説明

光ピックアップ装置およびその製造方法

【課題】 光ピックアップ装置を静電破壊から防止するため、光ピックアップ装置の被覆板をネジで固定する際に、可撓性配線基板に設けたレーザーダイオード駆動回路の接地端子と被覆板とを導通させている。しかし、光ピックアップ装置(ハウジング)の薄型化によってネジを採用することができなくなり、静電気が放電できなくなる問題があった。
【解決手段】光ピックアップ装置のハウジング内でレーザーダイオード駆動回路を支持する導電性支持板に導通部を設け、導通部と可撓性配線基板に設けた接地端子を接触させ、導電性支持板と導電性被覆板を接触させる。導電性支持板はフック形状の固定部によりハウジングに固定され、フック形状の導通部は接地端子を挟持する。導電性被覆板はフックによりハウジングに固定され、ネジを用いることなく導電性被覆板が接地端子と導通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置およびその製造方法に係り、特に外形が薄型で静電破壊に強い光ピックアップ装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置は、発光素子(レーザーダイオード(laser diode))から放射される所定の波長のレーザー光を光ディスクに照射し、光ディスクの情報記録層で反射したレーザー光を受光素子で検出する機能を備えている。このことにより、光ディスクに対して、情報の読取動作または書込動作を行うことができる。
【0003】
また、光ピックアップ装置を構成する発光素子、受光素子、ハーフミラー等の光学素子は、合成樹脂材料を射出成型法によって一体成型したハウジングに内蔵される。ハウジングには被覆板が被せられ、被覆板とハウジングはネジにより固定される。被覆板は、例えば金属材料により構成され、ハウジング内を保護するなどのために設けられる(例えば特許文献1参照。))。
【0004】
更に、光ピックアップ装置が、製品として出荷されたり、光ピックアップ駆動装置(いわゆるトラバースメカや、光ディスク装置への組み込み作業などが行われる場合、作業者等によって、例えば被覆板を介して光ピックアップ装置に静電気が印加されると、ハウジング内部のレーザーダイオードが静電破壊(electrostatic discharge(ESD)破壊)するおそれがある。そこで、光ピックアップ装置の完成品の状態において比較的大面積で露出する被覆板を接地電位に固定することで、光ピックアップ装置500に印加された静電気を放電する技術が開発されている。
【0005】
図11は従来の光ピックアップ装置500の概要を示す図であり、図11(A)がハウジングの内部とフレキシブルプリント配線基板を主に示す斜視図であり、図11(B)がハウジングとこれを覆う被覆板を主に示す斜視図である。
【0006】
図11(A)を参照して、光ピックアップ装置500は、ハウジング502の内部の所定の収納領域506に、レーザーダイオードやハーフミラー等の光学素子、また対物レンズを駆動するアクチュエータ等(いずれも不図示)が組み込まれる。
【0007】
更に、不図示のレーザーダイオードを駆動するレーザーダイオード駆動回路(laser diode driver(LDD))がフレキシブルプリント配線基板(Flexible printed circuits(FPC))503に固着され、ハウジング502の主面を覆うようにFPC503が配置される。FPC503の端部には接地端子503Gが設けられる。
【0008】
図11(B)を参照して、被覆板505は、ステンレス鋼(SUS)などの金属基板からなる。被覆板505はハウジング502にフック507およびネジ508により固定され、これにより被覆板505の下方にFPC503が収納される。このとき、ネジ止め領域509の被覆板505下方に、FPC503の接地端子503Gを露出させ(図11(A))、ネジ508でこれらを共に固定する。これにより、被覆板505は接地端子503Gと導通し、接地電位となる。この構造により、作業者等から被覆板505を介して光ピックアップ装置500に静電気が印加された場合であっても、これを放電することができ、光ピックアップ装置のESD耐量を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−102826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光ディスク装置の小型化および薄型化に伴い、光ピックアップ装置の小型化、薄型化が市場要求となっている。光ピックアップ装置の薄型化の一例としては、従来5mm程度であったハウジング502の厚みt’(図11(B)参照)を3.5mm程度まで低減することが可能となっている。
【0011】
しかし、ハウジング502の薄型化によって、被覆板505とFPC503の接地端子503Gを導通させることが困難となった。
【0012】
ハウジング502の厚みt’が5mm程度であった図11の光ピックアップ装置500では、被覆板505とFPC503の接地端子503Gを共締めするネジ508のサイズは十分小さいものが要求される。また、合成樹脂材料が用いられて射出成形法により形成されたハウジング502の場合には、事前のタップ加工によるハウジング502の劣化も問題となる。これらのことから従来の光ピックアップ装置500においては、サイズも小さく、タップ加工を行うことなく穴あけのみでねじ込むことが可能なセルフタップネジ508が採用されている。
【0013】
しかし、ハウジング502の厚みt’を例えば3.5mm程度まで薄型化すると、セルフタップネジ508でさえも採用できなくなる。セルフタップネジ508を用いる場合は通常、締め付けトルク、繰り返し締め付けトルク、緩みトルクの評価を行い、規定値を満足するように下穴の条件(ハウジング502側の穴の深さ、径(大きさ))、ネジの種類を選定する。しかし、ハウジング502の厚みが薄いと、ネジ山の数を少なく(1個または2個)せざるを得ず、ネジとして機能しないものとなるからである。
【0014】
このため、ハウジング502の全体においてネジ(セルフタップネジ)508を不採用とする必要があり、従来のネジの共締めによる被覆板505とFPC503の接地端子503Gとの導通によって静電破壊を防止する手法が採用できない問題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、第1に、内部に光学素子が収納されるハウジングと、該ハウジングに収納され前記レーザー光を照射するレーザーダイオードと、前記ハウジング内に係止された導電性支持板と、該導電性支持板上に設けられたレーザーダイオード駆動回路と、前記レーザーダイオード駆動回路に電気的に接続する導電パターンと、前記レーザーダイオード駆動回路の接地端子とが形成された可撓性配線基板と、前記ハウジングの一主面の一部を被覆して該ハウジングに係止された導電性被覆板と、を具備し、前記導電性支持板は導通部を有し、前記接地端子は前記導通部に当接して保持され前記接地端子と前記導電性被覆板とが前記導電性支持板を介して導通されることにより解決するものである。
