説明

光ディスク装置

【課題】塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる光ディスク装置を提供する。
【解決手段】光ディスク装置1は、筐体11と、筐体11外へ引き出し可能に筐体11内に収容されて、光ディスクが載置されるトレイ20と、筐体11内に収容された光ディスクの半径方向に移動可能に設けられ、前記光ディスクに光を照射する光ピックアップ33と、筐体11内に収容された前記光ディスクを回転する第1のモータ31と、を備える。筐体11には、該筐体11の内部と外部とを連通すると共に、前記光ディスクの回転により外部空気を内部に吸い込む開口12が設けられ、光ピックアップ33には、光ピックアップ33と共に移動することにより開口12を覆う範囲を可変とするシャッタ部52が取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録される情報を再生したり、光ディスクに情報を記録したりするために使用される光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルーレイディスク(以下BDと記載)、デジタル多用途ディスク(以下DVDと記載)、コンパクトディスク(以下CDと記載)等の光ディスクに記録される情報を再生したり、これらの光ディスクに情報を記録したりするために光ディスク装置が使用される。
【0003】
図7は、従来の光ディスク装置の構成を概略的に示す側面図である。図7に示すように、従来の光ディスク装置100は、筐体10と、筐体10外へと引き出し可能(破線矢印の方向に引き出し可能である)に筐体10内に収容されて、光ディスクが載置されるディスクトレイ20と、筐体10内に収容されたディスクトレイ20の下部側に配置され、ディスクトレイ20の出し入れに応じて回転する可動フレーム30と、を備えている。
【0004】
ディスクトレイ20には、光ディスクを載置できるように図示しないディスク載置部が設けられている。また、ディスクトレイ20の底面の一部には図示しない切り欠きが形成されている。この切り欠きにより、可動フレーム30上のスピンドルモータ31に取り付けられるターンテーブル(図示せず)を配置する空間が確保される。また、この切り欠きにより、可動フレーム30上の光ピックアップ33から出射されるレーザ光を、光ディスクの情報記録面に照射することが可能となっている。
【0005】
図8は、従来の光ディスク装置が備える可動フレームの構成を概略的に示す上面図である。図8に示すように、可動フレーム30にはその中央部付近に大きな貫通孔30aが設けられている。この可動フレーム30には、光ディスクから情報を再生したり、光ディスクに情報を記録したりする際に必要となる各種の部材が取り付けられている。
【0006】
可動フレーム30の前側(ディスクトレイ20が引き出される側を前としている)には、光ディスクを着脱可能に保持するターンテーブル32付きのスピンドルモータ31(図7参照)が固定されている。また、可動フレーム30上には、光ディスクの半径方向(ディスクトレイ20の出し入れ方向に平行な方向である)に平行となるように2本のガイドシャフト34a、34bが配置されている。光ディスクの情報記録面を光学的に走査する光ピックアップ33は、この2本のガイドシャフト34a、34bに沿って摺動可能に取り付けられている。
【0007】
光ピックアップ33は、レーザ光を出射する光源(図示せず)と、光源から出射されたレーザ光を情報記録面に集光する対物レンズ331、332と、情報記録面で反射された戻り光を受光して光信号を電気信号に変換するフォトディテクタ(図示せず)と、を備える。なお、光ディスク装置100は、BD、DVD及びCDに対して情報の再生と記録を可能に設けられており、光ピックアップ33は、BD用の光学系とDVD及びCD用の光学系との2つの光学系を有する。このため、光ピックアップ33には、BD用の対物レンズ331と、DVD及びCD用の対物レンズ332とが備えられる構成となっている。
【0008】
可動フレーム30にはステッピングモータ35が固定配置されており、このステッピングモータ35の出力軸にはリードスクリュ36が取り付けられている。リードスクリュ36の長手方向(図8の上下方向)は、光ディスクの半径方向に平行となっている。リードスクリュ36には、光ピックアップ33に取り付けられたアーム部材37が係合している。
【0009】
アーム部材37には、付勢バネ37aと、この付勢バネ37aによってリードスクリュ36の長手方向に対して略直交する方向に付勢されるギア歯37bとが設けられている。このギア歯37bは、リードスクリュ36に設けられる螺旋状の溝36aに押圧された状態で噛合する。これにより、アーム部材37は、ステッピングモータ35によるリードスクリュ36の回転をリードスクリュ36の長手方向(光ディスクの半径方向)の直線運動に変換して光ピックアップが33に伝達する役目を果す。
