説明

光ディスク装置およびトラッキング制御方法

【課題】 より記録状態の劣化を抑制するデータトラック上の退避技術を提供する。
【解決手段】 光ディスク上にレーザー光を照射してデータの記録・再生または再生のみを行なう手段を備えた光ディスク装置において、光ディスクの装着時にホストへのデータ転送の中断状態におけるトラッキング制御中にデータバッファ内の残量数に応じトラックの追従範囲を設定する手段と、該手段によって設定した前記追従範囲のトラックのトレース手段とを設けたことを特徴とする光ディスク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置およびトラッキング制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録規格の光ディスク(以降記録式光ディスクと記載)では、特定箇所に連続してレーザー光を照射し続けると、記録状態の劣化が生じ再生品位が低下する場合がある。特に近年使用するレーザー光の短波長化によりその傾向は顕著となってきており、レーザー光のパワー制御には十分な注意が必要となってきている。
【0003】
また光ディスク再生装置では、通常ディスクの再生において、データの記録領域の途中でデータの転送を一時中断する際(以降ポーズ状態と記載)のサーボ制御として、データ転送が終了した時点での同一トラックまたは近傍の数トラック間のトレースを繰り返す事が一般的である。しかしポーズ状態が長時間に及ぶ場合、先に述べたように特定箇所へのレーザー光の連続照射となり、使用しているディスクが記録式光ディスクの場合、記録状態の劣化が生じる場合が考えられる。
【0004】
この記録状態の劣化を避ける手段として、ある特定時間以上はレーザー光の照射を停止することで、特定場所への連続照射を防ぐ手段が一般的に使用されている。この場合フォーカスサーボ、トラッキングサーボなどを停止する事となり、次にホスト側からデータ転送要求を受けた場合、レーザー光の再点灯後に、サーボの再設定を行う必要があるため、復帰までの時間を要する事となる。
【0005】
これを回避する手段として、情報を記録したトラック以外の部分にレーザー光を退避させる事でサーボを維持する事が考えられる。
例として、特許文献1におけるグルーブに隣接するランドへの退避、特許文献2における使用済PCAエリアへの退避、などが上げられるが、前者においてはランド上にてトラッキング制御を行うための専用の制御手段が必要となる事、後者においては、使用済PCA領域がほとんどない場合、未使用のPCA領域近くにて退避することとなり、PCA領域の特性を劣化させる可能性が考えられる事、などの不具合を生じる事となる。
【0006】
上記不具合を回避するためには、データトラック上での何らかの退避手段を有する必要があり、特許文献3のように退避位置をデータトラック上のデータ領域の最後尾、またはその近辺のみでトラックジャンプさせる手法が挙げられている。言わばtrack−A(ポーズ位置)と、track−B(退避位置)にあたる。ただし、この手法では、上記データ領域が記録済領域を示す場合、先に述べた特定箇所へのレーザー光の連続照射となり、最後尾トラック付近の記録状態が劣化する可能性がある。また上記データ領域が未記録のデータ領域を含む場合、未記録トラックのトラッキング制御手段を持たない再生専用の装置には適用できないという問題もあった。
【特許文献1】特開2006−79666号公報
【特許文献2】特開平8−194950号公報
【特許文献3】特許第3105980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、より記録状態の劣化を抑制するデータトラック上の退避技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の光ディスク装置は、光ディスク上にレーザー光を照射してデータの記録・再生または再生のみを行なう手段を備えた光ディスク装置において、光ディスクの装着時にホストへのデータ転送の中断状態におけるトラッキング制御中にデータバッファ内の残量数に応じトラックの追従範囲を設定する手段と、該手段によって設定した前記追従範囲のトラックのトレース手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より記録状態の劣化を抑制するデータトラック上の退避技術が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明による実施例1を図1乃至図5を参照して説明する。本発明の実施例として、光ディスク再生装置の場合について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わるディスク装置のブロック図である。
