説明

光ディスクプレーヤ

【課題】ディスクトレイの構造のみによって高速回転中の光ディスク破損時に光ディスクの破片がハウジングの前面にある挿入スロットを通り抜けて前方に飛び出るのを防止する。
【解決手段】ディスクトレイ100は、光ディスクを担持する担持部130と、担持部の少なくとも一部を囲むように突出している突出壁部140と、からなり、担持部はその中央部から後方に延びる切欠開口部110を有しており、突出壁部はその前方において中央部に向かって張り出している飛散防止突起部150を有しており、飛散防止突起部は担持部の周方向に沿って所定の範囲に亘って延在していることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスクプレーヤに関し、特に高速回転中における光ディスク破損時の破片の飛散防止機能を備えた光ディスクプレーヤに関する。
【背景技術】
【0002】
CD、DVD等の光ディスクに情報を記録したり、光ディスクに記録されている情報を演奏再生したりする光ディスクプレーヤが広く利用されている。
【0003】
かかる光ディスクプレーヤは、通常、光ディスクを高速回転させるドライブ機構をハウジング内に収納しているので、記録及び/若しくは再生対象の光ディスクを当該ディスクドライブ機構にまで搬送するための搬送手段が必要となる。当該手段として一般的にフロントローディング方式のディスクトレイが用いられており、ハウジングの前面パネルに設けられた挿入スロットを介して当該トレイを出没せしめて光ディスクのローディング及びアンローディングが行われる。
【0004】
ところで、上記の如き光ディスクプレーヤにおいては、高速で情報の記録や再生を行うべく光ディスクは高速の回転速度で駆動されており、その際、光ディスクの経年劣化や取扱い時に生じた亀裂等に起因して高速回転中に光ディスクが破損した場合は、大きな遠心力によって光ディスクの破片が四方に激しく飛び散るおそれがある。特に、上記の如くフロントローディング方式を採用している場合は、ハウジング前面の挿入スロットから破片が前方に飛び出すおそれがある。従って、光ディスクプレーヤには高速回転中の光ディスクの破損を考慮に入れた安全設計が必要である。
【0005】
例えばディスクトレイに飛散防止機能を有する銘板を取り付けて光ディスクの破片の飛び出しを防止する技術や、特許文献1に示されるように、ディスクトレイに設けられた突条と、該トレイ上方に設けられた突条とにより光ディスク破片の飛び出しを防止する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平2002−133852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、通常、銘板は製品の外観に影響を及ぼす部品であるため、装飾性を重視する自由な設計がなされるべきものであるにもかかわらず、銘板に飛散防止機能を担わせる場合は、かかる設計が制限されてしまう。また、特許文献1の技術は、複数の部材により光ディスクの経路を塞ぐことで光ディスクの破片が飛び散るのを防止する構造によるものであるため、複数の部材を効果的に位置決めするのが困難である。また、光ディスクの破片が飛び散るのを効果的に防止するためには、複数の部材を互いに出来るだけ近づける必要があるが、近づけすぎた場合は部材同士が接触してディスクトレイの円滑な動作が妨げられてしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題には上記の問題が一例として挙げられ、ディスクトレイの構造のみによって高速回転中の光ディスク破損時に光ディスクの破片がハウジングの前面にある挿入スロットを通り抜けて前方に飛び出るのを防止する機能を備えた光ディスクプレーヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例の光ディスクプレーヤは、ディスク挿入スロットを前面部に有するハウジングと、ディスク挿入スロット内に出没自在であって記録及び/若しくは再生されるべき光ディスクを支持しつつ収納位置と突出位置との間で可動なディスクトレイと、ディスクトレイを収納位置と突出位置とのいずれかに位置決めする位置決め機構と、ディスクトレイが収納位置に達したとき光ディスクを支持しこれを回転せしめて記録再生するターンテーブルを含むディスクドライブ部と、を含み、ディスクトレイは、光ディスクを担持する担持部と、担持部の少なくとも一部を囲むように突出している突出壁部と、からなり、担持部はその中央部から後方に延びる切欠開口部を有しており、突出壁部はその前方において中央部に向かって張り出している飛散防止突起部を有しており、飛散防止突起部は担持部の周方向に沿って所定の範囲に亘って延在していることを特徴としている。
【0009】
突出壁部はその少なくとも前方に貫通部を有していても良い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
図1(A)及び(B)に本発明の実施例による光ディスクプレーヤ1を示す。光ディスクプレーヤ1は、ハウジング2の前面2aに設けられた挿入スロット2bから出没自在なディスクトレイ100を具備しており、該トレイ100を介して光ディスクDのローディング及びアンローディングが行われる。
【0012】
光ディスクの記録及び/若しくは再生を行うべく光ディスクをローディングする際は、先ず、図1(A)に示す如く、ハウジング2の挿入スロット2bから突出したディスクトレイ100に光ディスクDを載置する。該ディスクトレイ100は、担持部130と突出壁面140とからなっており、該担持部130上に光ディスクDが載置される。光ディスクDの載置後に光ディスクプレーヤ1のハウジング2の前面パネル2aに配置されているスイッチSWを押すと、上記突出位置にあるディスクトレイ100は図示しない位置決め機構によって光ディスクプレーヤ1内の収納位置まで引き込まれる。なお、ディスクトレイ100の前面部分を光ディスクプレーヤ1に向けて軽く押し込むことによってディスクトレイ100を引き込ませることも可能である。ディスクトレイ100が図1(B)に示される如き収納位置に到達すると、図2に示される如きターンテーブル8を含むディスクドライブ部や光ピックアップ6等が搭載されたユニット7が上昇し、これによりターンテーブル8が切欠開口部110を通り抜けてせり上がることにより光ディスクDをディスクトレイ100から持ち上げる。ターンテーブル8に対向する位置には回転自在に支持されたクランパ9が設けられており、ユニット7が更に上昇することでクランパ9とターンテーブル8とによって光ディスクDが挟持される。この状態で、ディスクドライブ部のスピンドルモータ5が駆動して光ディスクDを高速回転させ、更に光ピックアップ6から出射するレーザービームを切欠開口部110を経て光ディスクの記録面に照射して光ディスクの記録や再生が行なわれる。
【0013】
光ディスクの記録及び/若しくは再生が終了して光ディスクをアンローディングする際の手順は、上記したローディングの際の手順のほぼ逆である。すなわち、光ディスクDの記録及び/若しくは再生が終了して光ディスクの回転が停止するとユニットが下降し、光ディスクD及びターンテーブル8がクランパ9から開放される。ユニット7が更に下降すると、ターンテーブル8上に支持されている光ディスクDがディスクトレイ100の担持部130上に載置される。ここで前面パネル2aに配置されているスイッチSWを押すと、ディスクトレイ100は図示しない位置決め機構によって図1(A)に示される突出位置まで引き出されて、光ディスクの着脱が行われる。
【0014】
図3は本発明の第1実施例のディスクトレイ100の斜視図である。図3の手前側に示されている部分切取図から判るように、本実施例のディスクトレイ100は所定の肉厚を有する樹脂等から形成されている。かかるディスクトレイ100は、例えば金型を用いて一体成形することによって製作される。
【0015】
本実施例のディスクトレイ100は、光ディスクを載置する担持部130と、該担持部130の少なくとも一部を囲むように突出している突出壁面140と、からなっている。該担持部130には、その中央部から後方に延びる領域に、ターンテーブル8や光ピックアップのアクセス用の切欠開口部110が設けられている。本実施例のディスクトレイ100においては、突出壁面140は、少なくともその前方に飛散防止突起部150を有している。
【0016】
図4はかかる飛散防止突起部150を担持部130の中心軸Cを通る任意の平面で切断した場合の断面図であり、飛散防止突起部150が担持部130の中央部に向かって張り出しているのが判る。更に、飛散防止突起部150の下方側面150aは、担持部130の中央部を臨むように傾斜している。かかる下方側面150aの傾斜角度(図4において角度cで示している)は例えば135度である。また、飛散防止突起部150は、その下方側面150aと突出壁面140との接合部が高速回転時の光ディスクの上面よりも上方に位置するように形成されている。飛散防止突起部150を上記のような構造にすることにより、高速回転している光ディスクが破損してその破片が挿入スロット2bに向かって飛んで来た場合であっても、光ディスクより上方に位置し、且つ斜め下方を向いている飛散防止突起部150の下方側面150aによってはね返されるので、破片が突出壁面140を飛び越えてハウジング前面のスロットを通り抜けてプレーヤの前方に破片が飛散するのが防止される。
【0017】
なお、挿入スロット2bに向かって飛んでくる破片を広範囲に亘ってはね返し得るようにすべく、飛散防止突起部150の突出壁面140から張り出す距離b及び担持部の周方向に沿った飛散防止突起部150の延在する範囲aが定められる。かかる距離bは例えば2mmであり、飛散防止突起部150の延在する範囲は、例えば担持部130の中心Oから見て中心角約75度に亘って延在する範囲である。上記a、b及びcは、ハウジングやディスクトレイの形状等を考慮にいれて上記以外の種々の値が採用され得る。
【0018】
例えば、縦置き使用が可能なディスクプレーヤの場合は、ディスクローディング及びアンローディングの際にディスクをディスクトレイに保持せしめるための保持爪が突出壁面の所定の位置に設けられており、飛散防止突起部はかかる保持爪の設置場所の影響を受ける。
【0019】
図5には、かかる保持爪が配置されているディスクトレイの例が示されている。
【0020】
図5の例においては、4つの保持爪170a〜dが担持部131の中心Oを通ってディスクトレイ101の搬送方向(矢印M)に平行な直線Lに対して対称な位置に各々2個ずつ配置されている。このように保持爪170a〜dを配置することによって、ローディング及びアンローディングの際、下方側に位置する2個の保持爪(図5の場合は170a及びb)にディスクが支持される。尚、縦置き使用が可能なディスクプレーヤにおいては、ディスクがクランパとターンテーブルとによって挟持される際、下方側にある2個の保持爪(図5の場合は170a及びb)から上方に向けて持ち上げられる。これによって、ディスクが担持面に対して垂直に移動する際に当該保持爪が妨げになることが回避される。前方に位置する2つの保持爪(図5の場合は170a及びc)は、一般的にディスク担持部の中心Oから見て中心角約75度に亘る間隔を介して互いに離間している。従って、飛散防止突起部151はディスク担持部の中心Oから見て中心角約75度未満の範囲内に所定の範囲に亘って延在することになる。
【0021】
飛散防止突起部が延在する範囲が短すぎる場合はディスクの破片が該飛散防止突起部にはね返されることなく挿入スロットから飛び出すおそれがあるため、ディスク担持部の中心Oから見て中心角60度以上の範囲に亘って延在するのが好ましい。
【0022】
図6には、保持爪を備えたディスクトレイ102の変形例が示されている。
【0023】
図6のディスクトレイ102においては、前方の2つの保持爪が飛散防止突起部152に一体化した構造となっているため、保持爪としては後方の2つの保持爪(171b及びd)のみが示されている。かかる構造を採用することによって、金型構造を簡素化することが可能となる。
【0024】
上記実施例では飛散防止突起部150がディスクトレイ100の成形時に一体成形される場合を想定してきたが、これに限られるものではなく、例えば飛散防止突起部150とディスクトレイ100とを別々に製造してから組み合わせてもよい。このように製造することによって、例えば飛散防止突起部150をディスクトレイ100よりも強固な材質にすることで、ディスクトレイの総重量をほぼ変化させずに安全性をより一層高めることが可能になる。また、別々に成形することによって金型成形を容易に行うことも可能となる。
【0025】
次に、本発明の第2実施例を図7を参照しつつ説明する。
【0026】
本実施例のディスクトレイ200には、第1実施例と同様の飛散防止突起部250に加えて、貫通部260が突出壁面240に設けられている。飛散防止突起部250の構造は第1実施例と同様であるので、以下、貫通部260についてのみ説明を行う。
【0027】
貫通部260は、突出壁面240の少なくとも前方に担持部230の外周縁に沿って帯状に設けられている。
【0028】
貫通部260の高さhは、例えば突出壁面240と担持部230の接する部分から飛散防止突起部250が設けられている部分までの距離である。また、貫通部260が形成される範囲は、飛散防止突起部250が延在する範囲とほぼ同等であるのが好ましい。すなわち、貫通部260が形成される範囲を担持部230の中心Oから見た中心角dは、飛散防止突起部250が延在する範囲を担持部230の中心Oから見た中心角aに略同等であるのが好ましい。なお、上記h及びdはハウジングやディスクトレイの形状、ディスクトレイの機械的強度等を考慮にいれて上記以外の種々の値が採用され得る。
【0029】
このように、第2実施例のディスクトレイ200は飛散防止突起部250に加えて貫通部260を有しているので、飛散防止突起部250の下方側面250aではね返された破片が貫通部260を経てディスクトレイの下側に収容されるので、破片の飛散防止効果がより一層向上する。
【0030】
なお、図7においては、貫通部260の貫通孔の数は1つであったが、これに限られるものではなく、貫通孔の数は複数であっても良い。図8には2つの貫通孔からなる貫通部261の例が示されている。図8においては、2つの貫通孔に合わせて飛散防止突起部251も2つの部分から構成されているが、飛散防止突起部251は図5の飛散防止突起部250の如く連続したままでも良い。このように貫通部を複数の貫通孔から構成することによって、広い開口面積を確保しつつ、ディスクトレイの機械的強度を確保することが可能となる。
【0031】
このように、本願発明の実施例に示す構造のディスクトレイを光ディスクプレーヤに使用することによって、ディスクトレイの構造のみによって光ディスク破損時に光ディスクの破片がハウジングの前面にある挿入スロットを通り抜けて前方に飛び出るのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例の光ディスクプレーヤの斜視図であり、突出位置にあるディスクトレイと収納位置にあるディスクトレイとが示されている。
【図2】本発明の実施例の光ディスクプレーヤの内部の構造図である。
【図3】本発明の第1実施例によるディスクトレイの斜視図である。
【図4】図3の飛散防止突起部を担持部130の中心軸Oを通る任意の平面で切断した部分の断面図である。
【図5】本発明の第1実施例の変形例である。
【図6】本発明の第1実施例の他の変形例である。
【図7】本発明の第2実施例によるディスクトレイの変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2実施例によるディスクトレイの斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 光ディスクプレーヤ
2 ハウジング
2a 前面パネル
2b 挿入スロット
5 スピンドルモータ
6 光ピックアップ
7 ユニット
8 ターンテーブル
9 クランパ
100、200 ディスクトレイ
110、210 切欠開口部
130、230 担持部
140、240 突出壁面
150、250 飛散防止突起部
170 保持爪
260 貫通部
D 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク挿入スロットを前面部に有するハウジングと、前記ディスク挿入スロット内に出没自在であって記録及び/若しくは再生されるべき光ディスクを支持しつつ収納位置と突出位置との間で可動なディスクトレイと、前記ディスクトレイを前記収納位置と前記突出位置とのいずれかに位置決めする位置決め機構と、前記ディスクトレイが前記収納位置に達したとき前記光ディスクを支持しこれを回転せしめて記録再生するターンテーブルを含むディスクドライブ部と、を含む光ディスクプレーヤであって、
前記ディスクトレイは、前記光ディスクを担持する担持部と、前記担持部の少なくとも一部を囲むように突出している突出壁部と、からなり、前記担持部はその中央部から後方に延びる切欠開口部を有しており、前記突出壁部はその前方において前記中央部に向かって張り出している飛散防止突起部を有しており、前記飛散防止突起部は前記担持部の周方向に沿って所定の範囲に亘って延在していることを特徴とする光ディスクプレーヤ。
【請求項2】
前記所定の範囲は、ディスク担持部の中央部から見て中心角60度以上の範囲であることを特徴とする請求項1記載の光ディスクプレーヤ。
【請求項3】
前記飛散防止突起部の下方側面は前記中央部を臨むように傾斜していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスクプレーヤ。
【請求項4】
前記飛散防止突起部の前記下方側面は、前記ディスクドライブ部によって回転せしめられている時の前記光ディスクの上面より上方に設けられていることを特徴とする請求項1又は3のうちいずれか1に記載の光ディスクプレーヤ。
【請求項5】
前記突出壁部はその少なくとも前方に貫通部を有していることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1に記載の光ディスクプレーヤ。
【請求項6】
前記貫通部は2以上の貫通孔からなることを特徴とする請求項5記載の光ディスクプレーヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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