【0010】
なお、ステッピングモータ35、リードスクリュ36、及びアーム部材37は、光ピックアップ33を移動する移動手段となっている。
【0011】
図9は、従来の光ディスク装置の動作を説明するための図で、図9(a)はディスクトレイが筐体から引き出された状態を示し、図9(b)はディスクトレイが筐体に収容された状態を示している。
【0012】
図9(a)に示すように、光ディスク40を載置するためにディスクトレイ20が引き出されると、可動フレーム30は後端部Bを中心に回転し、その前端部Fが下方に移動する。この回転動作は、可動フレーム30に取り付けられる図示しない回転機構によって可能となっており、この回転機構はディスクトレイ20の出し入れを行う出し入れ機構と連動して動作するようになっている。
【0013】
ディスクトレイ20に光ディスク40が載置されて、ディスクトレイ20が筐体10内に収容されると、ディスクトレイ20を引き出した場合と逆方向に可動フレーム30は回転する。これにより、可動フレーム30の前端部Fは下方に下がった状態から上昇し、ディスクトレイ20を引き出す前の元の状態に戻る(図9(b)の状態)。可動フレーム30が上昇する際、ターンテーブル32は光ディスク40の中心部下面と接触するとともに、その状態から更に上昇することで光ディスク40をチャッキングする。これにより、スピンドルモータ31の回転により光ディスク40の回転が可能となり、情報の再生及び記録が可能となる。
【0014】
なお、光ディスク40を取り出すためにディスクトレイ20が引き出される際には、ターンテーブル32がディスクトレイ20より下がることによって、ターンテーブル32にチャッキングされた光ディスク40がディスクトレイ20に受け渡される。そして、この受け渡しが完了した状態でディスクトレイ20が筐体10から引き出されることで、光ディスク40の取り出しが可能となる。
【0015】
このように構成される従来の光ディスク装置100においては、例えばスピンドルモータ31やリードスクリュ36を回転するステッピングモータ35等の筐体10内に配置される電子部品の発熱によって、筐体10内の温度が上昇しやすい。筐体10内の温度が上昇すると、例えば、光ピックアップ33を構成するレンズや光源に悪影響を与え、光ディスクの再生や記録が正しく行えない等の問題が生じる場合がある。
【0016】
このため、従来の光ディスク装置の中には、例えば特許文献1に示されるような構成を採用して放熱性を高めたものがある。具体的には、光ディスク装置を構成する筐体の一部に開口を設け、光ディスクの回転により発生した気流を利用して、低温の外部空気を筐体内に吸い込んだ後排出するように光ディスク装置を構成している。
【0017】
しかし、放熱性を高めるために筐体に開口を設けると、光ディスク装置内に塵や埃等の異物が進入しやすくなる。光ディスク装置内に進入した塵や埃等が光ピックアップのレンズ等に付着すると、光ディスクの再生や記録が正しく行えない等の問題が生じる場合がある。
【0018】
このようなことから、特許文献2には、放熱性を確保しつつ、防塵性を損なわない光ディスク装置が提案されている。具体的には、特許文献2には、1)光ピックアップが光ディスクの外周側にあるときに複数の開口部(外気を導入排出するための開口)を開き、それ以外のときには複数の開口部を閉じる光ディスク装置(第1の構成)が開示されている。また、特許文献2には、2)光ピックアップによるデータ書き込み時に複数の開口部を開き、それ以外のときには複数の開口部を閉じる光ディスク装置(第2の構成)が開示されている。更に、特許文献2には、3)光ピックアップの温度が設定温度を超えたことを条件に複数の開口部を開き、それ以外のときには複数の開口部を閉じる光ディスク装置(第3の構成)が開示されている。
【0019】
そして、このような構成によれば、光ピックアップの温度が上昇したときに開口部を介して筐体内に外気を導入することで、光ピックアップの温度上昇を抑制することができ、更に、光ピックアップの温度が低いときには開口部が閉じられるので防塵性を損なうことがないとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2006−228262号公報
【特許文献2】特開2004−342160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、特許文献2に開示される光ディスク装置については、次のような点で改善の余地があると考えられる。
