説明

光コネクタ用フェルール脱着治具

【課題】脱着可能なフェルールを有する光コネクタからフェルールを脱着する際の作業性を格段に向上できる光コネクタ用フェルール脱着治具を提供する。
【解決手段】光コネクタからフェルールを脱着する際に用いられる光コネクタ用フェルール脱着治具を、光コネクタを挿入可能なコネクタ収容部を有し、このコネクタ収容部に光コネクタが挿入されたときにスライダの先端がコネクタ収容部の開口端の周縁に当接する台座と、この台座上にコネクタ収容部を挟んで対向配置され、スライダの先端が開口端の周縁に当接したときに、軸方向に移動してスライダの貫通孔に挿入され、光コネクタにおけるハウジングとストッパの係止状態を解除する1対のピンと、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバコードの一端がフェルールに固着され、このフェルールがハウジングに装着されてなる光コネクタからフェルールを脱着する際に用いられる光コネクタ用フェルール脱着治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光伝送装置などの光ファイバ入出力部において、光ファイバケーブルの接続や切り離しを容易化できる一括接続可能な光ファイバコネクタ(以下、光コネクタ)が開発され、実用化されている。例えば、多心光ファイバを保持・固定するMTフェルールを備え、スライドロック機構によりワンタッチで光アダプタに着脱可能とされた光コネクタ(いわゆるMPOコネクタ)が知られている(例えば、非特許文献1)。光アダプタに装着された光コネクタ同士は、一方のフェルール端面に設けられたガイドピンを、他方のフェルール端面に設けられたガイドピン孔に挿入することによって整列される。
【0003】
一般的な光コネクタは、例えば図1に示す構成を備えている。図1には、フェルール12の先端面12bにガイドピン13を備えたオス型のMPOコネクタを示している。
図1に示す光コネクタ1を組み立てる場合、まず、光ファイバコード21付きのフェルール12を、筒状のハウジング11のフェルール装着部11fに挿入する。次に、フェルール12の後側に配設されたコイルばね15をストッパ16によって押圧し、ハウジング11の段差部11aにフェルール12のつば部12aを当接させる。そして、ストッパ16の係止片16bをハウジング11の係止孔11cに係止させた後、かしめ部材19によりストッパ16を光ファイバコード21に固着する。これにより、フェルール12はハウジング11に対して付勢された状態で装着される。
【0004】
ここで、フェルール12の先端面(特に光ファイバ端面が配置された光接続部)12bに傷がついていると、光接続時に伝送損失が増大してしまうため、フェルール12は先端面12bが高精度に研磨された状態でハウジング11に装着される。しかしながら、光コネクタ1を組み立てた後に、フェルール12の先端面12bの傷が判明することもある。この場合、その光コネクタ1をそのままの状態で使用することはできない。
【0005】
そこで近年では、図1に示すように、ハウジング11とストッパ16の係止状態を容易に解除できる構造とし(いわゆるリムーバブル対応の光コネクタ)、フェルール12をハウジング11から一旦取り外して、先端面12bを研磨しなおした上で、再装着できるようになっている。図1に示す光コネクタ1においては、スライダ18の貫通孔18aがハウジング11の係止孔11cと一致するまでスライダ18を後方(図1の右側)に移動させた状態で、貫通孔18aにピン等を挿入してストッパ16の係止片16bを押圧することにより、係止片16bと係止孔11cの係止状態が解除され、ハウジング11からフェルール12等を脱着できるようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本工業規格 JIS C 5982
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した光コネクタ1からフェルール12を脱着する場合、作業者によってスライダ18の貫通孔18aとハウジング11の係止孔11cが一致するように位置合わせが行われることとなる。しかしながら、スライダ18はスプリング17によって付勢されているため、位置合わせした状態は非常に不安定となる。すなわち、この状態を保持しつつ、スライダ18の両側に設けられた貫通孔18aにピン等を挿入して係止状態を解除する作業には熟練度が要求される。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、脱着可能なフェルールを有する光コネクタからフェルールを脱着する際の作業性を格段に向上できる光コネクタ用フェルール脱着治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、光ファイバコードの一端を保持・固定するフェルールと、
