説明

充電制御装置及び電気自動車

【課題】不適切な給電ケーブルを使用してもトラブルの発生を未然防止できる充電制御装置を提供する。
【解決手段】給電ラインCBL1,CBL2を経由して接続される商用電源に基づいて、電気自動車の車載電池BT1を充電可能な充電制御装置CHGである。給電ラインから供給される商用電源の電圧値を、車載電池への充電動作の開始に先行して特定する第1処理(ST3)と、給電ラインから供給される商用電源の電圧値を、給電ラインに適宜レベルの電流が流れる状態で特定する第2処理(ST6)と、特定された2つの電圧値に基づいて給電ラインの適否を判断して、給電ラインが不適切であると判断する場合には、給電ラインの電流を遮断する第3処理(ST10)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電源を用いて車載電池を充電する充電制御装置及び、充電制御装置を搭載した電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、電動モータを動力源して走行する車両を意味し、一般に、車載電池から電力を得る構成を採っている。このような構成の自動車では、定期的に車載電池を充電する必要があり、家庭用コンセントなどから受けた交流電源に基づいて車載電池を充電するプラグイン方式も知られている(特許文献1〜特許文献6)。
【0003】
なお、プラグイン式の電気自動車として、現状では、内燃機関と電動モータとを併用するHEV(Hybrid Electric Vehicle)と、電動モータのみで構成されるEV(Electric Vehicle)とが存在するが、本明細書では、いずれも含んだ概念として電気自動車の用語を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−136510号公報
【特許文献2】特開平11−069512号公報
【特許文献3】特開2001−219733号公報
【特許文献4】特開2009−017675号公報
【特許文献5】特開2009−095157号公報
【特許文献6】特開2011−135663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなプラグイン式の電気自動車について、その車載電池を家庭用コンセントからの交流電源で充電する場合には、予期しないトラブルが発生するおそれがある。
【0006】
すなわち、充電時には1kW〜3.3kW程度の電力を要するので、家庭用コンセントから電気自動車までの距離が長い場合や、使用する給電ケーブルの電流容量が不十分な場合には、損失抵抗に伴う自己発熱によって、給電ケーブルの被覆が剥がれるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、不適切な給電ケーブルを使用してもトラブルの発生を未然防止できる充電制御装置、及び、このような充電制御装置を搭載した電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、給電ラインを経由して接続される商用電源に基づいて、電気自動車の車載電池を充電可能な充電制御装置であって、給電ラインから供給される商用電源の電圧値を、車載電池への充電動作の開始に先行して特定する第1手段と、給電ラインから供給される商用電源の電圧値を、給電ラインに適宜レベルの電流が流れる状態で特定する第2手段と、第1手段と第2手段が特定する2つの電圧値に基づいて給電ラインの適否を判断して、給電ラインが不適切であると判断する場合には、給電ラインの電流を遮断又は抑制するべく制御する第3手段と、を有して構成されている。
【0009】
好ましくは、第2手段は、給電ラインの電流値をあわせて特定し、第3手段は、特定された電流値と、2つの電圧値とに基づいて給電ラインの適否を判断するべきである。電流値の特定方法は、特に限定されないが、ホール素子を利用して給電ラインの電流を特定するのが効果的である。この場合、第2手段が特定する電流値は、商用電源を整流する整流回路の出力電流を計測して特定されるのが好適である。
【0010】
また、第1手段及び第2手段は、商用電源を整流する整流回路より上流側の計測値に基づいて電圧値を特定するのが好適である。この場合、第1手段及び第2手段は、サンプリング周期毎に計測値を取得し、複数の計測値に基づく演算を経て、前記電圧値を実効値として特定すると更に好ましい。
【0011】
