説明

充填物容器反転装置

【課題】充填物が粘着性の低いバラ物であって、回転速度を上げても、充填物が容器から飛び出すことがなく、容器の損傷、騒音の問題が生じない充填物容器反転装置を提供する。
【解決手段】間欠回転する主回転軸7に、二本の支軸9、10を自転可能に挿入支持し、一対の挟持部材16、17が支軸に取付けられている。支軸内を摺動軸12が挿通され、挟持部材開閉カム25により挟持部材を開閉する。挟持部材は挟持停止位置で容器を挟持する。主回転軸が回転し、支軸も一緒に公転する。支軸に取付けられたカムレバー35上のカムローラ36が溝カム37のカム溝38に嵌っている。反転停止位置の前後でカム溝の幅が大きくなっており、カムローラがそこに位置すると、支軸は自転する。位置調節可能なストッパ機構45により、挟持部材は反転停止位置に停止させられる。挟持位置へ戻る途中で挟持部材は開かれ、空容器を空容器搬出装置へ引き渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は袋詰め包装機等に使用される充填物容器反転装置に関する。さらに詳細にいえば、食品などを包装袋等の包装容器に包装する際に、包装容器に充填する充填物を収納した容器を正立状態から倒立状態に反転し、容器内の充填物を下方に配置した包装容器に向けて落下させて充填する充填物容器反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等を自動包装する際に、包装容器に充填する食品等充填物を所定量収納した容器を順次供給し、この容器を正立状態で保持部材で保持し、その保持した状態で保持部材と共に容器を所定の回転中心周りに垂直面内で回転させることにより容器を倒立状態に反転させ、容器内の充填物を下方に配置した包装容器内へ落下させ、充填することが行われている。この種の充填物容器反転装置の例が、例えば特開平8−282602号公報に記載されている。
【0003】
この公報に記載された反転装置においては、容器を正立状態で反転装置の容器収容部に配置し、この反転装置を回転軸周りに180度回転させて容器を反転させ、その位置で一端反転装置を停止して容器を下方に落下させる。容器は下方に配置した容器受け止めテーブルに衝突して受止められ、中の充填物を下方へ排出するようになっている。容器を保持する手段としてはこの他に、例えば一対の接離可能な挟持部材により容器の外周面或いは上下端を挟持する方法などがあるが、いずれもその保持部材或いは挟持部材をある軸心周りに回転させることにより容器を反転させている。また、充填物の容器からの排出についても、特開平8−282602同様に、容器を放出して何らかのストッパに衝突させ、その衝撃を利用して充填物を排出するようになっているものが多い。また、反転して停止したときに容器を放出せず、停止の衝撃で充填物を容器から排出するタイプもあるが、このタイプでも排出後容器を下方へ落下させ、ストッパで受け止め、回収するようになっている。
【0004】
ところで、この種の反転装置においては、その保持部材などの回転速度をどのように設定するかが問題となる。すなわち、回転速度が低いと、回転途中で容器の口側が下に傾いた段階で中の充填物がこぼれてしまう現象が起きる。これは特に充填物がいわゆるバラものと称する固形物の場合に生じ易く、充填物の量が多くなると顕著になる。これを防止するため、及び作業効率を高めるために回転速度を高めると、今度は、大きな遠心力の作用により容器内に収納した充填物が回転途中で容器から回転軌跡接線方向へ飛出してしまうという現象が起きる。また、高速化に伴う弊害が他にもある。すなわち、回転速度を高めればそれだけ容器がストッパに衝突する際の衝撃が大きくなり、容器が欠けるなどしてその欠けらが包装容器内に混入すると言う問題である。また、衝突による騒音の問題も大きい。
【0005】
また、実用新案登録第2539246号では、先端に容器を保持したアームを180度回転させた位置で急停止し、慣性を利用して容器内から充填物を放出するようにしているが、充填物が固形物の場合、上記特開平8−282602号と同じ問題を生じる。そしてさらに、充填物が粘性を有する物の場合に高速化すると、アーム停止時に充填物が真下に落下せず、むしろアームの回転軌跡に沿った方向へ放出される傾向が見られ、その為ガイド側壁に充填物が付着するなどの問題を生じていた。
【0006】
【特許文献1】特開平8−282602号公報