【0016】
第2に、導電パターンと接地端子とが設けられた可撓性配線基板にレーザーダイオード駆動回路を固着して前記接地端子に接続する工程と、ハウジングに光学素子を収納する工程と、レーザーダイオードを前記可撓性配線基板と電気的に接続する工程と、ハウジングに導通部を有する導電性支持板を係止する工程と、該導電性支持板上に前記レーザーダイオード駆動回路を配置し、前記可撓性配線基板の一端を前記導通部で挟持し、前記接地端子を前記導通部と接触させて前記レーザーダイオード駆動回路および前記レーザーダイオードを前記ハウジングに収納する工程と、前記ハウジングの一主面の一部を被覆する導電性被覆板を前記導電性支持板の一部と接触させて前記ハウジングに係止し、前記導電性支持板を介して前記導電性被覆板と前記接地端子とを導通させる工程と、を具備することにより解決するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0018】
第1に、ハウジングに係止される導電性被覆板とFPCの接地端子とを、ハウジングに係止される導電性支持板を介して導通させることができる。すなわち、導通部を有する導電性支持板をハウジングに係止し、FPCの接地端子を導通部に当接して保持させ、導電性被覆板を導電性支持板の一部に接触させてハウジングに係止することによって、導電性支持板を介して導電性被覆板とFPCの接地端子とを導通させる。つまり、導電性支持板と導電性被覆板のいずれも、フックによる引っ掛け、嵌合あるいは差込などで、ハウジングへ係止することで固定する。また、導電性支持板にフック形状の導通部を設け、導通部でFPCの接地端子を挟持することでこれらを接触させる。したがって、ネジを用いることなく導電性被覆板を介して印加される静電気の放電が従来通り可能となり、ハウジングの薄型化が進んだ場合であっても、静電破壊耐量の劣化を防止できる。
【0019】
第2に、ネジを用いなくても導通部において接地端子と十分に接触させることができる。導電性支持板は板金加工のため、FPCを挟持するフック形状の導通部の曲げ加工において、例えばFPC1枚分の厚みを挟持できる程度まで薄くすることは困難である。このため、FPCの端部を折り返した折り返し部を設け、折り返し部の表面に露出する位置に接地端子を設け、折り返し部を導通部で挟持する。FPCは折り返した状態から開いた状態に戻ろうとする復元力によって導通部に確実に当接するため、接地端子と導通部の接触が十分となる。
【0020】
第3に、フック形状を有する導通部の対向する2面のうち一方の面に、内側(対向する側)に突出する突起部を設ける。これにより、突起部は導通部の他の領域より対向面間の幅が薄くなり、薄い曲げ加工が困難な板金加工であってもFPCを挟持する幅を狭めることができる。開こうとする復元力を有する折り返し部は、挟持される幅が狭ければ、より確実に導通部と当接するので、導通部と接地端子を確実に接触させることができる。
【0021】
第4に、折り返し部の露出する両面に接地端子を設けることにより、導通部の内側両面で確実に接触させることができる。
【0022】
第5に、導通部の、突起部が設けられない他方の面は平坦面であり、これと接触する接地端子を大きく形成することにより、導通部との接触面積を十分確保することができる。
【0023】
第6に、導電性支持板はフック形状の固定部によってハウジングに固定され、固定部に導電性被覆板が接触してハウジングに固定されることによって、導電性被覆板と導電性支持板との接続領域を別途設けることなく、両者を接触させることができる。
【0024】
第7に、導電性支持板は、放熱性の高い金属材料で形成された、レーザーダイオード駆動回路の放熱板であり、薄型化した光ピックアップ装置において、新たな部品を追加することなく、静電破壊耐量の劣化を防止できる。
【0025】
第8に、導電性支持板(放熱板)を、放熱性の高い導電性被覆板と導通させるため、導電性被覆板を介しても放熱させることが可能となり、レーザーダイオード駆動回路の放熱性を高めることができる。
【0026】
第9に、本発明の製造方法によれば、ネジを用いることなく、導電性支持板と導電性被覆板をハウジングに固定でき、且つ導電性被覆板と接地端子を接続することができる。
【0027】
これにより、薄型のハウジングを有する光ピックアップ装置であっても、導電性被覆板と接地端子の導通が可能で且つ、ネジ締めの工数を削減できる光ピックアップ装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態の光ピックアップ装置の光学系を説明するための(A)概要図、(B)断面概要図である。
【図2】本実施形態の光ピックアップ装置を説明するための(A)ハウジングの斜視図、(B)組立後の全体の斜視図である。
【図3】本実施形態の光ピックアップ装置の導電性支持板を示す斜視図である。
【図4】本実施形態の光ピックアップ装置のFPCを示す平面図である。
【図5】本実施形態の光ピックアップ装置を説明するための回路概要図である。
【図6】本実施形態の光ピックアップ装置を説明するための(A)拡大斜視図、(B)側面図である。
【図7】本実施形態の光ピックアップ装置のトップカバーを示す斜視図である。
【図8】本実施形態の光ピックアップ装置を説明するための斜視図である。
【図9】本実施形態の光ピックアップ装置を示す拡大斜視図である。
【図10】本実施形態の光ピックアップ装置の製造方法を説明するためのフロー図である。
【図11】従来の光ピックアップ装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1から図10を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は、光ピックアップ装置10の光学系の概略を示す図であり、図1(A)が平面図である。図1(B)が図1(A)のa−a線断面図である。
【0031】
