説明

光ピックアップのベースの製造方法及び光ピックアップのベース

【課題】アルミダイキャストよりも安価に製造することができ、なおかつ光ピックアップ用部品の搭載も精度良く行うことができる光ピックアップのベースの製造方法及び光ピックアップのベースを提供する。
【解決手段】プレス加工により第1の金属板を光ピックアップのベース10の表面に求められる所定形状に形成する第1のプレス工程S1と、プレス加工により第2の金属板を光ピックアップのベース10の裏面に求められる所定形状に形成する第2のプレス工程S2と、第1のプレス工程S1により形成された表面板20と、第2のプレス工程S2により形成された裏面板24とを積層させて一体に固定する積層固定工程S6とを含む光ピックアップのベースの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクドライブに搭載される光ピックアップのベースの製造方法及び光ピックアップのベースに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクドライブとして、ブルーレイ、DVD、CD等の各メディアに対応したドライブが種々販売されている。これら各メディアに対応するドライブには、それぞれ光ピックアップが搭載されている。
光ピックアップは、半導体レーザによってレーザ光を光ディスクに照射し、その反射光を受光して光ディスクに記録されているデータを読み取るための部品である。
【0003】
一般的な光ピックアップの構造について説明する。
光ピックアップは、対物レンズ、半導体レーザ、フォトダイオード、ビームスプリッタ等の光学系部品、及び対物レンズの動作用のアクチュエータなどの光ピックアップ用部品を備えており、光ディスクの半径方向に移動可能に設けられている。これら光ピックアップ用部品は金属製のベースに搭載され、光ピックアップとして構成される。
ベースには、2本のガイドシャフトを摺動可能に保持する軸受部が形成されており、この光ピックアップはガイドシャフトに沿って直線的に移動可能に設けられている。
【0004】
ところで、光ピックアップ用部品が搭載されるベースは、アルミダイキャスト製であることが一般的であるが、ベース自体の単価が高くなってしまうという課題があった。
そこで、特許文献1では、ベース(特許文献1ではキャリッジと称している)をアルミダイキャスト製では無く板金製のものを採用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−143293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているように、板金製のベースを採用するとベースの外周を折り曲げるための機械加工や穴開け加工が必要となる。このような加工だけであれば、アルミダイキャスト製よりも安価に製造できる。
しかし、実際には、単なる折り曲げ加工だけでなく、プレスにより光ピックアップ用部品を収納する凹部を加工することも必要となる。
この場合、凹部を形成するために鍛造等のプレス加工を施すと、余分な肉が生じてしまい、微細な光ピックアップ用部品を搭載するための精度を保つことができないという課題がある。
【0007】
そこで本発明は上記課題を解決すべくなされ、アルミダイキャストよりも安価に製造することができ、なおかつ光ピックアップ用部品の搭載も精度良く行うことができる光ピックアップのベースの製造方法及び光ピックアップのベースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる光ピックアップのベースの製造方法によれば、プレス加工により第1の金属板を光ピックアップのベースの表面に求められる所定形状に形成する第1のプレス工程と、プレス加工により第2の金属板を光ピックアップのベースの裏面に求められる所定形状に形成する第2のプレス工程と、第1のプレス工程により形成された表面板と、第2のプレス工程により形成された裏面板とを積層させて一体に固定する積層固定工程とを含むことを特徴としている。
この方法を採用することによって、アルミダイキャストにより製造するよりも安価に製造できる。また、凹部を形成する場合には複数の板状体を積層させる際に、穴を形成した部位と穴を形成していない部位を重ね合わせることで容易に形成することができる。このため、1枚の金属板を鍛造等で凹部を形成する場合のように、肉が余って加工精度が悪くなることがなく、光ピックアップ用部品の搭載の精度を高くすることができる。
【0009】
また、各前記プレス工程で形成された表面板および裏面板とは別部品として形成されてなり、光ピックアップの移動をガイドするガイドシャフトを摺動可能に保持する軸受部を、積層された表面板と裏面板に組み付けて固定する軸受部組み付け工程を含むことを特徴としてもよい。
