説明

充電制御システム

【課題】演算負荷を低減しながら、適切にバッテリの充電を行なうことができる充電制御システムを提供すること。
【解決手段】充電電流の値と該充電電流を流した場合におけるバッテリの電圧との関係を示す内部抵抗線を算出し、内部抵抗線上における、最大入力可能電力に対応する最大入力可能電力点または最大入力可能電流に対応する最大入力可能電流点と、現在バッテリに入力されている充電電力または充電電流に対応する充電電力点または充電電流点を求め、内部抵抗線上において、充電電力点または充電電流点と最大入力可能電力点または最大入力可能電流点との間に位置する点を、目標電力点または目標電流点として算出し、算出した目標電力点または目標電流点に基づいて、バッテリを充電するための充電電力または充電電流を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに入力される充電電力を制御するための充電制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリを充電する際に、充電開始時において、バッテリを充電するための電流値を徐々に上げていき、電流値が所定の値となった場合に、予め設定された目標電流値で、バッテリの充電を行なう技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−143279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、バッテリの充電を行なう際に、バッテリを充電するための電流値を徐々に上げていく段階と、電流値が所定の値となった場合に、予め設定された目標電流値で充電を行なう段階と、異なる2つの段階において、それぞれ異なる制御を行うものであった。すなわち、上記従来技術においては、通常、充電電流を決定するための制御マップを用いて、充電率やバッテリ電圧などに応じて、充電電流を決定するものであるが、上記従来技術においては、これら異なる2つの段階のそれぞれに対応した複数の制御マップが必要となり、そのため、演算負荷が高くなってしまうという問題があった。また、上記従来技術においては、充電電流を決めるための制御マップは、通常、バッテリのサイクル劣化等を考慮して設定されたものであるため、劣化がほとんど発生していない新品時においては、充電電流値が不要に制限されてしまうという不具合があったり、逆に、バッテリが想定以上に劣化した場合に、バッテリが過充電状態となってしまうという不具合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、演算負荷を低減しながら、適切にバッテリの充電を行なうことができる充電制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充電電流の値と該充電電流を流した場合におけるバッテリの電圧との関係を示す内部抵抗線を算出し、内部抵抗線上における、最大入力可能電力に対応する最大入力可能電力点または最大入力可能電流に対応する最大入力可能電流点と、現在バッテリに入力されている充電電力または充電電流に対応する充電電力点または充電電流点を求め、内部抵抗線上において、充電電力点または充電電流点と最大入力可能電力点または最大入力可能電流点との間に位置する点を、目標電力点または目標電流点として算出し、算出した目標電力点または目標電流点に基づいて、バッテリを充電するための充電電力または充電電流を設定することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充電電流の値と該充電電流を流した場合におけるバッテリの電圧との関係を示す内部抵抗線を算出し、内部抵抗線上において、充電電力点または充電電流点と最大入力可能電力点または最大入力可能電流点との間に位置する点を、目標電力点または目標電流点として設定し、これに基づいて、充電電力または充電電流を決定するため、充電電流を決めるための制御マップを複数有する必要が無く、そのため、バッテリの充電を行う際における、演算負荷の低減が可能となる。加えて、本発明によれば、バッテリを充電するための充電電力または充電電流を設定する際に、バッテリの状態(たとえば、バッテリの電圧、バッテリの内部抵抗等)の検出誤差を考慮した充電電力または充電電流を設定することができるため、これにより、劣化がほとんど発生していない新品時においては、不要に充電電流が制限されてしまうことを抑制することができ、さらには、バッテリが劣化した場合でも、バッテリを過充電状態などの悪影響下にさらしてしまうことを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係るバッテリ充電システムを示す構成図である。
【図2】図2は、本実施形態により算出された目標充電電力PTRGを用いて、バッテリ4を充電した場合における充電プロファイルである。
【図3】図3は、時間t〜時間tにおける、入力可能電流IMAXの算出方法を説明するための図である。
【図4】図4は、時間t〜時間tにおける、入力電力点SINPおよび最大入力可能電力点SMAXの算出方法を説明するための図である。
【図5】図5は、時間t〜時間tにおける、目標充電電力PTRGの算出方法を説明するための図である。
【図6】図6は、時間t〜時間tにおける、目標充電電力PTRGの算出方法を説明するための図である。
【図7】図7は、時間t〜時間tにおける、入力可能電流IMAXの算出方法を説明するための図である。
【図8】図8は、時間t〜時間tにおける、入力電力点SINPおよび最大入力可能電力点SMAXの算出方法を説明するための図である。
【図9】図9は、時間t〜時間tにおける、目標充電電力PTRGの算出方法を説明するための図である。
【図10】図10は、本実施形態における充電制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るバッテリ充電システムを示す構成図である。なお、以下においては、本実施形態に係るバッテリ充電システムが、電気車両(ハイブリッド車やEV)用として用いられる場合を例示して説明するが、特にこれに限定されるものではない。
【0011】
