説明

充填設備

【課題】 容器に充填する液体の量にばらつきのない充填設備を提供する。
【解決手段】 本発明は、容器に液体を充填する充填設備である。第1測定部3は、液体が充填されていない容器の空重量を測定する。複数の充填部4aは、第1測定部3によって空重量が測定された容器に液体を充填する。第2測定部7は、充填部4aによって液体が充填された容器の充填済み重量を測定する。検出器は、第1測定部3から第2測定部7に至る搬送経路10から容器が排斥されたことを検出する。算出部8は、第2測定部7から提供される充填済み重量に係る容器の空重量を、検出器の出力に基づいて、第1測定部3から連続的に提供される空重量の中から抽出し、当該容器についての充填済み重量と空重量とに基づいて当該容器への液体の充填量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に液体を充填する充填設備に関する。
【背景技術】
【0002】
樽等の容器にビール等の液体飲料を充填する場合、充填機(フィラー)が使用される。図6にビールを樽に充填する従来の工程を示す。まず外洗機1で樽の外表面を洗浄し、次いで内洗機2で樽の内部を洗浄する。洗浄された樽はフィラーと呼ばれる充填機4に搬送される。充填機4は、回転駆動される回転部材4bの周上に等ピッチで配置された複数の充填ヘッド4aを有し、各充填ヘッド4aより樽にビールが充填される。各充填ヘッド4aを流れるビールの量は、フィラー盤4cに入力された充填圧力、充填時間等の充填パラメータを変更することによって調節される。
【0003】
ビールが充填された樽は、充填機4の下流に配置された重量測定器7に送られ、樽毎に充填量が検査される。重量測定器7は、充填後の樽の重量を計測し、樽の平均空重量を加味することによってビールの充填量を検査する。重量測定器7によって充填不良と判断された樽は出荷に至る過程で排斥される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ビール等の容器として使用される樽は、樽が製造された時期、樽を製造したメーカー等によってばらつきが存在する。充填された樽の重量から樽の平均空重量を加味することによってビールの充填量を検査する従来の充填設備では、充填量にばらつきが生じていた。また、充填機に配置された多数の充填ヘッドの中に充填量の不良な充填ヘッドが存在していても、当該不良バルブを迅速に特定することができなかった。
【0005】
本発明は、容器に充填する液体の量にばらつきのない充填設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器に液体を充填する充填設備であって、液体が充填されていない容器の空重量を測定する第1測定部と、第1測定部によって空重量が測定された容器に液体を充填する複数の充填部と、充填部によって液体が充填された容器の充填済み重量を測定する第2測定部と、第1測定部から第2測定部に至る搬送経路から容器が排斥されたことを検出する検出器と、第2測定部から提供される充填済み重量に係る容器の空重量を、検出器の出力に基づいて、第1測定部から連続的に提供される空重量の中から抽出し、当該容器についての充填済み重量と空重量とに基づいて当該容器への液体の充填量を算出する算出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の実施形態によれば、充填設備は、容器のそれぞれについて、算出された充填量と予め定められた充填量の範囲とを比較し、算出された充填量が前記範囲の中にあるか否かを判定する判定部をさらに備えることが好ましい。判定部は、算出された充填量が前記範囲から外れていると判定した容器を容器の搬送経路から排斥することを指令することができる。
【0008】
本発明の実施形態によれば、複数の充填部は、充填設備に備えられた充填機の充填ヘッドであって、判定部は、算出された充填量が範囲から外れていると判定したとき、算出された充填量と範囲内の予め定められた最適の充填量とのずれ量に基づいて、外れていると判定された容器に液体を充填した充填ヘッドの充填パラメータを変更することを指令することができる。さらに、容器は樽であることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、容器に充填する液体の量にばらつきのない充填設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を用いて本発明の容器に液体を充填する充填設備の一実施形態を説明する。この実施形態では、液体はビールであり、液体を充填する容器は樽である。しかし、ワイン等ビール以外のアルコール飲料、酢、醤油等の調味料等さまざまな液体に対して本発明を適用しうる。また、容器も樽に限らず、ボトル等他の形態のものを使用しうる。
【0011】
新しい樽又は使用済みの樽は、まず外洗機1によってそれらの外表面が洗浄され、次いで内洗機2によって内部が洗浄される。洗浄された樽は、第1測定部としての空重量測定器3に搬送される。空重量測定器3の測定結果から空重量が所定の範囲内に無い樽、損傷のある樽は正規の搬送経路10から排斥され、退避経路10a1を介して回収される。このような正規の搬送経路から不良な樽を排斥することは「はね出し」と呼ばれる。
