説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置のトラッキングオフセットの除去を、記録再生と同時に並行して行えるようにする。その際に、光ディスクの回転に伴う成分による誤差が混入しないようにする。
【解決手段】記録再生を行うトラックONの状態で、対物レンズ251に光ディスク10の半径方向にウォブリングを与える。記録トラックの近傍でたとえば正弦波状にウォブルする。これにより検出されるTE信号をLPF501に通してDC付近の成分を抽出し、TE信号から減算する。ウォブリングをON/OFFしてこの動作を繰返す。ON/OFFする時間を光ディスク10の回転周期の整数倍とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置に係わり、特に記録再生動作を行いながらトラッキングオフセットを補正する光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc)に代表される光ディスクを記録媒体とする光ディスク装置においては、情報を記録再生する記録トラックに対して、光ピックアップが正確にトレースするためのトラッキング制御技術が重要である。周知のとおり、光ディスクからのレーザ光の反射光から得たトラッキングエラー信号(以下、TE信号と略記する)をもとにトラッキング制御を行っている。TE信号は例えば正弦波状の周期的な信号であるが、光ディスクにおける反射面の形状などの要因により、正方向と負方向の振幅が異なることがある。この振幅の違いがトラッキングオフセットを発生させ、記録トラックとレーザ光の結像位置とで中心がずれた状態でトラックトレースする。この状態では、衝撃などによりトラッキング外れを起こし易くなるという問題がある。
【0003】
これを解決するために特許文献1では、光ピックアップの光検出器前の前置レンズをウォブリングして前記オフセットをキャンセルする方法が開示されている。
【0004】
また特許文献2では、光ディスクのプリグルーブをウォブリングして前記オフセットをキャンセルする方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−93774号公報
【特許文献2】特開平9−7200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記トラッキングオフセットをキャンセルする方法は、今後もさらに開発する必要がある。
従来最も一般的に行われるトラッキングオフセットを求める方法は、光ディスクが装置に取付けられた時に行うセットアップ状態において、トラックオフ状態で光ピックアップに複数のトラックを横断させてTE信号の最大値と最小値を求め、その差から求める方法である。しかし、これは記録再生動作と同時に行うことはできず、光ディスクの場所によってトラッキングオフセットが変化する場合にはすぐに追従できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的はこの問題を解決し、記録再生動作を行いながら並行してトラッキングオフセットを補正する光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明は、記録媒体として光ディスクを用いる光ディスク装置であって、前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、記録再生のためのレーザ光を発生させるレーザ光発生器と、前記レーザ光およびその前記光ディスクからの反射光を集光する対物レンズと、該対物レンズの位置を移動させるアクチュエータと、前記対物レンズが集光したレーザ光を電気信号に変換する光検出器を含み、前記光ディスクに対して情報を記録再生する光ピックアップと、該光ピックアップのアクチュエータに供給するウォブリング信号を繰返し間歇的に発生するウォブリング信号発生器と、前記光ピックアップの光検出器の出力信号を演算し、前記ウォブリング信号に起因する前記光ピックアップのトラッキング誤差信号を出力する演算回路と、該演算回路の出力である前記トラッキング誤差信号のウォブリング信号周波数帯域を除去するLPFと、前記LPFの出力における前記間歇的に発生されるウォブリング信号のある場合とない場合の差電圧を求める補正回路と、該補正回路の出力である差電圧を前記トラッキング誤差信号から減算する減算器と、該減算器の出力である減算信号に基づき、前記対物レンズのトラッキング中心を制御する制御信号を生成し前記アクチュエータに与えるトラッキング制御回路とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録再生動作を行いながら並行してトラッキングオフセットを補正する光ディスク装置を提供でき、トラッキング外れの少ない光ディスク装置を実現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いながら説明する。