光ピックアップ装置10は、情報記録媒体(光ディスクD)にレーザー光を放射し、光ディスクDで反射したレーザー光を検出する。ここでは一例として、DVD(Digital Versatile Disk)規格の光ディスクD1及びCD(Compact Disk)規格の光ディスクD2にそれぞれ対応した2つのレーザー光を、1つの対物レンズ108で集光する光学系を備える光ピックアップ装置10について説明する。尚、光ディスクDは、光ディスクD1と光ディスクD2の総称である。
【0032】
光ピックアップ装置10は、レーザーダイオード101及びこの駆動回路115と各種光学素子がハウジング11内に収められている。
【0033】
図1(A)を参照して、レーザーダイオード(laser diode、以下LD)101は、波長が約630〜670nm(ナノメータ)のレーザー光を出射するDVD用レーザダイオード(DVD_LD)と、波長が約770〜805nmのレーザー光を出射するCD用レーザダイオード(CD_LD)を1つのパッケージ(例えばCANパッケージ)に収納したものである。DVD_LDとCD_LDは、別個のLDであってもよいし、1つの半導体基板にモノリシックに集積化されたものでもよい。
【0034】
駆動回路115は、LD101に電流を供給してこれを駆動させるレーザーダイオード駆動回路(以下LDD115)である。LDD115とLD101は、導電パターン171が形成された可撓性配線基板(Flexible Printed Circuit:FPC)17と接続する。つまり、LDD115とLD101とは導電パターン171によって電気的に接続される。LDD115からFPC17を経由して、LD101に電流が供給され、LD101からレーザー光が出射される。後に詳述するが、FPC17は端部の一主面に2つの接地端子(第1接地端子172、第2接地端子173)を有する。第1および第2接地端子172、173は、導電パターン171を介してLDD115およびLD101の接地端子と電気的に接続する。
【0035】
回折格子103は、LD101から出射されるDVD用レーザー光およびCD用レーザー光をそれぞれ、0次光、+1次光及び−1次光に分離する。
【0036】
ハーフミラー104は、例えば、一部のレーザー光を反射し、一部のレーザー光を透過させる。ハーフミラー104は、光学的特性に優れるガラスが用いられて形成されている。ハーフミラー104に代えて、例えば、ビームスプリッタが用いられてもよい。
【0037】
コリメータレンズ106は、ハーフミラー104側からこのレンズに入射された光を平行光にして、立ち上げミラー107側に出射させる。平行光とは、光線が広がらずにどこまでも平行に進む光を意味する。これに対し、拡散光とは、さまざまな方向に光を拡散させて照射させる光源の光を意味する。
【0038】
立ち上げミラー107は平行光に変換されたレーザー光が入射される位置に設けられており、レーザー光を対物レンズ108の方向(光ディスクDの信号記録面に垂直な方向:+Df方向)に反射させる。
【0039】
受光素子105は、レーザー光の一部が照射されるフロントモニタダイオードであり、レーザー光を検出してLD101の制御のためにフィードバックをかける。
【0040】
非点収差発生用光学素子110は、例えばセンサーレンズ、シリンドリカルレンズ、AS(astigmatism)板などであり、レーザー光に非点収差を発生させる。非点収差が発生されたレーザー光は、光検出器111に照射される。
【0041】
光検出器111は、光ディスクから反射されたレーザー光を受けて、その信号を電気信号に変え、光ディスクに記録された情報を検出する。光検出器111は、例えば、フォトダイオード(photo diode)と、集積回路(integrated circuit)とが組み合わせられたフォトダイオードIC(PDIC)である。
【0042】
フォトダイオードは、周知の4分割センサー等を構成し、光ディスクから反射されたレーザー光を受けて、その信号を電気信号に変え、これにより光ディスクDの信号記録層に記録されている信号の読み取り動作を行う。また電気信号は、非点収差法などによって生成されるフォーカスエラー信号や3ビーム法などによって生成されるトラッキングエラー信号を含む。フォーカスエラー信号によってフォーカシング制御動作が行われ、トラッキングエラー信号によってトラッキング制御動作が行われる。斯かる各種の信号生成方法およびこれらによる制御動作は、周知であるので、その説明は省略する。
【0043】
図1(B)を参照して、対物レンズ108は、立ち上げミラー107で反射されたレーザー光を光ディスクDの信号部へ集光させる。すなわち、LD101から出射したDVD用レーザー光は、対物レンズ108の集光動作によってDVD規格の光ディスクD1に設けられている信号記録層に集光スポットとして照射される。また、LD101から出射したCD用レーザー光は、対物レンズ108の集光動作によってCD規格の光ディスクD2に設けられている信号記録層に集光スポットとして照射される。対物レンズ108は、レンズホルダ(不図示)に装着され、レンズホルダ(不図示)は、アクチュエータ109によって移動可能に支持される。
【0044】
アクチュエータ109は、例えば、対物レンズ108が装着されるレンズホルダ(不図示)と、電流が流されることで発生する電磁力によりレンズホルダ(不図示)を駆動させる各コイルと、コイルに向かい合わせられ常に磁束を発生する磁石と、磁石が取り付けられるヨークとを備えて構成される。
【0045】
光ピックアップ装置10の集光動作は以下の通りである。
【0046】
LD101から出力されたレーザー光は、回折格子103を透過しハーフミラー104において略直角に反射され、コリメータレンズ106に入射する。レーザー光は立ち上げミラー107において略直角(Df方向)に反射され、対物レンズ108で集束されて、光ディスクDに照射される。
【0047】
また、LD101から出力されるレーザー光の一部は、ハーフミラー104を透過して受光素子105に照射される。
【0048】
光ディスクDで反射したレーザー光の戻り光は、対物レンズ108、立ち上げミラー107、コリメータレンズ106及びハーフミラー104を透過し、非点収差発生用光学素子110を透過して、光検出器111に照射される。
【0049】
尚、本実施形態の光ピックアップ装置10の光学系は上記したものに限らない。例えば、3つの異なる波長のレーザー光を出射する1つのレーザーダイオードが用いられ、3波長のレーザー光を1つの対物レンズに導く光学系であってもよいし、3つの個別のレーザーダイオードが用いられて1つの対物レンズまたは2つの対物レンズに導く光学系であってもよい。また1波長のみのレーザー光、2波長のレーザー光を1つまたは2つの対物レンズに導く光学系であってもよい。
【0050】
