説明

光ディスクの信号評価装置及び信号評価方法

【課題】 光ディスクに記録されている評価対象となる信号を効率的に抽出して再生信号の評価に必要な時間を短縮する。
【解決手段】 評価対象パルス特定回路54は、再生信号を2値化信号生成回路52及び遅延回路53を介して入力し、評価対象となるパルス幅ごとに検出パルスを出力する。ディジタル再生信号生成回路60は、再生信号を所定のレートでサンプリングしてディジタル再生信号に変換して、評価対象パルス特定回路54に供給される2値化信号よりも所定量だけ遅延させてスイッチ回路61〜64に供給する。スイッチ回路61〜64は、検出パルスに応答して、ディジタル再生信号を所定時間にわたって振幅計算回路65〜68に供給する。振幅計算回路64〜68は、供給されたディジタル再生信号を記憶し、再生信号の特徴値を計算してコントローラ70に再生信号の評価のために供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD,DVDなどの光ディスクに記録された複数種類のパルス幅を有する一連のパルスからなる信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置及び信号評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなるディジタル信号を記録したCD,DVDなどの光ディスク、光ディスクに記録された同ディジタル信号をアナログ再生するための光ピックアップなどの再生装置、光ディスクへのデータの記録条件、又は光ディスクに記録されたデータの再生条件を評価するために、光ディスクに記録されているディジタル信号のうちで、評価対象となるパルス幅の再生信号を評価することはよく知られている。
【0003】
この種の再生信号の評価項目には、ジッタ、変調振幅、アシンメトリなどがある。ジッタは、再生信号を2値化した際のパルス幅のばらつきで評価される。変調振幅は、例えば、パルス幅が最長である信号の振幅と、パルス幅が最短である信号の振幅との比で評価される。アシンメトリは、例えば、パルス幅が最長である信号の中心レベルと、パルス幅が最短である信号の中心レベルとのずれで評価される。このような再生信号の評価においては、光ディスクに順次記録されているディジタル信号の中から評価対象となるパルス幅の再生信号を正確に抽出して評価する必要がある。
【0004】
例えば、下記特許文献1に示される光ディスクの信号評価装置においては、検査対象である光ディスクに記録されているディジタル信号のうち、評価対象であるパルス幅の信号、具体的には、最長のパルス幅の信号を抽出するとともに、同抽出した信号のジッタを評価して光ディスクの検査を行っている。この場合、光ディスクの1回転ごとに1つの評価対象であるパルス幅の信号の抽出及び評価が行われる。これは、ある評価対象であるパルス幅の信号の抽出及び評価を実行している間に、他の評価対象であるパルス幅の信号が発生して同他の評価対象であるパルス幅の信号の評価ができなないことを防止するため、評価対象であるパルス幅の信号の抽出及び評価に光ディスクの1回転分の時間を確保したものである。
【特許文献1】特開平11−328865号公報
【0005】
しかしながら、上記した光ディスクの信号評価装置においては、光ディスクの1つのトラック上に評価対象となるパルス幅の信号が複数存在する場合でも、同評価対象となる信号の数だけ光ディスクを回転させて同信号の抽出及び評価をしなければならず、同信号の抽出及び評価に評価対象となる信号の数に応じた光ディスクの回転時間が必要となる。このため、1枚の光ディスクの検査に多くの時間を要するという問題がある。
【0006】
また、光ディスクの反射率は一定でないために、比較的長い時間に渡って計測した再生信号は、光ディスクに記録されたデータ(ピット又はマーク)による変化に加えて、その中心値が時間経過に従ってゆっくりと変動する。図12(A)は、この中心値のゆっくりとした時変動を示すために、比較的長い時間にわたる再生信号を誇張して示している。そして、このような中心値の変動する再生信号をそのまま取り込んで評価に用いると、この中心値の変動のために、再生信号を高精度で評価することができない。この中心値の変動分を除去するためには、下記特許文献2に示すように、再生信号路にハイパスフィルタを挿入することが考えられる。再生信号をハイパスフィルタ処理することで、図12(B)に示すように、中心値の変動を除去できるが、このハイパスフィルタ処理した再生信号は、グランドレベルを中心に正負に変化する信号となるので、信号レベルを含めた再生信号の評価が不能になるという問題がある。
【特許文献2】特開昭63−4462号公報
【発明の開示】
【0007】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、光ディスクに記録されている評価対象となる信号を効率的に抽出して再生信号の評価に必要な時間を短縮することが可能な光ディスクの信号評価装置を提供することにある。また、中心値の変動分を除去したうえで、信号レベルをも含めて再生信号を評価可能とする光ディスクの信号評価装置を提供することにもある。なお、後述の括弧内の記載は、本発明の実施形態の要素に対応する。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップ(光ピックアップ20)から出力された電気信号に基づいて生成された再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置において、前記生成された再生信号をハイレベルとローレベルとからなる2値化信号に変換して出力する2値化信号生成手段(2値化信号生成回路52)と、前記変換された2値化信号の各パルスの信号長に基づいて一連のパルス列の中から評価対象となるパルス幅の信号をそれぞれ検出して、評価対象となるパルス幅ごとに検出信号を出力する評価対象パルス検出手段(評価対象パルス特定回路54)と、前記再生信号を所定のレートでサンプリングしてディジタル再生信号に変換し、前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させて出力するディジタル再生信号生成手段(ディジタル再生信号生成回路60)と、前記評価対象パルス検出手段からの検出信号に応答して、前記ディジタル再生信号生成手段から出力された所定時間にわたるディジタル再生信号を前記検出信号の属するパルス幅ごとに記憶するとともに、前記記憶したディジタル再生信号に基づいて前記再生信号の特徴値を評価対象となるパルス幅ごとに計算する信号特徴値計算手段(スイッチ回路61〜64及び振幅計算回路65〜68)と、前記計算された再生信号の特徴値を用いて、前記再生信号を評価する評価手段(コントローラ70)とを備えたことにある。この場合、前記信号特徴値計算手段は、例えば、評価対象のパルス幅に属するディジタル再生信号のボトム値又はピーク値を前記再生信号の特徴値として計算する。
【0009】
前記本発明においては、2値化信号生成手段、評価対象パルス検出手段、ディジタル再生信号生成手段及び信号特徴値計算手段により、信号特徴値計算手段には、評価対象となるパルス幅ごとに、必要な量のディジタル再生信号が記憶される。そして、信号特徴値計算手段は、前記記憶したディジタル再生信号を用いてディジタル再生信号の信号特徴値を評価対象のパルス幅ごとに計算し、評価手段はこの評価対象のパルス幅ごとの信号特徴値を用いて再生信号を評価する。このように、評価対象のパルス幅のディジタル再生信号の取り込みは、信号特徴値の計算とは独立して行われる。その結果、光ディスクの1つのトラック上に評価対象となるパルス幅の信号が複数存在する場合には、光ディスクの1回転で複数の評価対象となるパルス幅のディジタル再生信号が信号特徴値計算手段に取り込まれ、その後に、前記取り込まれたディジタル再生信号が信号特徴値の計算に利用され得るので、再生信号の評価に対するトータル時間を大幅に減縮できる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記信号特徴値計算手段は、前記評価対象パルス検出手段からの検出信号に応答して、評価対象となるパルス幅のうちで最も長いパルス幅に相当する時間にわたって、前記ディジタル再生信号生成手段から出力されたディジタル再生信号を記憶する。これによれば、評価対象となる全てのパルス幅のディジタル再生信号を連続的に信号特徴値計算手段に取り込むことができるので、パルス幅ごとにディジタル再生信号の取り込み処理を行う必要がなくなり、前記再生信号の評価に対するトータル時間の減縮に有利となる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させるために、前記ディジタル再生信号生成手段内にて前記ディジタル再生信号を遅延する第1遅延手段(遅延回路104)と、前記2値化信号を遅延する第2遅延手段(遅延回路53)とのうちの少なくともいずれか一方の遅延手段を設けたことにある。この場合、ディジタル再生信号と遅延された2値化信号の評価対象となる両対応パルスに関し、ディジタル再生信号の最長の対応パルスが2値化信号の最長の対応パルスの終了後に出現するように前記所定量を設定し、前記少なくとも一方の遅延手段がディジタル再生信号を同所定量だけ2値化信号に対して遅らせるようにすればよい。好ましくは、遅延された2値化信号の最長の対応パルスの終了直後に、ディジタル再生信号の最長の対応パルスが出現するようにするとよい。