本実施形態に係るバッテリ充電システム1は、図1に示すように、強電ライン2を介して、互いに電気的に接続された充電装置3、バッテリ4、PTCヒータ5、コンプレッサ6およびDC/DCコンバータ7を備えている。また、バッテリ充電システム1は、強電ライン2を介して、外部交流電源100と電気的に接続可能となっている。なお、外部交流電源100は、通常、バッテリ4を充電するために、強電ライン2を介して、バッテリ充電システム1に電気的に接続される。
【0012】
バッテリ4は、リチウムイオン二次電池などの二次電池を、直列に複数接続してなる組電池であり、図1に示すように、バッテリ4には、バッテリ4を構成する各セルの監視を行なうバッテリコントローラ8が接続されている。
【0013】
バッテリコントローラ8は、周期的に、バッテリ4を構成する各セルのセル電圧VCell、バッテリ4の総電圧VBAT、バッテリ4の充電電流ICHG、およびバッテリ4の温度Tの検出を行う。また、バッテリコントローラ8は、これらに基づき、最高電圧セルの電圧V、バッテリ4を構成する各セルのセル内部抵抗RCell、バッテリ4の総内部抵抗RBAT、充電上限電圧VLIM、およびバッテリ4の開路電圧Vを算出する。
【0014】
最高電圧セルの電圧Vは、バッテリ4を構成するセルのうち、最も高い端子電圧を有するセルの端子電圧であり、最高電圧セルの電圧Vは、セル電圧VCellから算出される。
【0015】
セル内部抵抗RCellは、バッテリ4を構成する各セルの内部抵抗であり、たとえば、セル電圧VCell、充電電流ICHG、およびバッテリの劣化度などからバッテリ4を構成するセルごとに算出される。また、総内部抵抗RBATは、バッテリ4の総抵抗であり、バッテリ4を構成する各セルの抵抗の他、バッテリ4を構成するセル同士を電気的に接続するバスバーの抵抗などバッテリ4を構成する全ての部材の抵抗の合計である。総内部抵抗RBATは、たとえば、バッテリ4の総電圧VBAT、バッテリ4の充電電流ICHG、およびバッテリの劣化度などから算出される。
【0016】
充電上限電圧VLIMは、バッテリ4を充電する際に、上限となる電圧であり、バッテリ4の劣化を防止するために設定される上限電圧である。充電上限電圧VLIMは、たとえば、バッテリ4の総電圧VBAT、バッテリ4の充電電流ICHG、バッテリ4の温度T、バッテリ4の総内部抵抗RBATから算出される。このような充電上限電圧VLIMとしては、たとえば、バッテリ4を構成する各セル(あるいは、一部のセル)の内部に、リチウムの析出が開始する電圧や、リチウムの析出が開始する電圧よりも所定値低い電圧に設定することができるが、これらに限定されるものではない。たとえば、充電上限電圧VLIMが、リチウムの析出が開始する電圧や、リチウムの析出が開始する電圧よりも所定値低い電圧に設定される場合には、充電上限電圧VLIMは、以下のような特性を有する。すなわち、充電上限電圧VLIMは、バッテリ4の充電電流ICHGが大きいほど、低く算出され、充電電流ICHGが小さいほど、高く算出される。また、充電上限電圧VLIMは、バッテリ4の温度Tが高いほど、高く算出され、バッテリ4の温度Tが低いほど、低く算出される。さらに、充電上限電圧VLIMは、バッテリ4の総内部抵抗RBATが高いほど、低く算出され、総内部抵抗RBATが小さいほど、低く算出される。
【0017】
開路電圧Vは、バッテリ4の無負荷状態における総電圧VBATと、充電電流ICHGとから、たとえば、バッテリ4の無負荷状態における電圧に、充電電流ICHGを積算して得られる電流積算値に基づいて算出される電圧増減量を加算することにより算出される。
【0018】
そして、バッテリコントローラ8は、セル電圧VCell、総電圧VBAT、充電電流ICHG、バッテリ温度T、最高電圧セルの電圧V、セル内部抵抗RCell、総内部抵抗RBAT、充電上限電圧VLIM、および開路電圧Vを、システム制御装置10に送信する。
【0019】
また、PTCヒータ5は、強電ライン2を介して、バッテリ4または外部交流電源100から供給される電力により駆動することで、バッテリ充電システム1を備える車両室内に送る空調風を加熱するためのヒータである。このPTCヒータ5は、ヒータ素子の温度上昇に伴い電気抵抗値が増加して消費電力が減少する、いわゆるPTC特性を有する。
【0020】
コンプレッサ6は、バッテリ充電システム1を備える車両に備えられた空調装置の冷凍サイクル(不図示)の冷媒を圧縮する冷媒圧縮装置であり、バッテリ4または外部交流電源100から、強電ライン2を介して、電力の供給が行なわれることにより駆動する。
【0021】
空調制御アンプ9は、PTCヒータ5およびコンプレッサ6の駆動を制御するための制御装置である。空調制御アンプ9は、たとえば、温度センサ(不図示)により検出された車両室内温度の情報、および車両室内を空調するための目標温度の情報を取得し、これらの情報に基づいて、PTCヒータ5およびコンプレッサ6を駆動させるために必要な駆動電力を設定し、設定した駆動電力を駆動電力供給指令とともに、システム制御装置10に送信する。
【0022】
DC/DCコンバータ7は、強電ライン2を介して、バッテリ4から供給された電力を変換するための装置であり、DC/DCコンバータ7により変換された電力は、弱電ライン11を介して、弱電補機12に供給されることとなる。
【0023】
充電装置3は、システム制御装置10からの電力供給指令に基づき、外部交流電源100からの電力をAC/DC変換し、変換した電力を、バッテリ4、PTCヒータ5、コンプレッサ6に供給する。なお、充電装置3は、車両内に備えられているような構成であってもよいし、あるいは、車両外部に備えられているような構成であってもよい。また、充電装置3は、外部交流電源100と互いに通信することで、外部交流電源100の供給可能電力PLIMの情報を取得し、取得した供給可能電力PLIMの情報を、システム制御装置10に送出する。
【0024】
システム制御装置10は、バッテリコントローラ8、空調制御アンプ9、および充電装置3と、互いに通信することで、バッテリ制御システム1を制御するための制御装置である。本実施形態においては、システム制御装置10は、バッテリコントローラ8から、セル電圧VCell、総電圧VBAT、充電電流ICHG、バッテリ温度T、最高電圧セルの電圧V、セル内部抵抗RCell、総内部抵抗RBAT、充電上限電圧VLIM、および開路電圧Vを取得し、これらに基づいて、バッテリ4を充電するための充電電力である目標充電電力PTRGを算出し、算出した目標充電電力PTRGを電力供給指令とともに、充電装置3に送出する。そして、充電装置3は、システム制御装置10からの電力供給指令に基づき、外部交流電源100からの電力をバッテリ4に供給することとなる。
【0025】
なお、システム制御装置10は、車両内に備えられているような構成であってもよいし、あるいは、車両外部に備えられているような構成であってもよい。
【0026】
次いで、システム制御装置10による、バッテリ4を充電するための充電電力である目標充電電力PTRGの算出方法について説明する。ここで、図2は、本実施形態により算出された目標充電電力PTRGを用いて、バッテリ4を充電した場合における充電プロファイルであり、図3〜図6は、図2に示す時間t〜時間tにおける、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGの算出方法を説明するための図である。なお、以下に説明する目標充電電力PTRGの算出処理は、システム制御装置10によって、一定周期で実行される。
【0027】
以下においては、まず、充電初期、すなわち、図2に示す時間tから時間tまでにおける、充電電力の算出方法について、説明する。なお、時間tは、外部交流電源100からバッテリ4への充電電力の供給を開始する時刻(充電開始時刻)である。
【0028】
まず、システム制御装置10は、バッテリコントローラ8から取得した、最高電圧セルの電圧V、セル内部抵抗RCell、充電電流ICHGおよび充電上限電圧VLIMの情報に基づき、バッテリ4に入力可能な電流である入力可能電流IMAXを算出する。なお、最高電圧セルの電圧Vは、上述したように、バッテリ4を構成するセルのうち、最も高い端子電圧を有するセルの端子電圧である。
【0029】
ここで、図3は、入力可能電流IMAXの算出方法を説明する図である。入力可能電流IMAXを算出する処理において、システム制御装置10は、まず、バッテリコントローラ8から取得したセル内部抵抗RCellの情報から、最高電圧セル(バッテリ4を構成するセルのうち、最も高い端子電圧を有するセル)の内部抵抗Rを算出する。そして、システム制御装置10は、算出した最高電圧セルの内部抵抗Rに基づき、図3に示すように、最高電圧セルの内部抵抗線LR_hを算出する。ここで、最高電圧セルの内部抵抗線LR_hは、バッテリ4(最高電圧セル)に流れる充電電流と、最高電圧セルの電圧との関係を示す直線である。すなわち、ある充電電流を流した場合における、充電電流値と、バッテリ4の電圧の値との関係を示す直線である。なお、最高電圧セルの内部抵抗線LR_hは、たとえば、上記にて算出した最高電圧セルの内部抵抗R、およびバッテリコントローラ8から取得した開路電圧Vを用いて算出することができる。あるいは、総内部抵抗線Lは、上記にて算出した最高電圧セルの内部抵抗R、現在の最高電圧セルの電圧V、および現在のバッテリ4(最高電圧セル)の充電電流ICHGを用いて算出することもできる。さらに、最高電圧セルの内部抵抗線LR_hは、たとえば、最高電圧セルの電圧Vおよび充電電流ICHGに基づき、最高電圧セルの電圧Vと充電電流ICHGとの関係を直線回帰することにより算出することもできる。
【0030】
次いで、システム制御装置10は、バッテリコントローラ8から取得した充電上限電圧VLIMに基づいて、図3に示す充電上限電圧線LV_LIMを算出する。具体的には、システム制御装置10は、バッテリコントローラ8から取得した充電上限電圧VLIMに基づいて、バッテリ4の充電電流が変化した場合における、充電上限電圧VLIMの変化量を求め、これに基づいて、充電上限電圧線LV_LIMを算出する。あるいは、システム制御装置10は、充電上限電圧VLIMとバッテリ4の充電電流との関係を示すテーブルを予め備えておき、このテーブルを用いて、充電上限電圧線LV_LIMを算出するような構成とすることもできる。
【0031】
次いで、システム制御装置10は、上記にて算出した最高電圧セルの内部抵抗線LR_hと、充電上限電圧線LV_LIMと、の交点を求め、求めた交点における電圧を、最大許容電圧VMAXとして算出し、最大許容電圧VMAXと、最高電圧セルの電圧Vとの差を算出することで、電圧差ΔV(ΔV=VMAX−V)を求める。次いで、システム制御装置10は、算出した電圧差ΔVを、最高電圧セルの内部抵抗Rで除すことにより、追加可能電流Iadd(Iadd=ΔV/R)を求める。そして、システム制御装置10は、充電電流ICHGに、追加可能電流Iaddを加算することで、入力可能電流IMAX(IMAX=ICHG+Iadd)を算出する。
あるいは、システム制御装置10は、図3に示すように、上記にて算出した最高電圧セルの内部抵抗線LR_hと、充電上限電圧線LV_LIMと、の交点を求め、求めた交点における充電電流を、入力可能電流IMAXとして算出してもよい。
以上のようにして、システム制御装置10により、入力可能電流IMAXの算出が行なわれる。
【0032】
次いで、システム制御装置10は、上記にて算出した入力可能電流IMAXを用いて、バッテリ4に入力可能な最大入力可能電力PMAXを算出する。具体的には、システム制御装置10は、入力可能電流IMAXにバッテリ4の総内部抵抗RBATの2乗を乗じすることで、最大入力可能電力PMAXを算出することができる(PMAX=IMAX×(RBAT)。あるいは、図3に示すように、入力可能電流IMAXに対応する電圧を、最大許容電圧VMAXとして算出し、入力可能電流IMAXと、最大許容電圧VMAXとに基づいて、最大入力可能電力PMAXを算出することもできる。なお、最大入力可能電力PMAXの算出方法としては、たとえば、入力可能電流IMAXと、最大許容電圧VMAXと、バッテリ4を構成するセルの数とを乗じる方法などが挙げられる。
【0033】
次いで、システム制御装置10は、バッテリコントローラ8から取得した総内部抵抗RBATを用いて、総内部抵抗線Lを算出する。そして、算出した総内部抵抗線L上における、現在の充電電力PINPに対応する点である入力電力点SINP、および上記にて算出した最大入力可能電力PMAXに対応する点である最大入力可能電力点SMAX、をそれぞれ算出する。
【0034】
ここで、図4は、入力電力点SINPおよび最大入力可能電力点SMAXの算出方法を説明するための図である。
【0035】
まず、入力電力点SINPおよび最大入力可能電力点SMAXを算出するに際し、システム制御装置10は、図4に示すように、総内部抵抗線Lを算出する。ここで、総内部抵抗線Lは、バッテリ4に流れる充電電流と、バッテリ4の総電圧との関係を示す直線である。すなわち、ある充電電流を流した場合における、充電電流値と、バッテリ4の電圧の値との関係を示す直線である。総内部抵抗線Lは、たとえば、バッテリコントローラ8から取得したバッテリ4の内部抵抗R、および開路電圧Vを用いて算出することができる。あるいは、総内部抵抗線Lは、バッテリコントローラから取得したバッテリ4の内部抵抗R、現在のバッテリ4の総電圧VBAT、現在のバッテリ4の充電電流ICHGを用いて算出することもできる。さらに、総内部抵抗線Lは、たとえば、総電圧VBATおよび充電電流ICHGに基づき、総電圧VBATと充電電流ICHGとの関係を直線回帰することにより算出することもできる。
【0036】
次いで、システム制御装置10は、総内部抵抗線L上における、現在の充電電力PINPに対応する点である入力電力点SINPを算出する。具体的には、システム制御装置10は、図4に示すように、バッテリコントローラから取得した現在のバッテリ4の総電圧VBAT、および現在のバッテリ4の充電電流ICHGを用い、これらに基づいて、入力電力点SINPを算出する。
【0037】
次いで、システム制御装置10は、総内部抵抗線L上における、最大入力可能電力PMAXに対応する点である最大入力可能電力点SMAXを算出する。具体的には、システム制御装置10は、最大入力可能電力点SMAXを算出するに際して、まず、図4に示す最大入力可能電力線LP_MAXを算出する。ここで、最大入力可能電力線LP_MAXは、バッテリ4を充電する際における充電電力を、最大入力可能電力PMAXとする際に、必要となる電流の値と、該電流を流した際における電圧の値との関係を示すものであり、上記にて算出した最大入力可能電力PMAXに基づいて、算出することができる。そして、システム制御装置10は、図4に示すように、総内部抵抗線Lと、最大入力可能電力線LP_MAXとの交点を求め、これを最大入力可能電力点SMAXとして算出する。
【0038】
そして、最後に、システム制御装置10は、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGを算出する。ここで、図5は、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGの算出方法を説明するための図である。具体的には、システム制御装置10は、図5に示すように、上記にて算出した総内部抵抗線L上であって、上記にて算出した入力電力点SINPと、最大入力可能電力点SMAXとの間に位置する点を、充電電力点STRGとして算出する。そして、システム制御装置10は、充電電力点STRGに対応する電力を、目標充電電力PTRGに設定する。
【0039】
このようにして、図2の時間t〜時間tにおいては、目標充電電力PTRGは算出される。
【0040】
そして、たとえば、図2の時間t〜時間tの任意の時間t11において、図6に示すように、上述した方法にしたがって、算出された入力電力点SINPをSINP_11とし、最大入力可能電力点SMAXをSMAX_11とし、目標充電電力点STRGをSTRG_11とした場合に、バッテリ4を充電するための目標充電電力を、充電電力点SCHG_11に基づいて算出されたPCHG_11に設定して、バッテリ4の充電を行なうと、時間t11の所定時間後の時間t12において、バッテリ4の総電圧VBATはVBAT_11からVBAT_12に上昇することとなる。
【0041】
そして、時間t11の所定時間後の時間t12において、上述した方法にしたがって、図6に示すように、入力電力点SINP_12、最大入力可能電力点SMAX_12を算出し、これらに基づき、目標充電電力点STRG_12の算出を行なうと、時間t12においては、時間t11における場合と比較して、目標充電電力点STRG_12を、最大入力可能電力点SMAX_12により近いものとすることができる。
【0042】
また、同様にして、時間t12において、バッテリ4を充電するための目標充電電力を、充電電力点SCHG_12に基づいて算出されたPCHG_12に設定して、バッテリ4の充電を行なうと、時間t12の所定時間後の時間t13において、バッテリ4の総電圧VBATはVBAT_12からVBAT_13に上昇することとなる。
【0043】
そして、時間t12の所定時間後の時間t13において、上述した方法にしたがって、図6に示すように、入力電力点SINP_13、最大入力可能電力点SMAX_13を算出し、これらに基づき、目標充電電力点STRG_13の算出を行なうと、時間t13においては、時間t12における場合と比較して、目標充電電力点STRG_13を、最大入力可能電力点SMAX_13により近いものとすることができる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、上述したような方法によって、目標充電電力PTRGを算出し、目標充電電力PTRGに基づいて、外部交流電源100から、バッテリ4へ充電電力を供給することにより、徐々に最大入力可能電力PMAXに近づけることができこれにより、図2の時間t〜時間tのように、充電開始時の充電電力を徐々に上昇させることが可能となる。
【0045】
なお、図5においては、目標充電電力点STRGを、入力電力点SINPと、最大入力可能電力点SMAXとの中間に設定するような構成を例示したが、目標充電電力点STRGは、入力電力点SINPと、最大入力可能電力点SMAXとの間の任意の点に設定することができ、特に限定されない。たとえば、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、入力電力点SINPにより近い位置に設定することにより、バッテリコントローラ8による、セル内部抵抗RCellの算出誤差や、総内部抵抗RBATの算出誤差、バッテリ4の総電圧VBATの検出誤差などの各種検出誤差および算出誤差を有効に吸収することができる。一方、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、最大入力可能電力点SMAXにより近い位置に設定することにより、バッテリ4の充電時間の短縮を図ることができる。
【0046】
