説明

充填豆腐用容器

【課題】豆腐の取出しが容易な充填豆腐用容器を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂シートが熱成形されてなり、豆腐が収容される収容凹部と該収容凹部の開口縁から外側に延びるフランジ部とを有する充填豆腐用容器であって、前記収容凹部が、前記開口縁を画定する連続線の少なくとも1箇所において内側に突出する形状を有していることを特徴とする充填豆腐用容器を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートが熱成形されてなる充填豆腐用容器に関し、より詳しくは、豆腐が収容される収容凹部と該収容凹部の開口縁から外側に延びるフランジ部とを有している充填豆腐用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂シートを真空成形や圧空成形といった熱成形して充填豆腐用の樹脂製容器を作製することが行われている。
この種の充填豆腐用容器は、通常、豆乳と凝固剤とを含む液を収容するための収容凹部と該収容凹部の開口縁から外側に延びるフランジ部とを有しており、充填豆腐を作製するのに際しては、空気の混入を防止すべくフランジ部の上にまで溢れるようにして前記液を収容凹部に注ぎ入れ、該収容凹部の開口をシール材で覆って密封した後で、加熱処理が施されたりしている。
従って、出来上がった充填豆腐は、文字通り容器内に隙間なく豆腐が充填されており、該豆腐を充填豆腐用容器から取り出そうとした際に、収容凹部の底面部などにおいて負圧が作用して豆腐を取り出し難いという問題を有している。
【0003】
また、無理に取り出そうとすると豆腐が途中で割れて一部の豆腐が容器の底部に残ったまま取り出される結果になるおそれを有する。
このような問題を解消するためには、収容凹部の内面と豆腐との界面に隙間を設け、容器の奥底の方にまで空気が流入し易い状態にさせることが有効で、従来、爪楊枝や包丁の先端を容器と豆腐との界面に差し込んで豆腐を取り出すようなことが行われている。
しかし、そのような行為は煩雑であるばかりか確実性に欠け、豆腐が崩れることを十分に防止できるものではない。
【0004】
このような問題に対し、下記特許文献1においては、箱型の収容凹部の長手方向中央部となる位置において、該収容凹部を挟んで対向するようにフランジ部に線状切断部を設け、該切断部が対向する方向と直交する方向に容器を圧縮した際に、前記切断部を中心にして収容凹部の壁面が外側に広がるように折れ曲がる容器の利用が提案されている。
しかし、このような容器を利用する場合には、収容凹部の内面が豆腐から離れる方向に変形するものの豆腐自体にもこれに追従した変形を生じ易く、容器と豆腐との界面への空気の流入が十分になされ難いという問題を有する。
即ち、従来の充填豆腐用容器においては、豆腐を簡便に取り出すことが難しいという問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−247892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、豆腐の取出しが容易な充填豆腐用容器の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための充填豆腐用容器に係る本発明は、熱可塑性樹脂シートが熱成形されてなり、豆腐が収容される収容凹部と該収容凹部の開口縁から外側に延びるフランジ部とを有する充填豆腐用容器であって、前記収容凹部が、前記開口縁を画定する連続線の少なくとも1箇所において内側に突出する形状を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の充填豆腐用容器は、収容凹部が、その開口縁を画定する連続線の少なくとも1箇所において内側に突出する形状を有している。
即ち、この内側に突出している部分をさらに内側に進入させるように力を加えてやるとこの突出している部分の先端を中心にして熱可塑性樹脂シートが折れ曲がる方向に変形させることができる。
この時、この突出している部分の先端によって豆腐が収容凹部の中心側に変形を受けるとともにこの先端部分の左右においては熱可塑性樹脂シートの折れ曲がりによって収容凹部の内面が豆腐から離れる方向に移動する。
従って、突出する形状を有している部分において豆腐を押す作用と豆腐から離れる作用とが働き、豆腐と収容凹部の内面との間に隙間が形成され易く、空気を容器奥底まで導入させて当該充填豆腐用容器から豆腐を容易に取り出し得る。
即ち、本発明によれば、豆腐の取出しが容易な充填豆腐用容器を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係る充填豆腐用容器を4個連接させた連設体の(a)平面図、(b)正面図、及び、(c)側面図。
