説明

光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定するシステム及び方法

本発明は、主要な信号301を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定するシステム及び方法に関し、当該方法は、読出しデータ信号zから導出された第一のデータ信号mとデータデシジョン信号DDSから導出された第二のデータ信号wとの相関を取る相互相関ステップを含んでおり、前記読出しデータ信号zは、主要なデータ信号から導出される。使用:タンジェンシャルチルトの推定。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光データキャリアのタンジェンシャルチルト(tangential tilt)を推定するシステム及び方法に関する。
本発明は、光ディスクシステム又は光磁気ディスクシステムの分野に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
ディスクドライブシステムは、ディスク状の記憶媒体に情報を記憶するか、又はかかるディスク状の記憶媒体から情報を読出すことを意味する。かかるシステムでは、ディスクが回転され、書込み/読取りヘッドが回転するディスクに関して半径方向に移動される。
【0003】
光ストレージディスクは、連続する螺旋の形式であるか、又は複数の同心円の形式のいずれかで、少なくとも1つのトラックを含んでいる。光ディスクは、リードオンリタイプからなる場合があり、製造中に情報が記録され、そのデータのみをユーザにより読取ることができる。光ストレージディスクは、書換え型からなる場合もあり、ユーザにより情報が記憶される場合がある。
【0004】
光ストレージディスクの記憶スペースに情報を書き込むため、又はディスクから情報を読取るため、光ディスクドライブは、一方で光ディスクを受けて回転する回転手段を有し、他方で典型的にはレーザビームである光ビームを生成して、ストレージトラックを前記レーザビームで走査するための光手段を有している。光ディスクの技術は一般的であって、光ディスクに情報が記憶される方式、及び光ディスクから光データを読取る方式は、一般に知られており、この技術を更に詳細に記載する必要はない。
【0005】
光ディスクを回転するため、光ディスクドライブは、典型的にモータを有しており、このモータは、光ディスクの中心部分に係合するハブを駆動する。通常、モータは、スピンドルモータとして実現され、モータにより駆動されるハブは、モータのスピンドルの車軸に直接配置される場合がある。
【0006】
回転するディスクを光学的に走査するため、光ディスクドライブは、光ビームジェネレータデバイス(典型的にレーザダイオード)、ディスクの焦点スポットに光ビームを焦点合わせするための対物レンズ、及びディスクから反射された反射光を受け、電気的な検出器出力信号を生成するための光検出器を含んでいる。
【0007】
動作の間、光ビームは、ディスクに焦点合わせされたままであるべきである。このため、対物レンズは、軸方向に置き換え可能であるように配置され、光ディスクドライブは、対物レンズの軸方向の位置を制御するためのフォーカルアクチュエータ手段を含んでいる。さらに、フォーカルスポットは、トラックと配列されたままであるべきであるか、又は新たなトラックに関して位置合わせ可能であるべきである。このため、少なくとも対物レンズは、半径方向に置き換え可能であるように設けられ、光ディスクドライブは、対物レンズの半径方向の位置を制御するための半径方向のアクチュエータ手段を含んでいる。
【0008】
より詳細には、光ディスクドライブは、ディスクドライブフレームに関して置換可能にガイドされるスレッジを含んでおり、このフレームは、また、ディスクを回転するためのスピンドルモータを搬送する。スレッジの移動コースは、ディスクに関して実質的に半径方向に位置され、スレッジは、内部トラックの半径から外部トラックの半径への範囲に実質的に対応するレンジにわたり変位することができる。かかる半径方向のアクチュエータ手段は、たとえばリニアモータ、ステッパモータ又はウォームギアモータを含む、制御可能なスレッジドライブを含んでいる。
【0009】
スレッジの変位は、光レンズを粗く位置合わせすることが意図される。光レンズの位置をファインチューニングするため、光ディスクドライブは、対物レンズを搬送し、かかるスレッジに関して置換可能に設けられるレンズプラットフォームを含んでいる。スレッジに関するプラットフォームの変位レンジは、比較的小さいが、スレッジに関するプラットフォームの位置合わせ精度は、フレームに関してスレッジの位置合わせ精度よりも大きい。
【0010】
多くのディスクドライブでは、対物レンズの指向性が固定されており、すなわちその軸は、ディスクの回転軸に平行に向けられている。幾つかのディスクドライブでは、対物レンズは、その軸がディスクの回転軸とある角度を囲むように、枢軸に設けられる。通常、これは、プラットフォームをスレッジに関して回転可能にすることで実現される。