前記フェルールを装着する筒状のハウジングと、
前記フェルールを前記ハウジングに所定の押圧力で付勢するコイルばねと、
前記ハウジングに係止されることにより前記コイルばねが前記フェルールに押圧された状態を保持するストッパと、
前記ハウジングの外周にスライド可能に配設され、前記ハウジングに対してスライドさせた状態で前記ハウジングと前記ストッパの係止状態を外部から解除可能とする貫通孔を有するスライダと、を備えた光コネクタから前記フェルールを脱着する際に用いられる光コネクタ用フェルール脱着治具であって、
前記光コネクタを挿入可能なコネクタ収容部を有し、このコネクタ収容部に前記光コネクタが挿入されたときに前記スライダの先端が前記コネクタ収容部の開口端の周縁に当接する台座と、
前記台座上に前記コネクタ収容部を挟んで対向配置され、前記スライダの先端が前記開口端の周縁に当接したときに、軸方向に移動して前記貫通孔に挿入され、前記ハウジングと前記ストッパの係止状態を解除する1対のピンと、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具において、前記ピンの先端には面取り加工が施されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具において、前記コネクタ収容部と挿入された前記光コネクタの前記フェルール端面が非接触となることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具において、前記コネクタ収容部の底部に弾性部材を介して設けられ、常時は前記一対のピンの軸方向への移動を規制するとともに、前記光コネクタの挿入に伴い前記弾性部材の弾性力に抗して移動され、前記ハウジングと前記ストッパの係止状態を解除可能となったときに前記ピンの軸方向への移動を可能とするピン移動規制部材を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具において、前記コネクタ収容部が、挿入された前記光コネクタの前記ハウジングと係合して前記光コネクタを保持するコネクタ保持部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、脱着可能なフェルールを有する光コネクタがコネクタ収容部に安定して保持されるとともに、ピンを軸方向に移動させるだけでスライダに設けられた貫通孔に容易にピンを挿入することができる。したがって、光コネクタからフェルールを脱着する際の作業性が格段に向上される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る光コネクタ用フェルール脱着治具によってフェルールが脱着される光コネクタの要部構成を示す断面図である。
【図2】図1の光コネクタの平面図(a)と側面図(b)である。
【図3】第1実施形態に係る光コネクタ用フェルール脱着治具の概略構成を示す側面図である。
【図4】第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具を構成する台座の上面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具を用いて、光コネクタからフェルール等を脱着する工程を示す図である。
【図7】第2実施形態に係る光コネクタ用フェルール脱着治具の概略構成を示す側面図である。
【図8】第2実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具を構成する台座の上面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】第2実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具を用いて、光コネクタからフェルール等を脱着する工程を示す図である。
【図11】ピン移動規制部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る光コネクタ用フェルール脱着治具によりフェルールが脱着される光コネクタの要部構成を示す断面図である。図2は、図1の光コネクタの平面図(a)と側面図(b)である。光コネクタ1は、例えばJIS C 5962規格に準拠したオス型のMPOコネクタであり、例えば光アダプタを介してメス型のMPOコネクタと接続される。
【0017】
図1、2に示すように、光コネクタ1は、ハウジング11、フェルール12、ガイドピン13、スペーサ14、コイルばね15、ストッパ16、スプリング17、スライダ18、かしめ部材19、保護ブーツ20、及び光ファイバコード21を備えている。
