説明

充電コネクタ構造

【課題】外蓋を開ける際などの異音の発生を抑制可能な充電コネクタ構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車両のバッテリを充電するケーブルが接続される充電コネクタ116と、充電コネクタ116を覆う外蓋部材102と、外蓋部材102に外蓋部材との間に隙間S1を形成して設けられる軸部120と、軸部120の周囲を覆って軸部を回転可能に車体に支えるヒンジ部材122と、隙間S1にて外蓋部材102とヒンジ部材122との間に圧縮されて設置されるクッション部材126とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源から充電するバッテリを搭載した車両に設けられ、充電用ケーブルが接続する充電コネクタ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッドカーなど、動力源として電動モータを使用する自動車が普及しつつある。これらの車両には電動モータに電気を供給するためのバッテリが搭載されていて、多くの場合はバッテリには外部電源から伸びる充電用ケーブルを接続して充電する構成となっている。そのため、これら車両の側面等には、充電用ケーブルを接続するための充電コネクタが設置されている。
【0003】
充電コネクタは車両のアウタパネルなどに外蓋を設けて設置されている。外蓋はヒンジを介して開閉する構成が一般的である。ここで、多くの充電コネクタには、外蓋を全開させた際に外蓋と接触してこれを止めるストッパが設けられている。このような構成の充電コネクタには、外蓋を開けた場合のストッパへの衝突音など、異音の発生を低減させたいという要請がなされている。
【0004】
上記のような要請は、ガソリン車における給油口に対しても従来からなされていた。例えば、特許文献1に記載のガソリン車用のフュエルフィラーリッド構造では、フュエルフィラーリッド(給油口の外蓋)のアームおよびアダプタ(給油口の内壁部材)のそれぞれに凸部を設け、互いの凸部が接触し摩擦力を起こすことで外蓋の開放速度を落とし衝突音の発生を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−319960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、電気自動車等の場合においては大抵1日1回程度の充電を行わなければならないため、その充電コネクタの外蓋は、特許文献1のガソリン車の給油口の外蓋に比べて開閉を行う頻度が多い。そのため、特許文献1に記載の凸部では、充電コネクタに応用しても変形および磨耗によってその機能はすぐに低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、外蓋を開ける際などの異音の発生を抑制可能な充電コネクタ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる充電コネクタ構造の代表的な構成は、車両のバッテリを充電するケーブルが接続される充電コネクタと、充電コネクタを覆う外蓋部材と、外蓋部材に外蓋部材との間に隙間を形成して設けられる軸部と、軸部の周囲を覆って軸部を回転可能に車体に支えるヒンジ部材と、上記隙間にて外蓋部材とヒンジ部材との間に圧縮されて設置されるクッション部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記のクッション部材は外蓋部材とヒンジ部材とに反発していて、外蓋部材を開閉させる際に常に摩擦抵抗を発生させる。これによって、上記の外蓋部材は人員の手動操作を受けなければ動かなくなっている。したがって、外蓋部材は慣性によっては動くことがなく、ストッパ等に勢いよく接触するおそれがなくなっている。これによって、上記構成では外蓋部材のストッパ等への衝突を防ぎ、またクッション部材の反発力によってヒンジ部材等の耐久性を向上させてがたつきを防ぎ、これらによって生じる異音を減少させることが可能になっている。
【0010】
上記のヒンジ部材および軸部は、外蓋部材が車両の側面から斜め下方へ向かって開くよう形成されているとよい。上記の充電コネクタは、例えば車両側面におけるフロントドアとリアドアとの間の領域に設置される場合がある。その場合、外蓋部材とこれらフロントドア等との干渉を防ぐため、外蓋部材の開閉の軌道は、これらフロントドア等のそれぞれの開閉の軌道に重ならないことが求められる。そこで、一般に車両前後方向へ開閉するフロントドアおよびリアドアに対し、外蓋部材を斜め下方へ向かって開く構成とすることで、外蓋部材とこれらとの干渉が防止できる。
