説明

光スイッチ、光測定装置、および光測定方法

【課題】 簡易な構造でコンパクトであり、かつ、短時間で多くの検体を正確に分析可能な光測定装置に用いられる光スイッチ等を提供する
【解決手段】 異なる波長の光源3a、3b、3cそれぞれは、フィルタ5a、5b、5c、レンズ7を介して集光されて、ファイバ9a、9b、9cに導光される。フィルタ5(5a、5b、5c)は、それぞれの光源3(3a、3b、3c)に対して設けられ、対応する光源の発する光の波長のみを透過するフィルタである。光スイッチ11は、ファイバ9a、9b、9cからの光を、それぞれファイバ13a、13b、13c、13d、・・・、13lのそれぞれに切り替えて光接続を行うものである。光スイッチを動作させることで、複数の全ての検体に対して、全ての光源からの光を順次照射することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体から励起される蛍光を測定する光測定装置に用いられる光スイッチ等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生物のDNA、タンパク質、細胞等の検体の分析を行う方法として、検体の種類毎に特異的蛍光を付し、これに光を照射することで発光する蛍光を定量的に測定することで、検体の分析を行う方法がある。
【0003】
例えば、検体が試料室であるウェルに入れられ、検体に対して上部または側方より蛍光物質を励起するRGBレーザやLED(Light Emitting Diode)を照射することで、ウェル内で発光する蛍光を光電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)や光ダイオード(PD:Photodiode)あるいは撮像素子と光フィルタの組合せなどで測定することで、検体の分析が行われる。
【0004】
特に、近年は、複数のウェルが設けられ、複数のウェルのそれぞれに検体が入れられ、これらを順次自動で計測することで、より多くの検体を効率良く測定することが要求される。
【0005】
このような光測定を行う装置は種々開発されており、たとえば、光ファイバからの励起光を蛍光物質に向けて照射させるとともに、蛍光物質からの蛍光を光ファイバに向けて反射させるように、可動ミラー切り替えて使用する光スイッチがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−247893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された光スイッチは、光ファイバから光が出射され、出射された光をミラーによって反射させて対象物質に照射するため、光ファイバから照射対象までの光路が長く、この部分での散光による光の損失が大きくなる。したがって、対象物質より発生する微小な蛍光をミラーで反射させて光ファイバに導入することは困難である。
【0008】
このため、特許文献1では、光路中に複数の光学レンズを設置し、光の散光を抑制する必要があるが、このため、装置の小型化の障壁となる。また、光ファイバ、光学レンズ、反射ミラー等の光軸の調整にも精度を要する。特に、多くのウェル内の検体を自動で測定するためには、ウェルと同数の反射ミラーおよび光学レンズが必要となり、装置の大型化やコスト増になる。
【0009】
一方、光スイッチを使用せず、それぞれのウェルに対して光源および検出器をウェルと同数設置したのでは、極めて大型で高価な装置となる。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、簡易な構造でコンパクトであり、かつ、短時間で多くの検体を正確に分析可能な光測定装置に用いられる光スイッチ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達するために第1の発明は、光測定装置に用いられる光スイッチであって、
複数の孔からなる第1の孔群が同心円状に配置された第1の固定部と前記第1の固定部と対向するように回転可能に設けられる第1の回転体と前記第1の回転体を回転させる駆動部とを具備し、
前記第1の回転体には、前記第1の固定部との対向面側の前記第1の孔群に対応する位置と前記第1の固定部との対向面とは逆側の面の回転中心位置とを光学的に接続するファイバが内蔵され、
前記第1の回転体を回転させることで、前記第1の孔群の任意の孔と前記第1の回転体に内蔵されるファイバとが光学的に接続可能であることを特徴とする光スイッチである。
【0012】
前記光スイッチはさらに複数の孔からなる第2の孔群が同心円状に配置された第2の固定部と前記第1の回転体と前記第2の固定部との間に回転可能に設けられる第2の回転体と前記第2の回転体を回転させる駆動部とを具備し、
前記第2の回転体は、前記第1の回転体と同一の回転軸上で回転可能であり、前記第2の回転体には、前記第1の回転体との対向面側の回転中心位置と前記第2の固定部との対向面側の前記第2の孔群に対応する位置とを光学的に接続するファイバが内蔵され、
前記第1の回転体および前記第2の回転体を回転させることで、前記第1の孔群の任意の孔と前記第2の孔群の任意の孔とを光学的に接続可能であることが望ましい。
【0013】
前記第1の孔群のそれぞれの孔には、前記第1の回転体側に照射可能なそれぞれ波長の異なる光源が光学的に接続されており、前記第1の孔群の任意の孔から前記第1の回転体のファイバに対して前記光源からの出射光を出射し、前記第1の回転体と前記第2の回転体の互いの回転中心で出射光を光学的に接続し、前記第2の回転体のファイバからの出射光を前記第2の孔群の任意の孔に設けられたファイバに出射可能であることが望ましい。
【0014】
この場合には、それぞれの前記光源の後方に前記光源から出射される波長の出射光を光軸方向に透過し、検体から発生した戻り光を光軸方向に対して所定角度で反射するフィルタがそれぞれ設けられ、前記第2の孔群の任意の孔に設けられたファイバから前記第2の回転体のファイバに対して検体からの戻り光を入射させ、前記第2の回転体のファイバからの戻り光を前記第1の回転体を介して前記第1の孔群の任意の孔に入射させ、前記フィルタで前記戻り光を光軸方向から所定角度で反射させ、光検出器で戻り光を検出可能であることが望ましい。
【0015】
また、それぞれの前記光源および前記フィルタは、前記第1の固定部に内蔵され、それぞれレンズを介して前記第1の孔群の孔より出射可能であってもよい。
【0016】
第1の発明によれば、光源側と検体へ光を照射可能なファイバ側とが光スイッチを介して光接続されるため、一つの光源からの光を、光スイッチを切り替えることにより、複数(マルチ)のファイバに導光させて複数のウェルに光を照射することができるとともに、複数のウェルからの蛍光を検出可能である。また、光スイッチは、互いに対向する一対の回転体の動作によって相対位置を移動させることができるため、構造が簡易であり、光路の切り替えも迅速である。
【0017】
この際、光源側および検体へのファイバが、それぞれ固定部に接続されるため、光源からの光または検体へ(検体から)の光を導光するファイバが動くことがない。したがって、光スイッチが動作しても、それぞれのファイバに変位が生じることがない。このため、光ファイバの曲がりや振動に伴う光伝送ロスの増大や、光伝送ロスの変動が生じることがない。これにより、検体に照射される照射光の強度とウェルと複合ファイバの照射部および受光部の位置関係が変動することがないので、蛍光の測定精度を高く保つことができる。
【0018】
また、一対の回転体同士の光接続は、それぞれの回転体の回転中心であるため、それぞれの回転体の回転位置によらず、確実に光接続がなされる。なお、それぞれの回転体および固定部は、ギャップを介しているため、回転体と固定部とが接触することによる動作不良や摩耗、光ファイバ端面への傷の発生などが生じることはない。
【0019】
また、光源の前方に、光源から出射される波長の出射光を光軸方向に透過し、検体から発生した戻り光を光軸方向に対して所定角度で反射するフィルタを設けることで、光源からの出射光を検体方向に出射するとともに、検体からの戻り光を検出器側に反射させて蛍光を検出することができる。
【0020】
また、フィルタと光源を固定部内部に内蔵することで、よりコンパクトな光源内蔵の光スイッチを得ることができる。
【0021】
なお、複数の光源と複数のウェルとの接続は、回転体の相対位置によって定まるが、いずれの光源をどのウェルに照射させて蛍光を検出するかは、別途設けられる制御部等により決めることができる。すなわち、あらかじめ設定された順序で、各光源からの光を順次各ウェルに照射させて、各ウェルからの蛍光を検出し、得られた光情報はいずれのウェルからの蛍光(いずれの光源からの蛍光)であるかは自動的に制御されて記録される。
【0022】
第2の発明は光測定装置であって、前述した光スイッチを用い、複数の光源からの出射光を前記光スイッチの前記第2の孔群の孔それぞれに設けられる照射・受光ファイバを介して検体が入れられる複数の試料室それぞれに照射するとともに、それぞれの前記検体からの戻り光を前記照射・受光ファイバで受光し、前記光スイッチを介して前記光検出器で戻り光を検出可能であることを特徴とする光測定装置である。
【0023】
第2の発明によれば、光スイッチを用いて、光源側とウェル照射側ファイバとの光接続を切り替えることが可能であるため、複数(マルチ)の試料室の検体に対して光スイッチを切り替えることで順次測定を行うことができる。このため、迅速な測定が可能である。
【0024】
第3の発明は光測定方法であって、前述の光測定装置を用い、前記第1の孔群の孔と、前記第2の孔群の孔とを前記光スイッチで光接続し、前記光源から前記検体に出射光を照射するとともに前記検体からの戻り光を前記検出器で検出し、前記第1の回転体および前記第2の回転体の少なくとも一方を動作させ、前記第1の孔群の孔および前記第2の孔群の孔の少なくとも一方の位置を切り替えることで、任意の光源と任意の検体とを光接続し、複数の光源により複数の検体の測定を行うことを特徴とする光測定方法である。光源側と試料室側との光接続を順次切り替えて、光スイッチを動作させて複数の光源により複数の検体の測定を行うときに、照射する光源情報と照射される検体に対応する試料室位置情報とを、光検出器で検出した光強度情報と対応させ、必要に応じてコンピュータ等の記憶部あるいは外部記憶媒体に保存してもよい。さらに、測定した前記光強度情報とあらかじめ設定された基準光強度情報との比較を行い、表示部に出力してもよい。
【0025】
第3の発明によれば、光源側とウェル照射側のファイバとの光接続を切り替えることが可能であるため、複数(マルチ)の試料室の検体に対して光スイッチを切り替えることで順次測定を行うことができる。このため、迅速な測定が可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、簡易な構造でコンパクトであり、かつ、短時間で多くの検体を正確に分析可能な光測定装置に用いられる光スイッチ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】蛍光測定装置1の構成を示す概略図。
【図2】蛍光測定装置1の光路を示すブロック図。
【図3】光スイッチ11の構成を示す正面図。
【図4】光スイッチ11の構成を示す断面図。
【図5】(a)は光スイッチ11における図4のP−P線矢視図、(b)は光スイッチ11における図4のQ−Q線矢視図。
【図6】(a)は光スイッチ11における図4のR−R線矢視図、(b)は光スイッチ11における図4のS−S線矢視図。
【図7】(a)は回転体29aと固定部21aとの境界近傍の拡大図であり、図4のT部拡大図、(b)は回転体29aと回転体29bとの境界近傍の拡大図であり、図4のU部拡大図。
【図8】回転体29a、29bの回転に伴い、固定部21a側に設けられるファイバ9a〜9cと、固定部21b側に設けられるファイバ13a〜13cの相対位置変化を示す模式図。
【図9】トレイ35に対するウェルの配置を示す図。
【図10】トレイ35の移動に伴う、各ウェルに対する照射・受光部の配置を示す図。
【図11】光スイッチ40の構成を示す断面図。
【図12】光スイッチ50の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は第1の実施の形態にかかるマルチ光測定装置である蛍光測定装置1を示す構成概略図であり、図2は蛍光測定装置1における光路を示すブロック図である。蛍光測定装置1は、主に、光源3(3a、3b、3c)、フィルタ5(5a、5b、5c)、光スイッチ11、光検出器17(17a、17b、17c)、およびこれらの光の導光路となる各ファイバ等から構成される。
