説明

充電システム及びその処理方法とプログラム

【課題】充電中に車両と外部装置との間で情報通信が行われる場合の障害発生時における復旧を容易に行うことのできる充電システムを提供する。
【解決手段】蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部を車両1が有している。そして、複数の情報通信系統のいずれかを介した外部装置との通信の異常を検知すると、当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車などに搭載された蓄電池へ電力を供給する際に当該電気自動車と通信を行う充電システム及びその処理方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
充電ケーブルを車両に接続し、当該車両に搭載された蓄電池に充電を行うとともに、当該充電の際に車両に備えられた情報通信処理部が、外部の装置と通信する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−230520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の技術では、充電制御中に情報通信系等の異常により通信が途切れた場合、情報通信の確実な復旧が難しい場合があった。
【0005】
そこでこの発明は、充電中に車両と外部装置との間で情報通信が行われる場合の障害発生時における復旧を容易に行うことのできる充電システム及びその処理方法とプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、前記蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部と、前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を検知する通信異常検知部と、前記通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える切替部と、を備えることを特徴とする充電システムである。
【0007】
また本発明は、蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、前記蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部を備えた充電システムにおける処理方法であって、通信異常検知部が、前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を検知し、切替部が、前記通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替えることを特徴とする処理方法である。
【0008】
また本発明は、蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、前記蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部を備えた充電システムのコンピュータを、前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を検知する通信異常検知手段、前記通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える切替手段、として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充電ケーブルに複数の情報通信系統のケーブルが設けられており、カーエレクトロニクス装置が、いずれかの情報通信系統を用いて外部装置と情報通信を行い、その情報通信に障害が発生した場合には、直ちに、充電ケーブル内に設けられた他の情報通信系統のケーブルを用いてカーエレクトロニクス装置が外部装置と通信を行うので、通信の信頼性を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】充電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】ECUの機能ブロック図である。
【図3】充電システムの修理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による充電システムを図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による充電システムの構成を示すブロック図である。
この図において、符号1は車両、2は充電装置、3は充電ケーブルである。充電ケーブル3は、充電電力を車両1へ出力する電力供給系統と、車両1へ情報を出力する複数の情報通信系統のケーブルが束ねられたものである。複数の情報通信系統は、本実施系形態においてはCAN(Controller Area Network)通信、RlexRay通信、LAN(Local Area Network)通信の3つの車載LANの情報通信系統である場合について説明するが、複数であれば、これらの情報通信系統のうちのいずれか2つでもよいし、これ以外の他の情報通信系統をさらに備えるようにしてもよい。そして、車両1は蓄電池11を搭載しており、ユーザは、蓄電池11へ電力を供給するため、充電ケーブル3を車両1に備えられたコネクタへ接続する。
【0012】
充電装置2は、給電部21と通信処理部22を備えている。充電ケーブル3が車両1のコネクタへ接続され、ユーザによる充電開始の指示を受け付けると、充電装置2の給電部21は充電ケーブル3内の電力供給系統を介して車両1に搭載された蓄電池11へ電力を供給し、これにより蓄電池11に電力が蓄積する。一方、電力供給系統を介した電力の供給中には、自動またはユーザの指示入力に基づいて、通信処理部22が車両1と情報通信を行う。ここで、車両1にはカーエレクトロニクス装置12と、ECU(Electronic Control Unit)13が備えられている。カーエレクトロニクス装置12は、車両1に搭載のカーナビゲーション装置、オーディオ装置など、車に付属されている装置である。またECU13は、車両1の通信制御の処理等を行う制御部である。
【0013】
図2はECUの機能ブロック図である。
この図で示すようにECU13は、ECU13内の各処理部を制御する制御部131、充電ケーブル3内の複数の情報通信系統の何れかにおける通信異常を検知する通信異常検知部132と、通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統からそれまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える切替部133と、を備えている。
なお、図1や図2において、車両1や充電装置2、ECU13にはその他の処理部等が備えられていてもよいが、本発明の実施形態の説明に必要な構成のみ図を用いて説明している。
【0014】
図3は充電システムの修理フローを示す図である。
次に図3を用いて、充電システムの処理フローの詳細について順を追って説明する。
まず、充電ケーブル3がコネクタに接続されると、例えばECU13の制御部131は、充電ケーブル3の接続を検知し(ステップS101)、どの情報通信系統を利用するかを検知する(ステップS102)。当該検知の処理の例としては、予めメモリ等に初期値として、どの情報通信系統を利用するかを示す情報が記録されており、当該情報を制御部131が読み取って検知するようにすればよい。そして、ECU13は充電ケーブル3のコネクタへの接続と、どの情報通信系統を利用するのかの検知を完了すると、カーエレクトロニクス装置12へ情報通信に利用する情報通信系統の識別子を送信する(ステップS103)。
【0015】
次に、カーエレクトロニクス装置12は、ECU13より情報通信に利用する情報通信系統の識別子を受信すると、当該情報通信系統を利用して、充電装置2と情報通信を行う(ステップS104)。例えばカーエレクトロニクス装置12は、コンテンツの配信要求を充電装置2に送信し、その結果、充電装置2の通信処理部22を介して車両の運行情報サービスなどのコンテンツデータを受信する。または、カーエレクトロニクス装置12は、充電装置2の通信処理部22と、認証情報や、課金情報、車両の点検情報、などを送信するようにしてもよい。つまり、車両1に搭載された蓄電池11への充電中に、カーエレクトロニクス装置12は、様々な情報を充電装置2と通信することができる。なお充電装置2の通信処理部22は、背後でコンテンツデータなどを配信するコンテンツ配信システム等と接続されており、カーエレクトロニクス装置12が受信するデータの中継を行うものである。
【0016】
ここで、カーエレクトロニクス装置12が充電装置2の通信処理部22と情報通信を行っている間、ECU13の通信異常検知部132は、当該カーエレクトロニクス装置12と充電装置2の通信処理部22との間の通信をキャプチャする(ステップS105)。そして、通信異常検知部132は、当該情報通信に異常が無いかを判定する(ステップS106)。異常があるか無いかの判定は、たとえば、一方から他方への情報通信のパケットに対する応答が所定時間以上ない場合には異常と判定する。そして通信異常を検知した場合、通信異常検知部132が制御部131へ異常を通知し、制御部131は切替部133へ切り替え処理の開始を要求する。
【0017】
切替部133は制御部131から切り替え処理の開始を受け付けると、通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統からそれまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える処理を行う(ステップS107)。例えば切替部133は、複数の情報通信系統の識別子と、現在利用している情報通信系統を示すフラグを対応付けた情報を、選択する順番でメモリ等に記憶しており、現在利用していることを示すフラグが立っている情報通信系統の次の順番で登録されている情報通信系統の識別子を当該メモリから読み取って、制御部131へ通知する。すると制御部31は、切り替え後の情報通信系統を示す識別子をカーエレクトロニクス装置12へ通知する(ステップS108)。
【0018】
すると、カーエレクトロニクス装置12は、ECU13の制御部131から受信した切り替え後の情報通信系統を示す識別子に基づいて、新たな情報通信系統により、今まで行っていた情報通信の再送を行う(ステップS109)。例えば、初期時には、CAN通信の通信系統による情報通信を行い、当該CAN通信の通信系統による情報通信に異常が検知された場合には、FlexRay通信の通信系統による情報通信を行う。また更に、FlexRay通信の通信系統による情報通信を行った後、当該FlexRay通信の通信系統による情報通信に異常が検知された場合には、LAN通信の通信系統による情報通信へ切り替えるようにしてもよい。
【0019】
以上のように、本発明の実施形態によれば、充電ケーブルに複数の情報通信系統のケーブルが設けられており、カーエレクトロニクス装置がいずれかの情報通信系統を用いて外部装置と情報通信を行い、その情報通信に障害が発生した場合には、直ちに、充電ケーブル内に設けられた他の情報通信系統のケーブルを用いてカーエレクトロニクス装置が外部装置と通信を行うので、通信の信頼性を高めることができるようになる。
また、上述の実施形態によれば、充電ケーブルをコネクタに接続するだけで、カーエレクトロニクス装置と充電装置内の通信処理部との間で情報通信が開始されるため、ユーザの情報通信の開始操作の手間を省くことができる。
【0020】
なお、上述の充電システムにおけるカーエレクトロニクス装置12、ECう13、通信処理部22等は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0021】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0022】
1・・・車両
2・・・充電装置
3・・・充電ケーブル
11・・・蓄電池
12・・・カーエレクトロニクス装置
13・・・ECU
21・・・給電部
22・・・通信処理部
131・・・制御部
132・・・通信異常検知部
133・・・切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、前記蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部と、
前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を検知する通信異常検知部と、
前記通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える切替部と、
を備えることを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記複数の情報通信系統は、Controller Area Network通信、またはFlexRay通信、またはLAN通信を行う各情報通信系統であり、
前記Controller Area Network通信、前記FlexRay通信、前記LAN通信の通信処理を行う各通信処理部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記充電ケーブルの前記充電対象装置への接続を自動検知して、当該自動検知に基づいて、前記通信異常検知部が前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を判定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充電システム。
【請求項4】
蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、前記蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部を備えた充電システムにおける処理方法であって、
通信異常検知部が、前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を検知し、
切替部が、前記通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える
ことを特徴とする処理方法。
【請求項5】
蓄電池へ充電電力を供給する電力供給系統と、前記蓄電池を備えた充電対象装置と外部装置との間の情報通信を行う複数の情報系統と、を有する充電ケーブルを接続する充電ケーブル接続部を備えた充電システムのコンピュータを、
前記複数の情報通信系統のいずれかを介した前記外部装置との通信の異常を検知する通信異常検知手段、
前記通信の異常を検知した場合に当該通信に用いた情報通信系統から、それまで通信に用いていない他の情報通信系統へと通信に用いる情報通信系統を切り替える切替手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−10510(P2012−10510A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145088(P2010−145088)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】