説明

光ディスク装置、収差補正レンズの原点復帰方法、及び、そのプログラム

【課題】光ディスクのポージング状態において光ディスク装置の電源がOFFとなっても、収差補正レンズを少ない負荷で原点復帰させる。
【解決手段】光ディスク装置100は、フラッシュメモリ37と、適合検出部50と、変位制御部51と、を備えている。適合検出部50は、2層光ディスク40の記録層L0に適合したビームエキスパンダ7の位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を記憶位置としてフラッシュメモリ37に記憶させる。変位制御部51は、フラッシュメモリ37から記憶位置を読み込み、記憶位置に基づいて基準位置に復帰するために理論上必要となるビームエキスパンダ7のステップ数を求め、求めたステップ数に所定の押し当てステップ数を加えたステップ数を求め、このステップ数を用いてビームエキスパンダ7を基準位置に復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置、収差補正レンズの原点復帰方法、及び、そのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクとしてはBlu-ray DiscやDVD(Digital Versatile Disc)のように記録層が多層に形成される、いわゆる多層光ディスクが知られている。このような多層ディスクは各記録層によってレーザ光の入射面から記録層までのカバー層の厚みが相違することに起因して記録層に収束されるレーザ光に球面収差が発生する。その為、特にBlu-ray Discのように記録密度が高められた多層光ディスクにおいては、上記の球面収差が記録再生を行う障害になるため、多層光ディスク対応の光ピックアップには、光ディスクのカバー層の厚みに応じて収差補正レンズを光軸方向に駆動可能なレンズ駆動機構が備えられている。
【0003】
多層光ディスク対応の光ピックアップが組み込まれる光ディスク装置は、レンズ駆動機構を多層光ディスクの記録再生する記録層に対応させて収差補正レンズを光軸方向に変位させるべく制御させている。
【0004】
レンズ駆動機構は、一般に収差補正レンズの駆動源としてステッピングモータが使用され、このステッピングモータを駆動する駆動パルスを光ディスク装置に備えるモータ駆動回路から発生させることにより収差補正レンズを光軸方向に変位させる構成となっている。そして、光ディスク装置にはモータ駆動回路を制御するレンズ制御手段が備えられ、モータ駆動回路はレンズ制御手段により制御されてステッピングモータを駆動する駆動パルスを発生する。
【0005】
ところで、光ディスク装置は、レンズ駆動機構の収差補正レンズを制御するために収差補正レンズの位置を把握する必要がある。
【0006】
これに対し、特許文献1では、収差補正レンズが基準位置に変位していることが検出されるようにフォトインタラプタなどの位置検出素子を設けている。
【0007】
しかしながら、レンズ駆動機構に位置検出素子を設けることは、部品点数の増加及び組み立て工数の増加を伴うので、コスト面で不利である。
【0008】
そこで、特許文献2は、位置検出素子を省いたレンズ駆動機構を開示している。特許文献2では、位置検出素子がない場合、収差補正レンズの基準位置をレンズ駆動機構における収差補正レンズの機構的な一方の可動限界に設定し、収差補正レンズをレンズ駆動機構の機構的な一方の可動限界に確実に押し当てて基準位置に変位させることになる。このとき、収差補正レンズがレンズ駆動機構の機構的な可動限界に押し当てられると、レンズ駆動機構に機構的な負荷が加わり、レンズ駆動機構の耐久性を劣化させる要因となる。そこで、特許文献2では、光ディスクの回転の停止時に収差補正レンズを所定の待機位置に変位させると共に、電源オン時であって収差補正レンズを基準位置に戻す際には待機位置と基準位置との差分に基づいて収差補正レンズを駆動させることとしている。また、待機位置は、収差補正レンズの可動要求範囲のうち、基準位置から最も離れた位置に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007?328875号公報
【特許文献2】特開2010−277674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献2の構成では、光ディスクの回転の停止時に収差補正レンズを所定の待機位置に変位させることとしているに過ぎず、光ディスクの回転中に電源OFFとなった場合は、次回の電源ON時に、レンズ駆動機構の機構的な一方の可動限界に対して収差補正レンズが過度に押し当てられることになる。なぜなら、収差補正レンズが実際には待機位置に変位させられていないにもかかわらず、待機位置に変位させられたものとして処理するからである。
【0011】
特許文献2では、そのような事態の発生は稀であると謳っているが、実際には決して看過することのできない頻度で発生している。その理由は、光ディスク装置においては、光ディスクの記録・再生が完了した後でも次に記録・再生の要求に迅速に応答できるよう、一定時間、光ディスクの回転状態を継続することとしているからである。この状態は、光ディスクのポージング状態と称されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の第1の観点によれば、レーザ光源と対物レンズの間に配置され、球面収差を補正するために光軸上で変位可能とされた収差補正レンズを備えた光ディスク装置であって、光ディスクは記録層を備え、不揮発性記憶手段と、前記光ディスクの前記記録層に適合した前記収差補正レンズの位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を適合位置情報として前記不揮発性記憶手段に記憶させる適合位置検出手段と、前記不揮発性記憶手段から前記適合位置情報を読み込み、前記適合位置情報に基づいて原点復帰するために理論上必要となる前記収差補正レンズの理論移動量を求め、求めた理論移動量に所定のマージン移動量を加えた原点復帰移動量を求め、前記原点復帰移動量を用いて前記収差補正レンズを原点復帰させる収差補正レンズ変位制御手段と、を備えた、光ディスク装置が提供される。
【0013】
本願発明の第2の観点によれば、レーザ光源と対物レンズの間に配置され、球面収差を補正するために光軸上で変位可能とされた収差補正レンズを備えた光ディスク装置における、収差補正レンズの原点復帰方法であって、光ディスクは記録層を備え、前記光ディスクの前記記録層に適合した前記収差補正レンズの位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を適合位置情報として記憶する第1のステップと、記憶している前記適合位置情報を読み込み、前記適合位置情報に基づいて原点復帰するために理論上必要となる前記収差補正レンズの理論移動量を求め、求めた理論移動量に所定のマージン移動量を加えた原点復帰移動量を求め、前記原点復帰移動量を用いて前記収差補正レンズを原点復帰させる第2のステップと、を含む、収差補正レンズの原点復帰方法が提供される。