前記整流回路の下流には、前記出力電流を正弦波波形に近づける力率改善部が設けられているのが好適であり、この場合には、第2手段は、サンプリング周期毎に前記出力電流の計測値を取得し、複数の計測値に基づく演算を経て、前記電流値を実効値として特定するのが効果的である。この場合には、給電ラインの損失抵抗を、正確に特定することができる。
【0012】
本発明の充電制御装置は、それ単体で構成しても良いが、電気自動車に搭載されて構成されるのが好適である。この意味では、上記何れか充電制御装置を搭載する電気自動車も、不適切な給電ケーブルの使用によるトラブルを未然防止できる。
【発明の効果】
【0013】
上記した通り、本発明によれば、不適切な給電ケーブルを使用してもトラブルの発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例に係る電気自動車と、その使用態様を説明するための概略図である。
【図2】充電制御装置の要部を示す回路図である。
【図3】電流センサの内部構成を示すブロック図である。
【図4】コンピュータ制御部の制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、実施例に係るプラグイン式の電気自動車と、その使用態様を説明するための概略図である。
【0016】
図示の電気自動車は、自動車走行時のエネルギー源となるメインバッテリ(車載電池)BT1と、メインバッテリBT1を規定レベルに充電する充電制御装置CHGと、メインバッテリBT1の直流電圧を交流電圧に変換するインバータINVと、インバータINVの出力に基づいて自動車を走行駆動する電動モータMOと、メインバッテリBT1の直流電圧を降圧するDC/DCコンバータCNVと、DC/DCコンバータCNVの出力電圧で充電されて、カーナビゲーションなどの車載電子機器の直流電源となるサブバッテリBT2とを有して構成されている。
【0017】
メインバッテリBT1は、適当なタイミングで規定レベル(例えば直流400V)に充電される必要がある。そこで、例えば、専用の中継器TRNSを介在させることで、各家庭の商用電源を自動車の差込プラグPGに供給することになる。かかる場合、中継器TRNSから差込プラグPGまでの充電ケーブルCBL1に問題がなくても、各家庭のコンセントCNから中継器TRNSまでの距離が長い場合や、使用する延長ケーブルCBL2の電流容量が不十分な場合には、これら給電ラインの損失抵抗に伴う発熱によって予期しないトラブルが生じるおそれがある。
【0018】
しかし、後述するように、本実施例の充電制御装置CHGは、メインバッテリBT1への充電動作開始前に給電ライン(CBL1+CBL2)の損失抵抗を計測し、不適切な延長ケーブルCBL2の使用を回避できるよう報知動作を実行している(図4のST1〜ST13参照)。
【0019】
図2(a)は、上記の動作を実現する充電制御装置CHGの要部を示すブロック図である。なお、本発明の趣旨に関係の無い部分は記載を省略している。
【0020】
図示の充電制御装置CHGは、差込プラグPGから受ける交流電源ACの電源ノイズを除去するノイズフィルタ部1と、ノイズフィルタ部1の出力電圧値Viを把握する電圧計測部2と、ノイズフィルタ部1の出力電圧を全波整流する整流部3と、整流部3の出力電流値Iを把握する電流計測部4と、整流部3の出力電圧を受けて適宜な通電制御を実行する力率改善部5(PFC回路5a及びPFC回路5b)と、力率改善部5の出力電圧を平滑化する第1平滑部6と、第1平滑部6の出力電圧を受けて動作するDC/DC変換部7と、DC/DC変換部7の出力電圧を平滑化して充電電圧を出力する第2平滑部8と、装置各部の動作を制御するコンピュータ制御部9と、を有して構成されている。
【0021】
この充電制御装置CHGでは、上記の構成において、第2平滑部8の出力直流電圧が、メインバッテリBT1に供給される構成を採っている。また、コンピュータ制御部9は、電子制御ユニットECU(Engine Control Unit)からの指示データに基づいて動作を開始し、メインバッテリBT1を規定レベル(例えば、400V)まで円滑に充電する電力制御動作を実行している。
【0022】
また、この実施例では、差込プラグPGに近接して感知センサSNSが配置されており、ECUは、感知センサSNSの出力に基づいて、差込プラグPGが挿入されたことを検知して、コンピュータ制御部9に動作開始を指示するよう構成されている。なお、DC/DCコンバータ7は、フルブリッジ型に構成されており、第1平滑部6が出力する直流電圧を所定周波数の交流電圧に変換している。また、コンピュータ制御部9や、充電制御装置CHGを構成する各種のデジタル論理素子は、差込プラグPGから受ける交流電源ACに基づくことなく、他の回路基板から供給される直流電源に基づいて動作している。