ハウジング11は、合成樹脂等で構成され、内部にフェルール12等を収容する。ハウジング11は、略長方形状の断面を有する筒状に形成されている。ハウジング11の前部内周面は、フェルール12の外形に対応して形成されており、フェルール12のつば部12aと当接する段差部11aを有している。この段差部11aより前方が、フェルール12を装着されるフェルール装着部11fとなる。
ハウジング11の中部外周面には、光アダプタに形成された係止片を係止する係止部11bが形成されている。ハウジング11の後両側部の内面には、ストッパ16の係止片16bを係止する係止孔11cが形成され、外面にはスプリング17を収容する凹部11dが形成されている。
【0018】
フェルール12は、いわゆるMTフェルールと呼ばれる多心コネクタ用のフェルールである。フェルール12は、合成樹脂等で構成され、複数心の光ファイバを平行に配列して一括被覆した光ファイバテープ心線からなる光ファイバコード21の先端部を保持・固定する。フェルール12の先端面(接合端面)12bから光ファイバコード21を構成する個々の光ファイバが露呈されるように、フェルール12内部において光ファイバコード21は高精度で位置決めされ、固定されている。
フェルール12の外形は、ハウジング11のフェルール装着部11fに嵌合可能な形状となっている。すなわち、フェルール12の後部には、つば部12aが形成されており、このつば部12aがハウジング11の段差部11aに当接することにより、フェルール12の前方への移動が規制される。
【0019】
ハウジング11にフェルール12を装着した際、フェルール12の先端面12bは、ハウジング11の前部開口端から突出する。フェルール12の両側部には、貫通孔12cが形成されており、この貫通孔12cにガイドピン13が圧入されている。ガイドピン13は、例えばステンレス鋼で構成され、接続相手(メス型のMPOコネクタ)に形成されたガイドピン孔に挿入される。これにより、光コネクタ1と接続相手は高精度で位置決めされた状態で接続される。
【0020】
フェルール12の後端側には、スペーサ14を介してコイルばね15が配設されている。スペーサ14は、貫通孔12cに圧入されたガイドピン13が抜け落ちるのを防止するとともに、コイルばね15の付勢力をフェルール12に伝達する。コイルばね15は、スペーサ14を介してフェルール12を一定の押圧力で付勢する。
【0021】
コイルばね15の後端側には、ストッパ16が配設されている。ストッパ16は、合成樹脂等で構成され、コイルばね15を保持する本体部16aと、ハウジング11の係止孔11cに係止される係止片16bを有している。ハウジング11にフェルール12、スペーサ14及びコイルばね15を挿入した後、ストッパ16を挿入してコイルばね15を圧縮しながら前方(フェルール12側)へ移動させ、係止片16bを係止孔11cに係止させることにより、フェルール12はハウジング11に対して一定の押圧力で付勢された状態で装着される。
【0022】
ストッパ16の本体部16aの外周面には、かしめ部材19が配設され、このかしめ部材19をかしめることにより、ストッパ16は光ファイバコード21に強固に固着される。また、ハウジング11とストッパ16(かしめ部材19)との間隙に、保護ブーツ20が嵌合され、接着されている。
【0023】
ハウジング11の凹部11dにはスプリング17が配設され、その外側にスライダ18が摺動可能に配設されており、いわゆるスライドロック構造を構成している。スライダ18は、常時、スプリング17により前方に付勢された状態とされ、付勢力に抗しながら後方に移動可能となっている。スライダ18を後方に移動させることにより、ハウジング11の係止部11bに係止された光アダプタとの係止状態が解除可能となり、光コネクタ1をさらに後方へ引っ張ることで、光アダプタから光コネクタ1を容易に脱着することができる。
【0024】
また、スライダ18の前部には、貫通孔18aが形成されている。この貫通孔18aの前後方向位置がハウジング11の係止孔11cの前後方向位置と一致するまでスライダ18を後方に移動させた状態で、貫通孔18aにピン等を挿入してストッパ16の係止片16bを押圧することにより、係止片16bと係止孔11cの係止状態が解除され、ハウジング11からフェルール12等を脱着できるようになっている。
【0025】
このように、光コネクタ1は、光ファイバコード21の一端を保持・固定するフェルール12と、フェルール12を装着する筒状のハウジング11と、フェルール12をハウジング11に所定の押圧力で付勢するコイルばね15と、ハウジング11に係止されることによりコイルばね15がフェルール12に押圧された状態を保持するストッパ16と、ハウジング11の外周にスライド可能に配設され、ハウジング11とストッパ16の係止状態を外部から解除可能とする貫通孔18aを有するスライダ18とを備えている。
【0026】
本発明の光コネクタ用フェルール脱着治具(フェルール脱着用治具)は、一旦組み立てられた光コネクタ1からフェルール12等を脱着する際に用いられる。すなわち、光コネクタ1を安定した状態で保持するとともに、ストッパ16とハウジング11の係止状態をワンタッチで解除するものである。