この光ディスク装置は、デジタルデータを記録するためのデジタルデータ記録層(情報記録面)103を有する光ディスク101と、光ディスク101を回転駆動するためのディスクモータ102と、光ディスク101のデジタルデータ記録層103に光を集光させるための光ピックアップ105と、光ディスク101に光ピックアップ105を介して光を照射する光源(ピックアップ105に内蔵)とを具備している。
【0012】
このディスク装置は、光源からの光照射によってデジタルデータ記録層103のデジタルデータを再生することを可能としている。
また、ピックアップ105は、送りモータ110によって、光ディスク101に対してラジアル方向に駆動可能となっている。
また、送りモータ110は、送り駆動回路111によって駆動制御されている。また、ピックアップ105は、レーザー駆動回路112、フォーカス駆動回路113、トラッキング駆動回路117によって、光源であるレーザーが駆動制御され、対物レンズがフォーカス制御、トラッキング制御される。
【0013】
また、ディスクモータ102は、ディスクモータ駆動回路114によって回転速度を制御されている。
また、ピックアップ105は信号処理回路106に接続され、光ディスク101のデジタルデータ記録層103からデータを読み出す。
フォーカス駆動回路113、レーザー駆動回路112、送り駆動回路111、ディスクモータ駆動回路114、信号処理回路106は、コントローラ108によって制御されている。
【0014】
コントローラ108は、バッファメモリ107を附随させ、ATAPIやSATA等のI/F115を介して外部ホストコンピュータ116と接続されている。
ピックアップ105およびコントローラ108は、情報を再生することができるようになっている。このため、レーザー駆動回路112や、フォーカス/トラッキングアクチュエータを装備しており、光ディスク101の反射光を検出し、フォーカスエラー、トラッキングエラー、RF信号などが検出可能となっている。
【0015】
図2は、実施例の要部の詳細を示すデータ処理機能ブロック構成図である。
波形等化処理部201は光ディスクの処理を行う符号変換・訂正処理部202と共に図1の信号処理回路106に相当する部分であり、ピックアップ105からのアナログ信号をデジタル多値信号に変えて符号変換・訂正処理部202へと導くように構成されている。次の符号変換・訂正処理部202では、デジタル多値信号化されたデータを符号変換・訂正処理を行い音楽ソース等の例えばバイト単位の生データへ変えてバッファメモリ203へと出力する。バッファメモリ203はコントローラ108に相当するシステム制御部204に附随する。
【0016】
システム制御部204は、ディスクモータ駆動回路114に相当するサーボプロセッサ205を制御し、I/F115に相当するホストインターフェース206を介して外部ホストコンピュータ116と接続されている。
【0017】
図2に示すように、通常、光ディスク装置ではディスクから読み取ったデータを一旦バッファメモリ内に蓄え、バッファメモリからホスト側にデータを転送する。
図3は、同実施例におけるトラッキング制御のディスク上のイメージを説明するために示す見取り図である。また図4は、同実施例におけるトラッキング制御のバッファメモリのイメージを説明するために示す図である。また図5は、同実施例におけるポーズ時のトラッキング制御のフローチャートである。
【0018】
以下ディスクイメージ(図3)、バッファメモリイメージ(図4)を用いて、フローチャート(図5)に沿って説明する。
光ディスクの再生において、データの記録済領域の途中にてデータの転送を一時中断(停止)する際、例えば図3において、レーザー光の照射位置がAの位置にてデータ転送が中断されたとする。その時点のバッファメモリ内のデータ残量“nx(図4、xはデータブロック数)”を確認し(図5、ステップS1)、トラッキングサーボの追従エリアA−Bを設定する(図5、ステップS2)。この時点ではデータ転送は停止しているが、トラッキングサーボとしては、トラックの追従(トレース)を継続している(図5、ステップS3)。データ転送が停止している間に、トラッキング追従設定エリアの終了位置“B”までトラックトレースが継続された場合(図5、ステップS4YES)、追従設定エリアの開始位置“A”を目的アドレスとして移動(サーチ)を行い(図5、ステップS5)、設定エリア内のトラックトレースを繰り返す。
【0019】