図2は光ピックアップ装置10を説明する斜視図であり、図2(A)は光学素子を収納する以前のハウジング11を示す斜視図であり、図2(B)は組み立て後の光ピックアップ装置10の全体を示す斜視図である。
【0051】
図2(A)を参照して、ハウジング11は、射出成形で一体的に形成された耐熱性を有する熱可塑性の合成樹脂材料から成る。射出成形が可能であって耐熱性を有する熱可塑性の合成樹脂材料として、例えば熱安定性、絶縁特性などの電気的特性、機械的特性および寸法安定性などに優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(poly phenylene sulfide:PPS)等のポリアリーレンサルファイド系樹脂、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(modified-Polyphenyleneether:m−PPE)、アクリロニトリル(Acrylonitrile)−ブタジエン(Butadiene)−スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等が採用される。本実施形態のハウジング11は、薄型化した光ピックアップ装置10に用いられるものであり、その厚み(Df方向の厚み)tは例えば3.5mm程度である。
【0052】
ハウジング11には、多数個の凹状の収納領域16が設けられ、これらの収納領域16に図1に示した各種光学素子(ここでは不図示)が収納される。
【0053】
収納領域16の一つに、凹状の底面と当接するように導電性支持板12が配置される。導電性支持板12はLDD支持部125にてLDD(不図示)を支持する。また、導電性支持板12は、端部に設けられた複数の固定部121a、121b、121cによってハウジング11に係止される。
【0054】
図2(B)を参照して、収納領域16には対物レンズ108を移動可能に保持するアクチュエータ109、および各種光学素子と電気的に接続された配線が設けられた回路基板113、およびレーザーダイオード(不図示)も収納され、ハウジング11の一主面(上面)に、ハウジング11の一部を被覆する導電性被覆板(トップカバー)15が設けられる。トップカバー15は、光ピックアップ装置10の取扱い時の作業者の接触や埃などから、各種光学素子を保護する。トップカバー15は、放熱性に優れる薄肉金属板(例えばステンレス鋼(SUS)が用いられてプレス成形されている。トップカバー15は、ネジを用いることなく、ハウジング11に係止される。
【0055】
ここで係止とは、一の部材と他の部材が、それぞれの形状を当接することでそれら自体で組み合って保持、固定される状態をいう。具体的には、一の部材のフックを他の部材に引っ掛けて固定する場合、一の部材の差込片を他の部材の差込口に差し込んで固定する場合、あるいは、一の部材の嵌合溝(または開口部)を他の部材の突起と嵌合させる場合などをいう。
【0056】
具体的には、導電性支持板12は、例えば、フック形状の固定部121a、溝形状の固定部121cをハウジング11の突起P1、P2とそれぞれと嵌合させ、差込片形状の固定部121bを、ハウジング11の差込口Iに差し込むことによって、ネジを用いること無くハウジングの収納領域16に固定される(図2(A))。また、導電性被覆板15は、その周囲に設けられた複数(例えば8個)のフック151によってネジを用いることなくハウジング11に固定される(図2(B))。
【0057】
ハウジング11の両側端には、第1支持部111および第2支持部112が設けられる。これらは、中心に略円筒形のガイド孔またはU字状のガイド溝などが形成されている。第1支持部111および第2支持部112は、光ピックアップ装置10を、光ディスクの径方向(±Dr方向)に駆動させる光ピックアップ支持装置(いわゆるトラバースメカ)の主ガイド軸および副ガイド軸がそれぞれ挿通されるものである。
【0058】
図3を参照して、本実施形態の導電性支持板12について説明する。図3は導電性支持板12の全体を示す斜視図であり、図3(A)が図2(A)に示した導電性支持板12の斜視図であり、図3(B)は図3(A)を−Df方向から見た斜視図である。
【0059】
導電性支持板12は、例えば放熱性の高い金属材料(例えばリン青銅、アルミニウム)の板金であり、LDD115の放熱板となる。導電性支持板12は、LDD支持部125、固定部121(121a、121b、121c)、導通部122を有する。
【0060】
LDD支持部125は、周辺がハウジング11の収納領域16の底面に沿う水平面であり、略中央にLDD115の搭載部125cが設けられる。搭載部125cは環状の凹部とその内側の凸部を含む。
【0061】
固定部121は、LDD支持部125の端部に切断加工や曲げ加工によって複数形成される。固定部121は、ハウジング11に設けた切欠き、差込口、突起あるいはハウジング11の隔壁などと係止されることで導電性支持板12をハウジング11に固定する。本実施形態では一例として、フック形状の第1固定部121a、差込片形状の第2固定部121b、嵌合溝形状の第3固定部121cが設けられる。
【0062】
第1固定部121aは、LDD支持部125の端部からLDD支持部125の主面に対して垂直な方向(+Df方向)に、ハウジング11の隔壁に沿って立ち上がり、所定(隔壁と同程度)の高さで180度(−Df方向に)折り返されたフック形状である。更にフック形状の外側面には、嵌合溝T1が設けられる。第1固定部121aはフックをハウジング11の隔壁に引っ掛け、且つ嵌合溝T1をハウジング11の突起P1に嵌合させることで導電性支持板12をハウジング11に係止する(図1(A)参照)。
【0063】
第2固定部121bは、LDD支持部125の主面を延在して、収納領域16より大きく例えば光ディスクDの径方向(Dr方向)に直交する方向(+Dt方向)に突出する差込片形状である。第2固定部121bはハウジング11の底部に設けられたスリット状の差込口(図6(A)、差込口I参照)にLDD支持部125の主面と略水平に差し込むことで導電性支持板12をハウジング11に係止する。
【0064】
第3固定部121cは、LDD支持部125の端部から隔壁に沿って+Df方向に立ち上がり、略中央に嵌合溝T2が設けられた形状である。第3固定部121cは隔壁の突起P2と嵌合溝T2を嵌合させることで導電性支持板12をハウジングに係止する(図1(A)参照)。
【0065】
このように、固定部121によって、導電性支持板12はネジを用いることなくハウジングに固定される。
【0066】