これによれば、前記少なくともいずれか一方の遅延手段により、ディジタル再生信号が2値化信号よりも前記所定量だけ遅延されるので、評価対象パルス検出手段による評価対象のパルス幅である信号の検出後、適当なタイミングで、信号特徴値計算手段へのディジタル再生信号の取り込みを開始できるようになる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ディジタル再生信号生成手段からのディジタル再生信号と、前記評価対象パルス検出手段からの検出信号とに基づいて、前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させるように、前記少なくともいずれか一方の遅延手段の遅延時間を設定する遅延時間設定手段(図5の第2遅延時間調整プログラム)を設けたことにある。これによれば、光ディスクの信号評価装置の状態にばらつきがあったり、同装置の状態が時間的に変化したりした場合でも、信号特徴値計算手段へのディジタル再生信号の取り込みタイミングが自動的に適切なタイミングに設定されるようになる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記ディジタル再生信号生成手段を、前記再生信号に含まれる信号周波数成分を除去して光ディスク上におけるレーザ光の照射位置に依存した時変動を表す信号を出力するローパスフィルタ(ローパスフィルタ105)と、前記再生信号及び前記ローパスフィルタの出力信号をそれぞれ所定のサンプリングレートでサンプリングしてディジタル信号にA/D変換するA/D変換器(A/D変換器102,106)と、前記再生信号をA/D変換したディジタル信号を所定量遅延して、前記ローパスフィルタの出力信号の遅延を相殺する遅延回路(遅延回路104)と、前記遅延回路の出力ディジタル信号から前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換したディジタル信号を減算して、前記遅延回路の出力ディジタル信号から前記レーザ光の照射位置に依存した時変動成分を除去する減算器(減算器108)と、前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換したディジタル信号を積分して、前記レーザ光の照射位置に依存した時変動成分を除去する積分器(積分回路108)と、前記減算器の出力ディジタル信号と前記積分器の出力ディジタル信号を合算して、前記再生信号に含まれる直流成分を加味したディジタル再生信号を生成する加算器(加算器110)とで構成したことにある。
【0014】
前記本発明の他の特徴においては、ローパスフィルタ、A/D変換器、遅延回路及び減算器により、レーザ光の照射位置に依存した時変動成分を含むディジタル再生信号から前記時変動成分が除去されて、一旦、基準レベルを中心に変動するディジタル再生信号が抽出される。そして、ローパスフィルタ、A/D変換器及び積分器により、時変動成分を除去した再生信号の直流成分が抽出される。そして、加算器により、前記基準レベルを中心に変動するディジタル再生信号と前記時変動成分を除去した再生信号の直流成分を合算したディジタル再生信号が信号特徴値計算手段に供給されることになる。これにより、光ディスクの位置の変化に起因した反射率の相違による時変動成分を除去したうえで、再生信号に含まれる直流成分(信号レベル)も含めて、再生信号が評価されるようになる。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換したディジタル信号と、前記遅延回路の出力ディジタル信号とに基づいて、前記遅延回路の遅延時間を設定する遅延時間設定手段(図4の第1遅延時間調整プログラム)を設けたことにある。これによれば、光ディスクの信号評価装置の状態にばらつきがあったり、同装置の状態が時間的に変化したりした場合でも、前記遅延回路の出力であってレーザ光の照射位置に依存した時変動成分を含むディジタル再生信号と、前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換した前記時変動成分を表すディジタル信号との遅延時間差を自動的になくすことができ、前記時変動成分を含むディジタル再生信号から時変動成分を的確に除去できるようになる。
【0016】
また、本発明は装置の発明として実施できるばかりでなく、方法の発明としても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る再生信号評価装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、CD,DVDなどの光ディスクDKを検査する光ディスク検査装置の全体概略図である。この光ディスク検査装置は、光ディスクDKを回転駆動する回転駆動装置10と、光ディスクDKにレーザ光を照射するとともに同照射による光ディスクDKからの反射光を受光する光ピックアップ20とを備えている。
【0018】
回転駆動装置10は、スピンドルモータ11及びフィードモータ12を備えている。スピンドルモータ11は、その回転により回転軸11bを回転させてターンテーブル13を回転させる。ターンテーブル13には、その上面に光ディスクDKが着脱可能に組み付けられるようになっている。また、スピンドルモータ11内には、エンコーダ11aが組み込まれており、エンコーダ11aは、スピンドルモータ11の回転を検出して同回転を表す回転検出信号をコントローラ70に出力する。この回転検出信号は、ターンテーブル13(光ディスクDK)の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号INDEXと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰返すパルス列信号からなるとともに互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φA及びB相信号φBとからなる。これらの回転検出信号のうち、インデックス信号INDEXは、コントローラ70にてスピンドルモータ11、すなわち光ディスクDKの回転数(例えば1回転)の検出に用いられ、パルス列信号φA,φBはスピンドルモータ制御回路14にてスピンドルモータ11すなわち光ディスクDKの回転速度の検出に用いられる。
【0019】
スピンドルモータ11の回転は、スピンドルモータ制御回路14によって制御される。スピンドルモータ制御回路14は、後述するウォブル信号取り出し回路49からウォブル信号が出力されるときは同ウォブル信号を用いて、光ディスクDK上の光スポットが常に線速度一定で同光ディスクDKに対して移動するように、スピンドルモータ11の回転速度を制御する。また、光ディスクDK上に光スポットが形成されていないため、ウォブル信号取り出し回路49からウォブル信号が出力されないときは、エンコーダ11aが出力するパルス列信号φA,φBを用いて、光ディスクDKが回転速度一定で回転するようにスピンドルモータ11の回転速度を制御する。フィードモータ12は、その回転によりスクリューロッド15及びナット(図示せず)からなるねじ送り機構を介してスピンドルモータ11、同スピンドルモータ11を固定支持する支持部材16及びターンテーブル13を光ディスクDKの径方向に変位させる。
【0020】
フィードモータ12内にも、前記エンコーダ11aと同様なエンコーダ12aが組み込まれている。このエンコーダ12aは、フィードモータ12の回転を検出して同回転を表す回転検出信号をフィードモータ制御回路17及びコントローラ70に出力する。フィードモータ制御回路17は、コントローラ70による指示により、エンコーダ12aから出力される回転検出信号に加えて、後述するトラッキングサーボ信号の直流成分を用いてフィードモータ12の回転を制御して、スピンドルモータ11、ターンテーブル13及び支持部材16の光ディスクDKの径方向への変位を制御する。また、フィードモータ制御回路17は、コントローラ70から半径値が入力されると、エンコーダ12aから出力される回転検出信号を用いて計算した半径値が、入力された半径値になるまでフィードモータ12を回転させる。
【0021】
光ピックアップ20は、レーザ光源21、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24、対物レンズ25、凸レンズ26、シリンドリカルレンズ27及びフォトディテクタ28を備えている。この光ピックアップ20においては、レーザ光源21からのレーザ光を、コリメートレンズ22、偏光ビームスプリッタ23、1/4波長板24及び対物レンズ25を介して、光ディスクDKに集光させ、光ディスクDK上に光スポットを形成する。また、この光ディスクDKに形成された光スポットからの反射光は、対物レンズ25、1/4波長板24、偏光ビームスプリッタ23、凸レンズ26及びシリンドリカルレンズ27を介して、フォトディテクタ28に導かれて受光される。フォトディテクタ28は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、各受光素子は受光量に比例した電気信号A,B,C,Dをそれぞれ検出信号として出力する。なお、検出信号A,B,C,Dは、左上から時計回りに配置された各受光素子の受光量を表している。
【0022】
また、この光ピックアップ20は、フォーカスアクチュエータ31及びトラッキングアクチュエータ32も備えている。フォーカスアクチュエータ31は、対物レンズ25をレーザ光の光軸方向(光ディスクDKの盤面と垂直方向)に駆動して光スポットを光軸方向に微動させる。トラッキングアクチュエータ32は、対物レンズ25を光ディスクDKの径方向に駆動して光スポットを光ディスクDKの径方向に微動させる。また、この光ピックアップ20のレーザ光源21には、レーザ光源21の作動を制御するため、レーザ駆動回路41が接続されている。
【0023】
フォトディテクタ28には、HF信号増幅回路42が接続されている。HF信号増幅回路42は、フォトディテクタ28から出力された検出信号A〜Dをそれぞれ増幅して、フォーカスエラー信号生成回路43、トラッキングエラー信号生成回路46及び再生信号生成回路51にそれぞれ出力する。