【0014】
本願発明の第3の観点によれば、コンピュータに、請求項9に記載の収差補正レンズの原点復帰方法を実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
即ち、前記光ディスクのポージング状態において、前記収差補正レンズは、前記適合位置に位置している。従って、本願発明によれば、前記光ディスクのポージング状態において前記光ディスク装置の電源がOFFとなっても、前記収差補正レンズを少ない負荷で原点復帰させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、光ディスク装置の概略構成図である。(第1実施形態)
【図2】図2は、ビームエキスパンダ駆動ユニットの構成図である。(第1実施形態)
【図3】図3は、ビームエキスパンダの可動範囲の模式図である。(第1実施形態)
【図4】図4は、光ピックアップの温度とビームエキスパンダの適合位置の関係を示す図である。(第1実施形態)
【図5】図5は、ビームエキスパンダの初期調整結果の例を示す図である。(第1実施形態)
【図6】図6は、フラッシュメモリの使用例を示す図である。(第1実施形態)
【図7A】図7Aは、ビームエキスパンダの原点復帰処理を示す図である。(第1実施形態)
【図7B】図7Bは、ビームエキスパンダの初期調整処理を示す図である。(第1実施形態)
【図7C】図7Cは、ビームエキスパンダの原点復帰処理を示す図である。(第1実施形態)
【図7D】図7Dは、ビームエキスパンダの初期調整処理を示す図である。(第1実施形態)
【図7E】図7Eは、ビームエキスパンダの原点復帰処理を示す図である。(第1実施形態)
【図7F】図7Fは、ビームエキスパンダの初期調整処理を示す図である。(第1実施形態)
【図7G】図7Gは、ビームエキスパンダの原点復帰処理を示す図である。(第1実施形態)
【図8】図8は、コントローラのディスク挿入時における制御フローである。(第1実施形態)
【図9】図9は、コントローラの再生動作時における制御フローである。(第1実施形態)
【図10】図10は、コントローラのディスク挿入時における制御フローである。(第2実施形態)
【図11】図11は、コントローラの再生動作時における制御フローである。(第2実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、図1〜9を参照しつつ、本願発明の第1実施形態を説明する。
【0018】
図1に示す光ディスク装置100は、一例としてBlu−Rayディスク規格の2層の記録層L0及び記録層L1が形成される2層光ディスク40を対象としてデータの再生を行う。本実施の形態では球面収差補正手段としてビームエキスパンダ7を用いている。
【0019】
光ピックアップ101は、レーザダイオード1、コリメータレンズ2、APC用偏光ビームスプリッタ3、グレーティング4、偏光ビームスプリッタ5、1/4波長板6、ビームエキスパンダ7、対物レンズ8、検出レンズ9、光検出器10、集光レンズ11、フロントモニタフォトダイオード12という光学系の構成、及び、ビームエキスパンダ駆動ユニット20、アクチュエータ25、温度センサ26を含んで構成される。
【0020】
レーザダイオード1から出射されるBD適合波長(λ=405nm)のレーザ光は、コリメータレンズ2により平行光となった後、APC用偏光ビームスプリッタ3に入射する。APC用偏光ビームスプリッタ3は、波長405nmの光束に対して、P偏光成分の大部分を透過し、残り部分が反射する。この反射光は集光レンズ11により集光され、フロントモニタフォトダイオード12に入射する。フロントモニタフォトダイオード12は、レーザダイオード1のレーザ光をモニタするためのフォトダイオードである。光量に応じてフロントモニタフォトダイオード12が流す電流が変化するので、それを電圧変換し、ループを組みレーザダイオード1のレーザ電流を制御することで、レーザダイオード1の出力を一定のパワーにする。
【0021】
一方、APC用偏光ビームスプリッタ3を透過した光束は、グレーティング4に入射する。グレーティング4は、レーザダイオード1から出射されるレーザから使用するための周波数を抽出するための分光格子である。グレーティング4を透過した光束は、偏光ビームスプリッタ5に入射する。偏光ビームスプリッタ5は、レーザダイオード1から出射されるレーザを透過させ、2層光ディスク40からの反射光を反射するフィルタの機能を有するビームスプリッタである。偏光ビームスプリッタ5を透過した光束は、1/4波長板6により円偏光に変換された後、ビームエキスパンダ7に導かれる。
【0022】
ビームエキスパンダ7は、凸レンズ及び凹レンズの二つから構成される光学系である。ビームエキスパンダ7が用意されるのは、レーザ光の径を拡げるためであり、本実施の形態ではビームエキスパンダ7に含まれる凹レンズを光軸に沿って前後に動かしてレーザ光の径を拡げることで、光ディスクの保護層の厚みのばらつき等による球面収差を吸収する。
【0023】
ここで、ビームエキスパンダ駆動ユニット20について、図2を使用して説明する。ビームエキスパンダ駆動ユニット20はビームエキスパンダ7を動作させる駆動モジュールである。ステッピングモータによる位置決めであるので、ビームエキスパンダ駆動ユニット20による位置決定は再現性がある。ビームエキスパンダ駆動ユニット20には、ステッピングモータ21が含まれる。ステッピングモータ21は送りねじ23を回転させることでアーム22に伝達する動力を与える。アーム22はビームエキスパンダ7の凹レンズを動かすための伝達用部材である。
【0024】
次に、ビームエキスパンダ7を出射した光束は、対物レンズ8に入射し、2層光ディスク40の所望の記録層に絞り込まれる。ここで、アクチュエータ25は対物レンズ8を動かすための駆動装置である。アクチュエータ25はコイル等で構成されており、2層光ディスク40の記録面に焦点を合わせるためのフォーカスアクチュエータ、光ディスクに設けられた溝に追従するためのトラッキングアクチュエータなどがある。実使用時には光検出器10と後述するDSP35、ドライバ36との間でフィードバックループを形成しエラー信号が0となるようにフォーカスサーボおよびトラックサーボ動作を行う。
【0025】
2層光ディスク40からの反射光は、再び対物レンズ8、およびビームエキスパンダ7を透過し、1/4波長板6により往路系における偏光方向と直交する向きの偏光方向を有する直線偏光に変換される。この偏光された光束は、偏光ビームスプリッタ5により大部分が反射されて、検出レンズ9を透過した後、光検出器10に導かれる。検出レンズ9は、光ディスクからの反射光を光検出器10上で焦点を合わせるためのシリンドリカルレンズ等である。また、光検出器10は複数に分割された受光素子から構成される。検出レンズ9によって焦点が合わせた2層光ディスク40からの反射光が入射すると、各受光素子に所定の光起電力が生じ、演算回路34に入力される。
【0026】
また、本光ピックアップ101はレーザダイオード1の温度を検出するためにCMOS ICの温度センサ26を搭載している。なお、温度センサ26としては、熱電対等、他の手段を用いてもよい。温度センサ26による検出結果は後述するコントローラ33に入力される。
【0027】
この光ピックアップ101を制御する周辺回路は、APC回路31、レーザドライバ32、コントローラ33、演算回路34、DSP35、ドライバ36、フラッシュメモリ37(不揮発性記憶手段)、RAM38、信号処理回路39、を含んで構成される。
【0028】
APC回路31は、フロントモニタフォトダイオード12からの電流を電圧変換し、レーザドライバ32にフィードバックする自動出力制御回路である。
【0029】
レーザドライバ32は、レーザダイオード1に出力用の電流を加えることで、レーザダイオード1の光出力を制御する駆動回路である。
【0030】
演算回路34は、光検出器10により電気信号に変換された信号から、フォーカスエラー信号(FE)、トラッキングエラー信号(TE)、プルインエラー信号(PE)等の誤差信号を生成する。
【0031】
信号処理回路39は、2層光ディスク40からの再生信号を処理する回路である。 再生時には、コントローラ33からの指示により演算回路34から入力された再生RF信号をデコードし、RAM38にデータを格納する。RAM38に格納されたデータはコントローラ33を介し、SATAなどの外部I/Fにより外部接続装置に転送される。
【0032】
RAM38は光ディスク装置100から読み取ったデータを一時的に保存するためのキャッシュメモリを構成するとともに、制御プログラムが使用する各種パラメータ(変数など)を格納する。
【0033】
フラッシュメモリ37には、図6に示すように、コントローラ33にて解読可能なコードで記述された、本実施の形態における動作を制御する制御プログラムや、制御パラメータの初期値などと共に、後述するQRコードのデータやビームエキスパンダ7の位置(記憶位置)情報が格納されている。
【0034】
CPU(Central Processing Unit)として機能するコントローラ33とRAM38、フラッシュメモリ37でコンピュータを構成している。フラッシュメモリ37に記憶されている制御プログラムがコントローラ33に読み出され、コントローラ33上で実行されることで、フラッシュメモリ37の制御プログラムは、コントローラ33等のハードウェアを、適合検出部50(適合位置検出手段)及び変位制御部51(収差補正レンズ変位制御手段)等として機能させる。
【0035】
次に、図3を用いてビームエキスパンダ7の可動範囲について説明する。図2に示すビームエキスパンダ駆動ユニット20において、ビームエキスパンダ7(の凹レンズ)は対物レンズ8から離れた方向の機構的な可動限界(基準位置=0ステップ)と、対物レンズ8に近づく方向の機構的な可動限界(位置=360ステップ)との間を移動可能に構成されている。可動限界を超えてビームエキスパンダ7を移動(押し当て)しようとすると、実際は可動限界までしか移動されず、可動限界位置において送りねじの歯とびによる磨耗(ビームエキスパンダ駆動ユニットの耐久性劣化)や、押し当てによるノイズが発生してしまう。
【0036】
ここで、光ピックアップ101の特性上、各記録層L0、記録層L1に対するビームエキスパンダ7のおおよその適合位置は計算により求められ、その位置情報(以後、中心位置とする)は光ピックアップ101に貼り付けられるQRコードなどの2次元コード(図示せず)に記録されている場合が多い。例えば、本実施の形態では、記録層L0に対するビームエキスパンダ7の中心位置=120ステップ、記録層L1に対するビームエキスパンダ7の中心位置=220ステップという情報がQRコードに記録されており、このQRコードを読み取ったデータが、あらかじめフラッシュメモリ37内に記録されているものとする。なお、光ピックアップ101によっては、記録層L0の中心値のみをQRコードに格納し、他の記録層L1の中心値については、記録層L0の中心値に対するオフセット量(ステップ数)として与えられる場合もある。本実施形態において、記録層L0と記録層L1のうち前者である記録層L0を基準とすべき記録層として取り扱うものとする。
【0037】
この中心値に対して、ビームエキスパンダ7の適合位置は、2層光ディスク40のカバー層厚のばらつきや温度変化により変化する。図4は温度と、ビームエキスパンダ7の適合位置との関係を示す図であり、温度センサ26からの出力値から換算した光ピックアップ周辺温度と、後述する初期調整で求まったビームエキスパンダ7の適合位置との関係を表している。本例では、記録層L0(四角形のプロット)、記録層L1(三角形のプロット)共に、温度が1℃上昇するとともに、ビームエキスパンダ7の適合位置は1.1〜1.3ステップだけ基準位置側へシフトしていることが分かる。すなわち、本光ピックアップにおけるビームエキスパンダ7の位置の温度係数Kは、およそ−1.2[ステップ/℃]である。
【0038】
このように、環境温度の変化や再生動作に伴う光ディスク装置100の内部温度変化により、ビームエキスパンダ7の適合位置は変化する。従って、本発明の光ディスク装置100は、2層光ディスク40を挿入した際に、QRコードに記録されている中心位置を基準にビームエキスパンダ7の位置を振って各記録層L0、L1に対する適合位置の調整を行う。
【0039】
図5はビームエキスパンダ7の初期調整結果を表す図である。この初期調整では2層光ディスク40を挿入した際に、QRコードに記録されている中心位置を基準にビームエキスパンダ7の位置を振って各記録層L0、L1に対する適合位置を求める。図5のグラフは、ビームエキスパンダ7の位置(ステップ位置)とTE信号振幅値、またはJitter値との関係を表している。この初期調整ではTE信号振幅が最大となる位置、あるいはJitter値が最小となる位置を適合位置としてビームエキスパンダ7を移動させる。
【0040】
次に、前述のようにして構成された光ディスク装置100における、ビームエキスパンダ駆動ユニット20の制御について、図6〜8を用いて説明する。図8のフローチャートは、コントローラ33によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応しており、特に2層光ディスク40を挿入した際の動作(ビームエキスパンダ7の原点復帰処理および初期調整処理)を示すフローチャートである。
【0041】
図8において2層光ディスク40が挿入されると、ステップ101では、コントローラ33は、フラッシュメモリ37に記憶されているビームエキスパンダ7の位置(記憶位置)情報を読み出す。
【0042】
この記憶位置は、図6に示すように、複数の記憶位置情報が記録できるようフラッシュメモリ37にその領域が確保され、この領域の先頭から順番に使用されるものとする。通常、フラッシュメモリなどの不揮発メモリは情報の書き換え(EraseとWrite)を行う際は数KBといった大きな単位で行う必要があるが、初期値データ(例えばFFFFh)が記録されている部分に対しては2バイト単位で記録(Writeのみ)を行うことが可能である。従って、記憶位置の更新においてフラッシュメモリ37の未使用部分を順番に使用(追記)することで、フラッシュメモリ37の特定部分が上書きされる頻度を減らすとともに、更新にかかる時間を短縮することが出来る。本実施の形態では記憶位置格納用に全4Kバイトの領域をフラッシュメモリ37内に確保し、記憶位置を更新する場合は2バイト単位で追記を行う。すなわち、ステップ101では、フラッシュメモリ37の記憶位置格納領域の先頭から2バイト単位で記憶位置のサーチを行い、初期値=FFFFh以外が記録されている最後の記憶位置情報を抽出する。