図1は本発明の一実施例を示すブロック図であり、主に光ディスク装置のトラッキング制御に関わる構成要素を示している。まず図1に基づきその動作を説明する。
【0011】
光ディスク10はディスク止め11で固定され、回転軸12を介してスピンドルモータ13により回転駆動される。スピンドルモータ13にはその回転に同期したFG(Frequency Generator)パルスを発生するFG14を含んでおり、装置のベース70に固定されている。
【0012】
光ピックアップ2は外装21の一部にスクリューを設けてあり、スレッドモータ30の回転軸に直結したスクリュー31の回転に伴い誘導されて、光ディスクの半径方向における任意の場所に位置することができる。対物レンズ251を含む対物レンズユニット25は、たとえばスピーカの原理と同様に磁気中に電流を流すことで発生する力でレンズを動かすアクチュエータ24により、光ディスクの半径方向の位置を微調整される。
【0013】
レーザ光発生器22で発生されたレーザ光は、ビームスプリッタ23で反射され、対物レンズ251により光ディスク10の上に結像される。記録時にはレーザ光の有する記録情報を記録し、再生時には光ディスク10に記録されていた情報を再生する。光ディスク10からの反射光は、対物レンズ251とビームスプリッタ23を通過し、光検出器26で電気信号に変換される。変換された信号からAFE(Analogue Front End)回路40での演算によりTE信号が抽出される。この抽出方法については、本発明の主目的ではないので詳しい説明を省略する。その後、制御DSP(Digital Signal Processor)5で後に詳しく説明するような処理が行われ、検出されたトラッキングオフセットに応じこれをキャンセルする信号が発生され、アクチュエータドライバ60を介して対物レンズ251の位置を制御する。これにより前記したトラッキングオフセットの影響を受けることなく、記録トラックの中心にレーザ光を結像させることができる。なお、スレッドモータドライバ61を介して光ピックアップ2の中心位置を制御する動作も、制御DSP5で行われている。
【0014】
次に制御DSP5における信号処理方法につき、詳しく説明する。
図2は従来から行われてきた制御方法によるTE信号の一例を示す波形図である。前記したように、光ディスクを装置に装着した際のセットアップ状態において、アクチュエータ24によるトラックをオフした状態でスレッドモータ30を回転させることで、光ピックアップ2は複数の記録トラックを横切る。この時のTE信号は図2のようになる。トラッキング中心として望ましい位置はTE信号が正弦波の場合、最大となる位置(図中のMAX)と最小となる位置(図中のMIN)の中央(図中のMID)である。一方、制御DSPはTE信号が0となる位置、すなわち横軸(時間軸)と交差する位置がトラッキング中心となるように制御する。MIDと横軸との差がトラッキングオフセット量に対応している。そこで制御DSPはMAX値とMIN値よりMID値を求め、これをTE信号から減算することで、MIDの位置がトラッキング中心となるように、トラッキングオフセットを除去した制御をしている。しかし、これは通常の記録再生動作と並行して行うことはできない。
【0015】
図3は本発明によるトラッキングオフセット検出方法を示す波形図である。これは記録再生動作と並行して同時に行うことができることに特徴がある。このために光ピックアップ2の対物レンズ251を、アクチュエータ24により光ディスクの半径方向へ正弦波状に微動させる動作を行っている。この動作を以下ウォブリングと呼ぶ。ウォブリングを時間的に間歇して行うことで、トラッキングオフセットを検出し、これを補正している。
【0016】
以下、その動作を説明する。まず図中の期間1では、前記トラッキングオフセットがある状態でトラッキング制御され、記録再生しているものとする。
次に期間2では、制御DSP5はウォブリング信号発生器505からの正弦波信号をスイッチ506、加算器507、アクチュエータドライバ60を介してアクチュエータ24に加え、対物レンズ251を光ディスクの半径方向へウォブリングさせる。当然ながらウォブリングさせる範囲は、図2で示したような複数トラックに跨るものではなく、一つの記録トラックの近傍だけの狭い範囲で良い。
【0017】