【0022】
まず、特許文献2に開示される第1の構成の光ディスク装置では、光ピックアップが外周側にある時にのみ開口部が開かれる構成となっている。しかしながら、光ピックアップが内周側にある場合にも発熱はあり、光ピックアップが内周側にある場合にも放熱性を備えるのが好ましい。
【0023】
また、特許文献2に開示される第2の構成の光ディスク装置では、データ書き込み中(記録中)は開口部が開いたままであり、記録時には防塵性を備えず、この記録中に塵や埃等の異物によって光ピックアップが汚染される可能性が極端に高くなってしまう。
【0024】
この点、特許文献2に開示される第3の構成の光ディスク装置では、温度が高く放熱が必要な場合にのみ開口部を開いて放熱性を高め、温度が低い場合には開口部を閉じて防塵性を高める構成となっている。すなわち、放熱が必要なタイミングのみ開口部を開く構成であるために、防塵性が著しく損なわれず、好ましい態様と言える。しかしながら、この構成の場合、温度センサによって検出された温度に応じて開口部の開閉を行えるように構成する必要があり、モータ等の電子部品が別途必要となりコスト的に不利である。
【0025】
そこで、本発明の目的は、塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる光ディスク装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、前述の性能を有する光ディスク装置を低コストで実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために本発明の光ディスク装置は、筐体と、前記筐体外へ引き出し可能に前記筐体内に収容されて、光ディスクが載置されるトレイと、前記筐体内に収容された前記光ディスクの半径方向に移動可能に設けられ、前記光ディスクに光を照射する光ピックアップと、前記筐体内に収容された前記光ディスクを回転する第1のモータと、を備える光ディスク装置であって、前記筐体には、該筐体の内部と外部とを連通すると共に、前記光ディスクの回転により外部空気を内部に吸い込む開口が設けられ、前記光ピックアップには、前記光ピックアップと共に移動することにより前記開口を覆う範囲を可変とするシャッタ部が取り付けられていることを特徴としている。
【0027】
本構成によれば、シャッタ部は、光ピックアップに取り付けられて、光ピックアップと共に移動することにより、外部空気を筐体の内部に吸い込む開口(この開口は同時に塵や埃等の異物を吸い込む可能性がある)を覆う範囲について変化させることができるようになっている。すなわち、熱及び異物(塵や埃等)による影響を極力避けたい光ピックアップの位置に合わせて、放熱性と、塵や埃等の異物による悪影響を抑制する性能とのうち、どちらを重視するかを変更可能となっている。このため、本構成の光ディスク装置によれば、塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる光ディスク装置の提供が可能である。また、このような性能を有する光ディスク装置について、光ピックアップにシャッタ部を取り付けることによって実現できるために、低コストでの提供が可能である。
【0028】
上記構成の光ディスク装置において、前記シャッタ部は、前記光ピックアップが前記光ディスクの内周から外周に向けて所定の区間を移動する場合に、前記開口を覆う範囲を徐々に減じることとしてもよい。この構成によれば、光ピックアップが内周側にある場合には異物が内部へ進入することを抑制する性能を重視し、外周側にある場合には放熱性を重視した構成を実現できる。そして、この構成においては、前記光ピックアップが移動可能な範囲のうち、前記光ディスクの内周側の限界位置を最内周位置、外周側の限界位置を最外周位置とした場合に、前記所定の区間が、前記最内周位置から前記最終外周位置へと至る区間であることとしてもよい。
【0029】
上記構成の光ディスク装置において、前記光ピックアップを移動する移動手段は、前記半径方向に平行な方向が長手方向となるように配置され、第2のモータによって駆動されるリードスクリュと、前記光ピックアップに固定され、前記リードスクリュに係合して前記リードスクリュの回転を前記半径方向の直線運動に変換して前記光ピックアップに伝えるアーム部材と、を備え、前記アーム部材に前記シャッタ部が設けられていることとしてもよい。
【0030】
本構成によれば、光ピックアップの移動を行う移動手段にシャッタ部を設ける構成であり、部品点数を増やすことなく、塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる光ディスク装置の提供が可能となる。
【0031】
