説明

光スイッチ及び光通話路

【目的】 加入者からの加入者線信号を、常時かつ同時に監視することが可能な光交換機を構成する光スイッチ及び光通話路を得る。
【構成】 光スイッチ素子は2入力2出力2モニタ端子を持つ。モニタ端子は常に対応する入力と同レベルのモニタ出力を出す。出力端子にはモニタ出力に依存せず制御入力により指定された入力がそのままのレベルで出力される。分岐によるロスは分岐点に内蔵された光増幅器で補償される。モニタ出力は交換機の加入者線信号の監視に用いられる。この光スイッチ素子は、格子状に配列され、隣接素子同士が接続されたクロスポイント形の通話路を構成する。
【効果】 発呼検出に要する遅延時間を減少させ接続品質を向上させることができ、発呼検出までの遅延時間を一定にできるので、交換機内部の処理を簡単にでき、かつ、ISDNのDチャネル信号の監視に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、通信情報の交換接続を行う交換機における通話路及び通話路を構成するスイッチに係り、特に、通話路スイッチ素子として光スイッチを用いた光交換機における光通話路及び光スイッチ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】光交換機に関する従来技術として、例えば、特開平2−141052号公報等に記載された技術が知られている。
【0003】図9は従来技術による光交換機の通話路系の構成例を示す図である。この図には、光通話路、発呼検出トランク、接続トランク及び端末加入者のみが示されている。この従来技術において、端末加入者から各トランクまでの信号は光のままで扱われる。
【0004】そして、端末加入者の発呼検出は、発呼検出トランクで行われ、通話は、接続トランクに発着それぞれの端末加入者が、光通話路を介して接続されて行われる。発呼検出トランクは、複数の端末加入者に対して共用されており、発呼の検出は、各端末を光通話路を介して時分割的に発呼検出トランクに接続することにより行われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術は、光信号として交換機に到達する加入者端末の発呼信号を検出するために、加入者をそれぞれ順番に1つずつ時分割的に発呼検出トランクに接続するよう光通話路を制御する必要があった。
【0006】前記従来技術は、このように1つずつ加入者線を引き込んで発呼検出を行うため、発呼信号が送られてきてから発呼が検出されるまでに、確率的な遅延時間が生じるという問題点を有している。すなわち、前記従来技術は、あるときは発呼が瞬時に検出されるが、別のあるときは検出のための引き込みが一巡するまで発呼が検出されないという問題点を有し、今後の通信の主流になるサービス総合ディジタル網(ISDN)の加入者線信号であるDチャネル信号を扱う場合、この発呼検出時間のバラツキが問題となる。
【0007】ISDNにおいは、通信の開始が、電話番号等を含む呼設定信号を端末が発信することにより行われるが、交換機側が、この呼設定信号の常時監視を行っていないと発呼の検出ができない、すなわち、引き込んでいない加入者より送られてくる発呼信号が検出されずに消滅してしまうという問題があった。もちろん、呼設定信号の再送手順はあるが、これは回線障害等による信号の消滅を考慮したものであり、交換機の構成による前述のような問題点を考慮したものではない。
【0008】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決し、加入者線信号を常時監視することができ、発呼信号が検出されずに消滅してしまうことのない光交換機の光通話路及び光スイッチ素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によれば前記目的は、全ての加入者のそれぞれに対応して加入者線信号検出回路を設け、加入者側より送られてくる信号を光通話路と加入者線信号検出回路とに分岐する機能を有する光通話路を備えることにより達成される。
【0010】
【作用】加入者線信号、例えば、発呼信号は、交換機に到達するとまず分岐され、その一方が加入者線信号検出回路に入力される。こうすることにより、加入者から送られる光信号は、常に加入者線信号検出回路に入力されることになる。分岐器と加入者線信号検出回路とは、全ての加入者対応に設置されているので各加入者からの信号を全て同時に監視することができる。
【0011】また、加入者からの信号を常時監視することにより、ISDN対応時にDチャネル信号が消滅することを防止することができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明による光通話路及び光スイッチ素子の実施例を図面により詳細に説明する。
【0013】図1は本発明の一実施例による光交換機の構成を示すブロック図、図2は光通話路の第1の実施例の構成を示す模式図、図3は光スイッチ素子の機能を説明する図である。図1において、17は光通話路、18〜20は分岐器、21〜23は加入者信号検出回路、24は信号処理装置、25は信号処理部、26は制御部、107〜109は加入者端末である。
【0014】図1に示す本発明の一実施例による光交換機は、光スイッチ素子を主体とする光通話路17を用い、加入者端末107〜109から光加入者線110〜112を通って入力されてくる加入者の通信情報を光信号のまま交換するものである。
