説明

光ディスク装置

【課題】半径方向に偏芯した光ディスクの記録時または読取時のエラーに対する耐性を向上させる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】
光ディスク装置1は、昇降部4、PUヘッド7、スピンドルモータ8、回転軸81、クランク82、第1チャック91、第2チャック92、制御部3等を備える。第1チャック91、第2チャック92は、光ディスク100を挟み込んでチャックする。制御部3のROM31は、持換処理32、偏芯量測定処理33、調整処理34を行うサブルーチンを記憶している。持換処理32は、一旦、チャック解除状態にして、回転軸81だけを回転して、光ディスク100と回転軸81との取付角度を変更する。偏芯量測定処理33は、チャック状態で、光ディスク100の偏芯量を測定する。調整処理は、持換処理32により、取付角度を変えながら、偏芯量測定処理33を行い、最小の偏芯量になる取付角度になるよう持換処理32を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されたデータを読み取り、または光ディスクに記録する装置に関し、特に半径方向に偏芯した光ディスクの読取時または記録時のエラーに対する耐性を向上させる手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクに対しデータの記録や、データの読み取りを行う光ディスク装置が実用化されている。この光ディスク装置は、光を出力する半導体レーザと、この光を光ディスクに集光するレンズ等を備えるピックアップヘッドと、光ディスクを回転させるスピンドルモータと、ピックアップヘッド全体を移動させるスレッドモータ(またはリニアモータ)と、ピックアップレンズのみを移動させるアクチュエータ等を備えている。ディスクの読み取り時、記録時には、スピンドルモータの回転に同期して、スレッドモータを駆動して、トラックの半径方向に移動させる。また、所定のトラックへ追従させるために、アクチュエータを駆動して、すばやくトラックの半径方向の誤差に追従させる。このアクチュエータがトラックの半径方向のずれを解消するので、光ディスクドライブ装置の偏芯量、光ディスクの偏芯にも対応することができるが、アクチュエータの移動範囲、レンズの収差等に基づく許容範囲があった。従来、ドライブ装置の偏芯量を抑えるために機械的な精度を0に近づける対策が採られていた。
【0003】
特許文献1には、チャッキングをいったん開放して、再度やり直すことにより、チルトエラーを低減できる光ディスク記録再生装置が開示されている。特許文献2、3には、スピンドルモータ軸を傾けることにより、光ディスク全体を傾けてチルト補正を行う光ディスク装置が開示されている。
【特許文献1】特開10−149613号公報
【特許文献2】特開10−177763号公報
【特許文献3】特開2003−141762公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光ディスクでは、ドライブ装置の偏芯量を抑えるために機械的な精度を0に近づけたとしても、光ディスク自体が偏芯していた場合には、記録、読取ができない問題があった。また、特許文献1のようにチャックをやり直したとしても、ディスク自体が偏芯していれば、この問題を解決できない。
【0005】
そこで、本発明は、半径方向に偏芯した光ディスクの記録、読取時のエラーに対する耐性を向上させる光ディスク装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
【0007】
(1) 装置本体にセットされている光ディスクに対してレーザ光を照射して、前記光ディスクに反射した反射光からデータを読み取るピックアップヘッドと、
前記光ディスクをチャックするチャック部と、
前記チャック部を用いて、前記光ディスクをチャックしたり、開放したりするチャック開閉手段と、
前記チャックに接続した回転軸を回転させる回転手段と、を備える光ディスク装置において、
前記チャック開閉手段により前記光ディスクがチャックされた状態で、前記光ディスクの偏芯量を測定する偏芯量測定手段と、
前記チャック開閉手段により前記光ディスクが開放された状態で、前記チャック部と前記光ディスクとの取付角度を予め定めた複数の角度に切り換えて、前記光ディスクをチャックし直す持換手段と、
