説明

充電機能を備えた駐車設備及びその電気自動車異常確認方法

【課題】 入・出庫作業時に入出庫部で電気自動車の異常有無情報を利用者が確認できる機械式駐車設備を提供すること。
【解決手段】 入出庫部3から入庫させる電気自動車EVに充電する機能を備え、前記入出庫部3は、電気自動車EVに接続する充電ケーブル24のプラグ25と適合する異常確認用電源コンセント41を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に充電する機能を備えた駐車設備と、その電気自動車の異常を確認する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の車両を駐車させるための機械式駐車設備がマンション、ビジネス街、及びショッピング街等に設置され、スペースの有効利用が図られている。この機械式駐車設備としては、箱型循環式、水平循環式、平面往復式、縦横移動パズル式、エレベータ式、垂直循環式、多段式、及び平面駐車移動式等、種々の形式の駐車設備が設置条件等に応じて採用されている。
【0003】
一方、近年、電気自動車(この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「電気自動車」は、「電気自動車」、「電動機と内燃機関とを組合わせたハイブリッド車」等の充電を必要とする車両をいう)が普及している。このような電気自動車は、従来の燃料の代わりに電気をバッテリに充電する必要がある。そのため、上記したような駐車設備に格納している時間を利用して充電する充電機能を備えた駐車設備が発明されている。
【0004】
この種の先行技術として、例えば、駐車棚側に給電部コネクタを設け、パレット側に受電部コネクタを設け、この受電部コネクタとパレット側部に設けた中継スタンドとの間を中継ケーブルで接続し、パレットに搭載した充電要求の電気自動車の充電口と中継スタンドとの問を充電ケーブルで接続し、その状態でエレベータ搬器(昇降台)によって格納棚に移載格納されることで、上記給電部コネクタと受電部コネクタとが接続されて電気自動車への充電が行われるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2789062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気自動車は、充電ケーブルを電源に接続すると、電気自動車の異常有無情報が車内の表示ランプ等によって利用者に報知されるようになっている。
【0007】
一方、電気自動車の利用者は、入・出庫作業に際し、車載バッテリーの残容量や、その他、電気自動車自体の種々の機能に関する異常の有無が気になる。
【0008】
しかしながら、機械式駐車設備に乗入れる電気自動車は、例えば、上記特許文献1のエレベータ式駐車設備のように、充電要求する電気自動車を充電パレットに搭載して充電ケーブルで電気自動車の充電口と充電パレットとの間を接続した状態では、充電パレット上で充電ケーブルを介して電気自動車と充電パレットとが接続された状態となるが、入出庫部においては充電パレットが電源に接続されていないので、上記したような電気自動車の異常有無を確認することはできない。
【0009】
そこで、本発明者は、入出庫部に配置された電気自動車においても、入庫時にはこれから接続しようとする充電ケーブル、また出庫時には既に接続されこれから取り外そうとする充電ケーブル等を利用して電気自動車の異常有無情報を知ることができれば便利であると考えた。
【0010】
本発明の目的は、入・出庫作業時に入出庫部で電気自動車の異常有無情報を利用者が確認できる機械式駐車設備と、その電気自動車異常確認方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る機械式駐車設備は、入出庫部から入庫させる電気自動車に充電する機能を備えた機械式駐車設備であって、前記入出庫部は、電気自動車に接続する充電ケーブルと適合する異常確認用電源部を備えている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「異常確認用電源部」は、車載された充電ケーブルを接続する電源部、及び電気自動車に接続する充電ケーブルが設置された電源部のいずれも含む。これにより、電気自動車を機械式駐車設備に入・出庫させる時に、入出庫部において充電ケーブルで電気自動車と異常確認用電源部とを接続することにより、電気自動車の異常有無情報を利用者が容易に確認することができる。
【0012】
また、前記異常確認用電源部は、前記充電ケーブルのプラグに適合した電源コンセントを有していてもよい。このようにすれば、一端を電気自動車に接続した充電ケーブルの他端に設けられたプラグを電源コンセントに差し込むことで、電気自動車の異常有無情報を利用者が容易に確認することができる。
【0013】
さらに、前記充電ケーブルは、前記異常確認用電源部に接続した該充電ケーブル及び異常確認用電源部の少なくとも一方の異常有無情報を利用者に報知する報知手段を備えていてもよい。このようにすれば、電気自動車に接続する充電ケーブルや異常確認用電源部の異常も、例えば、発光等による報知手段によって利用者に有無報知することで、利用者が容易に異常有無情報を確認することができる。
【0014】
また、前記電気自動車は、該電気自動車の状態情報を外部に送信する送信部を有し、駐車設備は、前記電気自動車の状態情報を受信する受信部と、該受信した状態情報の異常確認診断を行う異常確認制御部と、診断結果を利用者に報知する報知部とを有していてもよい。この送信部と受信部とによる通信手段としては、無線通信手段、電力線通信手段等が用いられる。このようにすれば、電気自動車の送信部から送信された状態情報を受信部で受信し、その得られた状態情報の異常確認診断を行って診断結果を利用者に報知することができるので、利用者は車外において電気自動車の異常確認診断結果を容易に確認することができる。
【0015】
さらに、前記駐車設備は複数の充電パレットを備え、前記異常確認用電源部は、前記充電パレットが入出庫部に配置されている時にのみ異常確認が可能なように構成されていてもよい。このようにすれば、充電パレットの1台が必ず入出庫部に配置されている状態で異常確認用電源部と電気自動車とが接続されるので、充電パレットの台数分の電源容量で異常確認用電源を確保することができ、異常確認用電源を共通とすることで駐車設備における電源容量を増やすことなく電気自動車の異常確認を行うことができる。
【0016】
一方、本発明に係る機械式駐車設備の電気自動車異常確認方法は、前記機械式駐車設備における電気自動車異常確認方法であって、前記電気自動車の入庫時又は出庫時に、該駐車設備の入出庫部において電気自動車と駐車設備側の異常確認用電源部とを充電ケーブルで接続することで供給される電力で該電気自動車の異常確認診断を行い、該電気自動車の異常有無情報を利用者に報知するようにしている。これにより、一連の入・出庫作業の中で、入出庫部において充電ケーブルで異常確認用電源部と電気自動車とを一時的に接続するだけで電気自動車の「異常の有無」を確認でき、異常がある場合でも適切な対処を迅速に思案することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入・出庫作業時に充電ケーブルを用いて容易に電気自動車の「異常の有無」を確認することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る機械式駐車設備の第1実施形態であるエレベータ式駐車設備を示す全体概略正面図である。
【図2】図1に示すエレベータ式駐車設備の制御ブロック図である。
【図3】図1に示すエレベータ式駐車設備における電気自動車異常確認フローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係るエレベータ式駐車設備の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基いて説明する。以下の実施形態では、機械式駐車装置の一例として、一般自動車V(非電気自動車、ガソリン車等)を搭載する標準パレット90と、電気自動車EVを搭載する充電パレット20とを混載した、下部90°乗入れ方式のエレベータ式駐車設備1を例に説明する。
【0020】
図1に示すように、エレベータ式駐車設備1(正面側の外装板を取除いた状態で示す)は、鉄骨構造体の外面に外装板が設けられた駐車塔2を有し、この駐車塔2の地上1階が入出庫部3(「入庫」と「出庫」が同一の場所及び別の場所を含み、乗入れ部等を含む)となっている。入出庫部3の乗入れ床4には、ピット5が形成されている。また、入出庫部3には入出庫口6が設けられ(この例では左方)、この入出庫口6には、開閉式の入出庫口扉7が設けられている。また、入出庫口6の外部側方には、運転操作盤8が配設されている。
【0021】
このようなエレベータ式駐車設備1は、駐車塔2の中央部の鉛直方向に昇降路10が形成され、この昇降路10を挟んで図の左右両側の鉛直方向に複数段の格納棚11(駐車格納部)が設けられている。これらの格納棚11は、鉛直方向に設けられた棚柱9に設けられている。
【0022】
また、この実施形態のエレベータ式駐車設備1では、上層5階が標準パレット90の格納棚11となっており、下層3階が充電パレット20の格納棚11となっている。充電パレット20の格納棚11には、(1) 〜(6) の番号を付している。充電パレット20は、標準パレット90と同一の形態である。なお、この例では、標準パレット90と充電パレット20とを混載しているが、全て充電パレット20で構成してもよい。