【0011】
記録媒体の記憶容量を増加することが一般に望まれている。この望みを達成する1つの方法は、記憶密度を高めることである。このため、光スキャニングシステムが開発されており、対物レンズは、比較的高い開口数(NA)を有する。かかる光システムに含まれる1つの問題点は、光ディスクのチルトに対する感度が増加することである。光ディスクのチルトは、焦点の位置での光ディスクのストレージレイヤが光軸に対して正確に垂直ではない状況として定義することができる。チルトは、全体として傾斜された光ディスクにより引き起こされる場合があるが、ワープされる光ディスクにより通常引き起こされる場合があり、結果としてチルトの量は、ディスクの位置に依存する。
【0012】
図1に示されるように、チルトは、半径方向の成分及び接線方向の成分を有する場合がある。半径方向成分(ラジアルチルト)は、読取られるトラックに対して横に指向される(すなわち半径方向Rに沿って)平面での偏差の成分βであり、接線方向成分(タンジェンシャルチルト)は、読取られるべきトラックに平行に指向され、データキャリアに対して横に指向される平面での偏差の成分αとして定義される。
【0013】
図2は、傾きのない光ディスクへのレーザビーム照射、並びに、ラジアルチルトとタンジェンシャルチルトをもつ光ディスクへのレーザビーム照射を例示している。ディスクが傾いていない場合、光ビーム206は、トラック201に焦点合わせされたままである。ディスクは、コマ収差につながるラジアルチルト又はタンジェンシャルチルトを有する場合、光ビームはもはやトラック202及び203に焦点合わせされないが、テイル204及び204をそれぞれ有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
結果として、結果的に得られるコマ収差が読出し及び書込み精度を低下させ、チルトマージンがより狭くなるので、短波長レーザダイオード及び高い開口数の対物レンズを使用する光ディスクシステムにおいて、ディスクの傾きを検出して補正することが必要である。
【0015】
光ディスクのタンジェンシャルチルトは、チルトセンサにより伝送されるタンジェンシャルチルト信号から、タンジェンシャルチルト補償のための3次元アクチュエータを使用した方法のような、公知の光学的/機械的なソリューションにより補償することができる。チルト補償の品質は、チルト信号の精度に直接的にリンクされる。
【0016】
光データキャリアのタンジェンシャルチルトを正確に推定することが必要とされる。
特許出願US6,525,332は、光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定する方法を開示している。
この公知の方法は、特定の機械的及び光学的エレメントが必要とされるので制限をもたらす。したがって、対応するドライブは、かなりのサイズであって、容易にダメージを受け、かつ高価である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、光データキャリアのタンジェントチルトの推定に関する改善された方法を提案することにある。
主要なデータ信号を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトαを推定するため、本発明に係る方法は、読出しデータ信号から導出された第一のデータ信号とデータデシジョン(data decision)信号から導出された第二のデータ信号との相関を取るための相互相関ステップを有しており、かかる読出しデータ信号は、かかる主要なデータ信号から導出される。
【0018】
本発明に係るタンジェンシャルチルトの推定は、タンジェンシャルチルトが存在するとき、読出しチャネルの時間領域チャネル応答の一方の側にサイドローブが現れるという事実に基づいている。また、サイドローブは、読出しチャネルの時間領域のチャネル応答の偏導関数で目に見ることができる。チルトの値が大きくなると、サイドローブがより顕著になる。
【0019】
これは、従来の方法の問題点を回避する信号処理にのみ基づいたソリューションである。
この方法は、提案されるフィルタ係数が低い感度のタイミングエラー、DCオフセット及び書き込みの非対称性につながるのでロバスト性がある。
【0020】
さらに、本方法のチルト推定は、光ディスクに記憶される主要なデータ信号の時間サンプリングの変動に対して感度が低く、この方法は、周波数の不整合が制限されると仮定して、ビットクロックに関して非同期的に適用される場合がある。結果として、本方法は、サンプリング時間が緩やかに時間的に変動する場合であっても良好に作用する。
【0021】
また、本発明は、主要なデータ信号を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定するためのシステムに関し、かかるシステムは、本発明に係る方法のステップを実現するための処理手段を含んでいる。
【0022】
また、本発明は、本発明に係る方法のステップを実現するためのコード命令を含むコンピュータプログラムに関する。
また、本発明は、本発明に係る方法の技術的な特徴を反映するタンジェンシャルチルト測定値を搬送する信号に関する。本発明の詳細な説明及び他の態様は、以下に与えられる。
【0023】
本発明の特定の態様は、以下に記載される実施の形態を参照して説明され、添付図面と共に考慮される。添付図面では、同一部材又はサブステップは同じやり方で示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明に係るチルト推定は、DVD+RW(Digital Versatile Disc+ReWritable)システムの例に基づいて与えられるが、本発明は他の光読出しシステムにも適用される。
図3A及び図3Bは、光データキャリア302に記憶されて主要なデータ301を読出し及び検索するための主要な処理ステップをモデル化する。
【0025】
DVD+RWシステムの読出しチャネル応答は、通常、線形フィルタFにより近似することができ、この線形フィルタは、記憶された主要なデータ信号が知られているか、又は信頼性を高くして検出することができるとき、読出しデータ信号z[k]を見ることで経験的に推定することができる。読出しデータ信号z[k]は、かかる線形フィルタFのインパルス応答と光データキャリアに記憶されている主要なデータ信号301との畳み込みとして表現することができる。
【0026】
タンジェンシャルチルト補正(TTC)回路は、読出し信号z[k]を受け、タンジェンシャルチルトの作用が著しく低減された出力データ信号303を生成する。TTCは、タンジェンシャルチルト推定ステップTTEにより生成されたタンジェンシャルチルト信号305の値に調整される係数を有するFIR(Finite Impulse Response)に対応する場合がある。
【0027】
ひとたびTTCにより補正されると、出力信号303は、ビット検出器DETを通して供給され、信号303におけるビットレベルを整数レベルに強制する。ビット検出器は、出力データ信号304を生成し、この出力データ信号は、光データキャリアに記憶された主要なデータ信号に理論的に対応する。
【0028】
主要なデータ信号は、マークの形式、又は特定の長さのスペースの形式で光データキャリアに記憶される。ROM(Read Only Memory)メディアについて、マーク(すなわちピット)は、レコーディングレイヤのくぼみであり、スペース(すなわちランド)は、レコーディングレイヤ自身の部分である。相変化(PC)媒体について、マークは、多結晶環境におけるアモルファス領域であり、環境(surrounding)とは、PCレコーディングレイヤのスペースを表現している。用語「ラン」は、記録された領域を示すために使用され、用語「ランレングス」は、ビットインターバルにおけるランの長さを示す。デジタルデータは、ディスクに記憶される前に符号化されている。符号化されたデータは、チャネルデータと呼ばれ、ランレングスリミテッド(RLL)変調コードに通常一致する。RLLコードは、D及びK制約により特徴づけされる。これらの制約は、ディスクに記録される最短の許容可能な領域がD+1チャネルビットインターバルを含み、最長の領域がK+1チャネルビットインターバルを含むことを意味している。たとえば、DVD規格においてD−2及びK=10のRLLコードが使用される。mチャネルビットインターバルを含む領域は、nを整数としてInにより示される。ユーザ及びチャネルシーケンスの両者は、{−1,1}の値をとるとされる。
【0029】
光学的な読み出しは、光ストレージ、続いて光データ検索からなるコンパウンドプロセスとして見られる場合がある。記憶プロセスを特徴付ける一般に使用される方法は、(バイナリ)パルス振幅変調(PAM)モデルの形式であり、基本パルス形状(通常は矩形パルス)が振幅でチャネルビットにより変調され、結果的に得られる波形は、ディスクに記憶される。したがって、nチャネルビットインターバルを含む記録された領域は、互いに隣接するn個の連続的なパルスにより表現される。ピッツとランドとを区別するために閾値をゼロにする場合、同じランレングスの全てのランは、等しい期間を有する(Inピッツは、Inランドと等しい長さを有する)。したがって、バイナリPAMモデルによれば、等しいランレングスの全てのドメインは、ディスク上の等しい領域を占有する。
【0030】
バイナリPAMスキームはシンプルであるが、ピッツとランドの間のモデルの突然の遷移のような、光記憶の現実から変位する所定の特徴を有する。実際に、マスターピッツ(ROMのケース)は、PAMモデルにより予測された以外のより小さなスロープで、レコーディングレイヤの表面の下に最終的に落ち着く平滑なエッジを有する。さらに、PAMモデルの固定されたパルス幅は、チャネルモデリングについて一般に正確ではない。たとえば、ショートピット(たとえばDVDにおけるI3)が2つのロングランドの間に位置されるとき、可能性のある問題が生じる。そのケースでは、ショートピットに対応する再生信号は、振幅で著しく歪むことができ、結果として、スライスの後の数クロックサイクルを含むビットパターンとして誤解される場合がある。たとえば、I3ピットは、スライサレベルを超えるその外側のサンプルのうちの1つの振幅のシフトのため、I2ピットとして検出される場合がある。再生信号の振幅の歪は、レーザビームの有限の解像度によるものであって、シンボル間干渉をもたらす。この現象を補償するため、1つの最短のランの最大の変調を狙いとすべきであって、これは、マスタリング手順の間に使用されるレーザビームレコーダのレーザパワーにおける増加を介して、(トラックに垂直な方向で測定される)ピッツをより広くすることで達成される。したがって、同時に、ピッツは、名目上の「対称な」ケースにおけるよりも(トラックに対して平行な方向で)長くされる。この手順は、記憶された信号における名目上の同じ長さのピッツとランドの間のビット期間(及び振幅)が等しくないことにつながる。これら等しくないことの範囲は、信号の非対称性(ASM)として知られる量で計測され、以下のように定義される。
【0031】
【数1】

ここでIHk+1及びILk+1は、最長のラン(DVDではI14)のハイピーク(ランド)及びロウピーク(ピット)振幅値を示している。
ここでILk+1及びILk+1は、最短のラン(DVDではI3)のハイピーク及びロウピーク振幅値を示している。
【0032】
なお、DVDフォーマットにおける最長のランは、k=10の制約が含まれるので、I14であってI11ではない。これは、同期パターンによるものであって、符号化されたユーザデータに対応せず(したがって、符号化制約に従う必要がなく)、I14ランを含んでいる。
【0033】
本発明に係るタンジェンシャルチルト推定TTEは、タンジェンシャルチルトが存在するときにリードアウトチャネルの時間領域のチャネル応答の一方の側にサイドローブが現れるという事実に基づいている。チルトの値が大きくなるにつれ、サイドローブがより発音されるようになる。
【0034】
サイドローブはロードアウトチャネルの時間領域のチャネル応答の偏導関数g[k](kはデータサンプルのランクを示す整数)で見ることもできるので、かかる偏導関数のサイドローブは、係数のセットにより定義されるフィルタc[k]によりモデル化される。
【0035】
タンジェンシャルチルトの値αは、以下の等価な関係から導出される場合がある。
【0036】
【数2】

convは畳み込み演算を示し、corrは相関演算を示し、DDS[k]は主要な信号に対応するデシジョンデータ信号を示す。畳み込み及び相関演算の順序がそれらの線形性のために逆にされるので、先の2つの関係は等価である。
【0037】
代替的に、リードアウトデータz[k]からのチルト推定を実行する代わりに、図3Bに記載されるTTCの出力で生成される303として参照されるデータ信号z’[k]から実行される場合がある。より一般的には、式2及び式3におけるデータ信号z[k]は、以下の条件下でzz[k]=z[k]+q[k]により定義されるデータ信号zz[k]により置き換えられる。
【0038】
【数3】

ライトチャネルにおける非対称性の作用を考慮するため、タンジェンシャルチルト推定の方法は、主要なデータ信号に対応するデシジョンデータ信号DDS[k]を使用する。
【0039】
デシジョンデータ信号DDS[k]は、アルファベットa[k]={−1,+1}からのバイナリビット判定を示す場合がある。デシジョンデータ信号a[k]は、たとえば読出し光システムの出力に通常は位置されるリードチャネルのビット検出器により生成される。
【0040】
代替的に、DDS[k]は、アルファベットb[k]={1,B,+1}からの3進のビット判定を示す場合があり、Bはa[k]から導出され、ディスクの非対称性ASMの推定に関する係数である。
【0041】
タンジェンシャルチルト角に関するチャネル応答の偏導関数g[k]のサイドローブに関連する部分が変調され、たとえば、2つのサイドローブを含む非対称なFIRフィルタc[k]によりモデル化され、以下の係数のセットにより形成される。
c[k]=「−A−B000...000+B+A」
ここで、A及びBは非ゼロフィルタ係数であって、kは係数のランクである。
【0042】
複数のゼロはc[k]の中心部分に含まれ、これにより、SRC−PLLと通常呼ばれ、読出しデータ信号を再サンプルするための光データリーダで使用されるタイミング回復サブシステムによりクロストークを除去するため、読出しチャネル応答の時間の導関数との直交性が達成される。このように、読出しチャネル応答の時間導関数に直交するフィルタカーネルを定義するため、フィルタc[k]の係数が選択される。
【0043】
タンジェンシャルチルト推定は読出しチャネル応答における成分c[k]の存在(すなわち振幅)を見ることで実行されるので、セクション[−A,−B]及び[+B,+A]は、読出しチャネル応答に現れるサイドローブの位置でフィルタc[k]に位置され、同じ符号となるべき係数A及びBを選択する場合がある。係数A及びBについて最もシンプルな実用的な選択は、A=1及びB=1である。