【0024】
フォーカスエラー信号生成回路43は、HF信号増幅回路42を介してフォトディテクタ28から出力される検出信号A〜Dを用いた演算(具体的には、非点収差法の場合は(A+C)−(B+D)の演算)により、フォーカスエラー信号を生成して、フォーカスサーボ回路44に出力する。フォーカスサーボ回路44は、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成し、同フォーカスサーボ信号を用いてドライブ回路45を介してフォーカスアクチュエータ31を駆動制御することにより、対物レンズ25を光軸方向に変位させてフォーカスサーボ制御する。これにより、レーザ光の焦点、すなわち光スポットが光ディスクDKの記録層に追従するように制御される。
【0025】
トラッキングエラー信号生成回路46は、HF信号増幅回路42を介してフォトディテクタ28から出力される検出信号A〜Dを用いた演算(具体的には、プッシュプル法の場合は(A+D)−(B+C)の演算)により、トラッキングエラー信号を生成して、トラッキングサーボ回路47に出力する。トラッキングサーボ回路47は、トラッキングエラー信号に基づいてトラッキングサーボ信号を生成し、同トラッキングサーボ信号を用いてドライブ回路48を介してトラッキングアクチュエータ32を駆動制御することにより、対物レンズ25を光ディスクDKの径方向に変位させてトラッキングサーボ制御する。これにより、光スポットが光ディスクDKのトラック中心を追従するように制御される。
【0026】
また、トラッキングエラー信号生成回路46にて生成されたトラッキングエラー信号は、バンドパスフィルタからなるウォブル信号取り出し回路49にも出力される。ウォブル信号取り出し回路49は、トラッキングエラー信号からウォブル信号を取り出してスピンドルモータ制御回路14に出力する。また、トラッキングサーボ回路47にて生成されたトラッキングサーボ信号は、フィードモータ制御回路17にも出力される。フィードモータ制御回路17においては、トラッキングサーボ信号から直流成分が抽出されて、同抽出された直流成分がフィードモータ12の制御に用いられる。
【0027】
再生信号生成回路51は、HF信号増幅回路42から出力される検出信号A〜Dに基づいて再生信号(フォトディテクタ28からの検出信号A〜Dの合算信号A+B+C+DからなるSUM信号)を生成して2値化信号生成回路52及びディジタル再生信号生成回路60に出力する。この再生信号生成回路51から出力される再生信号が本発明の再生信号に対応するもので、この再生信号は光ディスクDKに記録されている複数種類のパルス幅をもつ一連のパルスからなる信号を表すものである。2値化信号生成回路52は、波形等価回路及び2値化回路を含む。波形等価回路は、再生信号の振幅を信号長ごとに調整する。2値化回路は、再生信号の瞬時値が再生信号の中心付近に定められたスライスレベルより大きいか小さいかでハイレベルとローレベルの2値化信号を生成して出力する。これに代えて、2値化信号生成回路52を、PRML(Partial Response and Maximum Likelihood)回路で構成する。そして、PRML回路が、PR等化回路により再生信号からPR等化信号を生成し、ビタビ復号回路によりハイレベルとローレベルの2値化信号を生成して出力するようにしてもよい。
【0028】
このようにして生成された2値化信号は、CDであれば3T〜11T、DVDであれば3T〜14T、BD(Blu-ray Disc)であれば2T〜8Tの信号長を有し、ハイレベルとローレベルの複数種類のパルスを含むパルス列信号である。光ディスクDKはいかなる種類のものでもよいが、以下の説明では、光ディスクDKはBDであり、2値化信号の信号長は2T〜8Tであるものとする。
【0029】
2値化信号生成回路52から出力される2値化信号は、遅延回路53に供給される。遅延回路53は、後述する評価対象パルス特定回路54によって制御されるスイッチ回路61〜64による、ディジタル再生信号生成回路60から振幅計算回路65〜68へのディジタル再生信号の取り込みタイミングを調整するためのものである。遅延回路53は、後述するコントローラ70の第2時間調整プログラムの実行により制御されて、コントローラ70によって設定された時間だけ入力した2値化信号を遅延して評価対象パルス特定回路54に出力する。詳しくは後述するが、遅延回路53の出力がディジタル再生信号に対して図6の破線で示すタイミング関係になるように、遅延時間が設定される。評価対象パルス特定回路54は、基準クロック信号発生回路を内蔵しており、入力した2値化信号の各パルスのパルス幅(信号長)とパルスの正負の向きを計測して、同計測結果に基づいて評価対象パルスを検出し、検出した評価対象パルスごとに同パルスの終了直後に検出パルスを出力する。評価対象パルスの種類はいかなるパルスでもよいが、本実施形態においては、信号長を2T及び8Tとする正負の4種類のパルスである。
【0030】
具体的には、評価対象パルス特定回路54は、信号長2Tのパルスに関し、信号長が2T±ΔT1(ΔT1は、予め決められた微小値である)の範囲にある正及び負のパルスを検出する。そして、正のパルスであれば、同正のパルスのトレーリングエッジのタイミングでスイッチ回路61に検出パルス2T+を出力する。負のパルスであれば、同負のパルスのトレーリングエッジのタイミングでスイッチ回路62に検出パルス2T−を出力する。また、評価対象パルス特定回路54は、信号長8Tのパルスに関し、信号長が8T±ΔT2(ΔT2は予め決められた微小値である)の範囲にある正及び負のパルスを検出する。そして、正のパルスであれば、同正のパルスのトレーリングエッジのタイミングでスイッチ回路63に検出パルス8T+を出力する。負のパルスであれば、同負のパルスのトレーリングエッジのタイミングでスイッチ回路64に検出パルス8T−を出力する。図7は、これらの検出パルスを、再生信号及び2値化信号と共にタイムチャートにより示している。
【0031】
時間計測回路55は、基準クロック信号発生回路を内蔵し、コントローラ70による時間計測開始の指示に応答して時間計測を開始する。そして、評価対象パルス特定回路54から検出パルス8T+が出力されるごとに、前記計測開始からの経過時間をコントローラ70に供給する。
【0032】
ディジタル再生信号生成回路60は、再生信号生成回路51からの再生信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしてA/D変換し、かつ再生信号の中心値のゆっくりとした時変動を除去してスイッチ回路61〜64に出力する。ディジタル再生信号生成回路60は、図2に詳細に示されているように、ローパスフィルタ101,105をそれぞれ介装した2つの信号系列を有する。ローパスフィルタ101は、光ディスクDKに記録されている信号の周波数よりも高い周波数信号(すなわち、光ディスクDKに記録されている信号に含まれる高周波ノイズ)を除去して、A/D変換器102に出力する。このローパスフィルタ101のカットオフ周波数は、光ディスクDKに記録されている信号の周波数よりも高い周波数、例えば50MHzに設定されている。
【0033】
A/D変換器102は、クロック信号発生回路103からクロック信号が供給されると、このクロック信号を用いて、ローパスフィルタ101によってフィルタリングされた再生信号を所定の周期でサンプリングするとともに、A/D変換して遅延回路104に出力する。A/D変換器102のサンプリング周期は、例えば1/200MHzであり、このサンプリング周期は信号長1Tに相当する時間(1/66MHz)の約1/3に相当する。クロック信号発生回路103は、コントローラ70によりクロック信号の発生が制御される。遅延回路104は、ローパスフィルタ101を含む信号系列のディジタル再生信号の遅れと、ローパスフィルタ105を含む信号系列のディジタル再生信号の遅れとを合わせるために、すなわち両ローパスフィルタ101,105によるディジタル再生信号の遅延時間のずれをなくすために、A/D変換器102から出力されたディジタル再生信号を設定された時間だけ遅延するものである。具体的には、ローパスフィルタ105のカットオフ周波数は、ローパスフィルタ101のカットオフ周波数より低く、ローパスフィルタ105を含む信号系列のディジタル再生信号の遅れはローパスフィルタ101を含む信号系列のディジタル再生信号の遅れより大きくなるので、この遅れを解消する時間だけA/D変換器102からのディジタル再生信号を遅延する。この遅延回路104による遅延時間は、後述するコントローラ70の第1遅延時間調整プログラムにより設定される。詳しくは後述するが、図8は、遅延回路104及びA/D変換器106の各出力を示す波形図であり、遅延時間調整前の遅延回路104の出力波形を実線で表し、遅延時間調整後の遅延回路104の出力波形を破線で示している。
【0034】
ローパスフィルタ105は、光ディスクDKに記録されている信号を除去して、ゆっくり時変動する再生信号の中心値を取り出し、A/D変換器106に出力する。このゆっくり時変動する再生信号の中心値は、光ディスクDKのレーザ照射位置の反射率の違いに基づくものである。このローパスフィルタ105のカットオフ周波数は、光ディスクDKに記録されている信号の周波数よりも低い周波数、例えば5MHzに設定されている。図9(A)はローパスフィルタ101の出力波形を示し、図9(B)はローパスフィルタ105の出力波形を示している。A/D変換器106は、クロック信号発生回路107からクロック信号が供給されると、このクロック信号を用いて、ローパスフィルタ105によってフィルタリングされた再生信号を所定の周期でサンプリングするとともに、A/D変換する。A/D変換器106のサンプリング周期は、A/D変換器102のサンプリング周期と同程度でもよいが、信号に含まれる周波数成分が低いので、A/D変換器102のサンプリング周期よりも長くてよい。このサンプリング周期を、例えば1/10MHzまで長くしても問題ない。クロック信号発生回路107は、コントローラ70によりクロック信号の発生が制御される。
【0035】
遅延回路104及びA/D変換器106の両出力は、それぞれコントローラ70に供給されるとともに、減算器108に供給される。減算器108は、遅延回路104からのディジタル信号からA/D変換器106からのディジタル信号を減算して、加算器110に出力する。積分回路109は、A/D変換器106からのディジタル信号を積分して、前記時変動する再生信号の中心値を平均化して、再生信号の直流成分を導出する。加算器110は、減算器110からのディジタル信号に積分回路109からのディジタル信号を加算して、スイッチ回路61〜64に出力する。図9(C)は減算器108の出力値を示し、図9(D)は積分回路109の出力値を示し、図9(E)は加算器110の出力値を示している。その結果、再生信号の中心値のゆっくりした時変動成分を除外し、かつ再生信号に含まれる直流成分(再生信号の平均的な信号レベル)を加味したディジタル信号が、ディジタル再生信号としてスイッチ回路61〜64に供給されることになる。
【0036】
スイッチ回路61〜64は、それぞれ評価対象パルス特定回路54から検出パルスを入力すると、最長信号長に相当する時間だけ、ディジタル再生信号生成回路60からのディジタル再生信号を振幅計算回路65〜68に出力する。本実施形態においては、前記最長信号長に相当する時間は信号長8Tに対応する時間であり、例えば8/66MHzの時間である。したがって、前記ディジタル再生信号生成回路60内のA/D変換器102のサンプリング周期1/200MHzを考慮すると、評価対象パルス特定回路54からの検出パルスの出力後、約24個のディジタル再生信号のサンプリング値が振幅計算回路65〜68に供給されることになる。図10(A)は、信号長が8T+の場合において、振幅計算回路67に供給されるディジタル再生信号の24個のサンプリングを示している。図10(B)は、信号長が2T+の場合において、振幅計算回路65に供給されるディジタル再生信号の24個のサンプリングを示している。
【0037】
振幅計算回路65〜68は、図3に詳細に示すように、コントローラ70により制御されて、ディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路61〜64を介して供給される所定数(本実施形態では24個)のサンプリング値を1組として、複数組のサンプリングデータ群を一時的にメモリ65a〜68a内にそれぞれ一時記憶する。振幅計算回路65は、“2T+”のディジタル再生信号の最大値(ピーク値)を計算するもので、スイッチ回路61からの複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・をメモリ65aに記憶する。次に、振幅計算回路65は、前記複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・のうち、各組ごとに最後に記憶した6個のサンプリングデータ群X191〜X241,X192〜X242・・中の最大値Xmax1,Xmax2・・を抽出してメモリ65bにそれぞれ一時記憶する。最後に記憶した6個のサンプリングデータ群だけを用いるのは、次の振幅計算回路66の場合も同様であるが、各組の24個のサンプリングデータのうちで信号長2Tに関係したサンプリングデータは最後に記憶した6個だけであるからである。そして、振幅計算回路65は、前記メモリ65bに一時記憶した最大値Xmax1,Xmax2・・の平均値を計算して、同平均値を“2T+”のディジタル再生信号の最大値(ピーク値)を表すデータとしてコントローラ70に供給する。
【0038】
振幅計算回路66は、“2T−”のディジタル再生信号の最小値(ボトム値)を計算するもので、スイッチ回路62からの複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・をメモリ66aに記憶する。次に、振幅計算回路66は、前記複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・のうち、各組ごとに最後に記憶した6個のサンプリングデータ群X191〜X241,X192〜X242・・中の最小値Xmin1,Xmin2・・を抽出してメモリ66bにそれぞれ一時記憶する。そして、振幅計算回路66は、前記メモリ66bに一時記憶した最小値Xmin1,Xmin2・・の平均値を計算して、同平均値を“2T−”のディジタル再生信号の最小値(ボトム値)を表すデータとしてコントローラ70に供給する。
【0039】
振幅計算回路67は、“8T+”のディジタル再生信号の最大値(ピーク値)を計算するもので、スイッチ回路63からの複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・をメモリ67aに記憶する。次に、振幅計算回路67は、前記複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・の中から各組ごとに最大値Xmax1,Xmax2・・を抽出してメモリ67bにそれぞれ一時記憶する。各組の24個の全てのサンプリングデータを用いるのは、次の振幅計算回路68の場合も同様であるが、各組の24個のサンプリングデータの全てが信号長8Tに関係したサンプリングデータであるからである。そして、振幅計算回路67は、前記メモリ67bに一時記憶した最大値Xmax1,Xmax2・・の平均値を計算して、同平均値を“8T+”のディジタル再生信号の最大値(ピーク値)を表すデータとしてコントローラ70に供給する。
【0040】
振幅計算回路68は、“8T−”のディジタル再生信号の最小値(ボトム値)を計算するもので、スイッチ回路64からの複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・をメモリ68aに記憶する。次に、振幅計算回路68は、前記複数組のサンプリングデータ群X11〜X241,X12〜X242・・の中から各組ごとに最小値Xmin1,Xmin2・・を抽出してメモリ68bにそれぞれ一時記憶する。そして、振幅計算回路68は、前記メモリ68bに一時記憶した最小値Xmin1,Xmin2・・の平均値を計算して、同平均値を“8T−”のディジタル再生信号の最小値(ボトム値)を表すデータとしてコントローラ70に供給する。
【0041】
なお、前記では、振幅計算回路65〜68は、最大値Xmax1,Xmax2・・又は最小値Xmin1,Xmin2・・の平均値を、コントローラ70に供給する最大値(ピーク値)又は最小値(ボトム値)を表すデータとした。しかし、これに代えて、対象となる複数組のサンプリングデータ群から最小2乗法によってそれぞれ複数の波形曲線を求め、複数の波形曲線における最大値又は最小値の平均値をコントローラ70に供給する最大値(ピーク値)又は最小値(ボトム値)を表すデータとしてもよい。
【0042】
コントローラ70は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置71からの指示に従って図4,5の第1及び第2遅延時間調整プログラムを実行することにより遅延回路53,104の遅延時間を設定するとともに、図示しないプログラムの実行により光ディスクDKの検査を行う。そして、コントローラ70は、光ディスクDKの検査の実行過程及び実行結果を、CRT(又は液晶ディスプレイ)、プリンタなどからなる出力装置72に適宜表示させる。また、このコントローラ70には、スピンドルモータ制御回路14、フィードモータ制御回路17、レーザ駆動回路41、遅延回路53、時間計測回路55、ディジタル再生信号生成回路60及び振幅計算回路65〜68が、それぞれの作動制御のために接続されている。
【0043】
上記のように構成した実施形態の作動について説明する。作業者は、まずディジタル再生信号生成回路60内の遅延回路104による遅延時間をコントローラ70に設定させ、次に遅延回路53による遅延時間をコントローラ70に設定させる。これらの遅延時間の設定前に、遅延回路104,53の遅延時間を適当な予想値に初期設定しておいてもよいし、「0」に初期設定しておいてもよい。また、これらの遅延時間の設定のためには、図11(A)に示す特殊な光ディスクDKを利用する。この光ディスクDKにおいては、第1の所定の半径位置(例えば、最外周に近い部分)にて所定幅にわたり、半面の反射率が高く、他の半面の反射率が低くなっている。また、前記第1の所定の半径位置とは異なる第2の所定の半径位置にて所定幅にわたり、検査に使用される信号のうちの1つの特定信号(例えば、信号長が最長である8T+の信号)が、充分な間隔をおいて(例えば、光ディスクDKの1周ごとに1つ)記録されている。これ以外の信号を記録しないでおくことにより、後述するデータ処理が簡単かつ短時間で行われる。なお、前記第1及び第2の所定の半径位置はいずれの半径位置でもよく、特に第1の所定の半径位置は、前記最外周近傍に限られることなく、図11(B)に示すように最内周近傍位置でもよい。
【0044】
遅延回路104の遅延時間の設定においては、作業者は、図示しない電源スイッチの投入により検査装置を動作させ、前記のような光ディスクDKをターンテーブル13上にセットする。次に作業者は、入力装置71を操作して光ディスクDKの検査をコントローラ70に指示する。この指示に応答して、コントローラ70は、図示しないプログラムを実行することにより、スピンドルモータ制御回路14を作動させて光ディスクDKをコントローラ70に設定されている回転速度(本実施形態では、信号長1Tに相当する時間が1/66MHzになる回転速度)で回転させる。次に、コントローラ70は、レーザ駆動回路41の作動を開始させてレーザ光源21からレーザ光を光ディスクDKに向けて出射させる。
【0045】
レーザ光源21から出射されたレーザ光は、光ディスクDKにて反射されてフォトディテクタ28で受光される。フォトディテクタ28は、受光量に応じた検出信号A〜DをHF信号増幅回路42を介してフォーカスエラー信号生成回路43、トラッキングエラー信号生成回路46及び再生信号生成回路51にそれぞれ出力する。これらのうちのフォーカスエラー信号生成回路43に出力された検出信号A〜Dは、フォーカスエラー信号生成回路43、フォーカスサーボ回路44及びドライブ回路45による対物レンズ25のフォーカスサーボ制御に用いられる。また、トラッキングエラー信号生成回路46に出力された検出信号A〜Dは、トラッキングエラー信号生成回路46、トラッキングサーボ回路47及びドライブ回路48による対物レンズ25のトラッキングサーボ制御に用いられる。なお、トラッキングサーボ回路47から出力されたトラッキングサーボ信号は、フィードモータ制御回路17に供給され、光ディスクDKの径方向位置の制御に用いられる。
【0046】
そして、作業者は、入力装置71を操作することにより、図4の第1遅延時間調整プログラムの実行をステップS10にて開始させる。この第1遅延時間調整プログラムの実行開始後、コントローラ70は、ステップS11にてフィードモータ制御回路17を制御してターンテーブル13と共に光ディスクDKを径方向に移動することにより、レーザ照射位置を光ディスクDKの第1の所定の半径位置、すなわち半面ごとに反射率の異なる半径位置に移動する。これにより、レーザ光は半面ごとに反射率の異なる光ディスクDKの表面にて反射され、反射されたレーザ光はフォトディテクタ28に入射する。フォトディテクタ28、HF信号増幅回路42及び再生信号生成回路51の作用により、再生信号(SUM信号)がディジタル再生信号生成回路60に供給される。
【0047】
この再生信号は、光ディスクDKの半回転ごとにローレベルとハイレベルに変化する低周波数の信号であり、ディジタル再生信号生成回路60内のローパスフィルタ101,105を共に通過する。そして、ローパスフィルタ101を通過した再生信号は、A/D変換器102にてA/D変換され、遅延回路104を介してコントローラ70に供給される。なお、この第1遅延時間調整プログラムの実行開始時に、コントローラ70はディジタル再生信号生成回路60のクロック信号発生回路103,107の作動を開始させて、A/D変換器102,106によるA/D変換動作を開始させている。ローパスフィルタ105を通過した再生信号は、A/D変換器106にてA/D変換されてコントローラ70に供給される。ローパスフィルタ105による遅延時間はローパスフィルタ101による遅延時間よりも長いので、遅延回路104の出力とA/D変換器106の出力との間には位相ずれが生じる。前述のように、遅延回路104の遅延時間は、初期に予想値に設定されている場合もあるので、この状態で、遅延回路104の出力の位相がA/D変換器106の出力の位相よりも遅れているとは限らないが、遅延回路104の遅延時間を少なくとも「0」に設定した場合には、遅延回路104の出力の位相はA/D変換器106の出力の位相よりも進む。図8の実線で示す信号波形は、遅延回路104の出力の位相がA/D変換器106の出力の位相よりも進んでいる場合を示している。
【0048】
前記ステップS11の処理後、コントローラ70は、ステップS12にて時間計測を開始し、ステップS13〜S15からなる循環処理を繰り返し実行する。ステップS13においては、遅延回路104及びA/D変換器106の出力値を取り込む。ステップS14においては、遅延回路104及びA/D変換器106から取り込んだ出力値の立ち上がり及び立ち下がり(リーディングエッジ及びトレーリングエッジ)を検出し、前記時間計測の開始から前記立ち上がり及び立ち下がりタイミングまでの時間を計測して、遅延回路104側の時間データT1(1),T1(2)・・として一時記憶するとともに、A/D変換器106側の時間データT2(1),T2(2)・・として一時記憶する(図8参照)。ステップS15においては、両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・が所定数以上になったかを判定する。両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・が所定数以上になっていなければ、コントローラ70は、ステップS15にて「No」と判定してステップS13〜S15の循環処理を繰り返し実行して、両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・を収集し続ける。
【0049】
両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・が所定数以上になると、コントローラ70は、ステップS15にて「Yes」と判定して、ステップS16にて時間データT1(1),T1(2)・・と時間データT2(1),T2(2)・・とを対応付ける。これらの時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・は、光ディスクDKの1回転ごとに2つずつしか発生しない間隔の長いデータであるので、近い値を有する両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・同士を対応付ければよく、両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・の対応付けは容易に行われる。前記ステップS16の処理後、コントローラ70は、ステップS17にて時間データT1(1),T1(2)・・と時間データT2(1),T2(2)・・との差ΔT(k)=T2(k)−T1(k)をそれぞれ計算するとともに、全ての差ΔT(k)の平均値Eを計算する。ただし、kは、1から前記所定数までの整数である。
【0050】
次に、コントローラ70は、ステップS18にて、平均値Eの絶対値|E|が予め設定した正の小さな許容値ΔE未満であるかを判定する。絶対値|E|が許容値ΔE未満でなければ、コントローラ70は、ステップS18にて「No」と判定して、ステップS19の処理を実行する。ステップS19においては、前記計算した平均値Eを遅延回路104に出力して、遅延回路104による信号遅延時間を平均値E分だけ調整する。具体的には、平均値Eが正であれば、遅延回路104による信号遅延時間を平均値Eの絶対値|E|分だけ大きくする。一方、平均値Eが負であれば、遅延回路104による信号遅延時間を平均値Eの絶対値|E|分だけ小さくする。そして、前述したステップS11〜S18の処理をふたたび実行する。前記ステップS19の処理により、遅延回路104とA/D変換器106の両出力信号の位相差が縮められ、すなわち遅延回路104とA/D変換器106の両出力信号の立ち上がり及び立ち下がりタイミングが一致するように修正されるので、新たなステップS11〜S17による平均値Eの絶対値|E|は小さくなる。
【0051】
平均値Eの絶対値|E|が小さくなった結果、前記絶対値|E|が許容値ΔE未満になれば、コントローラ70は、ステップS18にて「Yes」と判定して、ステップS20にてこの第1遅延時間調整プログラムの実行を終了する。一方、前記絶対値|E|が許容値ΔE未満にならない場合には、コントローラ70は、ステップS18にて「No」と判定して、ふたたびステップS19の遅延時間調整処理を実行して、ステップS11〜S18の処理を実行する。前記第1遅延時間調整プログラムの終了時には、遅延回路104とA/D変換器106の両出力信号の位相差がほぼ一致、すなわち遅延回路104とA/D変換器106の両出力信号の立ち上がり及び立ち下がりタイミングが一致して、遅延回路104の出力波形信号は図8の破線で示すようになる。
【0052】
次に、作業者は、入力装置71を操作することにより、図5の第2遅延時間調整プログラムの実行をステップS30にて開始させる。この第2遅延時間調整プログラムの実行開始後、コントローラ70は、ステップS31にてフィードモータ制御回路17を制御してターンテーブル13と共に光ディスクDKを径方向に移動することにより、レーザ照射位置を光ディスクDKの第2の所定の半径位置、すなわち特定信号(8T+の信号)が記録されている半径位置に移動する。これにより、フォトディテクタ28には特定信号が入射する。そして、フォトディテクタ28、HF信号増幅回路42及び再生信号生成回路51の作用により、特定信号に係る再生信号(SUM信号)がディジタル再生信号生成回路60及び遅延回路53に供給される。
【0053】
ディジタル再生信号生成回路60に供給された再生信号は、ローパスフィルタ101によりローパスフィルタ処理され、A/D変換器102によりA/D変換され、遅延回路104により遅延されて、コントローラ70に供給される。なお、この第2遅延時間調整プログラムの実行開始時に、コントローラ70はディジタル再生信号生成回路60のクロック信号発生回路103の作動を開始させて、A/D変換器102によるA/D変換動作を開始させている。ただし、この第2遅延時間調整プログラムにおいては、A/D変換器106の出力は利用されないので、クロック信号発生回路107を作動させる必要はない。
【0054】
一方、2値化信号生成回路52に供給された特定信号に係る再生信号は、同2値化信号生成回路52にて2値化信号に変換されて、遅延回路53を介して評価対象パルス特定回路54に供給される。評価対象パルス特定回路54は、前記特定信号に係る再生信号(8T+の信号)の検出ごとに検出パルス8T+を時間計測回路55に出力する。
【0055】
前記ステップS31の処理後、コントローラ70は、ステップS32にて時間計測を開始するとともに、時間計測回路55にも時間計測を開始させる。これにより、時間計測回路55は、評価対象パルス特定回路54から検出パルス8T+が到来するごとに、前記時間計測の開始から検出パルス8T+の到来までの時間を表す時間データを出力する。前記ステップS32の処理後、コントローラ70は、ステップS33〜S37からなる循環処理を繰り返し実行する。ステップS33においては、時間計測回路55から出力される時間データを取り込み、時間データT1(1),T1(2)・・として順次一時記憶する(図6参照)。
【0056】
ステップS34においては、ディジタル再生信号生成回路60の遅延回路104の出力値を取り込む。ステップS35においては、前記取り込んだ出力値を2値化する。この場合、2値化される出力値は、特定信号8T+である。ステップS36においては、前記2値化した特定信号8T+の終了タイミングを検出し、前記時間計測の開始から特定信号8T+の終了タイミングまでの時間を計測して、特定信号8T+の時間データT2(1),T2(2)・・として順次一時記憶する。ステップS37においては、両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・が所定数以上になったかを判定する。両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・が所定数以上になっていなければ、コントローラ70は、ステップS37にて「No」と判定してステップS33〜S37の循環処理を繰り返し実行して、両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・を収集し続ける。
【0057】
両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・が所定数以上になると、コントローラ70は、ステップS37にて「Yes」と判定して、ステップS38にて時間データT1(1),T1(2)・・と時間データT2(1),T2(2)・・とを対応付ける。これらの時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・は、長い間隔をおいて供給するデータ、例えば光ディスクDKの1回転ごとに1つずつしか発生しない長い間隔のデータであるので、近い値を有する両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・同士を対応付ければよく、両時間データT1(1),T1(2)・・,T2(1),T2(2)・・の対応付けは容易に行われる。前記ステップS38の処理後、コントローラ70は、ステップS39にて時間データT1(1),T1(2)・・と時間データT2(1),T2(2)・・との差T(k)=T2(k)−T1(k)をそれぞれ計算するとともに、全ての差T(k)の平均値Tavを計算する。ただし、kは、1から前記所定数までの整数である。
【0058】
次に、コントローラ70は、ステップS40にて、前記平均値Tavから特定信号8T+の信号長SL(この場合、SL=8T)を減算した差分値の絶対値|Tav−SL|が予め設定した正の小さな許容値ΔTo未満であるかを判定する。絶対値|Tav−SL|が許容値ΔTo未満でなければ、コントローラ70は、ステップS40にて「No」と判定して、ステップS41の処理を実行する。ステップS41においては、差分値Tav−SLを遅延回路53に出力して、遅延回路53による信号遅延時間を差分値Tav−SL分だけ調整する。具体的には、差分値Tav−SLが正であれば、遅延回路53による信号遅延時間を差分値Tav−SLの絶対値|Tav−SL|分だけ大きくする。一方、差分値Tav−SLが負であれば、遅延回路53による信号遅延時間を差分値の絶対値|Tav−SL|分だけ小さくする。そして、前述したステップS31〜S40の処理をふたたび実行する。前記ステップS41の処理により、ディジタル再生信号生成回路60内の遅延回路104の出力が、遅延回路53の出力から特定信号8T+の信号長SLだけ遅れるように修正されるので、新たなステップS31〜S39による差分値Tav−SLの絶対値|Tav−SL|は小さくなる。
【0059】
差分値Tav−SLの絶対値|Tav−SL|が小さくなった結果、前記絶対値|Tav−SL|が許容値ΔTo未満になれば、コントローラ70は、ステップS40にて「Yes」と判定して、ステップS42にてこの第2遅延時間調整プログラムの実行を終了する。一方、前記絶対値|Tav−SL|が許容値ΔTo未満にならない場合には、コントローラ70は、ステップS40にて「No」と判定して、ふたたびステップS41の遅延時間調整処理を実行して、ステップS31〜S40の処理を実行する。前記第2遅延時間調整プログラムの終了時には、ディジタル再生信号生成回路60内の遅延回路104の出力が、遅延回路53の出力から特定信号8T+の信号長SLだけ遅れるように設定されて、遅延回路53の出力波形信号は図6の破線で示すようになる。
【0060】
前述のような第1及び第2遅延時間調整プログラムの実行後、コントローラ70は、スピンドルモータ制御回路14、フィードモータ制御回路17、レーザ駆動回路41及びディジタル再生信号生成回路60の作動を停止させる。そして、作業者は、前記特殊な光ディスクDKをターンテーブル13から取り外す。このような特殊な光ディスクDKを用いた遅延回路53,104の遅延時間の設定は頻繁に行うことなく、次に説明する検査対象となる複数の光ディスクDKの検査前に1回だけ行うか、遅延回路53,104の遅延時間の設定状態を維持しておいて稀に行えばよい。
【0061】
次に、検査対象となる光ディスクDKの検査について説明する。この場合、検査対象となる光ディスクDKをターンテーブル13上に固定する。検査対象となる光ディスクDKの検査領域には、複数種類のパルス幅をもつ一連のディジタル信号からなる光ディスクDKの検査用の信号が予め記録されている。次に、作業者は、入力装置71を操作して光ディスクDKの検査をコントローラ70に指示し、検査領域である検査開始の半径値と検査終了の半径値を入力する。この光ディスクDKの検査は、光ディスクDKの検査領域に記録されている検査用の信号をそれぞれ再生して、同再生した再生信号を評価することにより光ディスクDKの良否判定を行うものである。前記指示に応答してコントローラ70は、図示しないプログラムを実行することにより光ディスクDKの検査を開始する。
【0062】
まず、コントローラ70は、上述の遅延時間設定の場合と同様に、スピンドルモータ制御回路14、フィードモータ制御回路17、レーザ駆動回路41及びディジタル再生信号生成回路60を作動させて、光ディスクDKを所定の回転速度で回転させるとともに、レーザ光の照射位置を光ディスクDKの検査領域(すなわち検査開始の半径位置)に移動させる。また、この状態では、上述の場合と同様に、フォーカスエラー信号生成回路43、フォーカスサーボ回路44及びドライブ回路45による対物レンズ25のフォーカスサーボ制御が作動するとともに、トラッキングエラー信号生成回路46、トラッキングサーボ回路47及びドライブ回路48による対物レンズ25のトラッキングサーボ制御が作動する。なお、検査開始と終了の半径値の代わりに、作業者は、入力装置71から検査開始と終了におけるアドレスを入力してもよい。また、予めコントローラ70に記憶されているデータにより、検査領域が指定されるようにしてもよい。
【0063】
この場合も、検査用の光ディスクDKに記録された信号に対応したレーザ光は、フォトディテクタ28に入射し、フォトディテクタ28、HF信号増幅回路42及び再生信号生成回路51の作用により、検査用の再生信号(SUM信号)が2値化信号生成回路52及び遅延回路53を介して評価対象パルス特定回路54に供給されるとともに、ディジタル再生信号生成回路60に供給される。評価対象パルス特定回路54は、上述したように、信号2T+,2T−,8T+,8T−を検出して、検出パルス2T+,2T−,8T+,8T−をスイッチ回路61〜64にそれぞれ出力する(図7参照)。ディジタル再生信号生成回路60は、上述のように、再生信号の中心値のゆっくりした時変動成分を除外し、かつ再生信号に含まれる直流成分(再生信号の平均的な信号レベル)を加味したディジタル再生信号をスイッチ回路61〜64に出力する(図9参照)。
【0064】
スイッチ回路61〜64は、上述のように、それぞれ評価対象パルス特定回路54からの検出パルス2T+,2T−,8T+,8T−に応答して、ディジタル再生信号生成回路60からの検査用パルス信号2T+,2T−,8T+,8T−に関する24個のサンプリングデータ群を振幅計算回路65〜68にそれぞれ出力する。振幅計算回路65〜68は、上述のように、スイッチ回路61〜64から出力された“2T+”、“2T−”、“8T+”及び“8T−”に関するサンプリングデータを、24個を1組として順次記憶していく。そして、コントローラ70が、フィードモータ12のエンコーダ12aが出力するパルス信号から計算した半径値又は2値化信号を復号することで得られるアドレスデータにより、検査用パルス信号の再生終了を検知すると、振幅計算回路65〜68にそれぞれ計算の開始を指示する。
【0065】
このコントローラ70からの計算開始の指示に応答して、振幅計算回路65〜68は、上述のように、前記記憶した複数組のサンプリングデータ群を用いて、“2T+”のディジタル再生信号の最大値(ピーク値)、“2T−”のディジタル再生信号の最小値(ボトム値)、“8T+”のディジタル再生信号の最大値(ピーク値)及び“8T−”のディジタル再生信号の最小値(ボトム値)をそれぞれ計算する。この具体的な計算手順においては、次のいずれかの手順を採用できる。第1の計算手順は、コントローラ70の計算開始指示に応答して、各組のサンプリングデータの最大値又は最小値をそれぞれ計算し、その後に、複数の最大値又は最小値の平均値を計算する手順である。第2の計算手順は、スイッチ回路61〜64が1組のサンプリングデータを入手するごとに1組ずつの最大値又は最小値をそれぞれ計算して記憶しておき、コントローラ70の計算開始指示に応答して、複数の最大値又は最小値の平均値を計算する手順である。そして、最終的に計算された最大値(ピーク値)及び最小値(ボトム値)表すデータはコントローラ70に供給される。
【0066】
コントローラ70は、振幅計算回路65〜68から供給されたデータを入力し、同入力したデータを用いて変調振幅又はアシンメトリなどの各評価項目を計算して再生信号の評価を行う。そして、評価結果を出力装置72に表示する。そして、コントローラ70は作動させた回路を停止させ、光ディスクDKの回転が止まるので、作業者は、光ディスクDKを取り替えて上記と同様な操作で検査を行う。このようにして、複数の光ディスクDKは次々に検査される。
【0067】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、2値化信号生成回路52、評価対象パルス特定回路54、ディジタル再生信号生成回路60及びスイッチ回路61〜64により、振幅計算回路65〜68には、評価対象となるパルス幅2T+,2T−,8T+,8T−ごとに、必要な量のディジタル再生信号が記憶される(図3参照)。そして、振幅計算回路65〜68は、前記記憶したディジタル再生信号を用いてディジタル再生信号の信号特徴値(ピーク値又はボトム値)をそれぞれ計算し、コントローラ70がこれらの信号特徴値を用いて再生信号を評価する。このように、評価対象のパルス幅のディジタル再生信号の取り込みは、信号特徴値の計算とは独立して行われる。その結果、光ディスクDKの1つのトラック上に評価対象となるパルス幅の信号が複数存在する場合には、光ディスクDKの1回転で複数の評価対象となるパルス幅のディジタル再生信号が振幅計算回路65〜68に取り込まれ、その後に、前記取り込まれたディジタル再生信号は信号特徴値の計算に利用されるので、再生信号の評価に対するトータル時間を大幅に減縮できる。
【0068】
また、スイッチ回路61〜64は、評価対象パルス特定回路54からの検出パルス2T+,2T−,8T+,8T−に応答して、評価対象となるパルス幅のうちで最も長いパルス幅8Tに相当する時間にわたって、ディジタル再生信号生成回路60から出力されたディジタル再生信号を記憶する。したがって、評価対象となる全てのパルス幅2T+,2T−,8T+,8T−のディジタル再生信号を連続的に振幅計算回路65〜68に取り込むことができるので、パルス幅ごとにディジタル再生信号の取り込み処理を行う必要がなくなり、前記再生信号の評価に対するトータル時間の減縮に有利となる。
【0069】
また、遅延回路53は、ローパスフィルタ101,105及び遅延回路104の信号遅延時間を考慮して、2値化信号生成回路52からの2値化信号を遅延して、ディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路61〜64に供給されるディジタル再生信号が、評価対象パルス特定回路54に供給される2値化信号よりも、評価対象となるパルス幅のうちで最も長いパルス幅8Tだけ遅れるようにした。これにより、振幅計算回路65〜68は、評価対象パルス特定回路54による評価対象のパルス幅である信号の検出直後から、ディジタル再生信号の取り込みを的確に開始できるようになる。さらに、この遅延回路104の信号遅延時間は、図5の第2遅延時間調整プログラムの実行により、ディジタル再生信号生成回路60からのディジタル再生信号と、前記評価対象パルス特定回路54からの検出パルス8Tとに基づいて設定される。これにより、光ディスクDKの信号評価装置の状態にばらつきがあったり、同装置の状態が時間的に変化したりした場合でも、振幅計算回路65〜68へのディジタル再生信号の取り込みタイミングが自動的に適切なタイミングに設定されるようになる。
【0070】
また、ディジタル再生信号生成回路60においては、A/D変換器102,106、ローパスフィルタ105、遅延回路104、減算器108、積分回路109及び加算器110により、光ディスクの位置の変化に起因した反射率の相違による時変動成分を除去したうえで、再生信号に含まれる直流成分(信号レベル)がそのまま保たれた再生信号がスイッチ回路61〜64及び振幅計算回路65〜68に供給される。その結果、最終的に、再生信号に含まれる直流成分(信号レベル)も含めて再生信号が評価されるようになる。また、遅延回路104の信号遅延時間は、図4の第1遅延時間調整プログラムの実行により、ローパスフィルタ105の出力をA/D変換器106によりA/D変換したディジタル信号と、遅延回路104の出力ディジタル信号とに基づいて設定される。これにより、光ディスクDKの信号評価装置の状態にばらつきがあったり、同装置の状態が時間的に変化したりした場合でも、遅延回路104の出力であってレーザ光の照射位置に依存した時変動成分を含むディジタル再生信号と、A/D変換器106によりA/D変換した前記時変動成分を表すディジタル信号との遅延時間差を自動的になくすことができ、前記時変動成分を含むディジタル再生信号から時変動成分を的確に除去できるようになる。
【0071】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0072】
上記実施形態においては、図4の第1遅延時間調整プログラムの処理により、遅延回路104及びA/D変換器106の出力値の立ち上がり及び立ち下がりの検出及びそれらの時間の計測を行うようにした。しかし、これに代えて、評価対象パルス特定回路54及び時間計測回路55のように、遅延回路104及びA/D変換器106の出力値の立ち上がり及び立ち下がりの検出及びそれらの時間を計測する回路をコントローラ70の外部に設けて、同回路により検出された時間をコントローラ70が取り込むようにしてもよい。また、図5の第2遅延時間調整プログラムの処理により、特定信号(8T+)の終了の検出及びその時間の計測を行うようにしたが、この場合も、特定信号(8T+)の終了の検出及びその時間を計測する回路をコントローラ70の外部に設けて、同回路により検出された時間をコントローラ70が取り込むようにしてもよい。また、時間計測回路55の時間計測機能をコントローラ70のプログラム処理により実行させるようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態においては、ディジタル再生信号生成回路60において、再生信号に含まれる信号周波数よりも高い周波数のノイズをローパスフィルタ101により除去するようにした。しかし、この高い周波数のノイズが問題にならない場合には、ローパスフィルタ101を省略してもよい。この場合、遅延回路104は、ローパスフィルタ105による信号遅延時間のみを考慮して、同信号遅延時間を補償すればよい。
【0074】
また、上記実施形態においては、光ディスクDKの位置により反射率の変化に起因したゆっくりと時変動する信号を除去するために、ローパスフィルタ105、A/D変換器106、減算器108、積分回路109、加算器110などを設けるようにした。しかし、この時変動する信号を無視できる場合には、前記ローパスフィルタ105、A/D変換器106、減算器108、積分回路109、加算器110などは不要となる。一方、この場合も、2値化信号生成回路52から遅延回路53を介して評価対象パルス特定回路54に供給される2値化信号の位相は、ディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路61〜64に供給されるディジタル再生信号の位相よりも、最長信号長8T分だけ進んでいる必要がある。この場合、ローパスフィルタ105の遅延時間は非常に大きく(8Tよりも大きく)、ローパスフィルタ101の遅延時間は非常に小さい(8Tよりも小さい)ので、遅延回路53を省略して、遅延回路104の信号遅延時間を調整して、ディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路61〜64に供給されるディジタル再生信号を、評価対象パルス特定回路54に供給される2値化信号よりも最長信号長8Tだけ遅延するようにする。この場合には、図5の第2遅延時間調整プログラムにより、遅延回路104の遅延時間を調整することになる。
【0075】
また、上記実施形態においては、遅延回路53の遅延時間の設定により、ディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路61〜64に出力されるディジタル再生信号を、遅延回路53から評価対象パルス特定回路54に供給される2値化信号よりも最長信号長8Tだけ遅らせるようにした。したがって、最長信号長8Tの評価対象パルス8T+,8T−に関しては、評価対象パルス特定回路54に入力された評価対象パルス8T+,8T−の終了直後から、これらの評価対象パルス8T+,8T−に対応したディジタル再生信号がディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路63,64に供給され、スイッチ回路63,64により前記評価対象パルス8T+,8T−に対応したディジタル再生信号が振幅計算回路67,68に供給される。これによれば、振幅計算回路65〜68にディジタル再生信号のサンプリングデータを極めて効率的に取得させることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、ディジタル再生信号生成回路60からスイッチ回路61〜64に出力されるディジタル再生信号は、遅延回路53から評価対象パルス特定回路54に供給される2値化信号に対して、少なくとも最長信号長8T分遅れればよい(すなわち、最長時間長8T以上の時間が遅れればよい)。これによっても、振幅計算回路63,64には、評価対象パルス8T+,8T−に対応した必要量のディジタル再生信号のサンプリングデータが取り込まれる。ただし、この場合、スイッチ回路61〜64は、評価対象パルス特定回路54からの検出パルス2T+,2T−,8T+,8T−の到来から所定時間後に、ディジタル再生信号生成回路60からのディジタル再生信号を振幅計算回路65〜68に出力するようにする必要がある。
