説明

光ピックアップ及び光ディスク装置

【課題】サーボ制御の精度を向上する。
【解決手段】対物レンズ駆動部28は、支持基板固定部51から支持基板52A〜52Cを共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔し並ぶようY1方向へ延設する。また対物レンズ駆動部28は、支持基板固定部51から支持基板52D〜52Fを共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔し並ぶよう、Y2方向へ延設する。さらに対物レンズ駆動部28は、支持基板52A〜52Fの先端部56の近傍に連結部59A及び連結部59Bを設け、支持基板52A〜52CをZ方向へ連結すると共に支持基板52D〜52FをZ方向へ連結する。これにより対物レンズ駆動部28は、可動部43の振動を減衰させつつ、支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性を変化させることなくX軸回り及びY軸回りの剛性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ピックアップ及び光ディスク装置に関し、例えば光ディスクに対し情報を記録し、また当該光ディスクから情報を再生する光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスク装置においては、光ピックアップの対物レンズを介して光ビームを光ディスクの所望箇所に照射すると共に、その反射光を読み取ることにより情報を再生するようになされたものが広く普及している。
【0003】
また光ディスク装置では、光ピックアップの対物レンズを介して光ディスクの所望箇所に光ビームを照射し、当該光ディスクの局所的な反射率等を変化させることにより、情報の記録を行い得るようにもなされている。
【0004】
このような情報の再生又は記録を行う場合、光ディスク装置は光ピックアップに搭載された対物レンズのサーボ制御を行うことにより、光ディスクにおける所望の目標位置に光ビームの焦点を合わせるようになされている。
【0005】
具体的にこの光ピックアップは、例えば図1に示す対物レンズ駆動部428により対物レンズ9を駆動するようになされている。対物レンズ駆動部428は、光ピックアップ全体を支持するベース(図示せず)に固定される固定部441と、当該固定部441に一端が固定された複数の支持ワイヤ42と、当該支持ワイヤ42の他端に固定され固定部441により揺動自在に保持された可動部43とにより構成されている。
【0006】
固定部441はベースに直接取り付けられる固定台50を中心に構成されている。固定台50における可動部43と逆の(すなわちX2側の)側面には、1枚の支持基板452がその中央部分において固定台50に固定されている。また支持基板452は、中央部分以外の部分が固定台50におけるX2側の側面と隙間を空けるよう取り付けられている。
【0007】
支持基板452のY方向の端部には複数の支持ワイヤ42の一端が接続され、当該複数の支持ワイヤ42の他端は可動部43に接続される。
【0008】
可動部43はレンズホルダ10を中心に構成されており、当該レンズホルダ10には対物レンズ9が取り付けられると共に複数のコイルが設けられている。固定部441には、当該コイルと近接した箇所にマグネットが配置される。
【0009】
光ディスク装置は、光ピックアップの各コイルに対し支持ワイヤ42を介して電流を供給することにより、レンズホルダ10と一体に対物レンズ9をZ方向(すなわちフォーカス方向)及びY方向(すなわちトラッキング方向)に駆動することができる。
【0010】
対物レンズ駆動部428においては、可動部43の移動に応じて支持ワイヤ42が変形する。このため支持基板452における支持ワイヤ42との接続点において可動部43の移動による力が作用することとなる。
【0011】
このとき、可動部43に不要な振動が発生すると光ディスク装置においてサーボ制御の精度が低下してしまうため、可動部43の揺れを減衰したいという要望がある。
【0012】
しかしながら1枚の支持基板452に複数本支持ワイヤ42を接続し可動部43を支持する構成では、支持基板452のZ方向の長さが長く支持基板452の剛性が高いため可動部43の揺れを十分に減衰できない恐れがあった。
【0013】
そこで支持基板をZ方向に関し分割することで複数の支持基板とし、それぞれの支持基板を支持ワイヤと接続して可動部を支持する対物レンズ駆動部が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
このような対物レンズ駆動部は、例えば図2に示す対物レンズ駆動部528のように、それぞれの支持基板52A〜52FのZ方向の長さが上述した1枚の支持基板452よりも短く構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−288857公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで光ディスク装置においては、対物レンズの光軸が光ディスクの記録面にほぼ垂直となることが前提とされている。
【0017】
しかしながら対物レンズ駆動部528では、それぞれの支持基板52A〜52FのZ方向の長さが上述した1枚の支持基板452よりも短く構成されているため、支持基板52A〜52Fの剛性が大きく下がってしまう恐れがあった。
【0018】
このため可動部43自体の自重により、Y方向に沿った軸回りに可動部43が傾斜してしまう可能性があった。これにより、光ディスクに対して対物レンズ9の光軸を垂直に保ち難くなってしまう。
【0019】
この結果、光ディスク装置では、サーボ制御の精度が低下してしまうという問題があった。
【0020】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、サーボ制御の精度を向上し得る光ピックアップ及び光ディスク装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
かかる問題を解決するため本発明の光ピックアップにおいては、光源から出射された光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、対物レンズを保持する可動部と、可動部に一端が固定され導電性を有する複数本の支持ワイヤと、所定の固定台に取り付けられた支持基板固定部と、対物レンズが光ディスクに対し離接する方向であるフォーカス方向における位置が互いに相違するよう、フォーカス方向と略直交する所定の第1方向へ支持基板固定部から延設され支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第1支持基板と、フォーカス方向における位置が互いに相違するよう、第1方向の反対方向である第2方向へ支持基板固定部から延設され、第1支持基板に固定された支持ワイヤ以外の支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第2支持基板と、支持基板固定部から第1方向へ所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の第1支持基板を連結する第1連結部と、支持基板固定部から第2方向へ所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の第2支持基板を連結する第2連結部とを設けるようにした。
【0022】
この光ピックアップでは、対物レンズを含む可動部の振動を減衰させつつ、当該可動部を支持する複数の支持基板におけるフォーカス方向に沿った軸周りの剛性を維持したまま、トラッキング方向に沿った軸回りの剛性を高めることができると共にタンジェンシャル方向に沿った軸回りの剛性を高めることができる。
【0023】
また本発明の光ディスク装置においては、光源から出射された光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、対物レンズを保持する可動部と、可動部に一端が固定され導電性を有する複数本の支持ワイヤと、所定の固定台に取り付けられた支持基板固定部と、対物レンズが光ディスクに対し離接する方向であるフォーカス方向における位置が互いに相違するよう、フォーカス方向と略直交する所定の第1方向へ支持基板固定部から延設され支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第1支持基板と、フォーカス方向における位置が互いに相違するよう、第1方向の反対方向である第2方向へ支持基板固定部から延設され、第1支持基板に固定された支持ワイヤ以外の支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第2支持基板と、支持基板固定部から第1方向へ所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の第1支持基板を連結する第1連結部と、支持基板固定部から第2方向へ所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の第2支持基板を連結する第2連結部と、可動部を第1方向及び第2方向へ移動させる駆動制御部とを設けるようにした。
【0024】