【0029】
光源3a、3b、3cは、検体に照射する光を発する部位であり、例えばRGBレーザ(半導体レーザ)やLEDが使用できる。光源3a、3b、3cは、それぞれ波長が異なる光を発するものであり、例えば、赤(波長635nm、10mW)、緑(波長532nm、10mW)、青(波長473nm、10mW)のRGBレーザなどの半導体レーザ等が適用できる。なお、光源としては、上記波長のものには限られず、測定する検体の種類や発光する蛍光(またはその他の光)に応じて、適用される光源の種類および個数を適宜選択することができ、たとえばLEDにフィルタを組み合わせて使用することなども可能である。
【0030】
また、異なる波長の光源3a、3b、3cは、図示を省略した制御装置によってそれぞれのon/off(または光シャッタ動作等)が制御され、任意の光源のみを選択して発光させることも可能である。
【0031】
異なる波長の光源3a、3b、3cそれぞれは、フィルタ5a、5b、5c、レンズ7を介して集光されて、ファイバ9a、9b、9cに導光される。フィルタ5(5a、5b、5c)は、それぞれの光源3(3a、3b、3c)に対して設けられ、対応する光源の発する光の波長のみを透過するフィルタである。したがって、光源3から照射された光は、フィルタ5をすべて透過し、後方のレンズ7で集光されて各ファイバ9(9a、9b、9c)に導光される(図1の矢印A方向)。
【0032】
フィルタ5は、それぞれ、光源からの光の光軸から所定角度(例えば45°)の角度で配置される。したがって、光源の波長と異なる波長の光は、フィルタ5を透過せず、フィルタの設置角度に応じて反射される。たとえば、ウェル側からの戻り光に、光源の波長と異なる波長成分が含まれれば、当該光成分はフィルタ5を透過せずに反射される(図1の矢印B方向)。反射された光は検出器17(17a、17b、17c)に導入されて検出される。なお、必要に応じて、各フィルタ5と各検出器17との間に、さらにフィルタを設けてもよい。フィルタ5によって反射した光源の波長成分を除去するためである。また、レンズ7としては、集光用レンズとして、周知のいかなるものも使用できる。
【0033】
ファイバ9(9a、9b、9c)は、異なる波長の光源3a、3b、3cからの光を光スイッチまで導くものである。ファイバ9は、ガラスファイバまたはプラスチックファイバであり、プラスチックファイバであることが望ましい。プラスチックファイバとしては、例えば、コア材質がポリメタクリル酸メチル樹脂またはポリスチレンであり、クラッド材質がフッ素樹脂等で構成され、コア径が400μm、クラッド厚さが100μm(外径が600μm)程度のものが使用できる。なお、プラスチックファイバに代えて、同程度の径のガラス製ファイバを用いることもできる。
【0034】
光スイッチ11は、ファイバ9a、9b、9cからの光を、それぞれファイバ13a、13b、13c、13d、・・・、13lのそれぞれに切り替えて光接続を行うものである。ファイバ13(13a、13b、13c、13d、・・・、13l)は、光を試料室に照射するための照射光路となるものである。なお、ファイバ13は、前述したファイバ9と同様の構成であるため、重複した説明は省略する。
【0035】
ここで、以下の図においては、特に記載がない限り、異なる波長の3つの光源3a、3b、3cからの光を12のファイバに切り替える例を示すが、ファイバ13(13a、13b、13c、13d、・・・、13l)の本数は、測定する試料室の数に応じて決定される。たとえば、一列に12個を超える試料室(ウェル)が配置される場合には、試料室数に応じた本数のファイバ13が用いられる。また、例えば、光ファイバの本数は試料室の列数に応じて、列数と一致させるか、あるいは、試料の列数の整数分の一とすればよい。光ファイバ13の本数を試料室の列数の整数分の一とした場合は、試料室を所定ピッチ移動させて順次測定することもできる。
【0036】
光スイッチ11は、例えば、光源3aからの光を、ファイバ13a、13b、13c、13d、・・・、13lのそれぞれに対して順次送ることができ、また、ファイバ13aに対して、異なる波長の光源3a、3b、3cそれぞれの光を順次送ることも可能である。すなわち、光スイッチを動作させることで、複数の全ての検体に対して、全ての光源からの光を順次照射することができる。なお、光スイッチ11の詳細な構成については後述する。
【0037】
ファイバ13(13a、13b、13c、13d、・・・、13l)の下方には、レンズ14(14a、14b、14c、14d、・・・、14l)を介して試料室15(15a、15b、15c、15d、・・・、15l)がそれぞれ配置される。試料室15内部には、それぞれ、測定対象となる検体があらかじめ配置される。試料室15は、プラスチック製の容器である。
【0038】
ファイバ13の照射側端部からの光は、レンズ14を介して試料室15の上方から内部の検体に対して照射される。検体には必要に応じて、予め試料ごとに特異的蛍光が付されており、検体毎に、照射された光に対応した蛍光を発生する。
なお、前述のようにファイバ13aに複数の光源3a、3b、3cそれぞれの光源からの光を照射する場合のように、一つの試料室に複数の光源からの光を順次照射する場合には、試料室毎に、付与する蛍光については、特定の蛍光の蛍光強度を変えてもよく、または複数の蛍光の蛍光強度を変えて組み合わせることにより、バーコード化した蛍光を用いることができる。このように、複数の蛍光を、蛍光強度を変えて組み合わせることにより、より多様な検査を同時に行なうことができる。尚、各試料室に複数の蛍光を組み合わせて強度を変えて用いる場合は、検出器は、蛍光波長と強度の相違を区別するために、1つの試料室に対して、順次複数種の光源を照射して、蛍光強度も照射した光源ごとのデータを得る必要があり、そのように光スイッチを作動させる必要がある。
【0039】
検体の上方から照射された光によって発生した蛍光は、レンズ14を介して検体上方のファイバ13で受光される。なお、レンズ14によって、ファイバ13からの光が検体全体に照射されるとともに、検体からの蛍光はレンズ14によって集光されファイバ13の端部に導入される。
【0040】
検体からの蛍光を受光したファイバ13は、スイッチ11、ファイバ9を介してフィルタ5に達し、光源波長から励起した波長の蛍光はフィルタ5によって反射されて検出器17に導入される。なお、スイッチ11を切り替えることで、使用する光源および照射する試料室を切り替えて、検出器17によって順次光を検出することができる。以上により、複数の試料室15に対して複数の光源3を順次切り替えて光の測定を行うことができる。
【0041】
なお、光検出器17としては、光電子増倍管や光ダイオードまたは撮像デバイス等とフィルタを使用したユニットを用いることができる。光検出器17で検出された光の強度等を測定・解析することで、所望の検体に関する分析を行うことができる。
【0042】
次に、光源3からの光が光検出器17で検出されるまでの光路を、図2を用いて説明する。なお、以下の説明では、光源3aから発した光を試料室15aに照射して蛍光を測定する例を説明する。また、以下の説明では、光源側から試料室までの光(図中上から下へ向かう光)を単に「照射光」と称し、試料室側から検出器までの光(図中下から上へ向かう光)を単に「戻り光」と称する。
【0043】
所定の波長の光源3aから発せられた光はフィルタ5aに導入される(図中矢印C方向)。前述の通り、フィルタ5aは、光源3aと対応しており、光源3aで発する光の波長のみを透過するフィルタである。したがって、光源3aからの照射光は、フィルタ5aを透過してレンズ7に導入され(図中矢印D方向)、レンズ7を介してファイバ9aに導入される(図中矢印E方向)。ファイバ9aに導入された照射光は、光スイッチ11に導入される(図中矢印F方向)。なお、照射光は光スイッチ11によって、各ファイバ13a、・・・、13lに切り替えが可能である。
【0044】
光スイッチ11によって、ファイバ13aに導入された照射光は(図中矢印G方向)、レンズ14を介して(図中矢印H方向)、試料室15aに入れられた検体に照射される(図中矢印I方向)。以上により、所定の波長の照射光を任意の試料室の検体に照射することができる。
【0045】
照射光が照射されることによる試料室15a内の検体からの戻り光(検体で生じる蛍光および反射した照射光の一部)は、レンズ14で集光され(図中矢印J方向)、ファイバ13aに導光される(図中矢印K方向)。ファイバ13a内の戻り光はさらに光スイッチ11、ファイバ9a、レンズ7を介してフィルタ5aまで戻る(図中矢印L、M、N、O方向)。フィルタ5aでは、検体により生じた蛍光成分(照射光の波長とは異なる波長)が反射されて、検出器17aに導入されて検出される(図中矢印P方向)。なお、戻り光の内、照射光と同一波長成分の光はフィルタ5aを透過する。また、光源の波長成分の光が検出器17a方向に反射して検出されることを防ぐため、さらにフィルタ5aと検出器17aとの間に別途フィルタを設けてもよい。
【0046】
以上の光測定を、光スイッチ11を動作させて、光源側と試料室側との光接続を順次切り替えることで、各光源からの光によって各試料室の検体を迅速に測定することができる。なお、回転体の回転位置情報(すなわち、どの光源を用いてどの試料室を測定したのか)とともに検出された光強度や波長情報を得る。すなわち、光源側と試料室側との光接続を順次切り替えて、光スイッチを動作させて複数の光源により複数の検体の測定を行うときに、少なくとも光源情報と複数の検体に対応する試料室位置情報とを、光検出器で検出した光強度や波長情報と対応させる処理を行い、必要に応じてコンピュータ等の記憶部あるいは外部記憶媒体に保存する。
【0047】
具体的には、CPU(Central Processing Unit)等の制御部と、ハードディスク等の記憶部と、ディスプレイ等の表示部と、キーボード等の入力部等から構成されるコンピュータを用いて処理を行うことができる。制御部は、記録部等に格納されるプログラムを制御部のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バスを介して接続された各装置を駆動制御することができる。すなわち、制御部はあらかじめ設定された順に、光スイッチを制御して各回転体を駆動する。この際、制御部は、光スイッチの回転体の位置情報から、検体に照射する光源の種類(光源情報)と、照射される検体(当該検体が入れられたウェル)の位置(試料室位置情報)を、それぞれ光源情報取得手段および試料室位置情報取得手段によって取得する。さらに、制御部は、それぞれの測定に対応して、光検出器で検出された光強度や波長情報(光強度情報)を光強度取得手段によって取得し、これらの情報を記憶部に保存する。なお、制御部は、さらに記憶された情報を、適宜表示部に表示することもできる。さらに、制御部は、これらの情報を、あらかじめ記憶部に保存された基準値(基準光強度情報)と比較し、比較結果を表示部やプリンタ等の出力部に出力させることもできる。なお、光強度情報と基準光強度情報との比較により、光強度情報から対応する検体中の被検体の存否や量等を知ることができる。
【0048】
次に、光スイッチ11について説明する。図3から図7は、マルチ光スイッチである光スイッチ11の構成を示す概略図であり、図3は正面図、図4は部分断面図、図5(a)は図4のP−P線矢視図、図5(b)は図4のQ−Q線矢視図、図6(a)は図4のR−R線矢視図、図6(b)は図4のS−S線矢視図である。
【0049】
光スイッチ11は、主に、モータ19a、19b、固定部21a、21b、プーリ22a、22b、ベルト23a、23b、回転体29a、29b等から構成される。モータ19a、19bは、プーリ22a、22b、ベルト23a、23bそれぞれを介して回転体29a、29bを駆動させる駆動部である。モータ19a、19bとしては、ステッピングモータが使用できるが、位置フィードバック機能を有するサーボモータ等を用いることが望ましい。
【0050】
プーリ22a、22bは、モータ19a、19bの動力をベルト23a、23bに伝達する部位である。なお、ベルト23a、23bは歯付きベルトを用いることが望ましく、この場合、プーリ22a、22bおよび後述する回転体29a、29bの外周に歯付きベルトに対応した歯型を形成すればよい。
【0051】
回転体29a、29bは、それぞれ軸受け27a、27bを介して固定部21a、21bの中央に設けた回転軸25a、25bに取り付けられる。なお、回転軸25a、25bは、回転体29a、29bを貫通せず、回転体29a、29bの厚み方向の途中まで嵌入する。固定部21a、21bは、モータ19a、19bによっては動作せず、固定される部位であり、モータ19a、19bとは分離して配置される。固定部とモータとを直接接触させると、固定部にモータからの振動が伝達するためである。
【0052】
固定部21aと回転体29aとは対向するように設けられ、同様に、固定部21bと回転体29bとが対向するように設けられる。また、回転体29a、29b同士も互いに対向して設けられる。すなわち、固定部21a、回転体29a、回転体29b、固定部21bが順に配置される。なお、回転体29a、29bは独立して固定部21a、21bに対して正逆方向に回転可能である。また、回転軸25a、25bは、同一軸上に同一方向に配置されるため、回転体29a、29bの互いの回転中心は同一軸上となる。
【0053】
軸受け27a、27bは、回転体29a、29bと固定部21a、21bとのそれぞれの距離が変動することを防ぐため、軸受自体のガタが少ないものが望まれ、例えば、アンギュラ玉軸受けを用いることが好適である。
【0054】
なお、回転体29a、29bの駆動は、電気モータでなくてもよく、種々のアクチュエータ等の機器を適用することもできる。また、駆動部と回転体との動力の伝達は、ベルトに代えて、ギア等を用いてもよい。いずれにしても、回転体29a、29bを、固定部21a、21bに対して正逆方向に独立して回転させることができればよい。
【0055】
図5(a)に示すように、固定部21aには、軸芯(回転軸25a)を中心として、同心円上に所定間隔をあけて複数の貫通孔が形成され、それぞれの孔には、固定部21aを貫通するようにファイバ9a、9b、9cが設けられる。ファイバ9a、9b、9cは、固定部21aの外面側から挿入され、回転体29aとの対向面側の面位置に端面が来るように配置される。
【0056】
また、図5(b)に示すように、回転体29aの固定部21aとの対向面側には孔が設けられ、当該孔にはファイバ31aが設けられる。ファイバ31aは、固定部21aとの対向面側の面位置に端面が来るように配置され、さらに、固定部21aとの対向面におけるファイバ9a、9b、9cの径方向位置と対応する位置に設けられる。すなわち、回転体29aを所定の位置に回転させることで、ファイバ31aの端部をファイバ9a、9b、9cのいずれかの端部位置に対向配置させることができる。
【0057】
図7(a)は、図4のT位置の拡大断面図である。なお、図7(a)においては、簡略化のためファイバ9を1本のみ示す。固定部21aを貫通し、回転体29a側の端面と同一面にファイバ9の端面が配置される。同様に、回転体29aの端面と同一面にファイバ31aの端面が配置される。回転体29aを所定の位置に回転させると、図7(a)に示すように、ファイバ9とファイバ31aとが対向するように位置する。また、回転体29aと固定部21aとの間には、ギャップ33aが形成されるため、回転体29aの回転時に回転体29aと固定部21aとが接触することがない。
【0058】
ファイバ9とファイバ31aとが対向する位置で回転体29aの動作を止め、ファイバ9側から光源からの光を送ると(図中矢印V方向)、ファイバ9の端面から出る光が、対向するファイバ31aの端面に入る(図中矢印W方向)。なお、当然に、ファイバ31aの端面から出る光は、対向するファイバ9に入るようにすることもできる。すなわち、ファイバ9とファイバ31aとが光学的に接続される。
【0059】
なお、ギャップ33aは、部材や動作の精度から、数10μm〜数100μmであり、望ましくは10〜100μm程度である。これに対し、ファイバ9とファイバ31aは、例えばプラスチックファイバであり、外径は約500μmであるため、ファイバ9とファイバ31aの外径は、ギャップ33aに対して大きく、ギャップ33aでの光のロス(漏れ)を最小限に抑えることができる。
【0060】
また、図4に示すように、ファイバ31aは、固定部21aとの対向面側のファイバ9a、9b、9cとの対向位置から、固定部21aとの対向面と逆側の面(回転体29bとの対向面)の回転中心位置まで、回転体29a内部で略S字状に湾曲して内蔵される。なお、ファイバ31aのそれぞれの端部においては、ファイバ31aは回転体29aの回転軸方向に平行に向けて配置されている。また、回転体29a内部におけるファイバ31aの曲率半径は、ファイバ31aの光の伝送損失を考慮して決定される。また、ファイバ31aの曲率半径は、直線部を除き一定で、滑らかな曲線であることが望ましい。
【0061】
図6(a)に示すように、回転体29bの回転体29aとの対向面側には孔が設けられ、当該孔にはファイバ31bが設けられる。ファイバ31bは、ファイバ31aと略同様であり、回転体29aとの対向面側の面位置に端面が来るように配置され、さらに、対向面における回転体29aのファイバ31aの位置、すなわち回転体29bの回転中心位置に設けられる。なお、回転体29a、29bの回転軸は同一軸上に位置するため、回転体29a、29bのいずれの回転位置においても、常にファイバ31a、31bは対向位置配置される。
【0062】
図7(b)は、図4のU位置の拡大断面図である。前述の通り、回転体29aの端面と同一面にファイバ31aの端面が配置され、回転体29bの端面と同一面にファイバ31bの端面が配置される。回転体29a、29bの間には、ギャップ33bが形成される。ギャップ33bはギャップ33aと同様である。したがって回転体の回転時に回転体29a、29bが接触することがない。また、ファイバ31a、31bの対向位置は、回転体の回転位置によらず一定でるため、ファイバ31a、31bが常に光学的に接続される。
【0063】
また、図4に示すように、ファイバ31bもファイバ31aと同様に固定部21b内に内蔵される。すなわち、回転体29aとの対向面側のファイバ31aとの対向位置から、固定部21bの後述するファイバ13の径方向位置まで、回転体29b内部で略S字状に湾曲して内蔵される。なお、ファイバ31bのそれぞれの端部も、回転体29bの回転軸方向に平行に向けて配置される。また、回転体29b内部におけるファイバ31bの曲率半径もファイバ31bの光の伝送損失を考慮して決定され、ファイバ31bの曲率半径は、直線部を除き一定で、滑らかな曲線であることが望ましい。
