説明

充填管のための導電システム

本発明は、燃料タンクの充填管のための導電システムに関する。本発明による導電システムは、導電性プラスチックで作られ且つ変形可能な歯(2)を有する充填ボウルと、導電性プラスチックで作られ且つ充填ボウルと直接接触した充填ノズルガイドと、金属ヘッド(7)とを有する。充填ボウル及び充填ノズルガイドは、それらが燃料タンク充填管(5)に装着されたときに歯(2)が金属ヘッド(7)と半径方向に永続的に接触するように、金属ヘッド(7)に挿入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填管のための導電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料システムは、通常、燃料タンク及び充填管を有している。充填管は、その入口オリフィス(充填管ヘッドとも称する)に挿入された燃料(充填)ノズルからユーザが燃料タンクを充填することを可能にする。
【0003】
プラスチック管を有するタンクの場合、プラスチック管の表面上への静電荷の蓄積及びそれと関連した危険性を防止するために、プラスチックを少なくとも部分的に導電性にし且つ/又は車両シャーシに対する静電荷を除去することが既知のやり方である。この目的のために、通常、少なくとも1つの金属部品が存在し、この金属部品は、その一方の側のプラスチックと他方の側の車両シャーシとを直接又は間接的に接触させる。
【0004】
このように、プラスチック製の充填管ヘッドは、通常、充填管に圧入された金属ボウルと充填管ヘッドに装着された金属ヘッドとを有するシステムを有し、金属ヘッドは、車両シャーシとの接触を確立する機能を有している。システムはまた、充填ノズルのためのガイドを有し、このガイドは、通常、充填ボウルに挿入される1つの部品で作られ、その内面輪郭は、充填操作中の充填ノズルの位置決めを助ける。この部品は、プラスチックで作られてもよいし、金属で作られてもよい。
【0005】
充填管ヘッドが、上述したシステムを有する場合、金属ボウルは、通常、充填管ヘッドに設けられた方向決め部によって位置決めされる。
【0006】
ある従来技術設計において、充填ボウルは、金属ヘッドが充填管ヘッドの外面の回りに圧着されたときに金属ヘッドと軸線方向に接触する歯を有する。Oリングが、金属ヘッドとプラスチック充填管との間に置かれ、充填管と金属ヘッドとの間の周囲シールを構成する。
【0007】
かくして、充填操作中に発生する静電気のための導電経路が、ノズルから、ノズルガイド、充填ボウル、充填ボウルの歯、金属ヘッド、金属ヘッドに固定された金属突起を介して、車両シャーシまで確立される。
【0008】
このシステムの1つの問題は、管に成形上の欠陥がある場合に、充填ボウルが装着されると、充填ボウルの少なくとも1つの歯が、金属ヘッドと接触しない場合があることである。充填ボウルの表面上に蓄積する静電気は、導電経路がもはや連続していないので、導電性の車両シャーシに効率的に運び去られない。この設計の別の問題は、充填ボウルが、軽く且つ複雑な形状に形成するのが容易であるプラスチックではなく、金属製であることである。
【発明の開示】
【0009】
これらの問題を軽減して、充填管ヘッドへのボウルの装着を簡単にするために、本発明の主題は、燃料タンク充填管のための導電システムに関し、この導電システムは、導電プラスチックで作られ且つ変形可能な歯を有する充填ボウルと、導電プラスチックで作られ且つ充填ボウルと直接接触する充填ノズルガイドと、金属ヘッドとを有し、充填ボウル及び充填ノズルガイドは、それらが燃料タンク充填管に装着されたときに、歯が金属ヘッドと半径方向に永続的に接触するように、金属ヘッドに挿入されることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、上述した機能を有する充填ボウル及び充填ノズルガイドは、は、金属ヘッドに挿入され、実際には、歯の助けを借りて金属ヘッドの中に圧着され、換言すると、金属ヘッドは、これらの部品上に係合する。
【0011】
従って、本発明によると、充填ボウルは、その周囲に変形可能な歯を有し、この歯は、充填ボウル及び充填ノズルガイドが金属ヘッドに挿入されたときに変形し、例えば充填管ヘッドに成形上の欠陥がある場合であっても、金属ヘッドとの永続的な半径方向接触を付与すね。かくして、充填ノズルの中を通して注がれる燃料によって発生した任意の静電気は、充填ボウル、歯、車両のシャーシと直接接続した金属ヘッドを介して車体構造の中に運び去られる。
【0012】
本発明によると、充填ノズルガイドは、充填ボウルと直接接触し、即ち、充填ノズルガイドは、充填ボウルの中に又はその上に装着されるか、充填ボウルと共に1つの部品で作られるかのいずれかである。本発明によるシステムでは、充填ノズルのための充填ボウル及び充填ノズルガイドは、好ましくは、1つの部品ユニットを形成する。
【0013】
用語「プラスチック」は、少なくとも1つの合成樹脂ポリマーを含む任意の物質を意味する。
【0014】
任意の種類のプラスチックが適当である。特に適当なプラスチックは、熱可塑性プラスチックの分類から得られる。
【0015】
用語「熱可塑性材料」は、熱可塑性エラストマー及びその混合物を含む任意の熱可塑性ポリマーを意味する。用語「ポリマー」は、ホモポリマー及びコポリマー(特に、二成分元又は三成分コポリマー)の双方を意味する。そのようなコポリマーの例として、限定的ではないが、ランダムコポリマー、リニアブロックコポリマー、その他のブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーがある。
【0016】
融点が分解温度以下である任意の種類の熱可塑性ポリマー又はコポリマーが好適である。少なくとも10℃にわたって広がった融解範囲を有する合成熱可塑性材料が特に好適である。そのような材料の例には、分子量が多分散を示す材料が含まれる。
【0017】
特に、ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、ポリケトン、ポリアミド、及びそのコポリマーを使用することができる。ポリマー又はコポリマーの混合物が使用されてもよく、例えば、ポリマー材料と、無機充填剤又はフィラー、有機フィラー及び/又は天然フィラーの混合物が使用され、フィラーの例は、カーボン、塩及び他の無機誘導体、天然繊維及びポリマー繊維を含むが、これらに限定されるものではない。更に又、上記ポリマー又はコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、積層され且つ接合された層を有する多層構造を使用してもよい。
【0018】
より好ましくは、ボウル及びガイドユニットのプラスチックは、導電性の高密度ポリエチレン(HDPE)であり、即ち、この導電性の高密度ポリエチレンは、カーボンブラック又は炭素繊維等の導電性充填材料及び/又は導電性コーティングを含む。ボウル及びガイドユニットが1つの部品で作られるかどうかに応じて、この部品又はこれらの部品は、好ましくは、射出成形によって形成され、射出成形は、後述するように、ボウル及びガイドユニットを1つ又は2つ以上のインサートの上に重ね成形することを可能にし、インサートは、例えば、強化リングである。
【0019】
本発明によると、ボウル及びガイドユニットは、充填管に圧入される。充填管に対するボウル及びガイドユニットの軸方向及び回転方向の移動は、好ましくは、適切な設計によって防止される。例えば、歯に対応する凹所又は凹部(凹み部分)を充填管に設けることが有利であり、歯と凹み部分とを互いに作用させることにより、ボウル/ガイドユニットを充填管内で軸線方向に支持し且つその回転を防止することができる。従って、この変形例では、歯は、導電性(電荷の除去)及び取付けの二重の機能を有する。
【0020】
歯は、好ましくは、平坦であり、即ち、添付図面に示すように、歯は、薄く且つ細長い形状を有する。これらの歯は、好ましくは、ボウル/ガイドユニットの直径を、ボウル/ガイドユニットを収容するように設計された金属ヘッドの開口よりも大きくする。これが意味することは、ボウル/ガイドユニット寸法は、それらの組立て中にヘッドによって圧縮される寸法であり、かくして、部品の成形の品質(歪み、公差等)がどのようなものであっても、接触の永続性を確保する。本発明によるシステムに、組立体をシールするOリング等のシールを設けることが有利である。このシールは、好ましくは、システムを組立てたときに金属ヘッドによって圧縮される箇所に且つ充填管の上に配置される。シールを収容し且つ位置決めするための溝が充填管の上に設けられるのがよい。
【0021】
本発明の好ましい変形例において、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニットの周囲に金属リングが設けられ、それにより、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニットを設置したとき、金属リングは、充填管が経年効果により変形することを防止し且つ同じ理由でシールが劣化することを防止するのに十分な剛性支持を付与する。この金属リングは、充填ボウルの上に圧着されてもよいが、1つの組立て工程を省略するために、充填ボウルが金属リングの上に重ね成形されることが好ましい。特に、最も好ましくは、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニットを金属リングの上に重ね成形して1つの部品にすることである。本発明はまた、上述の導電システムを形成する法圃、即ち、組立てる方法に関する。本発明による方法は、充填管にシールを設ける工程と、1つの部品又は互いに組立てられた2つの部分から成り、且つ、変形可能な半径方向の歯を有する充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニットを、充填管に押し込む工程と、シール及び歯の両方を圧縮させると同時に、全体を金属ヘッドに圧入する工程とを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の範囲を制限することなく、図1及び図2は、本発明の特定的な実施形態を示している。
【0023】
図1は、1つの部品で生産された充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニット4を示し、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニット4のガイド1が充填ノズルを充填管ヘッド内に案内する。金属リング3が、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニット4の周囲に圧着されている。歯2が、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニット4の周囲に配置されている。
【0024】
図2は、充填管ヘッド5に装着されたシステムを示す。Oリング6が、充填管ヘッド5の周囲と金属ヘッド7との間で圧縮され、充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニット4が、充填管ヘッド5及び金属ヘッド7の内面に圧着され、歯2が、金属ヘッド7の内面に接触している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】充填ボウル及び充填ノズルガイドのユニットを示す図である。
【図2】充填管ヘッドに装着されたシステムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの充填管(5)のための導電システムであって、
導電性プラスチックで作られ且つ変形可能な歯(2)を有する充填ボウルと、
導電性プラスチックで作られ且つ前記充填ボウルと直接接触した充填ノズルガイドと、
金属ヘッド(7)と、を有し、
前記充填ボウル及び前記充填ノズルガイドは、それらが燃料タンク充填管(5)に装着されたときに前記歯(2)が前記金属ヘッド(7)と半径方向に永続的に接触するように、前記金属ヘッド(7)に挿入される、導電システム。
【請求項2】
前記充填ボウル及び前記充填ノズルガイドは、1つの部品ユニット(4)を構成する、請求項1に記載の導電システム。
【請求項3】
前記部品ユニット(4)の材料は、導電性高密度ポリエチレン(HDPE)である、請求項1又は2に記載の導電システム。
【請求項4】
前記部品ユニット(4)は、射出成形技術を用いて形成される、請求項2又は3に記載の導電システム。
【請求項5】
前記充填ボウル及び前記充填ノズルガイドのユニット(4)は、その周囲に金属リング(3)を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電システム。
【請求項6】
前記充填ボウル又は前記部品ユニット(4)は、前記金属リング(3)の上全体に成形される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電システム。
【請求項7】
前記充填管(5)は、前記歯(2)に対応する凹み部分を有し、前記凹み部分は、前記ボウル及びガイドユニット(4)を前記充填管(5)内に軸線方向に支持し、且つ、前記充填管(5)の回転を防止することができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電システム。
【請求項8】
前記歯(2)は、前記充填ボウル及び前記充填ガイドのユニット(4)の直径を、前記充填ボウル及び前記充填ノズルガイドのユニット(4)を収容するように設計された前記金属ヘッド(7)の開口よりも大きくする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電システム。
【請求項9】
シール(6)が、前記充填管(5)上に配置され、且つ、システムが組立てられたときに前記金属ヘッド(7)によって圧縮される位置に配置される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電システムを形成する方法であって、
充填管(5)にシール(6)を設ける工程と、
1つの部品又は互いに組立てられた2つの部分から成り、且つ、変形可能な半径方向の歯(2)を有する充填ボウル及び充填ガイドのユニット(4)を、前記充填管に押し込む工程と、
前記シール(6)及び前記歯(2)の両方を圧縮させると同時に、全体を金属ヘッド(7)に圧入する工程と、を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−535715(P2008−535715A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501322(P2008−501322)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060805
【国際公開番号】WO2006/097515
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(502294138)イネルジー オートモーティヴ システムズ リサーチ (41)
【Fターム(参考)】