説明

光ファイバアレイ及びその製造方法

【課題】耐熱性及び柔軟性に優れた光ファイバアレイを提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバ素線が整列、固定化された光ファイバアレイであって、前記光ファイバ素線が、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含む硬化物により形成された光ファイバ素線である。



(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整列・固定化された複数本の光ファイバ(光ファイバ素線)を備える光ファイバアレイ及びその製造方法に関する。より詳しくは、耐熱性及び柔軟性に優れた光ファイバアレイ、及び生産性に優れた光ファイバアレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信速度の高速化に対応して、従来の電気配線に変わる通信手段として、光配線に注目が集められている。このような光配線としては、複数の光ファイバ素線が配列・固定化された光ファイバアレイが使用されている。このような光ファイバアレイを構成する光ファイバ素線としては、石英製の光ファイバが広く使用されている。
【0003】
素子の高集積化に伴い、狭いスペースに複雑な形状で光ファイバアレイを配置させることの必要性が高まってきている。しかしながら、従来の石英製の光ファイバ素線を有する光ファイバアレイは十分な柔軟性を有しないため、上記要求に応えることが難しいという問題を有していた。
【0004】
石英製の光ファイバ素線の代わりに、柔軟性の付与が可能な樹脂製の光ファイバ素線を使用した光ファイバアレイを光配線として使用する検討が進められている。しかしながら、樹脂製の光ファイバ素線は、十分な柔軟性を有するものの、リフロー工程等の熱履歴を受けた場合の樹脂の劣化等により、所望の性能を発揮できないという課題を有していた。
【0005】
一方、上記光ファイバアレイの製造においては、該光ファイバアレイを構成する光ファイバ素線を整列(配列)させ、これを固定化(保持)させる必要がある。このような光ファイバアレイの製造方法としては、例えば、予め光ファイバ素線を配列させるための溝を形成した基板(フィルム)上に、光ファイバ素線を接着剤等で固定する方法が知られている(特許文献1参照)。また、他の例として、複数の案内溝が形成された光ファイバ素線整列治具を用いて整列及び保持された複数の光ファイバ素線を、仮固定用樹脂により保持し、次いで所定の基板上に転写する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−110413号公報
【特許文献2】特開2003−156651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、表面に予め光ファイバ素線を固定するための溝を形成した基板を用いる特許文献1に記載の方法では、固定のための基板全てに溝を形成する必要があり、異なる形状(構造)の光ファイバアレイを製造する際には、所定の溝を形成した基板を準備する必要がある。また、光ファイバ素線配列用治具を用いる方法は、基板の加工を行う必要がなく、光ファイバアレイの設計の自由度は大幅に改善されているものの、複雑なステップを経る必要があるため、光ファイバアレイを連続で製造することは困難であり、生産性の観点で十分な方法ではなかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、耐熱性及び柔軟性に優れた光ファイバアレイを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、簡易な工程により、高品質の光ファイバアレイを連続的に製造できる光ファイバアレイの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意改良を重ねた結果、特定の構造を有する材料(化合物)をコア及び/又はクラッドの構成単位として含む光ファイバ素線を配列させることにより、耐熱性及び柔軟性に優れた光ファイバアレイが得られることを見出した。
また、特定の構造を有するロールを用いて、光ファイバ素線を表面に粘着性を付与した基板上に連続的に配列(整列)させる方法により、光ファイバ素線の整列間隔の精度を低下させることなく、連続的に光ファイバアレイを低コストで製造できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、複数本の光ファイバ素線が整列、固定化された光ファイバアレイであって、前記光ファイバ素線が、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含む硬化物により形成された光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバアレイを提供する。
【化1】

(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)
【0011】
また、本発明は、粘着性を有する光硬化性組成物層を表面に有する基板の前記光硬化性組成物層表面に、ファイバ素線の案内構造を有するロールを用いて複数の光ファイバ素線を配列させ、その後、前記光硬化性組成物層に光を照射して硬化させて前記光ファイバ素線を固定することを特徴とする光ファイバアレイの製造方法を提供する。
【0012】
さらに、ベースフィルム上に光硬化性組成物aを塗布した後、さらに光照射したものを基板として用いる前記の光ファイバアレイの製造方法を提供する。
【0013】
さらに、前記光硬化性組成物層表面に前記光ファイバ素線を配列させた後、さらに前記光硬化性組成物層及び前記光ファイバ素線上に光硬化性組成物bを塗布して光硬化性組成物層を形成し、その後、光を照射して板状の光ファイバアレイを得る前記の光ファイバアレイの製造方法を提供する。
【0014】
さらに、前記光ファイバ素線が、コアのみからなる単層構造の光ファイバ素線である前記の光ファイバアレイの製造方法を提供する。
【0015】
さらに、前記光ファイバ素線が、コア及びクラッドを有する複層構造の光ファイバ素線である前記の光ファイバアレイの製造方法を提供する。
【0016】
さらに、前記クラッドが光硬化性組成物の硬化物より形成されており、前記光硬化性組成物層を構成する光硬化性組成物aとして、前記クラッドを形成する光硬化性組成物と同じ光硬化性組成物を用いる前記の光ファイバアレイの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ファイバアレイは上記構成を有するため、耐熱性及び柔軟性に優れる。このため、加熱や変形等による光損失が生じにくく、製品中で高い性能及び信頼性を発揮し、様々な用途に適用できる。また、本発明の光ファイバアレイの製造方法は上記構成を有するため、光ファイバ素線の整列間隔の精度を低下させることなく、連続的に高品質の光ファイバアレイを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の光ファイバアレイの一例を示す概略図(断面図)である。
【図2】図2は、本発明の光ファイバアレイの製造方法Aの一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の光ファイバアレイの製造方法Aで用いられる溝付きロールの一例を示す概略図(斜視図)である。
【図4】図4は、実施例2にて得られる光ファイバアレイの製造方法を示す概略図である。
【図5】図5は、実施例3にて得られる光ファイバアレイの製造方法を示す概略図である。
【図6】図6は、製造例3にて用いた光ファイバ素線の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[本発明の光ファイバアレイ]
本発明の光ファイバアレイは、複数本の光ファイバ素線が整列、固定化された構造を有する素子(光学素子)である。図1は、本発明の光ファイバアレイの一例を示す概略図(断面図;光ファイバ素線の光伝送方向に直交する断面図)である。図1において、1は光ファイバアレイ、2は光ファイバ素線、3は封止材、4はベースフィルム、5はカバーフィルムを表す。但し、本発明の光ファイバアレイは、複数本の光ファイバ素線が整列(配列)・固定化(保持)されたものであれば特に限定されず、図1の構造に限定されるものではない。
【0020】
[光ファイバ素線]
本発明の光ファイバアレイにおける光ファイバ素線(「本発明の光ファイバ素線」と称する場合がある)は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含む硬化物により形成された光ファイバ素線である。