この光ディスク装置では、対物レンズを含む可動部の振動を減衰させつつ、当該可動部を支持する複数の支持基板におけるフォーカス方向に沿った軸周りの剛性を維持したまま、トラッキング方向に沿った軸回りの剛性を高めることができると共にタンジェンシャル方向に沿った軸回りの剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、対物レンズを含む可動部の振動を減衰させつつ、当該可動部を支持する複数の支持基板におけるフォーカス方向に沿った軸周りの剛性を維持したまま、トラッキング方向に沿った軸回りの剛性を高めることができると共にタンジェンシャル方向に沿った軸回りの剛性を高めることができ、サーボ制御の精度を向上し得る光ピックアップ及び光ディスク装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来の対物レンズ駆動部の構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図2】従来の対物レンズ駆動部の構成(2)を示す略線的斜視図である。
【図3】光ディスク装置の構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図4】光ディスク装置の構成(2)を示す略線図である。
【図5】光ピックアップの構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図6】光ピックアップの構成(2)を示す略線的である。
【図7】対物レンズ駆動部の構成を示す略線的斜視図である。
【図8】可動部基板の構成を示す略線的斜視図である。
【図9】トラッキング方向への推力を示す略線的上面図である。
【図10】従来の対物レンズ駆動部との比較表を示す略線図である。
【図11】対物レンズ駆動部の周波数特性を示す略線図である。
【図12】他の実施の形態による対物レンズ駆動部の構成(1)を示す略線的斜視図である。
【図13】他の実施の形態による対物レンズ駆動部の構成(2)を示す略線的斜視図である。
【図14】他の実施の形態による対物レンズ駆動部の構成(3)を示す略線的斜視図である。
【図15】支持ワイヤの接続を示す略線的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.他の実施の形態
【0028】
<1.実施の形態>
[1−1.光ディスク装置の構成]
図3に示す光ディスク装置1は、光ディスク100に情報を記録し、また当該光ディスク100から情報を再生し得るようになされている。
【0029】
実際上光ディスク装置1は、CD方式の光ディスク100C、DVD方式の光ディスク100D又はBD方式の光ディスク100Bのいずれにも対応し得るようになされている。
【0030】
この光ディスク装置1は、全体として薄型に構成されており、外周を覆う筐体部2の内部に、図示しないスライド機構を介してトレイ部3が組み込まれている。
【0031】
因みに光ディスク装置1は、例えば薄型のノート型コンピュータ装置等に搭載されることが想定されている。この場合、筐体部2が当該ノート型コンピュータ装置の筐体等に固定される。
【0032】
トレイ部3は、光ディスク100の記録又は再生を行う際には筐体部2内に格納され、当該光ディスク100の着脱時には図3に示したように筐体部2の外部へスライドして露出されるようになされている。
【0033】
またトレイ部3には、ターンテーブル4Tを介して光ディスク100を回転駆動するスピンドルモータ4Mと、送りモータ5M及びリードスクリュー5S等により当該光ディスク100の径方向へ移動される光ピックアップ6とが設けられている。
【0034】
さらにトレイ部3の内部には、各種電子部品が実装された電子回路基板7が組み込まれている。この電子回路基板7は、図4に示すように、全体を統括制御する制御部11、スピンドルモータ4M等を駆動させる駆動制御部12及び各種信号処理を行う信号処理部13等として機能するようになされている。
【0035】
制御部11は、光ディスク装置1を統括制御するようになされている。この制御部11は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、各種プログラム等が格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとして用いられるRAM(Random Access Memory)とによって構成されている。
【0036】
実際上制御部11は、各種プログラムを実行することにより、駆動制御部12を介してスピンドルモータ4Mを回転駆動させ、ターンテーブル4Tに装着された光ディスク100を所望の速度で回転させる。また制御部11は、駆動制御部12を介して送りモータ5Mを駆動させることにより、リードスクリュー5S及びスライドレール5L等に沿って光ピックアップ6を光ディスク100の内周側又は外周側へ向かう方向であるトラッキング方向に大きく移動させる。
【0037】
さらに制御部11は、駆動制御部12を介して光ピックアップ6のアクチュエータ8を駆動制御する。これにより駆動制御部12は、対物レンズ9が搭載されたレンズホルダ10を光ディスク100に近接させ又は離隔させる方向であるフォーカス方向へ移動させると共にトラッキング方向へ細かく移動させ、当該対物レンズ9の位置調整を行う。
【0038】
因みにレンズホルダ10には、BD方式の光ディスク100Bに対応する対物レンズ9Bと、DVD方式の光ディスク100D及びCD方式の光ディスク100Cの双方に対応する対物レンズ9Dとが設けられている。説明の都合上、以下では対物レンズ9B及び対物レンズ9Dをまとめて対物レンズ9と呼ぶ。
【0039】
実際上、制御部11は、光ディスク100が装填されると、まず所定のディスク種別判定処理を行うことにより、当該光ディスク100がいずれの方式であるかを判定する。その後制御部11は、このときの判定結果を基に、光ディスク100の方式に応じた各処理を行うようになされている。
【0040】
制御部11は、例えば光ディスク100に情報を記録する場合、当該情報を信号処理部13へ供給して所定の符号化処理及び変調処理等を施すことにより、当該情報に応じたレーザ制御信号CLを生成し、これを光ピックアップ6へ供給する。
【0041】
光ピックアップ6は、信号処理部13から供給されるレーザ制御信号CLに基づき、レーザダイオードから光強度が比較的大きい情報記録用の光ビームL1を出射する。続いて光ピックアップ6は、位置調整された対物レンズ9を介して当該光ビームL1を光ディスク100へ照射する。これにより光ピックアップ6は、当該光ディスク100に情報を記録することができる。
【0042】
また制御部11は、光ディスク100から情報を再生する場合、信号処理部13から光ピックアップ6へレーザ制御信号CLを供給する。これにより、光ピックアップ6のレーザダイオードは、光ディスク100に対して光強度が比較的小さい情報再生用の光ビームL1を照射する。これと共に光ピックアップ6は、当該光ビームL1が反射されてなる反射光ビームL2をフォトディテクタにより検出し、その検出結果に応じた検出信号Uを生成し信号処理部13へ供給する。
【0043】
信号処理部13は、検出信号Uを基に再生RE信号SRFを生成し、これに所定の復調処理や復号化処理等を施すことにより、光ディスク100に記録されている情報を再生し得るようになされている。
【0044】
さらに信号処理部13は、検出信号Uを基にフォーカスエラー信号SFE及びトラッキングエラー信号STEを生成し、これらを駆動制御部12へ供給することにより、対物レンズ9のフォーカス制御及びトラッキング制御を行うようになされている。
【0045】
このように光ディスク装置1は、光ピックアップ6における対物レンズ9の位置調整を行った上で、当該対物レンズ9を介して光ビームL1を光ディスク100へ照射することにより、情報の記録又は再生を行い得るようになされている。
【0046】
[1−2.光ピックアップの構成]
図5に示すように、光ピックアップ6は、ベース20を中心に構成されている。このベース20は、全体として扁平な板状に構成されると共に、扁平な円柱状でなるスピンドルモータ4M及びターンテーブル4T(図3)に対応して、Y1側(内周側)が円弧状に切り落とされたような形状となっている。またベース20は、その内部に各種光学部品が設けられている。
【0047】
因みに図5以降においては、光ディスク100(図3)へ近接する方向及びその反対方向をそれぞれZ2方向(上方向)及びZ1方向(下方向)と定義し、光ディスク100の内周側及び外周側へ向かう方向をそれぞれY1方向及びY2方向と定義している。また図5では、光ディスク100の記録面に形成されているトラックの接線方向のうち、レーザダイオードから出射された光ビームL1がおおよそ進行する方向及びその反対方向をそれぞれX2方向(前方向)及びX1方向(後ろ方向)方向と定義している。
【0048】
光ピックアップ6は、2系統の光学系、すなわちBD方式の光ディスク100Bに対応するBD光学系6Bと、DVD方式の光ディスク100D及びCD方式の光ディスク100Cの双方に対応するDVD/CD光学系6Dとにより構成されている。
【0049】
図6に示すようにBD光学系6Bは、光集積素子21、1/4波長板22、コリメータレンズ23及び上述した対物レンズ9Bにより構成されている。
【0050】
光集積素子21は、レーザ光でなる光ビームを出射するレーザダイオード24、光ビームを受光してその光量に応じた検出信号を生成するフォトディテクタ25、及び光ビームの分離・合成等を行う積層プリズム26といった複数の光学素子等が一体に構成されている。
【0051】
実際上光集積素子21は、レーザダイオード24から光ビームL1を出射し、当該光ビームL1を図5における水平方向(すなわち光ディスク100の記録面とほぼ平行な方向)へ進行させ、1/4波長板22(図6)及びコリメータレンズ23を順次介して立上ミラー27へ照射する。
【0052】
光ビームL1は、立上ミラー27で反射されることにより、垂直方向(すなわち光ディスク100の記録面にほぼ垂直な方向)へ進行し、対物レンズ9Bにより集光され、光ディスク100の記録面に照射される。
【0053】
またベース20(図5)には、対物レンズ9を駆動するための対物レンズ駆動部28が取り付けられている。対物レンズ駆動部28は、駆動制御部12(図4)から所定の駆動信号Dがアクチュエータ8へ供給されることにより、レンズホルダ10及び対物レンズ9Bを一体に移動させるようになされている。