【図2】他実施形態に係る充填豆腐用容器を3個連接させた連設体の(a)平面図、(b)正面図、及び、(c)側面図。
【図3】充填豆腐用容器から豆腐を取り出す動作を示した概略平面図。
【図4】図3の部分拡大図。
【図5】他実施形態に係る充填豆腐用容器の(a)平面図、(b)側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図を参照しつつ充填豆腐を例に説明する。
図1は、4個の充填豆腐用容器1をミシン目Aによって個別に分断可能に連設させてなる連設体100の(a)平面図、(b)正面図、及び、(c)側面図であり、図2は、3個の充填豆腐用容器1をミシン目Aによって個別に分断可能に連設させてなる連設体100の(a)平面図、(b)正面図、及び、(c)側面図である。
また、図3は、充填豆腐用容器から豆腐を取り出す動作を示した概略平面図であり、図4は、図3の部分拡大図である。
【0011】
本実施形態に係る充填豆腐用容器1は、熱可塑性樹脂シート(以下、単に「樹脂シート」ともいう)が熱成形されて、豆乳と凝固剤とを含む液体が収容される収容凹部10と該収容凹部10の開口縁10eから外側に延びるフランジ部11とを有している。
そして、図1に示す前記連設体100においては、縦横2個ずつ合計4個の充填豆腐用容器1が連設されており、隣り合う充填豆腐用容器どうしの間で前記フランジ部11を互いに突き合せるような形で4個の充填豆腐用容器1が連設されている。
また、図2に示す前記連設体100においては、横一列に3個の充填豆腐用容器1が連設されており、隣り合う充填豆腐用容器どうしの間でフランジ部11を互いに突き合せるような形で連設されている点については図1に示す連設体と同じである。
【0012】
本実施形態の充填豆腐用容器1は、前記フランジ部11にシール材(図示せず)が接着されて前記液体が収容凹部内に密封され、該密封された前記液体が加熱凝固されることにおって前記収容凹部10の内部に豆腐が充填されるものである。
即ち、本実施形態の充填豆腐用容器1は、収容凹部10の内部に余分な空間を形成させることなく豆腐を収容させるべく用いられる。
なお、収容凹部10は、通常、一人、乃至、2〜3人程度で食するのに適した量の豆腐を収容する大きさとされており、本実施形態においては、各収容凹部10の内容積が50cm3〜200cm3程度となるように形成されている。
【0013】
本実施形態に係る充填豆腐用容器1は、図1(a)、図2(a)にも示されているように、収容凹部10の一部を内側に突出させた突出部10aを設けており、該突出部10aによって当該収容凹部10の開口縁10eを画定する連続線の1箇所に内側に突出する形状が形成されている。
【0014】
前記開口縁10eは、長円形の円弧の一部を内側に突出させたような形状となっており、且つ、内側に突出する前記形状が前記長円形の長手方向中央部となる位置に形成されている。
より具体的には、例えば、図1に示す充填豆腐用容器1においては、その開口縁10eは、横長な長円形を描いている連続線を前記長円形の長手方向中央部となる位置において一方側から内側に突出させた形状を有しており、いわゆるそら豆形となっている。
そして、この開口縁10eは、直線部分を実質的に有しておらず、曲線のみによって画定されており、図1(a)正面視上側中央部を下方(収容凹部10の内側)に向けて突出させて前記そら豆形となっているが、この突出している部分の先端形状も先鋭なものとはなっておらず丸みを帯びた状態になっている。
【0015】
また、図からもわかるように、本実施形態の充填豆腐用容器1は、収容凹部10の開口縁10eの形状のみならず該収容凹部全体に丸みを持たせた形になっており、容器底部12に角部が全く形成されておらず丸底となっている。
即ち、本実施形態の充填豆腐用容器1は、容器底部12を形成している樹脂シートを収容凹部10の深さ方向に切断した際に角が形成されないようになっており、収容凹部10が形成されている部分においてあらゆる箇所で上記切断を行っても角が形成されないように容器底部12に丸みを持たせている。
なお、従来の箱型の収容凹部を備えた充填豆腐用容器のように容器底部に直角に近い角部を設けると、豆腐を取り出す際に前記角部において容器に接触している部分の豆腐が千切れ易くなるが、本実施形態の充填豆腐用容器1は、容器底部に上記のような丸みを持たせることで豆腐を崩すことなく取り出し得るように形成されている。
【0016】
ここで、図3、4を参照しつつ、豆腐を取り出す際の各部の機能について説明する。
まず、図3(a)に示すように、内側に豆腐の充填されている収容凹部10に対してその長手方向両端部から内向きに力F1を加えるか、突出部10aに背面側から直接押圧力F2を加えるかして収容凹部10を変形させる。
