説明

光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物および光ピックアップレンズホルダー

【課題】 剛性に優れ、寸法精度の経時変化が極めて少なく、さらに軽量である光ピックアップレンズホルダーを提供すること。
【解決手段】 t−ブチルヒドロキノンに基づく光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルとシクロオレフィンポリマーとを含有し、光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、CD−ROM、音楽用コンパクトディスク、レーザーディスクのデータの読み出しに用いられる光ピックアップのレンズホルダーに適した樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、軽量で剛性に優れ、光ピックアップを素早く送ることができる光ピックアップレンズホルダーを提供することができる芳香族ポリエステル組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】CD−ROM、音楽用コンパクトディスク、レーザーディスクのデータの読み出しに用いられる光ピックアップのレンズホルダーには、ヒンジ型、軸摺動型、4本ワイヤ型などのタイプがあり、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、シンジオタクチックポリスチレンを用いて成形されている。ポリカーボネートからなる光ピックアップレンズホルダーは、剛性が不十分であり、また、ポリフェニレンサルファイドやシンジオタクチックポリスチレンであっても、寸法精度の経時変化に対する信頼性が不十分である。そこで、剛性に優れ、寸法精度の経時変化の極めて少ない光ピックアップレンズホルダーとして、異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルよりなる光ピックアップレンズホルダーが開発された(特開昭62−236143号公報)。
【0003】近年、マルチメディア・ソフトの動画や音楽などは、データの読み出しが遅いと滑らかに再生できないことがあるため、データの読み出しは高速化する傾向にある。また、大量のデータを高速に読み出すことができるCD−ROM装置も要望されている。データを高速に読み出すためには、光ピックアップをディスク上の目的の場所へ素早く移動することが必要である。このため、光ピックアップは軽量であることが望ましい。したがって、従来の異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルからなる光ピックアップレンズホルダーにおいてもさらなる改良が望まれている。特に、軸摺動型の光ピックアップレンズホルダーは、磁気浮上方式で対物レンズを保持しているため、バランスをとる必要があり、全体が重くなりがちである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、光ピックアップをより素早く移動することによって高速化に対応するために、剛性に優れ、寸法精度の経時変化が極めて少なく、さらに軽量である光ピックアップレンズホルダーの開発が望まれている。本発明の課題は、剛性に優れ、寸法精度の経時変化が極めて少なく、さらに軽量である光ピックアップレンズホルダーを実現することができる光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、 液晶性ポリマーに特定割合でシクロオレフィンポリマーを添加してなる組成物を用いることにより、剛性に優れ、寸法精度の経時変化が極めて少なく、さらに軽量である光ピックアップレンズホルダーを実現することができる光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物を見出した。すなわち、本願の第1の発明に従う光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物は、液晶性ポリマーおよびシクロオレフィンポリマーを含有し、前記液晶性ポリマーと前記シクロオレフィンポリマーの重量比が60〜95:40〜5であることを特徴とする。
【0006】本願の第2の発明に従う光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物は、液晶性ポリマーおよびシクロオレフィンポリマーを含有し、さらに液晶性ポリマーが、A.95〜55モル%のt―ブチルヒドロキノンおよび5〜45モル%の1種以上の多環芳香族ジオールからなる芳香族ジオール成分;
B.パラまたはメタ配置の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、およびそれらの混合物から選択したジカルボン酸成分であり、ナフタレンジカルボン酸の含有量が0〜80モル%であるジカルボン酸成分;およびC.4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−(4′−ヒドロキシフェニル)安息香酸、およびそれらの混合物から選択した芳香族ヒドロキシカルボン酸成分、から本質的に成り、成分Aおよび成分Bの化学的当量が等しく、且つ成分Cは、A+B+Cの全モル量に基づいて、20〜60モル%である光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルであることを特徴とする。
【0007】本願の第3の発明に従う光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物は、前記第2の発明に従う樹脂組成物において、液晶性ポリマーとシクロオレフィンポリマーの重量比が60〜95:40〜5であることを特徴とする。本願の第4の発明に従う光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物は、第1または第3に記載の光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物において、さらにガラス繊維を50重量%まで含有することを特徴とする。本願の第5の発明に従う光ピックアップレンズホルダーは、第1〜第4の発明のいずれかに従う樹脂組成物により成形されたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明における液晶性ポリマーは、異方性溶融相を形成しうる溶融加工性ポリエステルまたはポリエステルアミドであり、一般にサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるものである。このようなポリマーの構成成分は、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジオール、脂肪族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン、および芳香族ジアミンであり、異方性溶融相を形成しうる溶融加工性ポリエステルまたはポリエステルアミドは、これらの構成成分の1種を重合するか、2種以上の成分を共重合して得られる。
【0009】具体的には、1種または2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させて得られる芳香族ポリエステル、芳香族ジカルボン酸と、1種または2種以上の脂肪族ジカルボン酸と、芳香族ジオールと、1種または2種以上の脂肪族ジオールとを重合させて得られる芳香族ポリエステル、芳香族ヒドロキシカルボン酸を主成分とし、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび脂肪族ジオールから成る群から選ばれる1種または2種以上の成分を重合させて得られる芳香族ポリエステル、芳香族ヒドロキシアミンと、1種または2種以上の芳香族ジアミンと、1種または2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる芳香族ポリエステルアミド、芳香族ヒドロキシアミンと、1種または2種以上の芳香族ジアミンと、1種または2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、1種または2種以上の脂肪族カルボン酸とを重合して得られる芳香族ポリエステルアミド、芳香族ヒドロキシアミンと、1種または2種以上の芳香族ジアミンと、1種または2種以上の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、1種または2種以上の脂肪族カルボン酸と、芳香族ジオールと、1種または2種以上の脂肪族ジオールとを重合して得られる芳香族ポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0010】芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、並びにヒドロキシ安息香酸のハロゲン、アルキル、およびアリル置換体などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3′−ジフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、並びにt−ブチルテレフタル酸やクロロテレフタル酸などのアルキルおよびハロゲン置換芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの環状脂肪族ジカルボン酸およびそれらの置換誘導体などが挙げられる。
【0011】芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、ビフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノール−A、3,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3′−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,6′−ナフタレンジオール、1,6′−ナフタレンジオール、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3′−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルシラン、並びにそれらのアルキルおよびハロゲン置換誘導体などが挙げられる。
【0012】脂肪族ジオールとしては、トランス−1,4−ヘキサンジオール、シス−1,4−ヘキサンジオール、トランス−1,3−シクロヘキサンジオール、シス−1,2−シクロヘキサンジオール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、トランス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノール、シス−1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの環状、直鎖状、および分岐状の脂肪族ジオール並びにそれらの置換誘導体などが挙げられる。芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンとしては、例えば4−アミノフェノール、3−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンおよびそれらの置換誘導体などが挙げられる。
【0013】ポリマーの製造方法については特に限定はなく、標準的な重縮合技術(溶融重合、溶液重合、および固相重合)により製造することができる。好ましくは無水条件下不活性雰囲気中で製造する。例えば、溶融アシドリシス法において、必要量の無水酢酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ジオールおよびテレフタル酸を攪拌後、窒素導入管、および蒸留ヘッドまたは冷却器の組み合わせを備えた反応容器中で加熱し、反応中に生じる酢酸などの副生成物を蒸留ヘッドまたは冷却器を介して除去した後に捕集する。捕集された副生成物が一定になり、重合がほぼ完了した後、溶融した塊を減圧下(通常、10mHgまたはそれ以下)で加熱し、残留した副生成物を除去し、重合を完了させる。
【0014】本発明で用いる液晶ポリマーは、一般に数平均分子量が約2,000〜200,000であり、好ましくは5,000〜50,000であり、さらに好ましくは10,000〜20,000である。上記の液晶性ポリマーの中、t−ブチルヒドロキノンに基づく光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルは、他の液晶性ポリマーに比べて比重が小さく、且つ弾性率が高いため、本発明において好適に用いられる。具体的には、A.95〜55モル%のt―ブチルヒドロキノンおよび5〜45モル%の1種以上の多環芳香族ジオールからなる芳香族ジオール成分;
B.パラまたはメタ配置の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、および、それらの混合物から選択したジカルボン酸成分であり、ナフタレンジカルボン酸の含有量が、0〜80モル%であるジカルボン酸成分;およびC.4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−(4′−ヒドロキシフェニル)安息香酸、およびそれらの混合物から選択した芳香族ヒドロキシカルボン酸成分、から本質的に成る光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルである。
【0015】A成分中の多環芳香族ジオールは、ジオールが2つ以上の芳香環構造を有し、その中の少なくとも2つがコポリエステルの骨格の部分を形成していることを意味する。芳香環は、ナフタレン中のように縮合していてもよいし、ジフェニルにおけるように直接に結合していてもよく、またビスフェノール−A、ビスフェノール−Fあるいはジフェニルスルホンにおけるように他の部分を通じて縮合していてもよい。好適なジオールは、写実的な平面表示において、ジオール酸素を分子の他の部分に結合している結合が、相互に同軸的または平行的のいずれかであって、オルト又はペリの関係にはない化合物である。このようなジオール部分の例は、以下のようなものである:
【0016】
【化1】


【0017】これらのジオールの3,4′−誘導体を用いることもできる。ジオール中の芳香環は、場合によっては、1つ以上の置換基、たとえば、アルキル、ハロゲン又はアルコキシあるいはその他によって置換されていてもよい。好適な多環芳香族ジオールは、ビスフェノール−A、4,4′−ビフェノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニル(4,4′−ビフェノール)、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、3−ヒドロキシ−4′−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノン、3,4′−または4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−または2,7−ジヒドロキシ−ナフタレン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、および4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドである。もっとも好適な多環芳香族ジオールは、ビスフェノール−Aおよび4,4′−ビフェノールである。
【0018】その含有量は、芳香族ジオール成分の全モル数に基づいて、5〜45モル%、好ましくは5〜25モル%、さらに好ましくは10〜20モル%である。B成分のジカルボン酸成分は、ナフタレンジカルボン酸がジカルボン酸成分の80モル%よりも多くを占めないことを条件として、パラまたはメタ配置芳香族ジカルボン酸である。パラ配置の芳香族カルボン酸はテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、および3,3′−ジフェニルジカルボン酸である。
【0019】パラ配置のジカルボン酸は、芳香環に対して結合した2つのカルボキシル基が相互に隣接またはペリの関係になく、分子の写実的な平面的表示において、同軸的または平行的に配置しているものである。メタ配置のジカルボン酸の例は、イソフタル酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレンジカルボン酸、1,7−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸および3,4′−ジフェニルジカルボン酸である。メタ配置のジカルボン酸は、その中で芳香環に結合した2つのカルボキシル基が相互に隣接またはぺリの関係になく、分子の写実的な平面的表示において、同軸的または平行的に配置していないものである。
【0020】これらの芳香族ジカルボン酸のいずれも、場合によっては1つ以上のアルキル、アルコキシあるいはハロゲンのような置換基によって置換されていてもよいジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である場合には、少なくとも80%がトランス異性体であることが好ましい。好適なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの混合物であるが、ここでイソフタル酸がジカルボン酸成分の50モル%よりも多くを占めることがなく、且つ2,6−ナフタレンジカルボン酸がジカルボン酸成分の60モル%よりも多くを占めることがないことが条件である。もっとも好適なジカルボン酸はテレフタル酸である。
【0021】芳香族ポリエステルにおいて、成分Aおよび成分Bは化学的当量は等しい。C成分として、コポリエステルの全モル量に基づいて、20〜60モル%の、4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−(4′−ヒドロキシフェニル)安息香酸、およびそれらの混合物から選択した芳香族ヒドロキシカルボン酸をさらに含有している。これらのヒドロキシカルボン酸は、場合によっては、アルキル、ハロゲンまたはアルキルオキシ置換基などの置換基によって置換されていてもよい。4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸またはこれらの混合物が特に好ましく、コポリエステルの全モル量に基づいて、25〜50モル%を占めることが好ましく、25〜35モル%を占めることがさらに好ましい。混合物である場合には、4−ヒドロキシ安息香酸が75モル%以上であることが好ましい。
【0022】本発明において用いられる好適な芳香族ポリエステルは、A.芳香族ジオール成分:95〜75モル%のt―ブチルヒドロキノンおよび5〜25モル%の4,4′−ビフェノール、ビスフェノール−A、3−ヒドロキシ−4′−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノン、3,4′−または4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−または2,7−ジヒドロキシ−ナフタレン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドまたはそれらの混合物;
B.ジカルボン酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの混合物、但し、イソフタル酸がジカルボン酸成分の50モル%よりも多くを占めることがなく、且つ2,6−ナフタレンジカルボン酸がジカルボン酸成分の60モル%よりも多くを占めることがないことを条件とする;
C.芳香族ヒドロキシカルボン酸成分:A+B+Cの全モル量に基づいて、25〜50モル%4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、またはそれらの混合物、から本質的に成る。
【0023】製造と加工が容易であり、且つきわめて優れた剛性などの機械的特性を有するもっとも好適は芳香族ポリエステルは、A.芳香族ジオール成分:90〜80モル%のt―ブチルヒドロキノンおよび10〜20モル%の4,4′−ビフェノールまたはビスフェノール−A;
B.ジカルボン酸成分:テレフタル酸;
C.芳香族ヒドロキシカルボン酸成分:A+B+Cの全モル量に基づいて、25〜35モル%4−ヒドロキシ安息香酸、から本質的に成る。芳香族ポリエステルは、特開昭62−252420号公報に記載の方法により製造することができる。
【0024】本発明において用いられるシクロオレフィンポリマーは、エチレン成分と、下記一般式(1)または(2)で表される環状オレフィン成分とからなる80〜200℃のガラス転移温度を有する環状オレフィン系ランダム共重合体であり、これらを部分的に改質したものでもよい。好ましくはエチレン・テトラシクロドデセンコポリマーである。
【0025】
【化2】


(式中、nおよびmはいずれも0もしくは正の整数であり、lは3以上の整数であり、R1ないしR10はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を示す)。
【0026】本発明の組成物において、液晶性ポリマーとシクロオレフィンポリマーの重量比は、60〜95:40〜5であることが好ましく、70〜85:30〜15がより好ましい。芳香族ポリエステルの量が60重量%より少ないと、機械的特性、特に光ピックアップレンズホルダーとしての剛性が不十分となり、一方、シクロオレフィンポリマーの量が5重量%より少ないと、比重が大きく、超高速条件下で使用されるピックアップレンズホルダーには適さない。本発明の組成物は、組成物の重量に対して、50重量%までのガラス繊維をさらに含有することができる。好ましい含有量は5〜30重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。50重量%より多いと、剛性は高くなるものの重くなるため、軽量の光ピックアップレンズホルダーを提供できなくなってしまう
【0027】その他本発明の樹脂組成物には、熱安定剤、着色剤、離型剤、核剤、難燃剤、酸化防止剤、ガラス繊維以外の無機充填材、その他種々の添加剤を、光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステルの特性を害さず、光ピックアップレンズホルダーの重量を増さない範囲で添加することができる。本発明の樹脂組成物は、公知の方法にって容易に調製できる。例えば、各成分を充分均一に混合した後、一軸または二軸の押出し機により混練押出ししてペレットを作成する方法などである。本発明の光ピックアップレンズホルダーは、上記の樹脂組成物を射出成形などの公知の方法により成形することができる。
【0028】
【実施例】本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は本実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1〜12、比較例1〜3)表1または表2(含有量はすべて重量%で示し、括弧書きは、芳香族ポリエステルとシクロオレフィンポリマーの重量比を示した。)に示す各成分をドライブレンドし、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM35)により340℃で溶融混練し、水冷後、ペレットを製造した。得られたペレットを射出成形機(東芝機械株式会社製IS220EN)を用いて、シリンダー温度345℃、金型温度80℃にて試験片を成形した。実施例および比較例にて使用された成分は次の通りである。