【0043】
次に、ステップ102では、コントローラ33は、フラッシュメモリ37から読み出した記憶位置が初期値=FFFFhかどうかを判定する。例えば、図7Aに示すように、光ディスク装置100が初めて電源オンされた場合、フラッシュメモリ37の記憶位置格納領域は全て初期値=FFFFhが記録されている。この場合、ステップ102の判断は肯定され、ステップ104に移行する。
【0044】
ステップ104では、コントローラ33は、ビームエキスパンダ7の移動量(ステップ数)として、その全可動範囲である360ステップを選択し、ステップ105に移行する。
【0045】
ステップ105では、コントローラ33は、ステッピングモータ21を起動して、ビームエキスパンダ7を基準位置方向に移動させる(ビームエキスパンダ7の原点復帰処理)。すなわち、フラッシュメモリ37に記憶位置が書き込まれていない初期状態では、ビームエキスパンダ7の現在位置が特定できないため、基準位置から最も離れた位置にある場合を考慮して、基準位置への移動を行う。この場合、実際は図7Aに示すように、可動限界である基準位置を大きく超えてビームエキスパンダ7を移動しようして、過度の押し当てが発生してしまう。
【0046】
一方、ステップ102において、図7Cに示すように、フラッシュメモリ37に初期値以外の記憶位置が格納されていた場合は、ステップ102の判断は否定され、ステップ103に移行する。
【0047】
ステップ103では、変位制御部51は、ビームエキスパンダ7の移動量(ステップ数)として、記憶位置から基準位置までのステップ数(理論移動量)に、押し当てステップ数(マージン移動量)を加算したステップ数(原点復帰移動量)が選択され、このステップ数分だけ、次のステップ105でビームエキスパンダ7を基準位置方向に移動させる(ビームエキスパンダ7の原点復帰処理)。図7Cの例では、記憶位置から基準位置までのステップ数=130ステップ、押し当てステップ数=10ステップであるため、移動ステップ数=130+10=140ステップとなる。この例では、実際のビームエキスパンダ7の現在位置は記憶位置と等しい130ステップの位置にあるため、ビームエキスパンダ7の原点復帰処理において、押し当てステップ数と等しい10ステップの押し当てが発生する。この押し当てステップ数は、ビームエキスパンダ駆動ユニット20に悪影響を与えない程度のステップ数である。ステップ105において変位制御部51によるビームエキスパンダ7の原点復帰処理が完了すると、ステップ106へ遷移する。
【0048】
ステップ106では、適合検出部50が、ビームエキスパンダ7の初期調整を行う。ここでは、図5に示すように、適合検出部50は、ビームエキスパンダ7の位置と、例えばTE信号振幅値との関係を求めた後、TE信号振幅値が最大となる位置を、ビームエキスパンダ7の適合位置として選択する。2層光ディスク40が複数の記録層L0、L1を有する場合は、記録層L0、L1毎に初期調整が実施される。なお、調整のための信号としてJitter値を測定し、Jitter値が最小となるビームエキスパンダ7の位置を適合位置として選択しても良い。ステップ106において初期調整が完了すると、ステップ107へ遷移する。
【0049】
ステップ107では、基準記録層である記録層L0の適合位置を取得する。例えば、図7Bでは適合位置=130ステップ位置であり、図7Dでは適合位置=138ステップ位置であり、図7Fでは適合位置=160ステップ位置が得られたことを示している。
【0050】
次のステップ108では、適合検出部50は、記録層L0の適合位置とフラッシュメモリ37に記録されている記憶位置との差分ステップ数(差分量)を計算する。図7Dの例では、適合位置=138ステップ位置に対して、記憶位置=130ステップ位置であり、その差分は8ステップである。また、図7Fの例では、適合位置=160ステップ位置に対して、記憶位置=130ステップ位置であり、その差分は30ステップである。
【0051】
次のステップ109では、適合検出部50は、ステップ108で求まった差分ステップ数が、所定の記憶位置更新しきい値(所定量)を超えたかどうかを判断する。本実施の形態では記憶位置更新しきい値=10ステップとしているが、この記憶位置更新しきい値は後述するように、押し当てステップ数以下のステップ数である必要がある。例えば、図7Fのように、適合位置と記憶位置の差分(=30ステップ)が記憶更新しきい値(=10ステップ)を超えた場合、ステップ109の判定は肯定され、ステップ110に遷移する。なお、図7Bの例のように、フラッシュメモリ37に記憶位置が格納される前の初期状態の場合もステップ109の判定は肯定され、ステップ110に遷移する。
【0052】
ステップ110では、適合検出部50は、フラッシュメモリ37の記憶位置を更新する。ここでは、適合検出部50は、基準記録層である記録層L0に対応するビームエキスパンダ7の適合位置を新たな記憶位置としてフラッシュメモリ37の未使用領域に記録する。図7Fの例では、フラッシュメモリ37の記憶位置格納領域の未使用部分の先頭に適合位置=160("00A0h")が記録される。
一方、ステップ109において、図7Dの例のように、ステップ108で求まった差分ステップ数(=8ステップ)が、記憶位置更新しきい値(=10ステップ)を超えないと判断された場合は、ステップ110の処理がスキップされ、ステップ111に遷移する。
【0053】
ステップ111では、コントローラ33は、ステップ107で得られた記録層L0の適合位置へビームエキスパンダ7の凹レンズを移動させて、処理を終了する。
【0054】
次に、以上説明した制御方法によりビームエキスパンダ駆動ユニット20を制御する光ディスク装置100において、電源オンおよびディスク挿入を繰り返した場合の動作に関して、図7A〜図7Gを用いて説明する。
【0055】
図7Aは、光ディスク装置が初めて電源オンされた場合のビームエキスパンダ7の原点復帰処理を示す図である。ここでは、フラッシュメモリ37に記憶位置が格納される前の初期状態であり、ビームエキスパンダ7の現在位置が特定できないため、コントローラ33は、ビームエキスパンダ7が基準位置から最も離れた位置にあるケースを想定して、その可動範囲である360ステップの移動を行う。従って、ビームエキスパンダ7の実際の位置によっては、過度の押し当てが発生することになるが、このような押し当ては光ディスク装置が初めて電源オンされた場合に限定できる。
【0056】
次の図7Bは、図7Aの状態に続けて、適合検出部50によるビームエキスパンダ7の初期調整を行った結果を示す図であり、記録層L0の適合位置=130ステップ位置が求まったとする。この例では、フラッシュメモリ37に記憶位置が記録される前の初期状態であるため、適合検出部50は、適合位置=130ステップ位置("0082h")を記憶位置としてフラッシュメモリ37に記録する。
【0057】
次の図7Cは、図7Bの状態に続けて、光ディスク装置の電源がオフされた後に再度電源オンが行われた場合の、変位制御部51によるビームエキスパンダ7の原点復帰処理を示す図である。ここでは、変位制御部51は、ビームエキスパンダ7は記憶位置=130ステップの位置にあるものとして、記憶位置から基準位置までのステップ数=130ステップに、押し当てステップ数=10ステップを加算したステップ数=140ステップの移動を行う。この例では、実際のビームエキスパンダ7の現在位置は記憶位置と等しい130ステップの位置にあるため、基準位置への移動において、押し当てステップ数と等しい10ステップの押し当てが発生する。この押し当てステップ数は、ビームエキスパンダ駆動ユニット20に悪影響を与えない程度のステップ数である。
【0058】
次の図7Dは、図7Cの状態に続けて、適合検出部50によるビームエキスパンダ7の初期調整を行った結果を示す図であり、記録層L0の適合位置=138ステップ位置が求まったとする。この場合、フラッシュメモリ37に格納されている記憶位置=130ステップ位置と、適合位置(=138ステップ位置)との差分は8ステップであり、記憶位置更新しきい値=10ステップ以下であるため、適合検出部50は、フラッシュメモリ37の記憶位置の更新を行わない。
【0059】
次の図7Eは、図7Dの状態に続けて、光ディスク装置100の電源がオフされた後に再度電源オンが行われた場合の、変位制御部51によるビームエキスパンダ7の原点復帰処理を示す図である。ここでは、変位制御部51は、ビームエキスパンダ7は記憶位置=130ステップの位置にあるものとして、記憶位置から基準位置までのステップ数=130ステップに、押し当てステップ数=10ステップを加算したステップ数=140ステップの移動を行う。しかし、実際のビームエキスパンダ7の現在位置は138ステップ位置であるため、基準位置への移動においては、「移動ステップ数(140ステップ)」−「ビームエキスパンダ7の現在位置(138ステップ)」=2ステップの押し当てが発生することになる。
【0060】
すなわち、光ディスク装置の電源がオンされた状態において、実際のビームエキスパンダ7の位置と記憶位置とが異なる状態においても、ビームエキスパンダ7を確実に基準位置に戻すためには、少なくとも記憶位置更新しきい値以上の押し当てを行えばよい。本実施の形態では、記憶位置更新しきい値、押し当てステップ数をともに10ステップとしたが、これに限らず、記憶位置更新しきい値と押し当てステップ数に異なる値を用いても良い。ただし、前述のように、ビームエキスパンダ7を確実に基準位置へ戻すためには、「記憶位置更新しきい値」≦「押し当てステップ数」の関係を保つとともに、押し当てステップ数はビームエキスパンダ駆動ユニット20に悪影響を与えない程度のステップ数である必要がある。好ましくは、「記憶位置更新しきい値」<「押し当てステップ数」の関係とするとよい。
【0061】
次の図7Fは、図7Eの状態に続けて、適合検出部50がビームエキスパンダ7の初期調整を行った結果を示す図であり、記録層L0の適合位置=160ステップ位置が求まったとする。この場合、フラッシュメモリ37に格納されている記憶位置=130ステップ位置と、適合位置(=160ステップ位置)との差分は30ステップであり、記憶位置更新しきい値(=10ステップ)を超えるため、適合検出部50は、記憶位置=160ステップ位置("00A0h")としてフラッシュメモリ37の記憶位置を更新する。この場合、あらたな記憶位置情報はフラッシュメモリ37の未使用領域に追記する形で記録される。
【0062】
次の図7Gは、図7Fの状態に続けて、光ディスク装置の電源がオフされた後に再度電源オンが行われた場合の、変位制御部51によるビームエキスパンダ7の原点復帰処理を示す図である。ここでは、変位制御部51は、ビームエキスパンダ7は記憶位置=160ステップの位置にあるものとして、記憶位置から基準位置までのステップ数=160ステップに、押し当てステップ数=10ステップを加算したステップ数=170ステップの移動を行う。実際のビームエキスパンダの現在位置は記憶位置と等しい160ステップの位置にあるため、基準位置への移動において、押し当てステップ数と等しい10ステップの押し当てが発生する。
【0063】
次に、以上説明した制御方法によりビームエキスパンダ7を制御する光ディスク装置100において、ユーザからの要求に従い、2層光ディスク40からの再生を行う場合の動作に関して、図9を用いて説明する。図9のフローチャートは、コントローラ33によって実行される一連の処理アルゴリズムに対応している。
【0064】
ステップ201では、コントローラ33は、ユーザから再生の要求があるかどうかを判定する。再生要求があった場合、ステップ201の判定は肯定され、ステップ202へ遷移する。
【0065】
ステップ202では、コントローラ33は、ユーザからの要求に従い、2層光ディスク40に対して所定の再生動作を行う。この再生処理では、ユーザから、2層光ディスク40のデータ領域に仮想的に割り当てられた論理アドレスと要求セクタ数(1セクタ=2048バイト)が指定される。また、コントローラ33は、は要求アドレスが位置する記録層L0(又は記録層L1)を判別し、図8のステップ106で行った初期調整結果を参照して、ビームエキスパンダ7を所望の記録層に対する適合位置に移動させた後に再生動作を行う。ステップ202において要求された再生処理が完了したら、ステップ203に遷移する。
【0066】
ステップ203では、コントローラ33は、ディスク停止用タイマをリセットする。このディスク停止用タイマについては後述する。
【0067】
次のステップ204では、変位制御部51は、ユーザが要求した再生アドレスが記録層L0内のアドレスであったかどうかを判定する。ここで、ユーザが要求した再生アドレスが記録層L1内のアドレスであった場合、ステップ204の判定は否定され、ステップ205に遷移する。
【0068】
ステップ205では、変位制御部51は、記録層L0へフォーカスを移動する。このフォーカス移動に伴い、変位制御部51により、ビームエキスパンダ7が記録層L0に対する適合位置に移動される。
【0069】
次に、ステップ206では、変位制御部51は、記録層L0にてポーズ動作を行う。一般に、光ディスク装置100は、ユーザが要求した再生処理が終了した後も、再度この終了アドレスから再生を要求される場合が多いことから、再生終了アドレス付近でポーズ動作を行うが、本実施の形態における光ディスク装置は、あえて、記録層L0にてポーズ動作を行う。従って、ポーズ状態(2層光ディスク40が回転している状態)で、電源オフされる場合においても、ビームエキスパンダ7の現在位置とフラッシュメモリ37に格納される記憶位置との差が記憶位置更新しきい値以内にある状態が保持される。この差分は、前述のように、「実際の位置ずれ量」≦「記憶位置更新しきい値」≦「押し当てステップ数」であることから、再度電源オンされた場合のビームエキスパンダ7の原点復帰処理において、確実に基準位置へ戻すことが出来る。
【0070】
一方、ステップ204において、ユーザが要求した再生アドレスが記録層L0内のアドレスであった場合は、コントローラ33は、ステップ204の判定は肯定され、ステップ206に遷移して、記録層L0にてポーズ動作を行う。
【0071】
次のステップ207では、コントローラ33は、ディスク停止用タイマを参照して、所定の時間が経過したかどうかを判定する。このタイマはユーザが要求した再生処理が完了した時点でリセットされる(ステップ203)タイマであり、ユーザからの再生要求がない期間を計測するためのタイマである。ステップ207において、所定の時間が経過していない場合は、ステップ207の判定は否定され、ステップ201へ遷移する。
【0072】
ステップ201では、再度ユーザから再生の要求があるかどうかを判定する。ここで、ユーザから再生要求がない場合、ステップ201の判定は否定され、ステップ207へ遷移し、再びディスク停止用タイマを参照して、所定の時間が経過したかどうかを判定する。
【0073】
一方、ステップ207において、所定の時間が経過していた場合、ステップ207の判定は肯定され、ステップ208へ遷移する。
【0074】
ステップ208では、コントローラ33は、ディスクを停止する。
【0075】
次のステップ209では、変位制御部51は、ビームエキスパンダを記憶位置へ移動させる。このように、2層光ディスク40が停止してから(あるいは光ディスク装置100から排出されてから)電源オフされる場合、ビームエキスパンダ7の位置は記憶位置と等しくなるため、この状態で電源オンされた際にビームエキスパンダ7の原点復帰処理を適切に行うことが出来る。
【0076】
なお、本実施例では2層光ディスク40からデータを再生する場合の再生処理について説明したが、2層光ディスク40に対して記録を行う記録処理であってもよい。
【0077】
以上に本願発明の第1実施形態を説明したが、第1実施形態は、要するに以下の特長を有している。
【0078】
光ディスク装置100は、レーザダイオード1(レーザ光源)と対物レンズ8の間に配置され、球面収差を補正するために光軸上で変位可能とされたビームエキスパンダ7(収差補正レンズ)を備えている。2層光ディスク40は記録層L0(又は記録層L1、以下同様)を備えている。光ディスク装置100は、フラッシュメモリ37(不揮発性記憶手段)と、適合検出部50(適合位置検出手段)と、変位制御部51(収差補正レンズ変位制御手段)と、を備えている。適合検出部50は、2層光ディスク40の記録層L0に適合したビームエキスパンダ7の位置である適合位置(例えば、図7Bにおけるステップ数130)を検出し、検出した適合位置を記憶位置(適合位置情報)としてフラッシュメモリ37に記憶させる。変位制御部51は、フラッシュメモリ37から記憶位置を読み込み、記憶位置に基づいて基準位置(原点)に復帰するために理論上必要となるビームエキスパンダ7のステップ数(理論移動量、記憶位置と基準位置との差分量、図7Cではステップ数130)を求め、求めたステップ数に所定の押し当てステップ数(マージン移動量、図7Cではステップ数10)を加えたステップ数(原点復帰移動量、図7Cではステップ数140)を求め、このステップ数を用いてビームエキスパンダ7を基準位置に復帰させる。即ち、2層光ディスク40のポージング状態において、ビームエキスパンダ7は、適合位置に位置している。従って、以上の構成によれば、2層光ディスク40のポージング状態において光ディスク装置100の電源がOFFとなっても、ビームエキスパンダ7を少ない負荷で基準位置に復帰させることができる。
【0079】
また、適合検出部50は、検出した適合位置が、フラッシュメモリ37に記憶位置として記憶されている適合位置と異なる場合は、検出した適合位置を、新たな適合位置情報としてフラッシュメモリ37に記憶させる。以上の構成によれば、例えば光ピックアップ101の温度変化や2層光ディスク40の個体差により、検出する適合位置が都度バラつく場合であっても、ビームエキスパンダ7を基準位置に復帰させることができる。
【0080】
また、適合検出部50は、検出した適合位置と、フラッシュメモリ37に記憶位置として記憶されている適合位置と、の差分量が記憶位置更新しきい値(所定量)を上回っていた場合に限り、検出した適合位置を、新たな適合位置情報としてフラッシュメモリ37に記憶させる。以上の構成によれば、フラッシュメモリ37の書き込み頻度が低下するので、フラッシュメモリ37の寿命を延ばすことができる。
【0081】
また、記憶位置更新しきい値は、押し当てステップ数以下に設定されている。以上の構成によれば、差分量が押し当てステップ数以下であることが保証されるので、ビームエキスパンダ7を確実に基準位置に復帰させることができる。
【0082】
また、記憶位置更新しきい値は、押し当てステップ数未満に設定されている。以上の構成によれば、差分量が押し当てステップ数未満であることが保証されるので、ビームエキスパンダ7を一層確実に基準位置に復帰させることができる。
【0083】
また、2層光ディスク40が記録層L0及び記録層L1を有している。適合検出部50は、2層光ディスク40の複数の記録層L0及び記録層L1のうち基準記録層である記録層L0に適合したビームエキスパンダ7の位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を適合位置情報としてフラッシュメモリ37に記憶させる。変位制御部51は、2層光ディスク40の基準記録層以外の記録層L1に対して記録又は再生が行われていた場合は、その記録又は再生が完了後、基準記録層である記録層L0に適合した適合位置にビームエキスパンダ7を変位させる。以上の構成によれば、2層光ディスク40のポージング状態において、ビームエキスパンダ7は、基準記録層である記録層L0に適合した適合位置に位置している。従って、以上の構成によれば、2層光ディスク40のポージング状態において光ディスク装置100の電源がOFFとなっても、ビームエキスパンダ7を少ない負荷で基準位置に復帰させることができる。
【0084】
また、変位制御部51は、2層光ディスク40の回転が停止したら、フラッシュメモリ37に記憶位置として記憶されている適合位置に、ビームエキスパンダ7を変位させる。以上の構成によれば、ビームエキスパンダ7を安定的に基準位置へ復帰させることができる。
【0085】
また、ビームエキスパンダ7の基準位置への復帰方法は、第1のステップ(ステップ106〜110)と、第2のステップ(ステップ101〜105)と、を含んでいる。第1のステップでは、2層光ディスク40の記録層L0に適合したビームエキスパンダ7の位置である適合位置を検出し(ステップ106)、検出した適合位置を適合位置情報として記憶する(ステップ110)。第2のステップでは、記憶している記憶位置を読み込み(ステップ101)、記憶位置に基づいて基準位置へ復帰するために理論上必要となるビームエキスパンダ7のステップ数を求め、求めた理論移動量に所定の押し当てステップ数を加えたステップ数を求め、このステップ数を用いてビームエキスパンダ7を基準位置へ復帰させる。