【0012】
空重量測定器3における樽を排斥する機構を図2によって説明する。空樽は図中において搬送経路10の左方から右方へと搬送される。搬送経路10の空重量測定器3より上流側と下流側には、搬送経路10から樽がはね出されたことを検出する検出器としてのセンサ11a1,11a1’が設置されている。空重量測定器3と下流側のセンサ11a2との間には、退避経路10a1が設けられている。樽の搬送速度は一定なので、問題のない樽は上流側センサ11a1を通過してから一定時間(例えば10〜15秒)内に下流側センサ11a1’を通過する。一方、空重量が所定の範囲内にない樽、損傷のある樽は、上流側センサ11a1を通過するが退避経路10a1に排斥されるので、一定時間内に下流側センサ11a1’を通過しない。したがって、上流側センサ11a1及び下流側センサ11a1’の出力結果から、空重量測定器3で排斥された樽の存在を検出することができる。
【0013】
空重量測定器3によって測定された空重量、空重量測定器3の上流,下流の設けられた一対の排斥を検出するセンサ11a1,11a1’の検出結果は後述する算出部8に送信される。
【0014】
空重量測定器3を通過した正常な空樽は充填機4に送られる。充填機4は、回転駆動される回転部材4bと、回転部材4bの周上に等ピッチで配置された複数の充填ヘッド4aと、充填機4の制御盤としてのフィラー盤4cとを含む。充填ヘッド4aは、空重量測定器3によって空重量が測定された樽に液体としてのビールを充填する充填部である。フィラー盤4cは、充填ヘッド4aそれぞれの充填圧力及び回転部材4bの回転速度を制御するとともに、充填ヘッド4aを介して充填されるビールの流量を確認する。
【0015】
図3に、ビールを樽に充填する場合の樽内の圧力及びビールの流量の変化を示す。初期充填の段階(T1)は、ビールの吹き出しを防止するための段階であり、樽内の圧力はP1と高いが流量は少ない。それに続く中間充填の段階(T2)では、予め設定された中間充填圧力P2に向けて樽内圧力が低下させるとともにビールの流量が増加させられる。高速充填の段階(T3)では、予め設定された高速充填圧力P3に向けて樽内圧力が低下させるとともにビールの流量がさらに増加させられる。高速充填の段階が過ぎると樽内圧力がP3に保持されつつ高流量でビールが充填される。最終段階(T4)では、樽内圧力が最終詰めきり圧力P4まで上昇させられる。
【0016】
充填機4の入口近傍及び出口近傍の搬送経路にも樽の存在を確認するためのセンサが11a2,11a2’が設置され、充填機4において樽が排斥されたか否かを検出可能に設けられている。充填機4は充填機4に取り込まれた樽にビールを充填する複数の充填ヘッド4aのそれぞれを識別可能に構成されている。
【0017】
充填機4の充填ヘッド4aによりビールが充填された樽は、充填機4の下流に配置されたサンプル容器判別器(サンプル樽判別器)5、反転機6へと送られる。サンプル樽判別器5は、樽に付されたマークによって通過する樽が、種々の検査等に使用されるためのサンプル樽か否かを判別し、サンプル樽を退避経路10a2に排斥する。反転機6は、それまでビールの充填口を下にして搬送されてきた樽を充填口が上方となるように180°反転させる装置である。反転機6でうまく反転されなかった樽は退避経路10a3に排斥される。サンプル樽判別器5、反転機6の上流側及び下流側に、空重量測定器3の周辺に設けたものと同様の一対のセンサが設けられ、排斥の有無が検出可能にされ、検出結果は算出部8に送信される。
【0018】
反転機6を通過した樽は、第2測定部としての、ビールが充填された樽の重量を測定する充填済み重量測定器7に搬送される。充填済み重量測定器7の測定結果は算出部8に送信される。充填済み重量測定器7を通過した樽は、搬送コンベア等の搬送経路10を通って出荷にまわされる。
【0019】
空重量測定器3から連続的に提供される樽の空重量、充填済み重量測定器7から提供される樽の充填済み重量、搬送経路10の各所におけるセンサ11の検出結果は算出部8に送られる。
【0020】
図4は、算出部8が重量測定器3,7から受信した樽の重量、センサ11から受信した排斥の有無に関するデータである。空重量測定器3に1番目に送られた樽の空重量は3964gであり、「通過判別=1」はその樽が空重量測定器3のところで排斥されなかったことを示す。3番目に空重量測定器3に送られた樽は、「通過判別=0」であるから、空重量測定器3のところで排斥されたことが分かる。同様に、ヘッドNo.16の充填ヘッドに入った樽は、「出口有無判別=0」であることから充填機4において抜き取られたことを示している。
【0021】
空重量測定器3で連続的に空重量が測定された10個の樽のうち、3番目及び8番目の樽は「通過判別=0」であることから排斥され、充填機4等搬送経路の下流側には搬送されていない。そこで、算出部8は、図5の(a)にように、3番目及び8番目の樽における空重量測定器の欄のデータを消去する。(b)では充填機4で排斥された「ヘッドNo.=16」でビールが充填された6番目の樽のデータを消去する。以下同様にして、(c)ではサンプル樽判別器5によって排斥された9番目の樽のデータを、(d)では反転機6によって排斥された4番目の樽のデータを消去する。