【0027】
[第1実施形態]
図3は、第1実施形態に係る光コネクタ用フェルール脱着治具100の概略構成を示す側面図である。図3では一部を切欠断面で示している。図4は光コネクタ用フェルール脱着治具100を構成する台座110の上面図で、図5は図4のA−A断面図である。
図3〜5に示すように、光コネクタ用フェルール脱着治具100は、光コネクタ1を保持する台座110と、スライダ18の貫通孔18aに挿入されるピン120とを備えている。
【0028】
台座110は、合成樹脂(例えばポリアセタール(POM))等で構成され、略中央には光コネクタ1のハウジング11の外形とほぼ同形、すなわちハウジング11の外形より大きくスライダ18の外形よりも小さい開口(コネクタ収容部112)が上面から下方に向けて貫通して形成されている。
コネクタ収容部112の下方は開放されているので、光コネクタ1を挿入したときに、フェルール12の先端面12bは何れの部材とも非接触となる。これにより、光コネクタ1の解体作業時に、フェルール12の先端面(特に光ファイバ端面が配置された光接続部)12bが損傷するのを防止できる。
また、台座110の底面において、コネクタ収容部112(下部開口112b)の両側には脚部114が設けられており、コネクタ収容部112の下部開口112bが設置面から所定長だけ離間されるようになっている。これにより、光コネクタ1の解体作業時に、フェルール12の先端が設置面に接触して、フェルール12の先端面が損傷するのを防止できる。
【0029】
台座110の上面において、コネクタ収容部112(上部開口112a)の両側には、ピン120を軸方向にのみ移動可能に保持するピン保持部111が形成されている。ピン保持部111は、ピン120及びコイルばね130を収容するピン収容部111aと、ピン収容部111aに連設された貫通孔111bを有している。
【0030】
コネクタ収容部112の前後には、スライダ18の貫通孔18aとピン120の位置を一致させるための凸部113が形成されている。なお、光コネクタ1をコネクタ収容部112に挿入したときに、スライダ18の貫通孔18aとピン120の先端部121の位置が一致していればよいので、貫通孔18aの形成箇所又はピン120の設置箇所を調整すれば、台座110の上面は平坦であっても構わない。
コネクタ収容部112に光コネクタ1を挿入すると、スライダ18の先端はコネクタ収容部112の上部開口112aの周縁、すなわち凸部113に当接し、さらに光コネクタ1を押し込むと、ハウジング11に対してスライダ18が相対的に後方に移動する(スライダ18の貫通孔18aがハウジング11とストッパ16の係止部に近づく)こととなる。
【0031】
ピン120は、段階的に縮径された片持ちピンであり、ストッパ16の係止片16bを押圧して弾性変形させるために、例えばステンレスで構成される。ピン120の胴部122の外径はピン保持部111の貫通孔111bの内径とほぼ同じで、後部123の外径はピン収容部111aの内径とほぼ同じとなっている。これにより、ピン120はピン収容部111aに挿嵌されるので、軸方向にのみ安定して移動可能となる。
【0032】
ピン120は、胴部122をコイルばね130に挿入した状態でピン収容部111aに挿嵌される。具体的には、ピン先端部121及び胴部122の一部が貫通孔111bから突出するまでコイルばね130を圧縮しながらピン120を挿嵌する。そして、胴部122に形成された凹溝(図示略)に止め輪140を嵌着することにより、ピン120はピン保持部111に脱落不能に保持され、1対のピン120、120が対向配置される。
ここで、軸方向に移動されたピン120が容易に元の位置(止め輪140がピン保持部111と当接する位置)に復元されるように、また、ピン120をストッパ16の係止片16bに突き当てるときの押圧力が必要以上に大きくならないように、コイルばね130のバネ定数を0.5N/mm以上とするのが望ましい。
【0033】
光コネクタ1におけるハウジング11とストッパ16の係止状態を解除する際、ピン120の先端部121がストッパ16の係止片16bに突き当てられることとなる。このとき、ストッパ16の係止片16bが傷つかないように、ピン120の先端部121には面取り加工が施されている。
また、ハウジング11とストッパ16の係止状態を解除する際、ピン120が必要以上に押し込まれないように、ピン120の後端には、ピン保持部111に係止されることによりピン120の移動長を規制するフランジ124が形成されている。
【0034】
