説明

光ディスクとその製造方法

【課題】ICチップが搭載され且つアンテナを有する薄型で低コスト・高品質の光ディスク、及び該光ディスクの効率のよい製造方法の提供。
【解決手段】(1)基板上に少なくとも記録層を有し、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクであって、該アンテナが導電性高分子材料を用いて形成されている光ディスク。
(2)基板上に少なくとも記録層を有し、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクの製造に際し、該アンテナを導電性高分子材料を用いて印刷法又は塗布法で形成する光ディスクの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクとその製造方法に関し、特に導電性高分子材料を用いたアンテナを有する光ディスクとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像などの大容量データを記録できる光ディスクとして、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)の普及が著しい。また最近では、更に高画質でかつ長時間の映像の記録などを目的として、青色半導体レーザを光源とする光ディスクの開発が進められており、その一種として既にBD(ブルーレイディスク、登録商標)が商品化されている。
このように、高品質のデジタルコンテンツを可搬型の記録媒体に容易に保存できるようになるのに伴い、デジタルコンテンツの著作権保護の重要性が高まっている。
ブルーレイディスクでは、ディスク毎に固有なIDを、バーコード状のパターンとして、BCA(バースト・カッティング領域)と呼ばれる信号記録領域の最内周部に記録し、プレーヤでこのIDを読み取ることにより、不正なディスクが再生されないように管理している。しかし、不正なディスクを作成する技術は年々高度になっており、更に強固な著作権保護対策が必要であると言われている。
【0003】
一方、近年、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップであるRFID(Radio Frequency Identification、ラジオ・フリークエンシー・アイデンティフィケーション)タグが、IDカード、交通乗車券、電子マネーなどに利用されるようになっている。RFIDタグは、内蔵電池を持たず、リーダ/ライタ(R/W)からの電波あるいは磁界をアンテナで受信して起電力に変換するため、軽量で携帯性に優れ、半永久的に使用可能であるという特徴を持つ。これに加えて、複製が非常に困難であるという特徴もある。
このような背景から、光ディスクにRFIDタグを搭載して著作権保護対策を強化することが考えられている。例えば、読み取り専用の状態でディスクIDを記録したRFIDタグを光ディスクに搭載させることで、同じディスクIDを持つ光ディスクが複製される危険性を、上記のBCAパターンを用いた場合よりも大幅に低下させることができる。
更に、RFIDタグの記憶容量に余裕がある場合には、余った記憶領域にユーザに対して利益を供与するアプリケーションを格納して、光ディスクに新たな付加価値を発生させることもできる。例えば、ゲームソフトが格納されたROM(リードオンリーメモリー)型光ディスクにRFIDタグを設け、ゲームの途中状態をそのRFIDタグに保存しておいて再開時に利用する用途や、光ディスク内の記録内容をRFIDタグに記録しておき、その光ディスクをプレーヤに挿入しなくてもR/Wにかざすだけで記録内容を知ることができるようにする用途などが考えられる。
【0004】
ところで、ICチップを光ディスクに搭載させる場合、無線通信や電力供給のためのアンテナを光ディスクの上に形成する必要がある。光ディスクは中心を軸に回転する円盤であるため、重量バランスの観点からコイル状のアンテナ(以下、アンテナコイルと呼称する)との親和性が高い。このため、光ディスクの上の信号記録領域より更に内側部分、あるいは信号記録領域の裏側にアンテナコイルを形成することが考えられている(例えば、特許文献1参照)。また、ICチップを光ディスクに搭載させる際にICチップとアンテナコイルとの結線を容易にするために、ICチップモジュールを用いたものもある(例えば、特許文献2参照)。
このようなアンテナコイルは、無線通信周波数帯域として短波帯(13.56MHzなど)を用いるICチップに適している。
上記アンテナコイルは、例えばスパッタリング法で金属膜を形成する方法などにより、光ディスクの基板上に形成できる(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−353714号公報
【特許文献2】特開平8−287208号公報
【特許文献3】国際公開2004/015702号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、銀合金やアルミ合金を用いてスパッタリング法によりアンテナを形成しているが、スパッタリング法は真空系を用いる必要があることから工程が複雑になり、また材料に金属を用いる点からコスト高になるという問題がある。
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、ICチップが搭載され且つアンテナを有する薄型で低コスト・高品質の光ディスク、特に波長450nm以下の青色レーザ光により記録再生が可能な光ディスクの提供、及び該光ディスクの効率のよい製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、次の1)〜11)の発明によって解決される。
1) 基板上に少なくとも記録層を有し、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクであって、該アンテナが導電性高分子材料を用いて形成されていることを特徴とする光ディスク。
2) アンテナが印刷法又は塗布法で形成されていることを特徴とする1)記載の光ディスク。
3) アンテナが、光ディスクの中心孔の周りに円状又はスパイラル状に設けられたアンテナコイルであることを特徴とする1)又は2)記載の光ディスク。
4) 更にカバー層を有し、該カバー層にICチップとアンテナを有し、青色波長のレーザ光によりカバー層側から記録再生が可能であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光ディスク。
5) 導電性高分子材料が透明導電性高分子材料であることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の光ディスク。
6) 導電性高分子材料の体積抵抗が1Ω・cm以下であることを特徴とする1)〜5)の何れかに記載の光ディスク。
7) 導電性高分子材料が導電性インクを含むことを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の光ディスク。
8) アンテナを形成する導電性高分子材料層の少なくとも一方の面に高誘電率物質層を有することを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の光ディスク。
9) 基板上に少なくとも記録層を有し、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクの製造に際し、該アンテナを導電性高分子材料を用いて印刷法又は塗布法で形成することを特徴とする光ディスクの製造方法。
10) アンテナとして、光ディスクの中心孔の周りに円状又はスパイラル状のアンテナコイルを設けることを特徴とする9)記載の光ディスクの製造方法。
11) 基板の表面に嵌入孔を形成し、この嵌入孔にICチップモジュールを嵌め込み、次いでアンテナコイルを形成した後、ICチップモジュールの絶縁部上のアンテナコイルを除去することを特徴とする10)記載の光ディスクの製造方法。
【0008】
以下、上記本発明について詳細に説明する。
本発明は、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクを製造するに際し、導電性高分子材料を用いて印刷法又は塗布法によりアンテナを形成した点に特徴を有する。
これにより、スパッタリング法のように真空系の複雑な工程を必要としないため、ICチップが搭載された光ディスクを低コストで効率よく製造することができる。
【0009】
図1は、実施の形態の一例に係る光ディスクの構成を示す図である。
光ディスク1には、その中心部に中心孔11が設けられており、この光ディスク1は、プレーヤに挿入されたときには、この中心孔11を中心に回転され、これまでに知られる一般的な方法により、信号記録面にレーザ光が照射されて記録が行われ、その反射光の光量に応じて信号の読み取りが行われる。また、この光ディスク1では、信号読み取り面の反対面に、非接触で情報の受け渡しが可能なRFIDタグが設けられている。RFIDタグは、情報を記憶する素子などが集積されたICチップと、信号送受信のためのアンテナからなる。
信号読み取り面の裏面の基板上には、ICチップの無線通信用のアンテナコイル12が、中心孔11の周りに円状かつ薄膜状に形成されている。また、アンテナコイル12の一部は離間しており、その離間部には、離間したアンテナコイル12の両端を接続するとともにICチップとの配線を行う機能を有するICチップモジュール20が設けられている。なお、このような1ターンのアンテナコイル12は、無線通信周波数帯域として短波帯(13.56MHzなど)を用いるICチップに適している。
【0010】
図2は、ICチップモジュール20を拡大して示した図である。
ICチップモジュール20は、両端に設けられた2つの接続端子21と、その各接続端子21の間に設けられた絶縁部22と、絶縁部22内に設けられたICチップ23とからなる。各接続端子21の間の距離は、アンテナコイル12の離間部の距離と同じにする。また、ICチップ23の接続端子は、絶縁部22の内部で各接続端子21と接続されており、例えば、その接続用の配線の周りを絶縁皮膜などで覆うことにより絶縁部22が形成されている。なお、実際にはICチップ23自体も絶縁膜により皮膜されていることが望ましい。
【0011】
図3は、図1の光ディスクのX−X断面図である。
光ディスク1の基板13の上面には嵌入孔が形成されており、この嵌入孔にICチップモジュール20が嵌め込まれている。そして、アンテナコイル12の離間部の両端が、ICチップモジュール20の各接続端子21の上に形成されて、これによりアンテナコイル12とICチップ23とが接続されている。更に、基板13の上には保護層14が形成されている。なお、本実施の形態では、後述するように、アンテナコイル12の離間部は、絶縁部22上のアンテナコイル12を除去することによって形成される。
このように、ICチップモジュール20を嵌入孔に収容して、基板13の上面から突出しないようにしたので、保護層14の厚さの増加が抑制され、光ディスク1の全体の厚さを既存の規格内に抑えることができる。例えば両面貼り合わせ方式のDVDの場合、保護層14の膜厚は数十μm程度とする。基板13自体を薄くすることにより光ディスク1の厚さを抑制することは可能であるが、その場合は基板13の強度が低下するため、製造時に基板13が破損する可能性が高くなり、既存の光ディスクの製造ラインを変更する必要も生じる。上記構成とすれば、製造時の安全性が高くなり、コスト増加を最小限に抑えた薄型の光ディスク1を実現できる。
【0012】
以上の工程では、先にICチップモジュール20を基板13の嵌入孔15に嵌入しておき、その上にアンテナコイル12を形成することにより、ICチップモジュール20の各接続端子21とアンテナコイル12とを接続することができる。従って、これらを接続するための接着工程が不要となり製造効率が向上する。また、ACF(Anisotropic Conductive Film、異方導電性フィルム)を用いた場合の加熱・加圧工程も不要なので、加熱・加圧に弱い樹脂を基板13の材料として用いた場合でも、基板13に負担をかけることなく、品質劣化のない光ディスクを製造することができる。
また、アンテナコイル12の離間部は、ICチップモジュール20の上にアンテナコイル12を形成した後、絶縁部22上のアンテナコイル12を除去することにより形成されるので、アンテナコイル12の形成時には、その形状を離間部のない円状とすればよく、ディスク回転方向の位置合わせを行う必要がなくなり、製造効率を高めることができる。
従って、ICチップが搭載され且つアンテナコイルを有する薄型で高品質な光ディスクを効率よく製造することが可能となり、高付加価値の光ディスクを低コストで実現することができる。
【0013】
本発明のアンテナには、印刷又は塗布が可能な導電性高分子材料を用いる。導電性高分子材料は通常の場合、導電性フィラーとバインダー樹脂を含む。このような材料の典型例としては導電性インクが挙げられる。
導電性高分子材料の体積抵抗は1Ω・cm程度以下が好ましい。特に、導電性高分子材料として、体積抵抗値が0.1Ω・cm以下のものが好ましい。
樹脂は、ドーピングにより容易に体積抵抗1Ω・cm以下或いは0.1Ω・cm以下にすることができる。また、ドーピングした樹脂は金属ほどの強い光吸収を持たないため、膜厚が数十μm程度の薄い膜にすれば殆どの場合、透明性を有するようになる。従って、体積抵抗1Ω・cm以下のドーピングした樹脂を100μm以下の膜厚にすることにより、透明性のある導電性アンテナを形成できる。これにより、例えばブルーレイディスクのカバー層にアンテナを形成することができる。