【0010】
さらに、前記表面板と前記裏面板との間に積層させる1または複数の中間板を形成すべく、プレス加工により1または複数の中間板用金属板を光ピックアップのベースの中間板に求められる所定形状に形成する中間板用プレス工程を含み、前記積層固定工程においては、表面板と裏面板との間に中間板用プレス工程により形成された1または複数の中間板を積層させて一体に固定することを特徴としてもよい。
この方法によれば、ベースの形状として単に表面と裏面だけ形成しただけでは成形できない形状のベースであっても、製造が可能となる。
【0011】
また、前記積層固定工程における各板の固定は、レーザ溶接によるものであることを特徴としてもよい。
この方法によれば、製造時間が極めて短く且つ確実な固定が行える。
【0012】
また、各前記プレス工程では、各板にかしめ用のダボを形成し、前記積層固定工程における各板の固定は、ダボかしめによるものであることを特徴としてもよい。
この方法によれば、精度良く一体的な固定を行える。
【0013】
さらに、前記軸受部組み付け工程における軸受部の固定は、レーザ溶接によるものであることを特徴としてもよい。
この方法によれば、製造時間が極めて短く且つ確実な固定が行える。
【0014】
本発明にかかる光ピックアップのベースによれば、プレス加工により光ピックアップのベースの表面に求められる所定形状に形成された表面板と、プレス加工により光ピックアップのベースの裏面に求められる所定形状に形成された裏面板とが積層されて一体に固定されてなることを特徴としている。
この構成を採用することによって、安価であって且つ構造的に精度が高い光ピックアップのベースとすることができる。
【0015】
また、前記表面板および前記裏面板とは別部品として形成されてなり、光ピックアップの移動をガイドするガイドシャフトを摺動可能に保持する軸受部が、積層された表面板と裏面板に組み付けられて固定されてなることを特徴としてもよい。
【0016】
さらに、プレス加工により光ピックアップの表面と裏面との中間に位置する中間層に求められる形状に形成された1または複数の中間板が、前記表面板および前記裏面板との間に積層されて一体に固定されてなることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる光ピックアップのベースの製造方法によれば、アルミダイキャストよりも安価に製造することができ、なおかつ光ピックアップ用部品の搭載も精度良く行うことができる光ピックアップのベースを製造できる。
本発明にかかる光ピックアップのベースによれば、安価であって、なおかつ光ピックアップ用部品の搭載も精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るベースの全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1のベースの組み立て分解図である。
【図3】ベースの製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
まず、本発明にかかる光ピックアップのベースについて図面に基づいて説明する。
図1はベースの斜視図を、図2にはベースの組み立て分解図を示している。
本実施形態における光ピックアップのベース10は、複数枚の金属製の板状体が積層されて構成される積層体11と、ベース10の光ディスク半径方向への移動をガイドするガイドシャフト(図示せず)を摺動可能に保持する複数の軸受部12,13とを有している。
積層体11を構成する金属としてはアルミ等が好適である。
【0020】
積層体11には、光ピックアップを構成するための種々の光ピックアップ用部品が搭載される。
光ピックアップ用部品としては、対物レンズ、半導体レーザ、フォトダイオード、ビームスプリッタ等の光学系部品、及び対物レンズの動作用のアクチュエータ等が挙げられる。
これら光ピックアップ用部品は、積層体11に形成されている穴部15、18や、凹部16,17に搭載される。
【0021】
本実施形態における積層体11は、3枚の板状体が積層され、これらが一体に固定されてなる。
図1及び図2に示す上方側を表面、下方側を裏面とすると、本実施形態の積層体11を構成する板状体として表面板20、中間板22、及び裏面板24の3枚の板状体がある。
【0022】
本実施形態における表面板20、中間板22、及び裏面板24は基本的に穴開け加工がなされているだけであり、折り曲げ等の加工はされていない。
これは、穴の位置や大きさが異なる複数枚の板状体を積層させることにより、場所によっては表裏貫通した穴部とすることもできるし、底面が形成された凹部とすることもできるし、段差が形成された段差部を形成することもできるためである。
【0023】