このように、第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具100は、光コネクタ1を挿入可能なコネクタ収容部112を有し、このコネクタ収容部112に光コネクタ1が挿入されたときにスライダ18の先端がコネクタ収容部112の開口端(上部開口112a)の周縁(凸部113)に当接する台座110と、台座110上にコネクタ収容部112を挟んで対向配置され、スライダ18の先端が開口端の周縁に当接したときに、軸方向に移動して貫通孔18aに挿入される1対のピン120とを備えている。
【0035】
図6は、第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具100を用いて、光コネクタ1からフェルール12等を脱着する工程を示す図である。図6には、光コネクタ用フェルール脱着治具100に光コネクタ1を挿入したときの半断面を示している。
まず、図6(a)に示すように、光コネクタ用フェルール脱着治具100のコネクタ収容部112に光コネクタ1を挿入し、スライダ18の先端を凸部113に当接させる。コネクタ収容部112の外形は光コネクタ1の外形とほぼ同じなので、光コネクタ1はコネクタ収容部112により安定した状態で保持される。
この状態でスライダ18の貫通孔18aとピン120の先端部121の位置は一致しているので、ピン120を軸方向に移動させると、ピン120は貫通孔18aに容易に挿入される。しかし、スライダ18の貫通孔18aと、ハウジング11とストッパ16の係止部Lの位置は一致していないので、係止部Lの係止状態を解除することはできない。
【0036】
図6(b)に示すように、光コネクタ1を押し込むと、スライダ18は凸部113に当接したままなので、ハウジング11等に対してスライダ18が相対的に後方(図6では上方)に移動し、スライダ18の貫通孔18aと係止部Lが近づく。最終的にスライダ18の貫通孔18aと係止部Lの位置が一致し、係止状態を解除可能な状態となる。この状態で光コネクタ1の両側から貫通孔18aを介してピン120を挿入し、ストッパ16の係止片16bを同時に押圧することで、係止部Lの係止状態は解除される。そして、光ファイバコード21等を引き抜くことで、フェルール12等はハウジング11から容易に脱着される。
【0037】
このように、光コネクタ用フェルール脱着治具100によれば、光コネクタ1をコネクタ収容部112に挿入するだけで、光コネクタ1はコネクタ収容部112に安定して保持される。また、ピン120を軸方向に移動させるだけでスライダ18に設けられた貫通孔18aに容易にピン120が挿入される。したがって、光コネクタ1からフェルール12等を脱着する際の作業性が格段に向上される。
また、光コネクタ用フェルール脱着治具100においては、コネクタ収容部112に光コネクタ1が抜き差しされるだけなので、耐久性の問題もなく、治具自体の構造が簡易なので低コストで作製することができる。
【0038】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態に係る光コネクタ用フェルール脱着治具200の概略構成を示す側面図である。図7では、一部を切欠断面で示している。図8は光コネクタ用フェルール脱着治具200を構成する台座210の上面図で、図9は図8のA−A断面図である。
光コネクタ用フェルール脱着治具200の基本的な構成は、第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具100と同様であるので詳細な説明を省略する。第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具100の構成要素と同一又は対応する構成要素には200番台で置き換えた符号を付している。
【0039】
すなわち、第2実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具200は、光コネクタ1を挿入可能なコネクタ収容部212を有し、このコネクタ収容部212に光コネクタ1が挿入されたときにスライダ18の先端がコネクタ収容部212の開口端(上部開口212a)の周縁(凸部213)に当接する台座210と、台座210上にコネクタ収容部212を挟んで対向配置され、スライダ18の先端が開口端の周縁に当接したときに、軸方向に移動して貫通孔18aに挿入される1対のピン220とを備えている。
図7〜9に示すように、光コネクタ用フェルール脱着治具200では、ピン220の軸方向への移動を規制するピン移動規制部材260が設けられている点が、第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具100と相違している。
【0040】
台座210のコネクタ収容部212は、ピン移動規制部材260を配設するために、第1実施形態のコネクタ収容部112よりも幅広に形成されている。また、コネクタ収容部212の底部には、弾性部材(例えばコイルばねやゴム)250を収容する凹部215が形成されている。この凹部215に弾性部材250が配設され、その上にピン移動規制部材260が載置される。
第1実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具100と異なり、コネクタ収容部212の底部は閉塞されているので、光コネクタ用フェルール脱着治具200の底部からごみ等が侵入して、フェルール12の先端面12bに付着することはない。
【0041】
ピン移動規制部材260は、合成樹脂等で構成された断面コ字状の部材である。ピン移動規制部材260の側壁260aは、コネクタ収容部212に沿って安定して上下動するように成型されるとともに、弾性部材250に載置したときに、上端部がピン220の胴部222の端面下部に位置する程度の高さ(ピン220の軸方向の移動を規制し得る高さ)を有している。
【0042】
また、ピン移動規制部材260の底壁260bには、光コネクタ1のフェルール12の先端と嵌合する長細い収容孔260cが形成されており、光コネクタ1のガイドピン13が収容孔260cの底部に突き当たるようになっている。これにより、コネクタ収容部212に光コネクタ1を挿入したときに、安定した状態で保持することができる。
なお、メス型のMPOコネクタを用いる場合には、フェルール12の先端面12bが収容孔260cに当接することとなる。このとき、フェルール12の先端面12bの光接続部がピン移動規制部材260に接触しないように、収容孔260cの底部を凹状に形成するのが望ましい。
【0043】
図10は、第2実施形態の光コネクタ用フェルール脱着治具200を用いて、光コネクタ1からフェルール12等を脱着する工程を示す図である。図10には、光コネクタ用フェルール脱着治具200に光コネクタ1を挿入したときの半断面を示している。
まず、図10(a)に示すように、光コネクタ用フェルール脱着治具200のコネクタ収容部212に光コネクタ1を挿入し、スライダ18の先端を凸部213に当接させる。コネクタ収容部212の外形は光コネクタ1の外形とほぼ同じで、フェルール12の先端がピン移動規制部材260の収容孔260cに係合されるので、光コネクタ1はコネクタ収容部212により安定した状態で保持される。
この状態でスライダ18の貫通孔18aとピン220の先端部221の位置は一致しているが、ピン移動規制部材260の側壁260aがピン220の胴部222の端面に当接しているので、ピン220を軸方向へ移動させることはできない。
【0044】
図10(b)に示すように、光コネクタ1を押し込むと、スライダ18は凸部213に当接したままなので、ハウジング11等に対してスライダ18が相対的に後方(図10では上方)に移動し、スライダ18の貫通孔18aと係止部Lが近づく。また、光コネクタ1の挿入に伴い、ピン移動規制部材260が弾性部材250の弾性力に抗して下方に移動する。
最終的にスライダ18の貫通孔18aと係止部Lの位置が一致し、係止状態を解除可能な状態となる。このとき、ピン移動規制部材260の側壁260aはピン220から完全に離脱し、ピン220が軸方向に移動可能となる。この状態で光コネクタ1の両側から貫通孔18aを介してピン220を挿入し、ストッパ16の係止片16bを同時に押圧することで、係止部Lの係止状態は解除される。そして、光ファイバコード21等を引き抜くことで、フェルール12等はハウジング11から容易に脱着される。
【0045】
なお、光コネクタ1を押し込んでいくと、途中でピン移動規制部材260の側壁260aがピン220の胴部222の端面から離脱するが、ピン220を軸方向に若干移動させた時点で止め輪240と当接するため、依然としてピン220の移動は規制されることとなる。
【0046】
このように、ピン移動規制部材260は、コネクタ収容部212の底部に弾性部材250を介して設けられ、常時は1対のピン220の軸方向への移動を規制するとともに、光コネクタ1の挿入に伴い弾性部材250の弾性力に抗して移動され、ハウジング11とストッパ16の係止状態を解除可能となったときにピン220の軸方向への移動を可能とする。
【0047】
光コネクタ用フェルール脱着治具200によれば、光コネクタ1をコネクタ収容部212に挿入するだけで、光コネクタ1はコネクタ収容部212に安定して保持される。また、ピン220を軸方向に移動させるだけでスライダ18に設けられた貫通孔18aに容易にピン220が挿入される。したがって、光コネクタ1からフェルール12等を脱着する際の作業性が格段に向上される。
また、光コネクタ用フェルール脱着治具200においては、コネクタ収容部212に光コネクタ1が抜き差しされるだけなので、耐久性の問題もなく、治具自体の構造が簡易なので低コストで作製することができる。
さらに、ピン移動規制部材260を備えているので、係止部Lの係止状態が解除可能となる前にピン220が誤って押圧され、ハウジング11を破損させてしまう虞もない。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0049】
例えば、光コネクタ1には光アダプタに形成された係止片を係止する係止部11bが形成されているので、この係止部11bと係合して光コネクタ1を保持するコネクタ保持部(いわゆるラッチ機構)をコネクタ収容部112、212に設けるようにしてもよい。このラッチ機構により、ハウジング11とストッパ16の係止部Lを解除可能となる位置で光コネクタ1が固定されるようにすれば、固定されるまで光コネクタ1をコネクタ収容部112、212に挿入すればよいので、光コネクタ1の解体作業がさらに容易化される。
【0050】
また、光コネクタ用フェルール脱着治具200において、ピン220の軸方向への移動がピン移動規制部材260によって規制されている状態でピン220が繰り返し誤操作されると、ピン移動規制部材260が押圧されて、内側に傾斜して変形する虞がある。そこで、ピン移動規制部材260を、ピン220からの押圧力により変形しない程度の剛性を有する構造とするのが望ましい。例えば、図11に示すように、ピン移動規制部材260の側壁260aを下側に向かって肉厚となる構造とすることで、ピン220からの押圧力による変形を効果的に防止することができる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 光コネクタ
11 ハウジング
11a 段差部
11b 係止部
11c 係止孔
11d 凹部
11f フェルール装着部
12 フェルール
12a つば部
12b 先端面
12c 貫通孔
13 ガイドピン
14 スペーサ
15 コイルばね
16 ストッパ
16a 本体部
16b 係止片
17 スプリング
18 スライダ
19 かしめ部材
20 保護ブーツ
100 光コネクタ用フェルール脱着治具
110 台座
111 ピン保持部
112 コネクタ収容部
112a 上部開口
112b 下部開口
113 凸部(コネクタ収容部の開口端の周縁)
114 脚部
120 ピン
121 先端部
122 胴部
123 後部
124 フランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバコードの一端を保持・固定するフェルールと、
前記フェルールを装着する筒状のハウジングと、
前記フェルールを前記ハウジングに所定の押圧力で付勢するコイルばねと、
前記ハウジングに係止されることにより前記コイルばねが前記フェルールに押圧された状態を保持するストッパと、
前記ハウジングの外周にスライド可能に配設され、前記ハウジングに対してスライドさせた状態で前記ハウジングと前記ストッパの係止状態を外部から解除可能とする貫通孔を有するスライダと、を備えた光コネクタから前記フェルールを脱着する際に用いられる光コネクタ用フェルール脱着治具であって、
前記光コネクタを挿入可能なコネクタ収容部を有し、このコネクタ収容部に前記光コネクタが挿入されたときに前記スライダの先端が前記コネクタ収容部の開口端の周縁に当接する台座と、
前記台座上に前記コネクタ収容部を挟んで対向配置され、前記スライダの先端が前記開口端の周縁に当接したときに、軸方向に移動して前記貫通孔に挿入され、前記ハウジングと前記ストッパの係止状態を解除する1対のピンと、を備えることを特徴とする光コネクタ用フェルール脱着治具。
【請求項2】
前記ピンの先端には面取り加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具。
【請求項3】
前記コネクタ収容部と挿入された前記光コネクタの前記フェルール端面が非接触となることを特徴とする請求項1又は2に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具。
【請求項4】
前記コネクタ収容部の底部に弾性部材を介して設けられ、常時は前記一対のピンの軸方向への移動を規制するとともに、前記光コネクタの挿入に伴い前記弾性部材の弾性力に抗して移動され、前記ハウジングと前記ストッパの係止状態を解除可能となったときに前記ピンの軸方向への移動を可能とするピン移動規制部材を備えることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具。
【請求項5】
前記コネクタ収容部が、挿入された前記光コネクタの前記ハウジングと係合して前記光コネクタを保持するコネクタ保持部を有することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の光コネクタ用フェルール脱着治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−18284(P2012−18284A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155358(P2010−155358)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】