たとえば、目標充電電力点STRGを設定する際に、バッテリコントローラ8により検出されたバッテリ4の総電圧VBATに基づいて、バッテリ4の総電圧VBATが低いほど、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、最大入力可能電力点SMAXに近い位置に設定し、また、バッテリ4の総電圧VBATが高いほど、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、入力電力点SINPに近い位置に設定することができる。
【0047】
このように、バッテリ4の総電圧VBATに基づいて、目標充電電力点STRGを設定することにより、バッテリ4の総電圧VBATが低い場合には、バッテリ4を構成する各セルのセル電圧Vcellと、充電上限電圧VLIMと、の差が比較的に大きく、そのため、比較的大きな充電電力でバッテリ4の充電を行なった場合でも、バッテリ4を構成する各セルのセル電圧Vcellが、充電上限電圧VLIMを超える可能性は低くなる。そのため、バッテリ4の総電圧VBATが低い場合に、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、最大入力可能電力点SMAXに近い位置に設定することにより、バッテリ4の充電時間の短縮を図ることができる。一方、バッテリ4の総電圧VBATが高い場合には、バッテリ4を構成する各セルのセル電圧Vcellと、充電上限電圧VLIMと、の差が比較的小さいため、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、入力電力点SINPに近い位置に設定することにより、バッテリ4を構成する各セルのセル電圧Vcellが、充電上限電圧VLIMを超えてしまうことをより適切に防止することができる。
【0048】
あるいは、目標充電電力点STRGを設定する際に、バッテリコントローラ8により検出されたバッテリ4の温度Tに基づいて、バッテリ4の温度Tが低いほど、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、入力電力点SINPに近い位置に設定し、また、バッテリ4の温度Tが高いほど、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、最大入力可能電力点SMAXに近い位置に設定することができる。
【0049】
バッテリ4の温度Tに基づいて、目標充電電力点STRGを設定することにより、バッテリコントローラ8による、セル内部抵抗RCellの算出誤差や、総内部抵抗RBATの算出誤差、バッテリ4の総電圧VBATの検出誤差などの各種検出誤差および算出誤差の影響が大きい場合(すなわち、バッテリ温度Tが低い場合)に、これらの誤差を確実に吸収できるようにすることができる。一方、これらの誤差の影響が小さい場合(すなわち、バッテリ温度Tが高い場合)に、これらの誤差を有効に吸収しながら、バッテリ4の充電時間の短縮を図ることができる。
【0050】
さらに、目標充電電力点STRGを設定する際に、バッテリコントローラ8により算出されたバッテリ4の総内部抵抗RBATに基づいて、バッテリ4の総内部抵抗RBATが低いほど、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、最大入力可能電力点SMAXに近い位置に設定し、また、バッテリ4の総内部抵抗RBATが高いほど、目標充電電力点STRGを、総内部抵抗線L上の、入力電力点SINPに近い位置に設定することができる。
【0051】
バッテリ4の総内部抵抗RBATに基づいて、目標充電電力点STRGを設定することにより、バッテリコントローラ8による、セル内部抵抗RCellの算出誤差や、総内部抵抗RBATの算出誤差、バッテリ4の総電圧VBATの検出誤差などの各種検出誤差および算出誤差の影響が大きい場合(すなわち、総内部抵抗RBATが高い場合)に、これらの誤差を確実に吸収できるようにすることができる。一方、これらの誤差の影響が小さい場合(すなわち、総内部抵抗RBATが低い場合)に、これらの誤差を有効に吸収しながら、バッテリ4の充電時間の短縮を図ることができる。
【0052】
そして、図2に示すように、時間tにおいて、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGが、外部交流電源100の供給可能電力PLIMと等しくなると、バッテリ4の充電は、外部交流電源100の供給可能電力PLIMで行なわれることとなる。なお、この際においても、システム制御装置10は、上述した方法にしたがって、目標充電電力PTRGの算出を一定周期で行なっている。
【0053】
そして、図2に示すように、時間tにおいて、最高電圧セルの電圧Vが、充電上限電圧VLIMに到達することとなる。以下、時間tから時間t(最高電圧セルの電圧Vが、充電上限電圧VLIMに到達した以降)における、バッテリ4を充電するための充電電力である目標充電電力PTRGを算出方法について、説明する。
【0054】
すなわち、時間t〜時間tにおいては、システム制御装置10は、上記と同様に、まず、バッテリ4に入力可能な電流である入力可能電流IMAXの算出、入力電力点SINPおよび最大入力可能電力点SMAXの算出を行なう。ここで、図7に、時間t〜時間tにおける、入力可能電流IMAXの算出方法を説明する図を示す。
【0055】
図7に示すように、時間t〜時間tにおいては、最高電圧セルの電圧Vが、充電上限電圧VLIMに到達しており、そのため、最高電圧セルの電圧Vが、充電上限電圧線LV_LIMを超えてしまい、その結果として、現在の充電電流ICHG、および現在の最高電圧セルの電圧Vが、それぞれ、入力可能電流IMAX、および最大許容電圧VMAXよりも高くなる。
【0056】
そのため、時間t〜時間tにおいては、図8に示すように、入力電力点SINPが、最大入力可能電力点SMAXよりも高くなってしまう(グラフ上、右上に位置することとなってしまう)。よって、時間t〜時間tにおいては、システム制御装置10は、上述した時間t〜時間tの場合と異なり、目標充電電力点STRGを、最大入力可能電力点SMAXと同じ位置に設定する。すなわち、時間t〜時間tにおいては、目標充電電力PTRGを、最大入力可能電力PMAXと等しくする。
【0057】
このようにして、図2の時間t〜時間tにおいては、目標充電電力PTRGは算出される。