前記持換手段により切り換えた取付角度それぞれについて、前記偏芯量測定手段を用いて光ディスクの偏芯量を測定し、前記持換手段を用いて、前記偏芯量に基づいて定めた角度に前記光ディスクをチャックし直す調整手段と、を備え、
前記チャック部は、前記チャック部の中心が前記回転手段の回転軸に対して偏芯して設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成では、チャック部は、前記チャック部の中心が前記回転手段の回転軸に対して偏芯して設けられている。また、持換手段が、取付角度を予め定めた複数の角度に切り換えてチャックし直す。切り換えた取付角度それぞれについて前記偏芯量測定手段を用いて前記偏芯量を測定し、偏芯量に基づいて、調整手段が前記光ディスクをチャックし直す。調整手段により、各取付角度における偏芯量に基づいて取付角度を調整するとき、チャック部が偏芯して設けられていることにより、ディスクの偏芯をキャンセルできる。したがって、機械的誤差を0にするだけでは読出または記録が困難であった偏芯量の多いディスクについても、読出、または記録をすることができる。また、持換手段は、取付角度を予め定めた複数の角度に切り換える。したがって、行き当たりばったりで取付角度を調整するのではなく、計画的に取付角度を切り換えるから、調整手段は、確実に取付角度を調整できる。
【0009】
(2) 前記偏芯量測定手段は、前記回転手段を用いて前記光ディスクを回転させて、前記光ディスクが1周回転する間に前記ビックアップが光ディスク上を横断するトラックの数を前記反射光から測定して、前記トラックの数を前記偏芯量とする。
【0010】
横断するトラックの量から偏芯量を測定するので、付加的な要素を加えることなく、偏芯量を測定できる。
【0011】
(3) 前記チャック部は、前記回転手段の回転軸に対し、クランク状部材を介して設けられているようにしてもよい。このようにすれば、チャック部を、モータの回転軸に対して偏芯して取り付けることができる。
【0012】
(4) 前記チャック切換制御手段は、前記取付角度を90度ずつ4点の角度に切り換えてもよい。
【0013】
この構成では、偏芯量を測定する点として360度を4等分した点を押さえているので、偏芯量の調整をより確実にすることができる。
【0014】
(5) 前記回転手段は、ステッピングモータを備えるようにしてもよい。ステッピングモータは、与えたパルスと、回転角度との対応関係をとることができるので、回転角度との関係をとりやすい。
【発明の効果】
【0015】
この発明では、チャック部が偏芯して設けられているので、調整手段により各取付角度における偏芯量に基づいて取付角度を調整するとき、ディスクの偏芯をキャンセルできる。したがって、機械的誤差を0にするだけでは読出、または記録が困難であった偏芯量の多いディスクについても、読出、または記録をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を用いて、本実施形態の光ディスク装置(DVDレコーダ)について説明する。図1は、本実施形態の光ディスク装置の概略構成図であり、フロントエンドに関係する構成を表している。なお、図1では、ユニットケース11と、トレイ102、光ディスク100のみ断面図で描いている。また、図示しない部分の構成については、公知の技術を用いることができる。
【0017】
光ディスク装置1は、図示しない外部ケースの中に、ドライブユニット10、記録/再生回路23、サーボ回路24、ドライバ26、制御部3を備える。
【0018】
ドライブユニット10は、ユニットケース11の中に、トレイ102、内部ケース12、昇降部4を備える。また、ドライブユニット10は、内部ケース12の中に、PUヘッド7(以下、PUヘッド2という。)、スレッドモータ71、スピンドルモータ8、回転軸81、クランク82、第1チャック91、第2チャック92を備える。
【0019】
ユニットケース11は、ディスクカバー111を備えている。ディスクカバー111は、光ディスク100付近への粉塵の混入を防ぐ。また、ディスクカバー111には、中央部に孔が空いており、第2チャック92を回転可能に支持する。
【0020】
また、ユニットケース11には、スリット溝112が形成されている。これにより、PUヘッド7の移動範囲のいずれの位置でも、スリット溝111の間から光ディスク100にレーザ光を照射できる。