【化2】

(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)
【0021】
より具体的には、本発明の光ファイバ素線は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくはラジカル重合性を有する他の化合物とともにラジカル重合して得られるカチオン反応性樹脂(「本発明のカチオン反応性樹脂」と称する場合がある)を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物の硬化物、又は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくはカチオン重合性を有する他の化合物とともにカチオン重合して得られるラジカル反応性樹脂(「本発明のラジカル反応性樹脂」と称する場合がある)を必須成分とするラジカル反応性樹脂組成物の硬化物より形成された光ファイバ素線であることが好ましい。特に、本発明の光ファイバ素線は、本発明のカチオン反応性樹脂を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物の硬化物より形成された光ファイバ素線であることが好ましい。
【0022】
本発明の光ファイバ素線は、コアのみからなる単層構造の光ファイバ素線であってもよいし、コア及び該コアを被覆するクラッドを有する光ファイバ素線(「コア−クラッド構造を有する光ファイバ」と称する場合がある)であってもよい。上記コア−クラッド構造を有する光ファイバとしては、コアと該コアを被覆する一層のクラッド(クラッド層)からなる二重構造(二層構造)を有するものであってもよいし、コアと該コアを被覆する二層以上の層構成を有するクラッドからなる三層以上の多層構造を有するものであってもよい。
【0023】
本発明の光ファイバ素線がコア−クラッド構造を有する光ファイバである場合、コア及び/又はクラッド(コア及びクラッドのいずれか一方又は両方)が、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含む硬化物より形成されていればよい。中でも、耐熱性及び柔軟性の観点で、特に、コアとクラッドのいずれもが式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含む硬化物より形成されていることが好ましい。
【0024】
[オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物]
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、本発明の光ファイバ素線のコア及び/又はクラッドの必須の構成成分(構成モノマー成分)である。
【0025】
式(1)中、R1、R2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状C1-6(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC3-6(好ましくはC3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R1としては、水素原子又はメチル基が好ましい。また、上記R2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0026】
式(1)中、Aは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。中でも、上記Aとしては、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた硬化物を形成できる点で、下記式(a1)で表される直鎖状アルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状アルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
【化3】

[式(a1)中、n1は2以上の整数を示す。式(a2)中、R3、R4、R7、R8は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R5、R6は同一又は異なってアルキル基を示す。n2は0以上の整数を示し、n2が2以上の整数の場合、2以上のR7、R8はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい]
【0027】
式(a1)中のn1は2以上の整数を示し、特に限定されないが、2〜20の整数が好ましく、特に好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0028】
式(a2)中のR3、R4、R5、R6、R7、R8におけるアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状C1-4(好ましくはC1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などの分岐鎖状のC3-4(好ましくはC3)アルキル基などが挙げられる。中でも、上記R3、R4としては水素原子が好ましい。また、上記R5、R6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
【0029】
式(a2)中のn2は0以上の整数を示し、特に限定されないが、1〜20の整数が好ましく、特に好ましくは1〜10の整数である。
【0030】
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化4】

【0031】
式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
【化5】

(式(2)中、R2は前記に同じ。Xは脱離性基を示す)
で表される化合物と、下記式(3)
HO−A−OH (3)
(式(3)中、Aは前記に同じ)
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
【化6】

(式(4)中、R2、Aは前記に同じ)
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
【0032】
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基等のカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基が挙げられる。
【0033】
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
上記「液相一相系」とは、液相が2相以上あるものではなく1相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒等が挙げられる。
【0035】
[カチオン反応性樹脂]
本発明のカチオン反応性樹脂(カチオン硬化性樹脂)は、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物(「他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある)とともに、ラジカル重合することによって得られる。なお、上記「他のラジカル重合性化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物を意味する。
【0036】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表される構成単位を有するカチオン反応性樹脂が得られる。なお、ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化7】

(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
【0037】
本発明のカチオン反応性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成することができる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物をラジカル共重合することにより得られる樹脂が好ましく、カチオン反応性樹脂を構成する全モノマー(100重量%)のうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の割合が0.1重量%以上100重量%未満(好ましくは1〜99重量%、より好ましくは10〜80重量%、さらに好ましくは10〜50重量%)となるように、ラジカル共重合して得られるカチオン反応性樹脂が特に好ましい。
【0038】
上記他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0039】
(メタ)アクリロイル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0040】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0041】
(メタ)アクリロイルアミノ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、アクリル酸モルホリン−4−イル、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0042】
ビニルエーテル基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0043】
ビニルアリール基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、(4−ビニルフェニル)ボラン酸、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、4−エテニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボラン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、p−ビニルフェニルホウ酸、p−ビニルフェニルボロン酸、N−(4−ビニルフェニル)マレインイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレインイミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0044】
ビニルオキシカルボニル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0045】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してラジカル重合反応をさらに進行させてもよい。
【0047】
ラジカル重合反応は一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエン等を挙げられる。
【0048】
また、ラジカル重合反応においては、重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
【0049】
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0050】
本発明のカチオン反応性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン反応性樹脂を含む樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
【0051】
本発明のカチオン反応性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン反応性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン反応性樹脂の重量平均分子量、数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0052】
[カチオン反応性樹脂組成物]
上記カチオン反応性樹脂組成物(カチオン硬化性樹脂組成物)は、本発明のカチオン反応性樹脂を必須成分として含む樹脂組成物である。上記カチオン反応性樹脂組成物における本発明のカチオン反応性樹脂の割合(含有量)としては、例えば、カチオン反応性樹脂組成物(固形分)(100重量%)に対して5重量%以上であり、実質的にカチオン反応性樹脂組成物(固形分)が本発明のカチオン反応性樹脂のみで構成されていてもよい(例えば、本発明のカチオン反応性樹脂の割合が98重量%以上であってもよい)。本発明においては、中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、カチオン反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のカチオン反応性樹脂の割合が、10〜95重量%であることが好ましく、特に40〜95重量%が好ましい。カチオン反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のカチオン反応性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0053】
上記カチオン反応性樹脂組成物には、本発明のカチオン反応性樹脂の他に、カチオン重合性を有する他の化合物(「他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)が含まれていてもよい。上記「他のカチオン重合性化合物」とは、カチオン重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物を意味する。
【0054】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0055】
オキセタン環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、トリメチレンオキシド、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3‐ビス(クロルメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等を挙げることができる。
【0056】
エポキシ環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、グリシジルメチルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を挙げることができる。
【0057】
ビニルエーテル基を1分子内に1つ以上有する化合物、ビニルアリール基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、上記他のラジカル重合性化合物において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。
【0058】
上記カチオン反応性樹脂組成物に含まれる他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光を照射することにより速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
上記カチオン反応性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、本発明のカチオン反応性樹脂と共に他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。本発明のカチオン反応性樹脂と他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜45/55である。本発明のカチオン反応性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0060】
また、上記カチオン反応性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤等のカチオン重合を起こし得るものを特に限定されることがなく使用することができる。重合開始剤としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩などが挙げられる。
【0061】
上記重合開始剤として、例えば、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製、光酸発生剤)などの市販品を使用することもできる。
【0062】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、カチオン重合性化合物(本発明のカチオン反応性樹脂と他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0063】
さらに、上記カチオン反応性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、有機−無機ハイブリッド材料、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0064】
上記カチオン反応性樹脂組成物は、光を照射することによりカチオン重合反応を促進させ、硬化物とすることができる。本発明の光ファイバ素線を、上記カチオン反応性樹脂組成物の硬化物により形成する場合、硬化の際の光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射後、例えば、50〜180℃の温度で熱処理し、さらに硬化を進行させてもよい。
【0065】
カチオン重合反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などのいずれであってもよい。
【0066】
[ラジカル反応性樹脂]
本発明のラジカル反応性樹脂(ラジカル硬化性樹脂)は、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又は上記他のカチオン重合性化合物とともに、カチオン重合することによって得られる。
【0067】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又は他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表される構成単位を有するラジカル反応性樹脂を合成することができる。なお、カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化8】

(式中、R1、R2、Aは上記に同じ)
【0068】
上記ラジカル反応性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合することにより得られるラジカル反応性樹脂が好ましい。特に、ラジカル反応性樹脂を構成する全モノマー(100重量%)のうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となるように、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
【0069】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記で例示したオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0070】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0072】
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合をおこし得るものであれば特に限定されることなく、公知乃至慣用のカチオン重合開始剤、酸発生剤等を使用することができる。重合開始剤としては、例えば、過塩素酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、四塩化錫、四塩化チタン、塩化水銀、塩化亜鉛等のルイス酸等を使用することができる。また、その他、ヨウ素、トリフェニルクロロメタン等を使用することもできる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、例えば、カチオン重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物の総重量)100重量部に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0074】
また、カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤等を挙げることができる。
【0075】
本発明のラジカル反応性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル反応性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。なお、上記ラジカル反応性樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0076】
[ラジカル反応性樹脂組成物]
上記ラジカル反応性樹脂組成物(ラジカル硬化性樹脂組成物)は、本発明のラジカル反応性樹脂を必須成分として含む。上記ラジカル反応性樹脂組成物における本発明のラジカル反応性樹脂の割合(含有量)としては、例えば、ラジカル反応性樹脂組成物(固形分)(100重量%)に対して5重量%以上であり、実質的にラジカル反応性樹脂組成物(固形分)が本発明のラジカル反応性樹脂のみで構成されていてもよい(例えば、本発明のラジカル反応性樹脂の割合が98重量%以上であってもよい)。本発明においては、中でも、より柔軟性に優れる硬化物を形成することができる点で、ラジカル反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のラジカル反応性樹脂の割合が、10〜95重量%であることが好ましく、特に40〜90重量%が好ましい。ラジカル反応性樹脂組成物(固形分)中に占める本発明のラジカル反応性樹脂の割合が5重量%を下回ると、ラジカル重合により硬化して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0077】
上記ラジカル反応性樹脂組成物には、本発明のラジカル反応性樹脂の他に、上述の他のラジカル重合性化合物が含まれていてもよい。
【0078】
上記ラジカル反応性樹脂組成物に含まれる他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を有する硬化物を形成できる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上(特に2つ)有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
上記ラジカル反応性樹脂組成物としては、より優れた柔軟性と耐熱性のバランスを有する硬化物を形成できる点で、本発明のラジカル反応性樹脂と共に他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。本発明のラジカル反応性樹脂と他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。本発明のラジカル反応性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0080】
また、上記ラジカル反応性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知乃至慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることがなく使用することができる。
【0081】
上記熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト等が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
上記重合開始剤には、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトンなどのケトン等が挙げられる。
【0084】
上記ラジカル反応性樹脂組成物に重合開始剤を添加する場合、その添加量(使用量)としては、ラジカル反応性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(本発明のラジカル反応性樹脂と他のラジカル重合性化合物の総重量)100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0085】
さらに、上記ラジカル反応性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、有機−無機ハイブリッド材料、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0086】
上記ラジカル反応性樹脂組成物は、加熱処理及び/又は光照射を行うことによりラジカル重合反応を促進させ、硬化物とすることができる。本発明の光ファイバ素線を、上記ラジカル反応性樹脂組成物の硬化物により形成する場合、加熱処理の温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調整することができ、特に限定されないが、例えば、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃である。光照射を行う場合の光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射後、例えば、50〜180℃の温度で熱処理し、さらに硬化を進行させてもよい。
【0087】
ラジカル重合反応は常圧下で行ってもよく、減圧下又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などのいずれであってもよい。
【0088】
本発明の光ファイバ素線におけるコアの直径(コア径)は、特に限定されないが、1〜999μmが好ましく、より好ましくは3〜100μmである。また、本発明の光ファイバ素線がコア−クラッド構造を有する光ファイバ素線である場合、クラッドの直径(クラッド径)としては、特に限定されないが、60〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜500μmである。
【0089】
本発明の光ファイバー素線は、最外層に適宜な被覆層を有していてもよい。上記被覆層としては、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル等からなる被覆層が挙げられる。
【0090】
本発明の光ファイバ素線は、公知乃至慣用の光ファイバの製造方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、シリンジ等を使用して上記カチオン反応性樹脂組成物又は上記ラジカル反応性樹脂組成物を定量的にファイバー状(糸状)に押し出し、押し出されたカチオン反応性樹脂組成物又はラジカル反応性樹脂組成物を硬化させる方法等により製造することができる。
【0091】
本発明の光ファイバアレイは、複数本の本発明の光ファイバ素線が整列(配列)・固定化(保持)された構造を有していればよく、その構造は特に限定されないが、例えば、特開平7−110413号公報に開示された構造等が挙げられる。中でも、本発明の光ファイバアレイは、図1に示すように、本発明の光ファイバ素線が封止材により封止(被覆)された構造の光ファイバアレイ(封止材中で複数の光ファイバ素線が整列・固定された光ファイバアレイ)であることが好ましい。本発明の光ファイバアレイは、このような構成を有することにより、他の部品と接続する際に配線の相対位置がずれることなく容易に接続することが可能となる。
【0092】
上記封止材としては、公知乃至慣用の封止用樹脂(例えば、接着剤等)などを用いることができ、特に限定されないが、耐熱性と柔軟性のバランスをとる観点で、上記カチオン反応性樹脂組成物の硬化物又は上記ラジカル反応性樹脂組成物の硬化物が好ましく、より好ましくは上記カチオン反応性樹脂組成物の硬化物である。即ち、上記封止材は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくは他のラジカル重合性化合物とともにラジカル重合して得られるカチオン反応性樹脂(本発明のカチオン反応性樹脂)を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物の硬化物により形成された封止材であることが好ましい。特に、本発明の光ファイバアレイにおいては、本発明の光ファイバ素線のクラッドを構成する硬化物と、封止材を構成する硬化物とを同じ樹脂組成物(カチオン反応性樹脂組成物、ラジカル反応性樹脂組成物)より形成することが好ましい。
【0093】
本発明の光ファイバアレイは、図1に示すように、ベースフィルム(図1における4)やカバーフィルム(図1における5)等を有していてもよい。上記ベースフィルムは、本発明の光ファイバアレイにおいて、主にファイバアレイを保護したり、難燃性を付与する等の役割を担う。また、上記カバーフィルムは、本発明の光ファイバアレイにおいて、主にファイバアレイを保護したり、難燃性を付与する等の役割を担う。なお、本発明の光ファイバアレイは、必ずしもこれらのベースフィルムやカバーフィルムを有しなくてもよい。
【0094】
上記ベースフィルム、カバーフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、アクリルフィルム等の公知乃至慣用のプラスチックフィルムなどが使用できる。なお、上記ベースフィルムとしては、シリコン製、ガラス製、セラミック製、ガラスエポキシ樹脂製、金属製の基材等を使用することもできる。
【0095】
本発明の光ファイバアレイにおける光ファイバ素線(本発明の光ファイバ素線)の配列態様は、特に限定されないが、例えば、光ファイバ素線の中心間距離(ピッチ)を、50〜1000μmとすることが好ましく、より好ましくは70〜500μmである。
【0096】
本発明の光ファイバアレイは柔軟性に優れるため、自由に屈曲することができ、さらにこのような屈曲によってもクラック等の破損を生じにくく、光損失の増大を生じにくい。このため、小型の製品や内部構造が複雑な製品において特に好ましく使用できる。また、本発明の光ファイバアレイは、耐熱性にも優れるため、ハンダリフロー工程のような高温の熱履歴が加えられた場合にも、光損失の増大を生じにくい。
【0097】
本発明の光ファイバアレイは、特に限定されないが、例えば、光通信用途や装飾用途等の広範な用途に使用することができる。より具体的には、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などにおいて用いられる、機器・装置の光配線回路や光・電気混載回路等に特に好ましく使用できる。
【0098】
本発明の光ファイバアレイは、公知乃至慣用の方法により製造することができ、特に限定されないが、例えば、特開平7−110413号公報や特開2003−156651号公報に記載の方法等により製造することができる。中でも、本発明の光ファイバアレイは、特に、粘着性を有する光硬化性組成物層を表面に有する基板の、上記光硬化性組成物層表面に、ファイバ素線の案内構造(ガイド構造)を有するロール(「ファイバ案内ロール」と称する場合がある)を用いて複数の光ファイバ素線を配列させ、その後、前記光硬化性組成物層に光を照射して硬化させて前記光ファイバ素線を固定する方法(「本発明の光ファイバアレイの製造方法A」と称する場合がある)により製造することが好ましい。本発明の光ファイバアレイの製造方法Aによると、光ファイバ素線の整列間隔の精度を低下させることなく、連続的に高品質の光ファイバアレイを製造できる。なお、本明細書において「基板」とは、上記「粘着性を有する光硬化性組成物層」を含んだもの(板状部材)を意味するものとする。
【0099】
なお、本発明の光ファイバアレイの製造方法Aにより製造される光ファイバアレイは、本発明の光ファイバアレイに限定されるものではない。
【0100】
[本発明の光ファイバアレイの製造方法A]
本発明の光ファイバアレイの製造方法Aを、図面を参照しながら以下に説明する。図2は、本発明の光ファイバアレイの製造方法の一例を示す概略図である。図2における5はベースフィルムロール、6はベースフィルム、7a、7bは塗布装置(コーター)、9a、9bはUV照射装置、10は光ファイバボビン(光ファイバ素線が巻かれたボビン)、12はファイバ案内ロール、13は巻き取りロール、14a〜dはローラーを示す。
【0101】
(工程1)
まず、粘着性を有する光硬化性組成物層を表面に有する基板の、上記光硬化性組成物層表面に、ファイバ案内ロールを用いて光ファイバ素線を配列させる(当該工程を、「工程1」と称する場合がある)。なお、本明細書において「粘着性を有する」とは、少なくとも常温(25℃)で粘着性を有することを意味し、光硬化性組成物層上に光ファイバ素線を配置させた際に仮止め(仮固定)可能な特性を表す。より具体的には、例えば、「粘着性を有する」とは、JIS Z0237に準拠する傾斜式ボールタック試験(23℃、傾斜角度:30°)により測定されるタックが、ボールナンバー1以上である特性を示す。
【0102】
粘着性を有する光硬化性組成物層が形成された基板は、特に限定されないが、例えば、図2に示すように、ベースフィルム6の一方の表面に光硬化性組成物層8aが形成された基板等が挙げられる。なお、図2の例では、上記基板を、塗布装置7を用いて光硬化性組成物8aをベースフィルム6上に塗布することによって作製している。即ち、上記基板としては、ベースフィルム上に光硬化性組成物を塗布したもの(積層体)を用いることができる。なお、上記基板としては、ベースフィルム等の基材の表面に光硬化性(光照射による硬化が可能な)の粘着剤層が形成された市販の粘着シート等を使用することも可能である。なお、本明細書においては、上記光硬化性組成物層を構成する光硬化性組成物を「光硬化性組成物a」と称する場合がある。
【0103】
上記光硬化性組成物(光硬化性組成物a)としては、特に限定されないが、例えば、光照射により硬化が可能な組成物のうち、粘着性を有する組成物、又は、光照射等によって部分的に硬化させることにより粘着性を発現する組成物などを使用することができる。中でも、特に、上記光ファイバ素線のクラッドが光硬化性組成物の硬化物により形成されている場合、上記光硬化性組成物層を構成する光硬化性組成物(光硬化性組成物a)として、上記クラッドを形成する組成物(光硬化性組成物)と同じ光硬化性組成物を用いることが好ましい。
【0104】
より具体的には、光ファイバ素線として本発明の光ファイバ素線を用いて本発明の光ファイバアレイを製造する場合には、上記光硬化性組成物層を構成する光硬化性組成物(光硬化性組成物a)として、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくは他のラジカル重合性化合物とともにラジカル重合して得られるカチオン反応性樹脂(本発明のカチオン反応性樹脂)を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0105】
上記塗布装置(コーター)としては、公知乃至慣用の塗布装置を利用でき、特に限定されないが、例えば、ダイコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、バーコーター、スピンコーター、スプレーコーターなどが挙げられる。
【0106】
上記光硬化性組成物層の厚みは、光ファイバアレイの構成により異なり、特に限定されないが、例えば、1〜100μmの範囲から適宜選択することができる。
【0107】
上記光硬化性組成物層には、図2に示すように、該光硬化性組成物層の表面に光ファイバ素線を配列させる前に、UV照射装置9a等の光源を用いて光を照射してもよい。即ち、上記基板としては、ベースフィルム上に光硬化性組成物(光硬化性組成物a)を塗布した後、さらに光照射したもの(積層体)を用いてもよい。このような光照射によって、光硬化性組成物層を部分的に重合(半硬化)させることで粘着特性(保持力)を高めた場合には、光ファイバ素線をより高精度で整列させることができる。照射する光としては、光硬化性組成物(光硬化性組成物a)を硬化させることができる光であればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などを用いることができる。中でも、汎用の重合開始剤を使用できる点で、紫外線が好ましい。このような紫外線の光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザーなどが挙げられる。また、光硬化性組成物層に照射する光の照射強度は、光硬化性組成物の組成や光の種類等により異なり、特に限定されないが、例えば、50〜1500mW/cm2の範囲から適宜選択することができる。
【0108】
次に、図2に示すように、光ファイバボビン10により繰り出した光ファイバ素線11をファイバ案内ロール12を用いて、光硬化性組成物層8b表面に配列させる。
【0109】
上記ファイバ案内ロールは、ファイバ素線を基板上に配列させるための案内構造を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、表面にファイバ素線を案内するための溝(案内溝)が複数(2本以上)形成されたロール(「溝付きロール」と称する場合がある)や、表面にファイバ素線を案内するための突起構造を有するロール等が挙げられる。
【0110】
図3は、上記溝付きロールの一例を示す概略図(斜視図)である。図3の例では、溝付きロール12の中央付近に4本の溝12aが等間隔に形成されている。溝付きロール12が有する溝の内部に光ファイバ素線を配置することで、これらを配列することができる。即ち、この溝付きロール12を用いた場合には、4本の光ファイバ素線を光硬化性組成物層上に等間隔に配列させることが可能である。上記溝付きロールを構成する材質は、特に限定されず、公知乃至慣用の材質を用いることができる。
【0111】
上記溝付きロールにおける溝は、特に限定されないが、ファイバ素線を該溝内に配置することにより配列させやすい点で、断面形状がV字状又はU字状の溝であることが好ましい。
【0112】
上記溝付きロールにおける溝の深さは、光ファイバ素線の径などにより異なり、特に限定されないが、例えば、5〜100μmの範囲から適宜選択することができる。また、溝付きロール上に形成される溝の数(2本以上)や間隔は、製造する光ファイバアレイの構成により適宜選択でき、特に限定されない。
【0113】
光ファイバ素線としては、公知乃至慣用の光ファイバを用いることができ、例えば、コア及びクラッドを有する複層構造の光ファイバ素線や、コアのみからなる単層構造の光ファイバ素線などを用いることができる。光ファイバ素線としては、市販品を用いることも可能である。特に、光ファイバ素線として、本発明の光ファイバ素線を用いた場合には、耐熱性及び柔軟性に優れた光ファイバアレイ(本発明の光ファイバアレイ)を製造することができる。
【0114】
本発明の光ファイバアレイの製造方法Aは、従来の光ファイバアレイの製造方法のように、光ファイバ素線を配列するために、基板表面上に位置決めのための溝などを形成したり、光ファイバ素線配列用治具のような特別な治具を用いなくても、より簡易な工程により光ファイバ素線を高精度で配列させることができる。このため、本発明の光ファイバアレイの製造方法Aによると、高品質の光ファイバアレイを連続的に製造可能となる。なお、より光ファイバ素線を配列させやすくするために、基板表面(光硬化性樹脂組成物層表面)に位置決めのための溝や目印等を形成してもよい。
【0115】
(工程2)
上記工程1により、基板の光硬化性組成物層上に光ファイバ素線が配列された構造体が得られる。続いて、当該構造体の光硬化性組成物層に対し、光を照射して該光硬化性組成物層を硬化させ、上記光ファイバ素線を固定する(当該工程を「工程2」と称する場合がある)。
【0116】
上記工程2においては、光硬化性組成物層に光を照射する前に、図2に示すように、さらに、光硬化性組成物層8b及び光ファイバ素線11上に光硬化性組成物8cを塗布して、光硬化性組成物層8cを形成してもよい。このように光ファイバ素線を配列させた後、さらに光硬化性組成物を塗布して光硬化性組成物層を形成することによって、その後の光照射により表面(基板に対する反対側の表面)の平滑性が高い板状(平板状)の光ファイバアレイを得ることができる。なお、本明細書においては、工程2において塗布する光硬化性組成物層を「光硬化性組成物b」と称する場合がある。
【0117】
上記工程2においてさらに塗布する光硬化性組成物(光硬化性組成物b)の塗布厚みは、特に限定されないが、例えば、5〜200μmの範囲から適宜選択することができる。塗布に用いる塗布装置(コーター)としては、例えば、上記で例示した塗布装置等を使用できる。
【0118】
上記工程2においてさらに塗布する光硬化性組成物(光硬化性組成物b)としては、特に限定されないが、耐熱性と柔軟性のバランスの観点で、基板が有する光硬化性組成物層を構成する光硬化性組成物と同じ組成物(光硬化性組成物)を用いることが好ましい。即ち、光硬化性組成物aと光硬化性組成物bは、同じ光硬化性組成物であることが好ましい。より具体的には、本発明の光ファイバアレイを製造する場合には、光硬化性組成物bとして、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で若しくは他のラジカル重合性化合物とともにラジカル重合して得られるカチオン反応性樹脂(本発明のカチオン反応性樹脂)を必須成分とするカチオン反応性樹脂組成物を用いることが好ましい。
【0119】
上記構造体における光硬化性組成物(光硬化性組成物a、又は、光硬化性組成物a及び光硬化性組成物b)に照射する光は、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などを用いることができ、特に紫外線が好ましい。このような光の光源としては、例えば、上述の紫外線の光源等を使用できる。また、光硬化性組成物に照射する光の照射強度は、光硬化性組成物の組成や光の種類等により異なり、特に限定されないが、例えば、10〜10000mW/cm2が好ましく、より好ましくは100〜5000mW/cm2である。
【0120】
上記工程1及び工程2により、光硬化性組成物の硬化物中で複数の光ファイバ素線が整列・固定化された光ファイバアレイが得られる。得られた光ファイバアレイは、図2に示すように、巻取りロール13により巻き取って回収することもできる。
【0121】
