説明

光ディスク

【課題】 高速硬化で成膜可能で、しかも硬化時および温・湿度変化時におけるディスクの変形(反り)を十分に抑制でき、高温度下でもディスクの変形が抑制された光ディスクを、安価で、かつ簡便に提供すること。
【解決手段】 増感剤および反応触媒を用いて光硬化型シリコーン樹脂を重合させてなるカバー層を備えたことを特徴とする光ディスク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像および音響の分野等に利用される光情報記録媒体としての光ディスクに関し、特に青紫色の光源で情報の記録・再生を行うブルーレイ用光ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代光ディスクとしてブルーレイ用の光ディスクの開発が活発である。CD、DVDなどの光ディスクは現在すでに普及しているが、さらなる高密度、高容量、小型化をめざした要求がある。また昨今では、HDTVに対応した高性能・高品質をめざした開発が高まっており、ディスクを構成する各部材の性能向上が今日強く求められている。特に、ブルーレイ用の光ディスクは、記録・再生用のレーザー光の短波長化にともなう長所から高開口化により高密度化を図り、光の出入が樹脂側からの録再方法に適用されるので、光ディスクに要求される特性は従来とは比較にならないほどよりきびしいものとなっている。
【0003】
そのような背景のもと、従来より多くの光硬化型の樹脂が検討されてきた。
例えば、構成素材の改良や、樹脂中に混合する反応開始剤を多品種添加して反応を行う改良などが加えられてきた。しかしながら、厚みの確保や、成膜性の悪化、温度・湿度変化による変形がおよぼす特性不良などで、利用上満足する効果が得られず、性能がまったく不十分であった。
【0004】
具体例として、例えば分子中にトリアジン構造の骨格を有する化合物を用いて得られた硬化膜が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−38058号公報(第2頁 特許請求の範囲参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1の技術では、確かに耐熱性が向上し、膜の安定性に寄与することが考えられるが、トリアジン構造からは硬化収縮時の変形を小さくする作用は期待できない。
【0006】
本発明は、高速硬化で成膜可能で、しかも硬化時および温・湿度変化時におけるディスクの変形(反り)を十分に抑制でき、高温度下でもディスクの変形が抑制された光ディスクを、安価で、かつ簡便に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、増感剤および反応触媒を用いて光硬化型シリコーン樹脂を重合させてなるカバー層を備えたことを特徴とする光ディスクに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光ディスクは、増感剤および反応触媒を用いて光硬化型シリコーン樹脂を重合させてなるカバー層を形成することにより、光照射下においてカバー層の高速硬化を実現できるだけでなく、硬化、温度変化および湿度変化に伴う変形(反り)を十分に抑制でき、かつ高温度下での長期保管においてもディスクの変形を小さく抑制できる。またカバー層の光硬化型シリコーン樹脂としてイオン反応硬化型のシリコーン樹脂を用いると、安価で、かつ簡便に本発明の光ディスクを提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる光ディスクの模式図である。
本発明の光ディスクは、後述する特定のカバー層を有する限り、いかなる構成を有していてよく、例えば、図1に示すように、基材1の片面にメディア層2およびカバー層3が順次積層されてなっている。
【0010】
基材1はディスクの透明性と平面性を確保できれば有機、無機の材質にかかわらず用いることができる。例えば、基材はポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステル、ポリビニル樹脂からなっていてよいが、温度変化および湿度変化に伴う変形をより有効に防止する性能と機械的損傷の少ない観点から、ポリカーボネート樹脂が好ましい。基材の厚みは特に制限されないが1〜1.1mmが好適である。
【0011】
メディア層2は、反射、記録、誘電などの各種機能を発揮する層である限り、いかなる無機物や有機物からなっていてよく、また単層構成を有していても、または多層構成を有していてもよい。例えば、反射膜としての機能を発揮する層である場合、当該層の構成材料は、銀、金、アルミなどの金属が代表的である。通常は反射膜の上にさらに、Ge合金の記録膜やTa合金の誘電膜が形成されてメデイア層2が構成される。ここではあくまで一例のメディア層構成を記載しているにすぎず、本発明では上記構成に限定されることはなく、いかなる他の構成であってもよい。メディア層は例えば、スパッタ法、真空蒸着などの方法によって形成可能である。
【0012】
カバー層3は、増感剤および反応触媒を用いて光硬化型シリコーン樹脂を重合(硬化)させてなっている。
【0013】
本発明で使用される光硬化型シリコーン樹脂は詳しくは、一般式(I);
【化1】

で表されるシリコーン樹脂である。
【0014】
式(I)において、Rはそれぞれ独立して一般式(i)、(ii)または(iii);
【化2】

で表される1価の有機基であり、R’はフェニル基である。なお、kで表される繰り返し単位は必ずしも全ての単位が同一でなければならないというわけではなく、全てのRおよびR’はそれぞれ独立して上記範囲内で決定されればよい。
【0015】
式(I)において、kは本発明の目的が達成される限り特に制限されず、通常は100〜700、特に400〜600が好ましい。
【0016】
式(i)中、nは1〜3の整数である。
mは0〜2の整数、特に0または1である。
なお、「−C10−」は1,2−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基または1,4−シクロヘキシレン基を意味し、好ましくは1,4−シクロヘキシレン基である。
【0017】
式(ii)および(iii)中、pは1〜3の整数である。
【0018】
シリコーン樹脂の分子量は上記kが上記範囲内になるような値であり、通常は、成膜性の容易さ、反応触媒の種類と混合量、硬化性の早さ、および得ようとする表面硬度などできめればよい。他に入手の容易さ、価格の他に、有害性、廃棄など法令適用に制限されないことなどを考えて、分子量や置換基等の異なる2種類以上のシリコーン樹脂を混合して使用してもよい。
【0019】
上記のようなシリコーン樹脂は、X−40−2700系(信越化学社製)の塗料として入手可能である。
【0020】
本発明において増感剤は、光を吸収して励起し、その励起エネルギーを反応触媒に移動させて反応触媒を活性化し、光硬化型シリコーン樹脂の重合・硬化を起こさせる作用を示すエネルギー移動型のものである。増感剤を用いないと、硬化性が極端に低下して生産性を低下させたり、あるいは設備に必要以上のコストがかかる。増感剤の吸収波長領域は、当該増感剤がカバー層の形成時に照射される光を吸収し、結果として樹脂の硬化が達成される限り特に制限されないが、光源の入手容易性と樹脂の硬化効率の観点から、350〜500nmの長波長領域で特に感度を有する物質が好ましい。上記波長領域で感度を有するとは、波長−吸収強度曲線において上記波長領域で吸収ピークを有するという意味である。
【0021】
そのような増感剤として、例えば、ニトロベンゼン類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類およびアントロン類、等が挙げられ、それらの化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を使用することができる。これらの増感剤は、広い波長範囲で光吸収して励起し、その励起エネルギーを反応触媒へ移動させたのち原型に戻るのでエネルギー移動増感型と言われる。
【0022】
ニトロベンゼン類の具体例として、例えば、p−ニトロジフェニル、2,4−ジニトロアニリン、ピクラミド等が挙げられる。
ベンゾフェノン類の具体例として、例えば、p,p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0023】
アントラキノン類の具体例として、例えば、1,2−ベンゾアントラキノン等が挙げられる。
アントロン類の具体例として、例えば、1,9−ベンゾアントロン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンゾアントロン等が挙げられる。
【0024】
増感剤は、前記した作用を示す限りにおいて、本願明細書で例示の化合物に特に限定されることはなく、他の物質でも用いることができる。
【0025】
増感剤の含有量は、カバー層の形成時に使用される塗液全量に対して1〜5重量%、好ましくは1〜3重量%であって充分である。本発明において増感剤が多すぎても特に問題はないが、製造コストが増大する。2種類以上の増感剤を使用する場合はそれらの合計量が上記範囲内であればよい。
【0026】
反応触媒は光硬化型シリコーン樹脂の重合・硬化を直接的に促す物質であり、本発明においては、イオン開裂剤を使用する。イオン開裂剤を使用することにより、光硬化型シリコーン樹脂におけるエポキシ環の開環による付加反応が起こってエポキシ基同士の連結が起こり、結果としてシリコーン樹脂の重合・硬化が進行する。
【0027】
イオン開裂剤としては従来からエポキシ環のイオン開裂剤として使用されているものが使用可能であり、例えば、ルイス酸アリルオニウム塩、ジアリルヨードニウム塩等が使用可能である。ルイス酸アリルオニウム塩を用いると、カチオン反応の硬化過程で皮膜を形成し、硬い膜がはやく得られる。また、重合過程がイオン反応であるため、酸素による反応阻害がないので、より有効に高速硬化を達成できる。
【0028】
ルイス酸アリルオニウム塩はルイス酸を発生させ、Sb、SnまたはFeのいずれか1種ならびにIおよびFを含むものであり、例えば、一般式;
[R’(C)]ISbF
(式中、R’は炭素原子数10〜14の1価炭化水素基、特にアルキル基である)で表される化合物が挙げられる。そのような化合物と共に増感剤を用いて、上記光硬化型シリコーン樹脂を重合させると、硬化時、温・湿度変化時および高温保管時におけるディスクの変形(反り)をより十分に抑制できる光ディスクを得ることができる。
【0029】
反応触媒の含有量は特に制限されず、カバー層の形成時に使用される塗液全量に対して1〜4重量%、特に2〜3重量%が好ましいが、増感剤との総添加量を考慮して混合することがより好ましい。すなわちより好ましくは反応触媒と増感剤との総含有量は塗液全量に対して4重量%以下、特に2〜4重量%である。
【0030】
カバー層は、以上に示した光硬化型シリコーン樹脂、増感剤および反応触媒からなる塗液(混合物)をスピンコーティング法等の公知の塗布方法によってメディア層上に塗布し、光照射を十分に行い硬化させることによって形成可能である。光源は、増感剤が吸収可能な光を照射できる限り特に制限されず、例えば、キセノン、メタルハライドなどの汎用ランプ等が使用可能である。
【0031】
本発明においてカバー層は十分な硬化を高速で達成可能である。
例えば、増感剤としてピクラミドを使用し、かつ光源としてキセノンランプを使用し、硬化後の厚みが約100μmのカバー層を形成する場合、積算光量約1000mJ/cmで十分な硬化が達成できる。
また例えば、増感剤として2,4−ジニトロアニリン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、1,2−ベンゾアントラキノンまたは1,9−ベンゾアントロンを使用し、かつ光源としてメタルハライドランプを使用し、硬化後の厚みが約100μmのカバー層を形成する場合、積算光量約850mJ/cmで十分な硬化が達成できる。
【0032】
カバー層の厚みは本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、95〜100μmが好適である。
【0033】
図1では基板1上にメディア層2およびカバー層3が順次積層されてなる光ディスクが示されているが、本実施形態において光ディスクは基板1上にカバー層3およびメディア層2が順次積層されてなる構成を有していても良い。その場合には後述するようなハードコート層がメディア層の上に形成されればよい。
【0034】
本発明の別の実施形態において光ディスクは、上記実施形態で示した図1の光ディスクのカバー層3の上にハードコート層を有する。光ディスクは記録・再生時の回転時に読みとり部品との接触から表面ダメージを受けるとエラー発生の問題が生じることがある。また光ディスクはベアー使用になると、落下による表面傷や粉塵付着の問題や、ほこり・チリなどの付着の問題が生じることがある。ハードコート層を形成することによって、そのような問題を回避できる。もちろん、カバー層単独で上記問題を回避できる場合は、ハードコート層の形成は不要である。
【0035】
ハードコート層を構成する材料は光ディスクの分野で機械的強度に優れた層(膜)を形成可能な材料として知られている公知の材料であってよく、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂およびそれらの混合物等が挙げられる。
ハードコート層の形成に使用されるシリコーン樹脂の具体例として、カバー層の形成に使用されるシリコーン樹脂、例えば、X−41−2420系(信越化学工業製)等が挙げられる。
【0036】
アクリル樹脂の具体例として、例えば、CR−38(GE東芝シリコーン製)等が挙げられる。
【0037】
ハードコート層には通常、使用される樹脂に応じて、前記と同様の反応触媒やラジカル重合開始剤が含有される。ラジカル重合開始剤として、例えば、アセトフェノン等が使用可能である。
【0038】
ハードコート層には、当該層の機械的強度をさらに向上させる観点から、無機微粒子が含有されることが好ましい。
無機微粒子はλ/4による制約から、平均一次粒径100nm以下、特に50nm以下のものが使用される。無機微粒子として、例えば、シリカ等が使用可能である。
無機微粒子の含有量は、ハードコート層の形成時に使用される塗液全量に対して2.5〜7重量%、特に3.5〜6.5重量%が好ましい。
【0039】
またハードコート層には、油分はじきのために、シリコーンオイル、例えばメチルシリコーンオイルを含有させることが好ましい。シリコーンオイルは分子量500くらい低分子量のものが好ましく使用される。
シリコーンオイルの含有量は、ハードコート層の形成時に使用される塗液全量に対して0.02〜0.1重量%、特に0.05〜0.1重量%が好ましい。
【0040】
ハードコート層は、ハードコート層用の上記成分を使用すること、および積算光量400〜600mJ/cm程度の照射を要すること以外、前記カバー層の形成方法と同様の方法によって形成可能である。
【0041】
ハードコート層の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、0.5〜5μm、特に2〜5μmが好ましい。
【0042】
以上の実施形態において光ディスクは、基材1の一方の面にメディア層2およびカバー層3ならびに所望によりハードコート層(図示せず)を備えた構成を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、本発明のまた別の実施形態において光ディスクは、基材1の一方の面にメディア層2およびカバー層3ならびに所望によりハードコート層を備えるだけでなく、他方の面にもメディア層2およびカバー層3ならびに所望によりハードコート層を備えた構成を有していてもよい。そのような実施形態における基材、メディア層、カバー層およびハードコート層はそれぞれ前記実施形態におけるものと同様である。
【実施例】
【0043】
(実験例1)
一方の面にランド、グルーブの複数の溝が形成されたポリカーボネート(直径120mm、厚み1mm)からなる基板を用いた。基板の溝形成面上に厚み50nmの銀からなる反射膜をスパッタで形成した。次に反射膜上にカバー層形成用塗液を塗布し、照射により硬化を行った。塗液は表1に示す材料構成で調製した。サンプルNoは表1に示すとおりである。詳しくは、シリコーン樹脂としてX−40−2700B(信越化学社製)、増感剤としてピクラミド、反応触媒としてアセトニトリルを10%を含む[C1225ISbFを混合して得られた塗液を用いた。塗布は、硬化後厚みが100μmになるように条件設定したスピンコートで行った。照射はキセノンフラッシュ光源で積算エネルギーを約1000mJ/cmで硬化させた。厚みはレーザ反射による測定器(キーエンス社)で求めた。そして比較例として、増感剤を含まないものも作成し比較サンプル1とした。
【0044】
評価は、ラボ用ピンセントでおこない、ひっかきはピンセット先端で、硬軟度はその反対側で押して調べた。
【0045】
【表1】

【0046】
サンプルNo.3のように増感剤が比較的少ない時には硬化はするものの傷がやや発生したり、面の押圧による弾力性もやや硬い程度であった。これに対し、増感剤が一定量以上含有するサンプルNo.1、2は反応触媒を含む含有量が変動しても充分硬化が早くかつ無傷で硬く硬化していた。増感剤を含まない比較サンプル1は表面のみが硬化して膜にならなかった。このサンプルはカバー層のないサンプルとして他のサンプルとともに以下の評価に供した。
【0047】
変形特性は、赤色レーザーを内臓した市販そり測定機(アーガス製 Dr−Schwab)を用いて反り量の値(チルト値と用語で一般には述べている)で調べた。硬化時の反り変化と、温度試験によるサンプルのそり変形の変化を調べた。硬化時の反り変形において、硬化前後の反り変化量は「硬化後の反り角度」から「硬化前の反り角度」を減じた値を用いた。反り(角度)は、膜側に変形する時をマイナス、基板側に変形する時をプラスで表示した。ディスクの反りは赤色レーザ反射による反射光のちがいをよみとる複屈折測定機で求めた。温度試験は、60℃に設定した乾燥機の中にサンプルを固定しレーザー反射の測定点を時間経過とともに追跡し変形を調べた。結果をそれぞれ図2、図3に示す。
【0048】
カバー層を備えたサンプルは硬化収縮が小さく、温度特性でも60分後の反りは、カバー層なしのサンプルより変形が小さく抑制されていることがわかった。
【0049】
以上のことから、本発明に述べるように、増感剤と反応触媒を混合して含有した光硬化型シリコーン樹脂でカバー層を形成すると、速硬性があり量産性にすぐれ、かつ反りを小さく抑制可能なディスクとして提供可能となる。
【0050】
(実験例2)
表2に示すようなカバー層形成用塗液組成を採用したこと、照射光源にメタルハライドを用いて積算エネルギーを約850mJ/cmで硬化させたこと以外は実験例1と同様の方法でサンプルを試作し調べた。
【0051】
【表2】

【0052】
これらを湿度試験(25℃、90%RH、96Hr)および加速試験(80℃、50%RH、96Hr)に投入して、同様に時間変化および試験前後での反りの変化を測定した。結果を図4および図5に示す。湿度試験では上記環境下に96時間いれたあと、サンプルをとりだして自然放置し、放置後の時間経過を700分まで観察した。
【0053】
サンプルNo.4〜7は、初期的に変化が少しあるもののほぼ同様の湿度特性を示し、変形抑制にすぐれたディスクとして実現できていることがわかる。また特性面では反応触媒の種類も特に限定されることはなかった。一方、図5に示す加速試験でも変形の永久反りは、小さくなっていることがわかる。サンプルNo.4〜7で使用した増感剤はいずれもメタルハライドランプに対して適正な吸収波長範囲を示すものである。
【0054】
(実験例3)
硬化後の厚みを変化させたこと以外、サンプルNo.1と同様の方法でカバー層を形成した。その上にハードコート層を形成した。詳しくは、表3に示すようにアクリル樹脂またはシリコーン樹脂と、コロイダルシリカおよび/またはメチルシリコーンとを混合した塗料をカバー層上に塗布し、照射により硬化を行った。照射はメタルハライド光源を用い400mJ/cmで行った。カバー層とハードコート層の厚みは表に記載のとおりである。シリコーン樹脂はX−41−2420(信越化学社製)、アクリル樹脂はUV−1000(日本化成社製)、コロイダルシリカはIPA−ST(日産化学工業社製)、メチルシリコーンはTSF−451(GE東芝シリコ−ン社製)を用いた。
【0055】
評価はテーバ試験とマジックテストを行った。
テーバ試験はJIS K 7204に準拠した方法で行い、摩擦子はCS−10F、荷重5gであり、50pass走行させた後、ダメージを観察した。
マジックテストは油分付着について塗料メ−カが汎用するテストであり、油性赤マジックで面上に記載したあと、24Hr後にエタノールでふきとり、消失痕跡を観察した。
【0056】
【表3】

【0057】
シリカは含むが、シリコーンオイルは含まないサンプルNo.8は、強度があるものの油分はじきはなかった。またシリカは含まないで、シリコーンオイルは含むサンプルNo.9は逆にマジック付着防止があったが、強度は発揮されなかった。このことから、シリカとシリコーンオイルを付与効果として混合しているとサンプルNo.10、11、12のように両方の特性が発揮されることがわかる。
このことから、本発明の光ディスクにシリカとシリコーンオイルの両方を適量混合したハードコート層を備えると、ベアーディスクとして使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の光ディスクは、DVD、HDTV、コンピューターメモリなど民生、業務のあらゆる方面のメデイアとして利用可能である。本発明の光ディスクは、特に、ブルーレイ用の光ディスクとして利用することが好ましい。ブルーレイ用の光ディスクは記録容量等が著しく大きく、反り等の変形に対して最も要求が厳しいが、本発明の光ディスクはそのような要求に対しても十分に応えることができるためである。
【0059】
本発明の光ディスクが好適に適用可能なブルーレイ装置は、光ディスクの樹脂膜側に主波長405nmの光を照射することによって記録/再生するブルーレイ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態の光ディスクの概略断面図。
【図2】実験例1で行った硬化時の反り変化を示すグラフ。
【図3】実験例1で行った温度試験の結果を示すグラフ。
【図4】実験例2で行った湿度試験の結果を示すグラフ。
【図5】実験例2で行った加速試験の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0061】
1:基材、2:メディア層、3:カバー層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増感剤および反応触媒を用いて光硬化型シリコーン樹脂を重合させてなるカバー層を備えたことを特徴とする光ディスク。
【請求項2】
基材上にメデイア層およびカバー層を順次積層してなる請求項1に記載の光ディスク。
【請求項3】
前記増感剤が、エネルギー移動増感型のニトロベンゼン類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類およびアントロン類からなる群から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク。
【請求項4】
前記増感剤が、p−ニトロジフェニル、2,4−ジニトロアニリン、ピクラミド、p、p’−ジメチルアミノベンゾフェノン、p,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,9−ベンゾアントロン、および3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンゾアントロンからなる群から選択される1種以上の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項5】
前記反応触媒が、光照射によってルイス酸を発生させ、Sb、SnまたはFeのいずれか1種ならびにIおよびFを含むルイス酸アリルオニウム塩であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項6】
前記反応触媒が、一般式;
[R(C)]ISbF
(式中、Rは炭素原子数10〜14の1価炭化水素基である)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項7】
前記光硬化型シリコーン樹脂が、一般式(I);
【化1】

[式(I)中、Rはそれぞれ独立して一般式(i)、(ii)または(iii);
【化2】

(式(i)中、nは1〜3の整数であり、mは0〜2の整数である;式(ii)および(iii)中、pは1〜3の整数である)で表される1価の有機基であり、R'はフェニル基である;kは100〜700である]
で表されるシリコーン樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項8】
前記カバー層の厚みが95〜100μmである請求項1〜7のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項9】
前記カバー層の上にハードコート層を備えてなり、ハードコート層がシリコーン樹脂または/およびアクリル樹脂の硬化物中に無機微粒子が含有してなる請求項1〜8のいずれかに記載の光ディスク。
【請求項10】
前記ハードコート層がさらにシリコーンオイルを含有する請求項9に記載の光ディスク。
【請求項11】
前記ハードコート層の厚みが2〜5μmである請求項9または10に記載の光ディスク。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−294137(P2006−294137A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114462(P2005−114462)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】