上記構成の光ディスク装置において、前記第1のモータは、前記光ディスクを線速度一定で回転させることとしてもよい。
【0032】
本構成は、いわゆるCLV(Constant Linear Velocity)方式を採用する光ディスク装置となる。CLV方式の光ディスク装置では、光ディスクの回転数は光ピックアップが内周側にある場合に高く、外周側にある場合に低くなる。このため、例えば光ピックアップが内周から外周に向けて移動する際に、シャッタ部が外部空気を吸い込むため(放熱のため)の開口を覆う範囲を徐々に減じる構成を採用することにより、次のような好ましい効果を得られる。
【0033】
すなわち、光ピックアップが内周側にある場合には、大きな開口が開いていると、光ディスクの高速回転により開口を介して外部空気が吸い込まれて、内周側に塵や埃等の異物が集まりやすくなる。そして、光ピックアップが内周側にあるために、光ピックアップに異物が付着し易くなる。しかし、本構成では、光ピックアップが内周側にある場合にはシャッタ部が開口を覆う範囲が広くなっているために、異物の進入を防いで光ピックアップの汚染を低減できる。
【0034】
一方、本構成の光ディスク装置では、光ピックアップが外周側にある場合にはシャッタ部が開口を覆う範囲が減少するために、光ディスクの回転により開口を介して外部空気が吸い込まれ、内周側に異物が集まることがある。しかし、光ピックアップが外周側にある場合には、光ピックアップが内周側にある場合に比べて光ディスクの回転が低速であるために異物の筐体内への進入確率が低くなっている。このため、光ピックアップへの異物の付着確率は低く抑えられる。更に、光ピックアップが外周側にあるので、内周側に集まりやすい異物の光ピックアップを構成する部材への付着が起こり難い。
【0035】
また、本構成の光ディスク装置は、この異物付着の起こりやすさの変化を考慮して、光ピックアップが内周から外周に移動するにつれて、開口が覆われる範囲を積極的に減らして外部空気を取り込んで放熱性を高める構成となっている。このため、熱による影響で光ピックアップの性能が劣化する可能性も低減できる。なお、本構成では、シャッタ部によって開口が覆われる範囲は光ピックアップの移動とともに徐々に変化する構成であるため、光ピックアップが内周寄りにある場合にも、シャッタ部によって開口が完全に覆われてない状態を得られ、放熱性を確保できる。以上のように、本構成によれば、塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる光ディスク装置の提供を行い易い。
【0036】
上記構成の光ディスク装置において、前記開口は、前記筐体の下面に設けられることとしてもよい。光ディスク装置は、例えばプレーヤやレコーダといった製品を構成する筐体の中に収容されるが、この際、光ディスク装置の下部側に回路基板等の部材が配置されることが多い。このために、光ディスク装置の筐体の下部側に開口を設けておくと、この回路基板等の部材が異物の進入を妨げる可能性が高まり、開口から外部空気を吸い込む場合に筐体内に異物が進入する確率を低減できる。なお、この構成の場合、前記シャッタ部と前記開口との間に隙間が設けられているのが好ましい。このようにしておけば、光ディスクを載置するトレイを引き出す際に光ピックアップを搭載するフレーム部材が回転しても、シャッタ部が光ディスク装置の筐体に接触しないようにできる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる光ディスク装置を提供できる。また、本発明によれば、前記性能を備える光ディスク装置を低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の光ディスク装置の構成を概略的に示す側面図
【図2】本実施形態の光ディスク装置が備える筐体の構成を説明するための概略斜視図
【図3】本実施形態の光ディスク装置が備える光ピックアップに取り付けられるシャッタ部の構成を説明するための図
【図4】本実施形態の光ディスク装置における、開口とシャッタ部との関係について説明するための概略斜視図で、光ピックアップが最内周位置にある場合の図
【図5】本実施形態の光ディスク装置における、開口とシャッタ部との関係について説明するための概略斜視図で、光ピックアップが最外周位置にある場合の図
【図6】本実施形態の光ディスク装置において、筐体の底面に開口を設ける理由を説明するための模式図
【図7】従来の光ディスク装置の構成を概略的に示す側面図
【図8】従来の光ディスク装置が備える可動フレームの構成を概略的に示す上面図
【図9】従来の光ディスク装置の動作を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の光ディスク装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態の光ディスク装置1は、その大部分の構成が上述した従来の光ディスク装置100(図7、図8及び図9参照)の構成と同様である。このため、重複する部分については同一の符号を付し、特に必要がない場合には、その説明は省略する。
【0040】
また、本実施形態の光ディスク装置は、BD、DVD及びCDに対して情報の再生と記録を行える光ディスク装置であり、光ディスクの回転制御方式としてCLV方式を採用している。
【0041】
図1は、本実施形態の光ディスク装置の構成を概略的に示す側面図である。図2は、本実施形態の光ディスク装置が備える筐体の構成を説明するための概略斜視図である。なお、図2は筐体11を構成する上蓋が取り除かれた状態を示している。図3は、本実施形態の光ディスク装置が備える光ピックアップに取り付けられるシャッタ部の構成を説明するための図であり、図3(a)はシャッタ部を含む光ピックアップ全体の概略斜視図、図3(b)はシャッタ部を有するアーム部材と光ピックアップとを分解して示した分解斜視図である。
【0042】
図1及び図2に示すように、本実施形態の光ディスク装置1が備える筐体11の底面11aには、平面視略矩形状に形成されて筐体11の内部と外部とを連通する開口12が形成されている。この点、開口が設けられていない従来の光ディスク装置100と異なる。この開口12は、スピンドルモータ31によって光ディスクを回転させることによって発生される気流を利用して、筐体11外部の空気を筐体11の内部に吸い込むために設けられている。なお、この開口12の位置及び大きさは、詳細は後述するシャッタ部との関係で決められている。
【0043】
図3に示すように、光ピックアップ33には、レーザ光源や各種光学部材等が配置され、軸受け部333a、333bでガイドシャフト34a、34b(図8参照)を受けて摺動可能とされるスライドベース333が含まれる。また、光ピックアップ33には、スライドベース333上に搭載される対物レンズアクチュエータ334が含まれる。この対物レンズアクチュエータ334は、レーザ光源から出射されたレーザ光を光ディスクの情報記録面に集光する対物レンズ331、332をフォーカス方向やトラック方向に移動可能とする。なお、フォーカス方向は光ディスクの情報記録面に垂直な方向であり、トラック方向は光ディスクの半径方向に平行な方向である。
【0044】
ステッピングモータ35によって回転されるリードスクリュ36の回転を、光ディスクの半径方向の直線運動に変換するアーム部材50は、図3に示すように光ピックアップ33の軸受け部333aの下部側にビス等を用いて固定されている。アーム部材50は、光ピックアップ33に取り付けられる取付部50aと、ギア歯を含んでリードスクリュ36に係合する係合部50bとを有する。この点は、従来の光ディスク装置100と同様である。
【0045】
また、アーム部材50は、従来の光ディスク装置100とは異なり、連結部51によってアーム部材50に取り付けられるシャッタ部52を有する。連結部51及びシャッタ部52を含むアーム部材50は、例えば樹脂や金属によって一体的に形成してもよい。また、例えば連結部51及びシャッタ部52を別部材とする構成等を採用してもよい。
【0046】
連結部51は、軸受け部333aに挿通されるガイドシャフト34aに対して略直交する方向に延びる第1の板状部51aと、鉛直方向下向きに延びる第2の板状部51bと、からなる。平面視略矩形状に設けられるシャッタ部52は、その厚み方向が鉛直方向を向くように第2の板状部51bに連結される。
【0047】
第1の板状部51aがガイドシャフト34aに対して略直交する方向に延びる長さは、筐体11に設けられた開口12をシャッタ部52が覆うことができるように決定される。また、第2の板状部51bが鉛直方向下向きに延びる長さは、図1の破線で囲んだ部分の拡大図に示されるように、シャッタ部52と開口12とが所定の隙間Sを有するように決定される。
【0048】
シャッタ部52と開口12との間に所定の隙間Sを設けるのは、次の理由による。本実施形態の光ディスク装置1においても、従来の光ディスク装置100同様に、可動フレーム30は後端部Bを中心に回転して、可動フレーム30の前端部を筐体11内で昇降する構成となっている。このために、シャッタ部52と開口12との間に隙間を設けておかないと、可動フレーム30の回転を行えない、或いは、シャッタ部52を有するアーム部材50を損傷し易いといった問題が発生してしまう。このため、シャッタ部52と開口12との間に所定の隙間Sを設けている。
【0049】
なお、このようにシャッタ部52と開口12との間に隙間Sを設けると、シャッタ部52が開口12を完全に覆った状態でも、隙間Sから埃や塵等の異物が進入することが可能である。しかし、開口12の上にシャッタ部52が存在することにより、開口12から筐体11内に進入しようとした異物はシャッタ部52に衝突して、筐体11内部に入らず筐体11外部に留まることが期待でき、異物進入の抑制効果を十分得ることができる。勿論、シャッタ部52と開口12との隙間Sが大きくなりすぎると、このような効果が期待できなくなる。このため、隙間Sを設ける目的を満たす範囲で、この隙間Sが極力小さくなるように光ディスク装置1は構成されている。
【0050】
本実施形態の光ディスク装置1における、開口12とシャッタ部52との関係について、図4及び図5を参照しながら更に詳細に説明する。なお、図4及び図5においては、説明の便宜のために、筐体11の上蓋、筐体11内に配置されるディスクトレイ20及び可動フレーム30を省略し、筐体11の開口12と、光ピックアップ33に取り付けられるシャッタ部52をメインに描いている。また、図4は、光ピックアップ33が移動可能な範囲のうち、光ディスクの内周側の限界位置(最内周位置)にある場合の状態を示している。また、図5は、光ピックアップ33が移動可能な範囲のうち、光ディスクの外周側の限界位置(最外周位置)にある場合の状態を示している。
【0051】
図4に示すように、光ディスク装置1においては、光ピックアップ33が最内周位置にある場合には、シャッタ部52が開口12を全て覆うようになっている。詳細には、光ピックアップ33が最内周位置にある場合において、シャッタ部52の前端52aが開口12の前端12a(図2参照)とほぼ一致した位置となる。また、シャッタ部52の後端52bは開口12の後端12bと略一致した位置、あるいは、シャッタ部52の後端52bの方が開口12の後端12bより更に後ろ側の位置となる(シャッタ部52の方が前後方向の長さが長い)ように構成されている。
【0052】
光ピックアップ33が最内周位置から外周側に向けて移動を開始すると、それに伴って移動するシャッタ部52は、開口12を覆う範囲を徐々に減じるようになっている。そして、光ピックアップ33が最外周位置に至ると、シャッタ部52は開口12を覆うことなく、開口12は全開となる(図5の状態)。この状態では、シャッタ部52の前端52aが開口12の後端12bと略一致した位置となっている。
【0053】
以上のようにシャッタ部52と開口12とを構成すると、次のような効果を見込める。本実施形態の光ディスク装置1は、スピンドルモータ31によって回転される光ディスクの回転制御方式がCLV方式となっている。この方式の場合、光ピックアップが最内周位置にある場合に光ディスクの回転数が最も高く、光ピックアップ33が内周側から外周側に向けて移動するにしたがって光ディスクの回転数が低下し、最外周位置で最も低くなる。
【0054】
このため、CLV方式の光ディスク装置では、光ピックアップ33が内周側にある場合に、大きな開口が開いていると、光ディスクの高速回転によって発生する気流により、開口を介して外部空気が吸い込まれて、内周側に塵や埃等の異物が集まりやすくなる。そして、光ピックアップ33が内周側にあるために、光ピックアップ(詳細には、対物レンズ等の光学部材)に異物が付着し易くなる。この点、本実施形態の光ディスク装置1では、光ピックアップ33が内周側にある場合にはシャッタ部52が開口12を覆う範囲が広くなるように構成されているために、塵や埃等の異物の進入を防いで光ピックアップ33の汚染を低減しやすくなっている。
【0055】
一方、光ディスク装置1では、光ピックアップ33が内周から外周へと移動するにつれてシャッタ部52が開口12を覆う範囲が減少するために、光ピックアップ33が外周側にある場合に、外部空気を吸い込みやすい状態となる。しかし、この場合には、光ピックアップ33が内周側にある場合に比べて光ディスクの回転が低速であるために異物の筐体内への進入確率が低減され、その結果、光ピックアップ33への異物の付着確率を抑制できる。更に、光ピックアップが外周側にあるので、内周側に集まりやすい異物の付着が起こり難い。
【0056】
また、光ディスク装置1は、この異物付着の起こりやすさの変化を考慮して、光ピックアップ33が内周から外周に移動するにつれて、開口12がシャッタ部52によって覆われる範囲を積極的に減らし、外部空気を取り込みやすくして放熱性を高めている。このため、熱による影響で光ピックアップ33の性能が劣化する可能性も低減できる。なお、シャッタ部52によって開口12が覆われる範囲は光ピックアップ33の移動とともに徐々に変化する構成であるため、光ピックアップ33が内周寄りにある場合にも、シャッタ部52によって開口12が完全に覆われておらず、放熱性を確保できている。この場合でも、シャッタ部52によって開口12の大部分が覆われているために異物の進入可能性は低い。