【0011】
そして上記構成では、外蓋部材を開ける際、通常であれば外蓋部材の回転は重力によって付勢されるが、上述したクッション部材の摩擦抵抗によってその回転は防がれる。このように、上記構成であればクッション部材の機能を好適に活かすことができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成によれば、外蓋を開ける際などの異音の発生を抑制可能な充電コネクタ構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である充電コネクタ構造の概要を示す図である。
【図2】図1(b)の外蓋部材およびヒンジ部材を分離させて示す図である。
【図3】外蓋部材を開ける際の挙動を示す図である。
【図4】図3(b)の充電コネクタ構造のA−A断面に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態である充電コネクタ構造100の概要を示す図である。図1を含む以下の図では、車両幅方向をX軸、車両前後方向をY軸、上下方向をZ軸で表示している。図1(a)では、外蓋部材102を閉じた状態の充電コネクタ構造100を車両側方から見た状態で示している。図1(a)に示すように、本実施形態の充電コネクタ構造100は、車両104の側面であってフロントドア106とリアドア108との間におけるアウタパネル110の下部に設けられる。
【0016】
図1(b)は、図1(a)の外蓋部材102を開いた状態の斜視図である。図1(b)に示すように、外蓋部材102に覆われる内側にはボックス部材112が設けられている。ボックス部材112はいわゆるケーシングであって、車内側へ向かって窪んだ形状になっている。ボックス部材112の奥には開口部114が設けられている。この開口部114には、車内側から充電コネクタ116が露出するよう設置されている。充電コネクタ116の端子(不図示)は内蓋118によって保護されている。充電コネクタ116は車両内のバッテリ(不図示)に連絡していて、外部の電源から伸びる充電用ケーブル(不図示)が接続されバッテリを充電する。
【0017】
外蓋部材102の車内側には軸部120が設けられていて、外蓋部材102はこの軸部120を中心にしてヒンジ部材122によって車体に回転可能に支えられている。ヒンジ部材122は、その端部124が軸部120と連結してヒンジを構成し、ボックス部材112の下部に設置される。
【0018】
図2は、図1(b)の外蓋部材102およびヒンジ部材122を分離させて示す図である。図2に示すように、外蓋部材102の軸部120は、外蓋部材102の車内側下部の隅に外蓋部材102との間に隙間S1を形成して設けられている。ヒンジ部材122の端部124は軸部120の周囲を覆ってかしめられ、軸部120を回転可能に支えている。また、ヒンジ部材122は、外蓋部材102を全開させた際に、この外蓋部材102とストッパ部E1で接触してその回転動作を止める機能を有している。
【0019】
さらに、当該充電コネクタ構造100では、外蓋部材102とヒンジ部材122との間(図4(a)参照)にクッション部材126を備えている。クッション部材126は材質に弾性材料が用いられていて、その一例として本実施形態では発泡ゴムスポンジを用いている。このクッション部材126は、隙間S1における外蓋部材102とヒンジ部材122との間に圧縮されて設置され、外蓋部材102を開閉する際に常に摩擦抵抗を生じさせ、外蓋部材102の回転動作を制限する役割を担う。
【0020】
図3は、外蓋部材102を開ける際の挙動を示す図である。図3(a)は、外蓋部材102を開ける過程を車両後方から示した図である。図3(a)に示すように、外蓋部材102は車両104に対して斜め下方へ向かって開く。この軌道は、図2の外蓋部材102の軸部120およびヒンジ部材122の端部124が、車両104の上下方向に対して車外側に傾いて形成されていることに由来する。
【0021】
図3(b)は、図3(a)の外蓋部材102を全開させた状態の図である。図3(b)に示すように車両104を側方から見た状態において、上述した通り外蓋部材102を斜め下方に開ける構成となっていることで、外蓋部材102の軌道はフロントドア106およびリアドア108のそれぞれに重ならない。この構成によって外蓋部材102、およびフロントドア106とリアドア108のそれぞれは、同時に開閉させたとしても干渉するおそれがない。
【0022】
しかし、図3(a)に示した外蓋部の斜め下方への回転動作は、通常であれば重力によって付勢されてしまう。その結果、外蓋部材102は勢いよくストッパ部E1(図4(b)参照)に衝突し、外蓋部材102の全体が振動して響くいわゆる「ビビリ音」が生じてしまう。また、電気自動車等は1日1回程度の頻度で充電しなくてはならず、外蓋部材102は開閉動作を行う頻度が多い。そのため、図2のヒンジ部材122の端部124、および外蓋部材102の軸部120は磨耗等を起こしやすく、がたつきなどを招いて異音が発生しやすい。そこで、当該充電コネクタ構造100ではクッション部材126(図2)を利用して、外蓋部材102が慣性で回転しないようその動作に制限を加えている。
【0023】
図4は、図3(b)の充電コネクタ構造100のA−A断面に対応した断面図であって、図4(a)は図3(b)の外蓋部材102を閉じた状態、図4(b)は図3(b)の外蓋部材102の全開状態をそれぞれ示している。図4(a)に示すように、クッション部材126は外蓋部材102とヒンジ部材122との間に圧縮されて設置されていて、クッション部材126はこれらに反発している。この構成によって、図4(b)のように外蓋部材102が全開状態にいたるまで、クッション部材126は外蓋部材102の軸部120を中心とした回転動作に摩擦抵抗を与える。
【0024】
上記構成によって、外蓋部材102は人員の手動操作を受けなければ動かなくなっている。このように、外蓋部材102は慣性によっては動くことがなく、ストッパ部E1(図2参照)に勢いよく接触するおそれがなくなっている。これらによって、当該充電コネクタ構造100では外蓋部材102のストッパ部E1への衝突、およびヒンジ部材122等のがたつきなどから生じる異音を減少させることが可能になっている。
【0025】
なお、クッション部材126は外蓋部材102が開閉する際の可動範囲を狭めてはいないため、充電を行う際の作業性は低下しない。また、クッション部材126の材質には各種スポンジ材料および樹脂部材などを適宜用いることができ、これらの材質によっても上記説明した効果を得ることができる。
【0026】
また、上記説明した構成によってがたつき等が抑えられるため、外蓋部材102は開閉時の磨耗等に対する耐久性が、1日1回程度は充電を行う電気自動車等に対応できる程度に向上する。したがって、例えば、旧来のガソリン車用に設計された給油口構造であっても、上記構成を組み合わせるための簡潔かつ部分的な設計変形を行うだけで電気自動車用の充電コネクタとして新たに用いることが可能になる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、外部電源から充電するバッテリを搭載した車両に設けられ、充電用ケーブルが接続する充電コネクタ構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
E1 …ストッパ部、S1 …隙間、100 …充電コネクタ構造、102 …外蓋部材、104 …車両、106 …フロントドア、108 …リアドア、110 …アウタパネル、112 …ボックス部材、114 …開口部、116 …充電コネクタ、118 …内蓋、120 …軸部、122 …ヒンジ部材、124 …端部、126 …クッション部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバッテリを充電するケーブルが接続される充電コネクタと、
前記充電コネクタを覆う外蓋部材と、
前記外蓋部材に該外蓋部材との間に隙間を形成して設けられる軸部と、
前記軸部の周囲を覆って該軸部を回転可能に車体に支えるヒンジ部材と、
前記隙間にて前記外蓋部材とヒンジ部材との間に圧縮されて設置されるクッション部材とを備えることを特徴とする充電コネクタ構造。
【請求項2】
前記ヒンジ部材および軸部は、前記外蓋部材が車両の側面から斜め下方へ向かって開くよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の充電コネクタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−236438(P2012−236438A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104972(P2011−104972)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】