【0076】
また、上記実施形態においては、評価対象となるパルス幅は、光ディスクDKに記録された検査用信号における最短のパルス幅及び最長のパルス幅の2種類のパルス幅とし、同2種類のパルス幅を信号レベルごとに検出して再生信号の評価を行うようにしたが、再生信号の評価に必要なパルス幅のパルス信号を検出すれば、これに限定されるものではない。すなわち、1つのパルス幅又は3つ以上の種類のパルス幅を評価対象として、同各パルス幅をもつパルス信号を抽出して再生信号を評価するようにしてもよい。
【0077】
さらに、上記実施形態においては、光ディスクDKを検査するための光ディスク装置に本発明を適用するようにしたが、本発明はディスクDKに記録された信号を再生して再生信号を評価する装置であれば、これに限定されるものではない。例えば、光ディスクDKに記録されたディジタル信号をアナログ再生するための光ピックアップ20などの再生装置を検査するための光ピックアップ検査装置などにも広く適用できるものである。また、光ディスクDKへのデータの記録条件、光ディスクに記録されたデータの再生条件などの評価にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク検査装置の全体を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1のディジタル再生信号生成回路の詳細ブロック図である。
【図3】図1のスイッチ回路及び振幅計算回路の機能を説明するための機能ブロック図である。
【図4】図1のコントローラにより実行される第1遅延時間調整プログラムを示すフローチャートである。
【図5】図1のコントローラにより実行される第2遅延時間調整プログラムを示すフローチャートである。
【図6】特定パルス信号(8T+)に関する遅延回路、ディジタル再生信号生成回路などの出力信号波形図である。
【図7】再生信号、同再生信号の2値化信号及び検出パルス2T+,2T−,8T+,8T+の信号波形図である。
【図8】図2の遅延回路及びA/D変換器の出力信号波形図である。
【図9】(A)〜(D)は図2のディジタル再生信号生成回路内の各部の信号波形図である。
【図10】(A)(B)は“8T+”及び“2T+”パルス信号に関する遅延回路出力とディジタル再生信号生成回路の出力信号波形図である。
【図11】(A)(B)は遅延時間の設定に利用される特殊な光ディスクの概念図である。
【図12】(A)(B)は従来装置による再生信号の波形図である。
【符号の説明】
【0079】
DK…光ディスク、10…回転駆動装置、11…スピンドルモータ、12…フィードモータ、20…光ピックアップ、53…遅延回路、54…評価対象パルス特定回路、55…時間計測回路、60…ディジタル再生信号生成回路、61〜64…スイッチ回路、65〜68…振幅計算回路、70…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップから出力された電気信号に基づいて生成された再生信号を評価する光ディスクの信号評価装置において、
前記生成された再生信号をハイレベルとローレベルとからなる2値化信号に変換して出力する2値化信号生成手段と、
前記変換された2値化信号の各パルスの信号長に基づいて一連のパルス列の中から評価対象となるパルス幅の信号をそれぞれ検出して、評価対象となるパルス幅ごとに検出信号を出力する評価対象パルス検出手段と、
前記再生信号を所定のレートでサンプリングしてディジタル再生信号に変換し、前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させて出力するディジタル再生信号生成手段と、
前記評価対象パルス検出手段からの検出信号に応答して、前記ディジタル再生信号生成手段から出力された所定時間にわたるディジタル再生信号を前記検出信号の属するパルス幅ごとに記憶するとともに、前記記憶したディジタル再生信号に基づいて前記再生信号の特徴値を評価対象となるパルス幅ごとに計算する信号特徴値計算手段と、
前記計算された再生信号の特徴値を用いて、前記再生信号を評価する評価手段と
を備えたことを特徴とする光ディスクの信号評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記信号特徴値計算手段は、前記評価対象パルス検出手段からの検出信号に応答して、評価対象となるパルス幅のうちで最も長いパルス幅に相当する時間にわたって、前記ディジタル再生信号生成手段から出力されたディジタル再生信号を記憶するものである光ディスクの信号評価装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させるために、前記ディジタル再生信号生成手段内にて前記ディジタル再生信号を遅延する第1遅延手段と、前記2値化信号を遅延する第2遅延手段とのうちの少なくともいずれか一方の遅延手段を設けた光ディスクの信号評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記ディジタル再生信号生成手段からのディジタル再生信号と、前記評価対象パルス検出手段からの検出信号とに基づいて、前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させるように、前記少なくともいずれか一方の遅延手段の遅延時間を設定する遅延時間設定手段を設けた光ディスクの信号評価装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記ディジタル再生信号生成手段を、
前記再生信号に含まれる信号周波数成分を除去して光ディスク上におけるレーザ光の照射位置に依存した時変動を表す信号を出力するローパスフィルタと、
前記再生信号及び前記ローパスフィルタの出力信号をそれぞれ所定のサンプリングレートでサンプリングしてディジタル信号にA/D変換するA/D変換器と、
前記再生信号をA/D変換したディジタル信号を所定量遅延して、前記ローパスフィルタの出力信号の遅延を相殺する遅延回路と、
前記遅延回路の出力ディジタル信号から前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換したディジタル信号を減算して、前記遅延回路の出力ディジタル信号から前記レーザ光の照射位置に依存した時変動成分を除去する減算器と、
前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換したディジタル信号を積分して、前記レーザ光の照射位置に依存した時変動成分を除去する積分器と、
前記減算器の出力ディジタル信号と前記積分器の出力ディジタル信号を合算して、前記再生信号に含まれる直流成分を加味したディジタル再生信号を生成する加算器と
で構成した光ディスクの信号評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記ローパスフィルタの出力信号をA/D変換したディジタル信号と、前記遅延回路の出力ディジタル信号とに基づいて、前記遅延回路の遅延時間を設定する遅延時間設定手段を設けた光ディスクの信号評価装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか1つに記載の光ディスクの信号評価装置において、
前記信号特徴値計算手段は、評価対象のパルス幅に属するディジタル再生信号のボトム値又はピーク値を前記再生信号の特徴値として計算するものである光ディスクの信号評価装置。
【請求項8】
光ディスクにレーザ光を照射して光ディスクからの反射光を受光する光ピックアップから出力された電気信号に基づいて生成された再生信号を評価する光ディスクの信号評価方法において、
前記生成された再生信号をハイレベルとローレベルとからなる2値化信号に変換して出力する2値化信号生成ステップと、
前記変換された2値化信号の各パルスの信号長に基づいて一連のパルス列の中から評価対象となるパルス幅の信号をそれぞれ検出して、評価対象となるパルス幅ごとに検出信号を出力する評価対象パルス検出ステップと、
前記再生信号を所定のレートでサンプリングしてディジタル再生信号に変換し、前記ディジタル再生信号を前記2値化信号よりも所定量だけ遅延させて出力するディジタル再生信号生成ステップと、
前記評価対象パルス検出ステップからの検出信号に応答して、前記ディジタル再生信号生成ステップによって出力された所定時間にわたるディジタル再生信号を前記検出信号の属するパルス幅ごとに記憶するとともに、前記記憶したディジタル再生信号に基づいて前記再生信号の特徴値を評価対象となるパルス幅ごとに計算する信号特徴値計算ステップと、
前記計算された再生信号の特徴値を用いて、前記再生信号を評価する評価ステップと
を含むことを特徴とする光ディスクの信号評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−159101(P2008−159101A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343784(P2006−343784)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】