なお、本発明の光ファイバアレイの製造方法Aには、上記工程1及び工程2以外にも、例えば、光ファイバアレイの基板に対する反対側の表面(光硬化性組成物の硬化物表面)に、カバーフィルムを被覆する工程(例えば、図4参照)や、光ファイバアレイからベースフィルムを剥離する工程(例えば、図5参照)等を含んでいてもよい。さらに、光ファイバアレイを加工する工程等を含んでいてもよい。
【0122】
本発明の光ファイバアレイの製造方法Aにおける工程速度(例えば、ベースフィルムの送り速度)は、特に限定されないが、例えば、0.01〜100m/分が好ましく、より好ましくは0.1〜80m/分である。
【実施例】
【0123】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0124】
製造例1[光ファイバのコア剤の製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 62.07g、下記式で表される3−エチル−3−(3−アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピルオキシメチル)オキセタン(EOXTM−NPAL) 10.13g(0.039mol)、及びBA 27.06g(0.195mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、t−ブチルペロキシピバレート(パーブチルPV:日本油脂(株)製) 0.07gとPGMEA 1.08gの混合液を投入し、撹拌均一化した後、撹拌しながら、上記モノマー混合液の残り75%、AIBN 0.63g、及びPGMEA 6.47gの混合液を送液ポンプで3時間かけて滴下した。滴下終了後、ただちにAIBN 0.21gとPGMEA 2.16gの混合液を投入し、1時間後、AIBN 0.21gとPGMEA 2.21gの混合液を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂組成物を得た。これを5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明のコアプレポリマー(液状樹脂)を得た。
該コアプレポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は67600、数平均分子量は11800であった。
【化9】

上記コアプレポリマー60重量部に、商品名「OXT−212」(東亞合成(株)製)15重量部、「OXT−DVE」25重量部を混合し、この混合物100重量部に対して、開始剤として商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)3重量部を配合し、混合して、コア形成用の光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)(コア剤;25℃における粘度は15000cP)を作製した。
なお、上記「OXT−212」は、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタンである。
なお、「OXT−DVE」は、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタンである。
また、上記「CPI−100P」は、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)、ビス(ヘキサフルオロホスファート)、プロピレンカーボネート、及びジフェニルサルファイドの混合物である。
【0125】
製造例2[光ファイバ及び光ファイバアレイのクラッド剤の製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び撹拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 24.93gを仕込み、窒素気流下、75±1℃に加熱した。次いで、撹拌しながら、PGMEA 43.64g、EOXTM−NPAL20.08g(0.078mol)、BA 50.59g(0.39mol)、及びジメチル−2,2’−アゾビス(2―メチルプロピオネート)(商品名「V―601」) 0.043gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂組成物を得た。これをPGMEA 140.04gで希釈した後、5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明のクラッドプレポリマー(液状樹脂)を得た。
該クラッドプレポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は288000、数平均分子量は61200であった。
上記クラッドプレポリマー63重量部に、「OXT−DVE」37重量部を混合し、この混合物100重量部に対して、商品名「セロキサイド 8000」5重量部、開始剤として商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)1重量部を配合し、混合して、クラッド形成用の光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)(クラッド剤;25℃における粘度は70000cP)を作製した。
なお、上記「セロキサイド 8000」は、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシルである。
【0126】
製造例3[光ファイバ素線の製造例]
(光ファイバ素線製造装置)
光ファイバ素線製造装置としては、図6に示す製造装置を用いた。図6に示す光ファイバ素線製造装置は、ノズルの吐出口から鉛直方向下方に光硬化性組成物を吐出し、次いで、ノズルより垂下した該光硬化性組成物に対し光を照射して硬化させ、光ファイバ素線を製造する装置である。
図6の光ファイバ素線製造装置における21は、外管と、該外管の内側に内管を備えた二重管ノズルである。上記二重管ノズル21の外管及び内管の内径は以下に示す通りである。また、図6の光ファイバ素線製造装置においては、光照射装置として、ノズル先端から吐出される光硬化性組成物22に対して3方向から光を照射できる光照射装置を用いた。該光照射装置は、光硬化性組成物22に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分23を、同じ高さで等間隔(光硬化性組成物を中心に120°間隔)に配置したものである。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、図6においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
また、二重管ノズル21の先端(吐出口)に光照射装置からの光が伝播することを防ぐために、ライトガイドの先端部分23を筒状の部材(遮光筒)24で覆い、さらに、ライトガイドの先端部分23の光の出力端と二重管ノズル21の吐出口の間に、板状の部材(遮光板)25を設置した。
図6に示すように、ライトガイドの先端部分23を二重管ノズル21の吐出口よりも下方に配置し、二重管ノズル21の吐出口からライトガイドの先端部分23の出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分23の出力端(出力端の中心部)と光硬化性組成物22までの距離を、15mmとした。
さらに、ライトガイドの先端部分23は、水平面に対して11°下向きに傾けて設置した。なお、ライトガイドの先端部分23を遮光筒24で覆った状態で出射される光の広がり角ψ(出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値)は、22°であった。
(光ファイバ素線の製造)
まず、定量ポンプ26及び27を用いて、上記コア剤及びクラッド剤を下記送り速度にて送液し、二重管ノズル21の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、二重管ノズル21の内管にはコア剤、外管と内管の間にはクラッド剤を送液した。
次に、光照射装置により、コア剤及びクラッド剤に紫外線を照射し硬化させた。このようにして製造された光ファイバ素線(プラスチック光ファイバ)を、巻取り装置28にて回収した。
(製造条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.13mW/cm2
コア剤の送り速度:0.1mL/分
クラッド剤の送り速度:0.3mL/分
二重管ノズルの内管の内径(直径):2.0mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):4.0mm