【0023】
コンピュータ制御部9は、アナログ信号を受けるADコンバータAD1〜AD2と、デジタル制御データを出力する出力ポートOT1〜OT3と、を有して構成されている。ここで、ADコンバータAD1は、電圧計測部2の計測値Vo’をデジタル値に変換しており、また、ADコンバータAD2は、電流計測部4の計測値Vs’をデジタル値に変換して、メインバッテリBT1の適切な充電制御動作に寄与している。
【0024】
一方、出力ポートOT1は、継電器で開閉されるスイッチ接点SWをON動作させる制御データを出力している。また、出力ポートOT2は、力率改善部5のスイッチング素子を間欠的にON動作させる制御データを出力している。同様に、出力ポートOT3は、DC/DCコンバータ7のスイッチング素子を間欠的にON動作させる制御データを出力している。なお、出力された制御データは、破線で示すリレー回路やドライバ回路などの適宜な中継回路を経由して各部に供給される。
【0025】
電圧計測部2は、第1増幅素子A1と、絶縁増幅素子SA、第2増幅素子A2とを有して構成されている。第1増幅素子A1は、例えばOPアンプで構成され、その反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)には、抵抗値4MΩ程度の減衰抵抗R1,R1を介して、ノイズフィルタ部1の出力交流電圧Vi(以下、監視電圧Viということがある)が供給されている。また、第1増幅素子A1の非反転入力端子(+)には、電源電圧Vccを分圧抵抗R3,R4で分圧した直流電圧も供給されている。そして、反転入力端子(−)と出力端子との間には、帰還抵抗R2が接続されている。なお、ダイオードD1,D2は過電圧保護用の素子であり、コンデンサC1〜C3は、主として、ノイズ対策として接続されている。
【0026】
各素子は、上記の通りに接続されているので、第1増幅素子A1の出力電圧Voは、ノイズフィルタ部1の出力交流電圧(監視電圧)Viと電源電圧Vccと各抵抗値とで規定されることになり、設計値として、Vo=−α*Vi+β*Vccの関係式が成立する。すなわち、第1増幅素子A1の出力電圧Voは、直流電圧(β*Vcc)に、交流電圧(−α*Vi)が重畳した脈流電圧となる。なお、理想的には、αは抵抗値R1〜R4で規定され、βは抵抗値R3〜R4で規定される。
【0027】
脈流電圧Voは、抵抗R5とコンデンサC4によるCRノイズフィルタ回路を経由して、絶縁増幅素子SAに供給される。特に限定されるものではないが、本実施例では、絶縁増幅素子SAとして、ACPL−782T(Automotive Isolation Amplifier)を使用している。内部構成は、図2(b)に示す通りであり、入力側と出力側とが絶縁された状態で動作して、差動電圧Vout(=Vout+−Vout−)が出力されるよう構成されている。そして、この内部構成に対応して、本実施例では、第1増幅素子A1及びその付属回路についての第1グランドGND1と、それ以外の回路についての第2グランドGND2とを区別して構成している。
【0028】
第2増幅素子A2は、例えばOPアンプで構成され、その非反転入力端子(+)と反転入力端子(−)には、入力抵抗R7や入力抵抗R8を介して、絶縁増幅素子SAの差動電圧Voutが供給されている。そして、反転入力端子(−)と出力端子との間には、帰還抵抗R9が接続されている。なお、コンデンサC5は、ノイズ対策のための素子である。上記の回路構成において、本実施例では、抵抗値としてR7=R8=r1、R6=R9=r2に設計することで、第2増幅素子A2の出力電圧Vo’を、Vo’=r2/r1*Voutとしている。
【0029】
このようにして得られた脈流電圧出力Vo’は、抵抗R10とコンデンサC6によるCRノイズフィルタ回路を経由して、ADコンバータAD1に供給される。そのため、コンピュータ制御部9では、所定のサンプリング周期で脈流電圧出力Vo’を読み込むことで、ノイズフィルタ部1の出力交流電圧Viのリアルタイム値を把握することができ、リアルタイム値を集計演算することで出力交流電圧(監視電圧)Viの実効値(root mean square)を特定することができる。特に限定されないが、この実施例では、20μSのサンプリング周期で、脈流電圧出力Vo’の値を取得している。
【0030】
電流計測部4は、図2(c)に端子配列を示す電流センサIS(ACS713)を中心に構成されている。この電流センサISは、ホールセンサ回路(Hall sensor circuit with a copper conduction path)を内蔵して構成されている。そして、本実施例では、入力端子(IPIP)間に、整流部3の出力電流Iが流れるよう接続されているので、電流センサISの出力端子には、脈流状態の直流電流Iに比例した電圧Vsが出力されることになる。
【0031】
ここで、電流センサISの下流側には、PFC回路5a及びPFC回路5bによる力率改善部5が設けられているので、整流部3の出力電流I(以下、監視電流Iということがある)は、ノイズフィルタ部1の出力電圧Viとほぼ同相の正弦波(全波整流波)となり、その結果、検出電圧Vsもほぼ正弦波(全波整流波)となる。この検出電圧Vsは、2つの抵抗R11,R12で分圧された状態で、ADコンバータAD2に供給される。なお、コンデンサC7,C8はノイズ対策のための素子であり、ダイオードD3はADコンバータ保護用の素子である。
【0032】
ADコンバータAD2に供給された検出電圧Vs’は、脈流電圧出力Vo’の取得タイミングと同じタイミングで、20μS毎にコンピュータ制御部9に取得される。そして、コンピュータ制御部9は、取得したリアルタイム値を集計演算することで、脈流状態の監視電流Iの実効値を特定することになる。
【0033】
力率改善部5は、同一構成のPFC回路5aとPFC回路5bとが並列接続されて構成されている。各PFC回路5a,5bは、NチャネルMOSトランジスタQ1,Q3と、各トランジスタQ1,Q3のドレイン端子と電流センサISとを接続する平滑コイルL1,L1と、トランジスタQ1,Q3のドレイン端子とソース端子との間に接続されたバイアス抵抗R13,R15と、バイアス抵抗R13,R15に並列接続されたPNP型トランジスタQ2,Q4と、トランジスタQ2,Q4のベース端子とエミッタ端子との間に接続されたダイオードD4,D5と、ベース端子と出力ポートOT2とを接続するベース抵抗R14,R16と、ダイオードD6,D7と、を有して構成されている。
【0034】
そして、出力ポートOT2からHレベルの制御データが出力されると、バイアス抵抗R13やバイアス抵抗15にバイアス電流が流れることで、対応するトランジスタQ1,Q3がON動作する。一方、出力ポートOT2の制御データがLレベルのタイミングでは、対応するトランジスタQ1,Q3がOFF動作する一方で、対応するダイオードD6,D7がON動作して、第1平滑部6のコンデンサC10が充電される。
【0035】
なお、PFC回路5a,5bの動作周波数などに対応して、第1平滑部6のコンデンサC10は、例えば、1500〜2000μF程度に設定され、抵抗R17は、例えば、60〜150KΩ程度に設定される。また、第2平滑部8についても、DC/DCコンバータ7の動作周波数などに対応して、各受動素子L2,C11,C12,R18の値が適宜に設定される。
【0036】
図4は、コンピュータ制御部9による制御動作を説明するフローチャートである。図示の通り、メインバッテリ充電のための制御動作は、メイン制御処理(図4(a))と、データ取得処理(図4(b))に大別されて実行されている。ここで、データ取得処理は、タイマ割込みによって20μS毎に繰返し起動され、メイン制御処理は、差込プラグPGの挿入を認識したECUからの指示に基づいて起動される。なお、先に説明した通り、ECUは、感知センサSNSの出力に基づいて、差込プラグPGが挿入されたことを認識している。
【0037】
メイン制御処理(図4(a))の説明に先立って、先ず、データ取得処理(図4(b))から説明する。タイマ割込みによってデータ取得処理が起動されると、CPUは、ADコンバータAD1から、その時の電圧計測部2の計測値Vo’を取得して、第1バッファ領域に順番に記憶する(ST20)。第1バッファ領域は、計測値Vo’に基づいて監視電圧Viの実効値を算出するための記憶領域であり、電源周波数50/60Hzとサンプリング周期20μSとの関係で、RMS(root mean square)演算に必要な十分な個数のデータが記憶できる記憶容量を有している。
【0038】
次に、CPUは、ADコンバータAD2から、その時の電流計測部4の計測値Vs’を取得して、第2バッファ領域に順番に記憶して割込み処理を終える(ST21)。第2バッファ領域も、計測値Vs’に基づいて監視電流Iの実効値を算出するための記憶領域であり、RMS演算に必要な十分な個数のデータが記憶できる記憶容量を有している。
【0039】
以上の通り、本実施例では、20μS毎のタイマ割込みによってデータ取得処理(図4(b))が繰り返し実行されるので、第1バッファ領域と第2バッファ領域には、20μSをサンプリング周期として、電圧計測部Vo’と電流計測値Vs’とが記憶されることになる。なお、特に限定されるものではないが、第1バッファ領域や第2バッファ領域は、リングバッファ構造を有している。
【0040】
以上のようなデータ取得処理に並行して、図4(a)に示すメイン制御処理が実行される。ECUからの指示に基づいてメイン制御処理が起動されると、コンピュータ制御部9のCPUは、必要な初期設定処理(ST1)を実行した上で、電源スイッチSWをON動作させるべく、出力ポートOT1からアクティブレベルの制御データを出力する(ST2)。なお、初期設定処理(ST1)には、CPUに対する割込み許可設定や、割込み周期(20μS)の設定などの処理が含まれているので、ステップST1の処理が終わった後は、20μS毎に図4(b)に示すデータ取得処理が実行されることになる。
【0041】
ステップST2の処理が終われば、そのタイミングにおける第1バッファ領域の複数個のデータについてRMS演算を実行して、監視電圧Eoの実効値を特定して記憶する(ST3)。このタイミングでは、力率改善部5やDC/DC変換部7は、動作を開始していないので、整流部3の出力電流I(監視電流I)は事実上ゼロであり、差込プラグPGに供給されている商用電源の開放電圧が特定されることになる。すなわち、ステップST3のタイミングで特定される監視電圧は、延長ケーブルCBL2などの損失抵抗rに拘らない開放電圧値Eoであって、図1の実施態様では、家庭用コンセントCNから出力される商用電源の電圧値Eoとなる。
【0042】
以上の処理が終われば、続いて、メインバッテリBT1の充電を開始するための初期制御動作を開始して、計測タイミングに達するのを待つ(ST4〜ST5)。この初期制御動作は、メインバッテリBT1の放電状態などに対応して、過電流を防止して円滑な充電動作を実現するための処理であり、通常は1分程度で完了する。そして、初期制御動作を完了すべきか否かは、他の電流センサの出力に基づいて特定される。
【0043】
そして、初期制御動作を終えてよい計測タイミングに達すると、本実施例では、定常制御動作に移行するに先立って、先ず、監視電圧Viを特定している(ST6)。具体的には、そのタイミングにおける第1バッファ領域の複数個のデータについてRMS演算を実行して、監視電圧Viの実効値を特定して記憶する(ST3)。
【0044】
このタイミングでは、力率改善部5やDC/DC変換部7がほぼ定常動作を実行しているので、特定される監視電圧Eは、コンセントCNから出力される商用電源の電圧値と、充電ケーブルCBL1や延長ケーブルCBL2など給電ラインの損失抵抗rと、監視電流Iの値とに基づいた値となる。そこで、次に、そのタイミングにおける第2バッファ領域の複数個のデータについてRMS演算を実行して、監視電流Iの実効値を特定して記憶する(ST7)。
【0045】
ステップST6の処理で特定された監視電圧の電圧値Eは、給電ラインの損失抵抗rによる電圧降下r*Iの分だけ、開放電圧値Eoが低下したと考えることができる。すなわち、E=Eo−r*Iの関係が成立するので、続いて、給電ラインの損失抵抗rをr=(E−Eo)/Iと特定する(ST8)。
【0046】
ところで、各ADコンバータAD1,AD2の出力値と、監視電圧Viや監視電流Iの値との関係は、各増幅回路の増幅率などに対応して一意に特定されるので、適宜な校正演算を施すことによって、損失抵抗rを正確に特定することができる。なお、この損失抵抗rは、事実上、損失インピーダンスと同義である。
【0047】
次に、給電ラインの損失抵抗rが正常レベルか否かを判定して(ST9)、万一、異常レベルであれば、電源スイッチSWをOFF動作させるべく出力ポートOT1から非アクティブレベルの制御データを出力し、給電ラインにインピーダンス異常があることを報知する(ST1)。報知動作は、適宜に選択されるが、例えば、(1)警報ランプを点灯させる、(2)ブザー音を出力する、(3)予めメモリに記憶されている報知音声を出力する、などの報知動作が実行される。なお、正常レベルか否かの判定閾値は、例えば、2〜3Ω程度の値に設定される。
【0048】
一方、給電ラインの損失抵抗rが正常レベルであれば、メインバッテリBT1の充電が完了するまで定常制御動作を継続する(ST11〜ST12)。そして、充電動作が完了すれば、充電完了を報知すると共に、電源スイッチSWをOFF動作させるべく出力ポートOT1から非アクティブレベルの制御データを出力してメイン制御処理を終える(ST13)。
【0049】
正常時の報知動作も、適宜に選択されるが、例えば、(1)動作完了音を出力する、(2)予めメモリに記憶されている報知音声を出力する、などの報知動作が実行される。
【0050】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定するものではない。例えば、実施例では、電源スイッチSWをON動作させた後に監視電圧Eoを取得したが、電源スイッチSWをON動作させる以前に監視電圧Eoを取得しても良いのは勿論である。
【0051】
また、実施例では、給電ラインのインピーダンスを特定したが、必ずしも、この動作は必須ではなく、入力電流が流れないか、或いは、殆ど入力電流が流れないタイミングにおける監視電圧の値Eoと、所定レベルの電流が流れたタイミングでの監視電圧の値Eをと比較して、給電ラインの適否を判定しても良い。なお、より簡易的には、監視電流の電流値を特定することなく、適宜なタイミングで給電ラインの適否を判定しても良い。
【0052】
また、実施例の説明では、給電ラインの損失抵抗が正常レベルでない場合には、充電動作を停止したが、必ずしも、このような制御に限定されない。すなわち、例えば、軽微な異常レベルの場合には、充電電流を制限するなど、給電ラインでの熱損失を抑制した状態で、充電動作を実行するのも好適である。この場合、充電完了までの時間が長引くが、ケーブル発熱によるトラブルを解消することができ、且つ、電気自動車を走行可能状態に設定することができる。
【0053】
また、実効値の算出手法は、適宜に変更可能であり、必ずしも、リアルタイム値をroot mean square演算する必要はない。また、必ずしも、実効値を正確に特定する必要もない。
【符号の説明】
【0054】
CBL1 給電ライン
CBL2 給電ライン
ST3 第1手段
ST6 第2手段
ST10 第3手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電ラインを経由して接続される商用電源に基づいて、電気自動車の車載電池を充電可能な充電制御装置であって、
給電ラインから供給される商用電源の電圧値を、車載電池への充電動作の開始に先行して特定する第1手段と、
給電ラインから供給される商用電源の電圧値を、給電ラインに適宜レベルの電流が流れる状態で特定する第2手段と、
第1手段と第2手段が特定する2つの電圧値に基づいて給電ラインの適否を判断して、給電ラインが不適切であると判断する場合には、給電ラインの電流を遮断又は抑制するべく制御する第3手段と、
を有して構成されていることを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
第2手段は、給電ラインの電流値をあわせて特定し、
第3手段は、特定された電流値と、2つの電圧値とに基づいて給電ラインの適否を判断する請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
第1手段及び第2手段は、商用電源を整流する整流回路より上流側の計測値に基づいて電圧値を特定している請求項1又は2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
第1手段及び第2手段は、サンプリング周期毎に計測値を取得し、複数の計測値に基づく演算を経て、前記電圧値を実効値として特定している請求項3に記載の充電制御装置。
【請求項5】
第2手段が特定する電流値は、商用電源を整流する整流回路の出力電流を計測して特定される請求項2に記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記整流回路の下流には、前記出力電流を正弦波波形に近づける力率改善部が設けられている請求項5に記載の充電制御装置。
【請求項7】
第2手段は、サンプリング周期毎に前記出力電流の計測値を取得し、複数の計測値に基づく演算を経て、前記電流値を実効値として特定している請求項6に記載の充電制御装置。
【請求項8】
電気自動車に搭載されて構成されている請求項1〜7の何れかに記載の充電制御装置。
【請求項9】
電気自動車に搭載されて構成されている請求項1〜8の何れかに記載の充電制御装置を搭載する電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−66328(P2013−66328A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204125(P2011−204125)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】