例えば、複数の板状体が積層されたときに表裏貫通した穴部15を形成するためには、表面板20、中間板22、及び裏面板24の全ての同一箇所に穴20a,22a,24aを形成しておけばよい。
また、複数の板状体が積層されたときに、表面からの深さが板状体2枚分の厚さとなる凹部16を形成するためには、表面板20及び中間板22の同一箇所に穴20b,22bを形成し、裏面板24の同一箇所には穴が形成されていなければよい。
【0024】
さらに、複数の板状体が積層されたときに、表面からの深さが板状体1枚分の厚さとなる凹部17を形成するためには、表面板20に穴20cを形成し、中間板22の同一箇所には穴が形成されていなければよい。なお、この凹部17は、裏面側にも裏面からの深さが板状体1枚分の厚さとなる凹部(図示せず)が形成されている。そこで、裏面板24には、表面板20の穴20cと同一箇所に穴24cを形成すればよい。
【0025】
また、穴部の中に段差が形成されたような段差部19を形成する場合には、段差の高さを考慮して該当する板状体の該当箇所には穴を形成しないようにすればよい。例えば積層体11の穴部18内に板状体1枚分の厚さの段差部19を底面側に設ける場合、段差部19の周囲において穴部18が形成されるように、表面板20、中間板22、及び裏面板24の全ての同一箇所に穴20d,22d,24dを形成し、裏面板24における穴部18の一部は段差部19を形成すべく切り欠かないように形成しておけばよい。
このような段差部の厚さ(高さ)としては、板状体1枚分でなくてもよい。
【0026】
次に軸受部12,13について説明する。
本実施形態では、2本のガイドシャフト(図示せず)によって光ピックアップがその移動をガイドされるので、各ガイドシャフトを摺動可能に保持するための軸受部がベース10の両側に設けられている。
ベース10の一方側には、円形に形成されたガイドシャフトを挿入する2つの軸受部12、12が設けられている。軸受部12は、筒状の軸受部品35が取り付け穴14に内蔵された四角柱状の部品である。
積層体11の一方側側面には、これら軸受部12を取り付けるための取り付け用の切り欠き部30が形成されている。積層体11に切り欠き部30を形成するために、表面板20、中間板22、及び裏面板24の同一箇所に穴20e,22e,24eが形成されている。
【0027】
また、ベース10の他方側には、ガイドシャフトが挿入できる一部が切り欠かれたU字またはC字状の挿入部29を有する軸受部13が設けられている。軸受部13は、全体として四角柱状の部品である。
積層体11の他方側側面には、軸受部13を取り付けるための取り付け用の切り欠き部32が形成されている。積層体11に切り欠き部32を形成するために、表面板20、中間板22、及び裏面板24の同一箇所に穴20f,22f,24fが形成されている。
【0028】
なお、各板状体を積層して一体に固定するには、レーザ溶接またはダボかしめによる方法が挙げられる。
レーザ溶接は、COレーザやYAGレーザ等を溶接すべき点に集光し、その熱量により金属を溶融させて固定する方法である。
また、ダボかしめは、予め各板状体の該当箇所に重ね合わせ可能なダボ(凸部)をプレス加工で成形しておき、ダボをかしめることで固定する方法である。
さらに、軸受部12,13を積層体に固定するためには、レーザ溶接を用いるとよい。
【0029】
次に、図3に基づいて上述したような光ピックアップのベースを製造する製造方法について説明する。
なお、以下で説明する方法は、積層枚数が3枚の場合である。
まず、第1の金属板にプレス加工を施し、所定の箇所に穴や切り欠きが形成された表面板20を形成する(ステップS1)。
次に、中間板用金属板にプレス加工を施し、所定の箇所に穴や切り欠きが形成された中間板22を形成する(ステップS2)。
そして、第2の金属板にプレス加工を施し、所定の箇所に穴や切り欠きが形成された裏面板24を形成する(ステップS3)。
【0030】
一方、軸受部12は、所定の大きさの金属製の柱状部材に取り付け穴14をプレス等の工程で穿設し、この取り付け穴14内に軸受部品35が挿入固定されることで形成される(ステップS4)。
なお、挿入部29が形成された軸受部13は、挿入部29をプレス等の工程で形成されて構成される(ステップS5)。
【0031】
次に、ステップS1からS3において形成された表面板20、中間板22、裏面板24を積層させ、レーザ溶接またはダボかしめによって一体的に固定する(ステップS6)。なお、複数の板状体を積層させて一体的に固定する工程時には、レーザ溶接及びダボかしめの双方の固定方法を用いてもよい。
【0032】
そして、ステップS4とステップS5で形成された2種類の軸受部12,13を、積層体11の切り欠き部30,32に挿入して組み付け、レーザ溶接で固定する(ステップS7)。
【0033】