【特許文献2】実用新案登録第2539246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、容器を反転させるための保持部材の回転速度を高くしても、容器内部の充填物が途中で飛び出すことがなく、処理能力を向上できる反転装置を提供しようとするものである。また、容器を直接ストッパに衝突させずに充填物を容器から排出させる構成を併せて採用することにより、高速化に伴って従来生じていた、容器の欠損、或いは騒音発生の問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明者は、上記従来の問題点のうち、容器からの充填物の飛び出しの問題は、従来においては、保持位置に位置した容器に対し、容器保持部材の回転中心位置が容器の中心と同じ高さ位置に設定されている点に着目し、これに対して、保持位置に位置した容器に対し、容器保持部材の回転中心位置が容器の中心位置より高くなるように設定することにより解決されることを見出した。また、容器の欠損、騒音の問題は、容器を反転した位置で放出落下させず、保持部材が元の、次の容器を受入れる位置へ復帰する工程の途中で容器搬出装置へ引渡すようにすることにより解決することとした。
【0009】
具体的には、上記課題を解決するために本発明は、充填する充填物を収納した有底円筒容器を正立状態から略倒立状態に反転し、容器内の充填物を下方に配置した包装容器に向けて落下させて充填する充填物容器反転装置において、保持位置に供給された前記容器を保持し、所定の回転中心周りに垂直面内で回転する容器保持部材を備え、前記回転中心の位置を、前記保持位置に位置した前記容器の中心の高さ位置より上となるように設定した、充填物容器反転装置を提供する。
【0010】
これにより、反転中における容器或いは容器内の充填物に作用する遠心力の作用方向が、容器の移動方向に対して斜め後方へ向く方向となり、充填物を容器の底側へ付勢する力として作用し、これにより充填物の飛び出しが防止できる。従って、充填物が粘着性の低い所謂バラ物であっても、従来なら反転途中で充填物が飛出してしまうような高速の回転速度での作業も可能となり、必要に応じてさらなる高速化も可能となる。
【0011】
ある実施の形態においては、その保持部材は、互いに向かって接離可能で、前記容器を挟持して保持可能な一対の挟持部材からなっている。そしてその充填物容器反転装置は、反転手段と、反転停止位置調節手段と、空容器搬出手段と、挟持部材開閉手段とを備えている。
【0012】
その反転手段は、前記の回転中心周りに回転可能な主回転部材を備え、該主回転部材を一定の方向に間欠回転し、第1と第2の位置で停止させる回転手段と、該回転手段に取付けられた前記の挟持部材とを備え、前記挟持部材は、前記主回転部材が前記第1と第2の位置に停止したときにそれぞれ、前記正立状態で供給された容器を挟持できる挟持停止位置と、前記容器を略倒立させた状態で保持する反転停止位置とに停止するようになっている。
【0013】
反転停止位置調節手段は、前記挟持部材の前記反転停止位置を調節する。
【0014】
空容器搬出手段は、前記挟持部材が前記反転停止位置から前記挟持停止位置へ復帰する途中に設けられた空容器放出位置に配置され、充填物が排出された空容器を受入れ、後工程へ搬送する。
【0015】
挟持部材開閉手段は、前記挟持停止位置において前記挟持部材を閉じて容器を挟持させ、前記空容器放出位置で前記挟持部材を開いて空容器を空容器搬出手段へ向けて放出する。
【0016】
上記の構成を備えるので、容器を挟持部材で挟持して回転し、容器を反転させて停止する反転停止位置で慣性力を利用して容器内の充填物を排出し、反転後も空容器をそのまま挟持部材で挟持し、挟持停止位置へ復帰する途中において容器搬出手段に向けて放出するので、従来の如く容器とストッパ板との直接の衝突がなく、包装容器内への異物混入、作業環境の悪化の問題が生じない。
【0017】
また、反転停止位置調節手段により反転停止位置を任意に調節できるので、充填物の性状、充填量、処理速度などに応じて反転停止位置を調節し、充填物が確実に真下の包装容器内へ落下するようにできる。
【0018】
ある実施の形態では、主回転部材は180度ずつ一方向に間欠回転する主回転軸からなり、前記回転手段はさらに、前記主回転軸により前記主回転軸と軸方向平行に支持され、且つ自己の軸心周りで、初期位置と回動位置との間で往復回動可能とされた支軸を備えている。そして、前記充填物容器反転装置はさらに、前記支軸を回転させる支軸回転手段を備え、前記反転停止位置調節手段は、前記支軸の前記回動位置を調節し、前記一対の挟持部材は前記支軸の一端に取り付けられている。
【0019】
上記構成においては、支軸回転手段が支軸を回転させて主回転軸との回転方向での相対位置を変更するようになっているので、挟持部材を二組設け、これを反転手段により180度づつ間欠回転させる場合でも、挟持停止位置を一定にしたまま、反転停止位置を変更することができる。
【0020】
また、反転中に支軸を回転させる、その回転の態様を適宜に設定することにより、例えば反転初期には容器を余り傾けず、反転の終期に一気に反転をさせるなど、反転中の容器の傾き状態を、充填物の種類、性状、量並びに反転速度に応じて、途中で容器内から充填物が飛び出さないように設定することができる。
【0021】
他の実施の形態では、前記支軸は中空状に形成され、前記挟持部材開閉装置は、前記支軸の中空部に軸方向移動自在に挿入され、一端において前記挟持部材に連結された摺動軸を備え、前記挟持部材は前記摺動軸の軸方向移動に連動して開閉するようになっている。 上記構成によれば、摺動軸が支軸内に配置されているので、装置の反転機構周辺のコンパクト化が図れ、清掃性も向上する。
【0022】
さらに他の実施の形態では、前記支軸回転手段は、前記主回転軸の軸心を中心として固定配置された溝カムと、前記支軸の他端に固定されたレバーと、該レバーに装着され、前記溝カムに形成された溝内を転動するカムローラとを備え、前記溝カムの溝の幅は、前記支軸の回動位置に対応する位置の前後所定の範囲で、少なくとも内径が該溝の他の部分より小さく形成されて前記ローラの直径より幅が大きくなっており、前記反転停止位置調節手段は、前記反転停止位置において前記レバーに当接して位置決めするストッパーと、該ストッパーの位置を調節するストッパー位置調節手段とを備えている。
【0023】
上記構成によれば、ストッパーの位置を調整するだけで反転停止位置を変更でき、反転停止位置を変更しても挟持停止位置は変わらないため、調整作業が容易に行える。
【0024】
さらに他の実施の形態では、前記支軸は前記主回転軸の軸心を対称軸として対称に二本設けられ、それぞれに前記一対の挟持部材が設けられている。これにより、装置の処理能力を上げることができる。
【発明の効果】
【0025】
上記の通り本発明によれば、充填物が粘着性が低い所謂バラ物の場合に、高い回転速度で回転させても回転中の容器から充填物が飛び出すのを防止でき、処理能力の向上を図ることが可能となる。従来は、比較的に量の多いバラ物の場合、どのような回転速度でも充填物のこぼれ或いは飛び出しが生じ、充填が不可能であったが、そのように量の多いバラ物の充填も本発明によれば確実に行える。また、使用中における容器の破損を防止でき、包装容器内への異物の混入を防止できるとともに、騒音の発生も低減でき、作業環境を良好にできる。また、充填物が反転位置で確実に真下の包装容器内へ落下するようにできる。その為の調節も容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る充填物容器反転装置1(以下単に「装置1」という)を示す、一部を断面とした正面図、図2は平面断面図、図3は一部を断面とした側面図、図4は要部の背面図である。なお、本実施の形態では、後述するように、容器Yを挟持して反転させる機構が二組設けられている。
【0027】
装置1は機台2を備え、機台2の上にはスタンド3が立設されて、その上に概略箱型のフレーム4が固定して取り付けられている。フレーム4には2個の垂直な壁部分が、図2においてフレーム4の下側の部分で上下に、平行に形成され、主回転軸7の支持部5、6となっている。主回転軸7は、両端に配された軸受け8、8を介して支持されている。主回転軸7には、その中心を挟んで左右対称の位置に貫通孔が形成され、それぞれに支軸9、10が挿通され、それぞれ主回転軸7の端部に配された軸受け11を介して回転可能に支持されている。(説明の便宜上、図2に示された状態で左側に示されたものを第1の支軸9、右側に示されたものを第2の支軸10とするが、区別の必要がない場合、或いは明らかな場合は単に支軸9、或いは支軸10という。)支軸9、10とそれらに付属する部材及びその構成は同じであるので、以下主として、支軸9とそれに関連する部材についてのみ説明する。なお、図において支軸9及びそれに関連した部材は容器Yを挟持可能な挟持停止位置に、支軸10とそれに関連した部材は容器Yを略倒立状態に反転させた位置である反転停止位置にある。容器Yは、本実施の形態では有底円筒形の容器であり、供給コンベア71により順次図示の位置へ供給される。