【0023】
一方、上記昇降路10には、パレット20,90を搬送するエレベータ搬器12が設けられている。このエレベータ搬器12は、駐車塔2の上部に設けられた昇降駆動部13で巻かれる昇降用ワイヤロープ14によって昇降路10を昇降させられる。ワイヤロープ14の反エレベータ搬器側には、巻上げ力を軽減するカウンタウエイト15が設けられている。
【0024】
また、エレベータ搬器12には、パレット20,90を持上げて旋回させる機能と、パレット20,90を上記格納棚11の棚レール16との間で移載させる機能とを有するパレット持上・旋回・移載装置17が備えられている。各パレット20,90は、このパレット持上・旋回・移載装置17により、各格納棚11とエレベータ搬器12との間を車輪21,91で移載されるとともに、入出庫部3で持上げられて90°旋回させられる。このパレット持上・旋回・移載装置17は、公知の手段が採用される。
【0025】
さらに、この実施形態の駐車装置1には、コンセント・プラグ接続方式の給電手段30が備えられている。この給電手段30は、上記充電パレット20の側部に受電部(コネクタ)31が設けられ、この充電パレット20を格納する各格納棚11の所定位置に給電部(コネクタ)32が設置されている。この給電手段30によれば、充電パレット20を格納棚11に格納することで、受電部31が給電部32と接続されるようになっている。なお、この給電手段30は、トロリ接続方式としてもよい。また、充電パレット20には、上記受電部31と中継給電線34(図2)で接続された中継部(中継スタンド)22が設けられている。
【0026】
そして、上記入出庫部3の所定位置に、充電ケーブル24に適合した異常確認用電源部40が設けられている。この実施形態の異常確認用電源部40は、駐車塔2(設備本体)の反入出庫口側の壁面18に設けられた異常確認用電源コンセント41であり、この異常確認用電源コンセント41は上記充電ケーブル24に適合しており、充電ケーブル24のプラグ25を差し込むことができようになっている。この異常確認用電源コンセント41は、充電パレット20に搭載した電気自動車EVの充電口27に充電アダプタ26を接続した状態で、充電ケーブル24のプラグ25を差し込むことができる位置に設けられている。この異常確認用電源部40は、入出庫部3の適所(例えば、図示する壁面18、又は乗入れ床4に立設したスタンド等)に設置される。
【0027】
また、この実施形態では、異常確認用電源コンセント41からの通電は、充電パレット20が入出庫部3に配置されている時にのみ可能となっており、エレベータ式駐車設備1における充電パレット20の台数分(この例では6台分)の電源容量で異常確認用電源コンセント41の電源を確保している。
【0028】
さらに、この実施形態では、異常確認用電源部40として異常確認用電源コンセント41を示しているが、例えば、駐車設備1に常設された充電ケーブル等であってもよい。
【0029】
図2に示すように、上記エレベータ式駐車設備1の制御ブロックとしては、パレット番号/格納棚番号/利用者ID/充電要求有無等を一体的に記憶するRAMと、ROM、CPU等を備え、各部を制御する制御装置50と、パレット搬器の搬出入駆動部、入出庫口扉の開閉駆動部等を備えた駆動部52と、入出庫部の車両・人検知手段、入出庫口の車両・人検知手段等を備えた検知部53と、「前進」「停車」「後進」の案内灯を備えた入庫誘導案内灯54と、充電制御部51と、上記運転操作盤8とが、I/O装置55(入出力装置)を介して接続され、各部の間で信号の送受信が行われるようになっている。
【0030】
上記運転操作盤8には、最上部に表示部56が設けられ、その下方に、「スタート」、「安全確認」、「終了扉閉」、「空呼」、「暗証」、「取消」、「充電要求」の各釦が配置された釦部57が設けられている。この釦部57の側方には、「入口番号」と「呼番号」の表示部58、入出庫を行うパレット番号や暗証番号の入力等に使用されるテンキー59、「非常停止」釦60が設けられ、最下部には、「制御電源」、「運転モード」の各選択スイッチ61が配設されている。
【0031】
また、上記充電制御部51には、RAM、ROM、CPU等が備えられ、各格納棚11毎の開閉器63、電力量メータ64、及びブレーカ65が設けられた充電電源装置62と接続されている。この充電電源装置62には、外部電源66から電力供給されている。
【0032】