次にホストからのデータ転送要求によりデータ転送が再開された場合(図5、ステップS6YES)、レーザー光を目的アドレス、この場合データ転送が中断されたAの位置に移動(サーチ)させ(図5、ステップS7)、光ディスクからのデータの読み取りを再開する(図5、ステップS8)。同様にA”の位置にてデータ転送が中断され、その時点でのバッファメモリ残量が“mx”の場合、追従エリアをA”−B”に設定し、同様の処理を行う。
【0020】
データ転送再開後で2回目のデータ転送が中断された際、例えば図-4において、レーザー光の照射位置がA’の位置にてデータ転送が中断されたとする。この時、トラッキングの追従設定エリアはA’−B’となるため、既に追従エリアとして使用したエリアA−Bと重なる部分が発生する事になる。このような場合は、追従設定エリアをA”−B”のような別のエリアに設定をする事で、特定エリアへのレーザー光の集中照射を避ける事とする。
【0021】
この別エリアへの追従エリアの設定手段としては、ドライブ内による設定、例えば既使用の追従エリアA−Bの継続エリア(位置Bを新しい位置A’に設定)、またはホストから別途アドレスを指定する方法などを設定するようにしてもよい。
【0022】
なお、ステップS1でデータ残量を確認した際に少ないと、近い領域を何回も指定する必要があるが、比較的多ければ遠い領域まで指定可能であり上記方法の有効性は高まる。
【0023】
本実施例では、レーザー光によって記録媒体(ディスク)の情報を記録・再生する光ディスク記録再生装置、又は情報の再生を行う光ディスク再生装置において、記録式の光ディスクを取り扱う際、ホストへのデータ転送の中断状態(ポーズ状態)におけるトラッキング制御を、特定箇所における単なる同一トラック又は近傍複数の数トラック間のトレースの繰り返しではなく、ドライブ又はシステム(ホスト)としてのデータバッファ内の残量数に応じトラックの追従範囲を設定し、その間はトラックのトレースを続け、ホストからデータ転送要求が再開された時点で再度目的アドレスへのサーチを行い、目的アドレスからのデータ転送を再開するとした手法によって、記録媒体の特定箇所へのレーザー光の連続照射を避け、記録媒体(ディスク)内の特定箇所の記録状態の劣化を防止する。
【0024】
また、ポーズ時における記録媒体内のトラックトレースエリアが、前回のデータホールド時(ポーズ時)と同一エリアを繰り返す状態となった場合、又は前回のポーズ時に使用したエリアがトレース範囲に含まれていた場合、前回のトレース範囲とは異なるエリア、例えば前回のトレース範囲の次のトラック以降などに変更する事や、ホスト側から別のエリアを指定する事で、記録媒体の特定箇所へのレーザー光の連続照射を防止する事により、記録媒体(ディスク)内の特定箇所の記録状態の劣化を防止する。
【0025】
先行技術では、データ領域の最後尾のみでのトラックジャンプとしているが、同一トラック上におけるトレースの繰り返しであり、特定箇所へのレーザー光の連続照射となるため、記録状態の劣化の可能性が残る。
【0026】
本本実施例では、前回と同じエリアで待機状態となった時でも、前回と違うエリアをトレースさせることが出来るため、特定箇所へのレーザー光の連続照射を避けることが可能となる。
【0027】
先行技術では、データ領域の最後尾のみでトラックジャンプとしているため、待機状態が解除された際、目的アドレスがポーズ位置から遠い場合もあり、2層ディスクにおいては別のレイヤーをトレースしている場合も考えられる。
【0028】
本実施例ではシステム全体のデータバッファ量に応じてトレース範囲をホスト側より設定することが可能となるため、データ転送再開時の復帰条件(シーク時間等)を短縮できる位置に設定出来る。
【0029】
本実施例の効果として、先行技術と比較して復帰が早いシステムが構築可能となる。
先行技術と比較して記録データの劣化をより防ぐことが可能となる。従来技術では、ポーズ時のレーザー光の退避位置が限定されているため、データの転送、中断を繰り返す事により、退避位置へのレーザー光の連続照射を行う事となるため、退避位置での記録状態の劣化が生じる事が考えられるが、本実施例では、退避位置が固定されておらずかつ特定エリアへのレーザー光の連続照射も抑える事ができるため、ディスクの記録面への損傷(データ劣化)を低減することが可能となる。
【0030】
また、システム(ホスト)からも追従設定エリアを指定する事によって、より広範囲にトレース範囲をばらつかせる事ができ、ディスクの記録面への損傷(データ劣化)を低減することが可能となる。
【0031】
また、システム(ホスト)からも追従設定エリアを指定する事によって、待機開始時に近い範囲にトレース範囲を指定することにより、データ転送再開時の待機状態からの復帰時間を短縮することが可能となる。