【0054】
実際上光ディスク装置1は、上述したフォーカス制御及びトラッキング制御(すなわちサーボ制御)を行うことにより、対物レンズ9Bの焦点位置、すなわち光ビームL1の照射位置を光ディスク100の記録面における所望の位置に合わせることができる。
【0055】
光ビームL1は、光ディスク100の記録面において反射され、反射光ビームL2となる。BD光学系6Bは、反射光ビームL2を対物レンズ9B(図6)により集光し、立上ミラー27により反射させ、コリメータレンズ23及び1/4波長板22を順次介して光集積素子21のフォトディテクタ25により受光し、検出信号Uを生成する。
【0056】
またDVD/CD光学系6D(図5)は、全体としてBD光学系6Bと類似した構成となっており、光集積素子21、1/4波長板22及びコリメータレンズ23とそれぞれ対応する光集積素子31、1/4波長板32及びコリメータレンズ33を有している。またDVD/CD光学系6Dは、BD光学系6Bにおける対物レンズ9Bに代えて、対物レンズ9Dを用いるようになされている。
【0057】
このように光ピックアップ6のBD光学系6B及びDVD/CD光学系6Dは、サーボ制御された対物レンズ9B及び9Dにより、光ビームL1を光ディスク100の記録面における所望の箇所に集光するようになされている。
【0058】
[1−3.対物レンズ駆動部の構成]
図7に示すように対物レンズ駆動部28は、ベース20(図5)に固定される固定部41と、当該固定部41に一端が固定された複数の支持ワイヤ42と、当該支持ワイヤ42の他端に固定され当該固定部41により支持ワイヤ42を介して揺動自在に保持された可動部43とにより構成されている。
【0059】
因みに対物レンズ駆動部28では、固定部41に取り付けられたマグネット群44及び可動部43に取り付けられたコイル群45の組み合わせにより、上述したアクチュエータ8を構成するようになされている。
【0060】
固定部41は、ベース20(図5)に直接取り付けられる固定台50を中心に構成されている。固定台50は、金属材料がダイカスト加工されてなり、全体としてY方向(すなわち内周方向又は外周方向)に延長された直方体状に形成されている。
【0061】
固定台50のX2側には、Y方向のほぼ中央部に支持基板固定部51が取り付けられている。支持基板固定部51は、非導電性の樹脂が成型されてなり全体として直方体状に形成されている。
【0062】
支持基板固定部51におけるY1側の端部である支持基板固定端部51Y1のY1側面からは、第1支持基板としての支持基板52A、52B及び52CがY1方向へ延設されている。
【0063】
支持基板52A、53B及び52Cは、例えばベリリウム銅、チタン銅、リン青銅等の銅合金でなる金属板により構成されており、それぞれ導電性を有している。
【0064】
また支持基板52A、52B及び52Cは、薄い板状に形成されその板面をX1方向及びX2方向へ向けている。さらに支持基板52A、52B及び52Cは、共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔するようZ2側からZ1側へ順次整列され、且つ固定台50におけるX2側面から離間するよう延設されている。
【0065】
支持基板固定部51のZ1側面におけるY1側の部分からは、支持基板52A、52B及び52Cとそれぞれ電気的に接続された接続端子53A、53B及び53Cが、全体としてほぼY方向にY2側からY1側へ順次整列し、Z1方向へ突出している。
【0066】
接続端子53A〜53Cは支持基板52A〜52Cと同様に、銅合金でなる金属板により構成されており、それぞれ導電性を有している。
【0067】
一方支持基板固定部51におけるY2側の端部である支持基板固定端部51Y2のY2側面からは、第2支持基板としての支持基板52D、52E及び52FがY2方向へ延設されている。支持基板52D〜52Fは、支持基板52A〜52CとXZ平面に関し対称に構成されている。
【0068】
また支持基板固定部51のZ1側面におけるY2側の部分からは、支持基板52D、52E及び52Fとそれぞれ電気的に接続された接続端子53D、53E及び53Fが、全体としてほぼY方向にY1側からY2側へ順次整列し、Z1方向へ突出している。
【0069】
また支持基板52D〜52F及び接続端子53D〜53Fは、支持基板52A〜52C及び接続端子53A〜53Cと同様に、銅合金でなる金属板により構成されており、それぞれ導電性を有している。
【0070】
さらに支持基板固定部51のZ1側面においては、接続端子53A〜53Fのうち接続端子53C及び53Fが、他の接続端子53A、53B、53D及び53Eに対して、所定の距離だけX1側に設けられている。
【0071】
支持基板52A〜52Cには、Y1方向の端部にX方向へ貫通した孔部54A〜54Cがそれぞれ設けられている。また支持基板52D〜52Fには、Y2方向の端部にX方向へ貫通した孔部54D〜54Fがそれぞれ設けられている。
【0072】
ところで固定台50は、Y方向の両端においてX方向へ貫通しZ2側が開放されるよう成型された凹状の支持ワイヤ挿通部55が設けられ、支持ワイヤ42をX方向へ挿通させると共にそのX2側端部付近を囲むようになされている。
【0073】
実際上支持基板52A〜52Fは、それぞれの孔部54A〜54Fに、各支持ワイヤ42A〜42FにおけるX2側端部がそれぞれ挿通された状態で半田付けされる。これにより支持基板52A〜52Fは、支持ワイヤ42を物理的に固定すると共に導電性を有する支持基板52A〜52F自身と支持ワイヤ42とを電気的に接続するようになされている。
【0074】
因みに以下では、支持基板52A〜52CにおけるY1側の端部と、支持基板52D〜52FにおけるY2側の端部とを先端部56と呼ぶ。また、支持基板52A〜52Cにおける支持基板固定端部51Y1のY1側面近傍と、支持基板52D〜52Fにおける支持基板固定端部51Y2のY2側面近傍とを根元部57と呼ぶ。さらに支持基板52A〜52Fにおいて根元部57と先端部56との間に位置する部分を腕部58と呼ぶ。
【0075】
固定部41は、上述したようにベース20(図5)に取り付けられる。このため固定部41は、当該ベース20に対し支持ワイヤ42のX2側端部を固定することができる。
【0076】
ところで支持基板52A〜52Cの先端部56の近傍には、孔部54A〜54CのY2側に隣接するように連結部59Aが設けられている。
【0077】
連結部59Aは、非導電性の樹脂が成型されてなり、全体としてZ方向に延長された直方体状に形成されている。
【0078】
また連結部59Aは、支持基板52A、52B及び52Cを連結前面部59AX2及び連結後面部59AX1によりそれぞれX2側及びX1側から挟み込みZ方向に連結するよう一体化して成型されている。
【0079】
さらに連結部59Aは、Y方向に所定の長さを有すると共にX方向に所定の長さを有し、ある程度の強度を有している。このため連結部59Aは、X軸、Y軸及びZ軸の全ての軸に対してねじれ、撓みが殆ど生じないようになされている。
【0080】
一方支持基板52D〜52Fの先端部56の近傍には、孔部54D〜54FのY1側に隣接するように連結部59Bが設けられている。支持基板52D〜52Fにおける連結部59Bは、支持基板52A〜52Cにおける連結部59AとXZ平面に関し対称に構成されている。
【0081】
なお実際上、支持基板固定部51と連結部59A及び59Bとは、支持基板52A〜52F及び接続端子53A〜53Fに対しアウトサート成型により形成される。
【0082】
このように固定部41においては、支持基板52A〜52Cが先端部56の近傍で連結部59Aにより連結されるようになされている。また支持基板52D〜52Fは、先端部56の近傍で連結部59Bにより連結されるようになされている。
【0083】
また支持ワイヤ挿通部55には、所定の粘性を有するダンプ剤DM1が充填され、支持ワイヤ42のX2側端部を内部に貫通させるようになされている。さらに固定台50のX2側面と、支持基板52A〜52Fの腕部58のX1側面との隙間には所定の粘性を有するダンプ剤DM2が充填されている。
【0084】
一方、固定台50のX1側には、磁性体材料でなるヨーク61が取り付けられる。ヨーク61は、固定台50のZ1側からX1方向へ所定距離だけ延設され、さらにZ2方向へ延設されることにより、取付部61Aが形成されている。
【0085】
取付部61AのX1側には、トラッキングマグネット62及び63とフォーカスマグネット64とがY方向に沿って取り付けられている。
【0086】
このように固定部41は、支持ワイヤ42のX2側を固定すると共に、X1側に設けられたヨーク61の取付部61Aにトラッキングマグネット62及び63とフォーカスマグネット64とが取り付けられている。
【0087】
一方、可動部43は、レンズホルダ10を中心に構成されている。レンズホルダ10のZ2側面には、所定径でなる孔部がY方向(内外周方向)に沿って2箇所形成されており、各孔部に対物レンズ9B及び9Dがそれぞれ取り付けられている。
【0088】
またレンズホルダ10のZ2側面付近には、対物レンズ9B及び9Dを周囲から取り囲むように、Z方向を巻回軸とした空芯コイルでなる第1フォーカスコイル70が取り付けられている。
【0089】
一方、レンズホルダ10のX2側面には、プリント配線基板でなる可動部基板71がその基板面をX1方向及びX2方向へ向けるように取り付けられている。可動部基板71は、レンズホルダ10のX2側面部分に合わせて、Z方向に対しY方向が長い形状となっている。
【0090】
また可動部基板71は、基板面に所定の配線パターンが形成されると共に、Y1側の端部にX方向に貫通したスルーホールでなる孔部72A、72B及び72Cが、Z2側からZ1側へ向かってZ方向に並ぶように設けられている。さらに可動部基板71は、Y2側の端部にX方向に貫通したスルーホールでなる孔部72D、72E及び72Fが、Z2側からZ1側へ向かってZ方向に並ぶように設けられている。
【0091】
可動部基板71のY2側端部におけるX2側面を図8(A)に示すように、孔部72Eの周囲には、可動部基板71のX2側面において、Z方向に所定の長さを有するランド部が形成されている。
【0092】
また可動部基板71のY2側端部におけるX1側面を図8(B)に示すように、孔部72D及び72Fの周囲には、可動部基板71のX1側面において、Z方向に所定の長さを有するランド部が形成されている。
【0093】
また孔部72A、72B及び72C(図7)は、孔部72D、72E及び72FとXZ平面に関し対称に構成されている。
【0094】
このように可動部基板71は、孔部72A〜72Fの周囲に設けるランド部をX1側面とX2側面とに分けることで、孔部72のZ方向の間隔が狭い場合においても、それぞれの孔部72に対してランド部を形成し得るようになされている。
【0095】
これにより可動部基板71はZ方向の長さを短くすることができ、当該可動部基板71が含まれる光ピックアップ6のZ方向の長さを抑え、薄型化し得るようになされている。
【0096】
実際上可動部基板71は、孔部72A〜72Fに各支持ワイヤ42におけるX1側端部がそれぞれ挿通された状態で、当該孔部72A〜72Fの周囲に設けられたランド部と半田付けされる。
【0097】
これにより可動部基板71は、支持ワイヤ42のX1側端部に物理的に固定されると共に、当該支持ワイヤ42と基板面上の配線パターンとを電気的に接続するようになされている。
【0098】
すなわち可動部43は、可動部基板71を介して支持ワイヤ42のX1側端部に固定される。
【0099】
支持ワイヤ42は、導電性を有すると共に弾性を有する金属の線材でなり、自然状態においてほぼ直線状となっている。このため固定部41は、図7に示した自然状態を基準として、可動部43を揺動自在に弾性支持するようになされている。
【0100】
因みに第1フォーカスコイル70は、可動部基板71のX1側面に形成されたランド部(図示せず)に半田付けされるようになされている。このランド部は、プリント配線パターンにより、対応する孔部72の周囲に形成されたランド部と接続されている。
【0101】
また可動部基板71のX2側面には、Y1側及びY2側にそれぞれ空芯コイルでなるトラッキングコイル73及び74が貼り付けられている。実際上トラッキングコイル73及び74は、1本の線材が2箇所で巻回されることにより構成されており、全体として互いに物理的及び電気的に接続されている。
【0102】
またトラッキングコイル73及び74は、それぞれから引き出された接続線を、可動部基板71のX2側面に形成されたランド部(図示せず)に半田付けされるようになされている。このランド部は、プリント配線パターンにより、対応する孔部72の周囲に形成されたランド部と接続されている。
【0103】
さらに可動部基板71のX2側面には、プリント配線パターンが螺旋状に形成された第2フォーカスコイル75が形成されている。
【0104】
また第2フォーカスコイル75は、プリント配線パターンにより、対応する孔部72の周囲に形成されたランド部と接続されている。
【0105】
このように対物レンズ駆動部28は、固定部41におけるヨーク61のX1側に設けられたトラッキングマグネット62及び63とフォーカスマグネット64と対向するよう、可動部43のX2側にトラッキングコイル73及び74と第2フォーカスコイル75とが配置されている。
【0106】
ところで光ディスク装置1は、対物レンズ9を移動させる際、光ピックアップ6のコイル群45の各コイルに対し支持ワイヤ42を介して電流を供給する。
【0107】
このため、光ディスク装置1はレンズホルダ10と一体に対物レンズ9をZ方向(フォーカス方向)及びY方向(トラッキング方向)に駆動しサーボ制御を行うことができる。
【0108】
このとき対物レンズ駆動部28においては、可動部43の移動に応じて支持ワイヤ42が変形する。このため支持基板52A〜52Fにおける支持ワイヤ42A〜42Fとの接続点において、可動部43の移動による力が作用することとなる。すなわち、例えば支持基板52AにおいてX1方向の力が作用すると共に支持基板52CにおいてX2方向の力が作用する。また例えば、支持基板52Aにおいて支持基板52B及び52Cよりも大きなZ2方向の力が作用する。
【0109】
上述したように連結部59Aは、支持基板52A、52B及び52CをX1側及びX2側から挟み込みZ方向につなぐよう一体化して成型されている。
【0110】
このため連結部59Aは、例えば支持基板52Aの先端部56がX1方向へ撓むと共に支持基板52Cの先端部56がX2方向へ撓むような、支持基板52Bを中心とした支持基板52A〜52C全体のY軸回りのねじれを抑制する。
【0111】
これにより対物レンズ駆動部28は、従来の対物レンズ駆動部528(図2)と比べて支持基板52A〜52C全体におけるY軸回りの剛性を高めることができる。
【0112】
また連結部59Aは、例えば支持基板52Aの先端部56が、支持基板52B及び52Cの先端部56よりも大きくZ2方向へ撓むような、支持基板52A〜52C全体のX軸回りのねじれを抑制する。
【0113】
これにより対物レンズ駆動部28は、従来の対物レンズ駆動部528(図2)と比べて支持基板52A〜52C全体におけるX軸回りの剛性を高めることができる。
【0114】
但し連結部59Aは、支持基板52A、52B及び52Cの先端部56におけるX方向への撓みを抑制することにはならないため、支持基板52A〜52C全体におけるZ軸回りの剛性を上げることはない。
【0115】
このように連結部59Aは、移動部43が移動することにより支持基板52A、52B及び52Cにおける支持ワイヤ42A、42B及び42Cとの接続点に、互いに異なる方向の力や互いに異なる大きさの力が作用しても、支持基板52A、52B及び52Cの互いの距離を保ち相対的な位置を変化させないようにすることができる。
【0116】
以上は支持基板52A〜52C及び連結部59Aについて説明したが、支持基板52A〜52C及び連結部59Aに対しXZ平面に関して対称に構成されている支持基板52D〜52F及び連結部59Bについても同様である。
【0117】
これにより連結部59A及び59Bは、支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性を高めることなく、X軸回り及びY軸回りの剛性を高めることができる。
【0118】
また固定部41は、支持ワイヤ挿通部55に充填されたダンプ剤DM1により、サーボ制御が行われる際の支持ワイヤ42における不要な振動を減衰又は抑制することができる。
【0119】
さらに固定部41は、固定台50のX2側面と支持基板52A〜52Fの腕部58のX1側面との隙間に充填されたダンプ剤DM2により、サーボ制御が行われる際の支持基板52A〜52Fにおける不要な振動を減衰又は抑制することができる。
【0120】
[1−4.推力の発生]
ところで接続端子53A〜53Fは、所定のFPC(Flexible Printed Circuit)ケーブルが接続されることにより、駆動制御部12(図4)からの駆動信号Dが供給されるようになされている。また接続端子53A〜53Fとそれぞれ電気的に接続された支持基板52A〜52Fは、上述したように支持ワイヤ42を介してさらに可動部基板71に電気的に接続されている。
【0121】
一方可動部基板71では、上述したように、当該可動部基板71のプリント配線パターンを介して、孔部72A〜72Fの周囲に形成されたランド部(図示せず)とコイル群45の各コイルとが接続されている。
【0122】
これにより対物レンズ駆動部28は、駆動制御部12から供給される駆動信号Dを、接続端子53A〜53F、支持基板52A〜52F、支持ワイヤ42A〜42F及び可動部基板71を介してコイル群45の各コイルに流すことができる。このときコイル群45の各コイルでは、マグネット群44により形成される磁界の強さ(磁束密度)と供給された電流の大きさに応じた推力(ローレンツ力)が発生する。
【0123】
実際上対物レンズ駆動部28は、このように発生する推力の大きさや方向を適切に調整することにより、可動部43を所望の方向へ移動させ得るようになされている。
【0124】
駆動制御部12(図4)は、例えば可動部43をY2(内周)方向へ移動させる場合、トラッキングコイル73及び74に対し、トラッキング駆動信号DTを供給する。
【0125】
このとき対物レンズ駆動部28をZ2側から見た上面図を図9に示すように、トラッキングコイル73は、トラッキングマグネット62による磁界内で電流が流れることにより、Y2方向の推力F1が生じる。
【0126】
またトラッキングコイル74は、トラッキングマグネット63による磁界内で電流が流れることにより、Y2方向の推力F2が生じる。
【0127】
このため可動部43は全体として、推力F1と推力F2とのそれぞれの推力が発生する点を結んだ直線上における推力発生点FPOから、推力F1及びF2を合成したトラッキング推力FTが作用する。
【0128】
因みに対物レンズ駆動部28は、駆動制御部12から供給されるトラッキング駆動信号DTが正負反転されることにより、可動部43にY1(外周)方向の推力を発生させ移動させることもできる。
【0129】
かくして対物レンズ駆動部28は、駆動制御部12からのトラッキング駆動信号DTを
トラッキングコイル73及び74に供給することにより、可動部43にY方向(内外周方向)、すなわちトラッキング方向の推力を発生させることができる。
【0130】
このため可動部43は、トラッキング推力FTによりトラッキング方向へ移動する。なおトラッキング推力FTは、可動部重心GC(後述する)からX2方向へ離隔した箇所である推力発生点FPOから発生しY2方向へ向かう力となる。