更に、可視部に吸収がない導電性高分子材料を薄膜の一部に用いると、透明性を損なうことなく膜厚を厚くすることができ、アンテナとしての機能が向上するので好ましい。この場合、可視部に吸収がない導電性高分子材料自体で薄膜を形成してもよいが、該導電性高分子材料を他の導電性高分子材料中にフィラーとして混入してもよい。
【0014】
導電性高分子材料に用いる樹脂の例としては、置換あるいは非置換の、ポリフェニレンビニレン、ポリチェニレンビニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリキノリン、ポリキノリン、ポリアニリン等が挙げられる。また、可視部に吸収がない樹脂の例としては、ポリイソテオナフテン等が挙げられる。
樹脂の体積抵抗を小さくするために用いられるドーパントとしては、AsF、HSO、K、Na、ClO4−、PF6−、BF4−等が挙げられる。
樹脂の合成方法としては、広く知られている電解重合法や、化学重合法、酸化剤被膜を設けてモノマーガス雰囲気中で重合する方法等が挙げられる。
樹脂はドーピングによって体積抵抗が小さくなるので、成膜状態が脱ドープ状態の場合はドーパントの存在下で処理する必要がある。処理方法としては、例えば電極上に成膜した場合には、電解液中の電極電位によりドープ、脱ドープ状態をコントロールすることができる。
【0015】
また、導電性高分子材料からなる薄膜上に保護膜を設けることにより、保存性、安定性を向上させることができる。保護層の材料は目的に応じて適宜選択すればよい。
例えば、Au、Ag、Cu、Pd、Pt、Al、Cr、Rhなどを用いた透光性金属薄膜を利用する場合、金属膜のみで透光性と導電性を両方発揮させるには、30〜150Å程度の膜厚にしなければならないため、金属膜の強度が他の透明性導電膜に比べて劣るという問題がある。しかし、導電性高分子膜や酸化物半導体透明導電膜を保護膜、強化膜として複合的に用いることにより、透過性を維持しつつ膜強度を高め、導電性高分子膜以上の導電性を得ることが可能になる。
酸化物半導体透明導電膜の材料の例としては、BaO−TiO、TiO、BaO、SnO、In、CdO、CdSnO、PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O〕、SiO、SiOなどが挙げられる。
【0016】
樹脂の好ましい具体例としては、次のようなものが挙げられる。
(1)ポリ〔2−メトキシ−5−(2′−エチルヘキシロキシ)〕−p−フェニレンビニレン・・・(MEH−PPV)
【化1】

(2)ポリ〔2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)〕−p−フェニレンビニレン・・・(MDMO−PPV)
【化2】

(3)ポリ(3−オクチルチオペン)・・・(P3OT)
【化3】

(4)ポリ(3−ヘキシルチオペン)・・・(P3HT)
【化4】

【0017】
導電性インクとしては、金属、カーボン、金属酸化物等の適当な導電性フィラーと樹脂バインダーと有機溶剤を含むものを使用する。より細いアンテナで高い導電性を得るためには金属系の導電性フィラーを用いることが好ましく、中でも銀を含む導電性インクを用いることが最も好ましい。これは、体積固有抵抗が低いこと、粒子同士の接触抵抗が低いこと、空気中での熱処理等による酸化劣化が起きにくいこと、粒子径を細かくすることにより粒子同士が融着し、より高い導電性の発現が可能であるという理由による。
導電性インクを用いてアンテナを印刷する方法としては、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の各種印刷法が適用可能である。中でも、本発明においては線幅40μm以下の細いアンテナ形成が必要であることから、凹版オフセット印刷、スクリーン印刷を適用することが好ましい。
また、感光性の導電性インクを用いることもでき、この場合は、上述の導電性インクのバインダーとして感光性樹脂を用いる。
また、アンテナの形成には、感光性の導電性インクを基板に塗布し、露光、現像すればよい。この方法によれば、上述した印刷法と比較して、膜厚の厚いパターンを形成することがより簡単となり、また、フォトプロセスを応用するため、アンテナのパターンエッジの直線性、精度の優れたものを得ることが可能となる。
【0018】
導電性インクを用いた印刷法によりアンテナコイル12を形成する場合には、アンテナコイル12の膜厚dが薄過ぎると導電性インク中の導電性物質が相互に接触する度合いが低下する。逆に、膜厚dが厚過ぎるとインクの硬化に長時間を要し、また既存のディスク厚を満たすことができなくなる。これらを勘案して適切な膜厚を選択するようにする。
例えばDVDの場合、基板13の厚さは約0.6mmであり、基板13の下面(貼り合わせ面)に形成される記録層に対する製造時の損傷防止の観点などから、ICチップモジュール20の全高は500μm程度が限界となる。ICチップモジュール20に搭載されているICチップ23の厚さを300μmと考えると、アンテナコイル12の膜厚dの最大値は200μm程度となる。また、膜厚dの最小値は、アンテナコイル12に用いられる導電性材料の性能などに依存するが、導電性インクを用いた場合には20μm程度が限界となる。
【0019】
また、本発明においては、アンテナを長くすることなく長波長の電波にも対応できるように、導電層高分子材料層の少なくとも一方の面に高誘電率物質層を設けることが好ましい。
高誘電率物質としては、BaO−TiO、TiO、BaO、SnO、In、CdO、CdSnO、PLZT、SiO、SiOなどが挙げられる。これらのセラミックスは、比誘電率が4〜200であり、基板を構成するガラスやフィルムに比較して高い比誘電率を有する。
これらの物質は、単独で膜としても、適当な透明バインダー樹脂に分散して膜としてもよく、金属箔の接着剤、金属細線の固定層等に分散して用いることも可能である。
【0020】
上記実施の形態では、光ディスク1上に1ターンの円状アンテナコイル12を形成した場合について説明したが、スパイラル状アンテナコイルを形成した場合にも、本発明を適用することが可能である。即ち、スパイラル状アンテナコイルの途中の一部が、ICチップモジュールの各接続端子及び絶縁部の上を通るようにする。例えば、スパイラル状アンテナコイルに対して上記実施の形態の手法を用いた場合には、絶縁部上に形成されたアンテナコイルを除去するが、この除去範囲は、絶縁部上のアンテナコイルが断線され、かつディスク半径方向に隣接するアンテナコイルの断線が起こらないように設定すればよい。
但し、隣接するアンテナコイルの間隔や太さによっては、アンテナコイルの形成時において、ICチップモジュールがディスク回転方向のある程度の角度範囲に収まるように位置合わせを行う方がよい場合もあり得る。しかし、この場合にも、高い精度で位置合わせを行う必要はないので、製造効率を向上する効果は得られる。
【0021】
また、本発明はDVDに限らず、CD(コンパクトディスク)やBDなどの様々な光ディスクに適用することが可能である。BDに用いる場合は、信号面に窪みを作り、同様にICを装填し、カバー層に透明導電性アンテナを形成するか又は内周部に非透明導電性アンテナを形成する。
また、上記実施の形態では、アンテナコイル12を信号記録面の裏面全体に設けたが、例えば信号記録領域と中心孔との間の領域にアンテナコイル12を設けた場合にも、本発明を適用することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、導電性高分子材料を用いて印刷法又は塗布法でアンテナを形成することにより、真空系などの複雑な工程を含まないため、ICチップが搭載された薄型で高品質の光ディスクを低コストで提供できる。また、光ディスク全体の厚さの増加を抑制でき、更に、ICチップモジュール上にアンテナコイルを形成した後、アンテナコイルの不要部分を除去する手段を採用すれば、アンテナコイルの形成時にディスク回転方向の位置合わせを行う必要がなくなる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0024】
実施例1
従来の成型法により得られた板厚1.1mmのBD用基板の、溝形成面の情報記録領域よりも内周部に、図3に示すような陥入孔を設け、この陥入孔に、図1、図3に示すようにICチップモジュール20を陥入した。
次いで、ドーパントとしてHSOを含むMEH−PPV樹脂を用いて、スクリーン印刷法により、膜厚40μm、幅40μmで円形のアンテナコイル12を図1のように印刷した。
次いで、ICチップモジュールの絶縁部22上に被膜を設けておきアンテナコイル12を形成した後、被膜を剥離して除去した。
更に、基板の情報記録領域上にAgAl合金からなる膜厚70μmの記録層をスパッタリング法で成膜し、光ディスクを得た。
上記光ディスクに対し、2cmの距離から信号の送受信を行ったところ、良好に信号を検出することができた。
【0025】
実施例2
MEH−PPV樹脂をMDMO−PPV樹脂に変えた点以外は、実施例1と同様にして光ディスクを作成し、信号の送受信を行ったところ、良好に信号を検出することができた。
【0026】
実施例3
MEH−PPV樹脂をP3OT樹脂に変えた点以外は、実施例1と同様にして光ディスクを作成し、信号の送受信を行ったところ、良好に信号を検出することができた。
【0027】
実施例4
MEH−PPV樹脂をP3HT樹脂に変えた点以外は、実施例1と同様にして光ディスクを作成し、信号の送受信を行ったところ、良好に信号を検出することができた。
【0028】
実施例5
MEH−PPV樹脂をPFDTBT樹脂に変えた点以外は、実施例1と同様にして光ディスクを作成し、信号の送受信を行ったところ、良好に信号を検出することができた。
【0029】
実施例6
MEH−PPV樹脂をF8BT樹脂に変えた点以外は、実施例1と同様にして光ディスクを作成し、信号の送受信を行ったところ、良好に信号を検出することができた。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態の一例に係る光ディスクの構成を示す図である。
【図2】ICチップモジュールを拡大して示した図である。
【図3】図1の光ディスクのX−X断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1……光ディスク
11……中心孔
12……アンテナコイル
13……基板
14……保護層
15……嵌入孔
20……ICチップモジュール
21……接続端子
22……絶縁部
23……ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも記録層を有し、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクであって、該アンテナが導電性高分子材料を用いて形成されていることを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
アンテナが印刷法又は塗布法で形成されていることを特徴とする請求項1記載の光ディスク。
【請求項3】
アンテナが、光ディスクの中心孔の周りに円状又はスパイラル状に設けられたアンテナコイルであることを特徴とする請求項1又は2記載の光ディスク。
【請求項4】
更にカバー層を有し、該カバー層にICチップとアンテナを有し、青色波長のレーザ光によりカバー層側から記録再生が可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光ディスク。
【請求項5】
導電性高分子材料が透明導電性高分子材料であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光ディスク。
【請求項6】
導電性高分子材料の体積抵抗が1Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光ディスク。
【請求項7】
導電性高分子材料が導電性インクを含むことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光ディスク。
【請求項8】
アンテナを形成する導電性高分子材料層の少なくとも一方の面に高誘電率物質層を有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光ディスク。
【請求項9】
基板上に少なくとも記録層を有し、非接触で外部との情報の受け渡しが可能なICチップが搭載され且つアンテナを有する光ディスクの製造に際し、該アンテナを導電性高分子材料を用いて印刷法又は塗布法で形成することを特徴とする光ディスクの製造方法。
【請求項10】
アンテナとして、光ディスクの中心孔の周りに円状又はスパイラル状のアンテナコイルを設けることを特徴とする請求項9記載の光ディスクの製造方法。
【請求項11】
基板の表面に嵌入孔を形成し、この嵌入孔にICチップモジュールを嵌め込み、次いでアンテナコイルを形成した後、ICチップモジュールの絶縁部上のアンテナコイルを除去することを特徴とする請求項10記載の光ディスクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−226362(P2008−226362A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63970(P2007−63970)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】