一方、この図では、右側に示す(6) の充電パレット20が格納棚11に格納されて充電している状態を示し、左側に示す(5) の充電パレット20がエレベータ搬器12によって入出庫部3に着床して配置された状態を示している。
【0033】
上記(6) の充電パレット20は、受電部31が給電部32に接続され、この給電部32が給電配線33で接続された充電電源装置62の最下部の開閉器63が接続された状態を示している。さらに、充電パレット20の受電部31は、中継部22と中継給電線34で接続されている。中継部22には、上記充電ケーブル24のプラグ25を差し込むコンセント23が設けられている。このコンセント23に充電ケーブル24の一端に設けられたプラグ25が接続され、この充電ケーブル24の他端に設けられた充電アダプタ26が電気自動車EVの充電口27に接続されている。この充電口27は、電気自動車EVの電子コントロールユニット70(以下、「ECU」という)に接続された車載充電器71を介してバッテリBTに接続されている。上記ECU70には、電気自動車EVの車内に設けられた異常有無表示ランプ72が接続されている。
【0034】
これに対し、上記(5) の充電パレット20は入出庫部3に配置されており、この充電パレット20に搭載された電気自動車EVの充電口27に充電アダプタ26が接続された充電ケーブル24は、他端に設けられたプラグ25が入出庫部3の壁面18に設けられた異常確認用電源コンセント41に接続されている。
【0035】
この異常確認用電源コンセント41には、プラグ25が差し込まれたことを検知するプラグ差し込み検知手段たるリミットスイッチ42が内蔵されている。このリミットスイッチ42はI/O装置55に接続されており、このリミットスイッチ42でプラグ25が差し込まれたことを検知することにより、後述するように電気自動車EVの異常確認が開始される。この実施形態では、プラグ差し込み検知手段をリミットスイッチ42による「差し込み検知手段」としているが、例えば、後述する図4のように、異常確認用電源コンセント41の電力線に通電センサを設けた「通電検知手段」としてもよい。また、これらは一方を備えさせても両方を備えさせてもよい。
【0036】
さらに、この例の充電ケーブル24には、二点鎖線で示すように中間部分にコントロールボックス45が設けられており、このコントロールボックス45に異常有無表示ランプ46が設けられている。このコントロールボックス45の異常有無表示ランプ46は、内蔵された漏電検知ユニットによる漏電検知や、異常確認用電源コンセント41の異常検知(通電検知)を確認できるもの等が設けられる。
【0037】
このコントロールボックス45によれば、充電ケーブル24の充電アダプタ26を電気自動車EVの充電口27に接続し、プラグ25を異常確認用電源コンセント41に接続することで、コントロールボックス45の異常有無表示ランプ46が、例えば、「異常あり/赤点灯」、「異常なし/緑点灯」となることで、充電ケーブル24の漏電検知ができ、電源ランプの未点灯による異常確認用電源コンセント41の異常検知を確認することができ、これらの異常確認結果を利用者に対して報知することができる。なお、このコントロールボックス45に、例えば、電気自動車EVに備えられた異常確認機能による確認結果が表示されるようにしてもよい。
【0038】
次に、図3に基いて入出庫部3における電気自動車異常確認フローチャートを以下に説明する。以下の説明では、入庫又は出庫のために電気自動車EVを搭載した充電パレット20が入出庫部3に配置され、入出庫口扉7が開き、利用者が入場しているものとする。
【0039】
まず、充電パレット20の入出庫か否かが判断され(S1)、充電パレット20の入出庫である場合は、充電パレット20が入出庫部3の所定位置に停止しているかが判断される(S2)。充電パレット20が所定位置に停止している場合には、入出庫口扉7が開状態であるかが判断される(S3)。この判断で入出庫口扉7が開状態であれば、利用者が入出庫部3で入出庫作業中であると判断される。
【0040】
そして、利用者が充電ケーブル24の接続・取り外しを含む入・出庫作業の中で電気自動車EVの異常確認を行う場合には、次の作業を行う。
【0041】
入庫の場合には、利用者は電気自動車EVを運転して充電パレット20に乗り込み、降車後、充電要求する場合には充電ケーブル24の接続作業を行う。この入庫の場合、電気自動車EVに常備された充電ケーブル24を取り出し、充電ケーブル24の充電アダプタ26を電気自動車EVの充電口27に挿着し、プラグ25を上記異常確認用電源コンセント41に差し込む。
【0042】