導通部122は、LDD支持部125の主面から+Df方向に上がる階段状に曲げ加工され、LDD支持部125の上段部として設けられ、その側辺を+Dr方向に延在して所定の位置で180度(−Dr方向に)折り曲げられた形状を有する。すなわち、導通部122は、LDD支持部125よりDf方向において高い位置に設けられ、Dr方向に挟み込みが可能なフック形状を有している。
【0067】
更に、導通部122の上側面(+Df側の面)122uにおいては、内側(対向する側:−Df方向)に突出する突起部122aが設けられる。一方、これと対向する導通部122の下側面(−Df側の面)122dは平坦である。導通部122は、そのフック形状でFPC(ここでは不図示)を挟持する。
【0068】
図4および図5を参照して、FPC17およびこれと接続するLDD115、LD101について説明する。
【0069】
図4は、FPC17を示す平面図であり、図4(A)が第1主面Sf1側のFPC17全体の平面図、図4(B)が第2主面Sf2側のFPC17全体の平面図である。また、図4(C)、図4(D)がそれぞれ図4(A)、図4(B)の折り返し部174付近の拡大平面図であり、図4(E)が折り返し部174の折り返しを開いた状態のFPC17の第1主面Sf1側の拡大平面図であり、図4(F)が図4(E)の裏面(第2主面Sf2)側の平面図である。更に、図5は、LDD115とLD101の接続関係を示す回路概略図である。
【0070】
FPC17は、一端が略L字状に分岐しており、略L字状の更に一端に折り返し部174が設けられる。折り返し部174は、折り返した状態でFPC17の第1主面Sf1側に露出する折り返し部第1主面Sf11(図4(A)、(C))と、FPC17の第2主面Sf2側に露出する、折り返し部第2主面Sf12(図4(B)、(D))を有する。折り返し部174には、他のFPC(以下サブFPC)17Sが半田等に固着され、サブFPC17Sの先端にLD101が半田等により固着される。折り返し部第1主面Sf11には、第1接続端子172が設けられ、折り返し部第2主面Sf12には第2接続端子173とLDD115が固着される。FPC17の第2主面Sf2には、配線となる複数の導電パターン171が設けられる(図4(B))。詳細な図示は省略するが、LD101は、サブFPC17Sに設けられた導電パターン(不図示)を介して、FPC17の導電パターン171と接続する。つまり、導電パターン171はLD101の外部接続端子、LDD115の外部接続端子とそれぞれ電気的に接続する。FPC17の他端は、コネクタ116と接続する(図4(A)(B))。
【0071】
図4(E)を参照して、折り返し部174を開いてFPC17の第1主面Sf1側から見ると折り返し部第1主面Sf11と折り返し部第2主面Sf12が露出する。折り返し部第1主面Sf11の端部には、第1接続端子172が露出し、折り返し部第2主面Sf12には、第2接続端子173とLDD115が露出する。
【0072】
第1接地端子172および第2接地端子173はクリーム半田などの導電性ペーストによって所定の形状に形成される。第2接地端子173は第1接地端子172より大きく、矩形状に設けられる。
【0073】
また、図4(F)を参照して、折り返し部174を開いてFPC17の第2主面Sf2側から見ると折り返し部第1主面Sf11の裏面Sf13と、折り返し部第2主面Sf12の裏面Sf14が露出する。折り返し部第1主面Sf11の裏面Sf13には、サブFPC17Sが半田等によって固着される。サブFPC17Sと接続するLD101(破線)は、図4(F)では、サブFPC17Sと、FPC17の第2主面Sf2の間に挟まれるように配置される。
【0074】
折り返し部174は、図4(E)に示す折り返し線174LAで山折り(図4(F)では折り返し線174LBで谷折り)される。つまり、折り返し部第1主面Sf11の裏面Sf13と、折り返し部第2主面Sf12の裏面Sf14が内側となるように180度折り返され、図4(C)(D)の如く折り返し部第1主面Sf11と折り返し部第2主面Sf12が両表面に露出する。
【0075】
図4(A)(C)(E)を参照して、FPC17を第1主面Sf1側から見ると、サブFPC17S(破線)は、FPC17の下方に配置され、LD101(破線)は、FPC17とサブFPC17Sの間に配置される。また、図4(B)(D)(F)を参照して、FPC17を第2主面Sf2側から見ると、サブFPC17Sは、FPC17の上方に配置され、LD101(破線)は、FPC17とサブFPC17Sの間に配置される。
【0076】
図5および図1(A)を参照して、第1接地端子172、第2接地端子173は、いずれもLDD115の外部接続端子のうち外部接地端子LDD_GNDと接続する。詳細には、LD101は、DVD_LD101dとCD_LD101cを備え、これらのカソードが外部接地端子LD_GNDとして導出する。LD101の外部設置端子LD_GNDはFPC17の導電パターン171を介してLDD115の外部接続端子と接続し、LDD115の外部接地端子LDD_GNDが導電パターン171を介して第1接地端子172、第2接地端子173と接続する。
【0077】
尚、FPC17の形状、およびFPC17上のLDD115およびLD101の配置及び接続は一例であり、図示したものに限らない。本実施形態では、FPC17の端部に折り返し部174が設けられ、折り返し部174の少なくとも一方の表面に接地端子が設けられればよい。例えば、折り返し部174の一方の表面(例えば折り返し部第1主面Sf11)側に第1接地端子172および第2接地端子173が設けられてもよいし、接地端子は1つであってもよい。しかし、折り返し部174の両表面(Sf11、Sf12)にそれぞれ第1接地端子172と第2接地端子173とを設けることが望ましく、それについては後述する。
【0078】
図6を参照して、第1接地端子172および第2接地端子173と、導電性支持板12の導通部122とのコンタクトについて説明する。
【0079】
図6は、組立後の導電性支持板12とFPC17の一部を示す図であり、図6(A)がFPC17を挟持する導通部122の斜視図であり、図6(B)がLDD115を支持する導電性支持板12を示す図であり、図6(A)を−Dr方向から見た側面図である。
【0080】
導電性支持板12は、固定部121a、121cをハウジング11の突起(不図示)と嵌合させ、固定部121bをハウジング11の差込口Iに差し込んでハウジング11に係止される。
【0081】
導電性支持板12の搭載部125cは、放熱剤(不図示)が納められ、その上にLDD115が配置される。LDD115の駆動による発熱は、放熱剤と導電性支持板12を介して外部に放熱される。
【0082】
LDD15の各外部接続端子(外部接地端子LDD_GNDを含む)はFPC17の導電パターン(不図示)と接続する。FPC17端部には第1接地端子172、第2接地端子173が両表面に露出するように折り返し部174が設けられる。折り返し部174は、フック形状の導通部122フックにDr方向に差し込まれ、これにより挟持される。
【0083】
FPC17の第1接地端子172および第2接地端子173は、折り返し部174を導通部122で挟持することにより、導電性支持板12の導通部122とコンタクトする。
【0084】
すなわち、第1接地端子172、第2接地端子173は折り返し部174の2つの表面(折り返し部第1主面Sf11、折り返し部第2主面Sf12)にそれぞれ露出しており、導通部122の内壁と接触する。導通部122の上側面122uでは突起部122aが第1接地端子172と接触し、下側面122dでは内壁の平坦面が第2接地端子173と接触する。
【0085】
導電性支持板12は板金加工のため、FPC17を挟持するフック形状の導通部122の曲げ加工において、その厚み(上側面122uと下側面122dの距離)t1を、例えばFPC17の1枚分の厚みを挟持できる程度まで薄く曲げ加工することは困難である。このため、FPC17の端部に折り返し部174を設け、折り返し部174の露出する2表面に第1接地端子172、第2接地端子173を設けて折り返し部174を導通部122で挟持する。FPC17は折り返した(折りたたんだ)状態で弾性変形しており、開いた状態に戻ろうとする復元力によって導通部122内壁への当接圧が得られている。つまり、導通部122と、第1接地端子172、第2接地端子173とを確実に接触させることができる。
【0086】
更に、導通部122に突起部122aを設けることにより、突起部122aの対向面間の厚みt2は導通部122の他の領域の厚みt1より薄くなり、薄い曲げ加工が困難な板金加工であってもFPC17を挟持する厚みを狭めることができる。折り返し部174は、挟持される厚みが狭ければ、より確実に導通部122と当接するので、導通部122と第1接地端子172、第2接地端子173を確実に接触させることができる。
【0087】
突起部122aは、半円筒形状または半円形状に設けられ、導通部122(上側面122u)との接触面積が小さくなる。このため、折り返し部第1主面Sf11のみならず、折り返し部第2主面Sf12にも第2接地端子173を設ける。そして、第2接地端子173は第1接地端子172より大面積の例えば矩形状とし(図4(E)参照)、導通部122の下側面122dを平坦面とする。これにより、第2接地端子173と導通部122の接触面積を十分確保することができる。
【0088】
尚、導通部122がLDD支持部125の主面から隆起する高さは例えば、LDD115の厚みと同程度である(図6(B))。また、FPC17は、ハウジング11の主面上で所望の形状に折りたたまれるなどして、一部がハウジング11内に収納される。
【0089】
次に、図7から図9を参照して、トップカバー15と、FPC17の接地端子172、173との接続について、説明する。
【0090】
図7は、本実施形態のトップカバー15を示す斜視図であり、図7(A)がトップカバー15の上面側の斜視図であり、図7(B)がその裏面(−Df方向)から見た斜視図である。
【0091】
トップカバー15はその周囲に複数(例えば8個)のフック151(151a〜151h)が形成される。フック151は、全て同一形状である必要はなく、それぞれにハウジング11と係止が可能な形状を有している。例えば、フック151aは例えば、ハウジング11の主面からハウジング11の側面(隔壁)に沿って略垂直に折り曲げられ、側面(隔壁)に沿う面に開口部Oが設けられる。開口部Oはフック151aの少なくとも一端が切除された切欠きでもよいし、フック151aの端部をリング状に残すように略中央をくり貫いたものであってもよい。開口部Oは、これと対応する位置のハウジング11の側面(隔壁)に設けられた突起(ここでは不図示)と嵌合する。
【0092】
またフック151は、コの字状(U字状)(151b、151c、151e、151f)や略L字状(151g、151h)に設けられてもよく、ハウジング11隔壁またはその一部をその厚み方向に挟んだり、ハウジング11の突起に差し込むなどして固定される。
【0093】
図8は、ハウジング11に取り付けられたFPC17およびトップカバー15を示す斜視図である。図8(A)がFPC17を取り付けた状態の斜視図であり、図8(B)がトップカバー15を取り付けた状態の斜視図である。尚、収納領域16に収納されている光学素子、アクチュエータ等の図示はここでは省略している。図9は、図8の第1固定部121a部分の拡大斜視図である。図9(A)は、図8(B)をDr方向から見た斜視図であり、図9(B)は、図9(A)のハウジング11を一部略して第1固定部121aとトップカバー15の接触の様子を示す斜視図である。また、図9(C)は図9(B)の矢印方向から見た斜視図である。
【0094】
まず、図8(A)において、予め導電性支持板12はフック形状の第1固定部121aをハウジング11の隔壁に引っ掛けて固定される(図1(A)参照)。第1固定部121aは更にフック形状の外側の嵌合溝T1がハウジングの突起P1と嵌合する。
【0095】
FPC17は、取り付け孔Hにハウジング11の突起P3が挿通され、ハウジング11の主面上で所望の形状に折りたたまれるなどして、一部がハウジング11内に収納される。FPC17にはLDD115が固着されており、そのLDD15は、放熱材が収納された導電性支持材12の搭載部(ここでは不図示)上に載置される(図6(B)参照)。
【0096】
その後、図8(B)の如く、トップカバー15をハウジング11に係止する。トップカバー15は、複数のフック151a〜151hによってネジを用いることなく、ハウジング11に固定される。
【0097】
図9を参照して、フック151aは、導電性支持板12の第1固定部121aと重畳する位置に設けられる。導電性支持板12は、フック形状の第1固定部121aをハウジング11の隔壁に引っ掛けて固定されており、隔壁には第1固定部121aの一部が露出している。フック151aは第1固定部121aを覆うようにしてハウジング11に取り付けられる。ハウジング11の突起P1は第1固定部121aより更に突出しており、フック151aの開口部Oとハウジング11の突起P1とが嵌合する。
【0098】
つまり、トップカバー15をハウジング11に固定することによって、トップカバー15のフック151aと第1固定部121aが接触する(図9(B)(C))。
【0099】
このように、固定部121の少なくとも1つ(ここでは第1固定部121a)は、トップカバー15との接触部となる。従って第1固定部121aは、トップカバー15との接触面積を十分に確保できる形状であることが望ましい。つまり、第1固定部121aはフック形状に限らないが、LDD支持部125の主面に対して略垂直に、ハウジング11の隔壁に沿った形状で設けることにより、ハウジング11主面の平面視において接触のための面積を別途確保することなく、隔壁面においてトップカバー15との接触面積を確保できる。
【0100】
このようにして、トップカバー15が、導電性支持板12の第1固定部121aと導通部122とを介して、FPC17の第1接地端子172、第2接地端子173と導通する(図6(B))。つまり、ネジを用いることなく、トップカバー15を接地することができ、トップカバー15に印加された静電気を放電することができる。
【0101】
また、LDD115の放熱板である導電性支持板12がトップカバー15と導通するので、LDD115で発生した熱をトップカバー15を介して放熱することができ、放熱性を向上させることができる。
【0102】
尚、導電性支持板12は全体が導電性を供える場合、トップカバー15は、導電性支持板12のいずれかの領域と接触すれば、トップカバー15と導電性支持板12の導通が可能である。つまり、上記の例では、第1固定部121aとトップカバー15のフック151(151a)を接触させる場合を例に説明したが、これに限るものではなく、他の領域で接触してもよい。しかし、導電性支持板12とトップカバー15は、いずれもハウジング11と係止するので、その係止手段であるフックを重畳させて両者をコンタクトさせることにより、別異の接触領域を確保する必要がなくなる利点を有する。
【0103】
また、本実施形態では、トップカバー15が導電性支持板12の第1固定部121aと接触し、導通部122がFPC17の第1接地端子172、第2接地端子173と接触してトップカバー15と接地端子とが導通する場合を例に説明したが、トップカバー15が導電性支持板12を介して接地端子と導通する構成であれば、上記の実施形態に限らず、例えば、トップカバー15の一部と導通部122とが直接、接触する構成であってもよい。
【0104】
上記の実施形態では、トップカバー15と導通部122の間に、アクチュエータ(不図示)に接続する他のFPC17’が配置される図8(A))。従って、導通部122の上方にトップカバー15が延在するが(図8参照)、他のFPC17’により絶縁されて、トップカバー15と導通部122の接触が完全でなくなる。つまり、導電性支持板12は、第1固定部121aと導通部122の2箇所で、トップカバー15と第1接地端子172、第2接地端子173を導通させている。
【0105】
しかし、導電性支持板12は一箇所(導通部122)で、トップカバー15と接地端子を直接的に導通させることもできる。例えば、他のFPC17’の形状や、トップカバー15の下方に折りたたんで収納される形状や位置を工夫することにより、導通部122上に他のFPC17’が配置されないようにすれば、導通部122とトップカバー15は直接、接触が可能となる。この場合には、平面視において、導通部122の1箇所で、トップカバー15と接地端子を導通させることができる。
【0106】
更に、本実施形態の導電性支持板12の第1固定部121aは、ハウジング11と係止して固定されていればその形状はフック形状に限らない。例えば第3固定部121cの如く嵌合溝形状とし、ハウジング11隔壁の突起と嵌合させて導電性支持板12を固定し、第1固定部121aの内側(収納領域の内壁)にトップカバー15のフック151を当接させて導通させるものであってもよい。
【0107】
また、導電性支持板12は、放熱性が良好で、第1固定部121aと導通部122が導通するようなものであれば、板金に限らない。例えば放熱性の良好なセラミックや樹脂を用いて、印刷等により第1固定部および導通部を金属で被覆し、これらを接続する導電パターンを形成したものなどであってもよい。しかし、軽量で加工性に優れ、低廉であることを考慮すると板金によるものが好適である。
【0108】
図10のフロー図および既述の図面を適宜参照して、本実施形態の光ピックアップ装置10の製造方法を説明する。
【0109】
光ピックアップ装置10は、まず、図4に示すFPC17にLDD115などの電子部品(LD101を除く)を一括で実装する(ステップS1)。FPC17は既述の如く、導電パターン171と第1接地端子172、第2接地端子173が設けられており、これとLDD115の外部接地端子LDD_GNDが接続される。
【0110】
次に、樹脂材料を一体成型したハウジング11(図2参照)の収納領域16に、図1に示す複数個の光学素子等を固着する(ステップS2)。
【0111】
その後、FPC17のサブFPC17Sに、LD101を半田等により固着する(ステップS3):図4参照)。これにより、LD101はサブFPC17Sを介してFPC17の導電パターン171と電気的に接続され、LDD115と接続される。
【0112】
次に、ハウジング11の収納領域16の一つに、導電性支持板12を係止する(ステップS4)。導電性支持板12は、第2固定部121bを差し込み口に差し込み、第1固定部121aのフックをハウジング11の隔壁に引っ掛けると共に、第3固定部121cの嵌合溝Tをハウジング11の突起P2と嵌合させて、ハウジング11に係止する。導電性支持板12は、ネジを用いることなくハウジング11に固定される。
【0113】
その後、FPC17をハウジング11に取り付ける。所定のパターンが形成された回路基板113をハウジング11に固定し、その後にFPC17とともにLD101、LDD115をハウジング11内に収納する。LDD115は、放熱材が収納された搭載部125c上に載置される(図6(B))。LD101、受光素子105およびLDD115を回路基板113と接続する。
【0114】
FPC17は一端に設けられた第1接地端子172、第2接地端子173が露出するように折り返して折り返し部174とし、折り返し部174を導通部122で挟持する(ステップS5)。折り曲げて弾性変形したFPC17の復元力によって、第1接地端子172、第2接地端子173が導通部122内壁と当接する(図6)。
【0115】
FPC17は、取り付け孔Hにハウジング11の突起P3が挿通され、ハウジング11の主面上で所望の形状に折りたたまれるなどして、一部がハウジング11内に収納される。その後、トップカバー15をハウジング11に係止する。トップカバー15は、複数のフック151によってネジを用いることなく、ハウジング11に固定される。
