説明

先細り金属管及びその製造方法

【課題】先端部が円錐状に先細りかつ先端面に開口を持つ先細り金属管を提供する。
【解決手段】円形金属管(原円形部7)の断面内直角四方向の4箇所が管中心に向かって押し込まれて管長さ方向の溝3を形成する態様で次第に円錐状に先細りとなっている。その溝付き円錐状先細り部6の先端面には管中心部に開口4が形成されている。先端部近傍は、図2(イ)の原円形部7から直角四方向に溝3が形成されつつ円錐状に絞られて、先端面直近では図2(ニ)のように開口4が形成されている。先端が閉じていない先細り金属管が容易に得られる断面形状である。円錐状でかつ先端に開口を持つ特殊な先細り金属管を簡単にかつ安価に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円形金属管の先端部を概ね円錐状の先細りにした先細り金属管、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土中に打ち込む杭や柵支柱などとして、丸鋼管の先端部を先細りにした先細り金属管が用いられる場合があるが、この種の従来の先細り金属管は、図16(イ)、(ロ)に示した先細り金属管51のように、単に先端部を両側から平坦に押し潰して先端部を尖らせたものが一般的である。先端部の先細り部を符号51aで示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の先細り金属管51を土中に打ち込んだ場合、先端が閉じているので、寒冷時に金属管フレーム内で結露すると、結露した水分が先端部に溜まり、管内面に錆が発生し易くなるという問題がある。
また、複数の金属管を連結する場合に、各金属管の一方の端部を縮径しておき、隣接する金属管の一方の縮径部を他方の金属管の端部に差し込んで連結するという連結方式を採用することもしばしば行われるが、そのような場合に、連結作業をし易いように先細りにはしたいが先細り部の先端は開口させる必要がある、という場合もある。
その他、金属管の先端部を先細りにしたいが、先端が閉じてしまっては不都合が生じる場合が考えられる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、先細りにしたいが先端に開口を持つ必要がある種々の用途に好適な先細り金属管、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する請求項1の発明は、円形金属管の断面内直角四方向の4箇所が管中心に向かって押し込まれて管長さ方向の溝を形成する態様で次第に先細りとなる溝付き円錐状先細り部を有するとともに、この溝付き円錐状先細り部の先端面の管中心部に開口が形成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2は、請求項1の先細り金属管において、溝付き円錐状先細り部の先端面近傍は、管中心に向かって押し込まれた4箇所の部分が溝内面の密着した密着U字形をなし、かつ管中心部に前記4つの密着U字形部で囲まれた開口を形成する断面形状であることを特徴とする。
【0007】
請求項3は、請求項1又は2の先細り金属管において、溝付き円錐状先細り部と縮径していない原円形部と間に、縮径した一様な円形断面の円筒状部を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項4は、請求項1〜3の先細り金属管において、溝付き円錐状先細り部又は円筒状部と縮径していない原円形部との境界近傍に周方向の凸条を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1〜3の先細り金属管を製造する先細り金属管の製造方法であって、
円筒状内面の先端側に円錐状内面を持ちかつ前記円筒状内面と円錐状内面の境界近傍における断面内直角四方向に管中心に向かって突出する突起を備えた孔型のダイスを用いて、このダイスに円形金属管を押し込み、又は、前記ダイスを円形金属管に被せるように押し込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の先細り金属管によれば、先端部が円錐状をなしているので、例えば土中に差し込む用途に用いた場合、単に平坦に押し潰した先端形状の先細り金属管と比べて、土中に差し込むことが容易である。
また、先端面の管中心部に開口が形成されているので、当該先細り金属管を縦に使用する場合でかつ管内部に結露が生じるような使用状況では、先端を平坦に押し潰して閉ざした先細り金属管とは異なり、結露した水分は先端の開口から排出される。したがって、結露による錆発生要因を取り除くことができる。
【0011】
請求項3のように、溝付き円錐状先細り部と原円形部との間に、一様な円形断面の円筒状部を設けた構造では、一方の管を他方の管に差し込む形で連結する使用態様の場合に、一方の管の先端部が円錐状の先細り形状であるから、差し込み操作が容易であるとともに、差し込まれる側に円筒状部があるので、安定した差し込み連結を行うことができる。
【0012】
請求項4の先細り金属管の製造方法によれば、円形金属管をダイスに押し込むという簡単な工程で、先端部が円錐状の先細りでかつ管中心部に開口を持つという特殊な先細り金属管を、簡単にかつ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の先細り金属管及びその製造方法の実施例を図1〜図15参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1、図2に本発明の一実施例の先細り金属管1を示す。図1は先細り金属管1の側面図、図2(イ)は図1のA−A断面図、図2(ロ)は図1のB−B断面図、図2(ハ)は図1のB’−B’断面図、図2(ニ)は図1のC−C断面図である。これらの図に示すように、この先細り金属管1の先端部は、円形金属管の断面内直角四方向の4箇所が管中心に向かって押し込まれて管長さ方向の4本の溝3を形成する態様で次第に円錐状に先細りとなっている。この先細り部を溝付き円錐状先細り部と呼び、符号6で示す。
そして、この溝付き円錐状先細り部6の先端面近傍は、図2(ニ)に示すように、管中心に向かって押し込まれた4箇所の部分が溝内面の密着した密着U字形をなしている。この密着U字形をなす部分を密着U字形部と呼び、符合2で示す。そして、管中心部には前記4つの密着U字形部2の先端面で囲まれた開口4が形成されている。
また、この実施例の先細り金属管1は、縮径していない原円形部(素材としての円形金属管の縮径していない部分をいう)7に連続して、単に円錐状に絞られて外面に溝のない円錐状部8を有し、この溝なし円錐状部8に連続して単に円筒状に絞られて外面に溝のない円筒状部9を有し、この溝なし円筒状部9に前記の溝付き円錐状先細り部6が連続している。
【0015】
上記の先細り金属管1を製造するダイス15を図3及び図4に示す。このダイス15は、製造しようとする先細り金属管1の外周面に概ね合わせた内面を有する。すなわち、先細り金属管1の原円形部7に対応する原円形内面17と、溝なし円錐状部8に対応する円錐状内面18と、溝なし円筒面部9に対応する円筒状内面19と、溝付き円錐状先細り部6に対応する先端側円錐内面16とを有する。そして、原円形内面17における先端側円錐内面16との境界付近の断面の直角四方向に、溝3を形成するための突起20を設けている。
【0016】
上記のダイス15を用いて図1の先細り金属管1を製造する要領を説明する。
図3において、素材の円形金属管7(先細り金属管1の原円形部7と同じ符号を付す)の先端部を例えば油圧装置の力でダイス15の孔型15aに押し込むと、まず、円錐状内面18で円錐状に絞られ、続いて円筒状内面19で円筒状に絞られ、さらに奥に押し込むと、図6のように直角四方向の4箇所の突起20により溝3が形成されつつ先端側円錐内面16で絞られて、外周の直角四方向に管長さ方向の溝3を持つ溝付き円錐状先細り部6が形成される。図5に加工完了時の状態を示す。円形金属管7の押し込み量は、一定の押し込み量に設定してもよいし、また、ダイスの先細り金属管先端面位置に押し込み限界面を形成してもよい。また、油圧装置の力で押し込めるまで押し込む方法によることも可能である。なお、上記とは逆に、ダイス15を円形金属管7の先端部に被せるように押し込んでもよい。
前記管長さ方向の溝3は、突起20のある付近及びその近傍では、図2(ハ)のように幅(隙間)のある溝3であるが、ダイス15の先端側円錐状面16に押し込まれることでその溝3は次第に幅が狭くなり、先端部近傍では図2(ニ)のように溝3の内面が密着した密着U字形部2が形成され、かつ、この4つの密着U字形部2で囲まれた開口4が形成される。
なお、幾何学的に整然とした変形をした場合には、管中心部の開口4は上記の通り密着U字形部2で整然と囲まれた状態で形成されるが、密着U字形部2に亀裂が入る場合もあり、必ずしも厳格に図2(ニ)のような断面形状にならない場合もある。しかし、管中心部には開口が形成される。
【0017】
上記の先細り金属管1は、種々の用途に用いることができる。例えば、フレームを金属管で構成してその金属管フレームにビニールシートを張って農業用温室を構成する場合に、その金属管フレームの支柱あるいは横桟として用いることができる。
先細り金属管1を農業用温室の金属管フレームの支柱として用いる場合、先端部が先細りになっているので、容易に土中に差し込むことができる。この場合、先端部が円錐状なので、図16に示した従来の先細り金属管51のように平坦に押し潰した先端部51aを持つものと比べて、土中に差し込むことが容易である。
また、寒冷時に金属管フレーム内で結露した場合、先端部が閉じている従来の先細り金属管51の場合には、結露した水分が先端内部に溜まるので、管内面に錆が発生し易くなるが、上記の先細り金属管1では、先細り部の先端部が開口しているので、これを支柱として用いた場合、結露した水分は内部に溜まることなく、開口4から排出される。したがって、結露による錆発生要因を取り除くことができる。
【0018】
また、農業用温室の金属管フレームの横桟は一般に金属管を連結して用いるが、上記の先細り金属管1を金属管フレームの横桟として用いる場合は、図7に示すように、一方の先細り金属管1の円錐状先細り部6を、他方の先細り金属管1の開放管端に差し込んで、連結することができる。
この場合、一方の管の先端が円錐状に先細り形状であるから、差し込み操作が容易であり、連結作業を能率的に行うことができる。また、差し込まれる側に縮径した円筒状部9があるので、安定した連結のために好適である。
また、横桟の場合ではないが、連結した各金属管内を連通させておくことが必要な場合には、先端に開口4が形成されているので、そのような用途に対応できる。
【実施例2】
【0019】
上記実施例の先細り金属管1は単に絞って縮径した溝なしの円筒状部9を持つが、図8の先細り金属管1’のように、原円形部7’から直接溝付きの円錐状先細り部6’を形成することもできる。断面直角四方向の4箇所の管長さ方向の溝を3’で示す。
【0020】
図9にこの先細り金属管1’を製造するダイス15’を示す。このダイス15’は、図示のように、原円形部7’に対応する原円形内面17’に、円錐状先細り部6’に対応する先端側円錐内面16’を連続して形成し、原円形内面17’と先端側円錐内面16’との境界近傍に前記と同様な突起20’を直角四方向の4箇所に形成した構造である。
前述と同様に、このダイス15’に円形金属管7’を押し込んで、図8のような形状の先細り金属管1’を製造できる。
【実施例3】
【0021】
先細り金属管を、農業用温室の金属管フレームの横桟として前述の図7のように連結して用いる場合には、図1の先細り金属管1における例えば円錐状部8に対応する部分に周方向凸条を形成することができる。すなわち、図10に示した先細り金属管1”のように、円筒状部9”と原円形部7”との間に周方向凸条30を形成することができる。その他の部分は図1の先細り金属管1と概ね同様である。
この場合、図11に示すように、一方の先細り金属管1”の円錐状先細り部6”を他方の先細り金属管1”の開放管端に差し込んだ時に、周方向凸条30があるので、他方の開放管端がこの周方向凸条30の部分に緊密に嵌合する。したがって、先細り金属管1”どうしの差し込み連結部の抜け止めを図ることができる。
【0022】
上記の周方向凸条30を形成する方法としては、種々の方法が考えられるが、先細り加工を行うダイスを利用して、先細り部の形成と同時に周方向凸条30を形成することができる。
すなわち、図12に示すように、ダイス15”の円筒状内面19”と原円形内面17”との間に、円筒状内面19”側の周方向溝31aと原円形内面17”側の周方向凸条31bとが隣接する波状断面を形成しておく。他の部分は図3のダイス15と概ね同じである。
このダイス15”に円形金属管7”を押し込むと、図13に示すように、前述と同様に先端側に溝付き円錐状先細り部6”及び円筒状部9”が形成されるが、その際の押し込み力は大きいので、同時に、原円形部7”の管壁がその強い押し込み力に対する逃げとして周方向溝31a内に膨張して周方向凸条30が形成される。この周方向凸条30の高さは他の管と連結する際の抜け止め作用を十分に果たす程度の高さにするとよい。
【実施例4】
【0023】
図14にさらに他の実施例を示す。この実施例は、図1の先細り金属管1における円筒状部9にも管長さ方向の縦溝を形成したものである。すなわち、この実施例の先細り金属管1”’は、図14(イ)、(ロ)に示すように、管長さ方向の縦溝3”’を円錐状先細り部6”’の部分だけでなく円筒状部9”’にも形成している。
この場合、図15に示すように、円筒状内面9”’と原円形内面17”’との境界近傍の断面内直角四方向にそれぞれ突起20”’を設けたダイス15”’を用いることで、図14の先細り金属管1”’を製造できる。