図4は本発明における対物レンズのウォブリングを模式的に示すものであり、(a)は側面図、(b)は平面図である。図4(a)において、光ディスク10の記録トラック101に対し対物レンズ251が実線の位置に中心があったとして、たとえば破線で示した範囲でウォブリングを行う。図4(b)は記録トラック101に対し光スポット252が移動する状況を示したもので、図4(a)よりも拡大した尺度で描いている。このように対物レンズ251は、光スポット252が特定の記録トラックに対し、その近傍を移動するようにウォブリングされる。
【0018】
するとAFE回路40から制御DSP5へ送られるTE信号は、図3(a)の期間2の部分に示されるように正弦波状ながらトラッキングオフセットを伴う信号となっている。当然ながら、その振幅は図2の場合に比べて小さい。トラッキングオフセットを除去するため、LPF(Low Pass Filter)501を介してウォブリング信号の周波数成分を充分遮断し、DCに近い成分のみを抽出する。LPF501の出力は、図3(b)に示すように期間1では電圧1Aで示すように0近傍であったものが、期間2では電圧1Bで示すような電圧となっている。LPF501の出力は補正回路502に与えられ、ここで図3(c)に示すように(電圧1B−電圧1A)の電位差が求められる。
【0019】
次に期間3ではスイッチ506を切断してウォブリングを止める。ここで補正回路502は(電圧1B−電圧1A)の値を減算器503に与え、ここでAFE回路40の出力であるTE信号から減算させる。この時のLPF501の出力は、図3(b)の期間3に示すように0近傍の電圧2Aとなっている。
【0020】
さらに期間4ではスイッチ506を閉路して、再度ウォブリングを行う。この時、図3(a)の期間4に示すように、AFE回路40から制御DSP5へ送られるTE信号のトラッキングオフセットは、前記減算器503での減算動作により、期間2よりは低減されている。この時のLPF501の出力は図3(b)の電圧2Bに示すように、期間2における電圧1Bよりは0近傍の値となっている。補正回路502は(電圧2B−電圧2A)の値を求め、先の(電圧1B−電圧1A)の値に加算する。この値を次のウォブリングを止めた期間に減算器503に与え、TE信号から減算させる。
【0021】
以上のようにスイッチ506の開閉を繰返して、ウォブリングを間歇的に行う動作を繰返すことで、トラッキングオフセットの正確な値を求めることができ、これをTE信号から減算することで、光ピックアップが記録トラックの中心を正確にトレースするように制御することができる。
【0022】
なお図1のトラッキング制御回路504は、先の減算器503の出力であるトラッキングオフセットを補正されたTE信号に基づき、アクチュエータドライバ60を介してアクチュエータ24を制御し、光ピックアップ2の対物レンズ251が記録トラックの中心をトレースするようにしている。またトラッキング制御回路508はトラッキング制御回路504の出力を受け、スレッドモータドライバ61を介してスレッドモータ30を制御し、光ピックアップ2の中心位置を決めている。これはトラッキング制御回路504と比較して、制御の時定数が遥かに大きいため、ウォブリング信号発生器505からのウォブリング信号の影響は殆ど受けない。
【0023】
本発明においてはさらに、図3の期間1、2、3、4の時間と光ディスク10の回転周期との関係を次のように定める。さきのスピンドルモータ13の含むFG14の出力は、制御DSP5に与えられカウンタ509でパルスカウントされて、たとえば分周した出力がさきのスイッチ506へ与えられる。これにより、ウォブリングする時間(期間2、4)としない時間(期間1、3)を、光ディスクの回転周期(一回転あたりの時間)の整数倍に設定している。
【0024】
AFE回路40の出力におけるTE信号には、光ディスク10の回転に伴う変動成分があって、これがLPF501の出力であるDC成分に加算される問題がある。光ディスク10は図示しない中心孔を用いてディスク止め11に固定されるが、その回転中心と記録トラックの中心は正確には一致しない。このため、光ピックアップ2で再生された信号の包絡線は、光ディスク10の回転に同期した正弦波状の変動を伴っている。このため、図3(a)に示すAFE回路40の出力であるTE信号もこの変動を伴っている。期間2、4のTE信号の包絡線はもちろん、期間1、3のようにウォブリングをしない期間でも、この変動を有している。
【0025】
そこで本発明においては、ウォブリングする時間(期間2、4)としない時間(期間1、3)を、光ディスクの回転周期(一回転あたりの時間)の整数倍に設定している。これにより前記変動成分の時間平均は0となり、LPF501の出力に対する影響はなくなる。したがい、光ディスク10の回転に伴う変動成分があっても、これがトラッキングオフセットの検出に際して誤差を発生する問題を解消できる。