UV照射強度:1800mW/cm2(三方の合計:一方あたり600mW/cm2
巻取り速度:480mm/秒
(結果)
製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造(コア直径60μm、クラッド直径125μm)を有する光ファイバ素線を150m製造することができた。該光ファイバ素線の真円度(縦横比)は、コア、クラッド共に1.0であった。
【0127】
実施例1[ベースフィルムを有する光ファイバアレイの製造:図2参照]
図2に示す製造装置を用いて、光ファイバアレイ(ベースフィルムを有する光ファイバアレイ)を製造した。
なお、ベースフィルム6として、ポリイミドフィルム(幅:0.01m、厚み:50μm)を用いた。塗布装置7a、7bとしては、光硬化性組成物(クラッド剤)の吐出量を任意に制御可能な塗布装置を用いた。また、UV照射装置9a、9bとして、商品名「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。また、溝付きロール12として、表面に0.25mmピッチでU溝が4本形成されたジュラコン素材のロールを用いた。以下に手順を示す。
ベースフィルムロール5からベースフィルム6を繰り出し、巻取りロール13にセットし、巻取り速度2m/分で巻取りロールを作動させた。以下の工程は、巻取り速度2m/分にて連続的に実施した。
まず、ベースフィルム6上に、塗布装置7aによりクラッド剤を膜厚が30μmとなるように塗布した。その後、上記クラッド剤の塗布層(光硬化性組成物層8a)に対し、UV照射装置9aにより紫外線を照射し(照射強度:1000mW/cm2)、クラッド剤を半硬化させ、粘着性を有する光硬化性組成物層8bを形成した。
次に、上記製造例3にて得られた光ファイバ素線を光ファイバボビン10より4本繰り出し、それぞれの光ファイバ素線11が溝付きロール12の溝(U溝)を通るようにセットした。これにより、光ファイバ素線11は、溝付きロール12により中心間距離が0.25mmピッチとなるように、光硬化性組成物層8b上に配列された。
次に、塗布装置7bによりクラッド剤を、ベースフィルム6と光硬化性組成物層8bの界面から130μmの膜厚となるように塗布し、光硬化性組成物層8cを積層した。さらに、光硬化性組成物層8b及び8cに対し、UV照射装置9bにより紫外線を照射し(照射強度:2100mW/cm2)、これらを硬化させることでポリイミドフィルムをベースフィルムとして有する光ファイバアレイを製造した。
なお、製造した光ファイバアレイは、巻取りロール13により100m分回収した。
【0128】
実施例2[ベースフィルム及びカバーフィルムを有する光ファイバアレイの製造:図4参照]
図4に示す製造装置を用いて、光ファイバアレイ(ベースフィルム及びカバーフィルムを有する光ファイバアレイ)を製造した。なお、図4における15はカバーフィルム、16はカバーフィルムを光ファイバアレイに貼り付けるためのカバーフィルムロールである。
光硬化性組成物層8b及び8cを硬化させた後、カバーフィルムロール16を用いてカバーフィルム15を貼り付けたこと以外は実施例1と同様にして、ベースフィルム及びカバーフィルムを有する光ファイバアレイを製造した。
【0129】
実施例3[ベースフィルムを有しない光ファイバアレイの製造:図5参照]
図5に示す製造装置を用いて、光ファイバアレイ(ベースフィルムを有しない光ファイバアレイ)を製造した。なお、図5における17は、ベースフィルム6を剥離した光ファイバアレイを巻き取る剥離ローラーである。
ベースフィルム6としてPETフィルム(幅:0.01m、厚み50μm)を用い、光硬化性組成物層8b及び8cを硬化させた後、剥離ローラー17を用いてベースフィルム6を剥離した光ファイバアレイを回収したこと以外は実施例1と同様にして、ベースフィルムを有しない光ファイバアレイを製造した。
【0130】
(評価)
[柔軟性評価]
光ファイバアレイを半径1mm棒に巻き付けて、クラック(ひび割れ)発生の有無を目視で観察し、クラック(ひび割れ)が見られなかった場合を合格(柔軟性に優れる)と判定した。
実施例1〜3で得られた光ファイバアレイは、上記柔軟性評価においていずれも合格であった。
【0131】
[光損失評価]
波長857nmの光源(ADVANTEST Q81201)からの光をマッチングオイルを介してコア径50μmのGIファイバにて、実施例1〜3で得られた光ファイバアレイに導入し、出射した光をマッチングオイルを介してコア径200μmのPCFファイバで受光し、パワーメータ(ADVANTEST Q82202、OPTICAL SENSOR Q82214)に接続して出射される光を該パワーメータで測定した。カットバック法により求めた、実施例1〜3で得られた光ファイバアレイの光損失は、いずれも0.1dB/cmであった。
【0132】
[耐熱性評価]
光ファイバアレイを260℃で30秒間加熱し、加熱前後の光損失の差異が0.1dB/cm以下である場合を合格(耐熱性に優れる)と判定した。
実施例1〜3で得られた光ファイバアレイは、上記耐熱性評価においていずれも合格であった。
【符号の説明】
【0133】
1 光ファイバアレイ
2 光ファイバ素線
3 封止材(光ファイバアレイのクラッド)
4 ベースフィルム
5 カバーフィルム
6 ベースフィルム
7a、7b 塗布装置
8a 光硬化性組成物層(光硬化性組成物)
8b 光硬化性組成物層
8c 光硬化性組成物層(光硬化性組成物)
9a、b UV照射装置
10 光ファイバボビン
11 光ファイバ素線
12 ファイバ案内ロール(溝付きロール)
12a 溝
13 巻取りロール
14a〜e ローラー
15 カバーフィルム
16 カバーフィルムロール
17 剥離ローラー
21 二重管ノズル
22 光硬化性組成物
23 ライトガイドの先端部分
24 遮光筒
25 遮光板
26 定量ポンプ
27 定量ポンプ
28 巻取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の光ファイバ素線が整列、固定化された光ファイバアレイであって、前記光ファイバ素線が、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する構成単位を含む硬化物により形成された光ファイバ素線であることを特徴とする光ファイバアレイ。
【化1】

(式中、R1、R2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数1〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。)
【請求項2】
粘着性を有する光硬化性組成物層を表面に有する基板の前記光硬化性組成物層表面に、ファイバ素線の案内構造を有するロールを用いて複数の光ファイバ素線を配列させ、その後、前記光硬化性組成物層に光を照射して硬化させて前記光ファイバ素線を固定することを特徴とする光ファイバアレイの製造方法。
【請求項3】
ベースフィルム上に光硬化性組成物aを塗布した後、さらに光照射したものを基板として用いる請求項2に記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項4】
前記光硬化性組成物層表面に前記光ファイバ素線を配列させた後、さらに前記光硬化性組成物層及び前記光ファイバ素線上に光硬化性組成物bを塗布して光硬化性組成物層を形成し、その後、光を照射して板状の光ファイバアレイを得る請求項2又は3に記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項5】
前記光ファイバ素線が、コアのみからなる単層構造の光ファイバ素線である請求項2〜4のいずれか1項に記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項6】
前記光ファイバ素線が、コア及びクラッドを有する複層構造の光ファイバ素線である請求項2〜4のいずれか1項に記載の光ファイバアレイの製造方法。
【請求項7】
前記クラッドが光硬化性組成物の硬化物より形成されており、前記光硬化性組成物層を構成する光硬化性組成物aとして、前記クラッドを形成する光硬化性組成物と同じ光硬化性組成物を用いる請求項6に記載の光ファイバアレイの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242459(P2012−242459A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109941(P2011−109941)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】