【0032】
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、この外その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
また、上記した実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜に組み合わせることにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いものである。さらに、異なる実施の形態に係る構成要素を適宜組み合わせても良いものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係わるディスク装置のブロック図。
【図2】同実施例の要部の詳細を示すデータ処理機能ブロック構成図。
【図3】同実施例におけるトラッキング制御のディスク上のイメージを説明するために示す見取り図。
【図4】同実施例におけるトラッキング制御のバッファメモリの機能イメージとディスクトレースのイメージを説明するために示す図。
【図5】同実施例におけるポーズ時のトラッキング制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0034】
101・・・光ディスク
102・・・ディスクモータ
103・・・情報記録面
105・・・ピックアップ
106・・・信号処理回路
107・・・バッファメモリ
108・・・コントローラ
110・・・送りモータ
111・・・送り駆動回路
112・・・レーザー駆動回路
113・・・フォーカス駆動回路
114・・・ディスクモータ駆動回路
115・・・インターフェイス
116・・・ホストコンピュータ
117・・・トラッキング駆動回路
201・・・波形等化処理部
202・・・符号変換・訂正処理部
203・・・バッファメモリ
204・・・システム制御部
205・・・サーボプロセッサ
206・・・ホストインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク上にレーザー光を照射してデータの記録・再生または再生のみを行なう手段を備えた光ディスク装置において、
光ディスクの装着時にホストへのデータ転送の中断状態におけるトラッキング制御中にデータバッファ内の残量数に応じトラックの追従範囲を設定する手段と、
該手段によって設定した前記追従範囲のトラックのトレース手段とを設けたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記データ転送の中断状態における前記追従範囲が、前回中断時の追従範囲の次のトラック以降に設定されトラッキング制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記データ転送の中断状態における前記追従範囲が、ホストから前回中断時の追従範囲とは別の追従範囲を指定されてトラッキング制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記データ転送の中断状態における前記追従範囲が、ホストからデータバッファ内の残量数に応じトラックの追従範囲を設定されてトラッキング制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
光ディスクに対するデータの記録・再生または再生のみを行なう手段を備えた光ディスク装置において、
光ディスクの装着時に前記光ディスクが記録規格の光ディスクか否かを判断する手段と、
該手段によって記録規格の光ディスクでないと判断されたとき、サーボを駆動させた状態で前記光ディスク上の任意の位置にレーザー光を照射したまま待機する手段とを
設けたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
レーザー光を照射してデータの記録・再生または再生のみを行なう光ディスクに対して、
ホストへのデータ転送の中断状態におけるトラッキング制御中にデータバッファ内の残量数に応じトラックの追従範囲を設定し、
かく設定された前記追従範囲のトラックのトレースを行うことを特徴とするトラッキング制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−48704(P2009−48704A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214373(P2007−214373)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】