そうすると、図3(b)に示すように、元々は、破線で示されているような形状であった開口縁10eが、収容凹部10の前記変形後には、実線で示したような形状の開口縁10e’となる。
この時、前記突出部10aは、その先端10xを中心にして折れ曲がり、該先端10xを挟んで左右の樹脂シートがなす角度が図4に示すように小さくなる(θ0→θ1)。
従って、前記突出部10aの先端10xが収容凹部10の中心に向けて移動する距離D1に比べて、その左右における突出部10aの移動距離D2が短くなる。
即ち、先端10xの左右において、移動距離の差(D1−D2)の分だけ収容凹部10の内面が先端10xに対して相対的に後退する結果となる。
【0017】
このことから、この突出部10aの内側において接している豆腐は、前記先端10xによって収容凹部10の中心方向に押圧されるとともに該先端10xの左右において収容凹部10の内面が後退するため、その変化に追従することが難しく、容器との界面に隙間ができ易くなって容易に取り出されることになる。
また、前記突出部10aは、開口縁10eに近い部分においてのみ突出しているわけではなく、その高さを減少しつつ容器底部12にまで細長く延在されている。
従って、豆腐を取り出す際には、この容器底部12にまで続く突出部10aを伝って空気を奥深くにまで誘導させることができ、収容凹部10の底部において豆腐が崩れることを防止させることができる。
【0018】
なお、前記突出部10aは、例えば、その先端10xを曲率半径の小さな状態にして角張らせたりすると、該先端10xを中心にして収容凹部10を形成している樹脂シートを折り曲げ易くなり、豆腐を取り出し易くなる一方で先端10xを角張らせると豆腐が割れ易くなってしまうおそれがある。
このことから前記先端10xの曲率半径(R)は、前記開口縁10eにおいて4mm〜10mmの範囲内となっていることが好ましい。
また、突出部10aの突出高さHは、前記開口縁10eにおいて5mm〜10mmの範囲内となっていることが好ましい。
【0019】
なお、本実施形態に係る充填豆腐用容器は、前記突出部10aを設けることによって開口縁10eを画定している連続線の一部を内側に向けて突出させること、及び、容器底部12に丸みを持たせることによって豆腐を崩すことなく取り出し易くなっているが、より豆腐を取り出しやすくするためには、充填豆腐用容器に離型処理を施すことが好ましい。
【0020】
この離型処理としては、容器形成前の樹脂シートに離型剤を塗布し、該離型剤塗布面が容器内側となるように熱成形する方法、熱成形後に少なくとも収容凹部10の内側に離型剤を塗布する方法、及び、樹脂シートとして離型剤を含有する樹脂組成物で形成されたものを採用する方法などが挙げられる。
【0021】
なお、樹脂シートや充填豆腐用容器に塗布する離型剤としては、シリコーンオイルなどが挙げられ、樹脂シートに含有させる離型剤としては、ステアリン酸モノグリセリドのようなグリセリンモノ脂肪酸エステル類が挙げられる。
中でも、このグリセリンモノ脂肪酸エステル類は、豆腐の消泡剤などにも利用される成分であることから衛生面を考慮しても前記樹脂シートに含有させる離型剤として特に好ましい物質であるといえる。
【0022】
なお、本実施形態に係る充填豆腐用容器1を形成させるための樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂シートやポリプロピレン系樹脂シートといったポリオレフィン系樹脂シートなどの他にポリスチレン系樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
本実施形態の充填豆腐用容器1は、通常、10μm〜500μm程度の厚みを有するこれらの樹脂シートによって形成可能なものではあるが、該樹脂シートに離型剤を含有させる場合には、樹脂シート全体に含有させる必要はなく、容器内面を構成する側の表面部にさえ含有させておけばよい。
即ち、前記樹脂シートとして積層構造を有する樹脂シート(積層シート)を採用し、且つ、表面層がグリセリンモノ脂肪酸エステル類を含有する樹脂組成物で形成された積層シートを採用すればよい。
【0023】
なお、本実施形態の充填豆腐用容器1は、上記のような樹脂シートを用い、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形といった一般的な熱成形を実施して作製することができる。
【0024】
本実施形態においては、豆腐を崩さずに取り出すことが特に容易である点において開口縁10eが長円形の一部を内側に突出させた形状となっており、且つ、内側に突出する前記形状が前記長円形の長手方向中央部となる位置に1箇所形成されている充填豆腐用容器1を例示しているが、突出部10aの形成位置は長手方向中央部である必要はなく、開口縁10eの形状も長円形である必要はない。
【0025】
さらに、本実施形態においては、豆腐を崩さずに取り出すことが特に容易である点において容器底部に丸みを持たせた充填豆腐用容器1を例示しているが、食卓上における安定性を勘案して平坦面を容器底部に形成させてもよい。
【0026】
また、豆腐の取り出し易さのさらなる向上を図る意味において、突出部10aを複数箇所に設けるようにしても良い。
なお、その場合には、収容凹部の中心に対して対称となるようにして設けることが好ましく、例えば、図5に示すような形で複数の突出部10aを設けることが好ましい。
【0027】
この図5は、充填豆腐用容器1が横並びに2個連設されてなる連設体の概略図であり、(a)が平面図で、(b)が側面図である。
この図5に示す充填豆腐用容器1は、収容凹部10の2箇所に突出部10aが形成されており、該突出部10aが収容凹部10の中心に対して対称となるように配置されている。
しかも、前記突出部10aが収容凹部10の長手方向中央部に設けられて該収容凹部10の開口縁10eは、長円形の長手方向中央部に括れ(くびれ)を設けた瓢箪形となっている。
即ち、この図5に示す充填豆腐用容器1においては、開口縁10eを画定する連続線は、長円形の長手方向中央部において互いに対向する2箇所において内側に突出する形状を有しており、それぞれが豆腐と樹脂シートとの間に隙間を形成させるのに有効に機能するようになっている。
【0028】
なお、図5に示す充填豆腐用容器1は、2個の突出部10aによって括れが形成されているため、突出部10aを内側に侵入させるように収容凹部10に変形を加える際にこの括れている部分に指先を掛けるなどして手が滑ってしまうことを防止することができる。
また、例えば、2つの突出部の突出方向が互いに対向しておらず、突出方向が互いに行き違うようになっていると、それぞれの突出部に同時に押圧力を加えた際には充填豆腐用容器が回転する方向に力が加わることになり充填豆腐用容器を保持し辛くなるが、図5に示す充填豆腐用容器1は、該突出部10aがその突出方向を互いに対向させていることから、一つの突出部を背面側から押す力と、もう一方の突出部を背面側から押す力とを拮抗させることができ、2個の突出部10aに同時に力を加えることが容易に実施可能となる。
【0029】
さらに、図1、図2に示す充填豆腐用容器1は、連設体100の状態であれば食卓上などにおける安定性を有しているものの前記ミシン目による分断を行って、充填豆腐用容器1を個別にした場合には、容器底部12に丸みを持たせているために安定性に欠ける状態になるが、この図5に示す充填豆腐用容器1は、容器底部12に平坦面を形成させているために、個別に分断された後においても安定状態となる。
なお、図5(b)にも示されているように、この充填豆腐用容器1の容器底部12は、平坦面の外縁から緩やかに立ち上がっており、鋭角な角部を形成させておらず、一般的な箱型の収容凹部を有する充填豆腐用容器に比べると豆腐の取り出しにおいて豆腐が崩れることを十分に抑制させ得るものである。
【0030】
また、この図5に示す事例以外にも、本発明の充填豆腐用容器には、種々の変更を加え得る。
さらに、その形成に用いる熱可塑性樹脂シートなどにも上記に例示のない変更を加えることが可能なものである。
【符号の説明】
【0031】
1 充填豆腐用容器
10 収容凹部
10a 突出部
10e 開口縁
11 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートが熱成形されてなり、豆腐が収容される収容凹部と該収容凹部の開口縁から外側に延びるフランジ部とを有する充填豆腐用容器であって、
前記収容凹部が、前記開口縁を画定する連続線の少なくとも1箇所において内側に突出する形状を有していることを特徴とする充填豆腐用容器。
【請求項2】
前記開口縁が、長円形の一部を内側に突出させた形状となっており、且つ、内側に突出する前記形状が前記長円形の長手方向中央部となる位置に形成されている請求項1記載の充填豆腐用容器。
【請求項3】
前記長円形の長手方向中央部において互いに対向する2箇所に前記形状が形成されて前記開口縁が瓢箪形となっている請求項2記載の充填豆腐用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232787(P2012−232787A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103623(P2011−103623)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000158943)株式会社積水技研 (35)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】