【0131】
[1−5.従来の対物レンズ駆動部との比較]
ここで図10に、本実施の形態による対物レンズ駆動部28と、従来の対物レンズ駆動部528(図2)との比較表TBLを示す。
【0132】
比較表TBLに示すように、従来の対物レンズ駆動部528では、初期スキューがおよそ3[degree]発生している。ここで初期スキューとは、可動部43がアクチュエータ8により駆動されていない状態において、自重によりY軸回りに傾斜する際の固定部41に対する角度である。
【0133】
初期スキューが発生すると、対物レンズ駆動部は光ディスク100に対して対物レンズ9の光軸を垂直に保ち難くなり、サーボ制御の精度が低下してしまう。このため初期スキューは発生しないことが望ましい。
【0134】
これに対し本実施の形態による対物レンズ駆動部28(図7)では、連結部59A及び59Bにより支持基板52A〜52FにおけるY軸回りの剛性を高めるようにした。このため比較表TBLに示すように対物レンズ駆動部28において初期スキューはおよそ0[degree]に抑えられている。
【0135】
次に図11に、駆動制御部12(図4)から所定の駆動信号Dをアクチュエータ8へ供給した後に可動部43(図7)が移動するまでを測定した伝達関数の周波数特性を示す。
【0136】
なお、図11(A)は可動部43がトラッキング方向に移動するまでの周波数特性を、図11(B)は可動部43がフォーカス方向に移動するまでの周波数特性をそれぞれ示している。
【0137】
ところで光ディスク装置1においては、可動部43を移動させた際にX軸、Y軸及びZ軸それぞれの軸回り、又はいずれかの軸回りに回転力が生じ、可動部43を振動させてしまう場合がある。このような可動部43の振動は、ローリングと呼ばれている。
【0138】
対物レンズ駆動部28において、トラッキング推力FT(図9)の推力発生点FPOと可動部重心GCとがX方向にずれている場合や、推力F1と推力F2との大きさが異なる場合に可動部43をトラッキング方向へ移動させると、Z軸回りのローリングが発生する。
【0139】
また対物レンズ駆動部28において、トラッキング推力FTの推力発生点FPOと可動部重心GCとがZ方向にずれている場合や、推力F1と推力F2との発生点がZ方向にずれている場合に可動部43をトラッキング方向へ移動させると、X軸回りのローリングが発生する。
【0140】
また対物レンズ駆動部28において、第1フォーカスコイル70が発生する推力F3(図示せず)と第2フォーカスコイル75が発生する推力F4(図示せず)との大きさが異なる場合に可動部43をフォーカス方向へ移動させると、Y軸回りのローリングが発生する。
【0141】
さらに対物レンズ駆動部28において、推力F3と推力F4とを合成したフォーカス推力FF(図示せず)の推力発生点と可動部重心GCとがX方向にずれている場合に可動部43をフォーカス方向へ移動させると、Y軸回りのローリングが発生する。
【0142】
さらに対物レンズ駆動部28において、推力F3と推力F4との発生点がY方向にずれている場合に可動部43をフォーカス方向へ移動させると、X軸回りのローリングが発生する。
【0143】
さらに対物レンズ駆動部28において、フォーカス推力FFの推力発生点(図示せず)と可動部重心GCとがY方向にずれている場合に可動部43をフォーカス方向へ移動させると、X軸回りのローリングが発生する。
【0144】
図11(A)に示す位相曲線P_Trにおいては、可動部43におけるX軸回りのローリング及びZ軸回りのローリングの影響が、局所的に波形が乱れているピーク点PK_X1及びPK_Z1として現れている。またピーク点PK_X1及びPK_Z1の周波数は、それぞれX軸回りのローリング周波数及びZ軸回りのローリング周波数を示している。
【0145】
さらに図11(A)及び(B)に示す、ゲイン曲線G_Tr及びG_Fsが0[dB]と交差するゼロクロス点ZP_Tr及びZP_Fsは、ほぼ1[kHz]に現れている。
【0146】
ところで、ローリング周波数と、光ディスク装置1において光ディスク100の回転により生じる振動の周波数(以下、これを回転周波数と呼ぶ)とが近接すると、可動部43が共振を起こしてしまう恐れがある。このため光ディスク装置1においては、サーボ制御が不安定になってしまう。
【0147】
比較表TBL(図10)に示すように、従来の対物レンズ駆動部528ではX軸回りに発生するローリング周波数がおよそ70[Hz]となっている。ここで、本実施の形態による光ディスク装置1においてはその回転周波数がおよそ70[Hz](図示せず)となっており、X軸回りのローリング周波数と近接しているため、可動部43が共振してしまう恐れがある。このためX軸回りのローリング周波数は90[Hz]以上であることが望ましい。
【0148】
これに対し本実施の形態による対物レンズ駆動部28では、図11(A)に示す位相曲線P_Trにおけるピーク点PK_X1及び図11(B)に示す位相曲線P_Fsにおけるピーク点PK_X2はそれぞれおよそ100[Hz]に現れている。
【0149】
すなわち比較表TBL(図10)に示すように、対物レンズ駆動部28は、X軸回りのローリング周波数がおよそ100[Hz]まで高められている。このようにレンズ駆動部28は、連結部59A及び59Bにより支持基板52A〜52FにおけるX軸回りの剛性を高めるようにしたため、X軸回りのローリング周波数を高めることができる。
【0150】
また比較表TBLに示すように、従来の対物レンズ駆動部528ではY軸回りに発生するローリング周波数がおよそ300[Hz]となっている。X軸回りと同様、Y軸回りのローリング周波数と光ディスク装置1の回転周波数(70[Hz])とが近接すると可動部43が共振を起こしてしまう恐れがある。このためY軸回りのローリング周波数は90[Hz]以上であることが望ましい。
【0151】
さらに、Y軸回りのローリング周波数が300[Hz]よりも小さい場合、上述した初期スキューが発生してしまう。このため結果的には、Y軸回りのローリング周波数は300[Hz]以上であることが望ましい。
【0152】
ここで本実施の形態による対物レンズ駆動部28では、連結部59A及び59Bにより支持基板52A〜52FにおけるY軸回りの剛性を高められている。このため図11(B)に示した位相曲線P_Fsにおけるピーク点PK_Y1のように、Y軸回りのローリング周波数はおよそ500[Hz]まで高められている。
【0153】
なお、Y軸回りのローリング周波数(すなわちピーク点PK_Y1における周波数)が、ゲイン曲線G_Fsのゼロクロス点ZP_Fsに近接してしまうとサーボ制御が不安定になってしまう。
【0154】
これを考慮して対物レンズ駆動部28は、Y軸回りのローリング周波数がゼロクロス点ZP_Fsの周波数である1[kHz]以下に設計されている。
【0155】
さらに比較表TBLに示すように、従来の対物レンズ駆動部528ではZ軸回りに発生するローリング周波数がおよそ800[Hz]となっている。
【0156】
Z軸回りのローリング周波数が、図11(A)に示すゲイン曲線G_Trのゼロクロス点ZP_Trに近接してしまうとサーボ制御が不安定になってしまう。このためZ軸回りのローリング周波数は、ゼロクロス点ZP_Trの周波数である1[kHz]よりも小さいことが望ましい。
【0157】
ここで本実施の形態による対物レンズ駆動部28においては、支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性は、従来の対物レンズ駆動部528と比べて変化していない。このため図11(A)に示す位相曲線P_Trにおけるピーク点PK_Z1のように、Z軸回りのローリング周波数は従来の対物レンズ駆動部528から高められることなく、およそ800[Hz]を維持している。
【0158】
なおX軸回り及びY軸回りのローリング周波数と同様、光ディスク装置1の回転周波数(70[Hz])とZ軸回りのローリング周波数とが近接すると可動部43が共振を起こしてしまう恐れがある。このため対物レンズ駆動部28は、Z軸回りのローリング周波数が、X軸回り及びY軸回りのローリング周波数と同様、90[kHz]以上に設計されている。
【0159】
このように対物レンズ駆動部28は、全ての軸回りにおけるローリング周波数を所望の値に設計することができる。
【0160】
[1−6.動作及び効果]
以上の構成において対物レンズ駆動部28は、固定台50に取り付けられた支持基板固定部51のY1側面から、支持基板52A〜52Cを共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔し並ぶようY1方向へ延設する。
【0161】
また対物レンズ駆動部28は、支持基板固定部51のY2側面から、支持基板52D〜52Fを共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔し並ぶようY2方向へ延設する。
【0162】
このとき対物レンズ駆動部28は、支持基板52A〜52Fを固定台50におけるX2側面から離間するよう延設する。
【0163】
また対物レンズ駆動部28は、非導電性の樹脂でなる連結部59Aを支持基板52A〜52Cの先端部56の近傍に設け、支持基板52A、52B及び52CをZ方向へ連結する。
【0164】
さらに対物レンズ駆動部28は、非導電性の樹脂でなる連結部59Bを支持基板52D〜52Fの先端部56の近傍に設け、支持基板52D、52E及び52FをZ方向へ連結する。
【0165】
このため連結部59Aは、支持基板52A、52B及び52Cにおける互いの距離を保ち、相対的な位置を変化させないようにすることができる。また連結部59Aと同様、連結部59Bは、支持基板52D、52E及び52Fにおける互いの距離を保ち相対的な位置を変化させないようにすることができる。
【0166】
これにより対物レンズ駆動部28は、支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性を変化させることなく、X軸回り及びY軸回りの剛性を高めることができる。
【0167】
ところで光ディスク装置1では、光ピックアップ6において対物レンズ9をZ方向(フォーカス方向)へ移動させる際、当該対物レンズ9を平行移動できずに傾かせてしまう場合がある。このような対物レンズ9の傾き角度は、D−skewと呼ばれている。
【0168】
従来の対物レンズ駆動部528(図2)においては、例えば可動部43がZ2方向へ移動すると、支持ワイヤ42を介して支持基板52A及び52Dの先端部56にX2方向の力が作用すると共に、支持基板52C及び52Fの先端部56にX1方向の力が作用する。
【0169】
このとき支持基板52A及び52Dの先端部56がX2方向へ撓むと共に支持基板52C及び52Fの先端部56がX1方向へ撓んでしまう。すなわち支持基板52A〜52F全体におけるY軸回りの剛性が低いために可動部43がY軸回りに傾いてしまい、結果としてD−skewが悪化してしまっていた。
【0170】
これに対し本実施の形態による対物レンズ駆動部28では、連結部59A及び59Bを設けたことにより、支持基板52A〜52FにおけるY軸回りの剛性を高めることができる。このため対物レンズ駆動部28では、例えば可動部43がZ2方向へ移動した際、支持基板52A及び52Dの先端部56におけるX2方向への撓みを抑えると共に支持基板52C及び52Fにおける先端部56のX1方向への撓みを抑えることができる。
【0171】
これにより対物レンズ駆動部28は、X方向(タンジェンシャル方向)のD−skewを低減することができる。
【0172】
また対物レンズ駆動部28は、支持基板52A〜52FにおけるY軸回りの剛性を高めることができるため、初期スキューの発生を抑えることもでき、これによりサーボ制御の精度を向上させることができる。
【0173】
さらに対物レンズ駆動部28は、従来の対物レンズ駆動部528と比べてZ軸回りのローリング周波数を高めることなく維持したまま、X軸回りのローリング周波数及びY軸回りのローリング周波数を高めることができる。
【0174】
このため対物レンズ駆動部28は、全ての軸回りのローリング周波数を光ディスク装置1における回転周波数と離隔させ可動部43の共振を防止することができる。
【0175】
ところで図9に示したように、可動部43は、相対的に質量が大きい対物レンズ9B及び9Dとその他各種部品との関係により、その重心である可動部重心GCが対物レンズ9B及び9D近傍の位置にある。
【0176】
一方、トラッキング推力FTは可動部重心GCからX2方向へ離隔した推力発生点FPOからY2方向へ向かう力となっている。
【0177】
このため可動部43は、トラッキング推力FTにより、Y方向(トラッキング方向)へ移動する。しかしながら可動部43は固定部41から支持ワイヤ42を介して支持されているため、トラッキング推力FTによりY方向へ移動すると同時に、可動部重心GCを中心にしてZ軸回りに振動する、すなわちローリングしてしまう。
【0178】
このように、可動部重心GCとトラッキング推力FTの推力発生点FPOとがX方向にずれていると、可動部重心GCを中心にしてZ軸回りのローリングが発生し易くなってしまう。
【0179】
ここで対物レンズ駆動部28は、従来の対物レンズ駆動部528と比べてZ軸回りの剛性を高めることなく維持するようになされている。このため支持基板52A〜52Fは、可動部43のZ軸回りのローリングを吸収し、減衰させることができる。
【0180】
また、仮に支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性が高まると、それに伴いZ軸回りのローリング周波数が高まるため、当該Z軸回りのローリング周波数がゼロクロス点ZP_Tr(図11(A))に近接してしまいサーボ制御が不安定になってしまう恐れがあった。
【0181】
これに対し対物レンズ駆動部28は、従来の対物レンズ駆動部528と比べてZ軸回りの剛性を同程度に維持し高めないようになされている。このため対物レンズ駆動部28は、Z軸回りのローリング周波数(すなわち位相曲線P_Trにおけるピーク点PK_Z1の周波数)をゼロクロス点ZP_Trに近接させないようにすることができる。
【0182】
これにより対物レンズ駆動部28は、支持基板52A〜52FにおけるX軸回り及びY軸回りの剛性を高める際に、その代償としてZ軸回りの剛性を高めてしまう(すなわちZ軸回りのローリング周波数を高めてしまう)ことを防ぐことができる。
【0183】
この結果光ディスク装置1は、サーボ制御を安定化させると共にその精度を向上させることができる。
【0184】
ところで支持基板52A〜52Fは銅合金で構成されているため熱伝導率が非常に高い。このため、支持基板52A〜52Fに支持ワイヤ42を半田付けする際、半田濡れ広がりを制御することが難しかった。
【0185】
これにより従来の対物レンズ駆動部528では、根元部57側への半田の濡れ広がり方がばらつき、それぞれの支持基板52A〜52Fにおける剛性にもばらつきが発生してしまう恐れがあった。
【0186】
これに対し本実施の形態による対物レンズ駆動部28(図7)では、支持基板52A〜52Fの先端部56の近傍において、孔部54A〜54Fに対して根元部57側へ隣接するように連結部59A及び59Bを設けるようにした。
【0187】
このため対物レンズ駆動部28は、根元部57側への半田の濡れ広がりを連結部59A及び59Bにより物理的に抑えることができる。これにより対物レンズ駆動部28は、全ての支持基板52A〜52Fにおける、半田濡れ広がりに起因する剛性のばらつきを抑えることができる。
【0188】
また一般的に、固定台50に取り付けられ支持ワイヤ42と接続される支持基板として、例えばFR4材料でなるガラスエポキシ基板により構成される支持基板が用いられる場合がある。
【0189】
しかしながらこのような支持基板は、特に光ディスク装置1で想定される高温(例えば80〜90[℃])において変形し易いため、支持ワイヤ42を介し支持している可動部43を不必要に傾斜させてしまうことがあった。
【0190】
これに対し本実施の形態による対物レンズ駆動部28では、高温に対し極めて変形し難い銅合金でなる支持基板52A〜52Fを用いるようにした。このため対物レンズ駆動部28では、支持基板52A〜52Fが高温になることがあっても変形することなく、可動部43を不必要に傾斜させないようにすることができる。
【0191】
以上の構成によれば対物レンズ駆動部28は、支持基板固定部51のY1側面から支持基板52A、52B及び52Cを共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔し並ぶよう、固定台50におけるX2側面から離間してY1方向へ延設する。また対物レンズ駆動部28は、支持基板固定部51のY2側面から支持基板52D、52E及び52Fを共通のYZ平面に沿って互いにZ方向に所定の距離ずつ離隔し並ぶよう、固定台50におけるX2側面から離間してY2方向へ延設する。さらに対物レンズ駆動部28は、支持基板52A〜52Fの先端部56の近傍に連結部59A及び連結部59Bを設け、支持基板52A、52B及び52CをZ方向へ連結すると共に支持基板52D、52E及び52FをZ方向へ連結する。これにより対物レンズ駆動部28は、可動部43の振動を減衰させつつ、支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性を変化させることなくX軸回り及びY軸回りの剛性を高めることができる。
【0192】
<2.他の実施の形態>
なお上述した実施の形態においては、それぞれの支持基板52A〜52Fの先端部56の近傍において、孔部54A〜54Fに対して根元部57側へ隣接するように連結部59A及び59Bを設ける場合について述べた。
【0193】
本発明はこれに限らず、例えば図12に示す対物レンズ駆動部128のように、対物レンズ駆動部28(図7)と比べて支持基板152A〜152CをY1方向へさらに伸長し、孔部54A〜54Cに対してY1側へ連結部59Aを設けても良い。それと共に支持基板152D〜152FをY2方向へさらに伸長し、孔部54D〜54Fに対してY2側へ連結部59Bを設けても良い。
【0194】
この場合支持基板152A〜152FのY方向の長さが支持基板52A〜52Fよりも長くなるため、支持基板152A〜152FはZ軸回りにさらに撓み易くなる。このため支持基板152A〜152Fは、可動部43のZ軸回りのローリングをさらに吸収し、不要な振動を減衰させることができる。
【0195】
また上述した実施の形態においては、それぞれの支持基板52A〜52Fの先端部56の近傍において、孔部54A〜54Fに対して根元部57側へ隣接するように連結部59A及び59Bを設ける場合について述べた。
【0196】
本発明はこれに限らず、例えば図13に示す対物レンズ駆動部228のようにそれぞれの支持基板52A〜52Fの根元部57の近傍に連結部59A及び59Bを設けるようにしても良い。
【0197】
この場合対物レンズ駆動部28と比べて、支持基板52A〜52FにおけるX軸回り及びY軸周りの剛性を低くすることができる。また支持基板52A〜52FにおけるX軸回り及びY軸周りの剛性は、連結部59A及び59Bを根元部57に近づけるほど低くなり、先端部56に近づけるほど高くなる。
【0198】
このため根元部57と先端部56との間において連結部59A及び59Bを設ける位置を調整することで、支持基板52A〜52FにおけるX軸回り及びY軸周りの剛性とローリング周波数とを調整することができる。
【0199】
さらに例えば図14に示す対物レンズ駆動部328のように、対物レンズ駆動部28(図7)と比べて支持基板固定部51の支持基板固定端部51Y1及び51Y2を支持基板52A〜52Fの先端部56側に設けても良い。
【0200】
このとき支持基板固定端部51Y1のY1側面から孔部54A〜54Cまで、また支持基板固定端部51Y2のY2側面から孔部54D〜54Fまでの長さである支持基板自由長LBは、対物レンズ駆動部28(図7)における支持基板自由長LBと比べて短いものとなる。
【0201】
この場合対物レンズ駆動部28と比べて、対物レンズ駆動部328の支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性を高くすることができる。
【0202】
また、支持基板固定端部51Y1及び51Y2を支持基板52A〜52Fの先端部56側に設けるほど、すなわち支持基板自由長LBを短くするほど支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性は高くなる。また支持基板自由長LBを長くするほど支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性は低くなる。
【0203】
このためY方向における支持基板固定端部51Y1及び51Y2を設ける位置を調整することで、すなわち支持基板自由長LBを調整することで、支持基板52A〜52FにおけるZ軸回りの剛性とローリング周波数とを調整することができる。
【0204】
さらに上述した実施の形態においては、支持基板52A〜52Cに対し1個の連結部59Aを設けると共に支持基板52D〜52Fに対し1個の連結部59Bを設ける場合について述べた。
【0205】
本発明はこれに限らず、支持基板52A〜52Cに対し複数の連結部59Aを設けても良く、支持基板52D〜52Fに対し複数の連結部59Bを設けても良い。この場合、支持基板52A〜52FにおけるY軸回りの剛性をさらに高めることができる。
【0206】
また、連結部59AのY方向の長さは種々の長さを選択して良く、例えばさらにY方向の長さを長くすると、支持基板52A〜52Cにおける全ての軸回りの剛性を高めることができる。連結部59Bについても同様である。
【0207】
さらに上述した実施の形態においては、支持基板52A、52B及び52Cを連結前面部59AX2及び連結後面部59AX1によりそれぞれX2側及びX1側から挟み込みZ方向に連結するよう連結部59Aを一体化して成型する場合について述べた。
【0208】
ここで図15(A)に、図7における支持基板52A〜52Cの腕部58と連結部59AとのXZ平面断面図を示す。
【0209】
本発明はこれに限らず、例えば図15(A)に対応した図15(B)に示すように、支持基板52Bに接しないよう成型された連結前面部159AX2及び連結後面部159AX1を用いて、支持基板52Bを支持基板52A及び52Cと連結しないようにしても良い。
【0210】
ここで、図7における可動部基板71、支持ワイヤ42A〜42C及び支持基板52A〜52CのXZ平面断面図を図15(C)に示す。図15(C)に示すように、支持基板52A〜52Cにおける孔部54A〜54Cには支持ワイヤ42A〜42CのX2側端部が挿通され、支持基板52A〜52CのX2側面において半田付けされている。
【0211】
また可動部基板71の孔部72A及び72Cには支持ワイヤ42A及び42CのX1側端部が挿通され、可動部基板71のX1側面において半田付けされている。つまり支持ワイヤ42A及び42Cは、可動部基板71のX1側面と支持基板52AのX2側面とによりそれぞれX1側端部及びX2側端部が固定されている。
【0212】
一方可動部基板71の孔部72Bには支持ワイヤ42BのX1側端部が挿通され、可動部基板71のX2側面において半田付けされている。つまり支持ワイヤ42Bは、可動部基板71のX2側面における半田部80のX2側端部と支持基板52AのX2側面とによりそれぞれX1側端部及びX2側端部が固定されている。
【0213】
よって支持ワイヤ42Bにおける可動部基板71の半田部80のX2側端部から支持基板52AのX2側面までの長さである支持ワイヤ自由長LW1は、支持ワイヤ42A及び42Cにおける可動部基板71のX1側面から支持基板52AのX2側面までの長さである支持ワイヤ自由長LW2よりも短いものとなる。
【0214】
このため可動部基板71が取り付けられた可動部43(図示せず)が移動すると、支持ワイヤ42A及び42Cと比べて支持ワイヤ42Bに大きなストレスがかかり、支持ワイヤ42Bのみが変形し曲がってしまう場合があった。
【0215】
これに対し、図15(B)に示したように支持基板52Bを支持基板52A及び52Cと連結しないようにした場合、可動部43が移動した際に支持ワイヤ42Bにのみ大きなストレスがかかることがなくなり、支持ワイヤ42Bの変形を防ぐことができる。
【0216】
なお、支持基板52Bを支持基板52A及び52Cと連結しないようにしても、支持基板52A〜52CにおけるX軸回り及びY軸回りの剛性は、支持基板52A、52B及び52C全てを連結した場合と比較して殆ど下がることはない。
【0217】
また、仮に支持基板固定部51(図7)から4本以上Y1方向に支持基板を延設した場合、Z方向の両端に位置する2枚の支持基板同士のみを連結すれば良い。
【0218】
以上は支持基板52A〜52C及び支持ワイヤ42A〜42Cについて説明したが、支持基板52A〜52C及び支持ワイヤ42A〜42Cに対しXZ平面に関して対称に構成されている支持基板52D〜52F及び支持ワイヤ42D〜42Fについても同様である。
【0219】
さらに上述した実施の形態においては、支持基板52A、52B及び52Cを共通のYZ平面に沿って配置すると共に支持基板52D、52E及び52Fを共通のYZ平面に沿って配置する場合について述べた。
【0220】
本発明はこれに限らず、ある程度近接した範囲内であれば支持基板52A、52B及び52Cは共通のYZ平面に沿って配置されていなくても良く、支持基板52D、52E及び52Fも共通のYZ平面に沿って配置されていなくても良い。
【0221】
さらに上述した実施の形態においては、支持基板52A〜52CをZ方向に所定の距離ずつ互いに離隔するように並べると共に支持基板52D〜52FをZ方向に所定の距離ずつ互いに離隔するように並べる場合について述べた。
【0222】
本発明はこれに限らず、例えば支持基板52Aと支持基板52Bとの間のZ方向の距離と、支持基板52Bと支持基板52Cとの間のZ方向の距離とが異なっていても良い。また、例えば根元部57から先端部56へ向かうに連れて支持基板52A〜52CのZ方向の互いの距離が少しずつ長くなっていっても良い。さらに支持基板52A、52B及び52CはZ方向について互いに完全に重なることなく並んでいる必要はなく、互いに接触していなければ、ある程度Z方向における互いの位置が相違していれば良い。支持基板52D〜52Fについても同様である。
【0223】
さらに上述した実施の形態においては、各支持ワイヤ42のX2側端部を半田付けする孔部54A〜54Fを支持基板52A〜52Fの先端部56に設ける場合について述べた。
【0224】
本発明はこれに限らず、例えば支持基板52A〜52Fの根元部57付近や、図12に示したレンズ駆動部128のように支持基板152A〜152Fの根元部57と先端部56との中間部分よりやや先端部56寄りなど、先端部56と根元部57との間において種々の位置に孔部54A〜54Fを設けて良い。
【0225】
さらに上述した実施の形態においては、各支持ワイヤ42のX1側端部を半田付けする孔部72A〜72Fを可動部基板71におけるY方向の端部に設ける場合について述べた。
【0226】
本発明はこれに限らず、例えば可動部基板71におけるY方向の中央部付近等、種々の位置に孔部72A〜72Fを設けて良い。
【0227】
さらに上述した実施の形態においては、可動部基板71のX1側面において孔部72A、72C、72D及び72Fの周囲にランド部を形成し、可動部基板71のX2側面において孔部72B及び72Eの周囲にランド部を形成する場合について述べた。
【0228】
本発明はこれに限らず、例えば可動部基板71のX1側面において孔部72A〜72Fの周囲にランド部を形成するなど、可動部基板71のいずれの面にいずれのランド部を形成しても良い。
【0229】
さらに上述した実施の形態においては、支持ワイヤ挿通部55に所定の粘性を有するダンプ剤DM1を充填すると共に、固定台50のX2側面と支持基板52A〜52Fの腕部58のX1側面との隙間に所定の粘性を有するダンプ剤DM2を充填する場合について述べた。
【0230】
本発明はこれに限らず、ダンプ剤DM1及びDM2の両方又は片方を充填しなくても良い。但しダンプ剤DM1及びDM2を充填した方が、対物レンズ駆動部28は支持ワイヤ42及び支持基板52A〜52Fにおける不要な振動を減衰又は抑制することができる。
【0231】
さらに上述した実施の形態においては、銅合金でなる支持基板52A〜52Fを用いる場合について述べた。
【0232】
本発明はこれに限らず、アルミ合金等、種々の素材からなる支持基板を用いて良い。要は導電性を有しある程度の剛性を有する素材であれば良い。
【0233】
さらに上述した実施の形態においては、支持基板固定部51からそれぞれ3本ずつY1方向及びY2方向へ支持基板を延設する場合について述べた。
【0234】
本発明はこれに限らず、支持基板固定部51からそれぞれ2本ずつ、又は4本以上ずつ支持基板を延設しても良い。要は支持基板固定部51からそれぞれ複数本ずつY1方向及びY2方向へ支持基板を延設すれば良い。またY1方向とY2方向とに延設する支持基板の本数は異なっていても良い。
【0235】
さらに上述した実施の形態においては、支持基板固定部51と連結部59A及び59Bとを支持基板52A〜52F及び接続端子53A〜53Fに対しアウトサート成型により形成する場合について述べた。
【0236】
本発明はこれに限らず、例えば支持基板固定部51のみを支持基板52A〜52F及び接続端子53A〜53Fに対しアウトサート成型により形成し、連結部59A及び59Bを支持基板52A〜52Fに対し非導電性の接着剤により接着しても良い。
【0237】
また連結部59A及び59Bのみを支持基板52A〜52Fに対しアウトサート成型により形成し、支持基板固定部51を支持基板52A〜52F及び接続端子53A〜53Fに対し非導電性の接着剤により接着しても良い。
【0238】
さらに支持基板固定部51と連結部59A及び59Bとの両方を、支持基板52A〜52F及び接続端子53A〜53Fに対し非導電性の接着剤により接着しても良い。
【0239】
この場合、支持基板52A〜52F及び接続端子53A〜53Fに対し行う支持基板固定部51と連結部59A及び59Bとのアウトサート成型よりも製造上の難易度を下げ、対物レンズ駆動部28の製造の歩留まりを向上させることができる。
【0240】
さらに上述した実施の形態においては、取付部61AのX1側にトラッキングマグネット62及び63とフォーカスマグネット64を設け、レンズホルダ10のZ2側面付近に第1フォーカスコイル70を、可動部43のX2側にトラッキングコイル73及び74と第2フォーカスコイル75とを設ける場合について述べた。
【0241】
本発明はこれに限らず、トラッキングマグネット及びフォーカスマグネットは固定部41において、またトラッキングコイル及びフォーカスコイルは可動部43において種々の位置に取り付けられるようにして良い。要はトラッキングマグネットとトラッキングコイルとによりトラッキング方向へ、フォーカスコイルとフォーカスマグネットとによりフォーカス方向へそれぞれ可動部43を移動できれば良い。
【0242】
さらに上述した実施の形態においては、レンズホルダ10に、BD方式の光ディスク100Bに対応する対物レンズ9Bと、DVD方式の光ディスク100D及びCD方式の光ディスク100Cの双方に対応する対物レンズ9Dとを設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、対物レンズは1個のみ又は3個以上設けられていても良い。
【0243】
さらに上述した実施の形態においては、BD方式、DVD方式及びCD方式の光ディスクに対応した光ディスク装置1に本発明を適用する場合について述べた。
【0244】
本発明はこれに限らず、種々の方式の光ディスクに対応した光ディスク装置に本発明を適用して良く、要は光ピックアップに固定された固定部により、支持ワイヤを介して対物レンズを含むレンズ可動部を揺動自在に保持するよう構成されている対物レンズ駆動部を含む光ディスク装置であれば良い。
【0245】
さらに上述した実施の形態においては、対物レンズとしての対物レンズ9と、可動部としての可動部43と、支持ワイヤとしての支持ワイヤ42A、42B、42C、42D、42E及び42Fと、支持基板固定部としての支持基板固定部51と、第1支持基板としての支持基板52A、52B及び52Cと、第2支持基板としての支持基板52D、52E及び52Fと、第1連結部としての連結部59Aと、第2連結部としての連結部59B
とによって光ピックアップとしての光ピックアップ6を構成する場合について述べた。
【0246】
本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる対物レンズと、可動部と、支持ワイヤと、支持基板固定部と、第1支持基板と、第2支持基板と、第1連結部と、第2連結部とによって光ピックアップを構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明は、種々の情報を記録し、また再生する種々の方式に対応する光ディスク装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0248】
1……光ディスク装置、2……筐体部、3……トレイ部、4T……ターンテーブル、4M……スピンドルモータ、5M……送りモータ、5S……リードスクリュー、6……光ピックアップ、7……電子回路基板、8……アクチュエータ、9、9B、9D……対物レンズ、10……レンズホルダ、11……制御部、12……駆動制御部、13……信号処理部、20……ベース、21、31……光集積素子、22、32……1/4波長板、23、33……コリメータレンズ、24……レーザダイオード、25……フォトディテクタ、26……積層プリズム、27……立上ミラー、28、128、228、328、428、528……対物レンズ駆動部、41、141、241、341、441、551……固定部、42A〜42F……支持ワイヤ、43……可動部、44……マグネット群、45……コイル群、50……固定台、51……支持基板固定部、52A〜52F……支持基板、53A〜53F……接続端子、54A〜54F……孔部、55……支持ワイヤ挿通部、56……先端部、57……根元部、58……腕部、59A、59B……連結部、61……ヨーク、61A……取付部、62、63……トラッキングマグネット、64、65……フォーカスマグネット、70……第1フォーカスコイル、71……可動部基板、72A〜72F……孔部、73、74……トラッキングコイル、75……第2フォーカスコイル、100……光ディスク、D……駆動信号、FT……トラッキング推力、FPO……推力発生点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、
上記対物レンズを保持する可動部と、
上記可動部に一端が固定され導電性を有する複数本の支持ワイヤと、
所定の固定台に取り付けられた支持基板固定部と、
上記対物レンズが上記光ディスクに対し離接する方向であるフォーカス方向における位置が互いに相違するよう、上記フォーカス方向と略直交する所定の第1方向へ上記支持基板固定部から延設され上記支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第1支持基板と、
上記フォーカス方向における位置が互いに相違するよう、上記第1方向の反対方向である第2方向へ上記支持基板固定部から延設され、上記第1支持基板に固定された支持ワイヤ以外の上記支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第2支持基板と、
上記支持基板固定部から上記第1方向へ所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の上記第1支持基板を連結する第1連結部と、
上記支持基板固定部から上記第2方向へ上記所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の上記第2支持基板を連結する第2連結部と
を有する光ピックアップ。
【請求項2】
上記固定台にはマグネットが取り付けられ、
上記可動部は上記マグネットの磁界内に少なくとも一部が含まれる位置にコイルが取り付けられ、
上記可動部の重心と、上記コイルが発生し上記可動部を上記第1方向及び上記第2方向へ移動させる推力とが、上記フォーカス方向と上記第1方向及び上記第2方向とに略直交する方向へ離隔している
請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
上記固定台は、上記支持ワイヤが挿通される支持ワイヤ挿通部が設けられ、
上記支持ワイヤ挿通部に充填され粘性を有する第1ダンプ剤をさらに有する
請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
上記固定台と上記第1支持基板及び上記第2支持基板との隙間に充填され粘性を有する第2ダンプ剤をさらに有する
請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
上記第1連結部は、上記フォーカス方向の両端に位置する上記第1支持基板を連結し、
上記第2連結部は、上記フォーカス方向の両端に位置する上記第2支持基板を連結する
請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
光源から出射された光ビームを光ディスクに集光する対物レンズと、
上記対物レンズを保持する可動部と、
上記可動部に一端が固定され導電性を有する複数本の支持ワイヤと、
所定の固定台に取り付けられた支持基板固定部と、
上記対物レンズが上記光ディスクに対し離接する方向であるフォーカス方向における位置が互いに相違するよう、上記フォーカス方向と略直交する所定の第1方向へ上記支持基板固定部から延設され上記支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第1支持基板と、
上記フォーカス方向における位置が互いに相違するよう、上記第1方向の反対方向である第2方向へ上記支持基板固定部から延設され、上記第1支持基板に固定された支持ワイヤ以外の上記支持ワイヤの他端が固定された、導電性を有する複数本の第2支持基板と、
上記支持基板固定部から上記第1方向へ所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の上記第1支持基板を連結する第1連結部と、
上記支持基板固定部から上記第2方向へ上記所定の距離を経た箇所において少なくとも2本の上記第2支持基板を連結する第2連結部と、
上記可動部を上記第1方向及び上記第2方向へ移動させる駆動制御部と
を有する光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−60404(P2011−60404A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211996(P2009−211996)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】