【0058】
そして、たとえば、図2の時間t〜時間tの任意の時間t21において、図9に示すように、算出された入力電力点SINPをSINP_21とし、最大入力可能電力線LP_MAXをLP_MAX_21とし、最大入力可能電力点SMAX_21とし、目標充電電力点STRGをSTRG_21とした場合に、入力電力点SINP_21が、充電上限電圧VLIMを超えているため、目標充電電力点STRG_21は、最大入力可能電力線LP_MAX_21上の最大入力可能電力点SMAX_21と同じ位置とされ、これに基づき、目標充電電力PTRG_21が設定される。すなわち、目標充電電力PTRG_21を、最大入力可能電力PMAX_21と同じ値に設定することで、現在の入力電力PINP_21よりも低いものとする。
【0059】
また、同様に、時間t21の所定時間後の時間t22においても同様に、入力電力点SINP_22が、充電上限電圧VLIMを超えているため、目標充電電力点STRG_22は、最大入力可能電力線LP_MAX_22上の最大入力可能電力点SMAX_22と同じ位置とされ、これに基づき、目標充電電力PTRG_22が設定される。すなわち、目標充電電力PTRG_22を、最大入力可能電力PMAX_22と同じ値に設定することで、標充電電力PTRG_22がさらに低く設定される。
【0060】
そして、時間t22の所定時間後の時間t23、さらに時間t23の所定時間後の時間t24においても、同様に、目標充電電力Pが徐々に低く設定されていく。そして、これにより、図2の時間t〜時間tのように、最高電圧セルの電圧Vを、充電上限電圧VU_LIMと同等にしながら、外部交流電源100から、バッテリ4へ供給する充電電力を、徐々に低減させていき、最終的に、バッテリ4を満充電状態とすることができる。
【0061】
次いで、本実施形態における充電制御の流れを、図10に示すフローチャートに沿って説明する。なお、以下に説明する処理は、バッテリコントローラ8およびシステム制御装置10によって、一定周期で実行される。
【0062】
まず、ステップS1では、バッテリコントローラ8により、バッテリ4を構成する各セルのセル電圧VCell、バッテリ4の総電圧VBAT、バッテリ4の充電電流ICHG、およびバッテリ4の温度Tの検出が行われ、これらが、システム制御装置10に送信される。
【0063】
ステップS2では、バッテリコントローラ8により、ステップS1で検出した各セルのセル電圧VCellから、最高電圧セルの電圧Vを算出する処理が行なわれる。そして、算出された最高電圧セルの電圧Vは、システム制御装置10に送信される。
【0064】
次いで、ステップS3では、バッテリコントローラ8により、ステップS1で検出した各セルのセル電圧VCell、バッテリ4の総電圧VBAT、バッテリ4の充電電流ICHG、およびバッテリ4の温度Tに基づいて、各セルのセル内部抵抗RCell、バッテリ4の総内部抵抗RBATを算出する処理が行なわれる。そして、算出されたセル内部抵抗RCell、および総内部抵抗RBATは、システム制御装置10に送信される。また、この際に、バッテリコントローラ8は、最高電圧セルの内部抵抗Rを算出し、これを、システム制御装置10に送信する。
【0065】
ステップS4では、システム制御装置10により、最大許容電圧VMAXを算出する処理が行なわれる。具体的には、まず、バッテリコントローラ8により、ステップS1で検出したバッテリ4の充電電流ICHG、およびバッテリ4の温度Tに基づいて、充電上限電圧VLIMを算出する処理が行なわれ、これがシステム制御装置10に送信される。そして、システム制御装置10は、充電上限電圧VLIMに基づいて、図3に示す充電上限電圧線LV_LIMを算出し、図3に示すように、最高電圧セルの内部抵抗線LR_hと、充電上限電圧線LV_LIMと、の交点を求め、求めた交点における充電電流を、最大許容電圧VMAXとして算出する。なお、最高電圧セルの内部抵抗線LR_hは、上述したように、内部抵抗Rに基づいて算出することができる(図3参照)。
【0066】
ステップS5では、システム制御装置10により、電圧差ΔVを算出する処理が行なわれる。なお、電圧差ΔVは、図3に示すように、最大許容電圧VMAXと、最高電圧セルの電圧Vとの差であり、ΔV=VMAX−Vにしたがって算出することができる。
【0067】
ステップS6では、システム制御装置10により、追加可能電流Iaddを算出する処理が行なわれる。なお、追加可能電流Iaddは、図3に示すように、充電電流ICHGから、入力可能電流IMAXとするまでの電流値である。追加可能電流Iaddは、ステップS5で算出した電圧差ΔV、およびステップS3で算出した最高電圧セルの内部抵抗Rに基づいて、Iadd=ΔV/Rにしたがって算出される。
【0068】
次いで、ステップS7では、システム制御装置10により、入力可能電流IMAXを算出する処理が行なわれる。具体的には、入力可能電流IMAXは、ステップS1で検出された充電電流ICHG、およびステップS6で算出した追加可能電流Iaddに基づいて、IMAX=ICHG+Iaddにしたがって算出される。
【0069】
次いで、ステップS8では、システム制御装置10により、バッテリ4に入力可能な最大入力可能電力PMAXを算出する処理が行なわれる。具体的には、最大入力可能電力PMAXは、ステップS3で算出したバッテリ4の総内部抵抗RBAT、およびステップS7で算出した入力可能電流IMAXに基づいて、PMAX=IMAX×(RBATにしたがって算出される。
【0070】
次いで、ステップS9では、システム制御装置10により、現在の充電電力PINPを算出する処理が行なわれる。具体的には、現在の充電電力PINPは、ステップS1で検出された充電電流ICHG、およびバッテリ4の総電圧VBATに基づいて、PINP=ICHG×VBATにしたがって算出される。
【0071】
次いで、ステップS10では、システム制御装置10により、ステップS8で算出した最大入力可能電力PMAXと、ステップS9で算出した現在の充電電力PINPとの比較が行われる。比較の結果、現在の充電電力PINPが、最大入力可能電力PMAX未満である場合には、ステップS11に進み、一方、現在の充電電力PINPが、最大入力可能電力PMAX以上である場合には、ステップS12に進む。
【0072】