【0044】
DVD+RWシステムのケースでは、フィルタc[k]におけるセクション[−A,−B]及び[+B,+A]は、システムがビット同期クロックで作動すると仮定して、すなわちリードデータ信号への到来するビット非同期リードアウトデータが光データキャリアに記憶される主要なデータビットと同期すると仮定して、11のゼロにより有利にも分離される。
【0045】
チルト推定は、異なるクロック領域にも適用される場合がある。この目的のため、フィルタc[k]は、オーバサンプリング/アンダーサンプリングレートの関数として、これに応じて調整されるべきである。最も簡単なソリューションは、c[k]の中心でゼロの数のみを調整することであり、これにより、クロック速度における差が比較的小さい場合に良好に機能する。
【0046】
表記を容易にするため、フィルタc[k]は、2つの部分c1[k]及びc2[k]に分解される場合がある。
【0047】
【数4】

フィルタc1[k]及びc2[k]は、重ね合わせフィルタc[k]={c1[k]conv c2[k]}の係数がタンジェンシャルチルトによるチャネル応答で生じる多数の非対称なローブをモデル化し、重ね合わせフィルタc[k]={c1[k]conv c2[k]}のフィルタカーネルがチャネル応答の時間導関数に直交するように選択される。
【0048】
次いで、畳み込み及び相関演算の線形性を考慮して、2つの式2及び式3の代わりに、以下の一般的な関係が使用される場合がある。
【0049】
【数5】

ここで、式2においてc1=[1]及びc2[k]=c[k]
ここで、式3においてc1[k]=c[k]及びc2=[1]
したがって、本発明に係るタンジェンシャルチルトを推定する方法は、リードアウト信号z[k]から導出されたm[k]=c1[−k]conv z[k]により定義される第一のデータ信号m[k]を、データデシジョン信号DDS[k]から導出されたw[k]=c2[k]conv DDS[k]と相互相関をとる相互相関ステップを含んでいる。
【0050】
第一のデータ信号m[k]は、たとえば以下から導出される。
a)フィルタリングステップ:そのケースでは、m[k]=c1[−k]conv z[k]、ここで式2が適用される場合にc1[k]=1。
b)別の信号q[k]のフィルタリングステップ及び加算ステップ。そのケースでは、m[k]={c1[−k]conv z[k]}+q[k]。ここでq[k]は以下に定義される信号w[k]についてq[k]corr w[k]=0を証明する信号である。特に、q[k]=0である。
c)クリッピングステップのような非線形演算。そのケースでは、m[k]=sign({c1[−k]conv DDS[k]}+q[k])。
【0051】
第二のデータ信号w[k]は、たとえば以下から導出される場合がある。
d)フィルタリングステップ:そのケースでは、w[k]=c2[k]conv DDS[k]。ここで式3が適用される場合にはc2[k]=1。
e)別の信号p[k]のフィルタリングステップ及び加算ステップ。そのケースでは、w[k]={c2[k]conv DDS[k]}+p[k]。ここでp[k]は、先に定義された信号m[k]についてp[k]corr m[k]=0を証明する信号である。特に、p[k]=0。
f)クリッピングステップのような非線形演算。そのケースでは、w[k]=sign({c2[k]conv DDS[k]}+p[k])。
【0052】
先に記載されたチルト推定アルゴリズムの出力は、タンジェンシャルチルトの振幅に比例する。しかし、チルト推定アルゴリズムの出力と実際のチルト振幅との間の比例定数が前もって較正されるべきである。図3Bのスキームに示されるチルト補正された波形サンプルからチルト推定が実行される場合に、キャリブレーションは余り重要ではない。
【0053】
図4は、所与の値のタンジェンシャルチルトαについてDVD+RWチャネル応答のリードアウトチャネルの時間領域のチャネル応答の偏導関数g[k]を例示している。フィルタc[k]によりモデル化されるサイドローブは、SLと呼ばれる。
【0054】
状況は、他の光学的な駆動システムについて定性的に同じままであり、サイドローブからセントラルローブへの距離のみが光スポット解像度に依存して変化する。
【0055】
本発明に係る方法は、各種処理ステップを実現するためのコード命令を含むコンピュータプログラムにより実現される場合がある。
【0056】
光データキャリアリーダ及び/又はライタでは、かかる方法は、プライマリデータ信号を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定するためのシステム(たとえば電子モジュール又は集積回路)で実現される場合があり、かかるシステムは、リードアウトデータ信号zから導出された第一のデータ信号mを、データデシジョン信号DDSから導出された第二のデータ信号wと相互相関をとるための処理手段を有している。かかるリードアウトデータ信号zは、かかるプライマリデータ信号301から導出される。かかる処理手段は、メモリに記憶され、シグナルプロセッサにより実行されるコード命令に応答する場合がある。
【0057】
また、本発明は、本発明に係る方法の技術的な特徴を反映するタンジェンシャルチルト測定値を搬送する信号に関する。かかる信号は、リードアウトデータ信号zから導出される第一のデータ信号mと、データデシジョン信号DDSから導出される第二のデータ信号wとの間の相互相関を導出する。かかるリードアウトデータ信号zは、かかるプライマリデータ信号301から導出される。
単語「有する“comprise”」は、請求項に列挙された構成要素以外の構成要素の存在を排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】光データキャリアにおけるラジアルチルト及びタンジェンシャルチルトを例示する図である。
【図2】光データキャリアの光スポットのコマ収差を例示する図である。
【図3】図3A及び図3Bは、光データキャリアに記憶される主要なデータを読出し及び検索するための主要な処理ステップをモデル化する図である。
【図4】光データキャリアの読出しチャネルの時間領域のチャネル応答の偏導関数を例示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要なデータ信号を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定する方法であって、当該方法は、前記主要なデータ信号から導出される読出しデータ信号から導出された第一のデータ信号とデータデシジョン信号から導出された第二のデータ信号との相関を取るための相互相関ステップを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第一のデータ信号は、前記読出しデータ信号に対応し、
前記第二のデータ信号は、前記データデシジョン信号と係数のセットにより定義されるフィルタのインパルス応答との畳み込みステップから導出される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第一のデータ信号は、前記読出しデータ信号と係数のセットにより定義されるフィルタのインパルス応答との畳み込みステップから導出され、
前記第二のデータ信号は、前記データデシジョン信号に対応する、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタは、有限インパルス応答フィルタ又は無限インパルス応答フィルタ、若しくは前記有限及び無限インパルス応答フィルタの組み合わせからなる、
請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記係数は、2つの非対称なサイドローブを形成する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記係数は、前記読出しデータ信号を生成するチャネル応答の時間の偏微分に直交するフィルタカーネルを定義する、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記係数は、サンプリングレートの関数として調整される、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
主要なデータ信号を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトを推定するシステムであって、当該システムは、前記主要なデータ信号から導出される読出しデータ信号から導出された第一のデータ信号とデータデシジョン信号から導出された第二のデータ信号との相互相関を取るための処理手段を有する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか記載の方法のステップを実現するためのコード命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項10】
主要なデータ信号を記憶することが意図される光データキャリアのタンジェンシャルチルトの測定値を搬送する信号であって、当該信号は、前記主要なデータ信号から導出される読出しデータ信号から導出された第一のデータ信号とデータデシジョン信号から導出された第二のデータ信号との相互相関から導出される、
ことを特徴とする信号。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−502502(P2007−502502A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530659(P2006−530659)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001599
【国際公開番号】WO2004/105027
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】