【0021】
トレイ102は、ディスクと平行な方向に(紙面左右方向)移動可能に支持されており、図示しない駆動部により、トレイ102にマウントされた光ディスク100を装置前方(図面1の左手)から内部へ導入する。また、トレイ102にも、スリット溝111と同様に溝が形成されている。PUヘッド7は、この溝の間から、光ディスク100にレーザ光を照射できる。
【0022】
内部ケース12は、ユニットケース11に固定された支点121により回転可能に支持されている。また、内部ケース12は、PUヘッド7、スピンドルモータ8、回転軸81、クランク82を内蔵する。
【0023】
昇降部4は、内部ケース12に固定した部分歯車41と、部分歯車41と噛み合うピニオン歯車42を備える。昇降部4は、図示しない駆動源、ギアユニットにより、ピニオン歯車42を回転させる。これにより、部分歯車41とピニオン歯車42の噛み合う位置が移動し、内部ケース12が上下する。また、ピニオン歯車42が回転しないときは、ピニオン歯車42を駆動するギアユニットの摩擦力により、部分歯車41を介して内部ケース12を支持する。
【0024】
PUヘッド7は、図示しないレーザダイオード(LD)、ビームスプリッタ、対物レンズ、フォトディテクタ、2軸のアクチュエータを備えている。LDは、レーザ光を出力する光源である。フォトディテクタは、例えば、受光領域がほぼ均等に4分割されて構成されており、4つの受光領域を形成している。この受光領域各々から出力された電圧量の所定の演算に基づいて、記録再生回路23は、トラッキングエラー、サーボエラーを検出することができる。ビームスプリッタは、受光した光の一部を反射させ、その他の光を透過させる。ビームスプリッタは、LDから出力された光を光ディスク100へ導くと共に、光ディスク100で反射した光をフォトディテクタに導く。対物レンズは、光ディスク100との間に設けられ、ビームスプリッタで反射した光を光ディスク100に集光する。また、光ディスク100で反射した光を平行光に変換してビームスプリッタに導く。
【0025】
以上で示したPUヘッド7の構成により、レーザダイオードが出力した光はビームスプリッタ、対物レンズを介して光ディスク100に照射される。フォトディテクタは、ディスクで反射した反射光を対物レンズ、ビームスプリッタを介して検出する。
【0026】
また、PUヘッド7は、PUヘッド7を貫通するねじ(図示省略)と噛み合って支持されている。ねじは、光ディスク100の半径方向に沿って設けられている。スレッドモータ71は、ねじ軸を回転させて、PUヘッド7を光ディスク100の半径方向に移動させる。
【0027】
スピンドルモータ8は、ステップモータとすることができる。スピンドルモータ8は、ドライバ26によりパルス状の信号を受けて、回転軸81を回転させることができる。回転角は与えたパルスに比例するから、回転開始以後に回転した角度を計算することができる。
【0028】
回転軸81は、軸部材であり、クランク82を備える。クランク82は、2度屈曲した部材である。クランク82の先には、第1チャック91が固定されており、クランク82の先は、回転軸81と平行に形成されている。クランク82は、クランク82の先がスピンドルモータ8の中心軸から、50[μm]程度、意図的に偏芯するように形成されている。なお、図1は、図示の容易のため、この偏芯を誇張して描いている(図2も同様である)。
【0029】
第1チャック91は、光ディスク100の中央の孔にこれを差し込んだときに、光ディスク100の2面と接触するよう構成されている。部分歯車41が上昇したときには、図1のようになり、光ディスク100を保持する。
【0030】
第2チャック92は、厚みのある円盤の形状であり、プーリのような形状をしている。すなわち、第2チャック92は、円盤の軸方向の内側の直径が外側より小さく形成されている。この直径の小さい部分は、ディスクカバー111に回転可能に支持されており、第2チャック92が抜けないように形成されている。このように形成するためには、例えば、ディスクカバー111の上下から2部材を合体するようにすればよい。
【0031】