【0024】
本発明の先細り金属管の用途は、農業用温室の金属管フレームの支柱や横桟に限らず、土中に打ち込む単なる杭、あるいは柵支柱その他、種々の用途に用いることもできる。
また、素材は主として鋼管であるが、その他の金属管を用いて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例の先細り金属管の側面図である。
【図2】図1の先細り金属管の断面を示すもので、(イ)は図1のA−A断面図、(ロ)は図1のB−B断面図、(ハ)は図1のB’−B’断面図、(ニ)は図1のC−C断面図である。
【図3】上記の先細り金属管の製造に用いるダイスの断面図である。
【図4】図3のD−D断面図である。
【図5】上記のダイスに円形金属管を押し込んで先細り金属管を製造する状況を説明するもので、ダイス縦断面図である。
【図6】図5のE−E切断端面図である。
【図7】図1の先細り金属管の先細り部に他の管を連結する状況を示す図である。
【図8】本発明の他の実施例の先細り金属管の側面図である。
【図9】図8の先細り金属管の製造に用いるダイスに円形金属管を押し込んで先細り金属管を製造する状況を説明するもので、ダイス縦断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施例の先細り金属管の一部切り欠き側面図である。
【図11】図10の先細り金属管の先細り部に他の管を連結する状況を示す図である。
【図12】図10の先細り金属管の製造に用いるダイスの断面図である。
【図13】図12のダイスに円形金属管を押し込んで図10の先細り金属管を製造する状況を説明するもので、ダイス断面図である。
【図14】本発明のさらに他の実施例の先細り金属管を示すもので、(イ)は側面図、(ロ)は(イ)のF−F断面図である。
【図15】図14の先細り金属管の製造に用いるダイスに円形金属管を押し込んで先細り金属管を製造する状況を説明するもので、ダイス縦断面図である。
【図16】従来の先細り金属管を示すもので、(イ)は一部切り欠き正面図、(ロ)は側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1、1’、1”、1”’ 先細り金属管
2 密着U字形部
3、3’、3”、3”’ 管長さ方向の溝
4 開口
6、6’、6”、6”’ 溝付き円錐状先細り部
7、7’、7”、7”’ 原円形部
8、8” 溝なし円錐状部
9、9”、9”’ 溝なし円筒状部
15、15’、15”、15”’ ダイス
16、16’、16”、16”’ 先端側円錐内面
17、17’、17”、17”’ 原円形内面
18、18” 円錐状内面
19、19、”19”’ 円筒状内面
20、20’、20”、20”’ 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形金属管の断面内直角四方向の4箇所が管中心に向かって押し込まれて管長さ方向の溝を形成する態様で次第に先細りとなる溝付き円錐状先細り部を有するとともに、この溝付き円錐状先細り部の先端面の管中心部に開口が形成されていることを特徴とする先細り金属管。
【請求項2】
前記溝付き円錐状先細り部の先端面近傍は、管中心に向かって押し込まれた4箇所の部分が溝内面の密着した密着U字形をなし、かつ管中心部に前記4つの密着U字形部で囲まれた開口を形成する断面形状であることを特徴とする請求項1記載の先細り金属管。
【請求項3】
前記溝付き円錐状先細り部と縮径していない原円形部と間に、縮径した一様な円形断面の円筒状部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の先細り金属管。
【請求項4】
前記溝付き円錐状先細り部又は円筒状部と縮径していない原円形部との境界近傍に周方向の凸条を形成したことを特徴とする請求項1〜3記載の先細り金属管。
【請求項5】
請求項1〜3の先細り金属管を製造する先細り金属管の製造方法であって、
円筒状内面の先端側に円錐状内面を持ちかつ前記円筒状内面と円錐状内面の境界近傍における断面内直角四方向に管中心に向かって突出する突起を備えた孔型のダイスを用いて、このダイスに円形金属管を押し込み、又は、前記ダイスを円形金属管に被せるように押し込むことを特徴とする先細り金属管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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