレン画分A)15重量%〜72重量%、メルトフローレート(MFRII)値が0.1〜30g/10分を示すポリプロピレン画分AII)15重量%〜70重量%、及び相容化剤Q)0.5重量%〜15重量%を含有し、A)、AII)及びQ)の百分率がA)、AII)及びQ)の総計に関するポリプロピレン組成物;
から選択され、A)及びAII)は、独立して、プロピレンホモポリマー、及びエチレン及び/又はC−C10αオレフィンを5モル%まで含有するプロピレンランダムコポリマーから選択され;全てのメルトフローレート値が230℃で2.16kg荷重を用いるISO 1133に準じて測定する、前記充填剤添加ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
ポリプロピレン画分A)のMFR値を、分解処理無しで得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリプロピレン画分A)のプロピレンホモポリマー及びプロピレンコポリマーを、メタロセン系触媒の存在下、重合で直接得る、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリプロピレン画分A)のプロピレンホモポリマー及びプロピレンコポリマーの分子量分布は、Mw/Mn比に関して、4未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ポリプロピレン画分AII)のプロピレンホモポリマー及びプロピレンコポリマーの分子量分布は、Mw/Mn比に関して、10を超える、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリプロピレン画分AII)は、Mw/Mn比に関して、4〜9の分子量分布を有する画分i)を30重量%〜70重量%及びMw/Mn比に関して、10より高い分子量分布を有する画分ii)を30重量%〜70重量%含有し、当該画分i)及び画分ii)は、独立して、プロピレンホモポリマー類並びに5モル%までのエチレン及び/又はC−C10αオレフィン(類)を含有するプロピレンのランダムコポリマーから選択され、i)及びii)の百分率はi)及びii)の合計に関する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
充填剤B)を、無機充填剤及び繊維、又はこれらの組合せから選択する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
充填剤B)が、本質的に、ガラス繊維から構成され、ポリプロピレン成分A)が組成物b)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
充填剤B)が、本質的に、鉱質充填剤であり、ポリプロピレン成分A)が組成物a)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
射出成形、押出又は熱成形により物品を製造するための請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項11】
濃厚物としての請求項1に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2010−513634(P2010−513634A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541996(P2009−541996)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063823
【国際公開番号】WO2008/074713
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(506126071)バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (138)
【Fターム(参考)】