【0022】
このように、空重量に係る樽と充填済み重量に係る樽との同一性の判断が、樽にID番号が付与されていなくても、センサの排斥の有無に関する検出結果を利用して行いうる。
【0023】
(e)は、充填設備の充填済み重量測定器7に至る搬送経路において排斥されなかった樽のみについて空重量、充填済み重量、使用された充填ヘッドの番号を抽出したデータを示している。算出部8は、(e)のリストに残っている樽のそれぞれについて充填済み重量と空重量とに基づいてビールの充填量を算出する。
【0024】
判定部9は、(e)のリストに残っている樽のそれぞれについて、算出部8により算出されたビールの充填量と予め定められた充填量の範囲とを比較し、算出された充填量が前記範囲の中にあるか否かを判定する。予め定められる充填量の範囲は、最適充填量を中心とする許容可能な樽に充填すべきビールの量であり、上限閾値及び下限閾値を有する。したがって、算出された充填量が、上限閾値を超えるか下限閾値を下回るとき、判定部9は充填不良と判定する。逆に、算出された充填量が当該上限閾値と下限閾値との間であるとき、判定部9は充填正常であると判定する。
【0025】
判定部9は、充填不良と判定した樽を充填済み重量測定器7の下流側に設けられた排斥経路10a4へ排斥することを指令する。また、判定部9は、充填不良と判定したとき、算出された充填量と最適の充填量とのずれ量に基づいて当該充填不良を発生させた充填ヘッド4aの充填パラメータを変更することをフィラー盤4cに指令する。
【0026】
その結果、樽を識別するためのID番号を設けなくても、過充填、充填量不足といった充填不良の樽を容易に検出し、回収することができるとともに、充填状態が不良な充填ヘッドに対する手当てを迅速に行いうる。
【0027】
充填設備は、樽検査装置のテストのために使用されるテスト樽判別器を例えば反転機6と充填済み重量測定器7との間に備えることができる。その場合、テスト樽判別器がテスト樽であると判別する場合、充填済み重量測定器7の測定結果を算出部8に出力しないように設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る充填設備の一例を示す図。
【図2】容器のはね出しを検出する検出器の一例を示す図。
【図3】充填の際の充填圧力及び流量の推移を示す図。
【図4】算出部に送信されたデータを示す図。
【図5】算出部の処理を示す模式図。
【図6】従来の充填設備を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1:外洗機、2:内洗機、3:空重量測定器(第1測定部)、4:充填機、4a:充填ヘッド、4b:回転部材、4c:フィラー盤、5:サンプル樽判別器、6:反転機、7:充填済み重量測定器(第2測定部)、8:算出部、9:判定部、10:搬送経路、10a1〜4:退避経路、11a:センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に液体を充填する充填設備であって、
液体が充填されていない容器の空重量を測定する第1測定部と、
前記第1測定部によって空重量が測定された容器に液体を充填する複数の充填部と、
前記充填部によって液体が充填された容器の充填済み重量を測定する第2測定部と、
前記第1測定部から前記第2測定部に至る搬送経路から容器が排斥されたことを検出する検出器と、
前記第2測定部から提供される充填済み重量に係る容器の空重量を、前記検出器の出力に基づいて、前記第1測定部から連続的に提供される空重量の中から抽出し、当該容器についての充填済み重量と空重量とに基づいて当該容器への液体の充填量を算出する算出部と、
を備えることを特徴とする充填設備。
【請求項2】
前記容器のそれぞれについて、前記算出された充填量と予め定められた充填量の範囲とを比較し、前記算出された充填量が前記範囲の中にあるか否かを判定する判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の充填設備。
【請求項3】
前記判定部は、前記算出された充填量が前記範囲から外れていると判定した容器を容器の搬送経路から排斥することを指令することを特徴とする請求項2に記載の充填設備。
【請求項4】
前記複数の充填部は、前記充填設備に備えられた充填機の充填ヘッドであって、
前記判定部は、前記算出された充填量が前記範囲から外れていると判定したとき、前記算出された充填量と前記範囲内の予め定められた最適の充填量とのずれ量に基づいて、前記外れていると判定された容器に液体を充填した充填ヘッドの充填パラメータを変更することを指令することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の充填設備。
【請求項5】
前記容器は樽であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の充填設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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