【0064】
図6(b)に示すように、固定部21bには、軸芯(回転軸25b)を中心として、同心円上に所定間隔をあけて複数の貫通孔が形成され、それぞれの孔には、固定部21bを貫通するようにファイバ13a、13b、13c、・・・、13lが設けられる。ファイバ13a、13b、13c、・・・、13lは、固定部21bの外面側から挿入され、回転体29bとの対向面側の面位置に端面が来るように配置される。なお、固定部21bと回転体29bとの間にもギャップ33aと同様のギャップが形成され、ギャップを介してファイバ31bと各ファイバ13とが光学的に接続される。
【0065】
なお、ファイバ31b側からファイバ13へ入光せずに、当該ギャップで漏れた光が、隣り合う他の光ファイバ13に入光することを防ぐため、回転体29bと固定部21bとの互いの対向面には、光の反射を抑制する反射防止膜のコーティングや梨時処理等を施すことが望ましい。同様に、ファイバ31a側からファイバ9へ入光せずに、当該ギャップで漏れた光が、隣り合う他の光ファイバ9に入光することを防ぐため、回転体29aと固定部21aとの互いの対向面には、光の反射を抑制する反射防止膜のコーティングや梨時処理等を施すことが望ましい。
【0066】
次に、光スイッチ11の動作について説明する。図8は、ファイバ9a、9b、9cとファイバ13a、13b、13c(簡単のためファイバ13は3本のみ示す)の位置関係を示す模式図である。
【0067】
図8(a)に示す状態では、ファイバ9a(たとえば光源3aと接続される)がファイバ31aと対向する。したがって、光源3aからの光は、ファイバ9aからファイバ31aに光接続される。なお、この状態では、ファイバ9b、9c(光源3b、3c)からは光が送られることがない。同様に、ファイバ31bがファイバ13a(たとえば試料室15aと接続される)と対向する。したがって、ファイバ31bとファイバ13aとが光接続される。また、ファイバ31aは常にファイバ31bと光接続されるため、光源側のファイバ9aと試料室側のファイバ13aとが光接続される。
【0068】
ずなわち、図8(a)に示す状態では、ファイバ9a(光源3a)からの照射光を試料室15aに照射することができるとともに、試料室15aからの戻り光をファイバ9a(検出器17a)側に戻すことができる。
【0069】
次に、図8(b)に示すように、図8(a)の状態から所定間隔で配置されたファイバ13同士の1ピッチ分だけ回転体29bを回転させると、ファイバ31bがファイバ13bの位置に対応する位置に移動する。この状態では、ファイバ9a(光源3a)は、ファイバ13bと光接続される。
【0070】
同様に、図8(c)に示すように、図8(b)の状態から所定間隔で配置されたファイバ9同士の1ピッチ分だけ回転体29aを回転させると、ファイバ31aがファイバ9bの位置に対応する位置に移動する。この状態では、ファイバ9b(光源3b)は、ファイバ13bと光接続される。以上のように、回転体29a、29bを所定角度(ファイバの配置角度)ずつ回転させ、対応する光源から光を照射することで、全てのファイバ13a、13b、13c、13d、・・・、13lに光源側のファイバ9a、9b、9cを光接続することが可能となる。
【0071】
なお、ファイバ13は固定部21bおよび試料室側で固定される。すなわち、ファイバ13の本数以上の試料室の検体を測定するためには、試料室側のトレイを移動させてそれぞれのファイバの下部に試料室が来るように制御すれば良い。たとえば、複数列の試料室の測定には、列数分のファイバ13を光スイッチの切り替えによって順次測定するとともに、複数段の試料室に対しては、試料室トレイを移動させて、移動毎に各列の試料室に対して光スイッチの切り替えによって順次測定すれば良い。
【0072】
図9は、トレイ35を示す図であり、トレイ35上には、複数の試料室W11、W12、・・・、Wnmが配置される。なお、図1等においては、試料室として12個の例を示したが、実際には、一列にm個の試料室が配置され、これがn段(合計n×m個)配置される。各試料室Wには、あらかじめ検体が配置される。
【0073】
まず、図10(a)に示すように、トレイ35に対して、照射・受光部37(37a、37b、・・・、37x)が一列に配置される。なお、照射・受光部37は、ファイバ13のウェル側の先端およびレンズ14を示すものである。この際、照射・受光部37は、対応する試料室W11〜W1mの上方にそれぞれ配置される。すなわち、照射・受光部37は、一列に並列される試料室Wの個数と同数だけ一列に配置される。このとき、一列に配置された試料室の数mと、照射・受光部37の数が等しく、m=xとなる。この状態で、前述した光源および光スイッチを制御して、それぞれの試料室Wに対して、順次、所定の光を照射して、照射毎に発生する蛍光を受光する。受光した光は適切な光フィルタを介して検出される。なお、検出された光はコンピュータ等の記憶部等に保存され、必要に応じて既存のデータ等との比較が行われ、表示部や出力部に出力される。
【0074】
一列(W11〜W1m)の測定が終了すると、照射・受光部37は固定されたまま、トレイ35が、照射・受光部37の併設方向とは垂直方向に試料室の設置ピッチ分だけ移動する(図中矢印Y方向)。すなわち、照射・受光部37の下部には、試料室W21〜W2mが位置する。この状態で、前述と同様に、各試料室の検体の測定を順次実施する。以上をn回繰り返し、m列×n段の試料室全体についての測定を完了する。上記の他、例えば、測定対象とする複数の試料室を、W11〜、W12、・・・、W1(m/2)として、1列の試料室の半分を測定後、試料室を(m/2)だけ行方向に移動して、W1(m/2)+1、W1(m/2)+2、・・・、W1mまで測定して、さらに上記と同様に照射・受光部37の併設方向とは垂直方向に試料室の設置ピッチ分だけ移動して測定を行なうこともできる。このように、一列(W11〜W1m)の測定を、1列の試料室の測定を2回、3回など複数回に分けて測定を行なうことができる。
【0075】
トレイ35を固定してファイバ13を動かすと、ファイバ13が振動等により動きまたは曲がり角度の変化により損失が変化する。設置状態で有する伝送損失に対し、さらにファイバ位置の変動等による損失が重畳されるため、さらに損失が大きくなり、損失が大きくなるとともに、損失が変化することで測定精度が低下する。したがって、本発明では、ファイバ13側を動かすのではなく、検体を入れた測定用トレイ35側を移動させる。
【0076】
第1の実施の形態によれば、簡易な構造でコンパクトであり、短時間で多くの検体を正確に分析可能な蛍光測定装置1を提供することができる。たとえば、最低限の光源3および光スイッチ11の制御を行うことで、複数の試料室の検体を、極めて迅速に効率良く測定することができる。また、光スイッチ11は、回転体29a、29bを所定角度で回転させるのみであるため、切り替えが迅速である。
【0077】
また、光スイッチ11には、回転体と固定部との間にギャップが形成されるため、回転体が固定部と接触することによる動作不良や摩耗等の問題がない。したがって、確実に光接続を切り替えることができる。
【0078】
また、光スイッチの固定部側にファイバ9、13が接続されるため、光スイッチの動作の際に、照射光および戻り光の光路が動くことがない。このため、光路における光伝送損失が変動することがなく、高い精度で測定を行うことができる。また、同様に、複数段の試料室の測定に際して、トレイ側を移動させることで、前述したように各試料室の測定に際して、光路であるファイバが動くことがない。このため、光路における光伝送損失が変動することがなく、高い精度で測定を行うことができる。
【0079】
通常、光ファイバの伝送損失で問題となるのは、光ファイバの曲がりによる損失である。すなわち、光ファイバを曲げると、コアとクラッドの境界面の全反射角が変化する。各ファイバは各装置間を湾曲して結ばれるため、一定の損失が生じているが、光ファイバに振動等が加えられると、この損失が変動し、個々のファイバによる損失の相違により測定精度が低下する。このような損失は、曲がりが小さい場合は、伝播してきた光が臨界角以下の角度になり、モード変換が起こって伝播してきた光がクラッド層に放射されるためである。
【0080】
このため、照射光路および受光光路であるファイバ9、13は、その曲がり角度の変化が生じることがないように、接続される光スイッチの固定部側に接続される。
【0081】
次に、他の実施の形態について説明する。図11は、第2の実施形態にかかる光スイッチ40を示す図である。なお、以下の実施形態において、図4等で示した構成と同一の機能を奏する構成については、図4等と同一の符号を付し、重複した説明を省略する。光スイッチ40は、光スイッチ11と略同様の構成であるが、固定部21aに直接光源42等が搭載される点で光スイッチ11と異なる。
【0082】
光スイッチ40の固定部21aには、光スイッチ11のファイバ9に対応するように、軸芯を中心として、同心円上に所定間隔をあけて複数の光源42が設けられる。光源42の先端にはそれぞれフィルタ45およびレンズ43が設けられる。レンズ43の表面は、固定部21aにおける回転体29aとの対向面位置となる。複数の光源42は、例えばそれぞれ波長の異なる光源であり、前述した光源3a、3b、3cと同様のものが使用できる。
【0083】
フィルタ45は、フィルタ5と同様であり、光源の光軸に対して所定角度で設けられる。たとえば、固定部21aの径方向外方に向けて45°の角度で設けられる。それぞれのフィルタ45の外方には、さらにフィルタ45、レンズ47、および検出器49がそれぞれ設けられる。すなわち、光スイッチ40では、光源および光検出器が固定部21aに搭載される。
【0084】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、光源42および検出器49が固定部21aに搭載されるため、振動等が生じることがない。また、直接光源42等が取り付けられるため、これらを接続するファイバが不要となる。このため、このファイバによる光伝送損失がなく、また、装置をコンパクトにすることができる。
【0085】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、本発明の試料室の行と列は、相互に入れ換えても、その他の構成要件が同一であれば発明は成立するものことは言うまでもない。
【0086】
たとえば、一対の固定部および回転体を有する光スイッチについて説明したが、その一方のみの固定部および回転体を有する光スイッチを用いることもできる。図12は、固定部21aおよび回転体29aを有する光スイッチ50を示す図である。光スイッチ50は、光スイッチ1と同様の構成であるが、回転体29aの固定部21aとの対向側とは反対側に、回転体29bに変えてファイバ51が設けられる。
【0087】
前述の通り、ファイバ31aは、回転体29aの回転中心に露出する。ファイバ51の端部は、回転体29aの回転中心に回転体29aとギャップをあけて固定される。すなわち、ファイバ31aとファイバ51とが光接続される。なお、回転体29a(ファイバ31a)とファイバ51との間にはレンズを設けてもよい。ファイバ51の他の端部は、ウェル上に配置され、ウェル内の検体に対して光を照射し、受光することができる。
【0088】
光源側の複数のファイバ9は、たとえば、それぞれ異なる波長の光源3a、3b、3c(図示せず)に接続される。ファイバ9は固定部21aに固定される。回転体29aを回転させると、回転体29aに固定されたファイバ31aの端部はいずれかのファイバ9と光接続される。すなわち、光スイッチ50を切り替えることで、いずれかのファイバ9をファイバ31aに切り替えて光接続することができる。また、ファイバ51は、回転体29aの回転位置によらず、常にファイバ31aと光接続されるため、ファイバ9からの光を適宜切り替えてファイバ51に光接続させることができる。
【0089】
なお、光源側のファイバ9に変えて、ウェル側のファイバ13を固定部21aに接続してもよい。この場合には、図中のファイバ51が光源側と接続される。単一の光源からの光は、ファイバ51を介してファイバ31aに導光され、ファイバ31aの光は、光スイッチ50を動作させることで、いずれかのウェルに光を照射することができる。
【0090】
以上のように、一対の固定部および回転体を有さなくても、単一の光源を複数のウェルに切り替えて照射することができ、または、複数の光源からの光を切り替えて所定のウェルに照射することができる。
【符号の説明】
【0091】
1………蛍光測定装置
3、3a、3b、3c………光源
5、5a、5b、5c………フィルタ
7………レンズ
9、9a、9b、9c………ファイバ
11、40、50………光スイッチ
13、13a、13b、13c、13d、・・・、13l………ファイバ
14………レンズ
15、15a、15b、15c、15d………試料室
17、17a、17b、17c………検出器
17、65、67、70………光スイッチ
19a、19b………モータ
21a、21b………固定部
22a、22b………プーリ
23a、23b………ベルト
25a、25b………回転軸
27a、27b………軸受け
29a、29b………回転体
31a、31b………ファイバ
33a、33b………ギャップ
35………トレイ
37………照射・受光部
41………フィルタ
42………光源
43………レンズ
45………フィルタ
47………レンズ
49………検出器
51………ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光測定装置に用いられる光スイッチであって、
複数の孔からなる第1の孔群が同心円状に配置された第1の固定部と、
前記第1の固定部と対向するように回転可能に設けられる第1の回転体と、
前記第1の回転体を回転させる駆動部と、
を具備し、
前記第1の回転体には、前記第1の固定部との対向面側の前記第1の孔群に対応する位置と、前記第1の固定部との対向面とは逆側の面の回転中心位置とを光学的に接続するファイバが内蔵され、
前記第1の回転体を回転させることで、前記第1の孔群の任意の孔と前記第1の回転体に内蔵されるファイバとを光学的に接続可能であることを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
前記光スイッチはさらに、
複数の孔からなる第2の孔群が同心円状に配置された第2の固定部と、
前記第1の回転体と前記第2の固定部との間に回転可能に設けられる第2の回転体と、
前記第2の回転体を回転させる駆動部と、
を具備し、
前記第2の回転体は、前記第1の回転体と同一の回転軸上で回転可能であり、前記第2の回転体には、前記第1の回転体との対向面側の回転中心位置と、前記第2の固定部との対向面側の前記第2の孔群に対応する位置とを光学的に接続するファイバが内蔵され、
前記第1の回転体および前記第2の回転体を回転させることで、前記第1の孔群の任意の孔と前記第2の孔群の任意の孔とを光学的に接続可能であることを特徴とする請求項1記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記第1の孔群のそれぞれの孔には、前記第1の回転体側に照射可能なそれぞれ波長の異なる光源が光学的に接続されており、前記第1の孔群の任意の孔から前記第1の回転体のファイバに対して前記光源からの出射光を出射し、前記第1の回転体と前記第2の回転体の互いの回転中心で出射光を光学的に接続し、前記第2の回転体のファイバからの出射光を前記第2の孔群の任意の孔に設けられたファイバに出射可能であることを特徴とする請求項2記載の光スイッチ。
【請求項4】
それぞれの前記光源の後方には、前記光源から出射される波長の出射光を光軸方向に透過し、検体から発生した戻り光を光軸方向に対して所定角度で反射するフィルタがそれぞれ設けられ、
前記第2の孔群の任意の孔に設けられたファイバから前記第2の回転体のファイバに対して検体からの戻り光を入射させ、前記第2の回転体のファイバからの戻り光を前記第1の回転体を介して前記第1の孔群の任意の孔に入射させ、前記フィルタで前記戻り光を光軸方向から所定角度で反射させ、光検出器で戻り光を検出可能であることを特徴とする請求項3記載の光スイッチ。
【請求項5】
それぞれの前記光源および前記フィルタは、前記第1の固定部に内蔵され、前記光源はそれぞれレンズを介して前記第1の孔群の孔より出射可能であることを特徴とする請求項4記載の光スイッチ。
【請求項6】
光測定装置であって、
請求項4または請求項5記載の光スイッチを用い、
複数の光源からの出射光を前記光スイッチの前記第2の孔群の孔それぞれに設けられる照射・受光ファイバを介して検体が入れられる複数の試料室それぞれに照射するとともに、それぞれの前記検体からの戻り光を前記照射・受光ファイバで受光し、前記光スイッチを介して前記光検出器で戻り光を検出可能であることを特徴とする光測定装置。
【請求項7】
光測定方法であって、
請求項6記載の光測定装置を用い、
前記第1の孔群の孔と、前記第2の孔群の孔とを前記光スイッチで光接続し、前記光源から前記検体に出射光を照射するとともに前記検体からの戻り光を前記検出器で検出し、
前記第1の回転体および前記第2の回転体の少なくとも一方を動作させ、前記第1の孔群の孔および前記第2の孔群の孔の少なくとも一方の位置を切り替えることで、任意の光源と任意の検体とを光接続し、複数の光源により複数の検体の測定を行うことを特徴とする光測定方法。
【請求項8】
光源側と試料室側との光接続を順次切り替えて、光スイッチを動作させて複数の光源により複数の検体の測定を行うときに、照射する光源情報と照射される検体に対応する試料室位置情報とを、光検出器で検出した光強度情報と対応させ、必要に応じてコンピュータの記憶部あるいは外部記憶媒体に保存することを特徴とする請求項7に記載の光測定方法。
【請求項9】
さらに、測定した前記光強度情報とあらかじめ設定された基準光強度情報との比較を行い、表示部に出力することを特徴とする請求項8に記載の光測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−73195(P2012−73195A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220114(P2010−220114)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(509133768)株式会社古河電工アドバンストエンジニアリング (7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】