説明

光ディスク再生方法、光ディスク装置および光ディスクライブラリ装置

【課題】光ディスクライブラリ装置において、光ディスク及び光ドライブの劣化の状態を各々評価可能とすること。
【解決手段】第1の光ディスクと第1の光ドライブの組合せにおいて光ディスクの特定の領域を再生して第1の再生エラーレートを測定し、所定の閾値以上であったら、第2の光ディスクと第1の光ドライブの組合せで第2の再生エラーレートを測定し、第1の光ディスクと第2の光ドライブの組合せで第3の再生エラーレートを測定し、第2および第3の再生エラーレートに基づいて第1の光ディスクと第1の光ドライブの劣化状態を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に係り、特に複数の光ディスク装置を具備した光ディスクライブラリ装置において各光ディスク装置の劣化の状態を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には「ディスク再生装置は、エラーレートに基づいてメディアの劣化を判定する。すなわち、エラーレートが単位時間当たり所定の閾値以上の値となったときに、バックアップを指示する信号を発生する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−1634332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードディスク装置には装置の劣化を評価するための自己監視機能(Self−Monitoring,Analysis and Reporting Technology、SMARTと通称される)がATA3以降の規格でサポートされているが、ハードディスク装置においてはメディア部とドライブ部が不可分であるため、劣化を評価する際にメディア部とドライブ部の切り分けは不要である。
【0005】
ところが、光ディスク装置においてはメディアである光ディスクが光ディスク装置(光ディスクと光ディスク装置との表記上の区別を明確にするため、以降は光ディスク装置を光ドライブと記載する)から分離可能であって、光ディスクの劣化と光ドライブの劣化とを個別に評価する必要がある。
【0006】
特に、複数の光ディスクを保持するラックと、複数の光ドライブと、前記ラックから所定の光ディスクを所定の光ドライブに搬送するチェンジャー機構とを備えた大容量の情報ストレージ装置である光ディスクライブラリ装置においては、信頼性を確保維持するために各光ディスク及び各光ドライブの劣化の状態を各々評価して管理することが重要である。
【0007】
光ディスクの劣化の状態を光ドライブで評価する技術としては、上述の特許文献1があるが、光ドライブが劣化することは考慮されておらず、また前述の光ディスクライブラリ装置のように複数の光ドライブと複数の光ディスクの任意の組合せで記録再生することも考慮されていなかった。
【0008】
本発明の目的は、光ディスクライブラリ装置において光ドライブの劣化の状態を評価可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を解決するため、本発明では一例として特許請求の範囲記載の構成を用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の目的によれば、光ディスクライブラリ装置において光ドライブの劣化の状態を評価可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例における光ディスク及び光ドライブの劣化評価処理のフローチャート
【図2】第1実施例における光ディスクライブラリ装置のブロック図
【図3】第1実施例における光ドライブのブロック図
【図4】第1実施例における光ディスクの構成図
【図5】第1実施例における光ドライブ監視データベースのレコードフォーマット
【図6】第1実施例における光ディスク監視データベースのレコードフォーマット
【図7】第2実施例における光ディスク及び光ドライブの劣化評価処理のフローチャート
【図8】第3実施例における光ドライブの劣化評価処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従う光ディスクライブラリ装置の実施例を、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の第1の実施例としての光ディスクライブラリ装置の構成ならびに動作を、図面を参照しながら詳述する。
【0014】