【0029】POL−A:t−ブチルヒドロキノン、ビフェノール、テレフタル酸、ナルガレンジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸よりなる数平均分子量約10,000〜20,000の光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステル(デュポン社製ゼナイト1000(商品名))
POL−B:4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸よりなる数平均分子量約10,000〜20,000の光学的に異方性溶融相を形成しうる芳香族ポリエステル(ポリプラスチックス株式会社製ベクトラA950(商品名))
POL−C:シンジオタクチックポリスチレン(出光石油化学工業株式会社製ザレック(商品名))
COC:ガラス転移温度145℃のエチレン・テトラシクロドデセンコポリマー(三井石油化学工業株式会社製アペル APL6015(商品名))
ガラス繊維:重量平均径13μm、重量平均長3mmのチョップドストランド(日本板硝子株式会社製TP−64(商品名))
【0030】比重、物性、および熱変形温度の測定方法は次の通りであった。測定結果は表1および表2に示す。
比重:ASTM D792/電子比重計(ミラージュ貿易株式会社製ED−120T)
引張強度:ASTM D638/ASTM(タイプI)ダンベル試験片破断伸び率:ASTM D638/ASTM(タイプI)ダンベル試験片曲げ強さ:ASTM D790/12.7mm×130mm×3.2mm試験片曲げ弾性率:ASTM D790/12.7mm×130mm×3.2mm試験片アイゾット衝撃強さ:ASTM D256(ノッチ付き)
熱変形温度:ASTM D648/12.7mm×130mm×3.2mm試験片
【0031】
【表1】


【0032】実施例1〜4は、シクロオレフィンポリマーの含有量が高いと、組成物の比重は小さくなるが、物性を維持することができることを示している。比較例1と比較例2とを比較すると、比較例1で用いた液晶性ポリマーの方が比重が小さく、曲げ弾性率が高いことがわかる。
【0033】
【表2】


【0034】実施例2と実施例5〜8、実施例3と実施例9〜10、実施例4と実施例11〜12とをそれぞれ比較すると、ガラス繊維を添加すると、比重が大きくなり、破断伸び率が低下するが、一方、引張強度、曲げ弾性強さおよび熱変形温度は向上することがわかる。実施例8と比較例1とを比較すると、シクロオレフィンポリマーを含有することにより、比重が小さくなり、機械的特性も損なわれにくいことがわかる。実施例8と比較例3とを比較すると、従来の光ピックアップレンズホルダーに使用されていたシンジオタクチックポリスチレンは、比重は小さいが、剛性が不十分であることがわかる。
【0035】
【発明の効果】本発明の光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物により、剛性に優れ、寸法精度の経時変化が極めて少なく、さらに軽量である光ピックアップレンズホルダーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物において、前記樹脂組成物は、 液晶性ポリマーおよびシクロオレフィンポリマーを含有し、前記液晶性ポリマーと前記シクロオレフィンポリマーの重量比が60〜95:40〜5であることを特徴とする光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物。
【請求項2】 光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物において、前記樹脂組成物は、液晶性ポリマーおよびシクロオレフィンポリマーを含有し、さらに前記液晶性ポリマーが、A.95〜55モル%のt―ブチルヒドロキノンおよび5〜45モル%の1種以上の多環芳香族ジオールからなる芳香族ジオール成分;
B.パラまたはメタ配置の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、およびそれらの混合物から選択したジカルボン酸成分であり、ナフタレンジカルボン酸の含有量が0〜80モル%であるジカルボン酸成分;およびC.4−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−(4′−ヒドロキシフェニル)安息香酸、およびそれらの混合物から選択した芳香族ヒドロキシカルボン酸成分、から本質的に成り、成分Aおよび成分Bの化学的当量が等しく、且つ成分Cは、A+B+Cの全モル量に基づいて、20〜60モル%である光学的に異方性溶融相を形成しうる溶融加工性ポリエステルであることを特徴とする光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物。
【請求項3】 前記液晶性ポリマーと前記シクロオレフィンポリマーの重量比が60〜95:40〜5であることを特徴とする請求項2に記載の光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物。
【請求項4】 請求項1または3に記載の光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物において、さらにガラス繊維を50重量%まで含有することを特徴とする光ピックアップレンズホルダー用樹脂組成物。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の組成物により成形されたことを特徴とする光ピックアップレンズホルダー。

【公開番号】特開平11−185272
【公開日】平成11年(1999)7月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−356342
【出願日】平成9年(1997)12月10日
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY