説明

充填物導入装置

【課題】電源等の動力源を用いることなく袋体に充填物を導出することができ、人手を介することなく充填物導入装置から袋体を離間することのできる填物導入装置を提供する。
【解決手段】袋体の導入口に挿入して粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物を袋体に導入するための充填物導入装置であって、円筒体と、この円筒体の上端部から延設され上方に向って拡径し投入された粒状体を円筒体に案内する案内部と、円筒体又は案内部の外周に設けられる掛着部とを有し、掛着部は、棒状の天秤と、この天秤の一の端部に設けられるフックと、天秤の回動を可能にする枢軸部と、枢軸部を支持する支持部と、天秤の他の端部と支持部を接続して天秤を牽引する弾性体とを具備し、フックは、袋体の重力によって天秤が枢軸部を基点に回動して、孔又はループの掛着を解除することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、土嚢袋のような大きな詰込袋や容器に、粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物を詰め込む際に使用する充填物導入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、袋体に粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物等の充填物を詰め込むには、袋体を開口保持した状態で、この開口から充填物をこぼさないように袋体に導入しなければならず、袋体の数が多い場合は、この導入作業は煩雑であった。
そこで、このような課題に対処するため、袋体への充填物の導入を容易にするための装置がいくつか開示されている。
【0003】
以下、図11を参照しながら、特許文献1に開示された技術について説明する。図11は従来技術に係る粒状物詰込装置の外形図である。
特許文献1に係る「粒状物詰込装置」は、構造が簡単で強度が高く、詰込み時に土等をこぼすことがなく、さらに詰込み完了後に装置から容易に土嚢等を取出すことができるよう構成されるものである。
図11に示すように、粒状物詰込装置100は、鉄製で円筒状の筒体101の外周面上端部から、三本の鉄製の支柱108が等間隔で垂下設され、筒体101の下端と地面との間および筒体101と支柱108との間のそれぞれに、図示しない詰込袋を筒体101の下方から該筒体101の外周面を覆う状態で装着するに十分な空隙H(200〜300mm程度)を形成している。また、筒体101の略下半部には、格子状の格子部103が設けられ、その上端部には上方に向って拡径するテーパー状のガイド部102が設けられている。なお、支柱108の上端はガイド部102に固定されており、ガイド部102の外周面に図示しない詰込袋の上端部を掛止するロック104が径方向に移動自在に設けられている。このロック104は、ガイド部102に等間隔で四箇所に設けられる補強板105のうち対向位置する二つに調整長孔106が穿設され、その調整長孔106にロック104の上端部をボルト締めして取付けられるよう構成され、また、ガイド部102の下端部分には吊りフック107が設けられており、この吊りフック107に図示しないワイヤーを引っ掛けて当該粒状物詰込装置100を建設機械で吊り下げて移動することができる。
上記構成の粒状物詰込装置100を用いて詰込袋に粒状体を詰め込むには、まず、開口した詰込袋を空間Hに配置し、この詰込袋でガイド部102及び格子部103を被覆するように詰込袋の上端部を引き上げ、詰込袋の上端部をロック104に掛止して詰込袋を装着する、この状態でガイド部102の開口から重機等のバケットで粒状体を投入すると、粒状体は筒体101に延設される格子部103から詰込袋の内部へと導出され、詰込袋は粒状体で満たされる。この状態で、吊りフック107にワイヤーを掛着し粒状物詰込装置100を建設機械で上方に静かに引き上げると、筒体101に一旦保持された粒状体も詰込袋内に導出され、土嚢の製造と設置を同時に完了することができる。なお、補強板105には調製長孔106が設けられ、ロック104は調製長孔106内をスライドすることでガイド部102の径方向に自在に移動することができるため、詰込袋の開口径が異なる場合でも粒状物詰込装置100に詰込袋を装着することができる。
このように、粒状物詰込装置100を用いることによれば、あらかじめ粒状物詰込装置100を所望の土嚢設置場所に設置し、そこで詰込袋を装着して土を導入し、クレーンや重機で粒状物詰込装置100のみを吊上げて移動させることで、詰込袋への土の導入と、土嚢の設置を同時に完了することができる。従って、1トン前後におよぶ土嚢自体を、土の導入作業後に移動させる必要がない。このため、土嚢の移動時に重機がバランスを崩して転倒する危険性が少なく、大重量の土嚢の製造と設置が容易になる。
【0004】
また、特許文献2には、「土嚢用袋詰め装置」という名称で、袋体への土砂の供給を自動化した土嚢の袋詰め装置に係る発明が開示されている。
特許文献2にかかる「土嚢用袋詰め装置」は、上部開口部を投入口とする漏斗状形状の土砂槽が枠組み体によって所定高さ位置に支持され、その底部開口部には、略水平に配置されるスクリューコンベアが連設され、このスクリューコンベアの土砂導出端側には、土砂を導出するための短筒状の土砂導出口が下向きに設けられており、さらに、この土砂導出口の周囲には巾着紐付き袋体用掛止部が設けられている。なお、従来技術にかかる「土嚢用袋詰め装置」のスクリューコンベアは、スクリューコンベアの下部に設けられる駆動原、例えば、電動式モータ等により駆動され、スイッチのオン操作により土砂導出口から一定量の土砂が自動排出されるよう構成されている。
このような、「土嚢用袋詰め装置」を用いて土嚢袋に土砂を袋詰めするには、まず、巾着紐付き袋体を土砂導出口を被覆するように装着し、駆動源の電源をオンにして所望の量の土砂を自動排出させた後、土砂導出口から土砂を収容した巾着紐付き袋体を取外して袋詰め作業が完了する。
上記構成の「土嚢用袋詰め装置」を用いることによれば、従来、主に手作業で行っていた土嚢の詰込作業を半自動化することができ、人件費や作業時間を節約することができ、さらに作業効率も高まる。また、「土嚢用袋詰め装置」を大型化すれば、大重量の土嚢の袋詰め作業も半自動化することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−348011号公報
【特許文献2】特表2001−253402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に開示されるような従来の「粒状物詰込装置」は、ロック104に掛止される詰込袋の端部を自動的に開放する機構を備えていないので、粒状物詰込装置100を建設機械で吊り下げて移動する際に必ず、作業者がロック104に掛止される詰込袋の端部を外す必要があり、土嚢の設置面が平滑でない場合、粒状物詰込装置100が転倒して作業者が怪我をする恐れがあるという課題があった。
また、詰込袋の端部は単にロック104に掛止されているだけなので、粒状体の詰込作業中に詰込袋に導入される粒状体の荷重で、詰込袋がロック104から外れてしまう可能性もあった。
【0007】
また、特許文献2に開示されるような従来の「土嚢用袋詰め装置」は、土砂の袋詰め作業を半自動化できるものの、作業時には駆動原を作動させるために電源もしくはその他の動力源が必要となり、電源設備等の整備が不十分な作業現場での袋詰め作業には適さないという課題があった。
また、土砂を保持し導出する土砂槽が装置の上部に設置されているため、多量の土砂を投入した場合に、装置全体の重心が高くなり装置が転倒する恐れもあった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、その目的は、電源等の動力源を用いることなく袋体に充填物を導入することができ、人手を介することなく袋体と充填物導入装置を離間させることのできる填物導入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の発明である充填物導入装置は、袋体の導入口に挿入して粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物を袋体に導入するための充填物導入装置であって、円筒体と、この円筒体の上端部から延設され上方に向って拡径し投入された粒状体を円筒体に案内する案内部と、円筒体又は案内部の外周に設けられる掛着部とを有し、掛着部は、棒状の天秤と、この天秤の一の端部に設けられ鉤状に湾曲して袋体の孔又はループを掛着して袋体を開口保持するフックと、天秤の回動を可能にする枢軸部と、円筒体又は案内部の外周に突設され枢軸部を支持する支持部と、天秤の他の端部と円筒体の外周又は案内部の外周又は支持部を接続して天秤を牽引する弾性体とを具備し、前記フックは、袋体の重力によって天秤が枢軸部を基軸に回動することで、孔又はループの掛着を解除することを特徴とするものである。
上記構成の充填物導入装置において案内部は、案内部の上部開口から投入される充填物を円筒体に誘導するという作用を有する。また、円筒体は案内部から誘導された充填物を一時収容し、充填物導入装置を袋体から離間する際に、一時収容した充填物を袋体に導出するという作用を有する。さらに、天秤の一の端部に設けられるフックは袋体の孔又はループを掛着させるという作用を有し、天秤の枢軸部は、天秤の回動を可能にするという作用を有する。また、天秤を牽引する弾性体は、天秤が回動するのを妨げるという作用を有する。そして、支持部は天秤の枢軸部を支持し、天秤の一端部を牽引する弾性体を掛着させるという作用を有する。
【0010】
さらに、請求項2に記載の発明である充填物導入装置は、請求項1に記載される充填物導入装置であって、掛着部は、天秤の枢軸部を基軸とした回動を妨げる止め具を具備することを特徴とするものである。
上記構成の填物導入装置においては、請求項1の発明の作用に加えて、掛着部に設けられる止め具が、天秤の回動を妨げるという作用を有する。
【0011】
また、請求項3に記載の発明である充填物導入装置は、請求項1又は請求項2に記載される充填物導入装置であって、掛着部の下方の円筒体又は案内部の外周に突設され、袋体の孔又はループを仮掛する補助掛着部を有することを特徴とするものである。
上記構成の填物導入装置においては、袋体の装着時に孔又はループを補助掛着部に仮掛を可能にするという作用を有する。
【0012】
最後に、請求項4に記載の発明である充填物導入装置は、請求項1乃至請求項3に記載される充填物導入装置であって、弾性体の弾性力は、袋体にかかる重力よりも大きく、袋体及びその内部に導入される充填物にかかる重力の和よりも小さいことを特徴とするものである。
上記構成の填物導入装置においては、フックにかかる重力が袋体のみの場合、弾性体は天秤の回動を妨げ、袋体に所望の量の充填物が導入され、フックに袋体と充填物の重力が足し合わされた重力がかかった場合には天秤の回動を可能にするという作用を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の填物導入装置においては、フックに袋体の孔又はループを掛着することができるので、袋体の導入口に円筒体を挿入したまま袋体の導入口を開口保持することができる。また、案内部が設けられることで、充填物を投入する際に円筒体の外部に充填物がこぼれる心配がない。さらに、充填物は案内部及び円筒体の内部空間に一時収容された後、袋体へと導出されるので、案内部及び円筒体により構成される空間に収容される充填物の量を確認することで、袋体に導入される充填物の量の多少を判断することができる。このため、袋体に収容できない量の充填物を案内部に投入してしまう恐れがなく、充填物を袋体に導出した後に袋体内の充填物の量を調整する必要がない。従って、充填作業の効率が高まる。
また、充填物の導入作業を、詰込済み袋体を載置したい場所で行い、その後その場所で袋体から充填物導入装置を離間させることによれば、大重量となった袋体を移動させる必要がなく、大重量の袋体を移動させる際の事故を未然に防止することができ、袋体を移動させる手間も省くことができる。
さらに、フックに袋体及び充填物の重力が作用した際に、天秤が回動して孔又はループの掛着を解除することができるので、人手に頼ることなく袋体の孔又はループを掛着部から取外すことができる。このため、掛着部から孔又はループを取り外す手間が省け、袋体から充填物導入装置を離間させる際に、袋体の周辺に作業者を待機させる必要が無く、万一、充填物導入装置の離間作業中に充填物を収容した充填物導入装置が転倒した場合でも安全である。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の充填物導入装置においては、天秤の回動を妨げる止め具を有することで、何らかの衝撃で袋体の孔又はループの掛着が不意に解除される心配がなく、袋体の装着作業や充填物の投入作業を確実にかつ安全に行うことができる。
【0015】
さらに、本発明の請求項3に記載の充填物導入装置においては、袋体の孔又はループを補助掛着部に仮掛けすることで、袋体の掛着されない他のループを作業者が持つことで袋体の導入口を容易に開口させることができる。このため、開口した導入口に円筒体の下端をスムースに挿入することができ、充填物導入装置が大型の場合でも容易に袋体を装着することができる。また、充填物導入装置を吊上げた状態のまま袋体を装着することができるので、充填作業の作業効率が高まる。
【0016】
最後に、本発明の請求項4に記載の充填物導入装置においては、袋体に充填物が導入されてフックに袋体の重力を超える重力がかかった場合、つまり、フックに袋体の重力と充填物の重力を足し合せた重力がかかった場合にはじめて袋体の孔又はループが掛着部から外れるので、充填物導入装置を袋体から離間する時にのみ、孔又はループを掛着部から外すことができ、充填物の投入作業時には、孔又はループを掛着部に確実に掛着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の第1の形態に係る充填物導入装置について、図1乃至図5を参照しながら説明する。(請求項1及び請求項4に対応)
【0018】
図1(a)は本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置の外形図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着した際の外形図である。なお、ここでは、本実施の形態に係る充填物導入装置1aを用いて大型の土嚢を製造する場合を例に挙げて説明するが、本実施の形態に係る充填物導入装置1aは土嚢の製造にのみ用いられるものではなく、土砂以外の粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物を袋体に導入する場合にも利用することができる。この場合、本実施の形態に係る充填物導入装置1aに装着する土嚢袋6の材質は、充填物の特性に応じて適宜選択されて良い。また、充填物導入装置1aを挿入するための導入口と、充填物導入装置1aに土嚢袋6を掛着するための孔又はループを有するよう構成されるものであれば土嚢袋6は、たとえば、一定の形状を有する容器でもよい。
図1(a),(b)に示すように、本実施の形態に係る充填物導入装置1aは、円筒体2の上端部に、投入される土砂を円筒体2に案内する案内部3が延設され、この案内部3の外周には掛着部4aが設けられており、この掛着部4aで土嚢袋6のループ7aを掛着して土嚢袋6の導入口(開口6a)を開口保持できるよう構成されている。なお、掛着部4aの詳細については後述する。
土嚢袋6を図1(b)に示すような状態で充填物導入装置1aに装着するには、まず、土嚢袋6の導入口(開口6a)を大きく広げて所望の場所に平置し、開口6aの上方から土嚢袋6上に、充填物導入装置1aを静置する。続いて、ループ7aを上方に引き上げて土嚢袋6で円筒体2を被覆しながらこのループ7aを掛着部4aに掛着すればよい。
また、案内部3の開口3aには、充填物導入装置1aを土嚢袋6から離間させる際に、充填物導入装置1aを吊上げられるよう、ワイヤ(図示せず)を掛着するための吊上げフック5が設けられている。
本実施の形態に係る充填物導入装置1aによれば、上述の手順に従って図1(b)に示すように土嚢袋6を充填物導入装置1aに装着し、図中の符号Aで示される方向から充填物である土砂を投入して円筒体2及び案内部3を土砂で満たし、吊上げフック5にワイヤを掛着して、このワイヤを重機等で引き上げると、充填物導入装置1aが上昇して、円筒体2及び案内部3に収容された土砂が土嚢袋6に導出されると同時に土嚢袋6のループ7aが掛着部4aから外れて、大型の土嚢の製造と設置を同時に完了することができるのである。土嚢袋6に土砂が導入される仕組みについての詳細は後述する。
【0019】
また、本実施の形態に係る充填物導入装置1aに袋体を装着できるよう、土嚢袋6の開口6aの近傍にはループ7aを設けたが、必ずしもループ7aである必要はなく、例えば、開口6aの近傍に孔を穿設してその孔の周囲をハトメ等で補強しても良い。さらに、このループ7aは、単にループ状の紐を開口6aに縫い付けても良いし、或いは、土嚢袋6にかかる大荷重を支持できるよう、紐状体を土嚢袋6の側面から底面に掛け渡すように縫い付け、開口6aに達した紐状体の端々を互いに縫い合わせてループを形成してもよい。すなわち、土嚢袋6に収容される充填物の重力がループ7aに作用した場合でも、ループ7a又は孔が引きちぎれることがないよう構成されるものであればその形態は問題としない。
【0020】
次に、掛着部4aの構造ついて図2を参照しながら詳細に説明する。
図2(a)は本発明の第1の実施の形態に係る掛着部の部分拡大図であり、(b)はその平面図である。なお、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図2(a),(b)に示すように、掛着部4aは、案内部3に突設される支持部11の端部に、棒状の天秤8が枢軸部9で回動可能に取り付けられており、この天秤8の一端部には鉤状に湾曲するフック8aが形成され、土嚢袋のループ7aを掛着することができる。また、天秤8の他の端部8bにはツルマキバネ状の弾性体10が掛着され、この弾性体10の端部8bに掛着されない他端部は支持部11に掛着されており、弾性体10の弾性力で天秤8の回動を制限している。
また、図2(b)に示すように、本実施の形態に係る支持部11は、主軸11aの先端部分が2つのアーム11b,11cとなるように分岐し、この分岐したアーム11b,11cの先端で天秤8の枢軸部9を挟持している。そして、枢軸9aが、アーム11b,枢軸部9,アーム11cの順に貫通してこれらを軸支しているのである。また、案内部3と支持部11がなす角には、補強のための補強板13が設けられている。
なお、本実施の形態においては、先端部が分岐する支持部11を用いたが、支持部11は、必ずしも図示されるような形態にする必要はなく、例えば、主軸11aを設けることなくアーム11b,11cをそのまま延ばして案内部3の外周に取り付けてもよいし、このアーム11b,11cは平板状でも良い。この場合、アーム11b,11cを一体に連結するような連結棒を水平方向に設けることによれば、アーム11b,11cの強度が高まり、天秤8と支持部11を掛架する弾性体10の掛着が可能になる。
【0021】
次に、図2(a)を参照しながら、天秤8が回動する仕組みについて説明する。
いま、天秤8の端部8bと支持部11を掛架する弾性体10の弾性力は、土嚢袋のみの重力よりも大きく、土嚢袋と充填物の重力の和よりも小さくなるように設定されている。
図2(a)において実線で示すように、充填物が導入されていない土嚢袋のループ7aをフック8aに掛着する場合、弾性体10の弾性力が土嚢袋の重力よりも大きいため天秤8の回動は妨げられる。
他方、土嚢袋に充填物が導入され、フック8aに、土嚢袋及び充填物の重力を足し合わせた力が作用した場合、すなわち、図中の符号Cで示す方向に土嚢袋の重力よりも大きい力が作用した場合、弾性体10の弾性力は、土嚢袋と充填物の重力を合算した力よりも小さくなる。このため、弾性体10が伸びて、図中の破線で示すように、天秤8は図中の符号Dで示す方向に回動するのである。この結果、ループ7aはフック8aから滑り落ちて、掛着部4aからループ7aが外れるのである。
【0022】
なお、本実施の形態においては、案内部3の外周に、掛着部4aを2つ設けた場合を例に挙げて説明しているが、掛着部4aの数は必ずしもこの数に限定されるものではなく、必要に応じて増やしても良い。なお、掛着部4aの数を増やす場合にはループ7aの数も掛着部4aの数に合わせて増やす必要がある。
また、本実施の形態においては、弾性体10としてツルマキバネを用いたが、必ずしもツルマキバネを用いる必要はなく、一定条件下における天秤8の回動を制限できるよう構成されるものであればその構成は問題としない。たとえば、弾性体10としてゴムを用いてもよい。
さらに、掛着部4aは円筒体2に設けても良い。また、天秤8の端部8bに掛着されない弾性体10の端部を必ずしも支持部11に掛着する必要はなく、たとえば、掛着部4aが案内部3に設けられる場合には、案内部3の側面に掛着してもよいし、掛着部4aが円筒体2に設けられる場合には、円筒体2の側面或いは案内部3の側面のいずれかに掛着してもよい。このように、端部8bに掛着されない弾性体10の端部を案内部3又は円筒体2に掛着させることにより、支持部11にかかる重力による負荷を軽減して、支持部11の破損を防止することができる。
【0023】
続いて、本実施の形態に係る充填物導入装置1aにより土嚢袋に土砂が導入される仕組みについて図3乃至図5を参照しながら詳細に説明する。
図3乃至図5は、本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置の使用状態図である。なお、円筒体2や土嚢袋6の内部の様子が理解されやすいよう、図3乃至図5は、図1(b)中のF−F線における矢視断面図として示した。また、図1及び図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
まず、上述の手順に従って、図1(b)に示すように、土嚢袋6を設置面15に平置して充填物導入装置1aに装着する。なお、本実施の形態に係る円筒体2及び案内部3の容積の和は、土嚢袋6の内部空間18と略一致するように構成されている。また、吊上げフック5には充填物導入装置1aを吊上げるためのワイヤ14が掛着されている。
そして、図3に示すように、重機17等を用いて案内部3の開口3aから土砂16を投入し、円筒体2及び案内部3を土砂16で満たす。
この状態では、充填物である土砂16が土嚢袋6の内部空間18に導入されていないので、天秤8のフック8aに作用する力は土嚢袋6の重力のみである。このため、弾性体10の弾性力により天秤8の回動が妨げられるので、ループ7aは掛着部4aに掛着されたままである。
次に、図4に示すように、ワイヤ14の吊上げフック5に掛着されない端部(ループ12)を重機17又はクレーン等に掛着して、充填物導入装置1aを図中の符号Gで示す方向に静かに引き上げると、円筒体2の下端である導出口19から土砂16が土嚢袋6の内部空間18へと導入される。このとき、フック8aには土嚢袋6と土砂16の重力を合算した力が作用するため、弾性体10が伸びて天秤8が回動し、ループ7aが掛着部4aから外れるのである。
そして、図5に示すように、さらに充填物導入装置1aを上方へと吊上げると、充填物導入装置1aは土嚢袋6から完全に離間され、土嚢の設置と土嚢袋6への土砂の導入作業が同時に完了するのである。
なお、本実施の形態においては、弾性体10の弾性力を土嚢袋6のみの重力よりも大きく、土嚢袋6と充填物の一定の重さによる重力の和よりも小さくなるように設定してもよい。すなわち、充填物の投入量が予め決められている場合には、その投入量の重量による重力と土嚢袋6による重力の和とバランスする弾性力を備えた弾性体10を用いることによれば、天秤8が回動した時点で投入を停止すると決められた投入量が土嚢袋6に充填されたことになり、重量測定の必要がなく作業効率を高めることが可能である。充填物の量に合わせてそれぞれの弾性力を備えた複数の弾性体10を具備しておくとよい。
【0024】
このように、本実施の形態に係る充填物導入装置1aを用いることによれば、適量の土砂16を土嚢袋6に迅速に導入することができる。
また、充填物導入装置1aに係る掛着部4aの天秤8を回動可能に構成することで、たとえば、図4に示すように、土嚢袋6の開口6aが高い位置にあり作業者の手が容易に届かない場合であっても、人手を要すことなくループ7aを掛着部4aから外すことができる。
このため、土嚢袋6への土砂16の導入作業及び、設置作業を重機17のみで行うことができ、万一、土砂16を収容した充填物導入装置1aが倒れた場合でも、作業者に被害が及ぶ心配が無い。
また、本実施の形態に係る充填物導入装置1aは構造が簡単で、土砂16等の充填物を導出する際の動力も不要であるため、動力源の確保が難しい作業現場や、被災地等における充填物の詰め込み作業に適している。
【0025】
以下に本発明の第2の形態に係る充填物導入装置について、図6乃至図10を参照しながら説明する。(請求項2乃至請求項4に対応)
【0026】
図6(a)は本発明の第2の実施の形態に係る部分拡大図であり、(b)は図6(a)中の符号Eからみた平面図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本発明の第2の実施の形態にかかる充填物導入装置1bは、本発明の第1の実施の形態にかかる充填物導入装置1aの構成に加え、掛着部4bに天秤8の不意の回動を防止するための止め具と、充填物導入装置1bを吊上げた状態での土嚢袋6の装着を容易にする補助掛着部26を有するものである。
図6(a),(b)に示すように、本発明の第2の実施の形態にかかる充填物導入装置1bの掛着部4bは、図2(a),(b)に示す第1の実施の形態にかかる枢軸9aの両端を保持するアーム11b,11cの代わりに、2枚の平板状の支持部20a,20bが枢軸9aの両端を保持している。また、枢軸9aの両端を保持する支持部20a,20bは2枚の平板が案内部3の外側面に平行に突設されており、この支持部20a,20bを連結する連結棒22に弾性体10の端部が掛着されている。
なお、第1の実施の形態に係る充填物導入装置1aの場合と同様に、本実施の形態に係る充填物導入装置1bの場合においても、天秤8の端部8bに掛着されない弾性体10の端部を案内部3又は円筒体2に掛着させてもよく、この場合、支持部20a,20bにかかる重力による負荷を軽減して、支持部20a,20bの破損を防止することができる。
【0027】
さらに、本実施の形態にかかる掛着部4bは、支持部20a,20bと天秤8の重なり部分には、これらを貫通する孔21a〜21cからなる連通孔21が穿設され、この連通孔21にリング24とピン25により構成されるロックピン23を図中の符号Iで示される方向から挿通することで、天秤8の不意の回動が防止されるよう構成されている。
なお、ロックピン23を挿通する連通孔21は、必ずしも支持部20a,20bと天秤8の重なり部分に穿設する必要はなく、回動する天秤8の軌道上で、天秤8の回動を妨げることのできる位置であれば、支持部20a,20bの重なり部分に連通孔21を穿設してもよい。また、ロックピン23の装着は土嚢袋6の前に行われることが好ましい。
上述のような、天秤8の不意の回動を防止する止め具の構成は、必ずしも上述の形態に限定されるものではなく、例えば、第1の実施の形態に係るアーム11b,11cの上端側又は、第2の実施の形態に係る支持部20a,20bの上端側に断面略コの字形のストッパを跨設し、このストッパの端部を枢軸部9とは異なる枢軸で軸支して、ストッパを回動させて、アーム11b,11cの上面側における天秤8の軌道上又は、支持部20a,20bの上面側における天秤8の軌道上に配置することで天秤8の回動を妨げるよう構成してもよい。このように止め具の構成は、天秤8の不意の回動を防止できるものであれば、その形態は問題としない。
また、掛着部4bの下方には、図示しない土嚢袋6のループ7bを仮掛けするための補助掛着部26が突設されている。この補助掛着部26の使用方法については後述する。
【0028】
続いて、図7乃至図10を参照しながら充填物導入装置を吊上げた状態のまま土嚢袋を装着する手順について説明する。
図7乃至図10はいずれも、本発明の第2の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着する様子を示す概念図である。なお、図1乃至図6に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
また、本実施の形態においても、充填物導入装置1bに、掛着部4b及び補助掛着部26をそれぞれ2つずつ設けた場合を例に挙げて説明するが、掛着部4b及び補助掛着部26の数は、図示される数に限定されるものではなく、必要に応じて増やしても良い。特に、補助掛着部26aは最低1箇所に設けられていれば良く、図示されるように必ずしも2箇所に突設する必要はない。
本実施の形態に係る充填物導入装置1bを吊り上げた状態で土嚢袋6を装着するには、図7に示すように、まず、補助掛着部26bに土嚢袋6のループ7b2を仮掛けし、次いで、図8に示すように土嚢袋6の開口6aを広げて円筒体2の導出口19部分を被覆しながら、反対側のループ7b1を掛着部4b1のフック8a1に掛着する。そして、図9に示すように、補助掛着部26bに仮掛けしたループ7b2を掛着部4b2のフック8a2に掛着し、最後に、図10に示すように土嚢袋6を装着した充填物導入装置1bを設置面15に静かに下ろせばよい。
このような補助掛着部26を備えない場合、たとえば、本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置1aの場合には、土嚢袋6の開口6aを広げて一旦平置し、その上から充填物導入装置1aを土嚢袋6上に載置してから土嚢袋6のループ7aを掛着部4aに掛着するか、或いは、充填物導入装置1aを吊上げた状態で土嚢袋6を装着する場合には、片方のループ7aを掛着部4aに係止し、その後、開口6aを広げて導出口19を被覆し、他方のループ7aをもう一方の掛着部4aに掛着する必要があり、開口6aを大きく構成する必要があった。
このように、前者の場合は、土嚢袋6を平置する手間がかかり煩雑であった。また、後者の場合には、開口6aが大きい土嚢袋6を用いるため、土嚢袋6に充填物を充填する最中や、充填物を充填した後に充填物が開口6aからこぼれ落ちる心配があった。
そこで、充填物導入装置1bのように補助掛着部26を設けることで、充填物導入装置1bに土嚢袋6を装着する際に、円筒体2の導出口19の近傍に開口6aを配置することができ、このため、導出口19の挿入が容易となる。従って、開口6aの大きさも導出口19を挿入できる程度の比較的小さいものにすることができるのである。
また、本実施の形態においては、充填物導入装置1bに装着する土嚢袋6のループ7bは開口6aと離れて位置に配置され、ループ7bと開口6aは紐27で連結されている。このように土嚢袋6を構成することで、ループ7bをフック8aに掛着するために最低限必要な大きさにすることができるので、土嚢袋6の構成を一層コンパクトにすることができる。
【0029】
上述の手順に従って充填物導入装置1bに土嚢袋6を装着した後は、本発明の第1の実施の形態の場合と同様に、図3乃至図5に示す手順に従って充填物である土砂16を土嚢袋6の内部空間18へと導入すればよい。そして、円筒体2及び案内部3への土砂16の導入が終わった際に、ロックピン23を取外すことで、充填物導入装置1bを吊上げた場合にのみ、ループ7bの掛着を解除することができるのである。
従って、万一土砂16の投入時に、充填物導入装置1bが吊上げられたままの状態であり、土砂16の投入時の衝撃がループ7bを通じて掛着部4bに伝達された場合であっても、ループ7bの掛着が不意に解除される心配がなく、充填物の導入作業を一層安全に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る充填物導入装置は、電源等の動力源を用いることなく袋体に充填物を導入することができ、人手を介することなく充填物導入装置から袋体を離間できる填物導入装置を提供するものである。特に袋詰め作業を必要とする粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物の流通の分野において利用の可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置の外形図であり、(b)は本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着した際の外形図である。
【図2】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る掛着部の部分拡大図であり、(b)はその平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置の使用状態図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置の使用状態図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る充填物導入装置の使用状態図である。
【図6】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る部分拡大図であり、(b)は図6(a)中の符号Eからみた平面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着する様子を示す概念図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着する様子を示す概念図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着する様子を示す概念図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る充填物導入装置に土嚢袋を装着する様子を示す概念図である。
【図11】従来技術に係る粒状物詰込装置の外形図である。
【符号の説明】
【0032】
1a,1b…充填物導入装置 2…円筒体 3…案内部 3a…開口 4a,4b,4b1,4b2…掛着部 5…吊上げフック 6…土嚢袋 6a…開口 7a,7b,7b1,7b2…ループ 8…天秤 8a,8a1,8a2…フック 8b…端部 9…枢軸部 9a…枢軸 10…弾性体 11…支持部 11a…主軸 11b,11c…アーム 12…ループ 13…補強板 14…ワイヤ 15…設置面 16…土砂 17…重機 18…内部空間 19…導出口 20,20a,20b…支持部 21,21a〜21c…孔 22…連結棒 23…ロックピン 24…リング 25…ピン 26,26a,26b…補助掛着部 27…紐 100…粒状物詰込装置 101…筒体 102…ガイド部 103…格子部 104…ロック 105…補強板 106…調整長孔 107…吊りフック 108…支柱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体の導入口に挿入して粒状物や粉状物などの固体、ゲル状物あるいは液状物を前記袋体に導入するための充填物導入装置であって、
円筒体と、この円筒体の上端部から延設され上方に向って拡径し投入された粒状体を前記円筒体に案内する案内部と、前記円筒体又は前記案内部の外周に設けられる掛着部とを有し、
前記掛着部は、棒状の天秤と、この天秤の一の端部に設けられ鉤状に湾曲して前記袋体の孔又はループを掛着して前記袋体を開口保持するフックと、前記天秤の回動を可能にする枢軸部と、前記円筒体又は案内部の外周に突設され前記枢軸部を支持する支持部と、前記天秤の他の端部と前記円筒体の外周又は前記案内部の外周又は前記支持部を接続して前記天秤を牽引する弾性体とを具備し、
前記フックは、前記袋体の重力によって前記天秤が枢軸部を基軸に回動することで、前記孔又はループの掛着を解除することを特徴とする充填物導入装置。
【請求項2】
前記掛着部は、前記天秤の枢軸部を基軸とした回動を妨げる止め具を具備することを特徴とする請求項1に記載の充填物導入装置。
【請求項3】
前記掛着部の下方の前記円筒体又は案内部の外周に突設され、前記袋体の孔又はループを仮掛する補助掛着部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の充填物導入装置。
【請求項4】
前記弾性体の弾性力は、前記袋体にかかる重力よりも大きく、前記袋体及びその内部に導入される充填物にかかる重力の和よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の充填物導入装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−315722(P2006−315722A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−140455(P2005−140455)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(505174747)
【Fターム(参考)】