図2は第1実施例における光ディスクライブラリ装置のブロック図である。本実施例の光ディスクライブラリ装置10は、ライブラリ制御部11と、チェンジャー機構12と、光ディスク40を複数収納するラック13と、ホストインタフェース14と、ドライブインタフェース15と、光ドライブ監視部16と、光ディスク監視データベース17と、光ドライブ監視データベース18と、複数の光ドライブ30とで構成される。
【0015】
光ディスクライブラリ装置10は、ホストインタフェース14を介してホストコンピュータ20と接続され、記録や再生といった各種のコマンドと記録するデータを受信し、コマンドの実行結果と再生したデータを送信する。
【0016】
ラック13は複数のスロットを備えており、各スロットには1枚ずつ光ディスク40を収納することができる。
【0017】
ライブラリ制御部11は光ディスクライブラリ装置10の動作全般を制御する機能を備えており、チェンジャー機構12を動作させて、ラック13から所定の光ディスク40を取り出し、所定の光ドライブ30まで搬送してロードする。あるいは逆に、所定の光ドライブ30からイジェクトされた光ディスク40を、ラック13の所定のスロットに搬送して収納する。また、ドライブインタフェース15を介して各光ドライブ30と接続されており、所定の光ドライブ30に対して記録や再生といった各種のコマンドと記録するデータを送信し、コマンドの実行結果と再生したデータおよび後述の自己監視情報を受信する。また、光ドライブ監視部を介して各光ドライブ30と各光ディスク40の劣化状態を監視し、劣化状態に応じた処理を行う。
【0018】
光ドライブ監視部16は、ライブラリ制御部11から受け取った自己監視情報に基づいて、ラック13に収納されている全ての光ディスク40の劣化状態と、全ての光ドライブ30の劣化状態を評価し、管理する機能を備えている。また、評価結果をライブラリ制御部11に渡す。
【0019】
光ディスク監視データベース17は光ドライブ監視部16が各々の光ディスク40の状態を管理するためのデータベースであり、同様に、光ドライブ監視データベース18は光ドライブ監視部16が各々の光ドライブ30の状態を管理するためのデータベースである。いずれのデータベースも光ドライブ監視部16によってレコードの更新と読み出しが行われる。
【0020】
図3は第1実施例における光ドライブ30のブロック図である。本実施例の光ドライブ30は、ドライブ制御部31と、光ピックアップ32と、ドライブメモリ33と、コントローラインタフェース34と、自己監視情報記録部35と、ディスク回転機構50と、スライダ機構51と、サーボ制御部52と、サーボ信号生成部53と、再生信号生成部54と、再生信号2値化部55と、エンコード部56と、デコード部57とで構成される。
【0021】
ドライブ制御部31は、光ドライブ30の動作全般を制御する。即ち、サーボ制御部52を介して、ディスク回転機構50に装着された光ディスク40の回転制御を行い、スライダ機構51を駆動して光ピックアップ32を光ディスク40の半径方向に変位させるシーク制御及び送り制御を行い、光ピックアップ32の対物レンズを駆動してフォーカス制御およびトラッキング制御を行う。
【0022】
また、ドライブ制御部31は、光ピックアップ32のレーザ発光を制御する。記録時には、コントローラインタフェース34を介してライブラリ制御部11から送られてきた記録データ信号を、エンコード部56で所定の変調規則によるNRZI信号に変換してドライブ制御部31に供給し、ドライブ制御部31はこのNRZI信号に対応した記録ストラテジ(発光パルス列)に変換し、所定の光強度およびパルス列でレーザを発光させる。
【0023】
光ディスク40からの反射光量は光ピックアップ32の光検出器で受光されて電気信号に変換され、サーボ信号生成部53と再生信号生成部54に送られる。サーボ信号生成部53は、装着された光ディスク40に好適な検出方法で各種のサーボ信号を選択して生成し、ドライブ制御部31に供給する。サーボ信号には少なくともフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号とが含まれる。ドライブ制御部31は、これらサーボ信号に基づき、前述したようにサーボ制御部52を介して対物レンズを駆動し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボを動作させる。
【0024】
再生信号生成部54は、波形等化回路とA/Dコンバータとを備えており、光ピックアップ32から供給されたアナログの再生信号に対して、所定の波形等化の後、標本化および量子化を行ってデジタル信号に変換し、再生信号2値化部55に供給する。
【0025】
再生信号2値化部55は、トランスバーサルフィルタと、ビタビ復号回路を備える。再生信号生成部54から供給されたデジタル信号はトランスバーサルフィルタで所定のPRクラスに等化され、ビタビ復号回路で最尤復号を行って、この等化波形を所定の変調規則に基づくNRZI信号に変換する。再生信号2値化手段55で生成されたNRZI信号は、デコード部57によってデータの訂正処理などを行って再生データ信号に変換され、コントローラインタフェース34を介してライブラリ制御部11に送られる。また、デコード部57は訂正処理時に訂正を行った回数を通知する機能を備えており、再生エラーレートを測定することができる。
【0026】
また、ドライブ制御部31は、自己監視情報記録部35が、光ドライブ30の自己監視情報を収集し、各自己監視情報に関するイベントが発生する毎にドライブメモリ33に記録するように制御する。自己監視情報は、光ドライブ30のパワーオン時間、レーザ発光時間、レーザ発光微分効率(I−L特性の傾き)、再生ブロック数、記録ブロック数、光ピックアップ32のシーク距離など、光ドライブの使用履歴や状態及び性能に関する各種データであり、特に本実施例においては、後述のディスク監視エリア46の再生エラーレートを含む。詳細な説明は省略するが、自己監視情報としては光ドライブ30の動作中に随時取得するものと、上位からのテスト実行コマンドに応じて所定のテストを実行することにより取得するものとがある。
【0027】
図4は第1実施例における光ディスク40の構成図である。説明を簡略にするため、SL(Single Layer)のBD−Rを一例として示している。
光ディスク40は、大きく分けて、ディスク情報などの各種情報が記録されているリードインエリア41、データゾーンエリア、リードアウトエリア44の3つの領域で構成されており、更にデータゾーンエリアは、内周側のスペアエリア42とユーザデータを記録するユーザデータエリア43と外周側のスペアエリア42で構成される。
【0028】
リードインエリア41には1回の記録更新ごとに記録状態の管理情報を更新して記録するディスク管理エリア45を備える。また内周側のスペアエリア42にディスク監視エリア46を備える。ディスク監視エリア46には、光ディスク40が初めていずれかの光ドライブ30にロードされる際に、初期化処理の一部として所定のデータを記録しておく。なお、本実施例においては、スペアエリア42に配置される交替エリアを分断しないように、ディスク監視エリア46をユーザデータエリア43に近い側に配置する。
【0029】
第1実施例の光ディスクライブラリ装置が光ディスクと光ドライブの劣化状態を評価する処理動作について説明する。図1は第1実施例における光ディスク及び光ドライブの劣化評価処理のフローチャートである。
【0030】
ライブラリ制御部11はホストコンピュータ20から再生命令を受け取ると、再生処理の実行に併せて劣化評価処理を実施する。ここでは光ディスク40のうち、ディスクIDがMの光ディスクMに記録されているデータを再生する命令を受け取ったものとする。
【0031】
ライブラリ制御部11は光ディスクMを再生する光ドライブ30としてドライブIDがNの光ドライブNを選択し、S10において、チェンジャー機構12を駆動して光ディスクMを光ドライブNにロードする。S101において一連の再生処理を実施し、光ディスクMのユーザデータエリア43からユーザデータを再生する。
【0032】
S11において、光ドライブNは光ディスクMのディスク監視エリア46を再生し、再生エラーレートを測定する。測定するデータを固定することにより、データの記録品質のばらつきによる再生エラーレートのばらつきを排除することができる。ところで、記録型の光ディスクにおいては再生回数に応じて記録データの劣化が進行するが、ディスク監視エリア46を毎回再生することでユーザデータよりも常に再生回数が多いと考えられる。即ち、ディスク上のデータのうち最も劣化が早く、また、劣化が見られてもユーザデータ等はまだ十分な再生品質で再生可能であることが期待できるので、ディスクの劣化状態を評価するのに適している。なお、再生エラーレートの測定はS101の一連の再生処理の後に実施すると、読み出し開始時間の増加を抑制することができる。
【0033】
S12において、ライブラリ制御部11は光ドライブNから光ディスクMをイジェクトさせる。イジェクトされた光ディスクMはチェンジャー機構12によりラック13に搬送される。
【0034】
S13において、光ドライブNは自己監視情報を更新してライブラリ制御部11に送信し、ライブラリ制御部11は受け取った自己監視情報を光ドライブ監視部16に渡す。なお、自己監視情報は光ドライブNが動作している間に情報の種類に応じたイベントが発生する毎に、ドライブメモリに記録して更新するものである。
【0035】
S14において、光ドライブ監視部16は自己監視情報のうちディスク監視エリア46の再生エラーレートを所定の閾値と比較する。
【0036】
再生エラーレートのほうが小さい場合には、光ドライブ監視部16はS15において劣化警告フラグをオフに設定し、S23において光ディスク監視データベース17と光ドライブ監視データベース18にそれぞれ劣化警告フラグを含む以下に説明するレコードを追加する。ただし、劣化警告フラグは光ドライブMと光ディスクNとの組合せにおいてS11にて測定した再生エラーレートに対応するものであり、光ディスク監視データベース17に記録されるレコードの劣化警告フラグと、光ドライブ監視データベース18に記録されるレコードの劣化警告フラグとは同一の内容である。
【0037】
図5は第1実施例における光ドライブ監視データベースのレコードフォーマットであり、ドライブIDと、ディスク監視エリア46の再生エラーレートを含む種々の自己監視情報と、劣化警告フラグで構成されている。自己監視情報としては、パワーオン時間など、ドライブの状態と関連のある項目である。また、自己監視情報取得時のディスクIDもレコードに含む。
【0038】
一方、図6は第1実施例における光ディスク監視データベースのレコードフォーマットであり、ディスクIDと、ディスク監視エリア46の再生エラーレートを含む種々の自己監視情報と、劣化警告フラグで構成されている。自己監視情報としては、再生時間など、ディスクの状態と関連のある項目である。また、自己監視情報取得時のドライブIDもレコードに含む。
【0039】
なお、レコードとして、累計時間やローディング回数などの累積データを記録することが可能ある。その場合には、光ドライブ監視部16はレコードを記録するに先立って、光ディスク監視データベース17から光ディスクMに関する前回のレコードを取得し、今回受け取った自己監視情報に所定の演算を実施する。同様に、光ドライブ監視データベース18から光ドライブNに関する前回のレコードを取得し、今回受け取った自己監視情報に所定の演算を実施する。
【0040】
次いで、S24において、光ディスク監視部16は光ディスクMと光ドライブNの各々の劣化状態の評価結果をライブラリ制御部11に渡して劣化状態評価処理を終了する。
【0041】
前述のS14において、ディスク監視エリア46の再生エラーレートが所定の閾値より大きい場合には、光ディスク監視部16はS16において劣化警告フラグをオンに設定する。
【0042】
次に、光ディスク監視部16は、S17において光ディスク監視データベース17から光ディスクMに関する前回のレコードを読み出し、S18において光ドライブ監視データベース18から光ドライブNに関する前回のレコードを読み出す。ただし、光ディスクMに関する前回のレコードが光ドライブNに対するレコードの場合には、光ドライブN以外に対するレコードに遡って読み出し、また、光ドライブNに関する前回のレコードが光ディスクMに対するレコードの場合には、光ディスクM以外に対するレコードに遡って読み出す。
【0043】
光ディスク監視部16はS17とS18において読み出した光ディスクMに関する過去のレコードと光ドライブNに関する過去のレコードの劣化警告フラグを確認し、S19において光ディスクMに関する前回のレコードのみ劣化警告フラグがオンである場合には、S20において光ディスクMが劣化状態であると判定する。
【0044】
またS21において光ドライブNに関する前回のレコードのみ劣化警告フラグがオンである場合には、S22において光ドライブNが劣化状態であると判定する。
【0045】
即ち、光ディスクMと光ドライブNの組合せにおいてディスク監視エリアの再生エラーレートが閾値を超える場合に、光ディスクMが光ドライブNを除くいずれかの光ドライブ30で良好に再生されるのであれば光ドライブNが劣化状態であると判定し、逆に光ドライブNが光ディスクMを除くいずれかの光ディスク40を良好に再生できるのであれば光ディスクMが劣化状態であると判定する。
【0046】
光ディスクMに関する前回のレコードと光ドライブNに関する前回のレコードの劣化警告フラグが共にオンである場合については、劣化状態と判定された光ディスク40及び光ドライブ30を使用しないことにより、概ね排除することができる。万一、共にオンであった場合にも、詳細な説明は省略するが、後述の第2実施例に準じて過去に劣化状態と判定されていない光ディスク40と光ドライブ30を使用することで、いずれの劣化かを判定することが可能である。
【0047】
以下、前述のとおり、S23において光ディスク監視データベース17と光ドライブ監視データベース18にそれぞれレコードを追加し、S24において光ディスクMと光ドライブNの各々の劣化状態の評価結果をライブラリ制御部11に渡して劣化状態評価処理を終了する。
【0048】
なお、本実施例においては特別に設けたディスク監視エリア46の再生エラーレートに基づいて劣化状態を判定する例を示したが、これに限らず、ディスクの再生のたびに同じエリアを再生すれば、同様に、記録品質のばらつきによる再生エラーレートのばらつきを排除する効果が得られる。例えば、ディスク管理エリア45の再生エラーレートに基づいてもよく、その場合、ディスク監視エリア46を交替領域あるいはユーザデータ領域に割りあてて各領域を拡大することができる。
【0049】
また、光ディスク及び光ドライブの劣化状態を判定するにあたっては、再生エラーレートのみに基づくのではなく、他の自己監視情報を利用し、例えばパワーオン時間からパワーオン累計時間を計算して所定の時間を越えたら劣化と判断する処理等と組み合わることが可能である。
【0050】
また、本実施例においては再生エラーレートに基づいて劣化状態を判定する例を示したが、これに限らず、再生信号の評価指標として一般的なジッタやSAM(Sequenced Amplitude Margin)、MLSE(Maximum Likelihood Sequence Error)等で代替が可能である。
【0051】
また、光ドライブ監視データベース17のレコードフォーマットにドライブの劣化状態を示すドライブ劣化フラグを追加し、光ドライブ30を劣化状態と判定するとドライブ劣化フラグをオンとしてレコードを記録するように構成することで、最新のレコードを参照することで即座に当該の光ドライブが劣化状態か否かの確認が可能となる。同様に、光ディスク監視データベース18のレコードフォーマットにディスクの劣化状態を示すディスク劣化フラグを追加し、光ディスク40を劣化状態と判定するとディスク劣化フラグをオンとしてレコードを記録するように構成することで、最新のレコードを参照することで即座に当該の光ドライブが劣化状態か否かの確認が可能となる。
【0052】
以上に述べたように、本発明の第1実施例によれば、光ディスクライブラリ装置において、光ディスク及び光ドライブの劣化の状態を各々評価することが可能である。
【実施例2】
【0053】
図7は本発明の第2の実施例における光ディスク及び光ドライブの劣化評価処理のフローチャートである。なお、光ディスクライブラリ装置と光ドライブ及び光ディスクの構成は第1実施例と同様であり、説明を省略する。本実施例においては、劣化警告フラグを持たずに構成する点が第1実施例と異なる。
【0054】
ライブラリ制御部11はホストコンピュータ20から再生命令を受け取ると、再生処理の実行に併せて劣化評価処理を実施する。ここでは光ディスク40のうち、ディスクIDがMの光ディスクMに記録されているデータを再生する命令を受け取ったものとする。
【0055】
ライブラリ制御部11は光ディスクMを再生する光ドライブ30としてドライブIDがNの光ドライブNを選択し、S10において、チェンジャー機構12を駆動して光ディスクMを光ドライブNにロードする。S101において一連の再生処理を行い、光ディスクMのユーザデータエリア43から所定のユーザデータを再生する。
【0056】
S11において、光ドライブNは光ディスクMのディスク監視エリア46を再生し、再生エラーレートを測定する。
【0057】
光ドライブNが一連の再生処理を実施した後、S12において、ライブラリ制御部11は光ドライブNから光ディスクMをイジェクトさせる。イジェクトされた光ディスクMはチェンジャー機構12によりラック13に搬送される。
【0058】
S13において、光ドライブNは自己監視情報を更新してライブラリ制御部11に送信し、ライブラリ制御部11は受け取った自己監視情報を光ドライブ監視部16に渡す。ここまでは第1実施例と同様である。
【0059】
次に、S23において、光ドライブ監視部16は光ディスク監視データベース17と光ドライブ監視データベース18にそれぞれレコードを追加する。なお、光ディスク監視データベース17のレコードフォーマットは、劣化警告フラグを除いて、図6に示した第1実施例におけるフォーマットに準じる。また、光ドライブ監視データベース18のレコードフォーマットは、劣化警告フラグを除いて、図5に示した第1実施例におけるフォーマットに準じる。
【0060】
S14において、光ドライブ監視部16は自己監視情報のうちディスク監視エリア46の再生エラーレートを所定の閾値と比較する。
【0061】
再生エラーレートのほうが小さい場合には、S24において、光ディスク監視部16は光ディスクMと光ドライブNの各々の劣化状態の評価結果をライブラリ制御部11に渡して劣化状態評価処理を終了する。
【0062】
S14における比較の結果、再生エラーレートのほうが大きい場合には、光ディスク監視部16はライブラリ制御部11に通知する。S25において、ライブラリ制御部11は、光ドライブ監視部16を介して光ディスク監視データベース17を参照し、光ディスクM以外の複数の光ディスク40のうち、ディスク監視エリアにデータが記録されており、且つ、過去に劣化状態と判定されていない所定の光ディスクであるディスクIDがPの光ディスクPを選択し、チェンジャー機構12を駆動して光ドライブNにロードする。
【0063】
S26において、光ドライブNは光ディスクPのディスク監視エリア46を再生し、再生エラーレートを測定し、S27において、ライブラリ制御部11は光ドライブNから光ディスクPをイジェクトさせる。イジェクトされた光ディスクPはチェンジャー機構12によりラック13に搬送される。
【0064】
S13において、光ドライブNは自己監視情報を更新してライブラリ制御部11に送信し、ライブラリ制御部11は受け取った自己監視情報を光ドライブ監視部16に渡す。
【0065】
S23において、光ドライブ監視部16は光ディスク監視データベース17と光ドライブ監視データベース18にそれぞれのレコードを追加する。
【0066】
再び、S14において、光ドライブ監視部16は自己監視情報のうちディスク監視エリア46の再生エラーレートを所定の閾値と比較する。ここで、再生エレーレートのほうが大きい場合は、S22において光ドライブNが劣化状態であると判定する。
【0067】
次に、S28において、ライブラリ制御部11は、光ドライブ監視部16を介して光ドライブ監視データベース18を参照し、光ドライブN以外の複数の光ドライブ30のうち、過去に劣化状態と判定されていない所定の光ドライブであるドライブIDがQの光ドライブQを選択し、チェンジャー機構12を駆動して光ディスクMを光ドライブQにロードする。
【0068】
S29において、光ドライブQは光ディスクMのディスク監視エリア46を再生し、再生エラーレートを測定し、S30において、ライブラリ制御部11は光ドライブQから光ディスクMをイジェクトさせる。イジェクトされた光ディスクMはチェンジャー機構12によりラック13に搬送される。
【0069】
S13において、光ドライブQは自己監視情報を更新してライブラリ制御部11に送信し、ライブラリ制御部11は受け取った自己監視情報を光ドライブ監視部16に渡す。
【0070】
S23において、光ドライブ監視部16は光ディスク監視データベース17と光ドライブ監視データベース18にそれぞれのレコードを追加する。
【0071】
再び、S14において、光ドライブ監視部16は自己監視情報のうちディスク監視エリア46の再生エラーレートを所定の閾値と比較する。ここで、再生エレーレートのほうが大きい場合は、S20において光ディスクMが劣化状態であると判定する。
【0072】
S24において、光ディスク監視部16は光ディスクMと光ドライブNの各々の劣化状態の評価結果をライブラリ制御部11に渡して劣化状態評価処理を終了する。
【0073】
なお、光ディスクPを選択するにあたり、劣化状態でないと判断された時点から現在までの期間は短いほど望ましい。同様に、光ドライブQを選択するにあたり、劣化状態でないと判断された時点から現在までの期間は短いほど望ましい。該当する光ディスクPあるいは光ドライブQがない場合には、別途、劣化状態でない光ディスク40と光ドライブ30を探す処理が必要になる。詳細は省略するが、一例として、任意の光ディスクPと光ドライブQで、ディスク監視エリアの再生エラーレートを測定し、閾値以下であることが確認できれば使用する。確認できなければ組合せを変更して繰り返す。
【0074】
以上に述べたように、本発明の第2実施例によれば、光ディスクライブラリ装置において、光ディスク及び光ドライブの劣化の状態を各々評価することが可能である。特に劣化状態を検出した直後に、光ディスクと光ドライブのいずれの劣化かを切り分けることが可能であり、前回測定時からの経年劣化の影響を排除することができる。
【実施例3】
【0075】
図8は本発明の第3の実施例における光ドライブの劣化評価処理のフローチャートである。なお、光ディスクライブラリ装置と光ドライブの構成は第1実施例と同様であり、説明を省略する。本実施例においては、ホストコンピュータ20が光ディスクライブラリ装置に所定の光ドライブ30の劣化状態を評価する命令を発行する点、光ディスク40のうち所定の1枚が光ドライブの劣化状態評価用のテストディスクである点が、第1実施例および第2実施例と異なる。
【0076】
ライブラリ制御部11はホストコンピュータ20から劣化評価命令を受け取ると、劣化評価処理を実施する。ここでは光ドライブNを評価する命令を受け取ったものとする。
【0077】
ライブラリ制御部11は、S31において、チェンジャー機構12を駆動してテストディスクを光ドライブNにロードする。テストディスクは所定のディスク監視領域46を備えた再生専用ディスクであり、ディスク監視領域46には正常な光ドライブ30で再生すると再生エラーレートが劣化状態を判定する所定の閾値よりも小さくなる評価用のデータが記録されている。
【0078】
S32において、光ドライブNはテストディスクのディスク監視エリア46を再生し、再生エラーレートを測定する。再生専用の光ディスクを用いることにより、前述の再生回数に応じた記録データの劣化を考慮することなく測定が可能である。
【0079】
S33において、ライブラリ制御部11は光ドライブNからテストディスクをイジェクトさせる。イジェクトされたテストディスクはチェンジャー機構12によりラック13に搬送される。
【0080】
S13において、光ドライブNは自己監視情報を更新してライブラリ制御部11に送信し、ライブラリ制御部11は受け取った自己監視情報を光ドライブ監視部16に渡す。
【0081】
S34において、光ドライブ監視部16は光ドライブ監視データベース18にレコードを追加する。光ドライブ監視データベース18のレコードフォーマットは、第2実施例と同様、劣化警告フラグを除いて、図5に示した第1実施例におけるフォーマットに準じる。
【0082】
次いで、S14において、光ドライブ監視部16は自己監視情報のうちディスク監視エリア46の再生エラーレートを所定の閾値と比較する。ここで、再生エレーレートのほうが大きい場合は、S22において光ドライブNが劣化状態であると判定する。特定のテストディスクで評価するため、光ディスクと光ドライブのいずれの劣化かを切り分ける必要なく、光ドライブの劣化を判定することができる。
【0083】
S24において、光ディスク監視部16は光ドライブNの劣化状態の評価結果をライブラリ制御部11に渡して劣化状態評価処理を終了する。
【0084】
詳細な説明は省略するが、光ディスク40の劣化状態評価については、劣化状態ではないことが既知の光ドライブ30でディスク監視エリア46を再生し、測定した再生エラーレートに基づいて判定することが可能である。
【0085】
以上に述べたように、本発明の第3実施例によれば、光ディスクライブラリ装置において、特に、再生専用のテストディスクを用いることで光ディスクと光ドライブのいずれの劣化かを切り分け処理を簡略化し、簡便に光ディスク及び光ドライブの劣化の状態を各々評価することが可能である。
【0086】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであって、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0087】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【0088】
なお、本発明は例えば以下に説明する実施例も採用できる。
【0089】
光ディスクライブラリ装置10において、ユーザ等が光ディスク40を追加・変更したり、光ドライブ30を追加・変更した場合には、上述した光ディスクや光ドライブの評価閾値および/または評価指標を、光ディスクや光ドライブに応じて異ならせることができる。この光ディスクや光ドライブに応じた評価閾値および/または評価指標については、予め光ディスクライブラリのファームウェアに登録しておくことで品質評価が効率的にできる。
【符号の説明】
【0090】
