説明

光ディスク製造装置

【課題】光ディスク検査工程において、すべてのディスクに対して実施出来ない検査を実施する場合は製造されたディスクに対し、オフライン検査装置で抜き取り検査が実施され記録異常等を検査しているが、多くの時間が必要になるとともに、製造工程へのフィードバックが遅れる。
【解決手段】ポリカーボネイト基板を成形する成形工程と金属膜を形成する成膜工程、その上に光透過層を形成する光透過膜形成工程と基板が大気中の湿気を吸水することを防ぐ防湿膜を形成する防湿膜形成工程とCCDカメラを用いて行なう外観検査工程と電気特性を検査する電気特性検査工程を備え、電気特性検査工程は記録再生機能を有し、一定間隔で抜き取り検査を実施し、その測定データの判定と、データ推移を統計的に処理し信号特性劣化予測や共通欠陥を検出し、製造工程へフィードバックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルーレイディスク等の光ディスクを製造、検査する製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルーレイディスクの製造方法は幾つかの方式が提案されているが、その共通項として射出成形工程、薄膜成膜工程、光透過層形成工程を基本とするディスク製造工程と、ディスク品質確認を行う検査工程とがある。この検査工程はCCDカメラを用いて実施する物理的な検査や、エラーレート等の電気的特性を検査する工程がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
これら検査工程はディスク製造工程で製造されたディスクの欠陥を的確かつ迅速にフィードバックするため製造ライン中で実施される。しかし電気的特性を検査するには1枚あたりの処理時間が長くなるため、処理時間短縮のために多数台の検査装置が必要となる。そのため様々な検査手法がとられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−351102号公報
【特許文献2】特開平10−149586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように全てのディスクに対して検査出来ない場合がある。例えばDVD−RやBD−Rに代表される追記型ディスクにおける書き込みを必要とする検査を行ってしまうと消去不可能であるため、書き込みを必要とする検査の全数実施は不可能である。この場合は、製造工程終了後、完成品の中から一定条件ごとに検査対象を抜き取り、オフライン検査器を用いて検査を実施しているが、多くの工数が必要になるとともに、製造工程へのフィードバックが遅くなる。そのため不良を発見した場合には既に多くの不良品が生産されており、大きなロスを発生させてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の光ディスク製造装置はポリカーボネイト基板を成形する成形工程と金属膜を形成する成膜工程、前記金属膜上に光透過層を形成する光透過膜形成工程と基板が大気中の湿気を吸水することを防ぐ防湿膜を形成する防湿膜形成工程とCCDカメラを用いて行なう外観検査工程と電気特性を検査する電気特性検査工程を備え、前記電気特性検査工程は、一定間隔で光ディスクに書込みおよび再生を行う抜き取り検査を実施し、その測定データの判定と共に、データの挙動を統計的に処理し信号特性劣化の予測や共通欠陥をいち早く製造工程へフィードバックする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光ディスクの製造工程において電気特性異常の検出、信号劣化予測を行い、迅速なフィードバックが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来の光ディスクの製造工程フローを示す図
【図2】実施の形態1の光ディスクの製造工程フローを示す図
【図3】実施の形態1のエラー予測機能のための電気特性の推移グラフを示す図
【図4】実施の形態1の特性異常位置特定を示す図
【図5】実施の形態1の判定フィードバック基準を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1は光ディスクであるブルーレイディスクの従来の製造工程フローを示す図である。製造工程は、成形工程11、成膜工程12、光透過膜形成工程13、防湿膜形成工程14、外観検査工程15、エラーレート検査工程16を経て、完成品17が製造され、完成品17から抜き取りで記録特性検査工程18を経て完了する。
【0011】
成形工程11では、射出成形機と射出成形金型によって所望の凹凸パターンを有する基板を射出成形する。基板は厚み1.1mm、直径120mm、中心孔径15mmのポリカーボネイト樹脂からなる。射出成形された基板は冷却機構によって冷却される。
【0012】
成膜工程12では、冷却された基板は、スパッタリング装置によって反射膜が形成される。反射膜はアルミニウムや銀などからなる0.1μm以下の薄膜である。記録系メディアの場合は反射膜に加え、その他の薄膜を形成する。反射膜が形成されたのち、基板を冷却機構によって再度冷却する。
【0013】
次に光透過膜形成工程13では、反射膜が形成された基板上に、スピンコートによって光透過膜を形成する。光透過膜は、ほぼ100μmの厚みからなるUV硬化樹脂層である。UV硬化樹脂層は、およそ95〜98μmのカバー層と、およそ2〜5μmのハードコート層からなる。カバー層を形成する光透過膜形成工程13は、詳細にはスピンコート工程、振り切り硬化工程、完全硬化工程からなる。
【0014】
次の防湿膜形成工程14では、基板に光透過膜を形成した反対の面に防湿膜を形成する。防湿膜は、基板自身が吸湿することで反ってしまうのを防止する目的がある。
【0015】
外観検査工程15では、基板の反りや光透過膜の厚み、表面のゴミなどを検出し良否判定を行ない、また表面上判別不可能な電気特性については次のエラーレート検査工程16にて電気特性の評価による良否判定が実施される。さらに外観検査工程15とエラーレート検査工程16では評価不可能な項目、例えば追記型ディスクにおいて実際にデータ書き込みを行なうことで検査する特性評価がある。そのため、完成品17から生産ロットごと、あるいは一定条件において抜き取りで記録特性検査工程18を行なわなければならなかった。
【0016】
図2は本実施の形態の製造工程フローを示す図である。本実施の形態では従来の製造工程フローの外観検査工程15までは同じであるが、エラーレート検査工程16と記録特性検査工程18を併せ、完成品17となる前に自動抜き取り検査を行なう電気特性検査工程21を設け、エラーレートの検査に加え、書込みおよび再生を伴うジッター、反射率等の電気的特性を検査する。
【0017】
さらに電気特性検査工程21の検査結果のデータの推移を統計的に処理し、これを元にエラー予測の機能をもたせたデータの劣化予測工程22と、検査結果の推移から共通欠陥の発生している位置を特定する機能をもたせた共通欠陥検出工程23を実施する。
【0018】
図3は劣化予測工程22のエラー予測機能のための電気特性の推移グラフを示す図である。劣化予測工程22ではそれまでに行なった検査データの推移と、それまでのデータを統計的に処理した変化予測から次回検査時の結果予測、すなわち劣化度合いを予測する。測定データ34はまず定められた規格値32以下、警告値33以下であるか否かを判別する。次に直近の測定データ35と、過去に収集したデータから統計的に求めたデータより生産中のディスクの特性劣化を予測する。予測値が規格値32または警告値33以上になる事が予想される場合には、検査結果として予測結果がNGであることを製造工程へフィードバックを行う。ここで劣化予測される項目はエラーレートだけでなく、ジッター、反射率等全ての項目について同様に処理される。また検査データが統計的に異常な増分を示している場合には変化量警告として劣化予測と同様に、製造工程へフィードバックする。
【0019】
図4は共通欠陥検出工程23で処理される欠陥の共通位置を示す図である。完成品ディスクイメージ41上に検査アドレスを基準に表示した欠陥42がプロットされている。共通欠陥検出工程23では欠陥や、局所的に特性不良が検出されたアドレス、またはアドレスから算出されるディスク上の半径値、角度から、発生している欠陥と直近で検査したディスクとの共通性を見出し、共通欠陥か否かを検出する機能をもつ。
【0020】
図5は電気特性検査工程21の検査データと劣化予測工程22で得られた警告内容、さらに共通欠陥検出工程23から得られたデータより製造工程にフィードバックする情報の一例を示した図である。
【0021】
具体的には検査規格値を超過している規格NGレベル51、警告値を超過している警告レベル52、直近のデータからの増分が異常である変化量警告レベル53、劣化予測結果が警告値を超える劣化予測NGレベル54と各欠陥共通性から、成形工程11や成膜工程12、光透過膜形成工程13、それぞれの工程間をつなぐ搬送工程に要因を絞り込み、その対応を合わせて製造工程にフィードバックする。本実施の形態におけるフィードバックする情報は発明者らの経験から得られたもので、測定データと劣化予測、共通欠陥検出を元に評価因子ごとにアルゴリズムを作成することで、各工程へのフィードバックを最適化できる。
【0022】
このように、エラーレート等の電気特性に加え、書込みおよび再生による検査を実施し、さらに劣化予測、共通欠陥検出を実現することで、製造工程への迅速なフィードバックを可能とする。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の光ディスク製造装置は、ブルーレイディスク等の光ディスクの製造に有用である。
【符号の説明】
【0024】
11 成形工程
12 成膜工程
13 光透過膜形成工程
14 防湿膜形成工程
15 外観検査工程
16 エラーレート検査工程
17 完成品
18 記録特性検査工程
21 電気特性検査工程
22 劣化予測工程
23 共通欠陥検出工程
32 規格値
33 警告値
34 測定データ
35 直近の測定データ
41 完成品ディスクイメージ
42 検査アドレスを基準に表示した欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスク製造装置であって、ポリカーボネイト基板を成形する成形工程と、金属膜を形成する成膜工程、前記金属膜の上に光透過層を形成する光透過膜形成工程と基板が大気中の湿気を吸水することを防ぐ防湿膜を形成する防湿膜形成工程と、CCDカメラを用いて行なう外観検査工程と、電気特性を検査する電気特性検査工程を備え、
前記電気特性検査工程は光ディスクに書込みおよび再生を行い、測定したデータの結果と、データの挙動を統計的に処理し信号特性劣化の予測を行なう、光ディスク製造装置。
【請求項2】
前記電気特性検査工程において、予測した信号劣化に基づいて前記成形工程、前記成膜工程、前記光透過膜形成工程、または前記防湿膜形成工程の少なくとも1工程の条件変更を自動的に行う、請求項1記載の光ディスク製造装置。
【請求項3】
前記電気特性検査工程において、共通位置欠陥検出機能を有する、請求項1記載の光ディスク製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−238359(P2012−238359A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106829(P2011−106829)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】