【0116】
また、別途組み立てられ、対物レンズ108を移動可能な状態で支持するアクチュエータ109(図1(B)参照)を、ハウジング11の収納領域16に取り付ける。その後、PDIC111や、立ち上げミラー107等の光学素子の位置を確認する。
【0117】
その後、トップカバー15のフック151をハウジング11に係止する。このとき、第1固定部121aはトップカバー15のフック151aで覆われてこれと接触する。
【0118】
これにより、導通部122を介して、トップカバー15とFPC17の第1接地端子172、第2接地端子173が導通する(ステップS6)。このようにして、図1に示す光ピックアップ装置10が製造される。
【0119】
更に、図1(A)に示すハウジング11の第1支持部111および第2支持部112に、主ガイド軸および副ガイド軸をそれぞれ挿通させるなどし、主ガイド軸および副ガイド軸ガイド軸の両端部を枠状のシャーシで支持することにより、光ピックアップ支持装置が構成される。更に、このような構成の光ピックアップ支持装置を、筐体に内蔵させることにより光ディスク装置が構成される。
【符号の説明】
【0120】
10 光ピックアップ装置
11 ハウジング
12 導電性支持板
121 固定部
121a 第1固定部
121b 第2固定部
121c 第3固定部
122 導通部
15 導電性被覆板
151、151a、151b、151c、151d フック
151e、151f、151g、151h フック
17 FPC
171 導電パターン
172 第1接地端子
173 第2接地端子
101 LD
103 回折格子
104 ハーフミラー
105 受光素子
106 コリメータレンズ
107 立ち上げミラー
108 対物レンズ
109 アクチュエータ
110 非点収差発生用光学素子
111 光検出器
113 回路基板
115 レーザーダイオード駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置であって、
内部に光学素子が収納されるハウジングと、
該ハウジングに収納され前記レーザー光を照射するレーザーダイオードと、
前記ハウジング内に係止された導電性支持板と、
該導電性支持板上に設けられたレーザーダイオード駆動回路と、
前記レーザーダイオード駆動回路に電気的に接続する導電パターンと、前記レーザーダイオード駆動回路の接地端子とが形成された可撓性配線基板と、
前記ハウジングの一主面の一部を被覆して該ハウジングに係止された導電性被覆板と、
を具備し、
前記導電性支持板は導通部を有し、前記接地端子は前記導通部に当接して保持され前記接地端子と前記導電性被覆板とが前記導電性支持板を介して導通されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記導通部はフック形状を有し、前記導通部は前記接地端子を挟持することを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記可撓性基板は端部に折り返し部が設けられ、前記接地端子は前記折り返し部の表面に露出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記導通部は突起部が設けられ、該突起部が前記接続端子と接触することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
前記折り返し部の他の表面に他の接続端子が露出することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
前記他の接続端子が接触する前記導通部は略平坦面であることを特徴とする請求項5に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
前記導電性支持板はフック形状の固定部によって前記ハウジングに固定され、前記固定部に前記導電性被覆板が接触することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
前記導電性支持板は、金属板であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
前記導電性支持板は、前記レーザーダイオード駆動回路の放熱板であることを特徴とする請求項8に記載の光ピックアップ装置。
【請求項10】
前記導電性被覆板は複数のフックによって前記ハウジングへ固定されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載の光ピックアップ装置。
【請求項11】
情報記録媒体にレーザー光を放射し、前記情報記録媒体で反射した前記レーザー光を検出する光ピックアップ装置の製造方法であって、
導電パターンと接地端子とが設けられた可撓性配線基板にレーザーダイオード駆動回路を固着して前記接地端子に接続する工程と、
ハウジングに光学素子を収納する工程と、
レーザーダイオードを前記可撓性配線基板と電気的に接続する工程と、
ハウジングに導通部を有する導電性支持板を係止する工程と、
該導電性支持板上に前記レーザーダイオード駆動回路を配置し、前記可撓性配線基板の一端を前記導通部で挟持し、前記接地端子を前記導通部と接触させて前記レーザーダイオード駆動回路および前記レーザーダイオードを前記ハウジングに収納する工程と、
前記ハウジングの一主面の一部を被覆する導電性被覆板を前記導電性支持板の一部と接触させて前記ハウジングに係止し、前記導電性支持板を介して前記導電性被覆板と前記接地端子とを導通させる工程と、
を具備することを特徴とする光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項12】
前記可撓性配線基板の一端を折り返して表面に前記接地端子を露出させ、フック形状の前記導通部に挟み込むことを特徴とする請求項11に記載の光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項13】
前記導電性支持板は、フック形状の固定部によって前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の光ピックアップ装置の製造方法。
【請求項14】
前記導電性被覆板は、複数のフックによって前記ハウジングに固定されることを特徴とする請求項11から請求項13のいずれかに記載の光ピックアップ装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate