説明

光ディスク装置、チルト補正方法、プログラム

【課題】未記録領域で行われるチルト補正の精度向上を図る。
【解決手段】再生信号に基づく評価値を最良とするチルト調整値とプッシュプル信号を最大とするチルト調整値との相違情報(例えば比率情報)を予め求めておき、未記録領域ではプッシュプル信号を最大とチルト調整値を探索し、これを上記相違情報により校正してチルト補正を行う。このとき、上記相違情報を求めたときと未記録領域でのチルト探索時とでそれぞれ設定されるフォーカスバイアス値が異なると、正確なチルト補正とすることができない。このため、上記相違情報を、実際に未記録領域でチルト探索する際のフォーカスバイアス値の探索設定手法と同手法で求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で求めておくようにする。これにより、相違情報を用いたチルト補正を、より精度良く行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、光ディスク記録媒体についての記録/再生を行う光ディスク装置とそのチルト補正方法、及び光ディスク装置において実行されるべきプログラムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2004−234783号公報
【背景技術】
【0003】
例えばCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-lay Disc:登録商標)などの光ディスク記録媒体(以下、光ディスクとも表記)が広く普及している。
【0004】
光ディスクについて記録や再生を行う光ディスク装置では、光ディスクの記録面に対するレーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトを補正する機能を具備するものがある。チルトに伴い生じるコマ収差によりサーボや記録/再生性能の低下が生じることを防止するためである。
【0005】
チルトの発生は、主として光ディスクの反り等に起因したものである(ディスクチルト)。光ディスク装置では、このようなディスクチルトの補正を、一般的に対物レンズを傾ける(つまり当該対物レンズを介して照射されるレーザ光の光軸を傾ける)ことで行うようにされる。
【0006】
ここで、チルト補正を行うにあたっては、実際に対物レンズを傾けて複数のチルト位置で信号検出を行った結果に基づき、最適とされる補正量(チルト調整値)を求めるということが行われる(最適チルト調整値の探索)。
すなわち、このような最適チルト調整値の探索結果に基づくチルト補正とすることで、実際の光学ピックアップと光ディスクの組み合わせに応じた適切なチルト補正を実現できる。
【0007】
このとき、再生専用のROMディスク等であれば、上記のような最適チルト調整値の探索時の評価指標として再生信号に基づく評価値を使用することができる。
しかしながら、記録可能型ディスクとして、例えば未記録ディスク(ブランクディスク)や一部のみが記録済みのディスクにおいては、探索時の評価指標として再生信号に基づく評価指標を使用できない場合がある。
このため記録可能型ディスクについてのチルト探索時には、プッシュプル信号やトラッキングエラー信号の振幅を評価指標として用いるようにされている(例えば上記特許文献1を参照)。
【0008】
但し、再生信号に基づく評価指標を用いた場合と比較すると、プッシュプル信号やトラッキングエラー信号振幅を用いる場合は、最適チルト調整値の探索精度が低下する傾向となる。
この点を考慮し、上記特許文献1では、プッシュプル信号やトラッキングエラー信号振幅を用いるチルト調整値の探索精度の向上を図るための技術を提案している。
具体的に、この特許文献1に記載の発明では、既記録区間を利用して再生信号に基づく評価値を用いた最適チルト調整値の探索と、プッシュプル信号振幅を用いた最適チルト調整値の探索とを行い、これらの探索で求まったチルト補正値(S1,S2)の差分(ΔS)を計算しておくものとしている。その上で、記録開始位置(未記録領域)では、プッシュプル信号振幅を用いた最適チルト調整値の探索を行い、この探索で求まったチルト調整値(S3)を上記差分を用いて校正した上で、校正後のチルト調整値によりチルト補正を実行するものとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来手法では、チルト調整値の探索時に設定するフォーカスバイアス値については考慮されていない。
チルト調整値(対物レンズ傾け量)に対するプッシュプル信号振幅の変化特性は、その際に設定されているフォーカスバイアス値によって変化するものである。これは、対物レンズを傾けることに起因して、その傾け量に応じたコマ収差以外の他の収差(特に非点収差等)が発生するためである。
従って、上記従来手法において、差分ΔSを求めたときのフォーカスバイアス値と記録開始位置での最適チルト調整値探索時のフォーカスバイアス値とが大きく異なるときには、記録開始位置で求めたチルト補正値に差分ΔSを与えたとしても、正確なチルト補正とすることができないものとなる。
【0010】
本技術はかかる問題点に鑑み為されたもので、未記録領域でのチルト補正の精度向上を図ることをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため本技術では、光ディスク装置として以下のように構成することとした。
つまり、本技術の光ディスク装置は、光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部を備える。
また、上記対物レンズを傾けるチルト調整部を備える。
また、上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき上記対物レンズについてのフォーカスサーボ制御を行うフォーカスサーボ制御部を備える。
また、上記フォーカスサーボ制御部のフォーカスサーボ制御に伴い形成されるフォーカスサーボループにフォーカスバイアスを付与するフォーカスバイアス付与部を備える。
また、上記光照射/受光部がトラッキング方向の分割受光を行って得られる各受光信号に基づいて、これら受光信号の誤差を表すトラッキング方向誤差信号を生成するトラッキング方向誤差信号生成部を備える。
また、上記チルト調整部に異なるチルト調整値を設定したときに得られる上記トラッキング方向誤差信号をそれぞれ取得した結果に基づき、上記トラッキング方向誤差信号を最大としたチルト調整値を求めるチルト調整値探索処理と、
上記光ディスク記録媒体に記録された信号の再生信号に基づいて生成される信号品質評価値を最良とするチルト調整値と、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との相違を表す相違情報であって、上記チルト調整値探索処理の実行時に上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス値についての探索設定手法と同じ探索設定手法により求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で予め求められた上記相違情報に基づいて、上記チルト調整値探索処理で求めた上記チルト調整値を校正するチルト調整値校正処理と、
上記チルト調整値校正処理により得たチルト調整値に基づき、上記チルト調整部によるチルト調整を実行させる調整制御処理と
を実行する制御部を備えるものである。
【0012】
上記のように本技術では、トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値の探索(チルト調整値探索処理)で求めたチルト調整値を校正するための相違情報(上記信号品質評価値を最小とするチルト調整値とトラッキング方向誤差信号振幅を最大とするチルト調整値との相違情報)を、当該チルト調整値探索処理を行う際に設定されるフォーカスバイアス値の探索設定手法で探索設定したフォーカスバイアス値の設定条件下で予め求めておくものとしている。
つまりこれにより、従来のようにチルト調整値探索処理の際に設定されるフォーカスバイアス値と差分(ΔS)を求めたときに設定されるフォーカスバイアス値とが大きく異なる値となってしまう事態の防止を図ることができる。
この結果、トラッキング方向誤差信号を用いた未記録領域におけるチルト補正を、従来よりも精度良く行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、未記録領域におけるチルト補正を従来よりも精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態としての光ディスク装置の内部構成を示した図である。
【図2】フォーカスバイアスの設定値ごとの、対物レンズ傾け角度に対するMPP信号振幅の変化特性(及びiMLSEの変化特性)をグラフ化して示した図である。
【図3】フォーカスバイアス値と対物レンズ傾け角度とに対するMPP信号振幅の変化特性(及びiMLSEの変化特性)とを等高線マップにより示した図である。
【図4】対物レンズ傾け角度に対するコマ収差、非点収差のそれぞれの変化特性のイメージを示した図である。
【図5】相違情報の具体的な導出例について説明するための図である。
【図6】第1の実施の形態としてのチルト補正手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態の光ディスク装置20の内部構成を示した図である。
【図8】フォーカスバイアス値に与えるべきオフセット値を求める具体的な手法について説明するための図である。
【図9】第2の実施の形態としてのチルト補正手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図10】第1の実施の形態の場合にフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整をiMLSEを評価指標として用いて行う際に設定されるべき校正用情報の導出手法について説明するための図である。
【図11】第1の実施の形態の変形例としてのチルト補正手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【図12】第2の実施の形態の場合にフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整をiMLSEを評価指標として用いて行う際に設定されるべきFBオフセット値の導出手法について説明するための図である。
【図13】第2の実施の形態としてのチルト補正手法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.第1の実施の形態>
[1-1.光ディスク装置の構成例]
[1-2.最適チルト調整値の探索とフォーカスバイアスとの関係]
[1-3.第1の実施の形態としてのチルト補正手法]
[1-4.処理手順]
<2.第2の実施の形態>
[2-1.光ディスク装置の構成例]
[2-2.第2の実施の形態としてのチルト補正手法]
[2-3.処理手順]
<3.変形例>
[3-1.第1の実施の形態の変形例]
[3-2.第2の実施の形態の変形例]
[3-3.その他]
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[1-1.光ディスク装置の構成例]

図1は、本技術に係る第1の実施の形態としての光ディスク装置(光ディスク装置1とする)の内部構成を示している。
先ず、図中の光ディスクDは、円盤状の光記録媒体(光ディスク記録媒体)とされる。ここで、光記録媒体とは、光の照射により情報の記録又は再生が行われる記録媒体を指す。
本例の光ディスク装置1は、光ディスクDとして、少なくともDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc:登録商標)に対応してその記録再生が可能に構成されているとする。
【0017】
光ディスクDは、光ディスク装置1に装填されると、図中のスピンドルモータ(SPM)2により回転駆動される。
スピンドルモータ2は、後述するスピンドルサーボ回路15より供給される駆動信号に従って光ディスクDを回転駆動する。
【0018】
光ディスク装置1には、上記のように回転駆動される光ディスクDに対して情報の記録/再生を行うためのレーザ光の照射、及び光ディスクDに照射された当該レーザ光の反射光(戻り光)を受光するための光学ピックアップOPが設けられる。
光学ピックアップOP内には、上記レーザ光の光源となるレーザダイオードが設けられる。また、上記レーザ光を光ディスクDに集光するための対物レンズ3、及び当該対物レンズ3を光ディスクDに接離する方向(フォーカス方向)及び半径方向(トラッキング方向)に変位可能に保持する2軸アクチュエータ4が設けられる。さらには、上記反射光を受光するためのフォトディテクタを有する受光部が設けられる。また、光学ピックアップOP内には、上記レーザ光を上記レーザダイオードから上記対物レンズに導き且つ上記反射光を上記フォトディテクタに導くための光学系も備えられる。
【0019】
また、光学ピックアップOP内には、チルト調整を行うためのチルト調整部5が設けられる。このチルト調整部5は、対物レンズ3を傾けるように構成されており、これにより光ディスクDの記録面に対するレーザ光の光軸の角度ずれとしてのチルトの調整を行う。
【0020】
また図示は省略したが、光学ピックアップOP内には、球面収差(SA)の補正を行うための球面収差補正機構が設けられており、当該球面収差補正機構が後述するSA補正ドライバ14により駆動されることで、対物レンズ3を介して光ディスクDに照射されるレーザ光についての球面収差補正が実現されるようになっている。
【0021】
また、光学ピックアップOP全体は、図中のスライド駆動部6によって、トラッキング方向にスライド移動可能に保持されている。
【0022】
光学ピックアップOP内における上記レーザダイオードは、レーザドライバ7により発光駆動される。記録時において、レーザドライバ7は、記録処理部8から入力される記録信号に従って上記レーザダイオードを発光駆動するようにされる。
記録処理部8は、入力された記録データに所定の記録変調符号化処理等を施して、上記記録信号を生成する。
【0023】
光学ピックアップOP内の上記受光部が上記反射光を受光して得られた受光信号は、マトリクス回路9に供給される。
マトリクス回路9は、上記フォトディテクタとしての複数の受光素子からの出力電流に対応して電流電圧変換回路、マトリクス演算/増幅回路等を備え、マトリクス演算処理により必要な信号を生成する。
例えば再生データを得るための高周波信号(再生データ信号:以下RF信号と表記)、サーボ制御のためのフォーカスエラー信号FE、及びトラッキングエラー信号TEを生成する。
ここで、フォーカスエラー信号FEは、光ディスクDに形成された記録面(反射面)に対する上記レーザ光の合焦位置の誤差を表す信号である。またトラッキングエラー信号TEは、上記記録面に形成されたトラック(ピット列又はグルーブ)に対する上記レーザ光の照射スポットのトラッキング方向における位置誤差を表す信号となる。本例の場合、当該トラッキングエラー信号TEとしてはDPP(Differential Push Pull)法によるトラッキングエラー信号(記録時)、又はDPD(Differential Phase Detection)法によるトラッキングエラー信号(再生時)を生成する。ここで、周知のようにDPP法によるトラッキングエラー信号は、MPP(Main Push Pull)信号とSPP(Side Push Pull)信号とに基づき生成されるものである。
また、マトリクス回路9は、グルーブのウォブリングに係る信号、すなわちウォブリングを検出する信号としてウォブル信号WSを生成する。
【0024】
マトリクス回路9が生成したRF信号は再生処理部10へ、フォーカスエラー信号FE及びトラッキングエラー信号TEはサーボ回路12へ、またウォブル信号WSはアドレスデコーダ11へそれぞれ供給される。
また、マトリスク回路9で生成されるMPP信号は、コントローラ17に対して供給される。
【0025】
再生処理部10は、RF信号に対して2値化処理を行うと共に、PLL(Phase Locked Loop)による再生クロック生成処理等を行う。
再生処理部10で得られた再生データ(2値化データ)は、不図示の復調回路に供給され、エラー訂正処理等を施されることになる。
なお、再生処理部10で再生された上記クロックについてはCLK-Pと表記する。
【0026】
また再生処理部10には、評価器10aが設けられる。
評価器10aは、RF信号の2値化処理で得られる2値化データについて、その再生性能(再生信号品質)についての評価指標となる評価値を測定(計算)する。本例の場合、評価器10aは当該評価値としてiMLSE (Maximum Likelihood Sequence Estimation)を生成するものとしている。
評価器10aにて生成された評価値は、コントローラ17を始めとした必要な各部に供給される。
【0027】
アドレスデコーダ11は、ウォブル信号WSに基づき、グルーブのウォブリングにより記録されたアドレス情報の検出を行う。検出されたアドレス情報はコントローラ17に供給される。
またアドレスデコーダ11は、ウォブル信号WSを用いたPLL処理でクロックCLK-Rを生成する。このクロックCLK-Rは、例えば記録時のエンコードクロック等として用いられる。
【0028】
サーボ回路12は、マトリクス回路9からのフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに基づき、フォーカス、トラッキング、スレッドの各種サーボ信号を生成し、サーボ動作を実行させる。すなわち、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEに応じてフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号をそれぞれ生成し、これらを2軸ドライバ13に与える。
2軸ドライバ13は、これらフォーカスサーボ信号、トラッキングサーボ信号に基づき生成したフォーカスドライブ信号、トラッキングドライブ信号により、2軸アクチュエータ4のフォーカスコイル、トラッキングコイルをそれぞれ駆動する。これにより、2軸アクチュエータ4→マトリクス回路9→サーボ回路12→2軸ドライバ13→2軸アクチュエータ4・・・によるフォーカスサーボループ及びトラッキングサーボループがそれぞれ形成される。
【0029】
また、サーボ回路12は、トラッキングエラー信号TEの低域成分として得られるスライドエラー信号や、コントローラ17からのアクセス実行制御などに基づいてスライドドライブ信号を生成し、スライド駆動部6を駆動する。スライド駆動部6は、図示は省略したが、光学ピックアップOPを保持するメインシャフト、スライドモータ、伝達ギア等による機構を有し、上記スライドドライブ信号に応じて上記スライドモータを駆動することで、光学ピックアップOPの所要のスライド移動を実現する。
【0030】
またサーボ回路12は、フォーカスサーボループに対してフォーカスバイアスを付与可能に構成される。具体的にサーボ回路12内には、マトリスク回路9から供給されるフォーカスエラー信号FEに対しフォーカスバイアス値を加算する加算器が備えられている。
サーボ回路12が加算すべきフォーカスバイアス値は、コントローラ17により指示される。
【0031】
スピンドルサーボ回路15は、スピンドルモータ2をCLV回転(線速度一定回転)させる制御を行う。
スピンドルサーボ回路15は、前述のアドレスデコーダ11がウォブル信号WSに対するPLL処理で生成したクロックCLK-Rを現在のスピンドルモータ2の回転速度情報として得、これを所定のCLV基準速度情報と比較することで、スピンドルエラー信号を生成する。
またデータ再生時においては、再生処理部10のPLL処理によって生成されるクロックCLK-Pが、現在のスピンドルモータ2の回転速度情報となるため、これを所定のCLV基準速度情報と比較することでスピンドルエラー信号を生成することもできる。
そしてスピンドルサーボ回路15は、スピンドルエラー信号に応じて生成したスピンドルドライブ信号を出力し、スピンドルモータ2のCLV回転を実行させる。
またスピンドルサーボ回路15は、コントローラ17からのスピンドルキック/ブレーキ制御信号に応じてスピンドルドライブ信号を発生させ、スピンドルモータ2の起動、停止、加速、減速などの動作も実行させる。
【0032】
SA補正ドライバ14は、コントローラ17から指示される球面収差補正値に基づき光学ピックアップOP内の球面収差補正機構を駆動する。
【0033】
また、光ディスク装置1には、チルトドライバ16が備えられている。
チルトドライバ16は、前述したチルト調整部5に対して対物レンズ3の傾け量を調整するための駆動信号を与えることで、チルト調整を実行させる。チルトドライバ16に対する対物レンズ3の傾け量(チルト調整値)の指示は、コントローラ17により行われる。
【0034】
以上で説明してきたサーボ系及び記録再生系等の各部の動作は、コントローラ17により制御される。コントローラ17は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えたマイクロコンピュータで構成され、例えば上記ROM等のメモリに格納されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、光ディスク装置1の全体制御を行う。
例えばコントローラ17は、サーボ回路12に指示を出すことにより、スライド駆動部6によって所定のアドレスに光学ピックアップOPを移動させる。またコントローラ17は、スピンドルサーボ回路15に対し前述したキック/ブレーキについての制御指示を行う。
【0035】
またコントローラ17に対しては、メモリ18が設けられる。
図示するようにこのメモリ18には、制御プログラム18a、校正用情報18bが記憶されている。
制御プログラム18aは、後の図6に示す処理をコントローラ17に実行させるためのプログラムとなる。
なお、校正用情報18bについては後に改めて説明する。
【0036】
[1-2.最適チルト調整値の探索とフォーカスバイアスとの関係]

ここで、本実施の形態においても、未記録領域における最適チルト調整値の探索にあたっては、従来と同様にプッシュプル信号を評価指標として用いる。具体的には、MPP信号を最適チルト調整値の探索時の評価指標として用いる。
【0037】
また、前述のようにMPP信号を最大とするチルト調整値をそのまま設定したのではチルト補正精度の低下が懸念されるので、MPP信号を最大とするチルト調整を、予め求めておいた再生信号品質評価値を最良とするチルト調整値との相違情報を用いて校正することも行う。
【0038】
このような相違情報を用いた校正を行う際には、実際に未記録領域で行うMPP信号を用いた最適チルト調整値の探索時と、上記相違情報を求めたときのそれぞれで設定されるフォーカスバイアス値について考慮すべきものとなる。前述したように、これらのフォーカスバイアス値が大きく異なると、チルト補正値(対物レンズ3の傾け量)に対するMPP信号の変化特性が変化し、探索結果に差が生じてしまうためである。
以下、この点について図2〜図4を参照して説明する。
【0039】
図2は、フォーカスバイアスの設定値ごとの、対物レンズ傾け角度に対するMPP信号振幅の変化特性をグラフ化して示している。図2Aは光ディスクDが0度傾いている(すなわちディスクチルト=0°)状態での同特性を示し、図2Bは0.5度傾いている(ディスクチルト=0.5°)状態での同特性を示している。なおこれら図2A,図2Bにおいて、■プロットはフォーカスバイアス値=0のとき、▲プロットはフォーカスバイアス値=+3ステップとしたとき、×プロットはフォーカスバイアス値=+7ステップとしたとき、*プロットはフォーカスバイアス値=−3ステップとしたときのMPP振幅変化特性をそれぞれ表している。
またこれら図2A,図2Bではフォーカスバイアス値=0のときの対物レンズ傾け角度に対するiMLSEの変化特性を◆プロットにより併せて示している。
また図3は、フォーカスバイアス値と対物レンズ傾け角度とに対する、MPP信号振幅の変化特性及びiMLSEの変化特性をそれぞれ等高線マップにより示している。この図3では、図3Cにディスクチルト=0°時のMPP振幅変化特性を、また図3Dにディスクチルト=0.5°時のMPP振幅変化特性を示しており、また図3Aはディスクチルト=0°時のiMLSEの変化特性、図3Bはディスクチルト=0.5°時のiMLSEの変化特性を示している。
また、図4は、対物レンズ傾け角度に対するコマ収差、非点収差のそれぞれの変化特性のイメージを示している。
【0040】
先ず前提として、ディスクチルト=0°である場合、対物レンズ3を傾けることによっては、光軸のずれが生じることに起因してコマ収差が発生すると共に、コマ収差以外の他の収差も発生することになる。特に、非点収差も生じる。
この前提を踏まえた上で、図2Aや図3Cに示すディスクチルト=0の理想的な状態では、対物レンズ3を傾けていくと、コマ収差と共に非点収差が対物レンズ3の傾きと共に増加していくことになる。このときの各収差の発生量の増加のイメージは、それぞれ図4に示す通りである。
このように対物レンズ3の傾け角度に応じて各収差量が増加していくことから、ディスクチルト=0°時には、対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅変化特性は、図2Aのように対物レンズ傾け角度=0°を頂点とした二次曲線的なカーブを描くことになる。このとき、設定されるフォーカスバイアス値ごとに、対物レンズ傾け角度=0°時のMPP振幅値がそれぞれ異なる値となる。この振幅値の差は、各フォーカスバイアス値の真の最適フォーカスバイアス値からの差に応じたものである。
【0041】
一方、ディスクチルト=0.5°時、すなわち実際の探索時と同様にディスクチルトが生じている状態では、対物レンズ3を傾けていくと、コマ収差が補正されていくことになる。つまりその分、MPP振幅は増加傾向となるべきものとなる。
但し実際には、対物レンズ3を傾けると非点収差等の他の収差も生じるので、対物レンズ3の傾きを大としていくと、非点収差等の他の収差の発生に伴ってMPP振幅を低下させる作用も同時に生じることになる。
図4によれば、対物レンズ3を傾けることによるコマ収差補正に伴うMPP振幅の増加特性はほぼ線形なものとなるのに対し、非点収差の増大によるMPP振幅低下特性は二次曲線的なものであることが分かる。
このとき、設定されるフォーカスバイアス値が異なるということは、対物レンズ傾け量=0(つまりチルト補正なし)におけるMPP振幅に差があるということになる。このことを考慮して分かるように、図2B(図3D)に示すディスクチルト=0.5°時には、その際に設定されるフォーカスバイアス値が異なると、MPP振幅を最大とするチルト調整値にも差が生じるものとなる。すなわち、実際の最適チルト探索時には、その際に設定されるフォーカスバイアス値が異なると、MPP振幅を最大とする対物レンズ傾け角度(つまり最適チルト調整値)の探索結果にも差が生じてしまうものである。
【0042】
[1-3.第1の実施の形態としてのチルト補正手法]

上記の問題点を踏まえ、本実施の形態では、相違情報を求める際に設定するフォーカスバイアス値を、実際に未記録領域でMPP信号に基づき最適チルト調整値の探索を行う際に設定するフォーカスバイアス値の探索設定手法と同手法で求めたフォーカスバイアス値とする。換言すれば、 MPP信号に基づき最適チルト調整値の探索を行う際に設定するフォーカスバイアス値の探索設定手法と同手法で求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で、予め上記相違情報を求めておくようにするものである。
【0043】
図5は、相違情報の具体的な導出例について説明するための図である。
先ず前提として、本実施の形態では、フォーカスバイアス値の調整は、MPP信号を用いて行う。具体的に、フォーカスバイアス値の調整は、MPP振幅を最大とするフォーカスバイアス値を探索することで行う。
ここで、本例においては、フォーカスバイアス値の調整は、球面収差補正値の調整と同時に行う。具体的には、それぞれ異なる組み合わせによるフォーカスバイアス値と球面収差補正値の設定下でMPP信号振幅の取得をそれぞれ行い、その結果、MPP信号振幅を最大としたフォーカスバイアス値と球面収差補正値との組み合わせを最適値として求めるものである。
【0044】
また、本実施の形態において、校正用の相違情報は、各光ディスク装置1が個々に求めるのではなく、予め実験等を行って求めておいた相違情報を各光ディスク装置1に予め記憶させておくという手法を採る。
【0045】
以上の前提を踏まえ、相違情報の具体的な導出例について説明する。
先ずは、MPP振幅を最大とするフォーカスバイアス値の標準値(各光ディスク装置1にとって標準的となる値)を求める。具体的に本例の場合、フォーカスバイアス値の探索手法は上述のようにMPP振幅を最大とするフォーカスバイアス値と球面収差補正値との組み合わせを探索する手法である。このような探索手法で求まるMPP振幅を最大とする最適フォーカスバイアス値に関して、その標準的な値(以下、標準探索フォーカスバイアス値と称する)を予め実験やシミュレーション等で求めておく。
一例として、実験等により求まった標準探索フォーカスバイアス値は、+3ステップであったとする。
【0046】
ここで、本例において、最適とされるフォーカスバイアス値やチルト調整値を求めるにあたって評価指標として用いるMPP信号は、サーボ回路12によるトラッキングサーボ制御がオフの状態にて得られるMPP信号(トラバース信号)であるとする。
【0047】
このように求めた標準探索フォーカスバイアス値の設定下で、iMLSEを最良とするチルト調整値と、MPP信号振幅を最大とするチルト調整値とをそれぞれ求める。
このとき、例えばこれらiMLSE、MPP信号を用いたそれぞれの最適チルト調整値の探索時におけるディスクチルト量が0.5度であったとする。そして、この0.5度のディスクチルトに対して、図5に示すようにiMLSEを最良とする対物レンズ傾け角度(チルト調整値)は0.5度、MPP信号振幅を最大とする対物レンズ傾け角度(チルト調整値)が0.4度であったとする。
【0048】
相違情報は、このように求めたiMLSEを最良とするチルト調整値とMPP信号振幅を最大とするチルト調整値との比率情報として算出する。すなわち、実際に未記録領域でMPP信号に基づき最適チルト調整値の探索を行う際に設定するフォーカスバイアス値の探索設定手法と同手法で求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で求まった、iMLSEを最良とするチルト調整値と、MPP信号振幅を最大とするチルト調整値との比率情報である。
図5に示す例によれば、この場合に求まる比率情報としての相違情報は、0.5/0.4となる。すなわち、「iMLSEを最良とするチルト調整値/MPP信号振幅を最大とするチルト調整値」を上記比率情報として求めるものである。
【0049】
第1の実施の形態では、このようにして実験やシミュレーション等により予め求めておいた相違情報を、各光ディスク装置1に校正用情報18bとして記憶させておく。
光ディスク装置1では、未記録領域でのチルト補正として、このような校正用情報18bを用いたチルト補正を行う。具体的に、コントローラ17は、MPP信号振幅を最大とするチルト調整値を求める最適チルト調整値の探索処理を行い、当該探索処理で求めたチルト調整値に対し、校正用相違情報18bとして記憶された比率情報を係数として乗じる。そして、このように比率情報を乗じて得たチルト調整値を、チルトドライバ16に指示してチルト補正を実行させるものである。
【0050】
上記により説明した第1の実施の形態としてのチルト補正手法によれば、校正用の相違情報は、実際の未記録領域での探索時に設定されるフォーカスバイアス値の探索設定手法と同手法で探索設定したフォーカスバイアス値の下で求めたものとなるので、従来のようにチルト調整値探索処理の際に設定されるフォーカスバイアス値と相違情報を求めたときに設定されるフォーカスバイアス値とが大きく異なる値となってしまう事態の防止を図ることができる。
この結果、MPP信号を用いた未記録領域におけるチルト補正を、従来よりも精度良く行うことができる。
【0051】
また、本実施の形態では、校正用の相違情報として、従来のように差分ΔSを用いるのではなく、比率情報を用いるものとしている。
ここで、ディスクチルトの発生量は、光ディスクDの半径位置に応じて異なるものであり、内周/外周でその差が大となる。従来手法のように再生信号を得ることのできる内周部分で求めた差分ΔSを用いた校正とすると、チルト量が大となる外周部分において、適正なチルト補正を行うことができなくなる。
これに対し、比率情報とした本実施の形態によれば、外周側においてチルト量が大となる場合にも対応して、適切にMPP振幅で求めたチルト調整値を校正でき、この面でもチルト補正の精度向上を図ることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、校正用の相違情報は予め求めておいた値を校正用相違情報18bとして各光ディスク装置1に記憶させておくものとしているので、従来手法のように相違情報を光ディスク装置1が探索を行って求めておく必要はない。すなわち、従来手法では、未記録領域でMPP振幅を用いたチルト調整を行うにあたり再生信号の得られる内周領域にて相違情報を求めるための探索処理を実行する必要があるが、本実施の形態によればそのような処理が不要となる分、未記録領域でのチルト調整に要する時間を短縮することができる。
【0053】
[1-4.処理手順]

図6は、上記により説明した第1の実施の形態としてのチルト補正方法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお、図6に示す処理はコントローラ17が制御プログラム18aに基づき実行するものである。
また、図6に示す処理が実行されるにあたっては、既にサーボ回路12によるフォーカスサーボはオンの状態にあるとする。
【0054】
先ず、ステップS101では、MPP信号を評価指標としてフォーカスバイアス値、球面収差補正値の最適値を探索するための処理を実行する。
すなわち、それぞれ異なる組み合わせによるフォーカスバイアス値と球面収差補正値を逐次サーボ回路12、SA補正ドライバ14に設定した状態で得られるMPP信号振幅を取得し、その結果に基づき、MPP信号振幅を最大としたフォーカスバイアス値と球面収差補正値との組み合わせを最適値として求める。
【0055】
ステップS101による探索処理の実行後は、ステップS102において、探索により求めたフォーカスバイアス値、球面収差補正値を設定するための処理を行う。すなわち、これら探索により求めたフォーカスバイアス値、球面収差補正値をそれぞれサーボ回路12、SA補正ドライバ14に指示して設定させる。
【0056】
ステップS102の設定処理の実行後は、ステップS103において、MPP信号を評価指標として最適チルト調整値を探索するための処理を実行する。すなわち、チルトドライバ16に対して逐次異なるチルト調整値を指示し、各チルト調整値の設定状態で得られたMPP信号の振幅値を取得し、MPP信号振幅を最大としたチルト調整値を求める。
【0057】
ステップS103の探索処理の実行後は、ステップS104において、探索により求めたチルト調整値を校正用情報18bに基づき校正する。具体的に本例の場合は、ステップS103で求めたチルト調整値に対し、前述した比率情報としての校正用情報18bを係数として乗じる。
【0058】
続くステップS105においては、校正後のチルト調整値を設定するための処理を実行する。すなわち、校正後のチルト調整値をチルトドライバ16に指示して当該チルト調整値に応じたチルト補正を実行させるものである。
当該ステップS105の処理の実行後、この図に示すチルト補正のための処理は終了となる。
【0059】
<2.第2の実施の形態>
[2-1.光ディスク装置の構成例]

続いて、第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、未記録領域における最適チルト調整値の探索時のフォーカスバイアス値を、最適フォーカスバイアス値から所定値分オフセットさせる手法を採用するものである。
【0060】
図7は、第2の実施の形態の光ディスク装置20の内部構成を示した図である。
なお、既に第1の実施の形態において説明済みとなった部分と同様の部分については同一符号を付して説明を省略する。
先の図1と比較して分かるように、第2の実施の形態の光ディスク装置20は、第1の実施の形態の光ディスク装置1との比較で、メモリ18内において制御プログラム18aに代えて制御プログラム18cが、また校正用情報18bに代えて校正用情報18dがそれぞれ記憶される点が異なる。さらに、この場合のメモリ18には、FBオフセット値18eが新たに記憶されるものとなる。
制御プログラム18cは、コントローラ17に後述する図10に示す処理動作を実行させるためのプログラムとなる。
なお、校正用情報18dの詳細、及びFBオフセット値18eについては後述する。
【0061】
[2-2.第2の実施の形態としてのチルト補正手法]

ここで、先の図2や図3に示したように、対物レンズ傾け角度に対するMPP信号振幅の変化特性は、設定されるフォーカスバイアス値により異なる特性を示す。
このとき、図2(及び図3C,図3D)を参照すると、設定されるフォーカスバイアス値によっては、対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅の変動幅が変化することが分かる。すなわち、設定されるフォーカスバイアス値によって、対物レンズ傾け角度(つまりチルト調整値)に対するMPP振幅の感度が変化するものである。
【0062】
このような、フォーカスバイアス値に応じたMPP振幅の感度変化は、対物レンズ3を傾けた際の、コマ収差の補正度合い(MPP振幅増大の度合い)と非点収差の増大度合い(MPP振幅の低下の度合い)との関係が、設定されるフォーカスバイアス値によって変化することに起因して生じる。
【0063】
上記のようなMPP振幅の感度変化が生じるということは、フォーカスバイアス値(及び球面収差補正値)の調整時におけるMPP信号振幅の測定誤差等に起因して、フォーカスバイアス値が、MPP振幅の感度が低くなる値に調整されてしまうケースが生じ得るということになる。
このようにMPP振幅の感度が低いフォーカスバイアス値に調整されてしまった場合には、チルト調整値を振って最適チルト調整値の探索を行った際に、MPP振幅を最大とするチルト調整値の特定が困難となり、結果、適正なチルト調整値を求めることができない事態に陥る可能性がある。
【0064】
そこで第2の実施の形態では、未記録領域での最適チルト調整値探索を行う際には、事前のフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整処理(探索処理)で求められたフォーカスバイアス値をそのまま設定するものとはせず、MPP振幅の感度が上がる方向にオフセットさせるものとする。
【0065】
このとき、調整により求まったフォーカスバイアス値に与えるオフセット値は、予め実験やシミュレーション等を行って求めておく。
図8は、探索により求めたフォーカスバイアス値に対して与えるべきオフセット値を求めるための具体的な手法について説明するための図である。
なお図中において、▲プロットはフォーカスバイアス値=+3ステップ時、×プロットはフォーカスバイアス値=+7ステップ時、■プロットはフォーカスバイアス値=+10ステップ時における対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅変化特性をそれぞれ示している。また図中では、◆プロットにより対物レンズ傾け角度に対するiMLSEの変化特性(フォーカスバイアス値=0)を併せて示している。
【0066】
先ず前提として、MPP信号(トラッキングサーボオフ時)を用いた探索を行う際には、MPP信号振幅の測定誤差が生じる点を考慮すべきとなる。すなわち、このようなMPP信号測定誤差等に起因して生じる、フォーカスバイアス値・球面収差補正値の探索で求まるフォーカスバイアス値のばらつき(フォーカスバイアス調整ばらつき)を考慮すべきものとなる。
例えば、このようなフォーカスバイアス調整ばらつきは、概ね±4ステップであるものとする。
【0067】
また、オフセット値を導出するにあたっては、MPP信号を用いたフォーカスバイアス値(及び球面収差補正値)の探索で求まるフォーカスバイアス値の標準値(つまり前述した標準探索フォーカスバイアス値)を実験やシミュレーション等により求めておく。例えば、標準探索フォーカスバイアス値は、この場合も+3ステップであるとする。
【0068】
また、オフセット値の導出にあたっては、対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅の感度として最低限の感度、すなわち目標とするチルト調整精度を確保可能な最低限の感度、を得ることのできるフォーカスバイアス値(以下、精度確保可能フォーカスバイアス値とする)を予め実験やシミュレーション等により求めておく。この精度確保可能フォーカスバイアス値を求めるにあたっては、MPP振幅の測定誤差も考慮に入れる。
例えば実験等の結果、精度確保可能フォーカスバイアス値は+5ステップであったとする。
【0069】
フォーカスバイアス値に対して与えるべきオフセット値は、以上で説明した調整ばらつき(フォーカスバイアス調整ばらつき)、標準探索フォーカスバイアス値、精度確保可能フォーカスバイアス値に基づき、以下の条件を満たす値として求める。

オフセット値<精度確保可能フォーカスバイアス値−標準探索フォーカスバイアス値−調整ばらつき

例えば上述の値の例によれば、オフセット値は「5−3−4」より−2ステップ未満とすればよいものとなる。
なおこの場合、MPP振幅の感度は、フォーカスバイアス値がプラス極性側に振れることに応じて徐々に低下する傾向となるので、フォーカスバイアス調整ばらつきの値としては、プラス極性側の値(+4ステップ)を用いることになる。
【0070】
ここで、フォーカスバイアスの符号は、物理方向に対して向きの定義は適宜決められるものである。またチルトに対するRF信号品質の感度が高くなる方向がマイナス方向とは限らない。
この点を考慮すると、オフセット値としては、上記条件を満たすか、或いは、

オフセット値>精度確保可能フォーカスバイアス値+標準探索フォーカスバイアス値+調整ばらつき

の条件を満たす値の何れかとして定義されるものとなる。
【0071】
第2の実施の形態の光ディスク装置20では、このようにして予め求められたオフセット値が、FBオフセット値18eとして記憶される。
【0072】
ここで、第2の実施の形態では、フォーカスバイアス値・球面収差補正値の探索処理で求められたフォーカスバイアス値を、FBオフセット値18eによりオフセットさせた状態で、未記録領域での最適チルト調整値の探索を行うものである。
すなわち、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の場合とは異なる探索設定手法で、フォーカスバイアス値が設定されるものである。
このため第2の実施の形態では、MPP振幅を最大とするチルト調整値を校正するための校正用情報として、このような第2の実施の形態としてのフォーカスバイアス値の探索設定手法に応じた校正用情報を予め求めておき、これを校正用情報18dとして光ディスク装置20に記憶させておくべきものとなる。
具体的に、当該校正用情報18dとしては、フォーカスバイアス値・球面収差補正値の探索処理で求められたフォーカスバイアス値を上述のFBオフセット値18eによりオフセットさせたフォーカスバイアス設定条件下で、iMLSEを最良とするチルト調整値とMPP信号振幅を最大とするチルト調整値とをそれぞれ求め、それらの相違情報として求めたものとする。この場合も相違情報は、これらiMLSEを最良とするチルト調整値とMPP信号振幅を最大とするチルト調整値との比率情報として求める。
【0073】
確認のため、FBオフセット値18eと校正用情報18dとを用いる第2の実施の形態としてのチルト補正手法について説明しておく。
先ずこの場合も、MPP信号振幅を評価指標としてフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整(探索処理)を行う点は第1の実施の形態と同様となる。
そして、第2の実施の形態では、当該調整により求まったフォーカスバイアス値に対し、FBオフセット値18eを加算したフォーカスバイアスの設定状態で、未記録領域での最適チルト調整値の探索を実行する。
このようなフォーカスバイアスの設定状態で行った探索により求めたチルト調整値を、校正用情報18dにより校正する。そして、校正後のチルト調整値を、チルトドライバ16に設定してチルト補正を実行させる。
【0074】
このような第2の実施の形態としてのチルト補正手法によれば、MPP振幅の測定誤差等に起因して、対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅の感度が低下してしまうフォーカスバイアス値に調整されてしまうようなケースであっても、対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅の感度を上昇させるようにフォーカスバイアス値をオフセットさせることができる。この結果、未記録領域におけるチルト補正精度の向上を図ることができる。
【0075】
[2-3.処理手順]

図9は、上記により説明した第2の実施の形態としてのチルト補正方法を実現するために実行されるべき具体的な処理の手順を示したフローチャートである。
なお、図9に示す処理は、図7に示したコントローラ17が制御プログラム18cに基づき実行するものである。
また、図9に示す処理についても、その実行時には既にサーボ回路12によるフォーカスサーボがオンの状態にあるとする。
【0076】
図9において、ステップS201では、図6に示したステップS101と同様に、MPP信号を評価指標としてフォーカスバイアス値、球面収差補正値の最適値を探索する処理を実行する。
そして、続くステップS202では、図6に示したステップS102と同様に探索により求めたフォーカスバイアス値、球面収差補正値を設定するための処理を行う。
【0077】
この場合は、ステップS202による設定処理の実行後に、ステップS203においてフォーカスバイアス値をオフセットさせる処理を実行する。すなわち、サーボ回路12にFBオフセット値18eを指示して、ステップS201・S202により探索・設定されたフォーカスバイアス値にFBオフセット値18eがさらに加算されるようにするものである。
【0078】
ステップS203のオフセット処理の実行後は、ステップS204において、MPP信号を評価指標として最適チルト調整値を探索するための処理を実行する。このステップS204の探索処理の内容は、先のステップS103の探索処理と同様となる。
【0079】
ステップS204の探索処理の実行後は、ステップS205において、探索により求めたチルト調整値を校正用情報18dに基づき校正する。具体的に本例の場合は、ステップS204で求めたチルト調整値に対し、比率情報としての校正用情報18dを係数として乗じる。
【0080】
続くステップS206においては、校正後のチルト調整値を設定するための処理を実行する。すなわち、ステップS205による校正後のチルト調整値をチルトドライバ16に指示して当該チルト調整値に応じたチルト補正を実行させる。
このステップS206の処理の実行後、この図に示すチルト補正のための処理は終了となる。
【0081】
<3.変形例>

以上、本技術に係る各実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、フォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整はMPP信号振幅を評価指標として用いて行う場合を例示したが、フォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整は再生信号の品質評価値を指標として行うようにもできる。例えば、iMLSEを評価指標として行うことができる。
以下、フォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整をiMLSEを評価指標として用いて行う際の具体的なチルト補正手法を、第1の実施の形態の場合と第2の実施の形態の場合とに分けてそれぞれ説明する。
【0082】
[3-1.第1の実施の形態の変形例]

図10は、第1の実施の形態の場合にフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整をiMLSEを評価指標として用いて行う際に設定されるべき校正用情報の導出手法について説明するための図である。
先ずこの場合、校正用の相違情報を導出するにあたっては、iMLSEを最良とするフォーカスバイアス値の標準値を求める。具体的に、フォーカスバイアス値の探索手法が、iMLSEを最良とするフォーカスバイアス値と球面収差補正値との組み合わせを探索する手法である場合には、当該探索手法で求まるiMLSEを最良とするフォーカスバイアス値に関して、その標準的な値(この場合も標準探索フォーカスバイアス値と称する)を予め実験やシミュレーション等で求めておく。
一例として、実験等により求まった標準探索フォーカスバイアス値は「0」であったとする。
【0083】
そして、このようにiMLSEを指標として求めた標準探索フォーカスバイアス値の設定下で、iMLSEを最良とするチルト調整値と、MPP信号振幅を最大とするチルト調整値とをそれぞれ求める。
このとき、例えばこれらiMLSE、MPP信号を用いたそれぞれの最適チルト調整値の探索時におけるディスクチルト量が図のように0.5度であったとする。そして、この0.5度のディスクチルトに対して、図のようにiMLSEを最良とする対物レンズ傾け角度(チルト調整値)は0.5度、MPP信号振幅を最大とする対物レンズ傾け角度(チルト調整値)が0.25度であったとする。
【0084】
この場合も校正用の相違情報は、上記のようにして求めた、iMLSEを最良とするチルト調整値とMPP信号振幅を最大とするチルト調整値との比率情報として算出する。具体的には、「iMLSEを最良とするチルト調整値/MPP信号振幅を最大とするチルト調整値」による比率情報を求める。
図10に示す例によれば、この場合に求まる比率情報としての相違情報は0.5/0.25となる。
このようにして予め求められた相違情報を、各光ディスク装置1に校正用情報18fとして記憶させておく。
【0085】
確認のため、図11のフローチャートに、この場合のチルト補正手法の実現のために行われるべき具体的な処理の手順を示しておく。
先の図6と比較して分かるように、この場合は、図6におけるステップS101のフォーカスバイアス値・球面収差補正値の探索処理に代えて、iMLSEを評価指標として用いたフォーカスバイアス値・球面収差補正値の最適値の探索処理を実行する(S301)。以降におけるステップS302〜S305の処理については、ステップS304において図10により説明した校正用情報18fを用いる点以外は、先のステップS102〜S105の処理と同様となる。
【0086】
[3-2.第2の実施の形態の変形例]

図12は、第2の実施の形態の場合にフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整をiMLSEを評価指標として用いて行う際に設定されるべきFBオフセット値の導出手法について説明するための図である。
なお図12において、▲プロットはフォーカスバイアス値=+3ステップ時、×プロットはフォーカスバイアス値=+5ステップ時における対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅変化特性をそれぞれ表し、◆プロットは対物レンズ傾け角度に対するiMLSEの変化特性(フォーカスバイアス値=0)を表す。
【0087】
先ず、iMLSEを評価指標としたフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整を行う場合も、その調整ばらつき(フォーカスバイアス調整ばらつき)を考慮に入れるべきものとなる。
また、この場合、オフセット値を導出するにあたっては、iMLSEを評価指標としたフォーカスバイアス値・球面収差補正値の探索で求まるフォーカスバイアス値の標準値(この場合も標準探索フォーカスバイアス値と称する)を実験やシミュレーション等により求めておくようにする。この標準探索フォーカスバイアス値については、先の第1の実施の形態の変形例の場合と同様の値となる。
さらに、オフセット値の導出にあたっては、この場合も対物レンズ傾け角度に対するMPP振幅の感度として最低限の感度、すなわち目標とするチルト調整精度を確保可能な最低限の感度、を得ることのできるフォーカスバイアス値(この場合も精度確保可能フォーカスバイアス値とする)を予め実験やシミュレーション等により求めておく。この精度確保可能フォーカスバイアス値については、第2の実施の形態の場合と同様の値となる。
【0088】
この場合において、フォーカスバイアス値に与えるべきオフセット値は、第2の実施の形態の場合と同様、上記調整ばらつき、上記精度確保可能フォーカスバイアス値、上記精度確保可能フォーカスバイアス値に基づき、以下の条件を満たす値として求めればよい。

オフセット値<精度確保可能フォーカスバイアス値−標準探索フォーカスバイアス値−調整ばらつき

又は、

オフセット値>精度確保可能フォーカスバイアス値+標準探索フォーカスバイアス値+調整ばらつき
【0089】
この場合の光ディスク装置20に対しては、このようにして予め求められたオフセット値を、FBオフセット値18gとしてメモリ18に記憶させておく。
【0090】
また、この場合における校正用の相違情報は、iMLSEを評価指標としたフォーカスバイアス値・球面収差補正値の調整処理で求められたフォーカスバイアス値を、上記のように求めたFBオフセット値18gによりオフセットさせたフォーカスバイアスの設定条件下でiMLSEを最良とするチルト調整値とMPP信号振幅を最大とするチルト調整値とをそれぞれ求め、それらの相違情報として予め求めておく。具体的にこの場合も、相違情報は比率情報(iMLSEを最良とするチルト調整値/MPP信号振幅を最大とするチルト調整値)として求めておく。
この場合の光ディスク装置20には、このように予め求めておいた比率情報としての相違情報を、校正用情報18hとしてメモリ18に記憶させておく。
【0091】
図13のフローチャートは、この場合のチルト補正手法の実現のために行われるべき具体的な処理の手順を示している。
先の図9と比較して分かるように、この場合は、図9に示すステップS201の探索処理に代えて、iMLSEを評価指標としたフォーカスバイアス値・球面収差補正値の最適値の探索処理を実行する(S401)。
以降のステップS402〜S406の処理は、ステップS403において上記のように求めたFBオフセット値18gを用い、且つステップS405において上記のように求めた校正用情報18hを用いる点以外は、ステップS202〜S206と同様となる。
【0092】
[3-3.その他]

これまでの説明では、未記録領域での最適チルト調整値の探索時に用いる評価指標として、MPP信号を用いる場合を例示したが、未記録領域での最適チルト探索時に用いる評価指標としては、光学ピックアップOP内の受光部がトラッキング方向の分割受光を行って得られる各受光信号の誤差を表すトラッキング方向誤差信号が用いられればよく、必ずしもMPP信号に限定されるべきものではない。例えば、DPP法によるトラッキングエラーTEを用いることもできる。
【0093】
また、ディスクチルト発生量がディスク半径位置に応じて異なることに対応させて、本技術のチルト補正を、半径方向に区切ったエリアごとに分けて実行するようにもできる。
具体的に、例えば第1の実施の形態であれば、少なくともステップS103〜S105の処理を所定の半径方向エリアごとに実行し、また第2の実施の形態であれば少なくともステップS203〜S206の処理を半径方向エリアごとに実行するものとすればよい。なお、半径方向エリアの区切りとしては、例えば内周エリア/外周エリアや、内周エリア/中周エリア/外周エリアなどを挙げることができる。
【0094】
また、これまでの説明では、校正用情報としての相違情報を求める際に必要となる、再生信号(光ディスクDに記録された信号の再生信号)に基づく評価指標(信号品質評価値)として、iMLSEを用いる場合を例示したが、このような光ディスクDに記録された信号の再生信号に基づいて生成される信号品質評価値としては、例えばRF信号の振幅値など他の信号品質評価値を用いることもできる。
【0095】
また、本技術は、以下の(1)〜(10)に示す構成とすることも可能である。
(1)
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部と、
上記対物レンズを傾けるチルト調整部と、
上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき上記対物レンズについてのフォーカスサーボ制御を行うフォーカスサーボ制御部と、
上記フォーカスサーボ制御部のフォーカスサーボ制御に伴い形成されるフォーカスサーボループにフォーカスバイアスを付与するフォーカスバイアス付与部と、
上記光照射/受光部がトラッキング方向の分割受光を行って得られる各受光信号に基づいて、これら受光信号の誤差を表すトラッキング方向誤差信号を生成するトラッキング方向誤差信号生成部と
を備えると共に、
上記チルト調整部に異なるチルト調整値を設定したときに得られる上記トラッキング方向誤差信号をそれぞれ取得した結果に基づき、上記トラッキング方向誤差信号を最大としたチルト調整値を求めるチルト調整値探索処理と、
上記光ディスク記録媒体に記録された信号の再生信号に基づいて生成される信号品質評価値を最良とするチルト調整値と、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との相違を表す相違情報であって、上記チルト調整値探索処理の実行時に上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス値についての探索設定手法と同じ探索設定手法により求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で予め求められた相違情報に基づいて、上記チルト調整値探索処理で求めた上記チルト調整値を校正するチルト調整値校正処理と、
上記チルト調整値校正処理により得たチルト調整値に基づき、上記チルト調整部によるチルト調整を実行させる調整制御処理と
を実行する制御部を備える
光ディスク装置。
(2)
上記相違情報は、
上記信号品質評価値を最良とするチルト調整値と上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との比率情報である
上記(1)に記載の光ディスク装置。
(3)
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
上記(1)又は(2)に記載の光ディスク装置。
(4)
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に第1のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に上記第1のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
上記(1)又は(2)に記載の光ディスク装置。
(5)
上記第1のオフセット値は、
当該第1のオフセット値を上記探索設定手法により探索したフォーカスバイアス値に付与したときに、上記対物レンズの傾け角度に対する上記トラッキング方向誤差信号の感度を向上させることができるように求められたものである
上記(4)に記載の光ディスク装置。
(6)
上記第1のオフセット値は、
上記探索設定手法により求まる上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値の標準値を標準探索フォーカスバイアス値、
上記探索設定手法でフォーカスバイアス値を求めたときのフォーカスバイアス値の調整ばらつきをフォーカスバイアス調整ばらつき、
上記チルト調整値探索処理により目標とするチルト調整精度を最低限確保するために設定されるべきフォーカスバイアス値を精度確保可能フォーカスバイアス値としたとき、

精度確保可能フォーカスバイアス値−標準探索フォーカスバイアス値−フォーカスバイアス調整ばらつき

の値未満という条件、又は、

精度確保可能フォーカスバイアス値+標準探索フォーカスバイアス値+フォーカスバイアス調整ばらつき

の値より大という条件を満たすように求められたものである
上記(5)に記載の光ディスク装置。
(7)
上記受光信号に基づき上記信号品質評価値を生成する品質評価値生成部をさらに備えると共に、
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
上記(1)又は(2)に記載の光ディスク装置。
(8)
上記受光信号に基づき上記信号品質評価値を生成する品質評価値生成部をさらに備えると共に、
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に第2のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に上記第2のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
上記(1)又は(2)に記載の光ディスク装置。
(9)
上記第2のオフセット値は、
当該第2のオフセット値を上記探索設定手法により探索したフォーカスバイアス値に付与したときに、上記対物レンズの傾け角度に対する上記トラッキング方向誤差信号の感度を向上させることができるように求められたものである
上記(8)に記載の光ディスク装置。
(10)
上記第2のオフセット値は、
上記探索設定手法により求まる上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値の標準値を標準探索フォーカスバイアス値、
上記探索設定手法でフォーカスバイアス値を求めたときのフォーカスバイアス値の調整ばらつきをフォーカスバイアス調整ばらつき、
上記チルト調整値探索処理により目標とするチルト調整精度を最低限確保するために設定されるべきフォーカスバイアス値を精度確保可能フォーカスバイアス値としたとき、

精度確保可能フォーカスバイアス値−標準探索フォーカスバイアス値−フォーカスバイアス調整ばらつき

の値未満という条件、又は、

精度確保可能フォーカスバイアス値+標準探索フォーカスバイアス値+フォーカスバイアス調整ばらつき

の値より大という条件を満たすように求められたものである
上記(9)に記載の光ディスク装置。
【符号の説明】
【0096】
1,20 光ディスク装置、2 スピンドルモータ(SPM)、3 対物レンズ、4 2軸アクチュエータ、5 チルト調整部、6 スライド駆動部、7 レーザドライバ、8 記録処理部、9 マトリクス回路、10 再生処理部、10a 評価器、11 アドレスデコーダ、12 サーボ回路、13 2軸ドライバ、14 SA補正ドライバ、15 スピンドルサーボ回路、16 チルトドライバ、17 コントローラ、18 メモリ、18a,18c 制御プログラム、18b,18d 校正用情報、18e FBオフセット値、OP 光学ピックアップ、D 光ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク記録媒体に対して対物レンズを介してレーザ光照射を行うと共に、上記光ディスク記録媒体からの上記レーザ光の戻り光を上記対物レンズを介して受光する光照射/受光部と、
上記対物レンズを傾けるチルト調整部と、
上記光照射/受光部が上記戻り光を受光して得られる受光信号に基づき上記対物レンズについてのフォーカスサーボ制御を行うフォーカスサーボ制御部と、
上記フォーカスサーボ制御部のフォーカスサーボ制御に伴い形成されるフォーカスサーボループにフォーカスバイアスを付与するフォーカスバイアス付与部と、
上記光照射/受光部がトラッキング方向の分割受光を行って得られる各受光信号に基づいて、これら受光信号の誤差を表すトラッキング方向誤差信号を生成するトラッキング方向誤差信号生成部と
を備えると共に、
上記チルト調整部に異なるチルト調整値を設定したときに得られる上記トラッキング方向誤差信号をそれぞれ取得した結果に基づき、上記トラッキング方向誤差信号を最大としたチルト調整値を求めるチルト調整値探索処理と、
上記光ディスク記録媒体に記録された信号の再生信号に基づいて生成される信号品質評価値を最良とするチルト調整値と、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との相違を表す相違情報であって、上記チルト調整値探索処理の実行時に上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス値についての探索設定手法と同じ探索設定手法により求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で予め求められた上記相違情報に基づいて、上記チルト調整値探索処理で求めた上記チルト調整値を校正するチルト調整値校正処理と、
上記チルト調整値校正処理により得たチルト調整値に基づき、上記チルト調整部によるチルト調整を実行させる調整制御処理と
を実行する制御部を備える
光ディスク装置。
【請求項2】
上記相違情報は、
上記信号品質評価値を最良とするチルト調整値と上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との比率情報である
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に第1のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に上記第1のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
上記第1のオフセット値は、
当該第1のオフセット値を上記探索設定手法により探索したフォーカスバイアス値に付与したときに、上記対物レンズの傾け角度に対する上記トラッキング方向誤差信号の感度を向上させることができるように求められたものである
請求項4に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
上記第1のオフセット値は、
上記探索設定手法により求まる上記トラッキング方向誤差信号を最大とするフォーカスバイアス値の標準値を標準探索フォーカスバイアス値、
上記探索設定手法でフォーカスバイアス値を求めたときのフォーカスバイアス値の調整ばらつきをフォーカスバイアス調整ばらつき、
上記チルト調整値探索処理により目標とするチルト調整精度を最低限確保するために設定されるべきフォーカスバイアス値を精度確保可能フォーカスバイアス値としたとき、

精度確保可能フォーカスバイアス値−標準探索フォーカスバイアス値−フォーカスバイアス調整ばらつき

の値未満という条件、又は、

精度確保可能フォーカスバイアス値+標準探索フォーカスバイアス値+フォーカスバイアス調整ばらつき

の値より大という条件を満たすように求められたものである
請求項5に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
上記受光信号に基づき上記信号品質評価値を生成する品質評価値生成部をさらに備えると共に、
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
上記受光信号に基づき上記信号品質評価値を生成する品質評価値生成部をさらに備えると共に、
上記フォーカスバイアス値の探索設定手法は、上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に第2のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を設定する手法とされ、
上記制御部は、上記チルト調整値探索処理の実行前に、
上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値を探索し、当該探索により求まったフォーカスバイアス値に上記第2のオフセット値を与えたフォーカスバイアス値を上記フォーカスバイアス付与部に設定するフォーカスバイアス調整処理を実行する
請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
上記第2のオフセット値は、
当該第2のオフセット値を上記探索設定手法により探索したフォーカスバイアス値に付与したときに、上記対物レンズの傾け角度に対する上記トラッキング方向誤差信号の感度を向上させることができるように求められたものである
請求項8に記載の光ディスク装置。
【請求項10】
上記第2のオフセット値は、
上記探索設定手法により求まる上記信号品質評価値を最良とするフォーカスバイアス値の標準値を標準探索フォーカスバイアス値、
上記探索設定手法でフォーカスバイアス値を求めたときのフォーカスバイアス値の調整ばらつきをフォーカスバイアス調整ばらつき、
上記チルト調整値探索処理により目標とするチルト調整精度を最低限確保するために設定されるべきフォーカスバイアス値を精度確保可能フォーカスバイアス値としたとき、

精度確保可能フォーカスバイアス値−標準探索フォーカスバイアス値−フォーカスバイアス調整ばらつき

の値未満という条件、又は、

精度確保可能フォーカスバイアス値+標準探索フォーカスバイアス値+フォーカスバイアス調整ばらつき

の値より大という条件を満たすように求められたものである
請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
光ディスク記録媒体に対する対物レンズを介したレーザ光照射及び戻り光の受光が可能に構成され、フォーカスバイアスの調整が可能に構成された光ディスク装置におけるチルト補正方法であって、
異なるチルト調整値を設定して上記対物レンズをそれぞれ異なる角度で傾けさせたときに得られる、トラッキング方向の分割受光を行って得られる各受光信号の誤差を表すトラッキング方向誤差信号をそれぞれ取得した結果に基づき、上記トラッキング方向誤差信号を最大としたチルト調整値を求めるチルト調整値探索手順と、
上記光ディスク記録媒体に記録された信号の再生信号に基づいて生成される信号品質評価値を最良とするチルト調整値と、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との相違を表す相違情報であって、上記チルト調整値探索手順の実行時に設定されるフォーカスバイアス値についての探索設定手法と同じ探索設定手法により求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で予め求められた上記相違情報に基づいて、上記チルト調整値探索手順で求めた上記チルト調整値を校正するチルト調整値校正手順と、
上記チルト調整値校正手順により得たチルト調整値に基づき、上記対物レンズの傾けによるチルト調整を実行させる調整制御手順と
を有するチルト補正方法。
【請求項12】
光ディスク記録媒体に対する対物レンズを介したレーザ光照射及び戻り光の受光が可能に構成され、フォーカスバイアスの調整が可能に構成された光ディスク装置において実行されるべきプログラムであって、
異なるチルト調整値を設定して上記対物レンズをそれぞれ異なる角度で傾けさせたときに得られる、トラッキング方向の分割受光を行って得られる各受光信号の誤差を表すトラッキング方向誤差信号をそれぞれ取得した結果に基づき、上記トラッキング方向誤差信号を最大としたチルト調整値を求めるチルト調整値探索処理と、
上記光ディスク記録媒体に記録された信号の再生信号に基づいて生成される信号品質評価値を最良とするチルト調整値と、上記トラッキング方向誤差信号を最大とするチルト調整値との相違を表す相違情報であって、上記チルト調整値探索処理の実行時に設定されるフォーカスバイアス値についての探索設定手法と同じ探索設定手法により求めたフォーカスバイアス値の設定条件下で予め求められた上記相違情報に基づいて、上記チルト調整値探索処理で求めた上記チルト調整値を校正するチルト調整値校正処理と、
上記チルト調整値校正処理により得たチルト調整値に基づき、上記対物レンズの傾けによるチルト調整を実行させる調整制御処理と
を上記光ディスク装置に実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4150(P2013−4150A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135912(P2011−135912)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】