【0015】この光交換機は、光加入者線110〜112、光通話路17と分岐器18〜20とからなる通話路部、加入者線信号検出回路21〜23と信号処理装置24とを収容する信号処理部25、及び、中央制御装置を有する制御部26により構成されている。
【0016】光交換機は、加入者からの加入者線信号を、光のまま光加入者線110〜112から取り込み、さらに、分岐器18〜20により、加入者線信号を光通話路17と信号処理部25とに分岐させる。分岐された一方の接続先である信号処理部25の加入者線信号検出回路21〜23は、この加入者線信号を検出するため、光電気変換を行い、加入者線信号を電気信号として信号処理装置24に送る。
【0017】信号処理装置24は、電気信号とされた加入者線信号に対して、信号種別判別等の必要な処理を施した後、制御部26にその信号の情報を受け渡す。制御部26は、この情報をもとに呼処理を行う。すなわち、接続部26は、通話路形成、切断等の制御信号を光通話路17に出力し、発呼加入者装置と、相手加入者装置との間の接続から切断までの交換動作を実行する。
【0018】光通話路17は、図2にその詳細を示すように、任意の入力側回線と任意の出力側回線とを接続できるように、丸印で示す光スイッチ素子を格子状に配置して、この格子上に接続叉点を設けて構成される。
【0019】各光スイッチ素子は、図3にその機能を示すように、2つの入力端子X、Vと、2つの出力端子Y、Zと、制御入力端子Cとを備えて構成されている。そして、図3の表に示すように、このスイッチ素子は、制御入力CがONのとき、端子XとYとを接続し、端子VとZとを接続する。また、制御入力端子CがOFFのとき、端子VとYとが接続され、端子XとZとが接続される。
【0020】このような機能を有する光スイッチ素子はすでに公知であり、図1に示した本発明の実施例における通話路系は、公知の光スイッチ素子と光分岐器とを組み合わせて構成したものである。
【0021】図4及び図5は、分岐器を用いずに光通話路に分岐機能を持たせて構成した光通話路の第2、第3の実施例を示す図、図6はこれらの光通話路に使用する光スイッチ素子の機能を説明する図である。
【0022】図6に示す光スイッチ素子は、2つの制御入力端子C1、C2を持ち、これらの制御入力信号の組み合わせにより、図3により説明した光スイッチ素子と同等の機能を持ち、さらに、入力端子の一方の入力レベルを2つの出力端子の両方に同等のレベルで出力できるように制御されるものである。1つの入力を2つの出力に同等のレベルで出力する機能は、光の分岐点にレーザ発振により光を増幅する機能を持たせることにより実現できることが知られおり、本発明に使用する図6に示す光スイッチ素子は、このような機能を持つように構成されている。
【0023】図4に示す光通話路は、全ての叉点に図6に示す光スイッチ素子を用いることにより構成され、図1R>1に示した通話路系と同一の機能を持つ。また、図5に示す光通話路は、全ての叉点に図6に示す光スイッチ素子を用いてもよいし、検出回路に接続されない叉点に図3R>3に示す光スイッチ素子を用いてもよい。そして、このような図5に示す光通話路も、図1に示した通話路系と同一の機能を持つ。
【0024】図7は分岐機能を持つ光通話路の第4の実施例を示す図、図8はこの通話路に使用する光スイッチ素子の機能を説明する図である。
【0025】図8に示す光スイッチ素子は、2つの入力に対応したモニタ端子PM1、PM2を有しており、これらのモニタ端子に、制御入力に依存せず常に入力レベルと同等のレベルの信号が出力されるように構成されている。このような分岐は、前述の光増幅機能付き分岐点を用いることにより実現することができる。制御入力Cによるスイッチの制御は、図3の場合と同様に行われる。
【0026】このようなスイッチ素子を使用した図8に示す光通話路も、図1により説明した通話路系と同等の機能を有し、常に入力端子からの加入者線信号を検出回路に導くことができる。
【0027】前述した本発明の実施例における光スイッチ素子は、2つの入力端子と2つの出力端子を持つものとして、また、さらに2つのモニタ端子を持つものとして説明したが、本発明によるスイッチ素子は、さらに多数の入力端子、出力端子、モニタ端子を備えるものであってもよい。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、加入者からの加入者線信号を、全て同時監視することが可能となり、発呼検出に要する遅延時間がを減少させ接続品質の向上を図ることができる。また、本発明によれば、発呼検出までの遅延時間を、確率的でなく一定にすることができるので、交換機内部の処理の遅延時間の変動を考慮する必要がなくなり、交換機内部の処理を簡単にすることができる。
【0029】また、加入者を常時同時監視することができるため、ISDNの加入者線信号であるDチャネル信号の監視に適用することが可能となり、従来実現されていなかったISDN機能を持った光交換機を実用化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による光交換機の構成を示すブロック図である。
【図2】光通話路の第1の実施例の構成を示す図である。
【図3】図2の光通話路に使用する光スイッチ素子の機能を説明する図である。
【図4】光通話路の第2の実施例の構成を示す図である。
【図5】光通話路の第3の実施例の構成を示す図である。
【図6】図4、図5の光通話路に使用する光スイッチ素子の機能を説明する図である。
