説明

光ピックアップの防塵構造及び光ディスクドライブ装置

【課題】光ピックアップを停止位置に停止させるときに、簡単な構造で光ピックアップの対物レンズに蓋をすることにより、塵埃等が対物レンズへ侵入しないようにする。
【解決手段】光ディスクドライブ装置10は、光ディスク12にレーザ光線を集光して照射する対物レンズ13eを設けた光ピックアップ13と、光ピックアップ13の停止時に光ピックアップ13を光ディスク12の外側の所定位置まで移動させて固定する手段と、該所定位置に移動した光ピックアップ13の対物レンズ13eに蓋をして防塵する防塵手段14とを有する。防塵手段14は、光ピックアップ13が当接する当接板14bと、当接板14bと回動軸14cの周りに一体的に回動する蓋板14aと、当接板14bを付勢して蓋板14aを上方に向けさせる弾性部材14dとからなり、光ピックアップ13が当接板14bを押したときに、蓋板14aが下方に押し下げられて対物レンズ13eに蓋をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップの防塵構造及び光ディスクドライブ装置、特に、記録型光ディスクドライブ装置の塵埃によるピックアップ部の出射パワー劣化改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクドライブ装置では、レーザは光ピックアップ内に、また、光センサは出射されたレーザの反射光の一部を測定し、センサ出力が所望の値になるように制御している。レーザから出射された光はコリメートレンズを通過して平行光になる。その光をビームスプリッタで、光ピックアップが備える対物レンズ側にいく光と光センサに入る光とに分けている。光センサでモニタした光が基準値あるいは所望値となるようにレーザ駆動回路を制御し、自動的にパワーコントロールを行っている。ここで注意することは、あくまで、レーザの出射パワーが基準値になっていると言う点である。大切なことは、対物レンズで集光され、光ディスクの記録再生層に届くレーザパワーを基準値や所望値にすることである。
【0003】
従来の光ピックアップは、光パワーを一定に制御するために、光センサをビームスプリッタの横に設けて、レーザ出射光を基準値となるよう制御していた。光ディスクドライブを使用する場合、当然、空中を浮遊している塵埃などにより、対物レンズに汚れやゴミ、チリなどがたまり、光ディスク上の光パワー、すなわち光ディスクの記録再生層に届く光パワーを基準値に保つことが困難となる。
【0004】
長期塵埃試験を行うと、ゴミやチリの溜まる場所は、ドライブ内の段差のあるところや、対物レンズ部の隙間から光ピックアップの光学系にまで達するところである。塵埃試験の結果によると、静止放置時、空中を浮遊しているチリやゴミが、対物レンズ部を入り口として、対物レンズや光学系内部にはいることがわかった。対物レンズへの塵埃等の影響で、光センサの光パワーが基準値であるにもかかわらず、対物レンズ通過後の光量は、かなり低下し、いちじるしい再生機能の劣化や、記録パワー不足による記録不十分、あるいは記録マージン不足をまねくことがある。
【0005】
これに対して、例えば、特許文献1には、対物レンズへの塵埃の付着を確実に防止し、光学ブロック内への塵埃の侵入を防止するようにしたものが開示されている。これは、光ピックアップ部が光ディスクの外方位置まで移動したときに、光ピックアップ部の対物レンズを覆う蓋体の透孔を覆うための覆板を設け、蓋体及び覆板のいずれか一方に覆板を対物レンズから離間させる方向に移動させる操作部を設ける。光ピックアップ部が上記外方位置まで移動したとき、覆板が操作部によって対物レンズから離間させる方向に移動することにより、覆板は対物レンズとの当接を回避して対物レンズを覆うようにしたものである。
