説明

先付けサッシ構造及び先付けサッシ工法

【課題】サッシの保持部材を必要とせずに、サッシを先付けすることができ、また、嵌め殺し窓においても、ガラス取り付け後のコーキング処理の手間を省き、ガラスのみを交換することが出来る先付けサッシ構造及び工法を提供することを課題とするものである。
【解決手段】壁コンクリートを打設する前に型枠内にサッシを取付けし、壁コンクリートを打設し、型枠を脱型するときにはサッシが壁体に取付けられているサッシ先付け構造において、嵌め殺し窓の上下、左右のサッシ枠に、躯体側に突出する羽根部が形成されており、該羽根部を型枠に直接、釘着固定することにより、サッシ枠を型枠に固定することを特徴とし、また、ガラスを取り付けるためのガラスビードが外側のみ予め、コンクリート打設前に取り付けられていることを特徴とする先付けサッシ構造及び工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式工法によるコンクリート建築物のコンクリート打設前の開口部にサッシを取付けるところの先付け工法に関し、特にベランダや窓等の嵌め殺し窓の先付けサッシ構造及び先付けサッシ工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、 壁コンクリートを打設する前に型枠内にサッシを仮付けし、壁コンクリートを打設し、型枠を脱型するときにはサッシが壁体に取付けられている先付けサッシ工法は、工期の短縮、現場作業の省力化等の点で、後付けサッシ工法と比較して優れており、従来、種々の方法が提案されている。
【0003】
特開平10−30337号公報では、
サッシ1を懸垂係止するサッシ係止部8と、内部型枠パネル12に釘着固定する取付壁4を備えた額縁状の室内側支持枠2と、
開口部の外周壁13を形成する四周壁17と外部型枠パネル14に釘着固定する取付壁16を備えた額縁状の室外側支持枠3を
ボルト10により着脱自在に連結してコンクリート打設前の開口部に型枠パネルと共に取付けるようにしたコンクリート建築物のサッシ先付け構造としたものである。
【0004】
特開2001−49761号公報では、
サッシ先付け方法であって、室内側に向かって断面が狭まるように傾斜し、中間にサッシを保持する水平部を有する周囲枠と、
周囲枠の内側に配置される支保部材と、
周囲枠の室内側の各辺に沿って取り外し可能に取付けられ、
楔状断面をもつパッキング部材および楔部材とを有するサッシ先付け用保持枠を所定箇所に設置する工程を備えた方法において、
周囲枠の水平部の外周の室外側に不燃性断熱材を配置し、室内側に発泡ウレタンを配置する工程を備えていることを特徴とする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−30337号公報
【特許文献2】特開2001−49761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特開平10−30337号公報では、開口部にサッシを保持するために、室内側支持枠と室外側支持枠とで保持している。
【0007】
また、特開2001−49761号公報では、開口部にサッシを保持するためにサッシ先付け用保持枠が設けられる。
【0008】
すなわち、従来の先付け工法においては、サッシを開口部に保持するために別途、保持部材を製作し、型枠に取り付けていた。
【0009】
このため、サッシの種類に合わせて保持部材を製作しなければならないという問題があった。
【0010】
また、従来の高窓などの嵌め殺しの窓の場合には、取替え時、外部からのコーキングが必要であり、足場等のない場所では足場等を組んで施工しなければならない為、コスト高となっていた。
【0011】
また、従来の嵌め殺しは、部材断面が大きく価格面では大きなコストダウンが出来ない問題があった。
【0012】
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、サッシの保持部材を必要とせずに、サッシを先付けすることができ、サッシ廻りのモルタル詰め及びサッシ外周面のコーキングが不要であり、また、嵌め殺し窓においても、取換え時に、外部からのコーキングのための足場等の必要がなく、内部側からの作業のみで取り換えでき、ガラス取り付け後のコーキング処理の手間を省き、ガラスのみを交換することができる先付けサッシ構造及び工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は諸課題を解決するために、請求項1では、壁コンクリートを打設する前に型枠内にサッシを取付けし、壁コンクリートを打設し、型枠を脱型するときにはサッシが壁体に取付けられているサッシ先付け構造において、