第2チャック92の下部は、昇降部4により内部ケース12が上昇したときに、光ディスク100、第1チャック91と噛み合う。第2チャック92とディスクカバー111との間には、上下に移動する余裕がある。内部ケース12が下に退避したときは、第2チャック92は、下に垂れ下がる。したがって、光ディスク100の重力により、光ディスク100、第1チャック91と噛み合って、第1チャック91と共に光ディスク100を挟み込むことができる(本発明の「チャックする」に相当する。)。これにより光ディスク100の回転を安定化させることができる。
【0032】
記録再生回路23は、RFアンプ等を備え、PUヘッド2の複数の受光素子の出力を全加算してRF信号を生成してこれを増幅し、該RF信号を処理してAV(Audio Visual)データを取り出す。また、4分割された受光素子の出力について所定の演算によりトラッキングエラー信号、およびフォーカスエラー信号を生成する。記録/再生回路23は、レーザドライバを備え、光ディスク100への記録時には、図示しないエンコーダ・デコーダから与えられるデジタル信号を増幅して、駆動電圧をPUヘッド7のレーザダイオードに出力する。
【0033】
サーボ回路24は、記録再生回路3から与えられるトラッキングエラー信号、およびフォーカスエラー信号に基づいて、それぞれトラッキング調整を行うためのトラッキングサーボ信号、およびフォーカス調整を行うためのフォーカスサーボ信号を生成する。また、サーボ回路24は、制御部3から入力されるシーク制御信号に基づいて、スレッドモータ7を駆動するスレッドモータ駆動信号を生成し、ドライバ26に出力する。
【0034】
ドライバ26は、トラッキングサーボ信号、フォーカスサーボ信号、およびスレッドモータ駆動信号に基づいて、それぞれPUヘッド2内の2軸のアクチュエータ、スレッドモータ7を駆動する。サーボ回路24、ドライバ26により、光ディスク100上のLDの照射位置を所定のトラックに追従させることができる。
【0035】
スレッドモータ7は、PUヘッド2を光ディスク100の半径方向にシークさせ、この光ディスク100に対するレーザ光の照射位置を変化させる。スピンドルモータ8は、光ディスク100を回転させる。
【0036】
制御部3は、例えばマイコンで構成されている。制御部3は、CPU30、ROM31、RAM39を備え、ROM31内に記憶したサブルーチンを実行することにより、各部を制御する。ROM31は、例えば、持換処理32、調整処理33を実行するサブルーチンを記憶している。
【0037】
図2を用いて、トレイ102、昇降部4の動作について説明する。図2は、光ディスク装置1のメカ部分を抜粋している。以下、挿入動作、光ディスク上昇動作、光ディスク降下動作の各動作について説明する。
【0038】
<挿入動作>
図2(A)は、トレイ102に光ディスク100をマウントした後の動作を表わしている。トレイ102に光ディスク100をマウントするときは、昇降部4は、ピニオン歯車42を駆動して、内部ケース12を下げた状態にしておく。これにより、第1チャック91と光ディスク100との衝突を回避できる。
【0039】
この状態から、図示しない挿入ボタンが押されると、トレイが右方向に移動し、(B)の状態になる。図2(B)の状態では、第2チャック92とディスクは接しておらず、光ディスク100はトレイ102と接している。このとき、回転軸81は、光ディスク100から離れている(以下、「チャック解除状態」と称する。)。
【0040】
<上昇動作>
この状態からピニオン歯車42を駆動すると図2(C)の状態になる。この状態では、まず、内部ケース12が上昇し、第1チャック91が光ディスク100の中心の孔とはめあう。そして、第1チャック91は、光ディスク100を持ち上げる。さらにピニオン歯車42が回転すると、光ディスク100は、第2チャック92と当接し、その後、第2チャック92が、ディスクカバー111から浮き上がる。このとき、光ディスク100は、第1チャック91、第2チャック92で挟持される(以下、「チャック状態」と称する。)。このチャック状態で、スピンドルモータは、光ディスク100を回転させる。
【0041】
<降下動作>
その後、光ディスク100の回転を停止し、ピニオン歯車42を回転させて内部ケース12を下げると、第2チャック92はディスクカバー111に乗り、光ディスク100は、ディスクカバー111から離れる。さらにピニオン歯車42を回転させると、光ディスク100は、トレイ102に乗る。さらにピニオン歯車42を回転させると、第1チャック91は、光ディスク100から離れる(この状態も、「チャック解除状態」である)。さらにピニオン歯車42が回転すると、第1チャック91は、トレイ102よりも下に移動する。これにより、光ディスク装置1から光ディスク100の取り出しが指示された場合、トレイ102のみを移動しても、第1チャック91と、光ディスク100との干渉を防ぐことができる。
【0042】
次に図3のフロー図を用いて、持換処理32について説明する。この処理は、図2で説明した、上昇動作、降下動作を利用するものであり、光ディスク100が回転した後、停止した状態からの動作を表わしている。
ST1で、光ディスク装置1は、降下動作をする。これにより、回転軸81は、光ディスク100から離れる。
ST2で、スピンドルモータ8が回転軸81を回転させる。このとき、光ディスク100は、回転軸81から離れているから、回転軸81のみが回転する。回転軸81の回転と開始と同時に、ステップモータのパルスをカウントし始める。
ST3で、回転軸81が90度回転するまで(ST3のNO)、スピンドルモータ8が回転軸81を回転させたのち待機する。回転軸81が90度回転すると、ST4で、スピンドルモータ8は、回転軸81の回転を停止する。その後、ST5で、光ディスク装置1は、図2で示した上昇動作を行う。
【0043】
なお、図2のフローでは、90度回転する処理を示したが、持換処理32の定義としては、90度に限らず、所定の角度回転するものも持換処理32と称することとする。
【0044】
図3の以上のフローにより、光ディスク100が停止したまま、回転軸81のみが回転するから、光ディスク100と回転軸81との相対的な角度(「取付角度」と称することにする。)を回転させることができる。ここで、回転軸81には、クランク82が設けられている。したがって、持換処理32により光ディスク100を持ち換えて、取付角度を変更すると、取付角度が適切であれば、光ディスク100の偏芯量をキャンセルすることができる。この適切な取付角度のうち最適な角度は、光ディスク100の全体に対し中心部の孔が偏芯している方向と、クランク82の偏芯している方向とが合致する取付角度である。
【0045】
次に図4のフロー図を用いて、偏芯量測定処理33について説明する。この処理は、チャック状態になったことを前提としている。
【0046】
ST11で、PUヘッド7の半導体レーザがレーザ照射を開始する。この状態では、スレッドモータ71は停止しており、トラッキング方向のサーボ制御は行わない。ST12で、スピンドルモータ8は光ディスク100の回転を開始させる。同時に、スピンドルモータ8のモータパルスをカウントし始める。
【0047】
ST13で、光ディスク100が回転している間、制御部3またはサーボ回路24がトラック横断パルスをカウントする。ここで、光ディスク100には数多くのトラックが円周に沿って形成されており、トラックとトラックの間の溝では、反射率が異なる。したがって、PUヘッド7のLDが照射する光ディスク100上の位置を、半径方向に沿って移動させると、受光素子が観測する受光量は、トラック間を横断するごとに、明、暗、明、暗を繰り返す。そこで、受光素子の受光量を閾値と比較して、HI、LOWに分離することにより、パルスを生成する。ここで、このパルスをトラック横断パルスという。ディスクに偏芯がある場合、PUヘッド7、PUヘッド7のレンズをトラッキング方向に動かすアクチュエータを停止している状態で光ディスク100を回転させると、受光素子が受光する反射光の光ディスク100上の位置が移動する。したがって、回転後のトラック横断パルスの数を数えることで偏芯量を測定できる。
【0048】
ST14では、光ディスク100が1周回転したかどうかを判断する。光ディスク100の回転角度は、モータ80(ステップモータ)のモータパルスをカウントすることにより測定することができる。光ディスク100が1周回転するまで(ST14のYES)、スピンドルモータ8は、回転軸81の回転を継続する。光ディスク100が1周回転すると(ST15のYES)、ST15でスピンドルモータ8は、回転軸81の回転を停止する。
【0049】
光ディスク100が1周回転すれば、偏芯によって光ディスク100にLDが照射する位置がある範囲で移動することになる。光ディスク100が1周回転する間に、この範囲内での最外周のトラック、最内周のトラックを1往復することになるから、この最外周のトラック、最内周のトラックの差は、光ディスク100を1周回転させる間に観測された総パルス数Pの半分となる。光ディスク100の偏芯量は、トラック間距離×パルス数P/2で計算できる。ST16で、ST15で求めた偏芯量を制御部3内のRAM39に記憶する。
【0050】
なお光ディスク装置1の実装上は、トラック間距離をカウントすることなく、パルス数P/2を光ディスク100の偏芯量とすることができる。また、ST14の代わりに複数回、回転させて、パルス数を平均してもよい。
【0051】
次に図5のフロー図を用いて、調整処理34について説明する。この処理は、図2(B)に示すチャック解除状態で、トレイ102が閉じた状態で開始する処理を表わしている。
【0052】
ST21では、光ディスク装置1は、チャック状態にするため、上昇動作を行う。ST22で、光ディスク装置1は、図4で示した偏芯量測定処理33を行う。
【0053】
ST23では、光ディスク装置1は、図3で示した持換処理32を行って、取付角度を90度回転させる。ST24で、再度、偏芯量測定処理33を行う。以上のST23、ST24を3回繰り返す。これにより、ディスクの1周を4等分した取付角度各々で、偏芯量測定処理33を行うことができる。
【0054】
ST25では、ST22、ST24の各処理で、記憶した偏芯量のうち、最小の値を最適な取付角度とする。ST26で、その取付角度になるように、持換処理32を行う。この処理により、前記ディスクの1周を4等分した取付角度のうち、偏芯量を最小にすることができる。ここで、第1チャック91は、クランク82により、回転軸81に対し偏芯させて設けられているので、光ディスク100の偏芯をキャンセルすることができる。したがって、光ディスク100が偏芯していて、トラッキングサーボ制御できるトラック幅の範囲を超えている光ディスク100に対しても、光ディスク100の記録、読み出しをすることができる。
【0055】
また、光ディスク装置1は、持換処理32でただ単に光ディスク100を持ち換えるのでなくて、所定角度ずつ持ち換えているから、調整処理34により、最小の偏芯量に確実に調整することができる。
【0056】
本実施形態について補足説明を行う。
【0057】
本実施形態では、回転軸81にクランク82を設けたが、偏芯していればよく、第1チャック91は、クランク82により、回転軸81に対し偏芯させて設けられていればよい。例えば、第1チャック91を単に回転軸81に対して偏芯した位置に固定してもよい。また、第1チャック91と、回転軸81は、一体成形でも、固定されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、第1チャック91、第2チャック92でディスクをチャックし、部分歯車41、ピニオン歯車42で内部ケース12を昇降したが、この方式に限らず、チャックでき、かつ自動的にチャックのオン、オフを切り換えて、光ディスク100とチャックとの取付角度を変更できるのであれば、どのようなチャッキングの方式でもよい。
【0059】
また、持換処理32、偏芯量測定処理33は、調整処理34のサブルーチンとして動作すればよく、必ずしもチャッキングしている状態からはじめる必要はない。例えば、これらのサブルーチンの役割分担として、チャック解除状態、チャック状態のいずれから始める処理としてもよい。
【0060】
以上では、記録/再生回路23を設けるとしたが、記録、読出のいずれかの構成を持っていればよい。その用途に応じて、以上の実施形態を適用できる。
【0061】
回転軸81の偏芯量は、例えば、トラッキングサーボ制御できるトラック幅の範囲内とすることができる。このようにすれば、仮に偏芯量0の光ディスク100をマウントしても、光ディスク100の読出または記録を行うことができる。
【0062】
また、記録/再生回路23、ドライバ26、サーボ回路24、制御部3は、ユニットケース11の外側でなくてもよく、中に入れてもよい。また、本実施形態では、スピンドルモータ8として、ステップモータを用いたが、回転角度を複数点測定できる構成があれば、ステッピングモータでなくても別のモータでもよい。また、本実施形態ではスレッドモータ71を用いたが、スレッドモータ71でなくても、PUヘッド7の駆動をリニアモータ駆動とすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、持換処理32、調整処理34で90度ずつ取付角度を変更したが、それ以外の角度でそれぞれ偏芯量測定処理33を行ってもよい。例えば、60度ずつ測定してもよいし、取付角度の所定の範囲をより小さい角度ピッチで再度探索してもよい。
【0064】
また、本実施形態では、持換処理32は、チャック解除状態で回転軸81を回転することにより行ったが、ディスク外周を掴んで回転させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本実施形態の光ディスク装置の概略構成図
【図2】本実施形態の光ディスク装置の動作説明図
【図3】本実施形態の光ディスク装置の制御部が行う持替処理のフロー図
【図4】本実施形態の光ディスク装置の制御部が行う偏芯量測定処理のフロー図
【図5】本実施形態の光ディスク装置の制御部が行う調整処理のフロー図
【符号の説明】
【0066】
1−光ディスク装置、 10−ドライブユニット、 11−ユニットケース、
111−ケース上部、112−スリット溝、 12−内部ケース、
23−記録/再生回路、 24−サーボ回路、 26−ドライバ、
3−制御部、 30−CPU、 31−ROM、
32−持換処理、 33−偏芯量測定処理、 34−調整処理、
39−RAM、 4−昇降部、 41−部分歯車、 42−ピニオン歯車、
7−ピックアップ(PU)ヘッド、
71−スレッドモータ、 8−スピンドルモータ、
81−回転軸、 82−クランク、 91−第1チャック、 92−第2チャック、
100−光ディスク、 101−外部ケース、 102−トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体にセットされている光ディスクに対してレーザ光を照射して、前記光ディスクに反射した反射光からデータを読み取るピックアップヘッドと、
前記光ディスクをチャックするチャック部と、
前記チャック部を用いて、前記光ディスクをチャックしたり、開放したりするチャック開閉手段と、
前記チャックに接続した回転軸を回転させる回転手段と、を備える光ディスク装置において、
前記チャック開閉手段により前記光ディスクがチャックされた状態で、前記光ディスクの偏芯量を測定する偏芯量測定手段と、
前記チャック開閉手段により前記光ディスクが開放された状態で、前記チャック部と前記光ディスクとの取付角度を予め定めた複数の角度に切り換えて、前記光ディスクをチャックし直す持換手段と、
前記持換手段により切り換えた取付角度それぞれについて、前記偏芯量測定手段を用いて光ディスクの偏芯量を測定し、前記持換手段を用いて、前記偏芯量に基づいて定めた角度に前記光ディスクをチャックし直す調整手段と、を備え、
前記チャック部は、前記チャック部の中心が前記回転手段の回転軸に対して偏芯して設けられていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記偏芯量測定手段は、前記回転手段を用いて前記光ディスクを回転させて、前記光ディスクが1周回転する間に前記ビックアップが光ディスク上を横断するトラックの数を前記反射光から測定して、前記トラックの数を前記偏芯量とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記チャックは、前記回転手段の回転軸に対し、クランク状部材を介して設けられている請求項1〜2のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記チャック切換制御手段は、前記取付角度を90度ずつ4点の角度に切り換える請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記回転手段は、ステッピングモータを備える請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−287750(P2008−287750A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128772(P2007−128772)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】