説明

充電装置

【課題】蓄電装置を充電する複数台の電力変換器の出力を様々なパターンで変えることにより、効率や寿命の低下を防ぎ、動作の信頼性、安定性を高めた充電装置を提供する。
【解決手段】外部交流電源20の交流電力を直流電力に変換する整流器11と、整流器11の出力電力を直流/直流変換して共通の出力端子から蓄電装置としての二次電池31に供給する複数台の直流/直流変換器12と、二次電池31を充電するために変換器12を制御する制御装置13と、を備えた充電装置10Aにおいて、制御装置13は、複数台の変換器12のうちの一部の出力が他の出力と異なるように各変換器12を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車等の車両に搭載された二次電池(バッテリー)等の蓄電装置を充電する充電装置に関し、詳しくは、複数台の電力変換器を内蔵してその出力を制御しつつ選択的に蓄電装置に供給可能とした充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の充電装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
この従来技術では、充電装置に複数台の直流安定化電源回路(交流/直流変換または直流/直流変換を行う電力変換器)が内蔵されており、充電するべき複数の二次電池の電圧や容量、数に応じて制御部が所定の直流安定化電源回路を選択し、これらの直流安定化電源回路の出力を調整しながら二次電池を充電するように構成されている。
【0003】
上記従来技術によれば、複数台の直流安定化電源回路によって複数の二次電池をそれぞれの要求電力に従って個別に充電したり、特定の二次電池を集中的に急速充電することが可能である。また、複数台の直流安定化電源回路を並列接続することで、一部の電源回路が故障しても他の電源回路によって代用可能であると共に、電源回路1台あたりの容量、外形を小さくして交換や点検を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199752号公報(段落[0024]〜[0033]、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術において、通常、直流安定化電源回路の制御に必要な電力や冷却のために必要な電力などは負荷量に比例しないため、低負荷時には効率が悪くなるおそれがある。
例えば、二次電池からの要求電力が少なくて充電装置の定格出力まで必要としない場合、要求電力を全ての電源回路により均等に分担して出力させると、個々の電源回路は低負荷にて運転することになり、効率が低下する。また、特定の電源回路だけが頻繁に運転、停止を繰り返すような場合には、その電源回路の寿命が短くなり、充電装置全体の寿命(修理サイクル)も短くなるという問題があった。
なお、特許文献1には、複数台の直流安定化電源回路をどのように選択して二次電池を充電するかという点について具体的には開示されておらず、更に、特許文献1はもっぱら複数の二次電池の充電を前提としている。
【0006】
そこで、本発明の解決課題は、一または複数の蓄電装置を充電する複数台の変換器の出力を様々なパターンで制御することにより、装置全体の効率や寿命を向上させた充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、外部交流電源の交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記整流器の出力電力を直流/直流変換して共通の出力端子から蓄電装置に供給する複数台の直流/直流変換器と、前記蓄電装置を充電するために前記変換器を制御する制御装置と、を備えた充電装置において、
前記制御装置は、複数台の前記変換器のうちの一部の変換器の出力が他の変換器の出力と異なるように各変換器を制御するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した充電装置において、前記制御装置により、複数台の前記変換器のうち少なくとも1台の運転を停止するものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載した充電装置において、前記制御装置により、複数台の前記変換器のうち少なくとも1台を過負荷運転するものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、充電装置全体の効率が最大になるように各変換器の出力を制御するものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載した充電装置において、各変換器の周囲温度、内部温度または各変換器に内蔵された半導体素子の温度を検出し、前記制御装置は、検出温度に基づいて各変換器の過負荷運転の可否、過負荷運転量及び出力低減量を求めて各変換器を制御するものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、各変換器を輪番にて運転するように制御するものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、累積運転時間が短い前記変換器を優先的に運転するように制御するものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、各変換器の出力電流及び運転時間から演算した寿命判断データに基づいて優先的に運転する変換器を決定するものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、積算電力量が小さい前記変換器を優先的に運転するように制御するものである。
【0016】
請求項10に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、各変換器の周囲温度及び運転時間から演算した寿命判断データに基づいて優先的に運転する変換器を決定するものである。
【0017】
請求項11に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、前記制御装置は、各変換器に設けられた電解コンデンサの周囲温度及びリプル電流から演算した電解コンデンサの寿命判断データに基づいて、優先的に運転する変換器を決定するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄電装置を充電する複数台の変換器のうちの一部の変換器の出力が他の変換器の出力と異なるように、各変換器の出力を制御する(一部の変換器の運転停止も含む)ことにより、複数台の変換器がほぼ同時に故障する恐れを低減することができる。また、輪番運転を行ったり各種の寿命判断データ等に基づいて各変換器の使用頻度を平準化するように制御すれば、特定の変換器の故障を防止することが可能である。
総じて、本発明によれば、装置全体の寿命を延ばすことができ、効率の向上も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気自動車用地上充電装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の変形例を示す構成図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る電気自動車用地上充電装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気自動車用地上充電装置の構成図である。なお、本発明は、電気自動車に搭載された二次電池だけでなく、いわゆるハイブリッド自動車やエンジン自動車に搭載された二次電池、ポータブル電源用の二次電池等の充電にも適用可能である。また、二次電池ばかりでなく、電気二重層キャパシタを含む各種の蓄電装置に適用することができる。
【0021】
図1において、10Aは電気自動車用地上充電装置である。この充電装置10Aは、外部交流電源20に交流側が接続された整流器(交流/直流変換器)11と、その直流側に互いに並列接続された複数台の直流/直流変換器12と、これらの変換器12に対する運転指令や出力指令を制御出力として生成する制御装置13と、を備えている。ここで、直流/直流変換器12は例えばチョッパ等によって構成されており、変換器12の並列接続台数は、図示例に限定されず任意の複数であればよい。
【0022】
30は電気自動車の車両であり、充電対象である蓄電装置としての二次電池31が搭載されている。この二次電池31は、その充電時に、複数台の直流/直流変換器12の共通の出力端子にケーブル等を用いて接続される。
車両30には無線または有線の通信機能を有するマイコン等の情報処理装置(図示せず)が設けられており、この情報処理装置から、二次電池31の端子電圧等の情報や充電要求指令等が前記制御装置13に送信されるようになっている。
なお、二次電池31は複数(すなわち車両30が複数台)あってもよく、その場合には、充電装置10A’内の直流/直流変換器12の出力側に、適宜なスイッチを介して、例えば図2に示す変形例のように接続すればよい。ここで、図2では、便宜的に制御装置を省略してある。
【0023】
次に、図1に示した第1実施形態の動作を説明する。
例えば、充電装置10Aが、出力12[kW]の直流/直流変換器12を4台、並列接続して構成されており、充電装置10A全体の定格出力が48[kW]であるものとする。この時の充電装置10Aの様々な運転方法について、以下に説明する。
【0024】
まず、第1の運転方法としては、車両30(二次電池31)から要求される充電電力が30[kW]のとき、4台の変換器12の出力を全て7.5[kW]として均等に分担させるのではなく、例えば、2台の変換器12から12[kW]をそれぞれ出力させ、残りの2台の変換器12から3[kW]をそれぞれ出力させることにより、合計で30[kW]の出力を得る。
【0025】
第2の運転方法としては、二次電池31から要求される充電電力が30[kW]のとき、4台の変換器12の出力を全て7.5[kW]として均等に分担させるのではなく、例えば、2台の変換器12から12[kW]をそれぞれ出力させ、別の1台の変換器12から6[kW]を出力させ、残りの1台の変換器12の運転を停止させることにより、合計で30[kW]の出力を得る。
【0026】
第3の運転方法としては、二次電池31から要求される充電電力が30[kW]のとき、4台の変換器12の出力を全て7.5[kW]として均等に分担させるのではなく、例えば過負荷運転が可能な2台の変換器12から定格以上の15[kW]をそれぞれ出力させる(すなわち、過負荷運転する)と共に、残りの2台の変換器12を停止させることにより、合計で30[kW]の出力を得る。
【0027】
なお、第1〜第3の運転方法は、制御装置13から各変換器12に送出する制御出力(運転指令、出力指令等)を適宜変更して各変換器12の半導体スイッチング素子を制御することにより、容易に実現可能である。
【0028】
このように、第1〜第3の運転方法では、二次電池31から要求される充電電力に対して各変換器12の出力を均等とせずに、一部の変換器の出力を他の変換器の出力と異ならせることによって各変換器12の出力をアンバランスにする。
これにより、各変換器12に内蔵された半導体スイッチング素子や電解コンデンサの損耗の程度がまちまちになるので、複数台の変換器12が同時に故障する危険性を低くすることができ、充電装置10Aの信頼性、安定性を向上させることができる。仮に、将来的に一部の変換器12が故障したとしても、他の健全な変換器12を使用して引き続き充電を行うことが可能である。
【0029】
次に、第4の運転方法としては、各変換器12の入力電力及び出力電力をそれぞれ測定し、充電装置10Aの全体的な効率が最大となるように各変換器12の出力を調整する。
例えば、各変換器12の入出力側の電圧、電流から制御装置13内で入力電力及び出力電力を演算して効率を求め、二次電池31の要求電力を満たす範囲内で、充電装置10Aの全体的な効率が最大となるように所定の変換器12を選択してその出力を制御すればよい。
あるいは、制御装置13内に各変換器12の効率特性マップを予め記憶しておき、このマップに従って充電装置10Aの全体的な効率が最大となるような運転状態を決定してもよい。
この運転方法によれば、複数台の変換器12の効率にばらつきがある場合でも、充電装置10A全体としては高効率にて充電することができる。
【0030】
第5の運転方法としては、各変換器12の周囲温度、内部温度または半導体スイッチング素子温度を検出し、検出温度が低い変換器12は出力を増加させ、検出温度が高い変換器12は出力を減少させるように、制御装置13が運転指令、出力指令を作成して制御する。
この場合、各変換器12の温度−出力特性マップを制御装置13に予め記憶させておき、そのマップに従って、各変換器12の過負荷運転の可否、可能な場合の過負荷運転量(定格値を超える出力)及び出力低減量(定格値未満の出力)を判断するとよい。
この運転方法によれば、例えば損失が多かったり過負荷運転により過熱している変換器の負担を他の変換器に分散させることができ、変換器の故障を未然に防止すると共に充電装置10A全体の効率も向上させることができる。
【0031】
第6の運転方法としては、全ての変換器12について運転順序を予め決めて制御装置13に記憶させておく。つまり、各変換器12を輪番にて運転するものである。
そして、運転済みの変換器12を制御装置13が記録しておき、次回の運転では順番が次の変換器12を運転するように制御を行う。例えば、充電装置10Aに内蔵された変換器12が2台である場合は交互運転となり、3台以上の場合はロータリー運転となる。
【0032】
第7の運転方法としては、制御装置13に各変換器12の運転時間をそれぞれ記録しておき、累積運転時間の短い変換器12を優先して運転するように制御を行う。
第8の運転方法としては、制御装置13に各変換器12の出力電流時間積(出力電流I×運転時間tやI×t等)を寿命判断データとして記録しておき、電流時間積の小さい変換器12を優先して運転するように制御を行う。
また、第9の運転方法としては、制御装置13に各変換器12の積算電力量(出力電力W×運転時間t)を寿命判断データとして記録しておき、積算電力量の小さい変換器12を優先して運転するように制御を行う。
【0033】
第10の運転方法としては、制御装置13に各変換器12の周囲温度時間積(周囲温度T×運転時間t)を寿命判断データとして記録しておき、この周囲温度時間積の小さい変換器12を優先して運転するように制御を行う。
【0034】
第11の運転方法としては、制御装置13に、各変換器12が有する電解コンデンサの周囲温度及びリプル電流から計算した電解コンデンサの寿命判断データを記録しておき、残寿命の長い変換器12を優先的に運転するように制御を行う。ここで、上記寿命判断データは、例えば電解コンデンサのメーカから入手すればよい。
【0035】
このように、第6〜第11の運転方法によれば、特定の変換器12の使用頻度や責務の集中を防いでその寿命低下を防止することが可能である。
【0036】
次に、図3は本発明の第2実施形態に係る電気自動車用地上充電装置の構成図である。
この実施形態に係る充電装置10Bは、個々の直流/直流変換器12の入力側と外部交流電源20との間に整流器(交流/直流変換器)11をそれぞれ接続し、この整流器11及び変換器12によって電力変換器ユニット14を構成したものである。
重複を避けるために説明を省略するが、本実施形態においても、前述した第1〜第11の運転方法を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10A,10A’,10B:電気自動車用地上充電装置
11:整流器(交流/直流変換器)
12:直流/直流変換器
13:制御装置
14:電力変換器ユニット
20:外部交流電源
30:車両
31:二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部交流電源の交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記整流器の出力電力を直流/直流変換して共通の出力端子から蓄電装置に供給する複数台の直流/直流変換器と、前記蓄電装置を充電するために前記変換器を制御する制御装置と、を備えた充電装置において、
前記制御装置は、
複数台の前記変換器のうちの一部の変換器の出力が他の変換器の出力と異なるように各変換器を制御することを特徴とする充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載した充電装置において、
前記制御装置により、複数台の前記変換器のうち少なくとも1台の運転を停止することを特徴とする充電装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した充電装置において、
前記制御装置により、複数台の前記変換器のうち少なくとも1台を過負荷運転することを特徴とする充電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、充電装置全体の効率が最大になるように各変換器の出力を制御することを特徴とする充電装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載した充電装置において、
各変換器の周囲温度、内部温度または各変換器に内蔵された半導体素子の温度を検出し、前記制御装置は、検出温度に基づいて各変換器の過負荷運転の可否、過負荷運転量及び出力低減量を求めて各変換器を制御することを特徴とする充電装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、各変換器を輪番にて運転するように制御することを特徴とする充電装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、累積運転時間が短い前記変換器を優先的に運転するように制御することを特徴とする充電装置。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、各変換器の出力電流及び運転時間から演算した寿命判断データに基づいて優先的に運転する変換器を決定することを特徴とする充電装置。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、積算電力量が小さい前記変換器を優先的に運転するように制御することを特徴とする充電装置。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、各変換器の周囲温度及び運転時間から演算した寿命判断データに基づいて優先的に運転する変換器を決定することを特徴とする充電装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載した充電装置において、
前記制御装置は、各変換器に設けられた電解コンデンサの周囲温度及びリプル電流から演算した電解コンデンサの寿命判断データに基づいて、優先的に運転する変換器を決定することを特徴とする充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−249450(P2012−249450A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120010(P2011−120010)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】