上述してきたような製造方法によって、プレス加工のみで形成された金属板を用いて光ピックアップ用のベース10を積層して製造することができる。
なお、上述の製造方法によれば、表面材20、中間材22、裏面材24の順番で製造するように説明したが、各板状体の製造順はどのようなものであってもよく、積層固定工程S6以前にそれぞれが製造されてさえいればよい。
また、軸受部12,13の製造順も各板状体の製造後である必要性はなく、組み付け固定工程S7以前に製造されてさえいればよい。
【0034】
なお、上述してきた実施形態では、3枚の板状体を用いて3層に積層されたベース10について説明した。
しかし、本発明のベースとしては、3層に限定するものではなく、表面材と裏面材だけの2層であってもよい。さらに、表面材、2枚以上の中間材、及び裏面材から成る4層以上の構成であってもよい。
また、本発明の金属材料としてはアルミに限定することもない。
【符号の説明】
【0035】
10 ベース
11 積層体
12,13 軸受部
14 取り付け穴
15,18 穴部
16,17 凹部
19 段差部
20 表面板
22 中間板
24 裏面板
29 挿入部
30,32 切り欠き部
35 軸受部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス加工により第1の金属板を光ピックアップのベースの表面に求められる所定形状に形成する第1のプレス工程と、
プレス加工により第2の金属板を光ピックアップのベースの裏面に求められる所定形状に形成する第2のプレス工程と、
第1のプレス工程により形成された表面板と、第2のプレス工程により形成された裏面板とを積層させて一体に固定する積層固定工程とを含むことを特徴とする光ピックアップのベースの製造方法。
【請求項2】
各前記プレス工程で形成された表面板および裏面板とは別部品として形成されてなり、光ピックアップの移動をガイドするガイドシャフトを摺動可能に保持する軸受部を、
積層された表面板と裏面板に組み付けて固定する軸受部組み付け工程を含むことを特徴とする請求項1記載の光ピックアップのベースの製造方法。
【請求項3】
前記表面板と前記裏面板との間に積層させる1または複数の中間板を形成すべく、プレス加工により1または複数の中間板用金属板を光ピックアップのベースの中間板に求められる所定形状に形成する中間板用プレス工程を含み、
前記積層固定工程においては、表面板と裏面板との間に中間板用プレス工程により形成された1または複数の中間板を積層させて一体に固定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ピックアップのベースの製造方法。
【請求項4】
前記積層固定工程における各板の固定は、レーザ溶接によるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の光ピックアップのベースの製造方法。
【請求項5】
各前記プレス工程では、各板にかしめ用のダボを形成し、
前記積層固定工程における各板の固定は、ダボかしめによるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項記載の光ピックアップのベースの製造方法。
【請求項6】
前記軸受部組み付け工程における軸受部の固定は、レーザ溶接によるものであることを特徴とする請求項2記載の光ピックアップのベースの製造方法。
【請求項7】
プレス加工により光ピックアップのベースの表面に求められる所定形状に形成された表面板と、プレス加工により光ピックアップのベースの裏面に求められる所定形状に形成された裏面板とが積層されて一体に固定されてなることを特徴とする光ピックアップのベース。
【請求項8】
前記表面板および前記裏面板とは別部品として形成されてなり、光ピックアップの移動をガイドするガイドシャフトを摺動可能に保持する軸受部が、積層された表面板と裏面板に組み付けられて固定されてなることを特徴とする請求項7記載の光ピックアップのベース。
【請求項9】
プレス加工により光ピックアップの表面と裏面との中間に位置する中間層に求められる形状に形成された1または複数の中間板が、前記表面板および前記裏面板との間に積層されて一体に固定されてなることを特徴とする請求項7または請求項8記載の光ピックアップのベース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−238325(P2011−238325A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111176(P2010−111176)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(592143057)株式会社 サンコー (30)
【Fターム(参考)】