嵌め殺し窓の上下、左右のサッシ枠に、躯体側に突出する羽根部が形成されており、該羽根部を型枠に直接、釘着固定することにより、サッシ枠を型枠に固定することを特徴とする先付けサッシ構造とするものである。
【0014】
該躯体側に突出する羽根部は、サッシ枠の内周端部から躯体側に突出する板状の羽根部であればいずれでも良く、突出の長さは、躯体の厚さにより、任意で良く、例えば、10〜30mm程度が良く、好ましくは、15〜20mm程度が良い。
【0015】
また、該羽根部は、型枠に直接、釘等を打ち付けて固定するものであり、釘穴が設けられたものが好ましい。釘穴の位置は任意であるが、羽根部の中央辺りが好ましい。
【0016】
請求項2では、前記のサッシ枠から突出する羽根部の躯体側と、サッシ枠の躯体側面とに各々突起部が設けられていることを特徴とする先付けサッシ構造とするものである。
【0017】
該突起部は、前記の羽根部の躯体側の面とサッシ枠の躯体側の側面との両方に設けられるものであり、このように2か所に突起部が設けられることにより、打設後には、これらの突起部が掛止部となり、サッシ枠が確実に躯体に固定されることになるものである。
【0018】
請求項3では、前記の型枠に直接、亜鉛釘を釘着固定される羽根部の釘穴において、該釘穴がテーパ状に穴加工されていることを特徴とする先付けサッシ構造とするものである。
【0019】
該釘穴のテーパの角度は、30〜60度程度が良く、好ましくは、45度程度が良い。
【0020】
請求項4では、前記のサッシ枠において、ガラスを取り付けるためのガラスビードが外側のみ予め、コンクリート打設前に取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載の先付けサッシ構造とするものである。
【0021】
該ガラスビードは、ガラスをサッシに組み込む際に、ガラスの外周部の外側と内側に取り付けるゴムで、ガラスとサッシが直接触れ合わないようにするための緩衝材となるものである。
【0022】
従来、嵌め殺し窓においては、コンクリートの打設後に、ガラスをサッシ枠に組み込み、外側のガラスビードを取り付け、内側のガラスビードは、上部と左右については同様にガラスビードを取り付けて固定し、下部については、ガラスと内側のサッシ枠との隙間にコーキング材を充填して処理されていた。
【0023】
本発明では、外側のガラスビードをコンクリートの打設前にサッシ枠に予め取り付けることができる構造を有することを特徴とするものである。
【0024】
このため、ガラスビードを取り付けるサッシ枠のガラスを組み込む枠内部側に、長手方向に先端が鉤状に曲がった断面コ字状の取付溝部が設けられており、ガラスビードは、そのコ字状取付溝部に嵌め込んで取り付けるための断面T字状突起部が設けられているものである。
【0025】
請求項5では、前記の先付けサッシ枠工法において、ガラスを組み入れた後、ガラスと内側の下部留め枠とをガラスビードにより固定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の先付けサッシ構造とするものである。
【0026】
該下部留め枠は、嵌め殺し窓の場合に、サッシ枠にガラスを組み込む時に、サッシの下枠の内側の部分を取り外してガラスを嵌め込めるようにするための枠部材であり、ガラスをサッシ枠に嵌め込んだ後に、この留め枠を取り付け、従来は、コーキング剤を充填して固定していた。
【0027】
本発明では、コーキング剤を用いずに、ガラスビードを使用可能とし、ガラスビードを押し込むことにより、固定できるようにしたものである。
【0028】
すなわち、この留め枠にガラスビードの掛り止め部となる、鉤状の突条部を設けたものである。また、先端が鉤状に曲がった断面コ字状の取付溝部を設けたものでも良い。
【0029】
このガラスビードにより、サッシ枠の室内側下部の留め枠とガラスとの隙間を埋め、気密性、防水性を確保できるものである。また、取り付け、取り外しが簡単であり、メンテナンスが容易となる。
【0030】
請求項6は、壁コンクリートを打設する前に型枠内にサッシを取付けし、壁コンクリートを打設し、型枠を脱型してサッシが壁体に取付けられるサッシ先付け工法において、
嵌め殺し窓の上下、左右のサッシ枠に、躯体側に突出する羽根部が形成され、該羽根部を型枠に直接、釘着固定し、サッシ枠を型枠に固定することを特徴とする先付けサッシ工法とするものである。
【0031】
請求項7は、前記の先付けサッシ枠工法において、ガラスを取り付けるためのガラスビードが外側のみ予め、コンクリート打設前に取り付けることを特徴とする先付けサッシ工法とするものである。
【0032】
請求項8は、前記の先付けサッシ枠工法において、ガラスを組み入れた後、ガラスと内側の下部留め枠とをガラスビードにより固定することを特徴とする先付けサッシ工法とするものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明は以下の効果を奏する。