【0057】
以上のように、本実施形態の光ディスク装置1は、塵や埃等の異物による悪影響を低減しつつ、放熱性を確保できる構成となっている。そして、シャッタ部52は、従来の光ピックアップ100が有するアーム部材50に一体的に設ければよいので、このような性能を得るにあたって、あまりコストがかからない。
【0058】
以上に示した実施形態は本発明が適用される光ディスク装置の例示であって、本発明が適用される光ディスク装置の実施形態は以上に示した構成に限定されないのは言うまでもない。
【0059】
例えば、以上に示した実施形態においては、筐体11の底面11aに開口12を設ける構成とした。しかし、筐体11に設ける開口12の位置は、この位置に限られる趣旨でない。すなわち、光ディスクの回転に伴って発生する気流によって筐体11内に外部空気を吸い込める位置であればよく、例えば筐体11の側面等に設けることも可能である。ところで、本実施形態の光ディスク装置1では、次のような理由で筐体11の底面11aに開口12を設けている。
【0060】
図6は、本実施形態の光ディスク装置において、筐体の底面に開口を設ける理由を説明するための模式図である。なお、図6は、光ディスク装置1のディスクトレイ20が手前側に引き出される場合を想定して描かれている。図6に示すように、光ディスク装置1は、例えば光ディスクプレーヤや光ディスクレコーダ等を構成する筐体60内に収容されて使用されるのが一般的である。そして、筐体60内に収容される光ディスク装置1は、回路基板61上に搭載されることが多い。また、光ディスクプレーヤ等の筐体60の側面には、例えば放熱等の目的でスリット等の開口60aが設けられること多い。
【0061】
このような構成の場合、光ディスク装置1の筐体11の底面11aに開口12を設けておくと、プレーヤ等を構成する筐体60の開口60aから光ディスク装置1の開口12へと至る外部空気(その流れを実線矢印で示している)は、回路基板61に邪魔されながら光ディスク装置1の開口12に至る。このために、塵や埃等の異物は回路基板61に邪魔されて、光ディスク装置1の開口12へと至らない可能性が高くなる。一方、光ディスク装置1の筐体11の側面に開口を設けると、このような異物をトラップする部材が存在しないために、外部空気(その流れを破線矢印で示している)と共に、光ディスク装置1の筐体11内に異物が進入する可能性が高くなってしまう。このようなことを考慮して、本実施形態の光ディスク装置1では、筐体11の底面に開口12を設けている。
【0062】
また、以上に示した実施形態では、シャッタ部52と開口12との間に隙間Sを設ける構成としたが、必ずしも、この構成に限られない。すなわち、シャッタ部52と開口12との間に隙間Sを設けない構成としてもよい。例えば、シャッタ部52と光ピックアップ33とを連結する連結部が、可動フレーム30の下降と共に回動する構成を採用すれば、隙間Sを設けない構成を実現できる。また、例えば筐体11に設ける開口12の位置を底面でなく側面とすれば、隙間Sを設けない構成を実現できる。
【0063】
また、以上に示した実施形態では、筐体11に外部空気を吸い込むための開口12のみを設ける構成とし、筐体11から外部へと空気を排出するための開口を設けない構成としている。これは、光ディスク装置1の筐体11が完全な密閉構造でなく、特に排出用の開口を設けなくても、筐体11外部へ空気の排出が可能であるためである。ただし、筐体11に排出用の開口を設けても勿論構わない。
【0064】
また、以上に示した実施形態では、シャッタ部52を光ピックアップ33に取り付けるアーム部材50に設ける構成としたが、これに限られる趣旨ではない。すなわち、シャッタ部52は、光ピックアップ33に固定されていればよく、例えば、スライドベース333に直接設ける構成等としてもよい。
【0065】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ33の位置が最内周位置にある場合に、シャッタ部52が開口12を完全に覆い、最内周位置から外周に向けて光ピックアップ33が移動を開始すると、シャッタ部52によって開口12が覆われる範囲が徐々に減じられる構成とした。しかし、例えば、光ピックアップ33が最内周位置から外周に向けてある地点まで移動したところで、シャッタ部52によって開口12が覆われる範囲が徐々に減じられる構成等としてもよい。また、光ピックアップ33の位置が最内周位置にある場合においても、シャッタ部52が開口12を完全に覆うのではなく、開口12の狭い範囲がシャッタ部52によって覆われていない構成等としてもよい。
【0066】
また、以上に示した実施形態では、光ピックアップ33の位置が最外周位置に至った時点で、開口12がシャッタ部52によって覆われることなく、全開となる構成とした。しかし、例えば、光ピックアップ33が最外周位置に至る前のある地点で、開口12がシャッタ部52によって覆われることなく、全開となる構成等としてもよい。
【0067】
また、以上に示した実施形態では、光ディスク装置1における光ディスクの回転制御方式がCLV方式である構成としたが、これに限られる趣旨ではない。例えば、光ディスクの回転制御方式がZCLV(Zoned CLV)方式の場合も本発明は適用可能である。また、CAV(Constant Angular Velocity)方式で光ディスクの回転制御が行われる場合にも本発明は適用してもよい。なお、CAV方式の場合には、光ディスクの回転数が常に一定のために、光ピックアップ33が外周側にある場合も内周側と同一の回転数である。このために、光ピックアップ33が内周側にある場合と外周側にある場合とで異物の筐体内への進入確率は変わらず、CLV方式の場合に見られる、光ピックアップ33が外周側にある場合に内周側にある場合に比べて異物の進入確率が低下するという効果は得られない。
【0068】
その他、以上に示した実施形態では、シャッタ部52や開口12の形状を矩形状としたが、この形状に限られず、適宜変更してよいのは勿論である。また、光ディスク装置が情報の再生や記録を行える光ディスクの種類は本実施形態の構成に限定されないことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、CLV方式やZCLV方式で光ディスクの回転制御を行う光ディスク装置に好適である。
【符号の説明】
【0070】
1 光ディスク装置
11 筐体
11a 筐体の底面
12 開口
20 ディスクトレイ
31 スピンドルモータ(第1のモータ)
33 光ピックアップ
35 ステッピングモータ(第2のモータ)
36 リードスクリュ
40 光ディスク
50 アーム部材
52 シャッタ部
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体外へ引き出し可能に前記筐体内に収容されて、光ディスクが載置されるトレイと、
前記筐体内に収容された前記光ディスクの半径方向に移動可能に設けられ、前記光ディスクに光を照射する光ピックアップと、
前記筐体内に収容された前記光ディスクを回転する第1のモータと、
を備える光ディスク装置であって、
前記筐体には、該筐体の内部と外部とを連通すると共に、前記光ディスクの回転により外部空気を内部に吸い込む開口が設けられ、
前記光ピックアップには、前記光ピックアップと共に移動することにより前記開口を覆う範囲を可変とするシャッタ部が取り付けられていることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記シャッタ部は、前記光ピックアップが前記光ディスクの内周から外周に向けて所定の区間を移動する場合に、前記開口を覆う範囲を徐々に減じることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記光ピックアップが移動可能な範囲のうち、前記光ディスクの内周側の限界位置を最内周位置、外周側の限界位置を最外周位置とした場合に、
前記所定の区間が、前記最内周位置から前記最終外周位置へと至る区間であることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記光ピックアップを移動する移動手段は、
前記半径方向に平行な方向が長手方向となるように配置され、第2のモータによって駆動されるリードスクリュと、
前記光ピックアップに固定され、前記リードスクリュに係合して前記リードスクリュの回転を前記半径方向の直線運動に変換して前記光ピックアップに伝えるアーム部材と、を備え、
前記アーム部材に前記シャッタ部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記第1のモータは、前記光ディスクを線速度一定で回転させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記開口は、前記筐体の下面に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記シャッタ部と前記開口との間に隙間が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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