【図7】光通話路の第4の実施例の構成を示す図である。
【図8】図7の通話路に使用する光スイッチ素子の機能を説明する図である。
【図9】従来技術による光交換機の通話路系の構成例を示す図である。
【符号の説明】
17 光通話路
18〜20 分岐器
21〜23 加入者信号検出回路
24 信号処理装置
25 信号処理部
26 制御部
107〜109 加入者端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、2つの入力端子と2つの出力端子とを持ち、第1の入力端子からの入力信号を第1の出力端子に出力し、第2の入力端子からの入力信号を第2の出力端子に出力する状態と、第1の入力端子からの入力信号を第2の出力端子に出力し、第2の入力端子からの入力信号を第1の出力端子に出力する状態と、第1あるいは第2の入力端子からの入力信号を2つの出力端子に同等のレベルで同時に出力する状態とを切り替える機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、2つの入力端子と2つの出力端子とを持ち、第1の入力端子からの入力信号を第1の出力端子に、第2の入力端子からの入力信号を第2の出力端子に、それぞれ入力信号と同等のレベルで出力する状態と、第1の入力端子からの入力信号を第2の出力端子に、第2の入力端子からの入力信号を第1の出力端子に、それぞれ入力信号と同等のレベルで出力する状態と、第1あるいは第2の入力端子からの入力信号を2つの出力端子に、それぞれ入力信号と同等のレベルで同時に出力する状態とを切り替える機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項3】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、2つの入力端子と2つの出力端子と2つのモニター端子とを持ち、第1の入力端子からの入力信号を第1の出力端子と第1のモニター端子とに出力し、第2の入力端子からの入力信号を第2の出力端子と第2のモニター端子とに出力する状態と、第1の入力端子からの入力信号を第2の出力端子と第1のモニター端子とに出力し、第2の入力端子からの入力信号を第1の出力端子と第2のモニター端子とに出力する状態とを切り替える機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項4】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、2つの入力端子と2つの出力端子と2つのモニター端子とを持ち、第1の入力端子からの入力信号を第1の出力端子と第1のモニター端子とにそれぞれ入力信号と同等のレベルで出力し、第2の入力端子からの入力信号を第2の出力端子と第2のモニター端子とにそれぞれ入力信号と同等のレベルで出力する状態と、第1の入力端子からの入力信号を第2の出力端子と第1のモニター端子とにそれぞれ入力信号と同等のレベルで出力し、第2の入力端子からの入力信号を第1の出力端子と第2のモニター端子とにそれぞれ入力信号と同等のレベルで出力する状態とを切り替える機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項5】 請求項1ないし4のうち1記載の光スイッチを複数個格子状に配列し、それぞれ隣合うスイッチの端子相互を接続したことを特徴とする光通話路。
【請求項6】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、複数の入力端子と複数の出力端子とを持ち、任意の1つの入力端子からの入力信号を任意の1つの出力端子に出力する状態と、任意の1つの入力端子からの入力信号を任意の複数の出力端子に同等のレベルで同時に出力する状態とを切り替える機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項7】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、複数の入力端子と複数の出力端子とを持ち、任意の1つの入力端子からの入力信号を任意の1つの出力端子に出力する状態と、任意の1つの入力端子からの入力信号を任意の複数の出力端子にそれぞれ入力信号と同等のレベルで同時に出力する状態とを切り替える機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項8】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、複数の入力端子と該入力端子に1対1対応する複数のモニター端子と複数の出力端子とを持ち、任意の入力端子からの入力信号をその入力端子に対応するモニター端子と、任意の出力端子とに出力する機能を有することを特徴とする光スイッチ。
【請求項9】 通信情報を光を用いて交換する光交換機に用いる光スイッチにおいて、複数の入力端子と該入力端子に1対1対応する複数のモニター端子と複数の出力端子を持ち、任意の入力端子からの入力信号を該入力端子に対応するモニター端子と、任意の出力端子とに、それぞれ入力信号と同等のレベルで出力する機能を有することを特徴とする光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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