現在の充電電力PINPが、最大入力可能電力PMAX未満である場合、すなわち、図2に示す場面において、時間t〜時間tである場合には、ステップS11に進み、システム制御装置10は、上記した方法に従い、入力電力点SINPと、最大入力可能電力点SMAXとの間に位置する点を、充電電力点STRGとして算出し、算出した充電電力点STRGに対応する電力を、目標充電電力PTRGに設定する(図4、図5参照)。
【0073】
一方、現在の充電電力PINPが、最大入力可能電力PMAX以上である場合、すなわち、図2に示す場面において、時間t〜時間tである場合には、ステップS12に進み、システム制御装置10は、上記した方法に従い、最大入力可能電力点SMAXに対応する電力を、目標充電電力PTRGに設定する(図8参照)。
【0074】
そして、本実施形態では、上述したステップS1〜S12の動作を繰り返し実行することで、バッテリ4の充電制御が行われる。すなわち、本実施形態では、逐次、バッテリ4の状態(セル電圧VCell、総電圧VBAT、 充電電流ICHG、温度T、セル内部抵抗RCell、および総内部抵抗RBAT等)を検出し、バッテリ4の状態に応じて、目標充電電力PTRGを設定することにより、図2に示すように、バッテリ4の充電を行なうものである。
【0075】
本実施形態においては、上述したように、総内部抵抗RBATを用いて、総内部抵抗線Lを算出し、算出した総内部抵抗線L上における、現在の充電電力PINPに対応する点である入力電力点SINP、および上記にて算出した最大入力可能電力PMAXに対応する点である最大入力可能電力点SMAX、をそれぞれ算出し、総内部抵抗線L上であって、算出した入力電力点SINPと、最大入力可能電力点SMAXとの間に位置する点を、充電電力点STRGとして算出し、算出した充電電力点STRGに対応する電力を、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGに設定する。そして、このような本実施形態によれば、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGを算出する際に、入力電力点SINPと、最大入力可能電力点SMAXとの間に位置する任意の点を設定することにより、セル内部抵抗RCellの算出誤差や、総内部抵抗RBATの算出誤差、バッテリ4の総電圧VBATの検出誤差などの各種検出誤差および算出誤差を、吸収することができ、結果として、バッテリ4を充電する際に、バッテリ4の総電圧(またはバッテリ4を構成する各セル)が、所定の上限電圧を超えてしまうことを有効に防止することができる。特に、本実施形態によれば、現在のバッテリ4の状態(たとえば、バッテリ4の総電圧VBATや、バッテリ4の総内部抵抗RBAT)に応じて、その都度、総内部抵抗線Lを算出し、総内部抵抗線Lを用いて、上述した方法にしたがい、目標充電電力PTRGを設定するものである。そのため、本実施形態によれば、劣化がほとんど発生していない新品時においては、不要に充電電流が制限されてしまうことを抑制することができ、さらには、バッテリが劣化した場合でも、バッテリを過充電状態などの悪影響下にさらしてしまうことを有効に防止することができる。
【0076】
加えて、本実施形態によれば、バッテリ4の充電の段階によらず(たとえば、図2の時間t〜t、t〜t、t〜tのいずれの段階においても)、上述したように同様の手法にて、バッテリ4を充電するための目標充電電力PTRGを設定するものであるため、バッテリ4の充電の段階に応じて、充電制御マップを複数備えている必要がなく、そのため、充電制御を行う際における演算負荷を低減することができる。
【0077】
加えて、本実施形態によれば、上述したような各種検出誤差および算出誤差を吸収するためのマージンを、最終的に目標充電電力PTRGを求めるときのみに設ければよく、これらの検出誤差および算出誤差を吸収するためのマージンを、複数のステップに設ける必要がないため、少ない演算負荷で、バッテリ4の充電制御を行うことができる。
【0078】
さらに、本実施形態においては、最大入力可能電力点PMAXを算出する際に、最高電圧セルの電圧V、および最高電圧セルの内部抵抗Rを用いている。ここで、バッテリ4を構成する各セルは、いずれも最高電圧セルの電圧Vよりも低い電圧となっている。そのため、最大入力可能電力PMAXを算出する際に、最高電圧セルの電圧V、および最高電圧セルの内部抵抗Rを用い、最高電圧セルを基準にして、最大入力可能電力PMAXを算出することにより、最高電圧セルを含むバッテリ4を構成する各セルに適した最大入力可能電力を算出することができる。そして、これにより、バッテリ4の総電圧(またはバッテリ4を構成する各セルの電圧)が、所定の上限電圧を超えてしまうことをより有効に防止することができる。
【0079】
なお、上述した実施形態において、バッテリコントローラ8は本発明の電圧検出手段、上限電圧算出手段、内部抵抗算出手段、および温度検出手段に、システム制御装置10は本発明の最大入力可能電力算出手段、内部抵抗線算出手段、目標電力点算出手段、および入力電力設定手段に、それぞれ相当する。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0081】
たとえば、上述した実施形態では、最大入力可能電力PMAXを算出する際に、最高電圧セルの電圧V、および最高電圧セルの内部抵抗Rを用いるような構成を例示したが、たとえば、最高電圧セルの電圧V、および最高電圧セルの内部抵抗Rの代わりに、バッテリ4の総電圧VBAT、およびバッテリ4の総内部抵抗RBATを用いるような構成としてもよい。あるいは、任意のセルのセル電圧Vcell、およびセル内部抵抗Rcellを用いてもよい。
【0082】
また、上述した実施形態では、目標充電電力PTRGを算出し、目標充電電力PTRGに基づいて、バッテリ4の充電を行なうような例を示したが、目標充電電力PTRGに代えて、目標充電電流を算出し、算出した目標充電電流にてバッテリ4の充電を行なうような構成としてもよい。
【0083】
また、上述した実施形態では、図2に示すように、バッテリ4の充電を比較的SOCの低い状態から開始する場合について、例示したが、このような例に特に限定されず、バッテリ4の充電を比較的SOCの高い状態や満充電に近いような状態から開始する場合にも適用できることはもちろんである。なお、これら比較的SOCの高い状態や満充電に近いような状態のいずれからバッテリ4の充電を開始する場合においても、上記と同様に、まず、図2に示す時間t〜時間t、時間t〜tにおける場合と同様にして、目標充電電力PTRGを設定し、次いで、最高電圧セルの電圧Vが、充電上限電圧VLIMに到達した後は、図2に示す時間t〜時間tにおける場合と同様にして、目標充電電力PTRGを設定すればよい。
【符号の説明】
【0084】
1…バッテリ充電システム
2…強電ライン
3…充電装置
4…バッテリ
5…PTCヒータ
8…バッテリコントローラ
9…空調制御アンプ
10…システム制御装置
100…外部交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを充電するための充電電力または充電電流を制御するための充電制御システムであって、
前記バッテリの電圧を検出する電圧検出手段と、
前記バッテリの上限電圧を算出する上限電圧算出手段と、
充電電流の値と該充電電流を流した場合における前記バッテリの電圧の値との関係を示す内部抵抗線を算出する内部抵抗線算出手段と、
前記電圧検出手段により検出した前記バッテリの電圧、前記上限電圧算出手段により算出した前記バッテリの上限電圧、および前記内部抵抗線算出手段により算出した前記内部抵抗線から、前記バッテリに入力可能な電力である最大入力可能電力または前記バッテリに入力可能な電流である最大入力可能電流を算出する最大入力可能値算出手段と、
前記内部抵抗線上における、前記最大入力可能電力に対応する最大入力可能電力点または前記最大入力可能電流に対応する最大入力可能電流点と、現在バッテリに入力されている充電電力または充電電流に対応する充電電力点または充電電流点との間に位置する点を、目標電力点または目標電流点として算出する目標点算出手段と、
前記目標電力点または前記目標電流点に基づいて、前記バッテリを充電するための充電電力または充電電流を設定する入力値設定手段と、を備えることを特徴とする充電制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の充電制御システムにおいて、
前記バッテリは、複数のセルから構成される組電池であり、
前記電圧検出手段は、前記バッテリを構成する複数のセルのうち、特定セルの電圧、および前記バッテリの総セル電圧を、前記バッテリの電圧として検出し、
前記上限電圧算出手段は、前記特定セルの上限電圧を算出し、
前記内部抵抗線算出手段は、前記特定セルにおける、充電電流の値と該充電電流を流した場合における前記特定セルの電圧の値との関係を示す特定セル内部抵抗線、および、前記バッテリにおける、充電電流の値と該充電電流を流した場合における前記バッテリの総セル電圧の値との関係を示す総セル内部抵抗線を算出し、
前記最大入力可能値算出手段は、前記特定セル電圧、前記特定セル上限電圧、および前記特定セル内部抵抗線から、前記特定セルに入力可能な電力である特定セル最大入力可能電力または前記特定セルに入力可能な電流である特定セル最大入力可能電流を算出し、算出した特定セル最大入力可能電力または特定セル最大入力可能電流に基づいて、前記バッテリに入力可能な電力である総セル最大入力可能電力または前記バッテリに入力可能な電流である総セル最大入力可能電流を算出し、
前記目標点算出手段は、前記総セル内部抵抗線上における、前記総セル最大入力可能電力に対応する総セル最大入力可能電力点または前記総セル最大入力可能電流に対応する総セル最大入力可能電流点と、現在バッテリに入力されている充電電力または充電電流に対応する充電電力点または充電電流点との間に位置する点を、目標電力点または目標電流点として算出することを特徴とする充電制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の充電制御システムにおいて、
前記特定セルは、前記バッテリを構成する複数のセルのうち、最も電圧の高いセルであることを特徴とする充電制御システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の充電制御システムにおいて、
前記目標点算出手段は、前記電圧検出手段により検出された前記バッテリの電圧が低いほど、前記目標電力点または前記目標電流点を、前記最大入力可能電力点または前記最大入力可能電流点に近い点として、算出することを特徴とする充電制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の充電制御システムにおいて、
前記バッテリの温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記目標点算出手段は、前記温度検出手段により検出された前記バッテリの温度が低いほど、前記目標電力点または前記目標電流点を、前記充電電力点または前記充電電流点に近い点として、算出することを特徴とする充電制御システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の充電制御システムにおいて、
前記バッテリの内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段をさらに備え、
前記目標点算出手段は、前記内部抵抗算出手段により算出された前記バッテリの内部抵抗が高いほど、前記目標電力点または前記目標電流点を、前記充電電力点または前記充電電流点に近い点として、算出することを特徴とする充電制御システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の充電制御システムにおいて、
前記目標点算出手段は、前記電圧検出手段により検出された前記バッテリの電圧と、前記上限電圧算出手段により算出された前記バッテリの上限電圧とを比較し、前記バッテリの電圧が、前記バッテリの上限電圧を超えている場合には、前記最大入力可能電力点または前記最大入力可能電流点を前記目標電力点または前記目標電流点とすることを特徴とする充電制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−19679(P2012−19679A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93944(P2011−93944)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】