説明

光ディスク装置

【課題】ディスク回転に伴う流体騒音を効果的に低減できる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】筐体40から出没自在に設けられたトレイ5と、トレイと一体に設けられたユニットメカ6と、ディスクを回転自在に支持するターンテーブル9aと、ターンテーブルに支持されるディスクを外周から囲むようにトレイに形成され、ターンテーブルの回転中心を中心とする円弧形状を有する複数の壁面部5b〜5dと、ディスク4の径方向に沿って直線移動するピックアップ10と、ピックアップの移動を確保するために、ピックアップの移動軌道上に位置する壁面部5eに設けられた開口部56を備え、壁面部5eは、他の壁面部と比較してターンテーブルの外周側に後退されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光ディスクへの情報の記録及び再生を行う光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blue-ray Disc)等の光ディスク(直径約120mm)への情報の記録及び再生を行うもので、ノート型、デスクトップ型、タワー型等のパーソナルコンピュータだけでなく、家庭用録画再生機、ゲーム機等にも広く搭載されている。例えば、ノート型及びデスクトップ型のパーソナルコンピュータでは、トレイ方式の薄型の光ディスク装置が主に用いられる。このトレイ方式の光ディスク装置では、スピンドルモータやピックアップ等の主要部品がトレイの裏面に装着されている。そして、光ディスク(ディスク)の脱着の際には、トレイと共にこれらの主要部品が筐体の前方に突出するという特徴がある。
【0003】
ところで、近年、光ディスク装置の記録・再生速度の向上に伴い、ディスクを高速回転させて使用することが多くなっている。そのため、ディスクを回転させるスピンドルモータや装置各部の振動に起因する機械的騒音や、ディスクの回転で形成される旋回空気流による流体騒音等、騒音の増大が問題となっている。前者の機械的騒音は、スピンドルモ−タを含む部品や部品接触部等への振動抑制対策によって徐々に低減されてきている。一方、後者の流体騒音の低減に関しては、薄型の光ディスク装置では内部の構造や寸法に対する制約があるため、検討や対策は十分でなかった。
【0004】
トレイ方式の薄型の光ディスク装置における流体騒音の低減技術としては、例えば、ディスク裏面と対向するトレイの平坦部と、ディスクの外周を囲むように配された壁面部のどちらか一方或いは両方に対し、ディスクの旋回空気流をトレイの下方に流出させるための切り欠き穴を形成したものがある(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特許第3788888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記技術は、流体騒音の支配的な発生源となるディスク周囲の高速な旋回空気流をトレイの上方から下方に導いて、切り欠き穴によってディスク下面からの流れの剥離を促して騒音低減を図るもので、いわば間接的な対策に過ぎない。そのため、ディスク周囲で特に顕著な騒音源となる旋回空気流の分岐点、合流点及び剥離点等に直接的に対策を講じた場合と比較すると、騒音低減の効果は一般的に限られる傾向がある。
【0007】
また、本願の発明者らが流体解析で確認したトレイの上下の静圧分布では、トレイの上方では旋回空気流によってディスクの内周から外周に向かって静圧が高くなるが、トレイの下方では流れが少ないため概ね一様になっていることが知見された。すなわち、トレイの上下の静圧差は、ディスクの内周から中周部分では下方が相対的に高圧となり、ディスクの外周やその外側では下方が相対的に低圧となることが知見された。したがって、トレイの下方に流れを流出させる上記の切り欠き穴は、トレイの平坦部の外周側やその外側の壁面部に設けられる場合にのみ有効となり、ディスクの下面全体で実際に得られる騒音低減の効果は想定したよりもさらに限られてくる。
【0008】
本発明の目的は、ディスク回転に伴う流体騒音を効果的に低減できる光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、筐体から出没自在に設けられたトレイと、該トレイと一体に設けられたユニットメカと、該ユニットメカに備えられディスクを回転自在に支持するターンテーブルと、該ターンテーブルに支持されるディスクを外周から囲むように前記トレイに形成され、前記ターンテーブルの回転中心を中心とする円弧形状を有する複数の壁面部と、前記ユニットメカに備えられ前記ターンテーブルの径方向に沿って前記トレイ内を直線移動するピックアップと、該ピックアップの移動を確保するために、前記複数の壁面部のうち前記ピックアップの移動軌道上に位置する壁面部に設けられた開口部とを備え、前記開口部が設けられた壁面部の少なくとも一部は、他の壁面部と比較して前記ターンテーブルの外周側に後退しているものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク装置によれば、ディスク回転に伴う流体騒音を効果的に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は本発明の第1の実施の形態である光ディスク装置の概略構造を示す分解斜視図であり、図2はそのトップカバーを除いた平面図であり、図3は図2中の線C−Cにおける部分断面図である。以下においては、各図中に示すように、光ディスク装置1のフロントパネル7側を「前(前面)」、回路基板15側を「奥(背面)」、前面から背面に向かって右側を「右(右側面)」、前面から背面に向かって左側を「左(左側面)」と称することがある。
【0013】
これらの図に示す光ディスク装置1は、筐体40と、トレイ5と、ユニットメカ6を備えている。光ディスク装置1は、主として、ノート型やデスクトップ型のパーソナルコンピュータに用いられるトレイ方式で薄型のもので、直径約120mm等の光ディスク(ディスク)4の記録・再生を行うものである。
【0014】
筐体40は、光ディスク装置1を構成する部品が収納される箱状のもので、光ディスク装置1の上下面、左右側面、及び背面となるトップケース2とボトムケース3を備えている。筐体40の中には、主に、トレイ5と、ユニットメカ6と、回路基板15が納められている。回路基板15は、トレイ5に取り付けられたユニットメカ6とフレキシブルプリント配線板16を介して接続されており、ユニットメカ6と制御処理及び信号処理の情報の受け渡しを行っている。
【0015】
トレイ5は、その左右両側面に設けられたガイドレール8を介して筐体40に取り付けられており、ガイドレール8によって矢印A(図1等参照)で示す前後方向に摺動して筐体40から出没自在となっている。このような構造はトレイ方式と称される。光ディスク装置1の前面となるフロントパネル7は、トレイ5の前面側に装着されている。また、トレイ5は、ターンテーブル9a(後述)に載置されるディスク4の裏面と対向する平坦部5aと、平坦部5aの外周を囲むように分散して形成された高台部50b,50c,50d,50eを備えている。
【0016】
平坦部5aの一部には、ユニットメカ6を取り付けるための切り欠き部31が設けられている。本実施の形態の切り欠き部31は、トレイ5の中央部分から左側面前側に向かって設けられている。ユニットメカ6は、切り欠き部31を介して下方からトレイ5に固定されている。
【0017】
ユニットメカ6は、その躯体であるメカシャシ12と、メカシャシ12の上面を覆うユニットカバー13と、メカシャシ12を下面から覆って支持するアンダーカバー14と、ディスク4を回転自在に支持するターンテーブル9aと、図2に示すディスク回転方向R(装置上方からみて時計回り)にターンテーブル9aを回転させるスピンドルモータ9(図3参照)と、ディスク4の情報の記録・再生を行うレーザ及びレーザ駆動IC等を有するピックアップ10を備えている。
【0018】
ユニットカバー13は、トレイ5の平坦部5aとほぼ同じ高さに位置し、平坦部5aとともに平面を形成している。ユニットカバー13には、レンズ等が備えられたピックアップ10の中央部とターンテーブル9aを外部に露出させるための中央開口30(図2参照)が設けられている。中央開口30は、ターンテーブル9aのために設けた円形開口部30aと、ピックアップ10のために設けた矩形開口部30bから成っている。矩形開口部30bは、ピックアップ10の移動軌道であるターンテーブル9aの径方向B(ディスク4の径方向)に沿って設けられており、円形開口部30と一体となって中央開口30を形成している。
【0019】
ピックアップ10は、ユニットメカ6内において所定の間隔で対向配置された1対のガイドバー11(図2参照)に摺動可能に取り付けられており、この1対のガイドバー11によって規定される移動軌道上をターンテーブル9aの径方向Bに沿って移動する。ピックアップ10は、ガイドバー11上を移動しながら、回転するディスク4との情報のやり取りをレーザ光により行う。
【0020】
トレイ5の高台部50b,50c,50d,50eは、それぞれ、平坦部5aよりディスク4寄りに高く突出した凸状の部分で、平坦部5aを取り囲むようにトレイ5の四隅や前側に形成されている。高台部50bは、トレイ5の左側面の奥側に位置するもので、円弧状の壁面部(左奥側壁面部)5bを平坦部5a側(ディスク4側)に有している。高台部50cは、トレイ5の右側面の奥側に位置するもので、壁面部5bと同様に円弧状に形成された壁面部(右奥側壁面部)5cを平坦部5a側に有している。高台部50dは、トレイ5の右側面の前側に位置するもので、壁面部5bと同様に円弧状に形成された壁面部(右前側壁面部)5dを平坦部5a側に有している。壁面部5b,5c,5dは、それぞれターンテーブル9aの回転中心を中心とする同心円の円弧状に形成されており、同一の円周(内径線18)上に形成されている。すなわち、壁面部5b,5c,5dは、ディスク4を外周から囲むようにトレイに配置されている。
【0021】
一方、高台部50eは、トレイ5の左側面の前側に形成されるもので、平坦部5a側に設けられた壁面部(前側庇状壁面部)5eを有している。高台部50eの下方には、切り欠き部31に固定されたユニットメカ6と、中央開口30の矩形開口部30bが位置している。すなわち、高台部50e内にはユニットメカ6の外周部分(ピックアップ10をディスク4の外周部分まで移動させるため、ディスク4の外側にまで延在している部分)が収められており、壁面部5eはピックアップ10の移動軌道上に設けられている。そのため、壁面部5eには、ピックアップ10が通過する開口部56が設けられている。開口部56は、ユニットメカ6の上面から所定高さまで壁面部5eを切り欠いた部分で、切り欠き部31と連なっている。なお、本実施の形態の壁面部5eの断面形状は、図3に示すようにディスク4側において庇形状になっており、壁面部5eとユニットメカ6の間隙(開口部56)ができるだけ大きくなるように形成されている。
【0022】
壁面部5eの一部(径拡大切り欠き部17)は、他の壁面部5b,5c,5dが位置する内径線18と比較して、ターンテーブル9aの径方向外側(外周側)に後退されている。本実施の形態の径拡大切り欠き部17は、壁面部5eの中央に位置する円弧部19と、円弧部19の両端において内径線18へ向かって直線的に接続する直線部20a,20bとによって形成されている。すなわち、本実施の形態の径拡大切り欠き部17は、円弧部19の周方向中央部を基準として、ほぼ対称形に形成されている。ここでは、直線部20a,20bのうち、ディスク4の回転によって発生する旋回空気流21の流れの上流側に位置するものを上流側直線部20aとし、下流側に位置するものを下流側直線部20bとする。
【0023】
上記のように構成される光ディスク装置1において、スピンドルモータ9によってディスク4が回転されると、図2及び図3に示すように、旋回空気流21がディスク4の上下面に沿って発生する。これにより壁面部5eの近傍では、ディスク4の外縁から開口部56を介して高台部50e内に流入する潜り込み流22が旋回空気流21の上流側に形成され、高台部50e内から開口部56を介して流出する漏れ出し流23が旋回空気流21の下流側に形成される。潜り込み流22は、壁面部5eの上流側直線部20aから円弧部19の中央又はやや下流側までの範囲で高台部50eに流入し、その大半は高台部50eとユニットカバー13の間を通過した後、漏れ出し流23として円弧部19の中央より下流側又は下流側直線部20bから流出する。
【0024】
ここで、ディスク4の外縁と壁面部5eの間の隙間が、他の壁面部5b,5c,5dとの隙間と同様に狭くなっていると仮定すると、潜り込み流22と漏れ出し流23がディスク4と壁面部5eの間に集中してしまうので騒音が発生しやすい。例えば、このように集中した流れがディスク4と衝突すると、ディスク4が振動して騒音の要因となることがある。特に、壁面部5eには開口部56が設けられており、これによる潜り込み流22と漏れ出し流23が生じるため、他の壁面部5b,5c,5dと比較して流れの集中による騒音が発生し易い。
【0025】
これに対して、本実施の形態の壁面部5eには径拡大切り欠き部17が設けられており、ディスク4の外縁と壁面部5eとの隙間は、直線部20aから円弧部19に向かって緩やかに拡大した後、円弧部19から直線部20bに向かって緩やかに縮小している。このようにディスク4の外縁と壁面部5eの間隔(隙間)を広くすると、その間隔が狭い場合と比較して潜り込み流22と漏れ出し流23がディスク4以外の部分へ逃げ易くなり、流れの集中やディスク4との干渉を低減できる。これにより壁面部5eの周辺での流れの乱れが減少するので、流れの乱れに起因する流体騒音を低減することができる。
【0026】
ところで、一般に、高台部50e内に入り込んだ潜り込み流22の流れは、筐体40の左側面寄りに偏った後に漏れ出し流23となる傾向がある。そのため、壁面部5eとディスク4の外縁の隙間における騒音は、上流側よりも下流側の漏れ出し流23側で発生し易い傾向がある。したがって、壁面部5e付近の騒音を効率良く低減するためには、高台部50eから漏れ出し流23が流出してくる部分、すなわち壁面部5eの周方向の下流側(ターンテーブル9aの回転方向の下流側)の部分を内径線18より後退させて径拡大切り欠き部17を形成することが好ましい。本実施の形態では、壁面部5eの周方向の下流側だけでなく、上流側から下流側に至る全域において隙間を拡大しているので、騒音が発生し易い下流の漏れ出し流23とともに、下流側より騒音低減への寄与は少ないものの上流の潜り込み流22による騒音も低減することができ、効率的である。
【0027】
上記のように、本実施の形態の光ディスク装置によれば、顕著な騒音源となる旋回空気流の集中を直接的に低減できるので、ディスク回転に伴う流体騒音を効果的に低減することができる。
【0028】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0029】
図4は本発明の第2の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略する(後の図も同様とする)。
【0030】
この図に示す光ディスク装置は、壁面部5eに径拡大切り欠き部17Aを備えている点で第1の実施の形態のものと異なる。径拡大切り欠き部17Aは、壁面部5eの周方向中央付近から筐体40の左側面寄り(すなわち、ターンテーブル9a(ディスク4)の回転方向の下流側寄り)に設けられている。
【0031】
このように径拡大切り欠き部17Aを設けると、ディスク4の外縁と壁面部5eの隙間は、上流側直線部20aより上流側の部分では他の壁面部5b,5c,5dと同様に狭いものの、上流側直線部20aから円弧部19、そして下流側直線部20bに至る範囲において広くできる。これにより、潜り込み流22の流入部分付近では、第1の実施の形態ほどではないが、隙間が狭い場合と比較してある程度まで流れの集中とディスク4の外縁との干渉が低減されるので、流れの乱れに起因する流体騒音を低減することができる。また、漏れ出し流23の流出部分付近では、第1の実施の形態と同程度まで流れの集中とディスク4の外縁との干渉が低減されるので、流れの乱れに起因する流体騒音を低減することができる。ところで、壁面部5eとディスク4の外縁の隙間での騒音は、既に述べたように、下流側の漏れ出し流23によって発生しやすい傾向がある。したがって、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と比較して上流側での効果がやや劣るものの、壁面部5eの周方向の上流側と下流側での流体騒音を抑えることができる。すなわち本実施の形態のような径拡大切り欠き部17Aを設けても、ディスク回転に伴う流体騒音を効果的に低減させることができる。
【0032】
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0033】
図5は本発明の第3の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図であり、図6は図5中の線C−Cにおける部分断面図である。
【0034】
これらの図に示す光ディスク装置は、高台部50eが位置するトレイ5の左側面の前方に複数の迂回開口部24を備えている点で先の実施の形態のものと異なる。各迂回開口部14は、開口部56を介して導入される潜り込み流22の一部をトレイ5の外部へ排出するもので、高台部50eの左側面に設けられている。迂回開口部14は、平坦部5aより高い位置に設けられており、高台部50eの内部から、トレイ5の左側面と筐体40の左内側面が形成する隙間(すなわち、ガイドレール8等の上方に相当)へと連通している。
【0035】
既に述べたように、ディスク4の回転により発生する旋回空気流21は潜り込み流22として高台部50eの内部に流入し、その潜り込み流22は漏れ出し流23として高台部50eの内部から流出する。ここで壁面部5eの側面に上記の迂回開口部24を設けると、高台部50eに流入してユニットカバー13との間を通過する流れの多くが、迂回開口部24を通過してトレイ5の側面側の隙間を流れる迂回流25となるので、高台部50eから流出する漏れ出し流23が少なくなる。このとき、迂回流25は、筐体40とトレイ5の隙間を通過した後、高台部50eと高台部50bの間等を介し、広い範囲でディスク4の外縁と合流することになるので、局所的に集中することなくディスク4側に戻される。一方、高台部50eからの漏れ出し流23は迂回流25の分だけ流量が減少しているので、ディスク4と壁面部5eの間の流れの集中は迂回開口部24が無い場合と比較して低減される。これにより漏れ出し流23がディスク4の外縁と合流する際に発生する流れの乱れが低減されるので、乱れに起因する流体騒音を低減することができる。このように、本実施の形態によれば、迂回開口部24によって漏れ出し流23の流量を低減できるので、ディスク回転に伴う流体騒音を効果的に低減させることができる。
【0036】
なお、上述のように、高台部50e内における潜り込み流22はディスク4の回転方向の下流側に偏在することになるので、潜り込み流22を効率良くトレイ5外へ迂回させるために、迂回開口部24はターンテーブル9aの回転方向(ディスク4の回転方向)の下流側に設けることが好ましい。また、迂回開口部24は、トレイ5の強度が許す限り、できるだけ数多く設けることが好ましい。
【0037】
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0038】
図7は本発明の第4の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図である。図7に示した光ディスク装置1は、第1の実施の形態と第3の実施の形態を組み合わせたものに相当し、径拡大切り欠き部17と迂回開口部24を備えている。
【0039】
第1の実施の形態で説明したように壁面部5eに径拡大切り欠き部17を形成すると、ディスク4の外縁と壁面部5eの隙間は、円弧部19で広く、その両端の直線部20a,bでは緩やかに拡大・縮小される形となる。このようにディスク4の外縁との隙間を広く設けると、ディスク4の外縁から高台部50eの内部へ潜り込み流22が流入する際と、高台部50eの内部からディスク4の外縁付近へ漏れ出し流23が流出する際において、流れの集中とディスク4の外縁との干渉が低減される。すなわち、壁面部5e周辺におけるディスク4の外縁付近の流れは高速であるが、上記のように径拡大切り欠き部17によって流れの乱れが減少するので、流れの乱れに起因する流体騒音を低減することができる。
【0040】
また、第3の実施の形態で説明したように、高台部50eの側面(トレイ5の左側面)に迂回開口部24を形成すると、高台部50eに流入した流れの多くが迂回開口部24を通って側面の隙間を流れる迂回流25となり、迂回流25とならなかった残りが壁面部5eの周方向中央より下流側から流出する漏れ出し流23となる。迂回流25は、側面の隙間を通って広い範囲でディスク4の外縁と合流するので、ディスク4の外縁と干渉を起こす可能性は低減される。一方、漏れ出し流23の流量は迂回流25の分だけ減っているので、迂回開口部24がない場合と比較してディスク4の外縁との干渉は低減される。このように、本実施の形態によれば、径拡大切り欠き部17と迂回開口部24によって壁面部5eの周辺における流れの乱れを低減できるので、流れの乱れに起因する流体騒音を低減できる。
【0041】
ここで、上記の径拡大切り欠き部17と迂回開口部24による騒音低減の作用を対比すると、前者は、径拡大切り欠き部17によって形成される隙間に潜り込み流22と漏れ出し流23を逃がし、主に流れの集中・流速を減らすものである。一方、後者は、壁面部5eの下流側の漏れ出し流23の流量を減らすもので、両者の作用は異なっている。そのため、両者を併用しても互いの騒音低減効果が損なわれることなく、単独の場合の合計に近い効果が得られると考えられる。
【0042】
そこで発明者らは、本発明の第1、第3、第4の実施の形態に係る光ディスク装置における騒音低減効果を確認する実験を行った。図8は本発明の第1、第3、第4の実施の形態の光ディスク装置において発生する騒音を比較した図である。
【0043】
実験では、トレイ方式の薄型の光ディスク装置に対して(1)径拡大切り欠き部17を設けたもの(第1の実施の形態)、(2)迂回開口部24を設けたもの(第2の実施の形態)、及び(3)これら両方を設けたもの(第4の実施の形態)について、ディスクを高速回転させた状態での騒音を測定し、その測定結果をこれら改良構造を備えない従来の光ディスク装置(基準)の騒音と比較した。その結果、図8に示すように、径拡大切り欠き部17あるいは迂回開口部24を設けると、各々で従来のものに比べ騒音低減が得られることが分かった(なお、騒音低減の程度は、径拡大切り欠き部17や迂回開口部24の大きさ等の形状に依存して変化する)。そして、径拡大切り欠き部17と迂回開口部24の両方を適用すると、従来のものに対する騒音低減は各々の単独の場合の合計近くにまで達することが分かった。これにより、第4の実施の形態のように径拡大切り欠き部17と迂回開口部24を併用すれば、ディスク回転に伴う流体騒音をより効果的に低減できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施の形態である光ディスク装置の概略構造を示す分解斜視図。
【図2】本発明の第1の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図。
【図3】図2中の線C−Cにおける部分断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図。
【図5】本発明の第3の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図。
【図6】図5中の線C−Cにおける部分断面図。
【図7】本発明の第4の実施の形態である光ディスク装置のトップカバーを除いた平面図。
【図8】本発明の第1、第3、第4の実施の形態の光ディスク装置において発生する騒音の比較図。
【符号の説明】
【0045】
4 ディスク
5 トレイ
5a 平坦部
5b〜d 壁面部
6 ユニットメカ
9 スピンドルモータ
9a ターンテーブル
10 ピックアップ
11 ガイドバー
17 径拡大切り欠き部
18 内径線
19 円弧部
20 直線部
21 旋回空気流
22 潜り込み流
23 漏れ出し流
24 迂回開口部
25 迂回流
30 中央開口
30a 円形開口部
30b 矩形開口部
31 切り欠き部
40 筐体
50a〜e 高台部
56 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
該筐体から出没自在に設けられたトレイと、
該トレイと一体に設けられたユニットメカと、
該ユニットメカに備えられディスクを回転自在に支持するターンテーブルと、
該ターンテーブルを回転させるスピンドルモータと、
前記ターンテーブルの径方向に沿って前記ユニットメカ内を直線移動するピックアップと、
前記ターンテーブルに支持されるディスクの裏面と対向する範囲に、前記トレイに形成された平坦部と、
前記ターンテーブルの回転中心を中心とする円弧状に形成された壁面部を前記平坦部側に有し、前記平坦部を囲むように前記トレイに分散して形成された複数の高台部とを備え、
前記複数の高台部のうち前記ユニットメカが下方に配置されている高台部における前記平坦部側の壁面部には、前記ピックアップが通過する開口部が設けられており、
該開口部が設けられた壁面部の少なくとも一部は、他の高台部の前記壁面部と比較して前記ターンテーブルの外周側に後退されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記ユニットメカが下方に配置されている高台部の側面には、前記開口部を介して導入される気流を前記トレイの側方へ排出する迂回開口部が設けられており、
該迂回開口部は、前記平坦部より高い位置に設けられていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記開口部が設けられた壁面部における前記ターンテーブルの回転方向の下流側は、前記他の高台部の前記壁面部よりも前記ターンテーブルの外周側に後退されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記開口部が設けられた壁面部における周方向の中央部分は、前記他の高台部の前記壁面部よりも前記ターンテーブルの外周側に後退されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1記載の光ディスク装置において、
前記開口部が設けられた壁面部における周方向の両端は、前記ターンテーブルの径方向において前記他の壁面部の径相当まで直線的に接続されていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
筐体と、
該筐体から出没自在に設けられたトレイと、
該トレイと一体に設けられたユニットメカと、
該ユニットメカに備えられディスクを回転自在に支持するターンテーブルと、
該ターンテーブルを回転させるスピンドルモータと、
前記ターンテーブルの径方向に沿って前記ユニットメカ内を直線移動するピックアップと、
前記ターンテーブルに支持されるディスクの裏面と対向する範囲に、前記トレイに形成された平坦部と、
前記ターンテーブルの回転中心を中心とする円弧状に形成された壁面部を前記平坦部側に有し、前記平坦部を囲むように前記トレイに分散して形成された複数の高台部とを備え、
前記複数の高台部のうち前記ユニットメカが下方に配置されている高台部における前記平坦部側の壁面部には、前記ピックアップが通過する開口部が設けられており、
前記ユニットメカが下方に配置されている高台部の側面には、前記開口部を介して導入される気流を前記トレイの側方へ排出する迂回開口部が設けられており、
該迂回開口部は、前記平坦部より高い位置に設けられていることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27190(P2010−27190A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191362(P2008−191362)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】