【特許文献1】特開2000−298863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明は、光ピックアップの蓋体に突条部を設け、その突条部に係合するための係合孔を覆板に設けて対物レンズに蓋をする構造としているため、光ピックアップが覆板に当接/離脱するときに覆板から光ピックアップに力が加わり、これが抵抗となって当該光ピックアップのスムーズな移動を妨げる可能性がある。また、覆板が蓋体に当接、係合するため、蓋体を傷つけてしまう恐れがある。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、光ピックアップを停止位置に停止させるときに、簡単な構造で光ピックアップの対物レンズに蓋をすることにより、空中を浮遊して落下してくる塵埃などが対物レンズへ侵入しないようにした光ピックアップの防塵構造及び該防塵構造を備えた光ディスクドライブ装置を提供すること、を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、スピンドルモータに回転可能に保持された光ディスクにレーザ光線を集光して照射する対物レンズを設けた光ピックアップと、使用時に前記光ピックアップを前記光ディスクの径方向に移動させ、非使用時に前記光ピックアップを前記光ディスクの外側の所定位置まで移動させて固定する手段と、該所定位置に移動した前記光ピックアップの対物レンズに蓋をして防塵する防塵手段とを有する光ピックアップの防塵構造において、前記防塵手段は、前記光ピックアップが当接する当接板と、該当接板と回動軸の周りに一体的に回動する蓋板と、前記当接板を付勢して前記蓋板を上方に向けさせる弾性部材とからなり、前記光ピックアップが前記所定位置まで移動して前記当接板を押したときに、前記蓋板が下方に押し下げられて前記対物レンズに蓋をして防塵することを特徴としたものである。
【0009】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、少なくとも前記蓋板は、前記対物レンズの周囲をカバーするための対物レンズカバーと同じ材質で構成されていることを特徴としたものである。
【0010】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記蓋板の先端にブラシを設け、該ブラシは、前記対物レンズに蓋をしたときに前記対物レンズに接触するように取り付けられていることを特徴としたものである。
【0011】
第4の技術手段は、第1乃至第3のいずれか1の技術手段において、前記弾性部材は、前記当接板の前記光ピックアップが当接する面の反対側の面に設けられ、前記当接板を前記光ピックアップ側に付勢して前記蓋板を上方に向けさせることを特徴としたものである。
【0012】
第5の技術手段は、第1乃至第4のいずれか1の技術手段の防塵構造を備えた光ディスクドライブ装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ピックアップを停止位置に停止させるときに、簡単な構造で光ピックアップの対物レンズに蓋をすることにより、空中を浮遊して落下してくる塵埃などが対物レンズへ侵入しないようにした光ピックアップの防塵構造及び該防塵構造を備えた光ディスクドライブ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の一実施形態である光ピックアップの防塵構造を備えた光ディスクドライブ装置の側面からみた概略図で、図中、10は光ディスクドライブ装置で、該光ディスクドライブ装置10は、光ディスク12を回転可能に保持するスピンドルモータ11と、スピンドルモータ11に保持された光ディスク12にレーザ光線を集光して照射する光ピックアップ13と、使用時に光ピックアップ13を光ディスク12の径方向に移動させ、非使用時に光ピックアップ13を光ディスク12の外側の所定位置まで移動させて固定する手段(図示せず)と、その所定位置に移動した光ピックアップ13に蓋をして防塵する防塵手段14と、筐体15とを備えている。尚、上記光ピックアップ13を移動させる手段は、駆動モータと、該駆動モータの駆動力を光ピックアップ13に伝達するための複数のギヤとからなる駆動機構によって構成されている。
【0015】
本発明の光ディスクドライブ装置10は、例えば、DVDドライブやBDドライブなどの各種光ディスクのドライブに適用可能である。BDドライブの場合、例えば、BD−ROM,BD−R,BD−REなどのBD系記録メディアが利用可能で、また、DVDドライブの場合、例えば、DVD−ビデオ,DVD−オーディオ,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RW、DVD+ROM,DVD+R,DVD+RWなどのDVD系記録メディアや、CD−MA,CD−ビデオ,CD−R,CD−RWなどのCD系記録メディアが利用可能である。
【0016】
図1において、光ピックアップ13は、レーザ駆動回路13a、レーザ光源13b、及び光学系を有する。この光学系は、光ディスク12に光ビームスポット13gを照射しフォーカシングや、トラッキング、更にはデータの記録や再生を行う対物レンズ13e、反射ミラー13dなどを含むものとする。光ピックアップ13において、レーザ駆動回路13aで駆動されてレーザ光源13bから出射されたレーザ光13cは反射ミラー13dを通過し、対物レンズ13eで集光され、その光ビームスポット13gは光ディスク12の再生あるいは記録層に合焦される。さらに、そこからの反射光は、対物レンズ13eや反射ミラー13dを通り、何分割かされた受光素子(図示せず)にかえり、その受光素子間の光量差や位相差などにより、光ビームスポット13gのフォーカシングや、トラッキング、更にはデータの記録や再生を行う。尚、対物レンズ13eの周囲は対物レンズカバー13fでカバーされ、対物レンズ13eの上面は開いた状態とする。
【0017】
図2は、図1に示した光ピックアップ13が停止したときに防塵手段14により対物レンズ13eに蓋がされる状態の一例を示す要部詳細図である。
防塵手段14は、光ピックアップ13が当接する当接板14b、当接板14bと回動軸14cの周りに一体的に回動する蓋板14a、当接板14bを付勢して蓋板14aを上方に向けさせる弾性部材14dから構成されている。この防塵手段14は、筐体15の一方の側面あるいは両方の側面に回動軸14cが支持される構造となっており、光ピックアップ13の一端が当接板14bを押したときに、回動軸14cを中心に回動して対物レンズ13eの上面に蓋板14aが押下げられ、対物レンズカバー13f(対物レンズ13e)に蓋がされる。
【0018】
弾性部材14dは、一端が筐体15の底面に固定され、当接板14bの光ピックアップ13が当接する面の反対側の面に、光ピックアップ13の方向に当接板14bを付勢して蓋板14aを上方に向けさせる。光ピックアップ13が固定位置にない時、すなわち光ピックアップ13が使用状態にある時には、この弾性部材14dにより当接板14bが光ピックアップ13の方向に押され、蓋板14aを斜め上方に保持できるようにしている。この弾性部材14dとしては、例えば、弾性の低い(すなわち付勢力の弱い)板バネなどが好ましく、光ピックアップ13の移動方向(図中右方向)に対して強い抵抗にならないようにする。
【0019】
本実施形態によれば、光ピックアップを停止位置に停止させるときに、簡単な構造で光ピックアップの対物レンズに蓋をすることにより、空中を浮遊して落下してくる塵埃などが対物レンズへ侵入することを防止できる。また、光ピックアップが防塵手段に当接/離脱するときに防塵手段から力を受けることがないため、光ピックアップはスムーズに移動することができる。
【0020】
さらに、光ディスクドライブ装置において、光ディスク上の光パワーを一定にするために、非使用時に、対物レンズカバーに蓋をすることで、ドライブ使用中の塵埃によるパワー劣化や低下をうけなくなり、また、長期間に渡って信頼性の高い状態で使用でき、また、塵埃の多い環境下でも使用が可能となる。
【0021】
図3は、図1に示した光ピックアップ13が停止したときに防塵手段14により対物レンズ13eに蓋がされた状態の他の例を示す要部詳細図である。ここで、図2に示した蓋板14aと対物レンズカバー13fを異なる材質(例えば、金属と樹脂など)で構成すると、これらの部材間で接触やこすれなどが起きて帯電を起こすことがある。本実施形態では、図2に示した蓋板14aを対物レンズカバー13fと同一の材質(例えば樹脂材料)で構成し、異なる材質の部材を用いることによる接触やこすれなどによる帯電を防止できるようにしている。また、対物レンズカバー13f及び蓋板14aが同じ樹脂材料で成形されている場合、対物レンズカバー13f及び蓋板14aの少なくとも一方の表面にシリコーン等の絶縁材料をコーティングして電気絶縁性を付与してもよい。尚、蓋板14aだけでなく当接板14bも対物レンズカバー13fと同じ材質で構成するようにしてもよい。
【0022】
図4は、図1に示した光ピックアップ13が停止したときに防塵手段14により対物レンズ13eに蓋がされた状態の他の例を示す要部詳細図である。本実施形態では、図2に示した蓋板14aの先端にブラシ14eを設け、蓋板14aで蓋をして防塵すると共に、ブラシ14eを対物レンズ13fの表面に接触させ、光ピックアップ13が停止する直前や動作再開する直前に対物レンズ13fの表面を掃くことにより、帯電等による塵埃を除去するようにしている。このブラシ14eとしては、例えば、市販されているレンズ用のクリーニングブラシや、除電ブラシなどを適用することができる。
【0023】
このように、光ディスクドライブ装置において、光ディスク上の光パワーを一定にするために、非使用時に、対物レンズカバーに蓋をすることに加えて、ブラシで対物レンズ上面を掃くことにより、より効果的な防塵を行うことができ、ドライブ使用中の塵埃によるパワー劣化や低下をうけなくなり、また、長期間に渡って信頼性の高い状態で使用でき、また、塵埃の多い環境下でも使用が可能となる。
【0024】
尚、本発明の光ピックアップの防塵構造及び光ディスクドライブ装置は、上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態である光ピックアップの防塵構造を備えた光ディスクドライブ装置の側面からみた概略図である。
【図2】図1に示した光ピックアップが停止したときに防塵手段により対物レンズに蓋がされる状態の一例を示す要部詳細図である。
【図3】図1に示した光ピックアップが停止したときに防塵手段により対物レンズに蓋がされた状態の他の例を示す要部詳細図である。
【図4】図1に示した光ピックアップが停止したときに防塵手段により対物レンズに蓋がされた状態の他の例を示す要部詳細図である。
【符号の説明】
【0026】
10…光ディスクドライブ装置、11…スピンドルモータ、12…光ディスク、13…光ピックアップ、13a…レーザ駆動回路、13b…レーザ光源、13c…レーザ光、13d…反射ミラー、13e…対物レンズ、13f…対物レンズカバー、13g…光ビームスポット、14…防塵手段、14a…蓋板、14b…当接板、14c…回動軸、14d…弾性部材、14e…ブラシ、15…筐体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルモータに回転可能に保持された光ディスクにレーザ光線を集光して照射する対物レンズを設けた光ピックアップと、使用時に前記光ピックアップを前記光ディスクの径方向に移動させ、非使用時に前記光ピックアップを前記光ディスクの外側の所定位置まで移動させて固定する手段と、該所定位置に移動した前記光ピックアップの対物レンズに蓋をして防塵する防塵手段とを有する光ピックアップの防塵構造において、前記防塵手段は、前記光ピックアップが当接する当接板と、該当接板と回動軸の周りに一体的に回動する蓋板と、前記当接板を付勢して前記蓋板を上方に向けさせる弾性部材とからなり、前記光ピックアップが前記所定位置まで移動して前記当接板を押したときに、前記蓋板が下方に押し下げられて前記対物レンズに蓋をして防塵することを特徴とする光ピックアップの防塵構造。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップの防塵構造において、少なくとも前記蓋板は、前記対物レンズの周囲をカバーするための対物レンズカバーと同じ材質で構成されていることを特徴とする光ピックアップの防塵構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ピックアップの防塵構造において、前記蓋板の先端にブラシを設け、該ブラシは、前記対物レンズに蓋をしたときに前記対物レンズに接触するように取り付けられていることを特徴とする光ピックアップの防塵構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の光ピックアップの防塵構造において、前記弾性部材は、前記当接板の前記光ピックアップが当接する面の反対側の面に設けられ、前記当接板を前記光ピックアップ側に付勢して前記蓋板を上方に向けさせることを特徴とする光ピックアップの防塵構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の光ピックアップの防塵構造を備えた光ディスクドライブ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−79719(P2006−79719A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262255(P2004−262255)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】