【0026】
以上説明したように、本発明によれば光ディスクのトラッキング制御におけるトラッキングオフセットを除去することができる。またこの際に、ディスク回転に伴う誤差の影響を受けることなく、目的を達成することができる。このためにLPF501、補正回路502、減算器503、ウォブリング信号発生器505、スイッチ506、加算器507など比較的簡単な構成の回路を追加するだけで実現できるという効果もある。
【0027】
さらに本発明では対物レンズ251をウォブリングすることを特徴としている。対物レンズは元々トラッキング制御のために、アクチュエータ24により移動されるようになされている。したがい、前記特許文献1および特許文献2に示したように、従来から固定されている構成要素を移動させる場合と比較して容易に適用でき、また可動物の増加により設計が困難になることはないという効果もある。
【0028】
なお、以上の実施形態はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のさらに多くの適用例が考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】従来のトラッキング誤差信号の一例を示す波形図である。
【図3】本発明によるトラッキングオフセット検出方法を示す波形図である。
【図4】本発明における対物レンズのウォブリングを示す(a)は側面図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0030】
10・・・・・光ディスク
13・・・・・スピンドルモータ
14・・・・・FG
2・・・・・・光ピックアップ
24・・・・・アクチュエータ
25・・・・・対物レンズユニット
26・・・・・光検出器
251・・・・対物レンズ
30・・・・・スレッドモータ
31・・・・・スクリュー
40・・・・・AFE回路
5・・・・・・制御DSP
501・・・・LPF
502・・・・補正回路
503・・・・減算器
505・・・・ウォブリング信号発生器
506・・・・スイッチ
507・・・・加算器
60・・・・・アクチュエータドライバ
61・・・・・スレッドモータドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体として光ディスクを用いる光ディスク装置であって、
前記光ディスクを回転させるスピンドルモータと、
記録再生のためのレーザ光を発生させるレーザ光発生器と、前記レーザ光およびその前記光ディスクからの反射光を集光する対物レンズと、該対物レンズの位置を移動させるアクチュエータと、前記対物レンズが集光したレーザ光を電気信号に変換する光検出器を含み、前記光ディスクに対して情報を記録再生する光ピックアップと、
該光ピックアップのアクチュエータに供給するウォブリング信号を繰返し間歇的に発生するウォブリング信号発生器と、
前記光ピックアップの光検出器の出力信号を演算し、前記ウォブリング信号に起因する前記光ピックアップのトラッキング誤差信号を出力する演算回路と、
該演算回路の出力である前記トラッキング誤差信号のウォブリング信号周波数帯域を除去するLPFと、
前記LPFの出力における前記間歇的に発生されるウォブリング信号のある場合とない場合の差電圧を求める補正回路と、
該補正回路の出力である差電圧を前記トラッキング誤差信号から減算する減算器と、
該減算器の出力である減算信号に基づき、前記対物レンズのトラッキング中心を制御する制御信号を生成し前記アクチュエータに与えるトラッキング制御回路と
を備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置において、前記補正回路は前記差電圧を、前記繰返し間歇的に発生されるウォブリング信号に応じて、繰返し加算して求めることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置において、前記繰返し間歇的に発生されるウォブリング信号の発生される期間および発生されない期間の時間長が、前記光ディスクの1回転当たりの時間長の整数倍であることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−135019(P2010−135019A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311255(P2008−311255)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】