一方、出庫の場合、充電要求のあった充電パレット20であれば、既に充電ケーブル24の充電アダプタ26が電気自動車EVの充電口27に挿着されているとともにプラグ25が充電パレット20の中継部22に設けられたコンセント23に差し込まれている。そのため、利用者が充電ケーブル24の接続・取り外しを含む入・出庫作業の中で電気自動車EVの異常確認を所望した場合、次の作業を行う。この出庫の場合、充電ケーブル24のプラグ25を中継部22のコンセント23から取り外し、代わって上記異常確認用電源コンセント41に差し込む。
【0043】
これらの作業が行われると、異常確認用電源コンセント41において差し込み検知有りか否かの判断(S4)で有りとなる。なお、異常確認用電源コンセント41に充電ケーブル24のプラグ25が差し込まれたことを検知せずに所定時間経過した場合には(S5)、充電パレット20の入出庫があったものの、電気自動車EVの異常確認を行うことなく入出庫作業を終えたものと判断される。
【0044】
一方、上記異常確認用電源コンセント41に充電ケーブル24のプラグ25が差し込まれたことを検知すると、制御装置50はインターロック指令を発する(S6)。このインターロック指令により、運転操作盤8が操作不可になるとともに、入出庫口扉7の開維持、閉作動不可となる。なお、上記異常確認用電源コンセント41の「差し込み検知」は、上述したように、充電ケーブル24のプラグ25が差し込まれて電流が流れたことを電流計で検知する「通電検知」としてもよい。
【0045】
また、通常、駐車設備は、入出庫口扉7が開いている入出庫作業中は、運転操作、駐車装置の稼動及び入出庫口扉7の閉動作を阻止するインターロックが掛っているので、上記プラグ差し込み検知手段又は通電検知手段による検知情報に基づくインターロック制御は二重の安全措置となっている。このようにして、第三者等による入出庫口扉7の不用意な閉動作を阻止する等の安全措置が図られる。
【0046】
そして、充電アダプタ26が電気自動車EVの充電口27に接続されていれば、充電ケーブル24に通電される(S7)。この通電により、電気自動車EVの異常確認が開始され、異常有無が電気自動車EVの車内に設けられた異常有無表示ランプ72及び充電ケーブル24に設けられたコントロールボックス45の異常有無表示ランプ46(図2)、またはこれらの一方に点灯表示されて利用者に報知される(S8)。この報知としては、例えば、「異常無し」の場合は「緑点灯」、「異常有り」の場合は「赤点灯」とすることによって利用者に異常有無報知がなされる。
【0047】
その後、利用者が充電ケーブル24のプラグ25を異常確認用電源コンセント41から外すと(S9)、インターロック解除指令が出されるとともに(S10)、異常有無報知も解除(異常有無表示ランプ72,46の消灯)される(S11)。
【0048】
このようにして異常有無確認が終了すると、その後、利用者は、次の作業を行う。入庫の場合には、既に充電ケーブル24の充電アダプタ26が電気自動車EVの充電口27に挿着されているので、充電ケーブル24のプラグ25を中継部22のコンセント23に差し込んで退場する。
【0049】
一方、出庫の場合には、既に充電ケーブル24のプラグ25が異常確認用電源コンセント41から外されているので、充電ケーブル24の充電アダプタ26を電気自動車EVの充電口27から取り外し、充電ケーブル24をトランク等に収納した上で、乗車して退場する。
【0050】
以上のように、第1実施形態の駐車設備1によれば、電気自動車EVに接続する充電ケーブル24のプラグ25に適合した異常確認用電源コンセント41を入出庫部3に設け、一連の入・出庫作業の中で、入出庫部3において充電ケーブル24を電気自動車EVの充電口27と異常確認用電源コンセント41との間で一時的に接続するだけで電気自動車EVの「異常の有無」を確認でき、「異常無し」であれば安心でき、「異常有り」であればその異常内容に応じて適切な対処を思案しておくことができる。
【0051】
図4は第2実施形態に係るエレベータ式駐車設備80の制御ブロック図であり、電気自動車EVに備えられた送信部と駐車設備80に備えられた受信部との間で状態情報を通信する通信手段を備えている。この実施形態では、電気自動車EVに、状態情報信号(各機能要素の異常有無等)を車内・外にデータ伝送する送信部となるモデム(PLCモデム)81を装備した例であり、このような電気自動車EVの場合には、通信手段として電力線通信システムを用いることで、車内モニターを見ることなく、一連の入・出庫作業の中で電気自動車EVの「異常の有無」を車外で容易に確認することができる。なお、上述した図2と同一の構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0052】
図示するように、この実施形態では、RAM、ROM、CPU等を有し、電気自動車EVの異常を判断する異常確認制御部82と、上記異常確認用電源コンセント41を含む電力線通信部83とが備えられている。
【0053】
上記異常確認制御部82には、上記異常確認用電源コンセント41に連なる電力線84との間で、この電力線84における通電を検知する通電検知手段が設けられている。この図では、一例として、電力線84に通電センサ85が設けられ、異常確認制御部82に設けられた電流計86に信号が送られて通電を検知するようになっている。また、異常確認制御部82には上記モデム81からの信号を受信する受信部となるモデム(PLCモデム)87が設けられており、上記異常確認用電源コンセント41に接続された充電ケーブル24を介して電力線84に送信される伝送データ信号を受信して変・復調を行うようになっている。この電力線84を介して行う信号の送受信は、周知の電力線通信システム(Power Line Communications;PLC)によって行われる。そして、モデム87を介して取込んだ電気自動車EVの情報に基いて、異常確認制御部82で電気自動車EVの異常確認診断を行っている。
【0054】
さらに、この実施形態では、上記異常確認制御部82における診断結果を利用者に報知する異常有無報知手段たるスピーカ88が設けられている。この異常有無報知手段としては、他に電光表示部等であってもよく、異常確認用電源コンセント41の付近や、入出庫部3の適所(例えば、入庫誘導案内灯54の付近)に設けて報知するようにすればよい。
【0055】
他の構成は上述した第1実施形態のエレベータ式駐車設備1と同一であるため、同一符号を付して説明は省略する。
【0056】
以上のように構成されたエレベータ式駐車設備80によれば、上述した図3に示すフローチャートの(S4)以降に、以下のような異常診断がなされ、それに応じて以下のような報知が利用者になされる。
【0057】
上述したフローチャート(S4)のように、充電アダプタ26が電気自動車EVの充電口27に接続されると、異常確認用電源コンセント41に連なる電力線84が通電するとともに、電気自動車EVに内蔵されたモデム81から、電気自動車EVの充電口27、充電ケーブル24、異常確認用電源コンセント41、電力線84及びモデム87を介して、電気自動車EVのECU70に格納管理されている状態情報が電力線通信システムにより伝送され、異常確認制御部82に取込まれる。
【0058】
そして、この異常確認制御部82で「異常診断」が行われ、その異常診断の結果、「異常無し」であれば、スピーカ88から「電気自動車に異常は見当たりません。充電ケーブルのプラグをコンセントから外して下さい」という旨の放送をして利用者に報知される。また、出庫時であれば、「満充電です」、「充電電力量は・・です」、「充電時間は・・です」、「充電料金は・・です」等の案内を行うことで、充電に関する多くの情報を利用者に報知するようにしてもよい。
【0059】
一方、上記異常診断の結果、「異常有り」であれば、スピーカ88から「電気自動車に次の異常があります。異常内容確認の後、充電ケーブルのプラグをコンセントから外して下さい。」という旨の放送をして利用者に報知される。異常内容としては、例えば、「車載バッテリの残容量が低下しています」、「車載ナビゲータに異常があります」、「車内外・照明系統に異常があります」、「空調系統に異常があります」等の放送が行われる。
【0060】
そして、利用者が異常診断結果を聴取した後、充電ケーブル24のプラグ25を異常確認用電源コンセント41から外すと、上述した図3のフローチャートと同様にインターロック指令が解除され(S10)、異常有無報知も解除される(S11)。
【0061】
その後、利用者は、上述したように、入庫の場合は、既に充電アダプタ26が充電口27に挿着された充電ケーブル24のプラグ25を中継部22のコンセント23に差し込んで退場する。また、出庫の場合には、充電ケーブル24の充電アダプタ26を充電口27から取り外し、その充電ケーブル24をトランク等に収納した上で、乗車して退場する。
【0062】
以上のように、第2実施形態の駐車設備80によれば、一連の入・出庫作業の中で、充電ケーブル24を電気自動車EVの充電口27と異常確認用電源コンセント41との間に一時的に仮接続すれば、電気自動車EVの「異常の有無」を乗車して車内のモニターを見ることで異常確認をすること無く、車外で容易に確認することができ、「異常無し」であれば安心でき、「異常有り」であればその異常内容に応じて適切な対処を思案しておくことができる。
【0063】
また、電気自動車EVの異常診断結果の報知に加えて、充電要求のあった電気自動車EVの出庫に際しては、上述したように駐車設備80に格納していた間の充電情報(充電電力量、充電時間、充電料金等)を合わせて報知するようにしてもよく、これにより充電に関する種々の情報を利用者が知ることができる。
【0064】
なお、上記実施形態では機械式駐車設備の一例としてエレベータ式駐車設備1を例に説明したが、本発明は、充電機能を備えた駐車設備であれば、水平循環式、垂直循環式、箱型循環式、円形循環式、平面往復:式、縦横パズル移動式、多段式等全ての機械式駐車設備(パレット式、パレットレス式とも)に適用できる。
【0065】
また、上記実施形態では、電気自動車EVに常備された充電ケーブル24を使用する例を説明したが、駐車設備1,80に専用の充電ケーブルを装備しておき、それを使用するようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記実施形態では、充電パレット20に搭載した充電要求の電気自動車EVを対象としているが、充電中継機能を備えていない標準パレット90に搭載する電気自動車EVについても、利用者が希望すれば異常確認を行うことができるようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る充電機能を備えた駐車設備は、充電機能を備えた機械式駐車設備において利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1 エレベータ式駐車設備(機械式駐車設備)
3 入出庫部
11 格納棚
12 エレベータ搬器
18 壁面
20 充電パレット
22 中継部(中継スタンド)
23 コンセント
24 充電ケーブル
25 プラグ
26 充電アダプタ
27 充電口
30 給電手段
31 受電部(コネクタ)
32 給電部(コネクタ)
40 異常確認用電源部
41 異常確認用電源コンセント
42 リミットスイッチ
45 コントロールボックス
46 異常有無表示ランプ
50 制御装置
51 充電制御部
62 充電電源装置
63 開閉器
64 電力量メータ
70 電子コントロールユニット(ECU)
72 異常有無表示ランプ
80 エレベータ式駐車設備
81 モデム(送信部)
82 異常確認制御部
83 電力線通信部
84 電力線
85 通電センサ
86 電流計
87 モデム(受信部)
88 スピーカ(報知手段)
EV 電気自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入出庫部から入庫させる電気自動車に充電する機能を備えた機械式駐車設備であって、
前記入出庫部は、電気自動車に接続する充電ケーブルと適合する異常確認用電源部を備えていることを特徴とする充電機能を備えた機械式駐車設備。
【請求項2】
前記異常確認用電源部は、前記充電ケーブルのプラグに適合した電源コンセントを有している請求項1に記載の充電機能を備えた機械式駐車設備。
【請求項3】
前記充電ケーブルは、前記異常確認用電源部に接続した該充電ケーブル及び異常確認用電源部の少なくとも一方の異常有無情報を利用者に報知する報知手段を備えている請求項1又は請求項2に記載の充電機能を備えた機械式駐車設備。
【請求項4】
前記電気自動車は、該電気自動車の状態情報を外部に送信する送信部を有し、
駐車設備は、前記電気自動車の状態情報を受信する受信部と、該受信した状態情報の異常確認診断を行う異常確認制御部と、診断結果を利用者に報知する報知部とを有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の充電機能を備えた機械式駐車設備。
【請求項5】
前記駐車設備は複数の充電パレットを備え、
前記異常確認用電源部は、前記充電パレットが入出庫部に配置されている時にのみ異常確認が可能なように構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の充電機能を備えた機械式駐車設備。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の機械式駐車設備における電気自動車異常確認方法であって、
前記電気自動車の入庫時又は出庫時に、該駐車設備の入出庫部において電気自動車と駐車設備側の異常確認用電源部とを充電ケーブルで接続することで供給される電力で該電気自動車の異常確認診断を行い、該電気自動車の異常有無情報を利用者に報知するようにしたことを特徴とする機械式駐車設備の電気自動車異常確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−252305(P2011−252305A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126113(P2010−126113)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】