【0086】
(第2実施形態)
次に、図10〜11を参照しつつ、本願発明の第2実施形態を説明する。ここでは、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、重複する説明は適宜省略する。また、上記第1実施形態の各構成要素に対応する構成要素には原則として同一の符号を付すこととする。
【0087】
この第2の実施形態は、2層光ディスク40を再生中の温度変化に伴い、ビームエキスパンダ7の位置を変更した場合の記憶位置の更新方法が、第1の実施形態に追加されている。この第2の実施形態は、フラッシュメモリ37に格納されている制御プログラムのみが異なり、その他、光ディスク装置100の構成などは、前述した第1の実施形態と同様である。
【0088】
図10のフローチャートは、第2の実施例を説明するためのフローチャートであり、図8のフローチャートにおけるステップ106とステップ107との間に、ステップ120、121が挿入されたものである。図10のフローチャートにおいて、図8のフローチャートと同じステップ番号のステップでは、前述した処理と同様な処理が行われる。そこで、挿入されたステップ120、121での処理について説明する。
【0089】
ステップ120では、コントローラ33は、温度センサ26からの出力値を読み出して、初期調整を行った後の光ディスク装置内の温度(以後、調整時温度)を取得する。
【0090】
次のステップ121では、コントローラ33は、調整時温度をRAM38に保存する。この調整時温度は、後述する再生処理において使用される。
【0091】
図11のフローチャートは、第2の実施例を説明するためのフローチャートであり、図9のフローチャートにおけるステップ201とステップ202との間に、ステップ220〜226が挿入されたものである。図11のフローチャートにおいて、図9のフローチャートと同じステップ番号のステップでは、前述した処理と同様な処理が行われる。そこで、挿入されたステップ220〜226での処理について説明する。
【0092】
ステップ220では、コントローラ33は、再生要求があった場合に、温度センサ26からの出力値を読み出して、現在温度を取得する。
【0093】
次のステップ221では、適合検出部50は、前回取得した温度から所定のしきい値を超える温度変化があったかどうかを判定する。具体的には、適合検出部50は、過去に温度変化によるビームエキスパンダ7の位置補正を行っていた場合は、そのときの温度をRAM38から読み出し、現在温度と比較する。適合検出部50は、過去に温度変化によるビームエキスパンダ7の位置補正を行っていない場合は、図10のステップ121にて保存した初期調整時の温度をRAM28から読み出し、現在温度と比較する。なお、本ステップ221における温度の差分しきい値としては、温度変化による球面収差が再生品質に影響を及ぼさない範囲でそのしきい値を決めればよい。これらの比較において、温度の差分が所定のしきい値を超えた場合、ステップ221の判定は肯定され、ステップ222へ遷移する。
【0094】
ステップ222では、適合検出部50は、温度変化に応じてビームエキスパンダ7の補正ステップ数を算出する。ここでは、適合検出部50は、図10のステップ121で保存した調整温度と、ステップ220で取得した現在温度との差分を求め、図4に示す温度とビームエキスパンダ7の適合位置との関係(温度係数K=−1.2[ステップ/温度])に基づき、ビームエキスパンダ7の補正ステップ数を算出する。
【0095】
次のステップ223では、現在温度をRAM38に保存し、ステップ224へ遷移する。
【0096】
ステップ224では、適合検出部50は、ステップ106で求めた適合位置のうち基準記録層である記録層L0に対応する適合位置に、ステップ222で求めた補正ステップ数を加味したステップ位置を、ビームエキスパンダ7の補正後の適合位置(以後、補正位置)とし、この補正位置と記憶位置との差分ステップ数を計算する。
【0097】
次のステップ225では、適合検出部50は、ステップ224で求まった差分ステップ数が、所定の記憶位置更新しきい値を超えたかどうかを判断する。この記憶位置更新しきい値は、図8のステップ109における記憶位置更新しきい値(=10ステップ)と同じである。差分ステップ数が、記憶位置更新しきい値を超えた場合、ステップ225の判定は肯定され、ステップ226へ遷移する。
【0098】
ステップ226では、適合検出部50は、フラッシュメモリ37の記憶位置を更新する。ここでは、基準記録層である記録層L0に対応するビームエキスパンダ7の補正位置を、新たな記憶位置としてフラッシュメモリ37の未使用領域に記録した後に、ステップ202へ遷移する。
【0099】
一方、ステップ225において、差分ステップ数が記録位置更新しきい値以下の場合、ステップ225の判定は否定され、ステップ202へ遷移する。
【0100】
また、ステップ221において、温度変化が所定のしきい値に満たない場合、ステップ221の判定は否定され、ステップ202へ遷移する。
【0101】
以上のように、第2の実施形態にかかる光ディスク装置100は、再生時の温度変化に応じて、ビームエキスパンダ7の適合位置を補正する。ここで、温度変化に伴う補正ステップ数はステップ202の再生処理、およびステップ206のフォーカス移動処理にて参照される。具体的には、ステップ202において、コントローラ33は、図10のステップ106で得られた所望の記録層に対する適合位置に、ステップ222で求めた補正ステップ数を加味したステップ位置を、所望の記録層に対するビームエキスパンダ7の補正位置とし、この補正位置へビームエキスパンダ7を移動させた後に再生動作を行う。また、ステップ206のフォーカス移動処理では、コントローラ33は、記録層L0に対する補正位置へビームエキスパンダ7を移動させる。従って、初期調整時の温度と再生時の温度に変化が生じた場合も、ビームエキスパンダ7の位置は温度変化に応じた最適な位置を保つことが出来る。
【0102】
また、第2の実施形態にかかる光ディスク装置100は、基準記録層である記録層L0に対応した補正後のビームエキスパンダ7の適合位置と、記憶位置との差分ステップ数に応じて、フラッシュメモリ37の記憶位置情報を更新する。従って、再生処理後のポーズ状態(2層光ディスク40が回転している状態)で、電源オフされる場合においても、ビームエキスパンダ7の現在位置とフラッシュメモリ37に格納される記憶位置との差が所定の記憶位置更新しきい値以下にある状態が保持される。この差分は、前述のように、「実際の位置ずれ量」≦「記憶位置更新しきい値」≦「押し当てステップ数」であることから、再度電源オンされた場合に確実に基準位置へ戻すことが出来る。
【0103】
なお、本実施例では2層光ディスク40からデータを再生する場合の再生処理について説明したが、2層光ディスク40に対して記録を行う記録処理であってもよい。
【0104】
以上に本願発明の第2実施形態を説明したが、第2実施形態は、要するに、以下の特長を有している。
【0105】
即ち、光ディスク装置100は、光ピックアップ101の温度変化を検出する温度センサ26(温度変化検出手段)を更に備えている。温度センサ26により光ピックアップ101の温度変化が検出されたら、適合検出部50は、2層光ディスク40の記録層L0に適合したビームエキスパンダ7の位置である適合位置を補正し、補正後の適合位置と、フラッシュメモリ37に記憶位置として記憶されている適合位置と、の差分量が押し当てステップ数以下に設定された記憶位置更新しきい値を上回っていたら、補正後の適合位置を、新たな記憶位置としてフラッシュメモリ37に記憶させる。以上の構成によれば、2層光ディスク40に温度変化があっても、差分量が押し当てステップ数以下であることが保証されるので、ビームエキスパンダ7を確実に基準位置へ復帰させることができる。
【符号の説明】
【0106】
1 レーザダイオード
2 コリメータレンズ
3 APC用偏光ビームスプリッタ
4 グレーティング
5 偏光ビームスプリッタ
6 1/4波長板
7 ビームエキスパンダ
8 対物レンズ
9 検出レンズ
10 光検出器
11 集光レンズ
12 フロントモニタフォトダイオード
20 ビームエキスパンダ駆動ユニット
21 ステッピングモータ
22 アーム
23 送りねじ
25 アクチュエータ
26 温度センサ
31 APC回路
32 レーザドライバ
33 コントローラ
34 演算回路
35 DSP
36 ドライバ
37 フラッシュメモリ
38 RAM
39 信号処理回路
40 2層光ディスク
50 適合検出部
51 変位制御部
100 光ディスク装置
101 光ピックアップ
L0 記録層
L1 記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と対物レンズの間に配置され、球面収差を補正するために光軸上で変位可能とされた収差補正レンズを備えた光ディスク装置であって、光ディスクは記録層を備え、
不揮発性記憶手段と、
前記光ディスクの前記記録層に適合した前記収差補正レンズの位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を適合位置情報として前記不揮発性記憶手段に記憶させる適合位置検出手段と、
前記不揮発性記憶手段から前記適合位置情報を読み込み、前記適合位置情報に基づいて原点復帰するために理論上必要となる前記収差補正レンズの理論移動量を求め、求めた理論移動量に所定のマージン移動量を加えた原点復帰移動量を求め、前記原点復帰移動量を用いて前記収差補正レンズを原点復帰させる収差補正レンズ変位制御手段と、
を備えた、
光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記適合位置検出手段は、前記検出した適合位置が、前記不揮発性記憶手段に前記適合位置情報として記憶されている適合位置と異なる場合は、前記検出した適合位置を、新たな適合位置情報として前記不揮発性記憶手段に記憶させる、
光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスク装置であって、
前記適合位置検出手段は、前記検出した適合位置と、前記不揮発性記憶手段に前記適合位置情報として記憶されている適合位置と、の差分量が所定量を上回っていた場合に限り、
前記検出した適合位置を、新たな適合位置情報として前記不揮発性記憶手段に記憶させる、
光ディスク装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ディスク装置であって、
前記所定量は、前記マージン移動量以下に設定されている、
光ディスク装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ディスク装置であって、
前記所定量は、前記マージン移動量未満に設定されている、
光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクが前記記録層を複数有する場合は、
前記適合位置検出手段は、前記光ディスクの前記複数の記録層のうち何れかの記録層である基準記録層に適合した前記収差補正レンズの位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を適合位置情報として前記不揮発性記憶手段に記憶させ、
前記収差補正レンズ変位制御手段は、前記光ディスクの前記複数の記録層のうち前記基準記録層以外の記録層に対して記録又は再生が行われていた場合は、その記録又は再生が完了後、前記基準記録層に適合した前記適合位置に前記収差補正レンズを変位させる、
光ディスク装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の光ディスク装置であって、
前記収差補正レンズ変位制御手段は、前記光ディスクの回転が停止したら、前記不揮発性記憶手段に前記適合位置情報として記憶されている適合位置に、前記収差補正レンズを変位させる、
光ディスク装置。
【請求項8】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
光ピックアップの温度変化を検出する温度変化検出手段を更に備え、
前記温度変化検出手段により前記光ピックアップの温度変化が検出されたら、前記適合位置検出手段は、前記光ディスクの前記記録層に適合した前記収差補正レンズの位置である適合位置を補正し、補正後の適合位置と、前記不揮発性記憶手段に前記適合位置情報として記憶されている適合位置と、の差分量が前記マージン移動量以下に設定された所定量を上回っていたら、前記補正後の適合位置を、新たな適合位置情報として前記不揮発性記憶手段に記憶させる、
光ディスク装置。
【請求項9】
レーザ光源と対物レンズの間に配置され、球面収差を補正するために光軸上で変位可能とされた収差補正レンズを備えた光ディスク装置における、収差補正レンズの原点復帰方法であって、光ディスクは記録層を備え、
前記光ディスクの前記記録層に適合した前記収差補正レンズの位置である適合位置を検出し、検出した適合位置を適合位置情報として記憶する第1のステップと、
記憶している前記適合位置情報を読み込み、前記適合位置情報に基づいて原点復帰するために理論上必要となる前記収差補正レンズの理論移動量を求め、求めた理論移動量に所定のマージン移動量を加えた原点復帰移動量を求め、前記原点復帰移動量を用いて前記収差補正レンズを原点復帰させる第2のステップと、
を含む、
収差補正レンズの原点復帰方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項9に記載の収差補正レンズの原点復帰方法を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【図7G】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−97840(P2013−97840A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240891(P2011−240891)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】