【0028】
支軸9には貫通孔が形成され、その貫通孔に摺動軸12が挿通されている。摺動軸12は軸方向移動は可能であるが、回転はできないようになっている。摺動軸12の一端側(図2において下側)は支軸9から突出し、その突出した部分には、支軸9の端部に形成されたフランジ部9aに固着された挟持部材支持ブロック13の基部に形成された円筒部14が嵌っている。支持ブロック13は、二股部15を備え、その先端部には、それぞれ支点軸16a、17aと一体に回転する左挟持部材16と右挟持部材17とが取り付けられている。
【0029】
摺動軸12の挟持部材支持ブロック13の円筒部14から突出した端部にはリンク連結部材18が固定して取付けられいる。そして円筒部14の下面側においてその連結部材18にリンク18aの一端が回動自在に取付けられ(図2において第2の支軸10側参照)、リンク18aの他端には、右挟持部材17の連結用アーム部17bの端部が回動自在に連結されている。右挟持部材17の連結用アーム部17bに略直交する方向に伸びて形成された係合用アーム部17cには係合ピン19が植えられ、それに左挟持部材16の係合用アーム部16bに形成された長孔16cが嵌り、両挟持部材16、17間で運動を伝達するようになっている。
【0030】
摺動軸12の挟持部材支持ブロック13の円筒部14内に位置する部分に径の大きくなったバネ受け部12aが形成され、この受け部12aと支持ブロック13の円筒部14端部内面との間に圧縮バネ20が配設されている。従って、左右挟持部材16、17を閉じる方向に付勢している。
【0031】
摺動軸12の反対側の端部には、取付け軸22を介してローラ21が取り付けられている。そしてこのローラ21に対して、取付用ブラケット23を介してフレーム4に取付けられたエアーシリンダ24のロッドの先端に固定して取付けられた挟持部材開閉カム25が配置されている。開閉カム25は略半円環状の部材であり(図4参照)、ローラ21に向い合う面は、平坦部25aと、端部に向かってローラ21から遠去かる方向に傾斜する傾斜部25bとからなっている(図2、4参照、図示の状態で第1の支軸9側のローラ21が平坦部25aに載っており、第2支軸10側のローラ21はカム25から外れている)。主回転軸7が停止し、第1の支軸9及びその摺動軸12が図2の位置にあるときに、エアシリンダ24が作動してそのロッドが引っ込み、カム25を後退させると、挟持部材16、17は閉じて容器Yを挟持する。そして主回転軸が回転を開始し(本実施の形態では図1において時計方向、図4において反時計方向に回転する)、第1支軸9側のローラ21がカム25から外れると、エアシリンダ4が逆方向に作動し、カムを元の位置に戻す。そして、後述するように、主回転軸7が容器Yを反転させた反転停止位置で停止(図において第2の支軸10がその位置にある)した後、挟持停止位置へ復帰すべく同方向へ回転を再開すると、その途中でローラ21がカム25の傾斜部25bに載り、次いで平端部25aに載り、挟持部材16、17は再度開かれる。これについては再度後述する。
【0032】
次に、容器Yを反転させる機構について説明する。符号31はフレーム4の主回転軸支持部6に取付けられたモータである(図2参照)。モータ31の出力軸32は支持部6を貫通して伸び、その先端には支持部5、6の間に位置する駆動ギヤ33が固定されている。この駆動ギヤ33は、前述の主回転軸7に固定された被動ギヤ34に噛合っている。本実施の形態では、モータ31は同一方向に間欠回転し、主回転軸7を180度づつ、図1において時計回り、図4において反時計周りに回転させる。その際、支軸9、10も一体に主回転軸7の軸芯周りに公転することとなる。従って、支軸9、10に取付けられた挟持部材16、17に挟持された容器Yも主回転軸7の軸芯を中心として回転する。なお、図1において明らかなように、主回転軸7の軸心すなわち挟持部材16、17の回転中心は、挟持停止位置に供給された正立した容器の中心の高さ位置より高い位置に位置している。これについては再度後述する。
【0033】