1)羽根部により、型枠に直接サッシを取り付けることができるので、サッシの保持部材を必要とせずに、サッシを先付けすることができる。
【0034】
2)羽根部により、先付けできるため、サッシ取り付け後のサッシ廻りのモルタル詰めが不要となる。
【0035】
3)サッシ枠から突出する羽根部の躯体側と、サッシ枠の躯体側面とに各々突起部が設けられているので、サッシを確実に固定することができる。
【0036】
4)釘穴がテーパ状の穴加工されているので、脱型後、亜鉛釘を容易に外すことができる。
【0037】
5)外側ガラスビードが先付けされているので、ガラス取替え時の外部コーキングを不要とし、内側ガラスビードを取り外し、内部側作業のみでガラスを交換できる。
【0038】
6)部材断面が約25ミリ角と小さく、価格面で格安、施工性も良い為、取り付け費を削減でき、施工性の良さとコストダウンが実現できる。
【0039】
7)留め枠をガラスビードで固定できるので、コーキング処理の必要がなく、作業が容易となり、メンテナンスも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による先付けサッシ構造を示すサッシ枠の断面図である。
【図2】本発明による先付けサッシ構造を示すサッシ枠を型枠に釘着固定した状態を示す断面図である。
【図3】本発明によるサッシ枠にガラスを組み込んだ状態を示す断面図である。
【図4】本発明によるサッシ枠にガラスを組み込む手順を示す図である。
【図5】本発明によるサッシ枠の下枠の断面図である。
【図6】本発明によるサッシ枠の下部留め枠の断面図である。
【図7】本発明によるサッシ枠の下枠に留め枠を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明による先付けサッシ構造を示すサッシ枠の断面図である。
【0042】
本例のサッシは、手摺あるいは嵌め殺し窓に用いられるものであり、単板ガラスを用いたサッシ構造であり、図1のサッシ枠は、上部横枠と左右の縦枠に用いるサッシ枠である。
【0043】
本図は上部横枠用のサッシ枠の断面図である。
【0044】
このサッシ枠の特徴は、サッシ枠の内周端部から躯体側に突出する板状の羽根部2が設けられている。
【0045】
この羽根部2は、図2に示すように、直接型枠6に釘着固定できるものである。使用される釘5は、亜鉛釘等が用いられる。
【0046】
図2は、本発明による先付けサッシ構造を示すサッシ枠を型枠に釘着固定した状態を示す断面図である。
【0047】
図2に示すように、羽根部2に設けられる釘穴4は、テーパ状に穴加工されているものである。これにより、脱型時には、釘5の先端部5aが羽根部より突出するが、プライマー等で捻ると簡単に取り外すことができるものである。
【0048】
また、サッシ枠本体1の左右の側面部に突起部7が設けられ、かつ、前記羽根部2の先端部に躯体側に突出する突起部8が設けられている。
【0049】
これらの突起部7、8が設けられていることにより、この突起部が躯体に対する楔となり、躯体コンクリートに確実に固定されるものであり、脱型後にサッシ枠がずれてしまう等の問題はなく、所定位置に正確に確実に固定されることになるものである。
【0050】
また、サッシ枠1の内側の左右に、ガラスビードを取り付けるための鉤型コ字状の取付溝部3が設けられている。
【0051】
図3は、本発明によるサッシ枠にガラスを組み込んだ状態を示す断面図である。
【0052】
図3に示すように、この溝部3により、ガラスを組み込み、そのガラスの内面側と外面側からガラスビードを挿入して容易に固定することができるものである。
【0053】
また、図3の(2)、(3)に外側のガラスビードと内側ガラスビードの断面図を示す。
【0054】
本発明では、溝部2の形状が鉤型のコ字形状となっており、外側のガラスビードは、断面T字状突起部が設けられているため、打設前に予め、外側のガラスビードをサッシ枠の鉤型コ字状溝部に取り付けておくことを可能とするものである。
【0055】
図4は、本発明によるサッシ枠にガラスを組み込む手順を示す図である。
【0056】
(1)は、最初にサッシ枠1に外側ガラスビード11を取り付けた状態を示す。サッシ枠1の内部側に鉤型コ字状溝部3が設けられているため、外側の溝部3に、図に示すように、外側用ガラスビード11の断面T字状の突起部11aを嵌め込んで取り付けることができる。
【0057】
(2)は、外側ガラスビード11が取り付けられた状態でコンクリートが打設され、脱型後にガラス10を組み込んだ状態を示す図である。
【0058】
(3)は、内側ガラスビード12を挿入し、ガラス10を固定した状態を示す図である。
【0059】
図5は、本発明によるサッシ枠の下枠の断面図である。
【0060】
この下枠20は、ガラスを組み込むために、内側が下がっており、内側の羽根部20bも外側の羽根部20aより下がった位置に設けられている。
【0061】
図6は、本発明によるサッシ枠の下部留め枠の断面図である。
【0062】
該下部留め枠21は、ガラスを組み込んだ後に、最後に取り付けて内側用ガラスビードを挿入してガラスを固定するものである。
【0063】
図7は、本発明によるサッシ枠の下枠に留め枠を取り付けた状態を示す断面図である。
【0064】
図7に示すように、下枠20の内側の羽根部20bの内部側に取り付ける。この時に下部留め枠21の下部先端の鉤部21aがサッシ枠内部の突起部20cに掛止され、羽根部20bの内部側の鋭角の突出部20dに載置される状態でセットされる。
【0065】
下枠20の鉤型コ字状溝部3に、外側用ガラスビード11が取り付けられ、コンクリート打設、脱型後、ガラス10を組み込み、留め枠21を取り付け、最後に内側用ガラスビード12を挿入してガラス10を固定する。
【0066】
以上のように、本発明では、型枠に直接サッシ枠を釘着固定でき、また、外側用ガラスビードをコンクリート打設前に取り付けることができ、かつ、下枠の留め枠の固定においても、ガラスビードが使用できるので、従来のように、留め枠の固定にコーキング材を使用する必要がなくなり、簡単にガラスビードを挿入して固定できるので、外観上もきれいであり、かつ、作業の簡素化となるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 サッシ枠
2 羽根部
3 鉤型コ字状溝部
4 釘穴
5 釘
6 型枠
7 サッシ枠側面突起部
8 羽根部突起部
10 ガラス
11 外側用ガラスビード
11a 断面T字状突起部
12 内側用ガラスビード
20 下枠
21 下枠留め枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁コンクリートを打設する前に型枠内にサッシを取付けし、壁コンクリートを打設し、型枠を脱型するときにはサッシが壁体に取付けられているサッシ先付け構造において、
嵌め殺し窓の上下、左右のサッシ枠に、躯体側に突出する羽根部が形成されており、該羽根部を型枠に直接、釘着固定することにより、サッシ枠を型枠に固定することを特徴とする先付けサッシ構造。
【請求項2】
前記のサッシ枠から突出する羽根部の躯体側と、サッシ枠の躯体側面とに各々突起部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の先付けサッシ構造。
【請求項3】
前記の型枠に直接、亜鉛釘を釘着固定される羽根部の釘穴において、該釘穴がテーパ状に穴加工されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の先付けサッシ構造。
【請求項4】
前記のサッシ枠において、ガラスを取り付けるためのガラスビードが外側のみ予め、コンクリート打設前に取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載の先付けサッシ構造。
【請求項5】
前記の先付けサッシ枠工法において、ガラスを組み入れた後、ガラスと内側の下部留め枠とをガラスビードにより固定することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の先付けサッシ構造。
【請求項6】
壁コンクリートを打設する前に型枠内にサッシを取付けし、壁コンクリートを打設し、型枠を脱型してサッシが壁体に取付けられるサッシ先付け工法において、
嵌め殺し窓の上下、左右のサッシ枠に、躯体側に突出する羽根部が形成され、該羽根部を型枠に直接、釘着固定し、サッシ枠を型枠に固定することを特徴とする先付けサッシ工法。
【請求項7】
前記の先付けサッシ枠工法において、ガラスを取り付けるためのガラスビードが外側のみ予め、コンクリート打設前に取り付けることを特徴とする請求項6に記載の先付けサッシ工法。
【請求項8】
前記の先付けサッシ枠工法において、ガラスを組み入れた後、ガラスと内側の下部留め枠とをガラスビードにより固定することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の先付けサッシ工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179244(P2011−179244A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44941(P2010−44941)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(505346403)株式会社照正組 (1)
【Fターム(参考)】