10・・・光ディスクライブラリ装置、11・・・ライブラリ制御部、14・・・ホストインタフェース、15・・・ドライブインタフェース、17・・・光ディスク監視データベース、18・・・光ドライブ監視データベース、32・・・光ピックアップ、33・・・ドライブメモリ、34・・・コントローラインタフェース、40・・・光ディスク、50・・・ディスク回転機構、51・・・スライダ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに記録再生が可能な複数の光ドライブと、前記複数の光ドライブを制御する制御部と、前記複数の光ドライブの劣化状態を監視する監視部と、を備え、
前記制御部は、
第1の光ドライブが第1の光ディスクの所定の領域のデータを再生して第1の再生評価指標を測定し、前記監視部が所定の閾値と比較し、
前記第1の再生評価指標が前記閾値に対して悪い場合に、
前記第1の光ドライブが所定の再生品質が確認されている第2の光ディスクの前記所定の領域のデータを再生して第2の再生評価指標を測定し、前記監視部が前記閾値と比較し、前記第2の再生評価指標が前記閾値に対して悪いと前記第1の光ドライブが劣化状態であると判定し、
所定の再生性能が確認されている第2の光ドライブが前記第1の光ディスクの前記所定の領域のデータを再生して第3の再生評価指標を測定し、前記監視部が所定の閾値と比較し、前記第3の再生評価指標が前記閾値に対して悪いと前記第1の光ディスクが劣化状態であると判定するように制御することを特徴とする光ディスクライブラリ装置。
【請求項2】
第1の光ドライブで第1の光ディスクの所定の領域のデータを再生して第1の再生評価指標を測定し、所定の閾値と比較し、
前記第1の再生評価指標が前記閾値に対して悪い場合に、
前記第1の光ドライブで所定の再生品質が確認されている第2の光ディスクの所定の領域のデータを再生し第2の再生評価指標を測定して前記閾値と比較した結果に基づき、前記第2の再生評価指標が前記閾値に対して悪いと前記第1の光ドライブが劣化状態であると判定し、
所定の再生性能が確認されている第2の光ドライブで前記第1の光ディスクの所定の領域のデータを再生し第3の再生評価指標を測定して所定の閾値と比較した結果に基づき、前記第3の再生評価指標が前記閾値に対して悪いと前記第1の光ディスクが劣化状態であると判定することにより光ドライブの劣化を評価する処理を含むこと、を特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項3】
光ディスクに記録再生が可能な複数の光ドライブと、前記複数の光ドライブを制御する制御部と、前記複数の光ドライブの劣化状態を監視する監視部と、を備え、
前記複数の光ドライブは、
前記光ディスクの所定の領域のデータを再生して再生評価指標を測定可能な自己監視情報記録部を備え、
前記制御部は、
所定の光ドライブが所定の再生品質が確認されている所定の光ディスクの前記再生評価指標を測定し、前記監視部が所定の閾値と比較して前記再生評価指標が前記閾値に対して悪いと前記光ドライブが劣化状態であると判定するように制御することを特徴とする光ディスクライブラリ装置。
【請求項4】
前記再生品質が確認されている所定の光ディスクは、再生専用光ディスクであることを特徴とする請求項3に記載の光ディスクライブラリ装置。
【請求項5】
所定の光ドライブで所定の再生品質が確認されている所定の光ディスクの再生評価指標を測定し、前記監視部が所定の閾値と比較して前記再生評価指標が前記閾値に対して悪いと前記光ドライブが劣化状態であると判定することにより光ドライブの劣化を評価する処理を含むこと、を特徴とする光ディスク再生方法。
【請求項6】
前記再生品質が確認されている所定の光ディスクは、再生専用光ディスクであることを特徴とする請求項5に記載の光ディスク再生方法。
【請求項7】
光ディスクに記録再生を行う記録再生部と、該記録再生部を制御する制御部と、自己監視情報を記録する自己監視情報記録部と、メモリと、上位装置との情報の送受信を行うインタフェースと、を備え、
前記制御部は、
前記光ディスクが装着されると前記記録再生部により前記光ディスクの所定の領域のデータを再生し、
再生評価指標を測定し、
該再生評価指標を前記自己監視情報記録部により前記メモリに記録し、上位からの命令に応じて前記再生評価指標を出力するように制御することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−208981(P2012−208981A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73872(P2011−73872)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】