図2において主回転軸7から上側に突出した支軸9、10の端部には、それぞれカムレバー35がその一端部において固定して取付けられている(図4参照)。そしてその他端部には、カムローラ36が取り付けられている。そして、これらのカムローラ36に対応して1個の溝カム37が主回転軸支持部6に固定されている。溝カム37にはカムローラ36がその中に嵌って転動する溝38が形成されている。そして、溝38の内側壁39、外側壁40が、主回転軸7の軸心を中心とする同心円となっていて、その部分での溝38の幅がカムローラ36の直径に略対応した寸法となっている均一部38aと、幅が大きくなった一部の拡大部38bとからなっている。すなわち、内側壁39は、同心円部39aと、図4において左上側から下側の部分にかけての、反時計方向周りで径が次第に小さくなり、又次第に大きくなる変位部39bとを備えている。また、外側壁40は、同心円部40aと、上側で次第に径が大きくなって再び小さくなる変位部40bとを備えている。従ってカムローラ36が均一部38aに位置している間は支軸9、10は自転できないこととなるが、拡大部38bではそれが可能となる。
【0034】
そして、図4において、第2の支軸10に取付けられたカムレバー35のカムローラ36が取り付けられている側の端部に対応して、このカムレバー35従って第2の支軸10側に取り付けられている挟持部材16、17の停止位置すなわち反転停止位置を調節するためのストッパ機構45が設けられている。
【0035】
図4に加え、図5及び6をも参照しながら説明すると、図5はストッパ機構45の詳細を示す平面図、図6はその右側面図である。符号46はストッパ機構45のレールであり、フレーム4の主回転軸支持部6に固定されている。レール46にはスライド部材47が図4、5において左右方向に移動可能に取り付けられている。スライド部材47上にはスライドプレート48が一体に固定され、このスライドプレート48には、図5において左側端部に支持軸49によりストッパローラ50が取り付けられ、その右側には後述のショックアブソーバ52に当接する当接部51が立設されている。一方当接部51に対応させて、ショックアブソーバ52が取付けブラケット54を介して主回転軸支持部6に取り付けられている。そして、その当接軸53にスライドプレート48の当接部51が当接するようになっている。なお、このショックアブソーバ52の位置は当接軸53の軸方向に調節可能となっている。
【0036】
図1等に図示の状態から主回転軸7が回転を開始すると、第1の支軸9は、最初のうちはそれに取付けられたカムレバー35上のカムローラ36が溝カム37の溝38の幅が均一な部分を転動するので、自転することはできず、主回転軸7と一体に主回転軸7の軸心の周りを回転(公転)するのみである。そして、カムローラ36が溝38の外側壁40の変位部40bの部分、さらに内側壁の変位部分39bの部分に至ると溝38の幅がカムローラ36の径より大きくなるが、支軸9に係る負荷の為、カムローラ36が内側壁39b上を転動する形で移動し、その際カムレバー35及び支軸9はその軸周りに図4において時計方向へ自転する。すなわち、カムレバー35とそれに取付けられた挟持部材16、17は主回転軸7に対して僅かに遅れたような状態で回動する。そして主回転軸7が180度回転して停止すると、慣性で挟持部材16、17が運動をそのまま続けることによりカムレバー35と支軸9とは今度は反時計方向へ自転する。そしてカムレバー35のカムローラ36が取付けられている側の端部が前述のストッパローラ50に衝突し、ショックアブソーバ52により衝撃を吸収されながら、カムレバー35が、従って支軸9が停止する。図1乃至4における第2の支軸10とそれに取り付けられた部材がその状態に対応している。そしてこの時に、容器Yは図1に示されるように略反転した状態で急停止し、中の充填物を下方のガイド筒56内へ放出する。この時図示の様に、容器Yは完全に倒立した状態とはなっていない。これは、従来技術の説明において言及した、容器Y内部の充填物が容器Yの急停止の際に放出される方向を考慮したものである。この放出方向は、前述のストッパ機構45のショックアブソーバ52の位置を調節して挟持部材16、17の最終停止位置すなわち反転停止位置を調節することにより、最適な状態を得ることが可能である。
【0037】
次に、所定のタイミングで主回転軸7が再度同じ方向へ回転を再開し、図中で反転停止位置にある第2の支軸10が、第1の支軸9が位置する前述の挟持停止位置へ復帰する動作を開始する。主回転軸7が回転するにつれて、最初はカムレバー35がストッパローラ50を介してショックアブソーバ52を押すような状態で支軸10が主回転軸7と一緒に回動し、カムレバー35がストッパローラ50との係合を外れる。そして、溝カム37の溝38の内側壁39の変位部39bの径が漸次大きくなる部分をカムローラ36が転動することにより、支軸10は先と反対方向へ所定角度自転し、支軸10と主回転軸7との位置関係は元の状態に戻る。
【0038】
一方で、この復帰工程において主回転軸7が回転すると、前述の摺動軸12に取付けたローラ21が、これも前述した挟持部材開閉カム25の傾斜部25bに載り、次いで所定の回転位置で平坦部25aへ乗り上げて挟持部材16、17を開き、挟持していた容器Yを放出するようになっている。この位置が容器放出位置であり、ここには、空となった容器Yを受入れ、後工程へ搬送する容器搬出装置61が配置されている(図1、3参照)。なお、この容器Yを放出する動作は、主回転軸7が回転を続けたまま行われる。
【0039】
容器搬出装置61は、空容器回収コンベア62を備え、その受入れ側端部と、ガイド筒56に形成された挟持部材16、17に挟持された容器Yの通過が可能な切欠き56aとの間に伸びる容器回収ガイド63がブラケット64によりスタンド3に取り付けられている。挟持部材16、17が開いて放出された空の容器Yは空容器回収ガイド63の上に受止められ、コンベア62の上に移動し、ガイド棒65によりガイドされながら後工程へ搬送される。主回転軸7はそのまま回転を続け、180度回転して停止し、挟持部材16、17は、開いた状態で挟持停止位置に復帰する。
【0040】
ここで図7を参照して、前述した主回転軸7の軸心すなわち挟持部材16、17の回転中心が、挟持停止位置に供給された正立した容器の中心の高さ位置より高い位置に位置している点について、図7を参照して詳述する。図は、同じ挟持停止位置に供給された容器Yに対して、従来の反転装置で採用されていた挟持部材の回転中心をO’、本発明での回転中心をOで示し、それぞれの場合の容器Yの回転の状態を本発明の場合を実線で、従来の場合を二点鎖線で示している。そして、それぞれの場合に作用する遠心力を矢印V,V’でそれぞれ示している。
【0041】
図から明らかなように、従来の場合には容器Y’を回転させた際に容器Y’に、従って内部の充填物に作用する遠心力V’の作用方向が容器Y’の移動方向に対して直交する方向であるのに対し、本実施の形態においては容器Yの移動方向に対して斜め後方へ向う方向となる。すなわち、この遠心力Vは、容器Y内の充填物を容器Yの回転中心より遠い側の側壁に向けて押しつけると共に、底部側へ付勢する作用をも果たしている。すなわち、容器Y内で充填物は容器Yの移動方向と反対方向へ押しつけられるので、回転中に容器Yから飛び出すことがない。なお、図1、7に示す状態より主回転軸7の位置をさらに高い位置とすれば、遠心力Vの作用方向は図7図中でさらに左側へ傾き、充填物を容器Yの底部側へ押し付ける傾向はさらに強まる。
【0042】
上記の実施の形態では容器Yを保持する部材は容器Yの外周を挟持する挟持部材16、17として説明したが、容器の上下端部を挟持するタイプでも良い。また、一対の挟持部材で挟持する構成に限定されるものでもなく、例えば従来例として説明した特開平8−282602号に開示されたような反転装置(保持部材)でも良い。
【0043】
なお、本実施の形態ではモータ31の回転速度は一動作の間にその速度が2段に変化するようになっている。すなわち、空となった容器Yを余りに高速状態で放出することには問題が生じるので、その放出が完了するまでの段階は比較的に低速とし、放出後に高速に変え、これにより反転停止位置での容器Yからの充填物の排出も確実、完全に行うようにしている。
【0044】
上記の実施の形態では主回転軸に2本の支軸を設けて二組の挟持部材を使用したが、一組の挟持部材を使用する際には、主回転軸に直接挟持部材を取付けるようにすることができる。その際、モータとしてはサーボモータを使用し、それにより挟持停止位置から反転停止位置までの回転角度、反転停止位置から挟持停止位置までの復帰回転角度を適宜に調節するようにすれば、上記した実施の形態で使用したストッパ機構を用いる必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の具体的実施の形態に係る充填物容器反転装置の一部断面とした正面図。
【図2】一部断面とした平面図。
【図3】一部断面とした右側面図。
【図4】要部の背面図。
【図5】ストッパ機構の平面図
【図6】ストッパ機構の要部右側面図。
【図7】容器の回転中心の高さ位置と容器の中心の高さ位置との関係を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1:充填容器反転装置 7:主回転軸 9:第1支軸 10:第2支軸
12:摺動軸 16:左挟持部材 17:右挟持部材 24:エアシリンダ
25:挟持部材開閉カム 31:モータ 33:駆動ギヤ 34:被動ギヤ
35:カムレバー 36:カムローラ 37:溝カム 45:ストッパ機構
52:ショックアブソーバ 56:ガイド筒 61:空容器搬出装置
63:コンベア 63:空容器回収ガイド



【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填する充填物を収納した有底円筒容器を正立状態から略倒立状態に反転し、容器内の充填物を下方に配置した包装容器に向けて落下させて充填する充填物容器反転装置において、
保持位置に供給された前記容器を保持し、所定の回転中心周りに垂直面内で回転する容器保持部材を備え、前記回転中心の位置を、前記保持位置に位置した前記容器の中心の高さ位置より上となるように設定した、充填物容器反転装置。
【請求項2】
請求項1記載の充填物容器反転装置において、前記保持部材は、互いに向かって接離可能で、前記容器を挟持して保持可能な一対の挟持部材からなり、
前記装置は、前記回転中心周りに回転可能な主回転部材を備え、該主回転部材を一定の方向に間欠回転し、第1と第2の位置で停止させる回転手段と、該回転手段に取付けられた前記挟持部材とを備え、前記挟持部材は、前記主回転部材が前記第1と第2の位置に停止したときにそれぞれ、前記正立状態で供給された容器を挟持できる挟持停止位置と、前記容器を略倒立させた状態で保持する反転停止位置とに停止する、反転手段と、
前記挟持部材の前記反転停止位置を調節する反転停止位置調節手段と、
前記挟持部材が前記反転停止位置から前記挟持停止位置へ復帰する途中に設けられた空容器放出位置に配置され、充填物が排出された空容器を受入れ、後工程へ搬送する空容器搬出手段と、
前記挟持停止位置において前記挟持部材を閉じて容器を挟持させ、前記空容器放出位置で前記挟持部材を開いて空容器を空容器搬出手段へ向けて放出する挟持部材開閉装置とを備えてなる、充填物容器反転装置。
【請求項3】
請求項2記載の充填物容器反転装置において、前記主回転部材は180度ずつ一方向に間欠回転する主回転軸からなり、前記回転手段はさらに、前記主回転軸により前記主回転軸と軸方向平行に支持され、且つ自己の軸心周りで、初期位置と回動位置との間で往復回動可能とされた支軸を備え、前記充填物容器反転装置はさらに、前記支軸を回転させる支軸回転手段を備え、前記反転停止位置調節手段は、前記支軸の前記回動位置を調節し、前記一対の挟持部材は前記支軸の一端に取り付けられている、充填物容器反転装置。
【請求項4】
請求項3記載の充填物容器反転装置において、前記支軸は中空状に形成され、前記挟持部材開閉装置は、前記支軸の中空部に軸方向移動自在に挿入され、一端において前記挟持部材に連結された摺動軸を備え、前記挟持部材は前記摺動軸の軸方向移動に連動して開閉する、充填物容器反転装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の充填物容器反転装置において、前記支軸回転手段は、前記主回転軸の軸心を中心として固定配置された溝カムと、前記支軸の他端に固定されたレバーと、該レバーに装着され、前記溝カムに形成された溝内を転動するカムローラとを備え、前記溝カムの溝の幅は、前記支軸の回動位置に対応する位置の前後所定の範囲で、少なくとも内径が該溝の他の部分より小さく形成されて前記ローラの直径より幅が大きくなっており、前記反転停止位置調節手段は、前記反転停止位置において前記レバーに当接して位置決めするストッパーと、該ストッパーの位置を調節するストッパー位置調節手段とを備えている、充填物容器反転装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1に記載の充填物容器反転装置において、前記支軸は前記主回転軸の軸心を対称軸として対称に二本設けられ、それぞれに前記一対の挟持部材が設けられている、充填物容器反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−27656(P2006−27656A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208361(P2004−208361)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000222727)東洋自動機株式会社 (91)
【Fターム(参考)】